シンプラル法律事務所
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勉強会(提携契約・・技術提携)

★技術提携
★技術提携 事例 B社は、A社を日本における新商品の独占的販売店に指名。
日本における新商品の販売が順調に伸びてきた
⇒B社の生産力と技術力を活かして新証人のん量産と改良を検討。
⇒A社とB社は、新商品の製造販売についてB社からA社に対するライセンスにつき、契約交渉を開始。
ライセンス契約が成立した場合には、販売店契約は終了。

B社:
特化した技術を持つ中小メーカー 売上高50億円 従業員100人
新商品の量産化とタイムリーンな改良を図るべく、新商品を自社以外で生産することを考えている。

A社:大手メーカー 売上高1000億円 従業員5000人
新商品の需要に機動的に対応し、適宜改良を加えるためにも、B社からライセンスを受けて新商品を自ら製造販売したい。
■1 実施権の許諾
■1 実施権の許諾 ●実施権の内容
●実施権の内容 B:ライセンサー:
自社の技術を不必要に流出させることなく、ライセンシーに対し自社の特許および関連するノウハウについての実施権を許諾したい。
@新商品が自社の特許発明の技術的範囲に属するものであることを確認する。
A新商品に使われているノウハウを確認する。
B自社の事業戦略を考慮のうえ、独占・非独占、許諾製品、許諾地域、許諾機関を明確に定める。
@ 他にもライセンシ一候補が見つかれば実施許諾することによりさらなる市場拡大を期待できるから、独占的ではなく非独占的としたい。
A 自社が直接コントロールできない第三者に自社技術が流出し、競合他社が増えることを避けるべく、 A社による第三者への実施権の再許諾は拒否したい。
※ 特許法上、専用実施権者であっても特許権者の同意なく実施権を再許諾することはできない(特許法77条4項)
1-1
(B)
B社は、A社に対し、許諾特許等に基づき許諾製品を日本において製造及び販売するための非独占的な通常実施権を許諾する。なお、Aは、第三者に、実施権を再許諾してはならない。
A:ライセンシー:
許諾特許等の存在と特許権者を確認し、許諾製品、許諾地域および許諾期間等の実施許諾の条件が、自己の事業遂行上必要十分であることの確認が必要。
次に、実施許諾条件として妥協できない点を明確にしたうえで、妥協できる点については、たとえばロイヤルティ減額のための交渉材料として用いるべき。
@ 他のライセンシー との競合をさけるべく、できるだけ独占性を確保したい。
A 再許諾禁止だからといって、委託製造の可否は明らかにならない。

※ ライセンシーが明示的に委託製造の許諾を受けていない場合でも、ライセンシーと第三者との関係が、
(a) ライセンシーが当該第三者に工賃 (製造に対する手数料を支払っていること) 、
(b)原材料の購入、製品の販売、品質などについては、ライセンシーが指揮監督を行っていること、
(c) 当該第三者の製品はすべてライセンシーに納入されていること、
という要件をすべて満たすならば、当該第三者の実施行為がライセンシーの一機関としての実施としてライセンサーの特許の侵害とならないと評価される余地
あり 。 しかし、紛争を未然に防止するためには、委託製造の許諾について契約上明確に規定すべき 。
1-2
(A)
(A社の提案@再許諾についても許諾を受ける場合)
B 社は、 A社に対し、許諾特許等に基づき許諾製品を日本において製造および販売するための再実施許諾権付きの独占的な通常実施権を許諾する 。
1-3
(A)
(A社の提案A委託製造することについて許諾を受ける場合)
(1) B 社は、 A社に対し、許諾特許等に基づき許諾製品を日本において製造および販売するための独占的な通常実施権を許諾する。 なお、 A社は、第三者に対し、実施権を再許諾してはならない。
(2) A社は、許諾製品を第三者に委託製造させることができる。
交渉 B社:
A社の新商品製造が軌道に乗るかどうかわからないので、 A社に独占的実施権を許諾することには抵抗あり 。
A社:
独占的実施許諾を求めるとロイヤルティが高くなるので、非独占的通常実施権でも受け入れ可能。
ただし、自社以外でも新商品を製造できる権利は確保しておきたいので、@再実
施許諾またはA委託製造の許諾を要求する。
B社:
@については、許諾製品の技術がA社以外の第三者に流出し、また、再実施許諾先はB社の競合となりうるため、できれば拒否したい。
ただし、 A社の要望をある程度受け入れて、
(a) B社があらかじめ再実施許諾先を指定
(b)再実施許諾先を A社と一定の関係にある者に限定するなど、
再実施許諾の条件を限定した上で折り合う場合もある 。

Aについては、第三者への委託製造を認めるとしても、委託製造先の品質管理体制や情報管理体制は気になるところ。 そこで、委託製造につき B社の個別同意を求めることが考えられる。 また、委託製造を認める条件として、情報漏洩を防止
すべく、委託製造先がライセンシー と同一の秘密保持義務を負うことを要求する。
1-4 (交渉後の条項)
(1) B社は、 A社に対し、許諾特許等に基づき許諾製品を日本において製造及び販売するための非独占的な通常実施権を許諾する。 なお、 A社は、第三者に対し、実施権を再許諾してはならない
(2) A社は、委託製造先事業者の名称、所在地および委託製造させる品目を B社に書面にて開示して B社の書面による事前同意を得た場合に限り、許諾製品を当該事業者に委託製造させることができる。 この場合、 A社は、当該事業者との間の委託製造契約の写し(当該契約には、本契約に基づき A社が負うものと同一の秘密保持義務を当該事業者が負う旨の条項が含まれなければならない) を B 社に対して交付しなければならない。
●原材料・機械・部品の調達義務等
●原材料・機械・部品の調達義務等 ノウハウ ノウハウについては、特許と異なりその内容が公開されていないことから、契約交渉中どこまでノウハウの開示を求めるか、契約上ノウハウをどう特定するかが問題となる。 通常ライセンシーは、ライセンス契約によってノウハウが開示されるまで、その内容を知ることができない。 そこで、ライセンシーとしては、ノウハウが実施許諾され、開示された場合に、自社の事業において円滑に活用できるよう、ライセンス契約上対処しておくことが肝要。

