シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室 【地図】
TEL(06)6363-1860 mail:kawamura@simpral.com 


勉強会(判例時報2019前半)

判例時報の勉強会用の資料です(随時更新)

  ●月
     
     
       
       
  4月
       
       
       
       
       
       
       
       
       
2395
  行政p42
仙台高裁H30.8.29
   
  民事p47
東京高裁H30.5.18  
   
  事案 Xの「梅雨空に「九条守れ」の女性デモ」が秀句に選出⇒公民館のたよりへの掲載拒否 
  請求 XがYに対し、
①本件句会とG1公民館は、本件句会がG1公民館に提出した俳句を同公民館が発行する本件たよりに掲載する合意をしたと主張し、同合意に基づき、本件俳句を本件たよりに掲載することを求める
②G1公民館が、本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことにより掲載しなかったことにより精神的苦痛を受けた⇒国賠法1条1項に基づき、慰謝料の支払いを求めた。
  原審  ①Xの掲載請求につき、本件合意の内容は、法的な訴求力のある権利ないし義務を発生させるものではない⇒これを否定。
  判断 原審①と同様。
慰謝料について、
Xの学習権及び表現の自由に対する侵害を否定。
but
後述解説の考え方

本件俳句を本件たよりに掲載しない取扱いがXの人格的利益を侵害し、違法であると判断し、その慰謝料額は、5000円とするのが相当。
追加請求の、公民館職員によるXの名誉毀損は認められない。
  解説 Xが本件俳句を本件たよりに掲載しない取扱いをした公民館の職員の行為が違法であるとして設置者Yに対し国賠請求をするには、Xがその取扱いによって法律上保護される利益を侵害されたことが必要。 
原判決:Xの俳句が掲載されるとの期待の侵害を認めた。

本判決:
Xの期待の侵害という構成は採用せず、
社会教育法等の趣旨から公民館の目的、役割及び機能を検討して公民館の職員の職務上の公正取扱義務を導き出し、
公民館の職員が、住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき、その思想、信条を理由に他の住民と比較して不公正な取扱いをしたときは、当該住民の人格的利益を侵害するものとして国賠症状違法となると判示。
最高裁H17.7.14:
公立図書館の職員が、閲覧に供されている図書の廃棄について、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは、当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国賠法上違法となる。
  民事p67
大阪高裁H29.12.22
   
  民事p71
大阪高裁H30.3.22
   
  民事p75
大阪高裁H28.8.29  
   
  事案 Xは、平成28年、本件を申し立て、子を常居地国であるフランスに返還するよう求めた。
  争点 ①本件留置に同意又は承諾があったか(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律28条1項3号)
②子が、フランスに返還されると心身に実害を及ぼす重大な危険があるか(方28条1項4号)
③子の異議が認められるか(法28条1項5号) 
  原審 子は
①16歳に達しておらず(27条1号)
②日本国内に所在し(2号)
③常居地国であるフランスの法令によると、Xは子を監護する権利を有し、Yによる本件留置がこの権利を侵奪しており(3号)
④本件留置の開始時点でフランスは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の締結国であった(4号)

子の返還事由がある。 
返還拒否事由について

争点①の本件留置の同意・承諾について:
XはYが子と一緒に日本へ帰省することは容認していたが、想定していた滞在期間は、Yの母の葬儀等に要する期間程度であり、これを超えて子が日本に留まることを容認していたと認めるに足りる資料はない
⇒本件留置には同意も承諾も認められない。

争点②の重大な危険があるか:
①子がXから暴力等を受けるおそれを認めることはできず、XのYに対する暴行が子の面前でされたと認めるに足りる資料もない
②Xの言動が、子に心裡的外傷を与える暴力等に該当するとまではいうことができない
③Yはフランスに入国すると身柄を拘束されるおそれがあるから子を監護することは困難であるが、Xの飲酒の影響により生活が困難であるとかうつ病にり患していると認めるに足りる資料はない
④Xは公的扶助を受けてうたことはあるが、現在は新たな職につくための研修を受けるなど稼働意欲や能力自体は認められる。

監護者としての適否の問題としてはともかく、Xがフランスにおいて子を監護すること自体が困難であると認めることはできない。

子がフランスにおいて心身に害悪を及ぼす重大な危険も認められない。

争点③の子の異議が認められるか(法28条1項5号):
(1)子の年齢(調査時点で11歳11か月)と陳述態度⇒その意見を考慮し得る程度に成熟している。
(2)フランスに返還されることを拒み、日本で生活したいという意見を述べているが、それは、
①両国の生活体験に基づくもので、
②その内容な適切な状況理解に基づく具体的なものであり、
③その意思は強固で率直なもので、Yの影響や働きかけを受け手のものとは認められない

本件では常居所地国であるフランスに返還されることを拒む子の意見を考慮することが適当であり、法28条1項5号の返還拒否事由がある。

裁量にる返還(法28条1項ただし書)も相当でない。
⇒Xの申立てを却下。
  判断 原審と同様で、抗告棄却。 
  解説 子の異議が争点となる事案では、
家裁調査官の調査結果を基に、子の現状認識、常居所地国への帰国に関する子の意見、子がそのような意見を持つに至った理由等を踏まえて、
①子がその意見を考慮に入れることが適当な年齢及び成熟度に達しているか
②子の意見が常居所地国に返還されることに対する異議といえるか
が判断される。 
本件のように、10歳(小学生高学年)以上になるとその意見が考慮される例が多くなる傾向。
子の発達の程度:
家裁調査官の調査における
①子の回答内容や態度、②学校の成績表③その他の資料が考慮要素となる。
子に問われるのは、常居所地国に戻ることについての意見であって、監護者(母)と監護権を侵害された者(父)のどちらと暮らしたいのかという意見ではない。

①常居所地国に返還されることが必ずしも監護者と引き離されることを意味しないということが理解できているか
②監護者やその親族の意向とは区別された自らの意思を自己の体験に基づいて回答できているか
③中長期的な観点から常居所地国に戻った場合と日本に留まった場合とのメリット・デメリットを比較検討した上で戻りたくない理由を具体的に説明できているか
ということが考慮される。

子が返還を拒む理由として監護者との同居を継続できないことへの不安や懸念を抽象的にしか述べていないような場合には、
監護者による監護の継続を希望するにすぎないとして、
常居所地国への返還を拒否する意見表明とは評価されない傾向。
  民事p83
熊本地裁H30.5.23
   
  刑事p97
東京高裁H29.12.21 
   
  刑事p100
①②③
   
3月   
2393、2394   
  高松高裁H30.11.15  
  四国電力伊方原発三号機愛媛訴訟抗告審決定 :
被保全権利の疎明無⇒抗告を棄却
  事案 愛媛県所在の伊方発電所3号機に関して、同県内に居住するXらが、本件3号機を設置、運転する電力会社であるY(四国電力㈱)に対し、
本件3号機には安全性に欠けるところがあり、事故が発生して多量の放射性物質が放出されるとXらの生命、身体、精神及び生活に関する利益等に重大かつ深刻な被害が発生するおそれがある

人格権による妨害予防請求権に基づき、本件3号機の原子炉の運転の差止を命じる仮処分を申し立てた。

原審が被保全権利があるとは認められないと却下⇒即時抗告 
  争点 ①差止請求の要件等
②基準地震動策定の合理性
③耐震設計における重要度分類の合理性
④使用済燃料ピットの安全性
⑤制御棒に関する安全性
⑥地すべり及び液状化に対する安全性
⑦津波に対する安全性
⑧火山の影響に対する安全性
⑨テロリズム対策
⑩重大事故等対策
⑪その他の本件3号機の安全性に関する問題点
⑫避難計画の合理性
⑬保全の必要性
  判断  ●差止請求の要件等 
人格権に基づく妨害予防請求として本件3号機の運転差止めが認められるための危険性の程度について:
最大規模の自然現象の発生頻度(発生確率ないしリスク)が零になることがない⇒このようなリスクを許容するか否か、許容するとしてどの限度まで許容するかは、社会通念を規準として、発電用原子炉の事故発生の危険性が社会的に容認できる水準以下であるか否かを判断。
抗告人:
福島第一原発事故のような過酷事故については絶対に起こさないという意味での「限定的」絶対的安全性又は絶対的安全性に準じて、深刻な被害が万が一にも起こらない程度の極めて高度な安全性と解すべきと主張。
vs.
改正原子炉等規正法が原子炉等の重大事故に対して深層防護に基づく多段階の対策を講じたことを指摘し、合理的な予測を超えた水準での絶対的な安全性又はこれに準じるような安全性を求めることが社会通念となっているとまではいえない⇒採用せず。
原子炉事故発生の危険性の立証責任:
Y:
新規制基準に不合理な点がないこと並びに本件3号機が新規制基準に適合することとした原子力規制委員会の判断に不合理な点がないことないしその調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないことを主張、疎明することができれば、本件3号機がXらの生命等に直接的かつ重大な被害を与える具体的危険性が存在しないといえ
Xら:
Yの前記主張、疎明を妨げる主張、疎明ができた場合には、新規制基準に不合理な点があり、又は、当該発電用原子炉施設が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があることが事実上推定される。
  ●火山の影響に対する安全性 
川内原発運転禁止仮処分抗告審決定:
立地評価に関する火山ガイドの定めは、発電用原子炉施設の安全性を確保するための基準として、その内容が不合理であると説示。

伊方原発運転禁止仮処分抗告審決定が、火山ガイドが考慮すべきと定めた自然災害にはいわゆる破局的噴火も含むとした上で立地評価及び影響評価ともに不相当であると説示し、
同異議決定が、立地評価に関する火山ガイドの定めには不合理な部分があると説示。
本決定:
原子力規制委員会が策定した原子力発電所の火山影響評価ガイド(火山ガイド)の合理性について検討するに当たり、
原子力規制庁が平成30年3月7日にまとめた「原子力発電所の火山影響評価ガイド(火山ガイド)における設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価に関する基本的な考え方について」と題する文書について、原子力規制委員会がこれまで火山ガイドに従って立地評価及び影響評価の審査を行ってきたところと整合する上、現在の我が国の法令等の社会通念にも合致
⇒合理性あり。
火山ガイドについて、「基本的な考え方」を踏まえて解釈適用す以上は合理性がある。
阿蘇について、本件3号機の運用期間中に破局的噴火が生じる可能性が相応の根拠をもって示されているとまではいえない⇒本件3号機が火山の影響に対する安全性の確保の観点から立地不適とは考えられないとした原子力規制委員会の判断は合理性がある。
Yが、伊方発電所において考慮すべき降下火砕物の厚さを評価するに当たり、検討対象火山はいずれも巨大噴火直前の状態ではなく、降下火砕物の厚さを15センチと評価したことも十分に保守的。
  ●避難計画について 
現行法制度の下において、避難計画が合理性ないし実効性を欠くものであるとしても、直ちに原子力事業者による周辺住民等の人格権(生命、身体に係る権利)に対する違法な侵害行為のおそれがあるということはない。
  民事p36
東京高裁H30.9.19  
  地面師詐欺事件で、本人確認情報の提供を行った弁護士の責任を認めた事案。
  事案 地面師詐欺事件で、本人確認情報の提供、不動産売買契約への立会い及び所有権移転登記申請を実行した弁護士の真実の所有者に対する損害賠償責任が認められた事案。 
地面師グループは、弁護士Bに対して、最初は売買契約への立会人になること、その後に不登法23条4項1号の本人確認情報提供制度における資格者代理人となることを依頼。
弁護士Bは、地面師グループが用意した偽造住民基本台帳カード(住基カード)の確認や自称Aへの人定質問等を行い、自称AをA本人と誤信⇒自称AがA本人である旨の本人確認情報を提供。
A本人は、
弁護士Bが不登法23条4項1号の資格者代理人として必要な自称Aに対する本人確認が不十分であたっため、A本人は第三者や買主との仮処分、訴訟などに支払った費用の損害を被った⇒1400万円余りの損害賠償の支払を求めた。
  一審 資格者代理人が本人確認情報を提供する場合において、原則として不登規則72条に規定された方法による本人確認を行えば足りるが、
資格者代理人が知り得た諸事情に照らしなりすまし等を疑うべき事情がある場合には、その他の方法による本人確認をすべき義務がある。 
偽造住基カードは外観から一見明白に不自然な点はなく、なりすまし等を疑うべき事情がなかった⇒弁護士Bに過失があるとはいえない。
  判断 自称Aが買主候補者からの子についての質問に沈黙したという証拠が発見⇒当該事実が弁護士Bの過失を基礎づける事実として追加主張。
控訴審では、自称Aの証人尋問が実施。 
①「弁護士Bは、買主候補者と自称Aとの面談において、買主候補者からのA本人の子についての質問に対して、自称Aが答えられずに沈黙したことから、買主候補者が自称AがA本人とは信用できないとして席を立つという場面に立ち会う経験をした」という事実の証明あり
②この事実は、住基カードによる本人確認をしたとしても、なお、自称AがA本人ではないことを疑うべき事情

住所地訪問、架電、転送不要郵便物の送付などの方法による本人確認をすべき。
それをしなかった弁護士Bには過失がある。
  解説 弁護士Bが本人確認情報提供業務の依頼を受けてから本人確認情報提供業務についての調査を開始。
調査不足のため、売買決済当日まで、本人確認情報提供義務を行った弁護士が登記申請代理人にあんるべきことや、本人確認情報に資格者代理人の資格を証明する弁護士会発行の印鑑登録証明書の添付が必要であるあることを知らなかったことが認定。 
  労働p49
東京地裁H30.8.28  
   