具体的には、ライセンシーはノウハウ自体の実施許諾を得ることに加えて、具体的なノウハウの利用法についての指導・ 教育や、ノウハウを使用する前提としての原材料・ 機械・ 部品の調達などをライセンサーに要求することになる。 ライセンサーとしても、特にノウハウを実施することにより得た収益に応じてロイヤルティを定めている場合には、ライセンシーがノウハウを使用できなければロイヤルティを得られず、ライセンス契約を締結した意義が失われるため、この要求に応じざるをえない場合もある。
2-1 (1) B社は、 A社に対して、 A社の依頼に基づき、本ノウハウの実施に必要な原材料、部品、機材等を提供し、または適切な技術者を派遣して技術指導を行うものとする。
(2) 前項に基づき、 B社がA社に対して技術者を派遣する条件は、以下のとおりとする。
@ 1 回に派遣される技術者は●名までとする。
A 技術者が派遣される時間は年間●時間までとする。
B 技術者の交通費及び滞在費など、技術指導に関連して発生するすべての費用は、 A社が負担する。
注意 ライセンシーの従業員にノウハウの利用法についての指導および教育を行うと、事実上ライセンス契約後もライセンシーはノウハウの利用を継続することが可能になる点に留意する必要あり 。 そこで、契約終了後には、ライセンシーがノウハウを利用しないよう、ノウハウの返還または破棄条項を定めるとともに、契約終了後にノウハウ利用が発覚した場合の違約金をあらかじめ規定しておくなどして、対応することになる。
●知財ガイドライン
●知財ガイドライン 知的財産の利用と独禁法との関係については、公正取引委員会が「知的財産の利用と独占禁止法上の指針」(「知的財産ガイドライン」)を定め公表。
知財ガイドラインでは、原材料・ 機械・ 部品の調達義務を定めることについて、ライセンサーがライセンシーに対し、原材料・ 部品その他ライセンス技術を用いて製品を供給する際に必要なもの(役務や他の技術を含む。 以下「原材料・ 部品」という) の品質または購入先を制限する行為は、当該技術の機能・ 効用の保証、安全性の確保、秘密漏洩の防止の観点から必要であるなど一定の合理性が認められる場合がある。
しかし、ライセンス技術を用いた製品の供給は、ライセンシー自身の事業活動であるので、原材料・ 部品に係る制限はライセンシーの競争手段 (原材料・ 部品の品質・ 購入先の選択の自由) を制約し、また、代替的な原材料・ 部品を供給する事業者の取引の機会を排除する効果を持つ。
したがって、前述の観点から必要な限度を超えてこのような制限を課す行為は、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第10項、第11項、第12項)」とされている。

本件とは異なり、ライセンサーである B社がライセンシーである A社に対し、 A社が本件ノウハウを実施するにあたり、 B社が指定する原材料・ 機械・ 部品の使用を義務づける場合には注意が必要。
●特許出願中の発明を実施許諾する場合
●特許出願中の発明を実施許諾する場合 説明 特許出願人は、出願公開後に当該発明を実施した者に対して、当該発明につき特許権の設定登録がされた後、補償金の支払いを請求することができる (特許法6 5 条1 項)。
そのため、ライセンシーとしては、製造を企図している製品が出願中の発明の技術的範囲に明らかに属すると思われる場合や、競合他社に優先して実施許諾を受けたい場合などに、 出願中の発明について実施許諾を受けておく実益がある。
もっとも出願中の発明は、必ずしも権利化されるとは限らず、また、補正により出願当初の技術的範囲と最終的な技術的範囲が異なる場合が多い。 そのため、ライセンスに係る発明の特定、 当該発明が特許になった場合や特許にならないことが確定した場合の処理 (支払済みのロイヤルティの不返還条項、無効審判への協力義務など) 、ライセンサーの審査請求義務の有無などについて、特許のライセンスを受ける場合以上に明確に定めるよう留意する必要がある。
規定 第65条(出願公開の効果等)
特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。
■2 ロイヤルティ
■2 ロイヤルティ ●ロイヤルティの定め方
●ロイヤルティの定め方 一般  種類 @ 固定額(ランプサム・ ペイメント)
A ランニングロイヤルティ
B 一時金(イニシャル・ ペイメント) とランニングロイヤルティの併用
特徴 @ 固定額
ライセンサーにとってロイヤルティの回収が容易
一括払いとして全額回収する場合は、ロイヤルティ不払いのリスクがない
A ランニングロイヤルティ
新商品の販売が予想以上に増加した場合等に有利
B 併用
ロイャルティをある程度早期に確保しつつ、将来の新商品の販売増加にも対応するためには、Bが合理的。
MKA:
ランニングロイヤルティ:将来の不確実性に対応
注意 特許とノウハウの実施許諾をする場合には、特許のロイヤルティとノウハウのロイヤルティの関係についても明記すべき。
(a)一括して定めてしまうと、特許権消滅後のロイヤルデイについて、紛争になる可能性がある。
(b)ライセンシーから、ノウハウ部分は特許に付随するものであり、ロイヤルティは無償のはずだとの主張がされる可能性もある。
3-1
(B)
(1)A社は、 B社に対し、本特許実施許諾の対価として●円、本ノウハウ実施許諾の対価として●円の一時金を、本契約締結後7 日以内に支払うものとする。
(2)A社は、 B社に対し、本特許のロイヤルティとして、各暦年四半期終了後30 日
以内に、 当該暦年四半期に A社が第三者 ( A社の子会社および関連会社を含む) に販売し代金を受領した許諾製品の当該第三者への総販売価格の● % に相当する金額を支払うものとする。
(3) A社は、 B社に対し、本ノウハウのロイヤルティとして、各暦年四半期終了後30 日以内に、当該暦年四半期にA社が第三者(A社の子会社及び関連会社を含む) に販売し代金を受領した許諾製品の当該第三者への総販売価格の●% に相当する金額を支払うものとする。
Aの希望 @すべてランニングロイヤルティに
←将来どのくらい売れるかは不確定要素が多い。
Aロイヤルティ算定の基準としては、総販売価格ではなく純販売価格(正味販売価格)
を用いるべき。
←一梱包費、輸送費、消費税等は、許諾特許等と無関係。
3-2
(A)
(1) A社は、 B社に対し、本特許のロイヤルティとして、各暦年四半期終了後30 日以内に、 当該暦年四半期に A社が第三者 (A社の子会社および関連会社を含む) に販売し代金を受領した許諾製品の当該第三者への純販売価格の● % に相当する金額を支払うものとする。
(2) A社は、 B社に対し、本ノウハウのロイヤルティとして、各暦年四半期終了後30 日以内に、当該暦年四半期にA社が第三者(A社の子会社および関連会社を含む) に販売し代金を受領した許諾製品の当該第三者への純販売価格の●% に相当する金額を支払うものとする。
交渉 A社の希望@については、たしかに、許諾製品の売れ行きが判明する前に一時金を支払ってしまうことは、その金額次第では、ライセンシーにとりリスクが大きいとも思える。 しかし、一時金は、許諾特許等に費やした開発費の早期回収の意味や、ノウハウの実施許諾や技術指導が伴う場合の当該実施許諾や技術指導の対価の性格を有するので、このような場合はライセンサーが一時金を求めることにも合理性がある。 また、ライセンシーとしても、ロイヤルティをすべてランニングロイヤルティとして許諸製品の販売の都度重いロイヤルティを負担するよりも、一時金とランニングロイヤルティを併用して許諾製品の販売の都度のロイヤルティ負担を軽くする方が合理的な場合がある。 したがって、ライセンサーとしても、一時金とランニングロイヤルティの併用は不合理ではない。
A社の希望Aについては、一般的にロイヤルティの算定基準として純販売価格を用いることが多く、合理的といえる。 しかし、純販売価格は総販売価格から一定のコストを控除する形で計算されるところ、この控除項目について合意が難しい場合には、総販売価格を基準として、ロイヤルティの料率を少し下げるということも行われる。
このように、 ロイヤルティの算定基準をどのようにするかは、計算根拠の明確性の点が交渉の中心となると思われる。 本件では、控除項目について合意に達することができ、純販売価格を用いることとなった。
なお、ランニングロイヤルティの場合、純販売価格の定義(すなわち、総販売価格から何を控除するか) の他にも、ロイヤルティの発生時期(許諾製品の販売契約締結時か、代金受領時か、値引きや返品をどう扱うかなど) 、「第三者に販売」 にいう 「第三者」 はライセンシーの子会社を含むのか、 それとも子会社からの転売先を指すのか (子会社への販売価格が優遇価格である場合に問題となる) などは、争いとなりやすいので、可能な限り明確にさだめるべき
3-3 (1) A社は、 B社に対し、本特許のロイヤルティとして●円、本ノウハウのロイヤルティとして●円の一時金を、本契約締結後7 日以内に支払うものとする。
(2) A社は、 B社に対し、本特許のロイヤルティとして、各暦年四半期終了後30 日以内に、当該暦年四半期にA社が第三者 (A社の子会社および関連会社を含む) に販売し代金を受領した許諾製品の当該第三者への従販売価格の● % に相当する金額を支払うものとする。
(3) A社は、 B社に対し、本ノウハウのロイヤルティとして、各暦年四半期終了後30 日以内に、 当該暦年四半期に A社が第三者 ( A社の子会社および関連会社を含む) に販売し代金を受領した許諾製品の当該第三者への純販売価格の● % に相当する金額を支払うものとする。
(4) (2)および(3)における「純販売価格」とは、総販売価格から、梱包費、輸送費、保険料、販売にかかる公訴公課、 リベート、値引きおよび返品にかかる返金額を除いたものをいう。
料率 当事者におけるライセンスの必要性、ライセンス対象たる特許やノウハウの評価、特許権の存続期間・権利範囲の広さ、技術の商業的完成レベル、代替技術の有無、技術の利用の容易性等さまざまな要素を総合的に勘案して決定。
経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」
参考 平成21 年度
特許ライセンスにおけるロイヤルティ料率の平均値は3 . 7 %
特許ライセンスとノウハウのライセンスの組み合わせ 十1 . 4 %
ノウハウライセンスのみの場合 3 . 9 %
業界によって算定基準の考え方が異なることあり 。
エンタテインメント業界などでは、生産コストや生産数量を算定基準にすることが多い。
●ミニマムロイヤルティ(最低実施料)
●ミニマムロイヤルティ(最低実施料) 趣旨 契約締結後一定期問内に、許諾製品の販売高にかかわらず一定のロイヤルティの支
払いをライセンシーに義務づけるもの
目的 @ 独占的実施許諾の場合、ライセンシー以外からのロイヤルティ収入が見込めないため、一定のロイヤルティの確保を目的
(ミニマムロイヤルティの適用期間、金額、未達の場合のペナルティなどについて、明確に定める必要
A 非独占的実施許諾の場合でも、許諾製品の販売を最大限努力させたい、最低限のロイヤルティを確保したい
交渉 A社としては、ライセンスを受けることが必要不可欠
→ B 社の希望を一部受けざるを得ない
また、すでに販売店契約によって許諾製品の販売は順調に伸びており、 A社としてもある程度の販売予測はつく→一定の条件を付したうえでミニマムロイヤルティを定めるのであれば受け入れ可能
A社の条件@
ロイヤルティの次期への繰り越しを認める
(交渉によって、繰越期間を長く設定できれば、 A社のメリットはより大きいものとなる)
4-1
(A)
(1) ミニマムロイヤルティは、各年度●円とする。 第●条に基づき当該年度に発生したロイヤルティ (以下「当該ロイヤルデイ」という) がミニマムロイヤルティの額に達しないときは、 A社は、 B社に対し、当該ロイヤルティに加えて、ミニマムロイヤルティと当該ロイヤルティとの差額を支払うものとする。
(2) 当該ロイヤルティの額が当該年度のミニマムロイヤルティの額を超過したときは、その超過額を翌年度に限りロイヤルティとして繰り越すことができる
B社が毎期に一定のロイヤルティ収入を得ることを希望している場合には、 A社の提案を受け入れることは難しい。
4-2
(A)
(1) ミニマムロイヤルティは、本契約締結年度は● 円とし、その後1 年度ごとに● 円ずつ減額する 。
t2) 第●条に基づき当該年度に発生したロイヤルティ (以下 「当該ロイヤルティ」という) がミニマムロイヤルティの額に達しないときは、 A社は、 B社に対し、当該ロイヤルティに加えて、 ミニマムロイヤルティと当該ロイヤルティとの差額を支払うものとする。
交渉 今後の市場拡大を見込んでライセンス契約を締結⇒許諾製品の販売高も市場の拡大に伴って増加⇒最初はミニマムロイヤルティを低く設定して、徐々にA社の業績に増加に合わせて増やしていくようにすれば、A社も受け入れやすい。
Bがライセンス契約当初に一定水準以上のロイヤルティを確保
⇒当初のミニマムロイヤルティを高めに設定し、以後徐々に減らしていくことも考えられる。
●最恵待遇
●最恵待遇 意義 ライセンサーが複数のライセンシーに実施許諾したとき、先に実施許諾されたライセンシーとの間の実施許諾条件が後に実施許諾されたライセンシー との間の実施許諾条件と比較して不利とならないように、先のライセンシーとの間のライセンス契約において、 「同じ許諾技術にっき後により有利な実施許諾条件で実施許諾された場合は、本ライセンス契約にも当該有利な条件が適用される」 旨を定めること。
利用場面 比較的定型的なライセンスを複数の者が非独占的に実施許諾する場合において、 交渉力においてライセンシーがライセンサ一対して優位にあるときなど。
注意点 先の実施許諾と後の実施許諾とが「同じ許諾技術J といえるか、「有利な条件」とは何かなどの難しい問題あり 。 したがって、最恵待遇条項を設ける場合、どのようなときに条項が発動されるかにつき注意深く規定する必要がある。
5-1 B社が、本契約締結後に、許諾特許等に関してA社以外の第三者との間でライセンス契約を締結した場合、 B社は直ちにその内容をA社に通知し、当該ライセンス契約の内容が本契約よりも有利な条件であるときは、本契約の当該条件を当該ライセンスと同等の内容に変更するものとする。
●ロイヤルティ支払確保
●ロイヤルティ支払確保 ロイヤルティ (とくにランニングロイヤルティ) については、その計算および支払いにつき契約違反が多く見られるところであり、ライセンサーとしては、ロイヤルティの計算および支払いの適正を図る仕組みを導入し、ロイヤルティ支払いを確保することが肝要。
6-1
(B)
(1) A社は、 B社に対し、暦年四半期終了後15 日以内に、当該四半期における次の事項を記載した報告書を提出するものとする。
@ 許諾製品の販売単価、販売数量、販売先および総販売価格
A 総販売価格から控除すべき各項目の金額およびこれらを控除した後の純販売価格
B ロイヤルティの計算方法およびロイヤルティ合計
(2) A社は、ロイヤルティの報告および支払いの基礎となる帳簿を作成し、関係書類とともに、本契約期間中および終了後1 0 年間保管するものとし、 B社が必要と認めたときは、 B 社または B 社の指定した公認会計士に当該帳簿および関係書類を監査させるものとする。
かかる監査の費用はB社の負担とする。 ただし、かかる監査の結果A社の支払うべきロイヤルティと実際の報告金額との間に5 %以上の相違が発見された場合は、かかる監査の費用はA社の負担とする。
(3) A社が報告した許諾製品の純販売価格が、実際の純販売価格をしたまわることが判明した場合には、 A社は、 B社に対し、当該差額にロイヤルティ率の3 倍の料率を乗じた金額を支払うものとする
A社 ロイヤルティの計算報告義務は受諾するものの、報告する内容についてはロイヤルティの計算に必要最小限の項目に限定し、帳簿等の保管期間もなるべく短くするよう交渉。
ロイヤルティ監査については、監査を行う者・ 監査の方法、監査の期間・ 回数・ 時間、鑑査費用等の点において、極力限定的でA社に有利な規定にすることを主張。
特別に違約金を定めることについても反発。
6-2
(A)
(1) 略
(2) A社は、ロイヤルティの報告および支払いの基礎となる帳簿を作成し、関係書類とともに、本契約の有効期間中および終了後5 年間保管するものとし、 B社が必要と認めたときは、 B 社の指定した公認会計士に当該帳簿および関係書類 (ただし、 A社の営業秘密は除く) を監査させるものとし、当該監査にはインタビューは含まれないものとする。 なお、監査の対象期間は監査日からさかのぼって2 年間に限定されるものとし、また、監査終了後2年間は監査ができないものとする。 また、監査は、 A社の営業時間内においてのみ行われるものとする。
かかる監査の費用は B 社の負担とする。 (但し書きは削除)
l3) (削除)
交渉 ロイヤルティ監査は、ライセンシーの支払額の正確性に対し疑問がある場合に行われるものであり、当事者間の信頼関係を損なう行為と捉えがち⇒そもそもロイヤルティ監査の規定について交渉すること自体にライセンシーが不快感を示す可能性。
しかし、ロイヤルティ監査を行うことで支払額の正確性が裏付けられれば、当事者間の信頼関係を深め、後の紛争を防止する効果があるともいえる。 また、計算方法の解釈の違いをなくしたり、ロイヤルティの回収リスクを減らす効果も期待できる。