  事案 Yに対し
①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と
②同契約に基づく賃金(解雇後の日である平成28年2月25日から本判決確定の日まで、弁済期である毎月25日限り144万8000円及びこれに対する遅延損害金)の支払を求めた 
  規定 労契法 第6条(労働契約の成立) 
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
  解説  労契法6条は、「 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と規定

使用者における就業規則が労働条件とされる場合があること(労契法7条)を踏まえても、就労時間やそれに対する賃金額及びその支払方法等の具体的な労働条件が労働契約の内容として労働者及び使用者の間で合意されることによって労働契約が成立。
本判決の判断の主幹は、
Yから雇用されることを可決承認されたとXが主張する平成27年11月15日に開催されたYの理事会での出席理事らの議論を中心として、XがYとの間の労働契約締結に至ったとする過程のいずれにおいても、結局のところ、Xの労働条件が何ら具体的に決められていないという点にある。

労働契約が労働条件に関する労働者と使用者の合意で成立するという基本的な考えに根差したもの。
  労働契約は、民法上の雇用契約(民法623条)と同一の概念。
請負契約や有償の委任契約と対比した場合の雇用契約の重要な特色として、
①労働それ自体の提供が契約の目的とされ、仕事の完成や統一的な事務処理が契約の目的となるものではないこと、
②(それ故に)労働を行う者の労働を経営目的に沿って適宜に配置、按配して一定の目的を達成させることは、使用者の権限(労働指揮権)となり、基本的に、労務を提供する側が労働内容を自主性・独立性・裁量性をもって決定するものではないことが挙げられる。 

「労働契約」の該当性判断に当たっても、
契約の形式(契約書の文言等)いかんにかかわらず、これらの特色を有するか否かといった点が受視され、
一般に、労働者に該当するというためには、
①市寄す派の指揮監督下において労務の提供をする者であること、
②労務に対する対償を支払われる者である
という2つの要件を併せて
「使用従属性の要件」と称している。
本判決:
①Xがこれまで顧問としてYの指揮監督下に必ずしも置かれないままに振る舞ってきた状況と、
②そのような状況を前提に、そのようなXとYとの関係性に係る状況が全く変わることがないというP2前理事長の説明の下で、XのYにおける処遇が決められていること
③その他の捕捉的な事情
を踏まえて、Xの労働者性を否定。
  刑事p63
東京高裁H30.3.2  
   
  事案 職務質問を受けていた被告人が、持っていたバッグを約5メートル先にいた知人に渡そうとして投げたが地面に落ちた⇒警察官が拾い上げて承諾なく開披し、覚せい剤を取り出し、写真撮影等をした。
  原判決 有罪 
警察官が被告人を制止し留め置くなどした行為は適法。
but
バッグを開披して内容物を取り出し写真撮影した行為は、所持品検査として許容される程度を超えた捜索⇒違法
but
①バッグに対するプライバシー保護の必要性は相当程度低下
②所持品検査の必要性、緊急性が高かった
③警察官らに令状主義を潜脱する意図があったと認められない

証拠能力を肯定
  判断 ①被告人がバッグを投げたのは、警察官らに取り囲まれて行動の自由が制約される状況において、バッグを警察官らに渡したくなかったから⇒時間的・場所的近接性からしても、プライバシー保護の必要性が低下したとは評価できない。
②警察官らにおいては、薬物事犯ではなく何らかの犯罪に関わる物品等が在中している限度の疑いしかないし、バッグが持ち去られるなどの危険性は高くない⇒所持品検査の必要性、緊急性は高くなかった
③被告人の承諾を得ようともsえず、しかも全ての内容物を取り出し写真撮影までしている⇒令状なしに捜索することが許される場合でないことは容易に判断できた⇒警察官らに令状主義潜脱の意思があった。

違法の程度は重大であるとして、違法収集証拠排除法則を適用し、証拠能力を否定。
  解説  ●所持品検査の許容性と限界 
所持品検査:
最高裁昭和53.6.20以来、
警職法2条1項の職務質問に附随する行為として許容され、捜索に至らない程度であれば、必要性、緊急性、害される個人的法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、相当な範囲で許容される。
  ●違法収集証拠排除法則に関する最高裁判例の流れ 
最高裁昭和53.9.7:
①令状主義の精神を没却するような重大な違法
②証拠として許容とすることが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でない
という要件のもとに証拠能力を否定するとの一般論。
but
具体的事案の解決としては、
所持品検査の違法は重大でない⇒証拠能力を肯定。
その後も、所持品検査は違法としながら、その違法は重大でないとして、証拠能力を肯定する最高裁の死裁判例。

最高裁H21.9.28:
荷物のエックス線検査が違法
but
違法は重大でなく、証拠能力を肯定。
最高裁の裁判例で、違法収集証拠排除法則を提供して証拠能力を否定したもの:
最高裁H25.2.14(逮捕状不呈示)
最高裁H29.3.15(GPS捜査)
  ●最近の違法収集証拠排除法則の適用状況 
職務質問中の留め置き等の違法性を認めながら、その違法の程度は重大でないとして証拠能力を肯定した裁判例と
違法の重大性を認めて証拠能力の否定にまで至った裁判例
がある。
  ●本判決の特徴・位置づけ
所持品検査が適法であるためには、まず「捜索」でないことが必要。
平成20年代以降、裁判所において違法収集証拠排除法則を適用して証拠能力を否定する方向への変化。
2392   
  民事p3
東京高裁H30.7.1  
   
  事案 離婚無効確認訴訟の国際管轄が問題となった事案 
日本で婚姻後米国に移住に米国に帰化(いずれも日本国籍離脱届未了)
米国籍取得後に妻に無断で夫が日本方式の協議離婚届けを提出
夫に遺棄されて日本に帰国したと主張する日本在住の妻が、夫の死亡後に日本の検察官を被告として提起した離婚無効確認訴訟(夫の再婚相手であり日本から米国に帰化した米国在住の女性が被告を補助するため訴訟参加)
  判断 第1審:わが国の国際裁判管轄を否定して訴えを却下

控訴審:わが国の国際裁判管轄を肯定して第1審判決を取り消し、審理を第1審に差戻
⇒上告受理申立てで最高裁に 
  解説 離婚訴訟の国際裁判管轄についての最高裁判決:
日本に国際裁判管轄権を認めるには被告の住所がわが国にあることを原則とすべきであるが、、例外的に原告が被告の住所地国の裁判所に離婚訴訟を提起することについての法律上、事実上の障害の有無・程度や当事者間の公平なども考慮して条理に従い決定するのが相当な場合もあり、相手方配偶者に遺棄された原告の住所がわが国にある場合などには日本に国際裁判管轄を認めるのが相当である。(最高裁昭和39.3.25、H8.6.24等) 
本件のような離婚無効確認訴訟の国際裁判管轄権についての判例はない。
but
離婚訴訟と同様に考えていくべき。
平成31年4月1日から施行される改正人訴法の新3条の2は、人事訴訟が日本の国際裁判管轄に属することとなる場合を明文で定める。

改正人訴法の新3条の2の第7号が定める日本の国際裁判管轄を肯定するための要件のうち
「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき」については、法制審議会の部会では、従前の最高裁判所の判例の趣旨に沿うような解釈が適当という考えで一致。

新3条の2施行後も、原告が遺棄されて日本に住所を有するような場合には、本件ど同様の結論が出されることになろう。
  民事p11
東京高裁H30.9.19  
  地面師詐欺事件で(前件申請の問題点について)司法書士の責任が認められた事案
  事案 いわゆる地面師詐欺事件に伴う事案で、被害者であるX(土地の買主)から、Xが所有権移転登記を委任した司法書士(Y2)に対する損害賠償請求事件
本件前件申請を弁護士Y1の法律事務所を実質的に支配する元弁護士のTに(Tが弁護士Y1の名義で行うことを)依頼し
本件後件申請は飼い主が依頼した司法書士Y2に行わせることにした。
  解説 不動産登記の連件申請:
甲⇒乙⇒丙へと転々売買が行なわれた場合において、
①甲⇒乙の所有権移転登記申請(「本件前件申請」)と
②乙⇒丙の所有権移転登記申請(「本件後件申請」)を
同時に行うこと。 
①が却下されれば、②も自動的に却下される。
  問題点 本件後件申請の代理人が、自らが直接又は委任ていない本件前件申請の添付書類その他の問題点の有無について、自らの委任者である本件申請の申請人(特に権利義務者)に対して、どの程度の注意義務を負うか 
  一審 XのY1に対する請求を全部認容
XのY2に対する請求を全部棄却

Y1に対する判決は確定。
  Y2の責任 ●一審:
本件後件申請の代理人(司法書士Y2)は、本件前件申請の代理人がその職務を明らかに果たしていない等の特段の事情のない限り、本件前件申請の書類の真偽の確認義務を負わない。 
Tが印鑑証明書を真正なものとして最終的にY2に交付⇒Y2に義務違反はないと判断。
●控訴審 
①本件前件申請が無資格者によって行われ申請代理人たる弁護士Y1が全く関与してない⇒弁護士Y1に直接接触すべきであった。
②本件前件申請に添付された印鑑登録証明書の偽造の疑いが解消されたかどうかを確認していない

本件後件申請の代理人(司法書士Y2)には職務遂行上の過失があり、依頼者であるC2社及びXに賠償責任を負う。
  民事p29
東京地裁H28.12.26  
  サッカーの社会人リーグにおける接触・負傷事故で、不法行為が認められた事案。
  事案 サッカーの社会人リーグにおけるプレー中の選手同士と相手チームの代表者の責任が問題となった事案。 
  争点 ①Y1の故意・過失の有無
②違法性阻却の成否
③損害の発生・額
④過失相殺の当否
  判断 ●争点① 
Y1が故意にXの左足を狙って本件行為に及んだとまでは断定できない
but
Y1が膝の辺りの高さまでつま先を振り上げるようにして、足の裏側をXの下腿部の位置する方に突き出しており、そのような行為に及べば、具体的な接触部位や傷害の程度はともかく、ボールを蹴ろうとするXの左足に接触し、Xに何らかの傷害を負わせることは十分に予見できた。
⇒Y1はXとの接触を回避することも十分可能
⇒Y1に過失があった
  ●争点② 
サッカーの試合に出場する者は、選手間の接触による危険を一定程度は引き受けて試合に出場しており、たとえ故意又は過失により相手チームの選手を負傷させる行為をしたとしても、社会的相当性の範囲内の行為として違法性が否定される余地がある。
国際サッカー評議会が制定するサッカー競技規則の内容を紹介し、
Y1の本件行為は主審によりファウル、反則行為と判定されていないこと等
⇒競技規則上想定されていない行為とはいえない。
but
本件行為は危険性の高い行為であり、必要な行為であったかは疑問であり、十歳な傷害が生じた

Yのの本件行為は社会的相当性を超える行為であり、違法性は阻却されない。
  争点③について
保険金の支払による損益相殺を経た後、247万4761円の損害を認め

争点④について、過失相殺を否定。

Y2の指導監督義務違反を否定。

Y1に対する請求を一部認容し、
Y2に対する請求を棄却。 
   解説 プロスポーツ、あるいは社会人等の専門的な技能、経験を有する者のスポーツにおいては、競技に伴う危険を引き受けてスポーツに参加しており、あるいは競技のルールに従って競技が行われている

競技者の負傷事故が生じたとしても、競技者の故意・過失が否定され、行為の社会的相当性が認められるのが通常。 
公的な団体、競技団体の制定に係る競技のルールがある場合には、ルールの内容、趣旨、違反の危険性等は多様なものがある。
このルールに従って競技が行われているときは、ルール上の反則行為に該当しないし、不法行為上も違法にならないだけでなく、
ルールに違反したときであっても、直ちに不法行為上違法になるものではなかろう。
競技のルールについては、個々の規定ごとにその内容、趣旨(競技者の保護を目的とするか等)、違反の危険性等の事情が異なる。

これらの事情を考慮し、ルール違反の内容・程度が著しいかどうか等が検討される必要がある。
  競技ルールの違反の有無、程度は、各スポーツの専門家の意見等を重要な情報として参考に判断することは重要だえり、
法律の専門家の見解を重視するだけでは、適正な判断基準といい難いし、不当にスポーツ参加者を萎縮させるおそれもある。
  民事p35
広島地裁H30.3.30
  卓球部員の転落事故につき、顧問の注意義務違反あり⇒国賠請求肯定
  事案 Y(広島県府中町)が設置する町立D中学校の女子卓球部に所属していたX1が女子卓球部の練習場所であった校舎の廊下の窓から転落

女子卓球部の顧問であったP1教諭には安全措置を講じる注意義務の違反があったなどと主張し、国賠法1条1項に基づき、
選択的に、営造物である校舎の管理に瑕疵があったと主張して、同法2条1項に基づき、
Y1に対し、
X1が1億4639万円余の損害賠償を、
X1の両親であるX2及びX3が各自100万円の損害賠償を、
求めた事案。 
  判断  ●本件事故の態様 
  ●顧問のP1教諭の注意義務違反の有無 
部活動の担当教諭は、教育活動の一環として行われる学校の課外の部活動においては、受け持つ生徒の安全を保護すべき義務を負う。
①・・・・下段の窓を開けた状態で下段の窓枠に上がった場合には足を滑らせたりバランスを崩して本件廊下の外側に転落する危険性が高い
②顧問P1でさえ、日常的に、本件廊下の上段の窓を開ける際は、開いた状態の下段の窓枠に上って上段の窓枠を開けていた
③P1教諭が本件事故当日に女子卓球部員に対し本件廊下の上段の窓を開けるよう指示した