ライセンサーとしては、まずロイヤルティ監査を導入する必要性や、これが両者の信頼関係を損なうものではないことなどを説明するなどして、ライセンシーを交渉の場につかせることが必要である。
・ 監査を行う者および実施方法について
( ライセンシーの立場)
@ライセンサー の従業員が直接自社の帳簿などを見ることに抵抗感あり 。
A営業秘密の流出を懸念。
B営業所内への立ち入りやインタビューを拒否したい。

@Aの配慮は合理的。 Bのうちインタビューは少なくとも必要
・監査の回数・ 時期について
監査の抑止力とライセンシーの負担軽減とのバランス

監査の回数制限、 監査時間についての配慮
・ 監査費用
ライセンサーが負担するのが原則
ただし、ライセンシーのロイヤルティ計算・ 支払いの不正の抑止の観点からは、監査の結果一定割合 (5 % とか1 0% とかが多い) 以上の不正が発見された場合には、監査費用をライセンシーに負担させることも合理的。
・ 違約金条項
ライセンサーとしては規定したい。 ライセンシー としても、契約通りにロイヤルティを支払う限り違約金を支払う必要はないのであるから、違約金条項を受け入れる余地あり 。 ただし、あまりに高額の場合は公序良俗違反の可能性あり 。
6-3 (1) A社は、 B社に対し、暦年四半期終了後15 日以内に、当該四半期における次の事項を記載した報告書を提出するものとする。
@ 許諾製品の販売単価、販売数量、販売先および総販売価格
A 総販売価格から控除すべき各項目の金額およびこれらを控除した後の純販売価格
B ロイヤルティの計算方法およびロイヤルティ合計

(2) A社は、ロイヤルティの報告および支払いの基礎となる帳簿を作成し、関係書類とともに、本契約の有効期間中および終了後5 年間保管するものとし、 B社が必要と認めたときは、 B社の指定した公認会計士に当該帳簿および関係書類 (ただし、 A社の営業秘密は除く) を監査させるものとし、当該監査にはインタビューも含むものとする。 なお、監査は年1 回を限度とし、監査の対象期間は、前回監査の対象期間の末日以前に遡ることはできない。 また、監査は、 A社の営業時間内においてのみ行われるものとする。
かかる監査の費用はB 社の負担とする。 ただし、かかる監査の結果A社の支払うべきロイヤルティと実際の報告金額との間に1 0%以上の相違が発見された場合は、かかる監査の費用は A社の負担とする。