P1教諭は、女子卓球部員が下段のン窓を開けた状態で下段の窓枠に上がる可能性が高いこと、ひいては、女子卓球部員が下段の窓枠に上がった際にバランスを崩して本件廊下の外側に転落する危険性が高いことを具体的に予見することができた

P1教諭には、女子卓球部員に本件廊下の上段の窓を開ける指示をする際には、下段の窓を閉めた上で窓枠に上がるよう指導したり、脚立等の高所作業用の道具を使用するなど、転落を防止する措置を採った上で作業をするように指示すべき義務があるにもかかわらず、これを怠った注意義務違反がある。
  ●過失相殺 
①X1は、P1教諭が普段から行っている行動を参考にして下段の窓枠に上がったと考えられるところ、本件事故発生当時、中学2年であり、危険を回避するための判断能力を十分に有していたとはいえない
②X1が体勢を崩さないための動作をしなかったと認めることはできない

本件事故について過失相殺をするのは相当でない。 
  知財p50
東京地裁H30.3.1  
  特許法102条2項の推定覆滅についての判断
  事案 発明の名称を「ブルニアンリンク作成デバイスおよびキット」とする2件の特許権(X特許権1,2)を有していたXが、
①Y製品を輸入してY1に販売するY2に対し、X特許権1,2の侵害を理由として(選択的併合)、損害賠償金1億5545万7627円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、
②Y製品を販売するY1に対し、X特許権1,2の侵害を理由として(選択的併合)、損害賠償金3億3443万3199円及び遅延損害金の支払を求めた事案。 
  規定 特許法 第一〇二条(損害の額の推定等)

特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

2特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。

3特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

4前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
  解説・判断  2項は、侵害者が侵害の行為により利益を受けているときに、その利益の額を特許権者等の損害の額と推定する旨規定するところ、
特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、2項の適用が認められると解すべきであり、
特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在するなどの諸事情は、推定された損害額を覆滅する事情として考慮され(知財高裁H25.2.1)、いわゆる寄与率として控除(推定の一部覆滅)されることとなる。 
覆滅の有無及び割合を認定するに当たっての考慮要素としては、
①侵害品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合、
②営業的要因(市場における代替品の存在、侵害者の営業努力、広告、独自の販売形態、ブランド等)、
③侵害品自体の特徴(侵害品の性能、デザイン、需要者の購買に結び付く当該特許発明以外の特徴等)等
が挙げられることが多い。
本判決:
①侵害品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合(実施割合)に基づく推定覆滅率を25%、
②その他の考慮要素(一般的要素)に基づく推定覆滅率を25%とし、
合計50%の推定覆滅を認めた。
2項の推定覆滅を巡っては、推定覆滅率の算定過程が検証し難く、いかなる事由があればどの程度の推定覆滅が認められるかを予測することが困難であるといわれることがある。
but
推定覆滅の考慮要素の一部には当該要素自体が数値化できるものもあり、少なくともそうしたこうっ要素に係る覆滅の定量化過程を客観化することができれば、当事者から見た紛争処理の予想可能性は高まる。
本判決:
推定覆滅事由を
①実施割合と②それ以外の一般的要素に分け、

①の実施割合について、
対象製品の同梱品の価値がパッケージ全体の価値に占める割合を数値として認定した上で、当該割合に従って特許発明の実施部分の割合を算出することで推定覆滅率を算出、

②それ以外の一般的要素については、
侵害者のブランド力、広告宣伝活動、独自の販売及び取引先等を認定した上で、これらの諸事情を総合して推定覆滅率を算定するという手法によって推定覆滅率を求めている。

比較的、定量化過程の客観化になじみやすいと考えられる考慮要素(①の実施割合)に係る推定覆滅率をそれ以外の考慮要素(②の一般的要素)とは独立に算定することで、推定覆滅率を定量化する過程の一部を客観化しようとした試み。
  特許権者の実施品の競合品が被告製品以外にも市場に多数存在
⇒被告製品の売上がなかったとしても、それが直ちに当該実施品の売上の増加につながらない(すなわち、被告製品以外の競合品に需要が流れる可能性がある)
⇒当該実施品及び侵害品を除く競合品の市場占有率(シェア)が相当程度高いという事情は、推定覆滅事由の1つに当たる。
本判決では、被告ら以外にも相当数の事業者が競合品の販売等に算入したと認定されているが、推定覆滅事由として同事情を考慮すべきでないと説示。

被告らの自認に基づき、市場に存在する被告製品以外の競合品が全てX特許権2の侵害品である認定されたため。
  知財p71
大阪地裁H29.3.16  
  不正競争防止法(平成27年改正前)2条1項13号の不正競争(品質誤認表示)における「品質、内容・・・について誤認させるような表示」
  事案 X:地域ブランド品の研究開発、アンテナショップの運営等の事業を行う特定非営利活動法人
Y:組合員の事業の用に供する販売店等の共同施設の設置及び維持管理に関する調査研究等の事業を行う組合で、Y商品に「工楽松右衛門」等のY各表示を表示して、店舗における展示、販売などを行っている。
Xが、Yに対して、Yの行為は、平成27年改正前の不正競争防止法2条1項13号に該当するとして、Y各表示の表示行為、Y商品の販売等の差止め、不法行為に基づく損害賠償等を求めた。
  規定 不正競争防止法 第二条(定義)
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

十四 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為
  解説 不正競争法は、商品の「品質、内容・・・について誤認させるような表示」をする行為を不正競争を定義し、差止や損害賠償の対象としている(3条1項、4条)。 
  争点 Y各表示に含まれる「松右衛門帆」ないし「松右衛門」が行楽松右衛門が創製した帆布の品質ないし内容を示す普通名詞として一般に広く通用しているか? 
  判断 本件で問題となっている商品である帆布の種類等、「松右衛門帆」「松右衛門」に関する文献等に基づいて認定した事実を示した。
不正競争法2条1項14号におけるある表示が商品の『品質、内容・・・について誤認させるような表示』といえるためには、当該表示が商品の品質や内容を示す表示であると一般に認識されることが必要。
他方、本件において、Y各表示は、Y商品に用いられている帆布の種類や内容を示すものであることを明示して使用されているわけではない。
結論として、需要者の認識を踏まえれば、「工楽松右衛門」等のY各表示に接した需要者が、それがY商品の品質や内容を示す表示であると認識することは認められない⇒それらが商品の「品質、内容・・・について誤認させるような表示」に当たるとはいえない。
「松右衛門」との表示は、一種のブランドとして認識されることも十分あり得るが、その場合に、その古風な人物名から伝統ある高品質なイメージを生じさせ得るとしても、それは、出所表示に由来する抽象的なブランドイメージにすぎず、そのことをもって、Y商品が一定の内容を有する特殊な帆布で作られたとの認識や、Y商品が工楽右衛門なる人物によって考案ないし製造された帆布で作られたとの認識を需要者に一般的に生じさせるということはできない⇒Y各表示が、商品の「内容」についての表示であるということもできない。
  解説 不正競争法2条1項14号は、商品の「品質、内容・・・について誤認させるような表示」をする行為を不正競争と位置づける。 
「品質」を誤認させるような表示であると判断された過去の裁判例:
品質の担保が公的機関の認定等に関わるものであったり、
品質の担保に関わる数値が問題とされたものが多い。
ex.
①酒税法上「みりん」とは認められない液体調味料に「本みりん」であるかのように表示
②国や公的機関等による認定・保証があるかのように表示
③ろうそくの燃焼等に発生する煤の量等に関する誤認表示

使用された表示そのものが、商品の品質や内容を示す機能を果たすことについて、争われてはいない。
本件では、使用された表示そのものが、商品の特定の品質や内容を示す機能を果たすのかどうかが問題。
本判決の考え方:
ある表示が、需要者の間において、商品の品質や内容を示す表示であると一般に認識されるに至れば、不正競争法の規律が適用される。

ある表示について、ある商品の需要者以外の者が特定の商品の品質やない世を示す表示と認識していたとしても(ex.船舶関係の学術書の執筆者や読者)、それを異なる品質を備えた商品に使用することは、必ずしも不正競争法の規律に抵触しない。
but
種類や内容を示すものであることを明示して使用した場合は、別論。
  刑事p78
東京高裁H29.7.18
H29.12.20  
  刑の一部執行猶予についての判断
  ■    ■①事件 
    覚せい剤の自己使用と単純所持の事案。
被告人は、累犯関係にある前科3犯を有し、最終刑の執行終了後わずか8か月足らずで本件各犯行。
  原審 刑の一部執行猶予の可否について何ら説示することなく、被告人を懲役2年4月の全部実刑に。 
  判断 被告人を懲役2年4月に処した原判決の量刑自体が重すぎて不当であるとはいえない
but
①被告人が、うつ病と診断され、障害等級1級の認定を受けており、統合失調症との診断も受けている
②本件覚せい剤の使用についえtも精神症状の影響がうかがわれる

①被告人の覚せい剤への依存を改善し、再犯を防止するためには、その生活全般について必要な支援を受けさせて、生活と精神症状を安定させる必要がある。
②刑事施設に引き続き、社会内において、更生保護機関の支援と監督を受けながら、覚せい剤への依存を改善するための処遇を行うことが必要不可欠であると認められる。

刑の一部の執行を猶予することが相当であって、原判決の量刑は、刑の一部の執行を猶予しなかった点で裁量を誤った⇒量刑不当で原判決を破棄。 
  ■    ■②事件 
    覚せい剤の自己使用と共同所持の事案。
覚せい剤取締法違反等の罪て執行猶予付きの有罪判決を受けてから約2か月で本件各犯行。
  原審 ①被告人の姉の監護能力は十分なものといえない
②他に被告人の監護者として適切な者も見当たらない
③被告人のこれまでの生活状況等

被告人に対して実効性のある社会内処遇が適切に実施できるといえるのか疑問⇒
刑の一部執行猶予を付することなく、懲役1年4月の全部実刑 
  判断 懲役1年4月に処したのは相当
but
①被告人の姉の監督能力が低いとはいえず、一定程度期待することができる
②今後の被告人の生活状況に関して特に更生を妨げるような事情は認められない
③被告人の更生意欲が乏しいともいえない
④被告人の日本語能力を前提にしても実施できる範囲で教育課程を実施することは可能と考えられ、簡易薬物検出検査と併せ同プログラムを受ける機会を与えることが、被告人の再犯防止に必要かつ相当

刑の一部執行猶予の必要性及び相当性の評価を誤った原判決は破棄を免れない。
  解説  刑の一部執行猶予の制度:
「実刑の特別予防の観点からのヴァリエーション」であり、
その適用の可否は、
懲役または禁錮3年以下の実刑相当性を前提に、
再犯防止のための必要性・相当性の要件について、
①再犯のおそれ、
②社会内処遇の有用性、
③社会内処遇の実効性
という3つのステップによって判断。
薬物法による刑の一部執行猶予は、保護観察を付すことが必要的(薬物法4条1項)。

刑法による刑の一部執行猶予は、保護観察は任意的(刑法27条の3第1項)が、一部執行猶予の判断の第2ステップにおいて想定した処遇の多くが保護観察を実施することを前提とするものと考えられる⇒保護観察を付することとなることが多い。
but
①重度の精神障碍者又は重度の知的障害者
②日本語を理解できない者などは、
保護観察の実効性という観点から、保護観察所における専門的処遇プログラムから除外されている。
  刑事p83
大阪高裁H30.10.4  
  スマホながら運転による前方不注視⇒類型的に犯情が重い
  判断 ①一般的に見て、スマホながら運転は、スマートフォンの小さい画面における手指による細密な動作に意識を集中する必要がある(車載のカーナビゲーションや、旧来の携帯電話機のボタン操作と異なり、手探りや指の感覚で操作目的と達成することが難しく、画面の視認が不可欠となる特徴があり、意識を相当程度集中する必要がある)
②運転者が自らの意思でスマホながら運転がながら運転を積極的に選択した行為が招いた事態⇒その意識決定に対する非難の程度も相当に高い。 
  解説 高速道路上でスマートフォンのアプリを閲覧・操作するなどして前方注意を怠り、交通事故を起こして人を死傷させた⇒検察官の求刑を超える刑期の実刑に処した原判決を維持。 
①スマホながら運転による前方不注視は、著しく危険であって過失運転致死傷罪の中でも類型的に犯情が悪い部類に属する
②運転者が自らの意思で積極的に選択した行為が招いた事態⇒その意思決定に対する非難の程度も相当高い
と判断。
  刑事p91
横浜地裁H28.12.12  
  虚偽内容の供述調書により捜索差押許可状取得⇒違法収集証拠排除により無罪
  争点 ①違法収集証拠による証拠の排除の可否
②被告人の大麻の所持の認識の有無 
  規定 憲法 第35条〔住居侵入・捜索・押収に対する保障〕
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
②捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
刑訴法 第218条〔令状による差押え・捜索・記録命令付捜索・検証・身体検査、通信回線接続記録の複写等〕
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
  判断  捜索差押許可状の発付に当たって、参考人の虚偽の供述調書が疎明資料
参考人の了解を得て、虚偽の供述内容を付け加えて書面にした。
①他人の刑事事件に関する証拠を偽造した罪(刑法104条)に当たりうるもの。
警察官は、地方公務員法違反罪のほか、虚偽調書を作成して裁判官に捜索差押許可状を請求して使用したという証拠隠滅罪(刑法104条)により、略式起訴され、罰金50万円の略式命令で確定。
②警察官は、捜索差押許可状の発付の可否の審査という刑事司法作用を誤らせる意図で虚偽調書を主導的に作成した上、捜索差押許可状請求の疎明資料として提出資料として提出して使用し、公判においても、虚偽調書の作成や使用の事実を隠して捜索押収手続には問題がないような証言⇒令状主義を潜脱する強い意図

違法行為に至った経緯や態様、違法の重大性、令状主義を潜脱する意図の強さも考慮すると、捜索押収手続の違法性の程度は、憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法
⇒捜索押収手続によって得られた証拠を、刑訴法317条の事実認定に供する「証拠」として許容することは将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でない。
違法収集証拠として排除すべき証拠の範囲:
捜索押収手続によって発見、押収された大麻のみならず、
大麻等の捜索差押調書抄本、鑑定嘱託書謄本、鑑定書、大麻の所持に基づく現行犯人逮捕手続書抄本、捜索差押許可状を執行している状況を写真撮影し又はその写しを作成した捜査報告書、大麻予試験実験結果報告書抄本などの取調べ済みの各証拠も、
捜索押収手続及び捜索押収手続によって発見、押収された大麻と一体性を有する証拠として、
弁護人の同意や異議の有無にかかわらず、職権で、
本件公訴事実を認定するための証拠から排除。
  解説  他人の刑事事件に関し、被疑者以外の者が捜査機関から参考人として取調べを受けた際、虚偽の供述⇒刑法104条の罪に当たるものではない。
but
他人の刑事事件について警察官と相談しながら虚偽の供述内容を創作するなどして供述調書を作成した場合には証拠偽造罪に当たる(最高裁H28.3.31)。
  排除される証拠の範囲:
最高裁H15.2.14:
「密接な関連を有する証拠」

本判決:
より簡潔に、「一体性 を有する証拠」も排除するのが相当。
弁護人が、審理の当初、本件の大麻や関係する書証について、証拠意見として、
「異議なし」「同意」の意見。

本判決:
上記の証拠意見は、重要な部分の錯誤に基づくものであり、しかも、弁護人に帰責事由は見当たらない⇒これを無効とするのが相当。
福岡高裁H7.8.30:
原審において、被告人が、差押調書及び鑑定書の取調べに同意し、覚せい剤の取調べに異議なしの意見を述べていることについては、
①その前提となる捜索差押えに、当事者が放棄することを許さない憲法上の権利の侵害を伴う、前叙の重大な違法が存在
②このような場合に右同意等によって右各証拠を証拠として許容することは、手続の基本的公正に反する

右同意書がっても右各証拠が証拠能力を取得することはない。
  最高裁H30.10.17   分限裁判を考える
    本件ツイートの内容が、通常人の読み方を基準とすれば、被申立人において飼い主が訴えを提起したことにつき不当であると考えていることを示す評価とすることも相当である。
   
2月   
2991   
  行政p5
最高裁H30.10.17  
   
  事案 O裁判官についての裁判官分限事件に関する決定 
  規定 裁判官分限法 第三条(裁判権)

②最高裁判所は、左の事件について裁判権を有する。
一 第一審且つ終審として、最高裁判所及び各高等裁判所の裁判官に係る分限事件
裁判官分限法 第四条(合議体)

分限事件は、高等裁判所においては、五人の裁判官の合議体で、最高裁判所においては、大法廷で、これを取り扱う。
裁判所法 第四九条(懲戒)

裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは、別に法律で定めるところにより裁判によつて懲戒される。
裁判官弾劾法 第二条(弾劾による罷免の事由)

弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
一 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
二 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。
    ●「品位を辱める行状」(裁判所法49条)の意義
裁判は、これを担当する裁判官の責任の下に、その独立の判断をもって行われるもの⇒裁判がこれを受ける者の心服を得るためには、裁判官の地位にある者が、職務の内外を問わず、人格的に、国民から尊敬と信頼の念を集めるにふさわしい品位を保たなければならないことは当然。

同条は、裁判官ががこのような高度の品位保持義務を負っていることを前提として、裁判官の品位保持を図るとともに、その自省自粛を促す目的で「品位を辱める行状があったとき」を懲戒事由の1つに定めたもの。
「品位を辱める行状」
その本来の語感より広く解されており、国民の裁判官あるいは裁判所に対する信頼を揺るがす性質の行為がかなり広くこれに包摂されるものと解される旨の指摘もある。

具体的にいかなる行為がこれに当たるかは、世人の裁判官に対する信頼、ひいては裁判制度そのjものに対する信頼の念を危うくするかどうかにより決すべきであると解されている。
裁判官弾劾法2条:
「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。」
「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。」
同号の弾劾事由から「著しく」を除いた「職務の内外を問わず、裁判官としての威信を失うべき非行」が裁判所法49条所定の「品位を辱める行状」に該当する。
裁判権の行使を委ねられた裁判官は、単に事実認定や法律判断に関する高度な素養だけでなく、人格的にも、一般国民の尊敬と信頼を集めるに足りる品位を兼備しなければならない。
かかる人格的品位を有する裁判官の裁断にして、はじめて一般国民の裁判に対する心服を勝取ることができる⇒裁判官という地位には、もともと裁判官に望まれる品位を辱める行為をしてはならないという倫理規範が内在。
この内在的規範に対する違反が外部的行為として現れたとき、「裁判官の非行」と観念される。

裁判官については、その職務の性質上、一般公務員よりも更に高い品位が要求されると考えられる⇒一般公務員に関してはまだ「非行」とはいえない軽微な事由であっても、裁判官に関しては「非行」と評価されるケースがあり得る。
本決定:
裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」の意義について、
職務上の行為であると、純然たる私的行為であるとを問わず、
およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいう旨を判示。 
①裁判官に対する国民の信頼を損ねる言動と、
②裁判の公正を疑わせるような言動は、
多くの場合一致する。
but
事実認定及び法令の解釈適用を中心とする裁判についての公正を疑わせるには至らないものの、裁判官に対する国民の信頼を損ねるといえる行為は観念し得るところで、
これも「品位を辱める行状」に当たる

両者が一致しない場合もある。 
●「品位を辱める行状」該当性 
本決定:
裁判官が本件ツイートによって訴訟関係者の感情を傷つけた行為が、裁判官に対する国民の信頼を損ねるとともに、裁判の公正を疑わせるような言動に当たるとして、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に当たるとされている。 
本決定は、当該当事者が実際に東京高等裁判所に苦情を述べており、本件ツイートが当該当事者の感情を傷つけたという事実に言及しているが、客観的にみて訴訟関係者の感情を不当に傷付け得る行為であれば、苦情の有無や実際に感情を傷付けた事実の有無にかかわらず、「品位を辱める行状」に該当し得ることとなる。
●表現の自由との関係 
本決定:
表現の自由が裁判官にも及ぶことは当然であると説示した上で、
本件における被申立人の行為は表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱したものである旨を簡潔に説示。
本件ツイートが、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準とすれば、民事訴訟における被告の主張や報道記事を要約するにとどまらず、当該訴訟の提起が不当だえると被申立人自身が考えていることを伝えるものと受け止めざるを得ないものであるとしている。

裁判官が一市民として表現の自由を有することを踏まえても、被申立人の行為が懲戒事由に該当すると認められることは明らかと考えられることによるものと思われる。
  行政p10
最高裁H30.7.17  
  固定資産課税台帳に登録された土地の価格と当該土地に接する街路の性質についての市長の判定の意味
  事案 京都市所在の四筆の土地につき、これに接する街路が建基法42条1項3号所定の道路に該当することを前提として決定された平成21年度の価格の適否が争われた事案。 
建基法43条1項本文は、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないとする接道義務を定めており、同法42条が道路の定義を定めているところ、
本件街路が3号道路に該当するためには、
本件街路が所在する区域について同法第3章の規定が適用されるに至った昭和25年11月23日時点で、本件街路が幅員4m以上の道として存在したことが必要。
京都市では、ある道が建基法上の道路に該当するか否かについて判定の依頼があったときは、これを調査した上で、市長が判定をする扱い。
京都市長は、平成18年11月8日、本件街路が3号道路に該当する旨の判定。
主張 Y(京都市):
本件街路が3号道路の要件を客観的に満たしている。
本件道路判定は行政処分に当たり、これについて取消訴訟を提起せずにその適否を争うことはできない。 
  判断 道路判定は行政処分に当たらない。 
建築確認に際し、建築主事等が道路判定と異なる判断をすることは妨げられず、本件街路が3号道路となる要件を客観的に満たさない場合には、本件道路判定がされていても、建築主事等は、本件各土地が3号道路に接していることを前提とした建築確認をすることはできない。
⇒原判決を破棄し、本件を原審に差し戻し。
  解説 ●評価基準における街路の42条道路該当性の位置付け
評価基準の定める市街地宅地評価法においては、土地の接する街路が42条道路に該当するかどうかなどについて考慮すべきものとする明示的な定めはない。
but
①接道義務を満たさない土地については、原則として同土地上に建築物を建築することにつき建築確認を受けることができず、これを受けるためには、接道義務を満たすような措置を講じたり、特定行政庁の許可を受けたりする必要。
②このような利用上の制約があることが、当該土地の減価要因とすることは明らか。
本判決:
①評価基準が、市街地宅地評価法にいて、その他の街路の路線価を付設するに当たり「街路の状況」等について総合的に考慮すべきものとしている
②画地計算法として無道路地等に関する評点算出法を定めている

評価基準が土地の価額の算出に当たり当該土地が42条道路に接しているかどうかなどについて考慮すべきものとしている。
  ●道路判定の処分性 
道路判定が行政処分⇒道路判定が取り消され、あるいはこれが当然に無効でない限り、その効果を争うことができず、また、固定資産評価や建築確認に際しては、道路判定の判断内容を前提としてこれを行うべきこととなる。
but
①建基法42条1項3号は、同号所定の要件を満たす道について、同号の規定により直接に同法上の道路とする趣旨であって、ほかに特定行政庁の指定処分等何らの手続を要しない
②道路判定は、同号所定の要件を満たす道について新たに同法上の道路とする効果を有するものではない⇒これによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を画定するものとはいえない
③建基法やその関連法令等に3号道路の「判定」について定めた規定はなく、市町村長等がその判定をする権限を有するとの法令上の根拠もない

道路判定は行政処分に当たらない
  民事p14
東京高裁H30.8.23  
  米国法人のグーグル検索サービスでの検索結果削除請求(否定)
  事案 X:インターネット上における広告業務及び広告代理業務等を目的とする株式会社
Y:インターネットで検索サイト(グーグル)を管理、運営する米国法人 
  主張 ①Yが管理運営する日本向けグーグル検索サービスにおいて、検索すると本件検索結果が表示される。
②本件検索結果は、XないしXの代表取締役がXの事業として詐欺商材を販売し、詐欺行為をしているの事実を摘示している
③②の事実摘示は、Xの社会的評価を低下させるものであり、名誉毀損が成立する。

Xが、人格権に基づき、日本向けグーグル検索サービスにおける本件検索結果の削除を求めた。
  原審 本件検索結果は、Xの社会的評価を低下させるもの。
but
その表現行為は、公益を図る目的のものであり、
これらの摘示事実が真実でないと認めることができない

Xの請求を棄却。 
  判断 ①本件検索結果で摘示された事実が真実でないことが明らかであると認めることはできない
②Xの「詐欺」、Xの代表者の「詐欺師」は反事実であり、これが表示されたままでは回復困難な損害が生じる「おそれ」がある旨のXの主張は採用することができない。
と付加訂正するほか、原判決の理由を引用し、Xの請求を棄却すべきものとした。 
  解説 名誉毀損行為に対する差止請求権の有無及びその根拠については、実定法上明文の規定がなく、すべて民法の解釈に委ねられている。 
人格権としての名誉権に基づく出版物等の事前差止めは、
①その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的でないことが明白であって、かつ、
②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り、
例外的に許される。
  最高裁H14.9.24(「石に泳ぐ魚」事件):
①侵害行為によって受ける被害者側の不利益と
②侵害者側の不利益とを
比較衡量して決すべき。

侵害行為が明らかに予想され、
その侵害行為によって被害者が重大な損害を受けるおそれがあり、かつ、
その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときに、侵害行為の差止めが許される。
  民事p22
さいたま地裁越谷支部H30.3.7  
  強制執行が目的達成せずに終了した場合の執行費用の負担
  事案 債権者Xの申立てにより債務者Y1及び債務者Y2の占有する建物の明渡しの強制執行が開始され、執行官が明渡しの催告⇒Y1及びY2において本件建物を明け渡した⇒Xが前記明渡しの強制執行を取り下げた

Xが、民執法20条の準用する民訴法73条1項の規定に基づき、前記明渡しの強制執行の執行費用をY1及びY2の負担とすることを申し立てた。 
  規定 民執法 第20条(民事訴訟法の準用)
特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。
民訴法 第73条(訴訟が裁判及び和解によらないで完結した場合等の取扱い)
訴訟が裁判及び和解によらないで完結したときは、申立てにより、第一審裁判所は決定で訴訟費用の負担を命じ、その裁判所の裁判所書記官はその決定が執行力を生じた後にその負担の額を定めなければならない。補助参加の申出の取下げ又は補助参加についての異議の取下げがあった場合も、同様とする。
2 第六十一条から第六十六条まで及び第七十一条第七項の規定は前項の申立てについての決定について、同条第二項及び第三項の規定は前項の申立てに関する裁判所書記官の処分について、同条第四項から第七項までの規定はその処分に対する異議の申立てについて準用する。
民訴法 第62条(不必要な行為があった場合等の負担)
裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。
  解説  強制執行がその目的を達成せずに終了した場合の執行費用の負担について
最高裁H29.7.29:
債権者が、確定判決の正本に基づき、賃料相当損害金を請求債権として債務者の有する不動産の共有持分に対する強制競売手続を申し立て、同手続が開始されたところ、債務者が民法494条に基づき同請求債権に係る弁済金を供託した上で、当該供託により同請求債権が消滅したとして提起した請求異議の訴えについて、これを認容する判決が確定し、当該確定判決の正本が執行裁判所に提出されたため、前記強制競売手続が取り消された事案:
「既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担は、執行裁判所が、民事執行法20条において準用する民訴法73条の規定に基づいて定めるべきものと解するのが相当」 
請求異議の訴えにかかる請求が認容された理由が、強制競売の開始決定後に債務者が弁済供託をしたことにより同強制競売に係る請求債権が消滅したというものという事情の下では、
民執法20条において準用する民訴法73条1項の裁判の申立てを受けた執行裁判所は、上記強制競売が終了するに至った事情を考慮して、同条2項において準用する同法62条の規定に基づき、同強制競売の執行費用を抗告人の負担とする旨の裁判をすることができる。
  判断  ①本件明渡執行事件はXの取下げにより終了したものであるが、それは、本件明渡執行の手続において、執行官が、本件建物を専有していたY1及びY2に対して、明渡しの催告(民執法168条の2第1項)を行ったのを受け、同人らが本件建物を明け渡したという事情によるもの。
②このような場合、Xによる本件明渡執行事件の申立ては、民訴法73条の準用する同法62条の「行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸長・・・に必要であった行為」に当たるものと考えることができる。