(3) A社が報告した許諾製品の純販売価格が、実際の純販売価格をしたまわることが判明した場合には、 A社は、 B社に対し、当該差額にロイヤルティ率の1 . 5 倍の料率を乗じた金額を支払うものとする。
■3 ラインセンサーの保証責任
■3 ラインセンサーの保証責任 ●許諾特許等の有効性の保証
●許諾特許等の有効性の保証 ライセンサーが技術の実施許諾に関してどのような保証責任を負うかという点は、ライセンス契約の交渉過程において、双方がもっともしのぎを削る場面の一つ。
交渉担当者は、 常に、本特許の有効性や許諾特許等が第三者の権利を侵害することに関する潜在的リスクを、 A社と B社のいずれがどの程度負担すべきかという点を頭に入れて、 交渉に臨むべき。
また、 B社としては、想定されるリスク期待されるロイヤルティ総額とを比較して、一定限度以上の保証を求められた場合は、ライセンスすることを拒否するか、ロイヤルティの増額を求めるなどの交渉をすることも検討すべき。
B社としては、契約時点で本特許が有効であることは確約できるが、事後的な無効事由の内容は多岐にわたるうえ、高度な法的判断を含むため、その存否を契約締結前に調査するにも限界がある。 また、本特許に無効事由が存しないことを保証すると、 B社が知らなかった理由により無効となった場合にも責任を負うリスクがある。 したがって、 B社としては、契約時点のみならず契約締結後も本特許に無効事由が存しないことは保証したくない。
7-1
(B)
(1) B社は、 A社に対し、本特許に無効事由が存しないことを保証しない。
(2) 本特許に無効事由が存し、本特許が無効と成った場合、本契約は当然に終了し、本特許の無効が確定した時点以降のロイヤルティ支払義務は発生しないものとする。 なお、A社は、当該時点までに発生したロイヤルティについて、支払いを拒絶し、または、 B 社に対し、返還請求を行うことはできないものとする。
7-2
(A)
(1) B 社は、 A社に対し、本特許に無効事由が存しないことを保証する。
(2) 本特許に無効事由が存し、本特許が無効となった場合、本契約は当然に終了し、本特許の無効が確定した時点以降のロイヤルティ支払義務は発生しないものとする。 また、 B 社は、 A 社に対し、受領したロイヤルティを全額返還するものとする。
交渉 以上のような B 社と A社の各提案を前提とした場合、 B 社としては、本特許に無効事由が存しないことを保証することは上記のとおりリスクが大きすぎるので、保証しないことは認めさせた上で、他の点を妥協することになる。
実務上、特に非独占的ライセンスにおいて、ライセンサーが本特許に無効事由が存しないことを保証することは極めて例外的である。 したがって、保証しないこと自体は妥協せず、以下の項目につき、代案を提示することが考えられる。
@ ライセンサーの本特許についての維持・ 管理義務を明示する。 B社としても、本特許の維持・ 管理は実行可能であり、また、ロイヤルティの確保という点で B 社にもメリットがあるので、かかる義務を負うことは合理的である。
A 無効審決が確定した時点以降のロイヤルティの不発生は確約する。
B 既払いロイヤルティについては、減額について協議する、または、返還割合の取
り決めを行う。(事後的な紛争を回避する点からは、協議を求めるよりも、返還割合の取り決めを行うほうが望ましい。)
7-3 (1) B 社は、 A社に対し、本特許に無効事由が存しないことを保証しない。
B社は、自己の費用で、本特許を維持・ 管理するものとする。
(2) 本特許に無効事由が存し、本特許が無効となった場合、本契約は当然に終了し、本特許の無効が確定した時点以降のロイヤルティ支払義務は発生しないものとする。 なお、 B 社は、本特許の無効が確定した場合、 A 社に対し、受領したロイヤルティの●% を返還するものとする。
◆なお、本書では、非独占的なライセンス契約を前提としているが、専用実施権及び独占的通常実施権については、第三者に先使用権が認められた場合、 A社は、先使用権者との関係に限り実施権の独占性が失われ、その限度において権利範囲が縮小す。⇒ そのため、第三者に先使用権が認められた場合のロイヤルィの減額規定を設ける場合もある。
●第三者の権利を侵害しないことの保証
●第三者の権利を侵害しないことの保証 B社 B社としては、ライセンス契約締結時に、当該技術分野に関する特許権その他の権利について調査を尽くすことは現実的には不可能であり、かつ、許諾特許等の実施がその他の権利に抵触するか否かは高度な法的判断が求められる 。
また、仮に侵害していた場合は、 A 社が多額の損害を被り、 B 社に補償を求めてくるおそれがある。

B 社は、本特許に無効事由が存しないことの保証と同様、許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害しないことは保証しないとの規定を求める。仮に第三者からの請求を受けた場合にも、できるだけ自己の責任を回避できるように求める。
8-1
(B)
(1) B 社は、 A 社に対し、許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害しないことを保証しない。
(2) B 社は、 A 社による許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害し、それにより、 A 社が損害を被った場合には、 A 社がすでに支払ったロイヤルティの●% を限度として、 A 社に対して当該損害を補償するものとする。
A社 A 社による許諾特許等の実施が、第三者の知的財産権を侵害する結果となる場合には、A 社は、事業の停止を余儀なくされ、当該第三者から多額の損害賠償請求を受けるおそれがある。
A 社は、 B 社から許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害しないとの保証を受けていない限り、自社の実施が第三者の権利を侵害していた場合、自己の責任と費用で自ら訴訟追行を行う等のリスクを負担することになる。

A社としては、許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害していないとの保証を受けたうえで、許諾特許等の実施により第三者からの損害賠償請求などの訴訟を提起された場合には、B 社に対して補償を求めたい。
8-2
(A)
(1)B 社は、 A 社に対し、許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害しないことを保証する。
(2)B 社は、 A 社による許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害し、それにより、 A 社が損害を被った場合またはそのおそれがある場合には、当該損害を A 社に対して補償するとともに、 B 社の負担で、 A 社が本契約に基づき許諾特許等を実施する権利を確保するために必要な措置をとるものとする。
交渉 B 社としては、本特許の有効性の保証と同様、許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害しないことを保証するのは、リスクが大きすぎる。 そこで、 B社としては、かかる保証の義務を負わない代わりに、第三者の権利の侵害が明らかになった場合の解決に関する自己の義務を規定することが考えられる。 A 社としても、第三者の権利の侵害が明らかになった場合に B 社がある程度責任をもって解決・ 協力してくれるのであれば、受諾可能といえる 。

そこで、「A 社による許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害した場合、 A社は B社に通知義務を負うこと。 この場合、原則として、 B社が解決義務を負い、A社は協力義務を負うこと。 ただし、第三者が A 社に法的手続により責任追及してきた場合には、両者協議のうえ対応方針を決定すること」を前提としたうえで、当該解決・ 対応に要した費用の負担については、次のような落としどころが考えられる。

@ 費用を支出した当事者が各々負担
A 当該第三者の権利の侵害につき責めのある当事者が負担
B B 社が受領したロイヤルティの額またはその一定割合までは B 社の負担とし、それを超える部分は A 社の負担。


@のデメリット(1)対応に消極的になる。(2)A社が敗訴した場合、 A社は B 社に求償できない。
Aのデメリット(2)いずれの当事者に責があるかにつき当事者間で合意ができず、争
いが生じる可能性が高い。
Bは比較的合理的。
8-3 (1) B社は、 A社に対し、許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害しないことを保証しない
(2) 許諾特許等の実施が第三者の権利を侵害し、もしくは侵害するおそれのある事実を発見したとき、または当該事実を理由に当該第三者から警告又は訴訟の提起を受けたときは、 A社は、 B 社に対し、直ちにその旨を通知するものとする。
(3) B社は、前項の通知を受けた場合、自己の費用と責任において、許諾製品の設計変更、当該第三者との若いその他の方法により当該第三者に対する侵害(そのおそれを含む) または当該第三者との間の係争を解決するよう最善の努力を払うものとする。
(4) 当該第三者がA社に対し提起した訴訟その他の法的手続の取扱いについては、当事者双方の協議による。 ただし、右協議が整わない場合には、 B 社の定めるところに従うものとする。
(5) 本条に基づく第三者に対する侵害(そのおそれも含む) または第三者との間の係争の解決に要する費用 (弁護士費用その他外部の専門家に支払った費用を含む) については、当該第三者に対する侵害(そのおそれも含む) または当該第三者との間の係争を B 社が知つた日までに B 社が A社から受領したロイヤルティの額を限度として B 社の負担とし、右限度を超過する部分については、 A 社の負担とする。
●訂正審判請求の際の承諾義務
●訂正審判請求の際の承諾義務 規定 特許法 第127条
特許権者は、専用実施権者、質権者又は第三十五条第一項、第七十七条第四項若しくは第七十八条第一項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、訂正審判を請求することができる。
説明 第三者から特許無効の抗弁(104 条の3 ) や無効審判請求がなされた場合、特許権者が取り得る対応策として、訂正審判を請求して特許の技術的範囲を縮小し、無効事由を解消することが考えられる。
ライセンス契約によって専用実施権や通常実施権を設定している場合には、これら実施権者の承諾を得ることが必要(特許法127 条)。

B社としては、あらかじめライセンス契約において、 A 社に訂正審判請求の際の承諾義務を定めることを希望。
A社としては、訂正審判請求は自己がライセンスを受けている特許の範囲を狭めることになるうえ、本特許が無効になるのであれば、むしろ A 社はロイヤルティを支払うことなく本特許にかかる技術を利用できる⇒承諾義務を負うことは拒否したい。
しかし、 A社が当初から本特許が無効となることを望むような態度を取った場合、B社がライセンス契約の締結自体を見送るおそれがある。 そこで、 A社としても、訂正審判請求の際の承諾について、何らかの定めを置くこと自体は受け入れざるを得ないと思われる 。
具体的には、
(a) 第三者から無効審判が提起された場合に限って訂正審判への承諾義務を負う 。
(b) 第三者から無効審判が提超された場合に B社への協力義務を負うにとどめる
(c) 承諾義務を負う代わりに訂正審判後の特許についてロイヤルティを減額するなど。
●第三者による権利侵害への対応
●第三者による権利侵害への対応 A社 A社が、許諾製品と類似の製品が第三者によって製造販売されていることを発見した場合、 A社としては、許諾製品の売上げが減少するおそれがあることから、第三者による権利侵害を排除したい。
but
非独占的通常実施権の許諾しか受けていない A 社は、固有の立場で当該第三者に対し差し止め請求や損害賠償請求をすることは困難。
ライセンシーが特許権者を代位して、侵害者に対して損害賠償および差し止めを請求できるかという点については、独占的通常実施権の事案で認められた例はあるものの、非独占的通常実施権では否定的。

よって、 A社としては、ライセンス契約上、第三者による権利侵害が発見をされた場合に、 B社に第三者による権利侵害を排除する義務を負わせることを希望する。 これにより、仮に B 社が侵害排除措置をとらなかった場合、 A 社が B 社に対し損害賠償請求を行う根拠にもなりうる。
9-1
(A)
(1) A社は、許諾特許等が第三者により侵害された事実を発見したときは、速やかにその旨を B 社に報告し、かつその入手した証拠資料を B 社に提供する。
(2) B社は、自ら許諾特許等が第三者により侵害された事実を発見したとき、または、A 社から許諾特許等が第三者により侵害された旨の報告を受けたときは、速やかに当該侵害を排除するための合理的な措置を講じなければならない。
B社 B社は、契約上の義務として、第三者による権利侵害の排除を定めることには抵抗あり。 もっとも、 B 社としても、第三者による権利侵害を排除することは許諾特許等を維持および将来のロイヤルティ収入の確保につながるので、自ら権利侵害を排除するインセンティブはある。
しかし、 A 社が提案する条項では、第三者による権利侵害を排除する方法として交渉による場合や訴訟による場合などが考えられ、さらに、交渉による場合どのような内容でまとめるのか、訴訟による場合にどのような請求をたてるのかなど、 B 社がとりうる対応策はさまざまであり、いずれの方法を採用すれば「合理的な措置」に該当するかの判断において A社と一致しないおそれがある。

B社としては、まずは第三者による権利侵害の排除を定めないことを提案し、かりに第三者の権利侵害の排除を定めるとしても、努力義務としたい。
9-2
(B)
(1) A社は、許諾特許等が第三者により侵害された事実を発見したときは、速やかにその旨を B社に報告し、かつその入手した証拠資料を B 社に提供する。
(2) B社は、自ら許諾特許等が第三者により侵害された事実を発見したとき、または、A 社から許諾特許等が第三者により侵害された旨の報告を受けたときは、当該第三者による侵害を排除するため最善の努力を払うものとする。
B社として、第三者による権利侵害を排除するインセンティブあり 。
第三者による権利侵害については、 A 社に何らの責任もなく、 B 社が主体的に当該権利侵害を排除すべきという A社の言い分は合理的。
具体的にどのような方法で権利侵害を排除すべきかについては、第三者の言い分、権利侵害の態様などによって異なってくるため、あらかじめ契約において権利侵害の排除の方法まで定めておくことは困難

第三者による権利侵害が発見された場合の対応策については、両社の協議事項とし、 B 社が具体的な対応策を実行するにあたっては、 A 社にも協力義務を負わせることが、 1 つの落としどころ。
9-3 (1) A社は、許諾特許等が第三者により侵害された事実を発見したときは、速やかにその旨を B社に報告し、かつその入手した証拠資料を B 社に提供する。
(2) B社は、自ら許諾特許等が第三者により侵害された事実を発見したとき、または、 A社から許諾特許等が第三者により侵害された旨の報告を受けたときは、当該第三者に対する対応策等について A 社と協議する。
(3) B社が前項の協議により決定した対応策を実行する場合には、 A社はそれに協力するものとする。
■4 秘密保持義務
■4 秘密保持義務 説明 特許ライセンスのみの場合であってもライセンシーに秘密保持義務を課すことが多い。
本件のようにノウハウライセンスも含む場合には、ライセンサーにとって、すでに情報が公開されている特許と異なり、ノウハウが秘密性を喪失するとその価値がなくなることから、特許ライセンスのみの場合以上に秘密保持義務が重要な規定となる。
特に、ライセンサーが第三者に対しノウハウの再実施許諾を行う場合や、ノウハウを用いた製品の製造委託をする場合に、第三者に対しても同様の秘密保持義務を課すようライセンシーに義務づける必要がある 。
10-1 A社は、 B社が 「秘密」 と指定して提供した本ノウハウにかかる一切の資料の内容
(以下「秘密情報」という) を第三者に漏洩してはならず、また、本ノウハウを第●条に基づく許諾製品の製造または販売以外の目的に用いてはならない。
ただし、B社が事前に書面で同意した場合に限り、 A社は、第三者に秘密情報を開示することができる。
なお、 A社は、第三者に秘密情報を開示する場合には、本契約の規定と同一の秘密保持義務を当該第三者に課さなければならない。
■5 改良技術の取扱い
■5 改良技術の取扱い A社は、自ら開発した改良技術の取扱いにつき、当然、 A社に権利が帰属することを
希望。
B社としては、何らかの形で改良技術を自ら利用できるようにすることを求めたい。

改良技術の帰属については、 明確に規定する必要。

改良技術の取扱いについては、独占禁止法上、問題になることが多いため、注意を要する。
独禁法上の問題 A社が開発した改良技術について、 B社または B 社が指定する事業者にその権利を無償で帰属させる義務 (アサインバック) 、またはB社に独占的ライセンスをする義務 (グランドバック) を課すことについて、知財ガイドラインは、かかる行為は「技術市場又は製品市場におけるライセンサーの地位を強化し、また、ライセンシーに改良技術を利用させないことによりライセンシーの研究開発意欲を損なうものであり、また、通常、このような制限を課す合理的理由があるとは認められないので、原則として不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)」としている。