民執法20条、民訴法73条2項、同法62条により、本件明渡執行に係る執行費用の負担をY1及びY2に負担させた。
  民事p23
金沢地裁H30.11.8  
  貸金業者が本人に対し直接普通為替証書を送付することが弁護士の業務妨害とされた事案
  事案 過払金返還請求訴訟での一部認容判決⇒Xの預り金口座に振り込むよう求める⇒Yは2度にわたりAに普通為替証書を送付⇒Yの行為はXに対する不法行為を構成すると主張し、損害賠償請求。 
  原審 ①一般に、債務者は代理人弁護士による弁済先の指定に法的に拘束されず、債務者が債権者本人に弁済しても有効であり、不法行為上当然に違法にはならない
②過払金返還は寝k津は弁済方法について定めず、弁済方法の合意も成立していない⇒Yは前記指定に法的に拘束されない反面において、Xには指定につき権利・法律上保護される利益を有するとはいえず、各弁済は有効
③Yは債権者本人に直接過払金を返還しても違法行為にはならない旨をXに回答した上で第2送金を行っており信義則にも反しない
⇒Xの請求を棄却 
  上告審 貸金業者は、債務整理を受任した弁護士が債務者から依頼を受けて預り金口座を過払金の返還先として指定した場合には、依頼者との委任関係が疑われるなどの特段の事情のない限り、信義則上、これに応ずべき義務を負うところ、同義務に違反して指定された口座への入金を拒絶したときは、債務整理業務を妨害するものとして違法性を有し、不法行為を構成する。
  判断 Xの附帯控訴に基づき原判決を変更し、Yに損害3万円と遅延損害金の支払を命じた。 
・・・・
Xは事前の申し入れにもかかわらずYが第一送金をしたため、異議を申し入れる趣旨の通知書を内容証明郵便で差し出したが、この作成発送手数料(3万円)と郵送料・印刷代(1862円)及び弁護士費用(3000円)は相当因果関係のある損害と認められ、内金請求の限度である3万円の請求は全部理由がある。

慰謝料は、特段の事情がない限り、財産損害が賠償されれば精神的損害も回復したとみるのが相当⇒認められない。
  解説 原々審判決は、精神的損害の主張しかされていない⇒慰謝料5000円を損害と認めている。 
損害の認定について
①熊本地裁人吉支部H22.4.27:
貸金業者があえて弁護士の指示に従わず、顧客の預金口座に過払金を振り込んだ場合において、同振込みに不安を感じた顧客と弁護士の間で一連のやりとりがされるなど、余計な労力と時間が費やされたことに係る精神的損害が発生
⇒慰謝料を損害として肯定。

②宮崎簡裁H24.11.28:
貸金業者に対し過払金を弁護士の口座に振り込むよう求めているのに本人の口座に振り込まれた場合に、本人には不安を覚えたことにつき慰謝料を認め、弁護士には、業務上看過できない一定程度の負担を負ったことの損害(無形損害)を認めた
~何を損害として構成するかという問題。
  民事p36
福島地裁会津若松支部H30.3.26  
  発電用ダムを管理する電力会社の義務違反(肯定)と損害との因果関係(否定)
  事案 只見川に設置された複数の発電用ダムを管理する電力会社であるYらに対し、
Yらの過失により平成23年7月新潟・福島豪雨における只見川の洪水位が更に上昇する結果を招き、そのためXらの洪水被害が拡大⇒不法行為に基づく損害賠償を求めた。 
  争点 Y1(東北電力株式会社)については、発電用の利水ダムの設置者として、ダム調整池(いわゆるダム湖)の河床に堆積した堆砂を 浚渫すること等により流域に洪水被害を生じさせないようにすべき注意義務を負っていたか
河床の堆砂が進行して水深が浅くなると、洪水の際に洪水位がせき上げられるバックウォーターと呼ばれる現象。
仮にY1が浚渫義務を負うとした場合に、その違反によってXらの被害が増大したといえるかどうかという相当因果関係の存否及び程度。
Y2(資源開発株式会社)については、上流で係留されていた浚渫用の作業船を過失により流出させ、その一部が下流ダムの洪水吐(放流用ゲート)を閉塞⇒当該ダムの調整池の推移が上昇⇒Xらの被害拡大の事実
  判断   Y1について、利水ダムの設置者は堆砂を浚渫すること等により流域に洪水被害を生じさせないようにすべき注意義務を負うとした上で、Y1の浚渫義務違反を肯定。
but
Xらの被害の拡大との間に相当因果関係を認めるには至らない
⇒請求を棄却。
Y2については、流失した作業船が下流のダムの洪水吐を閉塞した事実を認めるに足りる証拠はない⇒請求を棄却。
  Xらは、Y1の浚渫義務の具体的な内容として、
①ダム建設当時の河床高まで浚渫する義務
②昭和44年当時の河床高まで浚渫する義務
を主張。 
自然河川においては、ダムが建設されなくとも浸食と堆積が繰り返され、時間の経過とともに河床の形状が変わっていくこと等⇒ダム建設当時の河床高を維持することを前提とする前記①の義務は認められない。
①只見川の河川整備計画等における計画だか水流量は50年に1回の規模の洪水を想定して策定
②この水準の流量を安全に流下しないのであれば、洪水被害のおそれが認められる
③昭和44年に只見川で発生した洪水の流量は、前記計画高水流量を概ね下回るものであったにもかかわらず、多くの洪水被害が生じた⇒昭和44年当時の河床高のままでは更なる洪水被害のおそれを否定し得ない

Y1は、少なくとも昭和44年以降の堆砂の進行を食い止めるべく、前記②の義務を負っていた。
  but
証拠上、Y1が昭和44年当時の河床高まで浚渫していればXらの主張する被害場所における物理的な浸水被害を回避し、又は軽減することができたと認めるには至らない。 
  刑事p56
東京高裁H30.2.22  
  てんかんの発作により意識障害で自動車事故⇒危険運転致死傷罪の故意を認めた事案
  事案 てんかん発作⇒意識障害の状態に陥り、自車を急発進させて歩行者5人に衝突し死傷させた⇒危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律3条2項)の故意を認めた 
  解説  ●てんかんの発作 
てんかんは脳の慢性疾患であり、脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的興奮(過剰な発射)による発作を繰り返す。

①原因不明とされる突発性てんかん
②脳外傷や髄膜炎等により脳が傷害を受けたことによる症候性てんかん

①過剰な電気的興奮が脳の一部だけで起きる部分発作
②全体におきる全体発作

抗てんかん薬の内服などによる治療⇒神経細胞の過剰な活動を抑え、発作を起こりにくくする。
  ●運転中の発作による交通事故 
心神喪失時の行為であったと判断されることが多い
てんかんの発作が起きる前の段階、すなわち運転開始時点において運転を差し控える義務を設定し、この義務を怠ったとして過失行為を認定した例も多い

①医師から運転をしないよう指導を受けていた
②運転開始前に運転者自身がてんかん発作の予兆を感じていた
  ●自動車死傷法3条の罪 
平成25年11月、自動車死傷法が制定され、その第3条では、自動車の運転をする者が、その後の走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態になっている場合に、そのことを認識して運転を開始し、走行中に正常な運転が困難状態に陥って事故を起こし、人を死傷させる行為を処罰。
第1項:アルコール又は薬物の影響(多くの場合、自らの意思で摂取)による正常な運転に支障が生じるおそれがある場合を規定
第2項:病気の影響(自らの意思によるものではない)による場合を規定

委任を受けた同法施行令3条2号は、「意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)」と規定。
この罪の故意:
運転者において、病気の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがあると認識することが必要
but
その病気に特有の症状が認識されていれば足り、具体的な病名の認識までは必要はないとされている。
道交法:
運転免許の許否(90条1項1号ロ)や取消し等(103条1項1号ロ)の事由として「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気」を定めているところ、
委任を受けた同法施行令(33条の2の3台2項1号、38条の2第2項)は、
「てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)」と規定。

運転免許の更新時には、病状等に関する質問票に記載して、病状を正確に申告することが求められている(虚偽記載についての罰則も定められた。)。
  主張 検察官:
主位的に危険運転致死傷(自動車死傷法3条2項)、
予備的に過失運転致死傷罪(運転避止義務違反)の訴因を設定。 
被告人:
発進時・発進後に、病気の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態であったことを認識していなかった⇒故意を否認

主治医から運転を禁止されたことはなく、当日も特段の疲労を感じておらず、直前まで正常な運転を続けていた⇒運転避止義務はなかった
  原審 被告人が事故前の約3年間で複雑部分発作を4回起こした
←それぞれの数日~数週間後に被告人が医師に受診した際のカルテの記載(被告人が申告した内容に基づいて、前兆やもうろう状態等の所見が記載)

被告人自身が
①これらの発作で意識障害が生じていたこと
②抗てんかん薬を処方どおり服用していても疲労等の要因により複雑部分発作が起き得ることを認識。

本件当日も長距離の運転で疲労が蓄積していたところ、異臭感を感じた直後に運転を開始した時点で、その後の走行中に複雑部分発作を起こして意識障害に陥る危険性を認識していたと認定。

危険運転致死傷罪の故意を認めた。
  控訴審 てんかんにより意識の混濁やもうろう状態を含む意識障害が生じたかに焦点を当て、複雑部分発作自体ではなく、複雑部分発作が起きた可能性が高い意識障害が生じたと認めることで十分。 
  裁判例 単純部分発作を起こした後の時点での実行行為と故意という予備的主張について、前兆を感じてから体が動かなくなるまでの数十mの間に路端に停車させ、結果を回避することが可能であった⇒前兆が発生した時点以降の実行行為と故意を認定した裁判例。 
衝突事故の3分前の時点での運転を実行行為として捉えて、少なくとも意識障害をもたらす発作が再発するおそれを有する何らかの病気により、正常な運転に支障が生じるおそれがあることを認識していたとした裁判例。
①被告人はB地点で前兆を感じ、意識障害に陥るおそれにある状態にあると認識したものの、発作の影響により車を停止することはできなかった。
②A地点での実行行為について、被告人は、前兆とは異なる気持ちの悪さを感じて漠然と発作が起きるかもしれないと危惧間を抱いていたにせよ、発作が起きる具体的可能性には思い至っていなかった疑いがある。

無罪とした裁判例。
  刑事p68
横浜地裁H30.3.22  
   
  事案 介護施設職員であった被告人が、その勤務する施設で、約2か月の間に入居者3名を次々と高所から転落させて殺害した事案。 
  解説 ●間接事実からの総合考慮 
◎事件性:
各被害者の身体能力や精神状態、転落したベランダの構造等⇒
第2事件及び第3事件の各被害者については、自らベランダを飛び越えた可能性はなく、殺人事件であると認められる。
第1事件も殺人事件である可能性が極めて高い。
◎犯人性:
第1事件ないし第3事件が約2か月という短期間に生じている⇒同一犯による犯行である可能性が高い。
①本件施設内部や各居室の施錠状況、各犯行当日の夜勤の状況などの客観的な事実の検討⇒部外者や入居者家族、被告人以外の職員等の犯行は困難
②被告人が被害者のV2及びV3について、第2事件及び第3事件以前に、「そろそろ危ない、次落ちる。」などと犯行を予告するような発言をしていた
③母親や妹に「自分がやったんだ。」などと犯行を告白する内容の発言

第3事件については、被告人が犯人であることについて疑念を挟む余地はなく、
第1事件及び第2事件についても、更に被告人に対する嫌疑は高度なものとなるといえ、特段障害となる事情が見当たらなければ犯罪成立を認めて差し支えない程度にまで、被告人が犯人であるという強力な推認が働く。
続いて犯人性の認定について障害となる事情が存在するかという観点から捜査段階での自白及び公判供述の信用性を検討。
  ●取調べ録音録画記録媒体について 
近時の裁判例:

・検察官から実質証拠として取調べ請求がされた録音録画記録媒体について、取調べの必要性を否定して請求を却下した原審の証拠決定が、裁判所の合理的な裁量を逸脱したものとは認められないとされた事例

・取調べ録音録画記録体を見て自白の信用性を判断することには強い疑問があるとし、再現された被告人の供述態度等から直接的に被告人の犯人性に関する事実認定をおこなった原判決を破棄・自判した事例(今市事件控訴審判決)
本件:
被告人の自白調書等の信用性判断のため録音録画記録媒体が採用。
信用性の評価の外形的事情:
①取調べ担当警察官が、高圧的な態度をとったり、厳しく問い糾したりしていく場面はみられない
②終始オープン・クエスチョンの形式により進められている
③被告人の応答状況も身振り手振りを交えた自発的かつ円滑なものであって、問いかけに対しても、そのまま同調するものではなく、記憶にないところはその旨応答
供述内容:
①自白に至った心情や遺族への気持ち、被害者らを殺害の対象とした動機について詳しく述べている
②具体的かつ迫真的な供述部分が見られる
③客観的な施錠状況等と完全に符合する内容の供述
~自白の信用性を高める事情
前段:再生によって確認された自発的な供述態度をもって信用性を肯定しているだけではないか?
後段の客観的事情との整合性等:信用性判断としてはやや内容に踏み込みすぎであり、実質証拠との境界が曖昧ではないか?
  ●死刑選択の理由 
氷山基準:
①犯行の罪質、
②動機
③態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性
④結果の重大性ことに殺害された被害者の数
⑤遺族の被害感情
⑥社会的影響
⑦犯人の年齢
⑧前科
⑨犯行後の情状等
を考慮し、その罪質が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には死刑選択が許される。
本判決:
何ら落ち度のない3名もの尊い命を奪ったという結果(④)
遺族の峻烈な処罰感情(⑤)
高所から、まるで物でも投げ捨てるかのように転落させたという冷酷な犯行態様(①③)
犯行を隠ぺいする工作(⑨)
日々の業務から生じていたうっ憤や自己顕示のためという動機(②)
一定の計画性があること

これらを総合考慮すれば、複数名を殺害した事案の量刑傾向に照らしても、本件事案の重大性、悪質性は際立っており、被告人の罪質は誠に重大なものといわざるをえない
⇒死刑
  刑事p89
京都地裁H29.11.7  
  青酸(シアン)連続不審死事件で死刑判決
  事案 京都、大阪、兵庫で起きた青酸(シアン)連続不審死事件
被告人(判決時70歳)が、資産家の男性と結婚等をし、その後男性が死亡することが繰り返された事件
起訴された4件(殺人3軒、強盗殺人未遂1件)につきいずれも有罪と認定し、求刑通り死刑。
  判断・解説 ●情況証拠による有罪認定 
◎事件性の認定 
第1、第2、第4はいずれも被害者が死亡し、その死因はシアン中毒死とされた。

①血液からシアンが検出されたもの(第1、第2)
②搬送時に内窒息状態(細胞が酸素を使ってエネルギーをつくれなくなる状態)であったことを前提に、除外診断によりシアン中毒に絞り込み、被告人の捜査段階の自白も合わせたもの(第4)

口腔にびらん(軽度溶解)がないこと等⇒被害者はカプセル等に入ったシアン化合物を服用したと認めた。
第3は、被害者が全治不能の高次脳機能障害等を負った
シアン中毒によるものと認定

①搬送時に内窒息状態
②被告人の捜査段階の自白
事故及び自殺の可能性を否定⇒事件性を認定
◎犯人性の認定 
①被告人の近辺の土中から、通常入手困難なシアン化合物が発見されており、被告人は各犯行時、シアン化合物を所持しており、これをカプセルに詰め替えることができた
②被告人は各被疑者に、疑いを持たれることなくカプセルを飲ませることができる関係にあった
⇒犯行可能
各被害者がシアン化合物を服用してから中毒を発症するまでの時間が、2、30分以内⇒服用前後の時間帯に一緒にいたと認められる
①被告人は、各被害者の死亡以前からその遺産取得に向けた行動をとっていた
②被害者から約4000万円の債務を負っており、これを返済することは困難であった
●本判決の手法の評価 
情況証拠による事実認定については、最高裁H22.4.27が、
「情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要する」
本判決:各事実につき
「被告人が犯人でないとしたら、被告人以外の第三者が、犯行可能性が極めて乏しい中で犯行を行ったことになるが、このような想定は合理性を欠く」
「類似事実による犯人性の認定」は採用しなかった。
●認知症による訴訟能力、責任能力への影響 
◎   ◎被告人の認知症り患 
精神鑑定によれば、被告人は平成27年頃からアルツハイマー型認知症を発症
but
鑑定時(平成28年9月)には、認知症と判断するか迷うくらいの軽症で、平成25年12月当時(第1事件)は、認知症その他の精神疾患に罹患していなかったと認められる。
①平成25年12月頃のメールのやりとり
②遺産取得に向けた一貫した計画的な行動をとっていたこと
⇒当時認知症を発症していたとは認められない。
◎各犯行時の責任能力 
認知症は進行性の病気⇒同時期以前にも認知症に罹患していなかったと認められる⇒各犯行時に完全責任能力あり。
◎訴訟能力 
①認知症が軽症
②公判廷での応訴態度
⇒被告人としての重要な利害を弁別し、それに従って相当な防御をする能力を有する。
●手続2分論的な審理の採用 
公訴事実ごとに、犯罪事実の存否に関する立証を行った後に、中間論告、中間弁論を行い、全ての公訴事実につきこれを終えた後に、日を改めて、情状に関する証拠調べを行う。
●死刑判断
①事故の金銭欲のために人の生命を軽視するという非常に悪質な罪質
②落ち度の全くない3名の被害者の死亡、1名の重篤な障害という重大な結果
③巧妙かつ卑劣で計画的な犯行態様など
④結果につき、約6年間という短期間に4回も反復して行われており、その都度、人の生命を軽視して犯行に及んだという点で、各犯行が1つの機会になされた場合と比べても、より強く非難される

死刑
2990   
  行政p3
大阪高裁H30.3.20  
  大阪の外国人を対象とする準学校法人への補助金の不交付の適法性
  事案 控訴人(一審原告)は、学教法134条1項に定める外国人を対象とした各種学校を設置運営する準学校法人。
被控訴人大阪府に対して、本件23年度大阪府補助金8080万円の交付申請をし、被控訴人大阪市に対して、本件23年度大阪市補助金2650万円の交付申請⇒大阪府知事及び大阪市長によりいずれも不交付とする旨の決定。 
控訴人が、本件各不交付がいずれも違法であるなどとして、

(1)被控訴人大阪府に対し、
一次的に本件大阪府不交付の取消しと本件23年度大阪府補助金の交付決定の義務付けを求め
二次的に控訴人の本件大阪府交付申請に対する被控訴人大阪府による承諾の意思表示を求め、
三次的に大阪府要綱に基づき控訴人が本件23年度大阪府補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め、
四次的に本件大阪府不交付により控訴人に本件23年度大阪府補助金相当額8080万円の損害が生じたとして国賠法1条1項に基づく損害賠償請求として同額及び遅延損害金の支払を求めるとともに、
その余の国家賠償請求として、風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)とこれに対する遅延損害金並びに本件23年度大阪府補助金8080万円の支払の遅延により生じた損害金の支払を求め

(2)被控訴人大阪市に対し、
一次的に本件大阪市不交付の取消しと本件23年度大阪市補助金の交付決定の義務付けを求め
二次的に控訴人の本件大阪市交付申請に対する被控訴人大阪市による承諾の意思表示を求め、
三次的に大阪市要綱に基づき控訴人が本件23年度大阪市補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め、
四次的に本件大阪市不交付により控訴人に本件23年度大阪市補助金相当額2650万円の損害が生じたとして国賠法1条1項に基づく損害賠償請求として同額及び遅延損害金の支払を求めるとともに、
その余の国家賠償請求として、風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)とこれに対する遅延損害金並びに本件23年度大阪市補助金2650万円の支払の遅延により生じた損害金の支払を求めた。
  争点 本案前について:
本件大阪府不交付及び大阪市不交付の各処分性と本件大阪市確認請求に係る確認の利益
本案について:
大阪府・大阪市各要綱交付対象要件の充足性と手続的違法、被控訴人らの承諾義務、国賠法上の違法及び故意過失と損害額など。 
  判断 本件各不交付及び本件各補助金の交付決定の処分性をいずれも否定。
本件大阪市確認請求に係る確認の利益はこれを認めた。 
本案の争点である被控訴人大阪府が、大阪府要綱において定める補助金の交付対象要件について改正し、各種学校を設置する準学校法人である控訴人が「特定の政治団体が主催する行事に、学校の教育活動として参加していないこと」(特定の政治団体と一線を画すること)の要件を充足しないことを理由として、前記補助金を不交付としたことは、
いずれも憲法13条、14条、23条、26条、人権A規約2条、13条、人権B規約26条、人種差別撤廃条約、児童権利条約3条、教基法16条1項、14条2項、私立学校法1条に違反するものではなく、
裁量の逸脱・濫用はないし、交付対象要件の適用にも誤りはないと判断

その余の請求をいずれも棄却すべき。
要は、
①憲法、人権規約、条約等は、本件大阪府補助金の交付を受ける具体的な権利、利益を基礎づけるものではない、
②大阪府要綱に定める本件大阪府補助金の交付の法的性質は贈与であって、被控訴人大阪府は、贈与を受けることができる資格をいかに定めるかについて教育の振興という行政目的の実現のため一定の裁量を有する、
③本件大阪府補助金は、学校法人が設置する外国人学校においては学教法1条(学校の範囲)に準じた教育活動が行われているため、1条校に準じて助成の措置を行う必要があるとの考えから定められた大阪府要領に基づく、
④大阪府要領の改正はこれらの経緯を明確にしたもので、補助金の交付対象要件は、私立学校としての公共性や本件大阪府補助金の経緯等に沿うものとして前記裁量の範囲内にある、
⑤本件大阪府不交付は、前記の要件(特定の政治団体と一線を画すること)に該当しないことを理由とするが、私立学校において一条校に準じた教育活動が行われているというためには、一定程度の政治的中立性が確保されていることが必要であり、大阪府要綱に前記の要件を付加することには相応の合理性がある、
⑥大阪府要綱は、「特定の政治団体」について、公安調査庁が公表する直近の「内外情勢の回顧と展望」において調査等の対象となっている団体(ただし、政治資金規正法3条2項に規定する政党を除く。)と定義しているが、このような団体が主催する行事に学校の教育活動として参加している学校法人に対し、本件大阪府補助金を交付することを許容するか否かは、被控訴人大阪府の裁量に属する⇒このような要件を設けることに裁量の逸脱又は濫用があるとはいえないし、交付対象要件の適用にも誤りはない。
  民事p51
最高裁H30.7.17   
  日本放送協会の受信料債権と民法168条1項前段(定期金債権の消滅時効)の適用の有無(否定)
  事案 日本放送協会が、遅くとも、平成7年6月末までに日本放送協会の放送の受信についての契約を締結したYに対し、同契約に基づき、平成23年4月分から平成29年5月分までの受信料合計9万6940円及び遅延損害金の支払を求めた事案。
  主張 Y:日本放送協会が同契約に基づく受信料の支払を20年間請求しなかった⇒民法168条1項前段所定の定期金債権の消滅時効が完成。 
  規定 民法 第168条(定期金債権の消滅時効)
定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。
2 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。
  判断 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づく受信料債権には民法168条1項前段の規定は適用されない⇒上告棄却。 
受信契約に基づく受信料債権は、一定の金銭を定期に給付させることを目的とする債権⇒定期金債権に当たる。
but
①放送法は、公共放送事業者である日本放送協会の事業運営の財源を、日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に広く公平に受信料を負担させることによって賄うこととし、
前記の者に致死受信契約の締結を強制する旨を定めた規定を置いていること、
受信料債権は、このような規律の下で締結される受信契約に基づき発生するもの。
②受信契約に基づく受信料債権について民法168条1項前段の規定の適用があるとすれば、受信契約を締結している者が将来生ずべき受信料の支払義務についてまでこれを免れ得ることとなり、前記規律の下で受信料債権を発生させることとした放送法の趣旨に反するものと解される。

受信料契約に基づく受信料債権には民法168条1項前段の規定は適用されない。

放送法により、公共放送の財政基盤を支えるため、受信契約の締結が義務付けられているという受信料債権の発生原因の特質を考慮して、民法168条1項前段の適用を否定。
(債権の発生原因に係る法律関係を分析し、定期金債権の消滅時効の適用を認めることにより不合理な結果を招くことがないかを検討するという判断の方法)
  解説  一定の金銭その他の代替物を定期に給付させることを目的とする債権を定期金債権といい、
一定期日の到来によって具体化した給付請求権(支分権)は通常の消滅時効にかかり(民法169条の適用を受けることが多い)、
民法168条1項は支分権を生み出す基本権としての定期金債権の時効について規定。
基本権としての定期金債権が時効消滅⇒その後、支分権は発生しないし、一旦発生した支分権も消滅する。
学説:
定期金債権に当たるもの全てについて民法168条1項の適用があるとするのではなく、債権の種類毎に民法168条1項の適用があるかを検討し、民法168条1項の適用がないものを認める見解が多い。
ex.
扶養料債権のうち、一定の親族関係にもとづいて法律上当然に生じるもの
賃借料債権・永小作料債権
契約から生じる利息債権
  大判明40.6.13:
民法168条の定期金の債権は定期毎に若干ずつの金銭又はその他の物の給付を受くべき基本の権利例えば年金権又は養料の類をいう⇒分割払を約した貸金債権はこれに当たらない。
最高裁H26.9.5:
日本放送協会の受信料債権(支分権)の消滅時効について:
原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人(日本放送協会)の放送の受信についての契約においては、受信料は、月額又は6か月若しくは12か月前払額で定められ、その支払方法は、1年を2か月ごとの期に区切り各期に当該期分の受信料を一括して支払う方法又は・・・・⇒上記契約に基づく受信料は、年又はこれより短い時期によって定めた金銭の給付を目的とする債権に当たり、その消滅時効期間は民法169条により5年と解すべきである。
  民法169条は、債権法改正で削除。
定期金債権の消滅時効の規定は、債権法改正後も残り、期間を20年間とする時効に加えて、債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないときに時効消滅するという規定が設けられる。