原則として独占禁止法違反となるため(知財ガイドライン第4 の5 (8)ア) 、B社がこれを提案することはできない。
「ライセンシーが開発した改良技術が、ライセンス技術なしには利用できないものである場合に、 当該改良技術に係る権利を相応の対価でライセンサーに譲渡する義務を課す行為」 や
「ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーによる改良技術をライセンサーに非独占的にライセンスをする義務を課す行為」 は、
原則として独占禁止法に違反しない(同第4 の5 (8)ウおよび(9)ア) とされている。
交渉 A社は、譲渡によって自らが開発した改良技術を利用できなくなることは通常受け入れがたい。
B社としては、 A社に対し非独占的ライセンスを提案することになると考えられる。
A社としては、非独占的とはいえ無償でライセンスすることは開発費用の回収ができ
ないため受け入れがたい。
A社が改良技術をライセンスすることで相応のロイヤリティを B社から得ることができるならば、 A社としても当該改良技術の開発費用の早期回収が可能になるため、 B 社に有償にて非独占的にライセンスすることは受け入れ可能である 。

この場合、ロイヤリティの額のほか、 B社からA社へのロイヤリティの支払い方法について、すでに存在する A社から B社へのロイヤリティを減額する形にするのか、別途支払う形にするのかなどを交渉することになる。

B社としては、改良技術のベースは自社の技術であるから、改良技術のロイヤリティを通常よりも低く設定することをA社に要求したいところであるが、有償で改良技術の実施許諾を受けること自体は受け入れ可能と思われる。

B社にとってロイヤルティを支払ってまで当該改良技術の実施許諾を受ける必要がないと判断するのであれば、実施許諾を受けないという選択肢を残しておけばよいし、A社が提案する条項を基本としつつ、 たとえば第三者に対する実施権の再許諾を認めさせるなど、 B社に有利な条項を入れるよう交渉することも可能。

本件では、 A社がB社に対し、改良技術を有償でライセンスするとともに、 B社が第三者に対して当該改良技術の実施権を再許諾することを認める内容で合意した。 なお、 ロイヤルティは、 改良技術の有用性や改良に要した費用等によって妥当な計算方法が変わってくるため、あらかじめ一律に定めることは困難であることから、改良技術をライセンスする段階で別途協議することとした。
11-3 (1) A社が本契約期間中に、許諾特許等の改良技術を開発したときは、 B社に対し、直ちにその内容を通知するものとする。
(2) 前項の場合において、 B社から当該改良技術の実施の要求があったときは、 A社は B社に対し、本契約期間中、 当該改良技術の再実施権許諾付の実施権を相応のロイヤルティで非独占的に許諾するものとする。 なお、ロイヤルティの額、計算方法、支払い方法などは別途協議のうえ定める。
■6 開発制限
■6 開発制限 説明 知的財産ガイドラインでは、特許ライセンス契約において、ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術またはその競合技術に関し、ライセンシーが自らまたは第三者と共同して研究開発を行うことを禁止するなど、ライセンシーの自由な研究開発活動を制限する行為は、一般に研究開発を巡る競争への影響を通じて将来の技術市場または製品市場における競争を減殺するおそれがあり、原則として不公正な取引方法に該当するとしている (知財ガイドライン第4 の5 (7))。
特許ライセンス契約で開発制限を定めることは原則として独占禁止法に違反することとなる。
一方、同ガイドラインでは、ライセンスの対象がノウハウの場合において、当該技術がノウハウとして保護・ 管理される場合に、ノウハウの漏洩・ 流用の防止に必要な範囲でライセンシーが第三者と共同して研究開発を行うことを制限する行為は、不公正な取引方法に該当しないとしている(知的財産ガイドライン第4 の5 (7))
このように、ノウハウライセンスにおいては、ライセンシーの研究開発活動の制限を
定めることが一定程度許されているので、特許とともにノウハウもライセンスする本件において、ノウハウ部分についてライセンシーの研究開発活動の制限が可能かどうかも検討の余地がある。
12-1 A社は、本契約期間中、 B社の事前の書面による同意がない限り、本ノウハウと同一 もしくは類似または密接に関連する技術の開発を、単独もしくは第三者と共同で行い、または、第三者から受託してはならない。
非係争義務 非係争義務:
「ライセンシーが所有し、又は取得することとなる全部または一部の権利をライセンサー又はライセンサーの指定する事業者に対して行使しない義務」 および
「ライセンシーが所有し、又は取得することとなる全部又は一部の特許権等をライセンサー又はライセンシーの指定する事業者に対してライセンスをする義務」 を意味する。
当事者間である事業を行うために必要な特許を持ち合っていることで、いずれの当事者も当該事業を行えないという状況を解消したり、そのような状況が生じることを未然に防止するなどの目的で定められるものである。

ライセンシーに対し、改良技術についてライセンシーに対する非独占的実施権の許諾を義務づけることも、実質はライセンシーが改良技術についてライセンサーに対して権利行使をしないことを意味するから、非係争義務の一類型に位置づけられるが、 2 −5 でのべたように、この場合は原則として独占禁止法に違反しない。

ライセンシー に対し非係争義務を課すことが直ちに独占禁止法違反となるものではないが、「ライセンサーの技術市場もしくは製品市場における有力な地位を強化することにつながること、又はライセンシーの権利行使が制限されることによってライセンシーの研究開発意欲を損ない、新たな技術の開発を阻害することにより、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する」(知財ガイドライン第4 の5(6)) として、独占禁止法に違反する場合があるので留意が必要。
■7 契約当事者の倒産・支配権の変更
■7 契約当事者の倒産・支配権の変更 ●契約当事者の倒産
●契約当事者の倒産 B社 A社が倒産した場合、ライセンス契約を直ちに解除して許諾特許等の実施許諾義務を免れ、かつ、ロイヤリティの未払の増加を防ぎたい。
13-1
(B)
B社は、A社が次の各号の一に該当する場合には、A社に対して何らの催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
(●)破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始または特別清算開始の手続の申立てがあったとき。
A社 A社は、 B 社の倒産の場合に関する条項も規定したい。
もっとも、 A社にとっては、 B社の倒産の場合に契約を解除できることよりも、許諾特許等を実施し続けられることのほうが重要。 しかし、倒産法上の原則では、双方未履行の双務契約 ( ロイヤルティにランニングロイヤリティを含むライセンス契約) については、管財人などは解除または履行請求のいずれかを選択することができる (破産法53 条、民事再生法49 条、会社更生法61 条)。
このような管財人などによる契約解除を防ぐために、 A社は、許諾特許にっき通常実施権の登録を行うことが考えられる。 通常実施権の登録を行えば、対抗要件が備えられ、管財人などに解除されることがない (破産法56 条、民事再生法51 条、会社更生法63 条)
13-2
(A)
各当事者は、相手方が次の各号の一に該当する場合には、相手方に対し何らの催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
(●)破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始または特別清算開始の手続の申立てがあったとき。
13-3
(A)
両当事者は、A社のB社に対する要求があれば、遅滞なく本特許の通常実施権の登録を行うものとし、当該登録のために必要な行為を協力して実施するものとする。
交渉 (1) 通常実施権の登録
(2) 通常実施権の登録をすることなく、 B社の倒産の場合にA社が本特許を実施し続けるための他の方法として、 B社の倒産の場合にはA社はロイヤリティの支払義務を免れる旨を規定することが考えられる。
この規定は、 B社倒産の場合にA社がロイヤリティ支払義務を免れる旨を定めることにより、 B社が倒産した場合ライセンス契約が双方未履行でなくなることとし、管財人などによる解除を阻止しようとするもの。 もっとも、この規定の有効性については裁判例の集積がないので、管財人などによる解除を確実に免れるためには、通常実施権の登録を利用することが望ましい
●契約当事者の支配権の変更
●契約当事者の支配権の変更 14-1
(B)
B社は、A社が次の各号の一に該当する場合には、A社に対して何らの催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
(●)合併、事業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割、株式取得その他A社の組織または資本構成に重大な変更をもたらす取引が行われたとき
14-2
(A)
各当事者は、相手方が次の各号の一に該当する場合には、相手方に対して何らの催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
(●)合併、事業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割、株式取得その他相手方の組織または資本構成に重大な変更をもたらす取引が行われたとき
M&Aに際して買い手がこのような条項の存在ゆえにA社の事業価値を低く評価するおそれがある。
このような条項は企業グループ内における円滑な事業再編を阻害しかねないし、相手方当事者に特段の不利益を与えないと考えられる行為までも一律に解除事由とすることは合理的ではない。
14-3 各当事者は、相手方が次の各号の一に該当する場合には、相手方に対して何らの催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。