現行法より定期金債権の消滅時効が問題となりやすい。 
     
  民事p54
大阪地裁H30.4.13  
  劣化した消却の破裂事故⇒国賠請求・メーカーへの損害賠償請求(否定)
  事案 原告が、屋外駐車場に放置され、腐食が進んでいた加圧式消火器を作動⇒破裂して、原告が傷害を負った

被告国に対しては国賠法1条1項に基づき、
被告社団法人(各消火器メーカーを正会員とする業界団体)及び被告会社(本件消火器の製造メーカー)に対しては不法行為に基づき、
損害賠償を求めた。
本件消火器の品質そのものに問題があって発生したものではない。
  争点 以下のような義務の有無: 
被告国との関係では、平成元年頃までに、自治大臣が消防法(平成5年改正前のもの)21条の2第2項に基づく消火器の規格省令について、
①本件事故の現場のような一定の場所に設置する消火器を、蓄圧式消火器であって消火剤を再充填できない構造のものに限るよう規格を定めるべき義務、
②加圧式消火器の安全性確保のための十分な表示をする規格を定めるべき義務
被告社団法人との関係では、
本件消火器の製造時点において、
①消火器の取扱いについての注意事項を相当な大きさのラベルで表記すべき義務、
②一般消費者に対し、消火器の危険性等について周知徹底を図るべき義務、

本件事故が発生するまでの時点で、
③耐用年数が経過した消火器を回収する制度と構築すべき義務
被告会社との関係では、
本件消火器の製造時点において、
①製造する消火器を蓄圧式消火器に切り替えるべき義務、
②消火器の取扱いについての注意事項を相当な大きさのラベルで表記すべき義務、

本件事故が発生するまでの時点で、
③一般消費者に対し、消火器の危険性等について周知徹底を図るべき義務、
④耐用年数の経過した消火器を回収すべき義務。
  判断 ●被告国との関係 
前記①の義務及び②の義務のうち一部の事項について:
自治大臣が消防法による委任に基づいて有する職務上の権限の範囲外

②のその余の事項について:
①消火器の具体的な規格が技術的事項⇒規格省令の改正に係る権限を行使するか否かの判断は主務大臣である自治大臣の裁量事項に属する。
②自治大臣が規格省令の改正を行わなかったことがその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていたということはできない。
⇒国賠証1条1項上の違法性はない。
  ●被告社団法人及び被告会社との関係
本件事故は、屋外駐車場の管理者が本件消火器を放置し続けていたところ、同駐車場に侵入した原告が本件消火器で遊ぼうとしてこれを作動させたことによって生じた事故

本件事故の発生を回避することが可能であり、回避すべき義務を負っていたのは、同駐車場の管理者であり、
本件消火器を管理しておらず、本件事故の発生を具体的に予見することができない被告社団法人及び被告会社においては、本件事故を回避するための具体的な措置を講じることはできなかった。

本件事故の発生という結果を回避するための作為義務を否定。
  解説 規制権限を行使しなかったことが国賠法1条1項の適用上違法となるか否かについて:
当該権限を定めた法令の趣旨、目的や権限の性質に照らし、その不行使が著しく合理性を欠くと認められるときでない限り違法の評価を受けない。
(最高裁H1.11.24) 
規制権限の不行使の違法性を検討するに当たっては、まず、当該公務員が当該権限を有しているといえるか否かが問題となる。
  不作為による不法行為の成立を認めるためには、
同被告らにおいて、本件事故という結果の発生を回避するための作為義務を負っていることが必要。
行動の自由を持つ私人に対し、その自由を制限して作為義務を認めるためには、法律・契約・慣習・条理等に基づいて一定の作為を法的に義務付けるだけの十分な根拠が要求されるところ、
前記作為義務についての判断は、過失における行為義務(結果回避義務)の判断と一致するものとされている。(潮見Ⅰp347)

前記作為義務の存在を肯定するためには、責任を問われる者にいて、結果発生の具体的危険を予見できたことが論理的前提となる。

予見可能性の程度については、物も役務も高度に技術化・組織化して潜在的抽象的危険が増大した現代社会においては、抽象的な予見可能性では足りず、いかなる侵害をもたらすかについてのある程度具体的な予見可能性が必要となる。
but
本件において、同被告らは、本件消火器を管理しておらず、本件事故の発生を具体的に予見することができる立場にはなかった
⇒本件事故を回避するための具体的措置を取ることもできなかったといわざるを得ない。
  民事p92
名古屋地裁H30.6.6  
  盗難車による事故につき、車両保有者の運用供用者責任を否定した事案
  事案 盗難自動車(「加害自動車」)と自転車間の自己(「本件事故」)により死亡した自転車運転者の相続人等であるXらが、加害自動車の保有者であるYに対し、自賠法3条による運行供用者責任に基づき、損害賠償金の支払を求めた。 
  争点 いわゆる泥棒運転における加害自動車の保有者Yが自賠法3条による運行供用者責任を負うかどうか。 
  判断 Yの運行供用者責任を認めず、Xらの請求を棄却。 
加害車両が窃取された経緯
⇒加害車両は相当程度窃取されやすい状況にあったと評価すべきであり、窃取時点においては、第三者に対して加害車両の運転を客観的に容認していたと評価されてもやむを得ない状況にあった。
①窃取されてから1時間以内に被害届が提出されている
②窃取から本件事故までの間に約12時間、被害届の提出からでも約11時間経過
③窃取場所から本件事故現場までの距離が直線距離で20.38km、最短走行距離でも24.4kmであること。
④Bは、パトカーに2回追跡されながら逃げ切り、本件事故直前もパトカーに追跡されていた。
⇒Yが加害者であるBに対して加害車両の運転を客観的に容認していたことを否定する方向の諸事情が認められる。
⇒Yの運行供用者責任を認めることはできない。
  解説 運行供用者については、運行支配と運行利益の2つの要素から判断する考え方(二元説)が判例・通説。 
運行利益:運行全体を客観的に観察して、運行供用者のためにされていれば足りる。(最高裁昭和46.7.1)
運行支配が認められれば、通常、運行利益もあると解される⇒現実の裁判では、運行支配の有無を巡って争われる。
最高裁(昭和50.11.28):
いわゆる名義貸与者の事案につき、
「自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合」には運行支配が認められる⇒当該名義貸与者の運行供用者責任を認めた。
最高裁H20.9.12:
保有者と運転者との間に全く面識がない事案(運転者は保有者の娘と親しい関係にあった者)につき、「容認」という概念を用い、保有者が運転者と面識がなく、その存在すら認識していなかったとしても、客観的外形的に見て、当該運転について、容認の範囲にあったと見られてもやむを得ない場合には運行支配が認められる⇒当該保有者の運行供用者責任を認めた。
本件:
いわゆる泥棒運転で、保有者と運転者との間に全く面識なし。 
上記H20.9.12の考え方:
客観的外形的に見て、保有者の容認の範囲内にあたっと見られてもやむを得ない場合⇒保有者は運行供用者責任を免れない。
その判断においては、
駐車場所、駐車時間、車両の管理状況、泥棒運転の経緯・態様、盗用場所と事故との時間的・場所的近接性等を総合考慮することになる。
  労働p96
最高裁
H30.6.1  
  有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違と労契法20条
  事案 一般貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社であるYとの間で有期労働契約を締結してトラック運転手として配送業務に従事していたXが、
Yと無期労働契約を締結している労働者(「正社員」)とXとの間で、
無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、定期昇給及び退職金に相違があることは労契法20条(平成24年改正後のもの)に違反している

Yに対し、
(1)労働契約に基づき、XがYに対し、本件賃金等に関し、正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求める(「本件確認請求」)とともに、
(2)
①主位的に、
労働契約に基づき、平成21年10月1日から同27年11月30日までの間に正社員に支給された無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当及び通勤手当(「本件諸手当」)と、同期間にXに支給された本件諸手当との差額の支払を求め(「本件差額賃金請求」)、
②予備的に、
不法行為に基づき、前記差額に相当する額の損害賠償を求めた(「本件損害賠償請求」)。 
  規定 労契法 第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
  判断 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労契法20条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない。
労契法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関して生じたものであることをいう。
労契法20条にいう「不合理と認められるもの」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいう。
乗務員のうち無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で、有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、次の(ア)~(ウ)など判示の事情の下においては、労契法20条にいう不合理と認められるものに当たる。

(ア) 前記皆勤手当は、出勤する乗務員を確保する必要があることから、皆勤を奨励する趣旨で支給されるものである。
(イ) 乗務員については、有期契約労働者と無期契約労働者の職務の内容が異ならない。
(ウ) 就業規則等については、有期契約労働者は会社の業績と本人の勤務成績を考慮して昇給することがあるが、昇給しないことが原則であるとされている上、皆勤の事実を考慮して昇給が行われたとの事情もうかがわれない。
  説明 ●労契法20条の趣旨
有期契約労働契者の労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と無期契約労働契約を締結している労働者の労働条件と相違

労働契約の相違は、
①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(「職務の内容」)、
②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、
③その他の事情
を考慮して、不合理と認められるものであってはならない旨を規定。
本判決:
同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(「職務の内容等」)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。

相違に応じた均衡のとれた処遇を求める規定。
  ●労契法20条違反の効力について 
A:契約補充効は認められない
←労契法12条や労基法13条のような契約補充効を認める旨の規定がない
B:契約補充効を認めるべき
←不合理な格差と認められた労働契約部分を無効にするだけでは問題が解決しない
本判決:
有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当

契約補充効を否定。
契約補充効を否定⇒不合理と認められる有期契約労働者の労働条件を、関係する労働協約、就業規則、労働契約の合理的な解釈・適用により補充することが可能か?

本判決:
Yにおいては、正社員に適用される就業規則と、契約社員に適用される就業規則とが、別個独立のものとして作成されていること等
⇒両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に、正社員に適用される就業規則の定めが契約社員だえるXに適用されることとなると解することは、就業規則の合理的な解釈としても困難
⇒Xの本件賃金等に係る労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるものではない。

本判決:
本件確認請求及び本件差額金請求については、
仮に本件賃金等に係る相違が労契法20条に違反するとしても、Xの本件賃金等に係る労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるものではない
⇒いずれも理由がない。
  ●労契法20条の要件について 
◎「期間の定めがあることにより」 
本判決:
「同条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である」

「関連して生じたものである」とされたのは、期間の定めがあることと労働条件の相違との間に因果関係が必要であるとの見解に立ちつつ、
因果関係があることを緩やかに認める趣旨によるものと解される。
本件諸手当に係る労働条件の相違は、契約社員と正社員とでそれぞれ異なる就業規則が適用されることにより生じている⇒当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができ、労基法20条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たる。
  ◎「不合理と認められるもの」 
本判決:
「同条にいう「不合理と認められるもの」とは、
有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当」
  ●本件諸手当の不合理性について 
本判決:
本件損害賠償請求に関し、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が、職務の内容等を考慮して不合理と認められるものに当たるか否かを賃金項目ごとに検討し、
本件諸手当のうち、無事故手当、作業手当、給食手当、皆勤手当及び通勤手当に係る相違は同条にいう不合理と認められるものに当たるとし、
住宅手当に係る相違は同条にいう不合理と認められるものには当たらない。
同日に言い渡された最高裁H30.6.1は、
「有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、
両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、
当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。」
と判示。
  刑事p104
最高裁H29.12.25  
  再審決定⇒特別抗告⇒刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法がある
  事案 請求人が、共犯者A及びBと共謀の上、滞納処分の執行を免れるため、Aが実質経営する風俗店の営業をBに譲渡したかのように装って財産を隠ぺいしたという国税徴収法違反被告事件についての再審請求事件 
Aの陳述書(請求人が財産の隠ぺいに関与していたとの確定審の公判供述は虚偽であり、真実は、請求人は財産の隠ぺいには関与していないとの内容(「Aの新供述」))等の新証拠11点を提出⇒これらが「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(刑訴法435条6号)に当たるとして、再審を請求。
  原々審 再審請求を棄却 
    ⇒即時抗告
  原審 事実の取調べとしてAの証人尋問を実施し、
Aの新供述等の新証拠を踏まえると、Aの公判供述及びBの捜査段階供述の信用性に大きな疑問が生じ、請求人の共謀を認定することに合理的な疑いが残る。⇒Aの新供述等の新証拠は、刑訴法435条6号所定の請求人に対し無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠に当たる⇒原々決定を取り消し、再審を開始する旨の決定。
    ⇒検察官が特別抗告
  判断 確定審における審理経緯に照らすと、Aの新供述が請求人に対し無罪を言い渡すべき明らかな証拠といえるかどうかを判断するに当たっては、供述を変更するに至った経緯・過程を含め、その内容が、Aの公判供述の信用性を動揺させるに足りる事情を供述するものであるかについて、
原審で行われた証人尋問におけるAの供述も踏まえた上で、慎重に吟味する必要がある。
Aの新供述につき具体的に検討を加え、刑訴法435条6号該当性を認めた原決定には、同号の解釈適用を誤った違法がある。
  解説  確定審における証人の供述は、証人尋問や当事者の主張を踏まえて、その信用性についての検討・判断がなされてきている。
⇒そのような証人の供述と異なる内容の供述が新証拠として提出された場合、それが刑訴法435条6号の新証拠に当たるかについては、確定審で虚偽供述をした理由、供述を変更するに至った経緯を含め、供述内容の合理性、真摯性等について慎重に判断する必要がある。
再審請求審では、新供述が、陳述書や供述書など書面の形式で提供される⇒当該供述者に対する証人尋問(事実取調べ)の実施を検討すべき場合もある。
  刑事p107
最高裁H29.12.18  
  心神喪失等の状態で重大な他害行為⇒医療及び観察等に関する法律による処遇と憲法14条、22条1項、31条(違反なし)
  事案 統合失調症及び精神遅滞に罹患している対象者が、妄想状態の強い影響下で傷害事件⇒検察官から心神耗弱であるとして不起訴処分とされた上、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による入院等の決定を求める申立て⇒入院決定⇒抗告・棄却⇒再抗告
  争点 医療観察法による処遇制度の合憲性 
  規定 憲法 第14条〔法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界〕
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
  憲法 第22条〔居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由〕
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
  判断・解説   ●医療観察法の目的
①心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、①精神障害を有していることに加えて、②重大な他害行為を犯したという二重のハンディキャップを背負っており、このような者が有する精神障害は、一般的に手厚い専門的な医療の必要性が高い
②再び精神障害のため重大な他害行為が行われることになれば、本人の社会復帰の大きな障害となることは明らか