(競争者に限る場合)
(●)合併、事業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割、株式取得その他相手方の組織または資本構成に重大な変更をもたらす取引が行われ、その結果、相手方が自己の競争者に支配され、または自己の競争者が相手方の筆頭株主となった場合

(グループ内再編を除外する場合)
(●)合併、事業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割、株式取得その他相手方の組織または資本構成に重大な変更をもたらす取引が行われた場合。ただし、当該取引が相手方の属する企業グループ内のみで行われた場合はこの限りでない。
■8 契約終了後の取扱い
■8 契約終了後の取扱い ●ノウハウ資料などの返還方法
●ノウハウ資料などの返還方法 問題点 ライセンサーは、ライセンシーにノウハウ資料などを提供することが多いが、契約終了後もライセンシーの手元に残ると、ライセンシ、一は契約終了後もノウハウを実施することが可能となる。 そのため、ライセンサーは契約終了時に、一切のノウハウ資料などを返還乃至放棄することを希望することになる。
注意点 ・ 返還ないし破棄の対象となる資料をどのように特定するか。
・ ライセンシーが資料を複製して使用している場合には、ライセンシーの手元になる資料がすべて返還ないし破棄されたことをどのように確認するか。
(一切の複製禁止も考えられる)
15-1 (1) A社は、本契約の終了後●日以内に、 B社が「秘密」と指定して提供した本ノウハウに係る一切の資料 ( B社の承諾を得て複製したものを含む) を、 B社に返還しなければならない。
(2) A社は、 B社が書面で同意した場合に限り、 A社において当該資料の一切を破棄し、その証明書をB社に対し発行することで、前項による資料の返還に代えることができる
●在庫品の取扱い
●在庫品取扱い B社 B 社としては、ライセンス契約終了後も A社が在庫品を販売できるとなると、A社が在庫品を販売している限り、ライセンス契約が継続しているかのような外観が生じてしまうことから、ライセンス契約終了後のA社による在庫晶の販売を禁止し、 A社に対し在庫の処分を義務づけたい。
16-1
(B)
本契約が終了した場合、 A社は、直ちに許諾製品の製造・ 販売を中止し、本契約終了時点でA社が有する許諾製品の在庫および仕掛品を、 A社の費用で廃棄しなければならない。
A社 A社としては、ライセンス契約終了後の在庫品販売が禁止され、処分が義務づけられると、処分費用が生じてしまうほか、ライセンス契約終了時点ですでに契約済みの販売先から債務不履行責任を追及されるおそれがあることから、ライセンス契約終了時点で存在する在庫については、販売を継続したい。
16-2
(A)
本契約が終了した場合、 A社は、直ちに許諾製品の製造を中止しなければならない。 ただし、本契約終了時点でA社が有する許諾製品の在庫に限り、 A社は本契約終了後も販売することができる。
A社がライセンス契約終了後の在庫品の製造販売が禁止される代わりに、ライセンス契約終了時の在庫をB社が買い取ることも考えられるが、独自の販路を持たないB社が在庫品の買取りを受け入れるとは考えがたい。
16-3 (1) 本契約が終了した場合、 A社は、直ちに許諾製品の製造を中止し、本契約終了
時点でA社が有する許諾製品の仕掛品を、 A社の費用で廃棄しなければならない。 ただし、 A社は、本契約終了時点でA社が有する許諾製品の在庫に限り、本契約終了の日から●ヶ月間、販売することができる。

(2) A社は、在庫処分のために承認された前項の期間の満了後は、許諾製品の販売をしてはならず、前項の期間の満了後にA社が有する許諾製晶の在庫は、 A社の費用で廃棄するものとする。
■紛争解決条項
■紛争解決条項 ●準拠法
●準拠法 海外会社とのライセンス契約においては、準拠法を定めることが望ましい。

実務上は、ライセンサーの本店所在地国の法律を準拠法とすることが多い。
←ライセンスの対象となる知的財産権の効力は、登録されたライセンサー の国の法律で判断されることや、通常ライセンサーのほうが交渉上の立場が強いことが多いことがあげられる。
●紛争解決
●紛争解決 ◆販売提携との比較
@ 仲裁
ライセンス契約に起因する紛争の解決には技術的専門知識を要する場合が多い。
ノウハウに係る紛争処理手続の中で当該ノウハウの秘密性を保つことが求められる。⇒国内事業者間の紛争であっても仲裁を選択するメリットが大きい。

A 裁判
裁判の場合でも、許諾特許等に係る技術分野の専門家を、専門委員(民訴法92条の2) として手続に関与させることが可能である。
営業秘密や秘密保持命令の申立(特許法105 条の4 , 不正競争防止法10 条など) や当事者尋問等の公開停止(特許法105 条の7、不正競争防止法13 条) などの制度を利用することにより、ノウハウの漏洩を相当程度回避できる。

B 紛争解決地については、準拠法と同様の理由で、ライセンサーの本店所在地国とされることが多い。
■チェックリスト
■チェックリスト □対象特許・ノウハウ
□実施権の内容(独占か非独占か、再実施許諾・聖像委託の有無、許諾製品、許諾地域、許諾期間)
□ロイヤルティ(最低ロイヤルティの有無)、支払条件(固定額か、ランニングロイヤルティか、一時金とランニングロイヤルティの併用か)
□ロイヤルティ監査、違約金
□ライセンサーの義務:情報提供、技術援助、最恵待遇など
□ライセンシーの義務:競業品取扱禁止、実施義務、不争義務、秘密保持義務など
□保証責任(許諾特許の有効性の保証、許諾特許等の権利が第三者に侵害された場合の措置、許諾特許等が第三者の権利を侵害していない旨の保証・侵害した場合のとるべき措置)
□改良技術の取扱い(アサインバック、グラントバック)
□開発制限
□当事者の倒産、組織再編等に関する規定
□契約終了後の取扱い(ノウハウの返還、在庫品の取扱いなど)