そのような事態にならないよう必要な医療を確保することが、本人の円滑な社会復帰のために極めて重要⇒医療観察法による処遇制度。
本決定:医療観察法の目的(1条1項)は正当
  ●医療観察法による処遇制度 
対象者に対する処遇として、
①医療を受けさせるために入院をさせる処遇(「入院処遇」)と
②入院によらない医療を受けさせる処遇(「通院処遇」)
裁判所が入院処遇又は通院処遇の決定をするための要件を定め(42条1項1号、2号)、入院処遇及び通院処遇に関する諸規定。
本決定:入院処遇又は通院処遇に関する諸規定を検討⇒
医療観察法の目的を達成するため必要かつ合理的なものであり、かつ、
処遇の要件も、その目的に即した合理的で相当なものと認められる。
  ●医療観察法の審判手続 
職権探知による審判手続を採用し、審判期日も非公開。
医療観察法の処分は、本来的な司法の分野ではなく、むしろ行政処分的な性格
その判断の中立公正性を保つため、裁判所の裁判によるこいととされた
~特殊な非訟手続ということができる。
付添人制度を設け、付添人に意見陳述権や資料提出権、審判への出席権、記録等の閲覧権を認め、
入院又は通院に係る審判については、弁護士である付添人を必ず付けることとし、
審判期日の開催を原則として必要とし、
審判期日では、対象者に対し、供述を強いられることはないことを説明した上で、
対象者及び付添人から意見を聴かなければならない。
対象者及び付添人に抗告権、退院の許可又は処遇終了の申立権を認める規定を置く。
本決定:対象者に必要な医療を迅速に実施するとともに、対象者のプライバシーを確保し、円滑な社会復帰を図るため、適正かつ合理的な手続が設けられていると説示。
  ●合憲性判断 
憲法 第31条〔法定手続の保障〕
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
憲法31条については、人身の自由について基本原則を定めたものであり、手続要件と実体要件の双方について、適正な内容が法定されていることを要求。
この規定は、本来刑罰を科する際の刑事手続に関する規定であるが、その保障は刑事手続以外の行政手続についても準用又は適用されるとする考え方が一般的。
判例:行政手続にも憲法31条による保障が及ぶ余地があることを認めている。(最高裁H4.7.1)
医療観察法による入通院処遇制度は、対象者の意思と無関係に一方的にその行動の自由等を制限・干渉する制度⇒憲法31条による法定手続保障の趣旨をできるだけ及ぼしていくことが相当。
but
入通院処遇制度の特質に応じて必要とされる保障内容の修正・変容は、当然許容されるべき。
本決定:
医療観察法の目的の正当性、同法の規定する処遇及びその要件の必要性、合理性、相当性、手続保障の内容等
⇒医療観察法による処遇制度は、憲法14条、22条1項に違反するものではなく、憲法31条の法意に反するものということもできない。
  刑事p109
東京家裁H30.2.2  
  児童自立支援施設で、(追加的)強制的措置許可申請が許可されなかった事案
  事案 ぐ犯による保護処分として児童自立支援施設に送致されるとともに、1年半の間に通算30日を限度として強制措置をとることができる旨の決定を受けた少年について、その強制措置をとり得る大枠の期間(「大枠期間」)内に再度の強制的措置許可申請(「再申請」)がなされたが、それが不許可となった事案。
  解説  児童自立支援施設は、不良行為をなし又はなすおそれのある児童及び環境上の理由により生活指導等を要する児童につき、個々に必要な指導を行い、その自立を支援すること等を目的とした児童福祉施設(児福法44条、7条1項)⇒そこでの処遇は、任意・開放的に行われ、児童への強制力の行使はできないのが原則。
but
児童に逃走癖が強かったり、児童が心理的・行動的に不安定で自傷他害のおそれがあったりして、任意・開放的な処遇方法では児童自立支援の目的を達することがでいないときには、児童の行動の自由を制限・剥奪する強制的措置を必要とする場合も考えられる。

そのような場合には、児童相談所長等は、事件を家裁に送致しなければならなず(少年法6条の7第2項、児福法27条の3)、家裁は、期限を付して、少年に対してとるべき措置を指示して、事件を児童相談所長等に送致することができる(少年法18条2項)。

事件の支配・処理を家庭裁判所に移す意味を持つ通常の「送致」とは異なり、強制的措置の許可の申請(最高裁昭和40.6.21) 
  ●大枠期間内の再申請の可否 
①強制的措置の必要性と程度の予測は不確定な要素が多く困難であり、変転する少年の処遇の過程で適時適確に再申請をして福祉的措置を継続することが少年の福祉に合致する場合もある
②再申請を認めても、許可の必要性は裁判所が判断⇒濫用的な強制的措置が抑止される制度的保障がある
③同効力のある事案とない事案を区別することが困難

前件決定の主文中大枠期間を設定した部分に同期間内の再申請禁止の効力を認めない見解が一般的。
実務:
大枠期間内の再申請自体は許容した上で、これを許可する必要があるか否かについては、濫用的な強制的措置が抑止されるように慎重に判断するとの姿勢。
  経緯  少年には、新入時の検査や動機付けを目的とした強制的措置が14日間にわたってとられており、少年に強制的措置をとることができる日数は、専らそのために減ることとなった。
強制的措置が実施されている国立の児童自立支援施設においては、新入児童に対し、このような趣旨での強制的措置を、ほぼ一律にとる運用がなされている。 
  判断 本件再申請に対し、不許可。

①施設における少年への処遇の状況や今後の処置の見通しも勘案すると、少年の在所中に強制的措置が必要となる可能性は低い。
②仮に今後少年に強制的措置が必要になっても、まずは既に許可された期間(残日数の16日間)内の措置で対処し、それでは不十分と見込まれる具体的状況が生じてから再申請する余地もある。
2989   
  判例特報
p3
東京高裁H30.8.3   
  今市事件控訴審判決 
  概要 ①原判決の間接事実の認定を是認した上、これらの間接事実と被告人が母親に書いた謝罪の手紙を併せてる殺害犯人と被告人との同一性が認められる。
②商標法違反の起訴後に行われた本件殺人の取調べは違法だが、殺人の逮捕勾留後に作成された被告人の自白調書の証拠能力は否定されない。
③原審が取調べの録音録画媒体を自白の信用性の補助証拠として使用した点は刑訴法317条に違反。
④被告人の自白のうち、拉致・殺害・遺棄の犯人であることを自認した部分は信用できるが、それを超えて殺人の経過・態様・場所・時間等に関する部分は信用できない。
⑤予備的訴因に従い、殺害の日時・場所を広くとって有罪を認定。 
  判断 ●間接事実による殺人の認定
①Nシステムによる通行記録
②遺体に付着していた猫の毛のDNA型
③遺体の右頸部の損傷が、被告人が当時所持していたスタンガンによって生じたものとして矛盾がない
④被告人車両は、拉致現場で目撃された車と同色・同型で、被告人は被害者が拉致された時間帯にその現場まで自動車で行くことが可能な場所にいた
⑤被告人は拉致現場付近の土地勘があった
⑥被告人は事件当時、多数の児童ポルノ画像を収集し、かつ多数のナイフを所持していた(犯人像と整合的)
⑦被告には、本件殺人の取調べ開始直後の時期に、実母に対して「事件」を起こしたことを謝罪する手紙を送っている
  ②については証明力を減殺し、
⑦については証明力を増強した上で、
①から⑥の事実の総合により有罪の蓋然性が相当高い被告人が⑦の手紙を作成したことは被告人が犯人でなければ合理的に説明することが極めて困難な事実

被害者に付着していた粘着テープと遺体表面から採取された資料から被告人由来のDNA型が発見されず、第三者のDNA型が認められたことを考慮しても、被告人を殺害犯人と認めることに合理的疑いを生じさせない。
  ●起訴後の取調べ 
  被告人は、平成26年6月3日に殺人容疑で逮捕されたが、それまでの間(すなわち、商標法違反の罪での起訴後の勾留期間中)、警察官は実質21日間(2月18日から3月25日まで)、検察官は実質12日間(2月21日から3月28日まで)、別件の起訴後勾留を利用した余罪(本件殺人罪)の取調べが行われた。
2月25日以降の取調べは任意の取調べとして行なわれたとは認められない⇒違法。
but
本件殺人容疑での逮捕勾留後である平成26年6月20日から6月22日までの間に作成された被告人の検察官に対する自供調査4通については、前記違法な取調べの影響が及んでいないとして、その証拠能力を肯定。
  ●録音録画媒体を自白の信用性の補助証拠とした原審の手続 
原判決中の被告人の供述態度についての判示部分を子細に検討した上、
「多くの考慮すべき事柄があるにもかかわらず、疑問のある手続経過によって、本件各記録媒体を供述の信用性の補助証拠として採用し、再現された被告人の供述態度等から直接的に被告人の犯人性に関する事実認定を行った原判決には刑訴法317条の違反が認められる」

①録音録画の制度化に関する刑訴法一部改正は、不当な取調べの有無を事後的に確認できるよにして被疑者取調べの適正化を図るために行われたもの
②録音録画記録媒体により再現される取調べ中の被告人の様子を見て、自白供述の信用性を判断しようとすることには強い疑問がある。
  ●予備的訴因の追加とその認定 
原審の訴訟手続に刑訴法317条違反がある。
but
その違法が判決に影響を及ぼすものであるか否かは、本件自白の信用性に関する検討を経た上で判断。
結論として、自らが本件殺人の犯人であることを認める部分は信用できるが、殺害の場所や態様等に関する部分は信用できない。
前記刑訴法317条違反及び殺害の日時場所を当初の公訴事実どおりに認定した事実誤認はいずれも判決に影響を及ぼすことが明らか
⇒原判決を破棄し、控訴審で追加された予備的訴因(殺害の日時及び場所をより概括的にしたもの)について証明があるとして自判し、無期懲役を言い渡した。 
   規定  刑訴法 第三二二条[被告人の供述書面の証拠能力]
 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
  刑訴法 第三〇一条の二[被疑者取調べ等記録媒体取調べ請求義務、被疑者取調べ等録音録画義務]
 次に掲げる事件については、検察官は、第三百二十二条第一項の規定により証拠とすることができる書面であつて、当該事件についての第百九十八条第一項の規定による取調べ(逮捕又は勾留されている被疑者の取調べに限る。第三項において同じ。)又は第二百三条第一項、第二百四条第一項若しくは第二百五条第一項(第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。第三項において同じ。)の弁解の機会に際して作成され、かつ、被告人に不利益な事実の承認を内容とするものの取調べを請求した場合において、被告人又は弁護人が、その取調べの請求に関し、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べたときは、その承認が任意にされたものであることを証明するため、当該書面が作成された取調べ又は弁解の機会の開始から終了に至るまでの間における被告人の供述及びその状況を第四項の規定により記録した記録媒体の取調べを請求しなければならない。ただし、同項各号のいずれかに該当することにより同項の規定による記録が行われなかつたことその他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しないときは、この限りでない。
一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二 短期一年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であつて故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件
三 司法警察員が送致し又は送付した事件以外の事件(前二号に掲げるものを除く。)
  解説  ●間接事実による認定 
原審:これらの間接事実のみでは有罪とはできない。
本判決:逆の判断。

被告人が母親宛てに出した「謝罪の手紙」の証明力についての判断の差。
原審において証拠の表示⇒刑訴法307条の「証拠物たる書面」として取調べられたものと推測。
but
本判決のような立証趣旨⇒証拠物としての存在を超えて書面の内容の真実性が判断対象となる⇒刑訴法322条1項の要件が問題。
  ●録音録画媒体の取扱い
平成28年5月24日に成立した改正刑訴法301条の2により一定の事件について、被疑者取調べの状況の録音録画が義務付け。
その媒体を自白の信用性の判断資料さらには自白そのもの(実質証拠)として利用しようとする検察側の態度。
それを疑問視する判例等。
  ●予備的訴因の認定について
自白の一部分だけを不合理とする理由として、
「被告人が、受ける刑罰を少しでも軽くしようという意図に基づいて本件自白供述をしたものとすれば、自己に不利益な事実をあえて供述しないというにとどまらず、積極的に自己に有利な内容の虚構を作出している可能性も否定できない」
「情状を良くするために犯行を認め、犯行の動機や態様について、実際の犯行よりも犯情の軽い虚偽の事実を供述することは珍しいことではない」

このような可能性や経験則が成り立つか否か。
成り立つとして本件に適用できるか否か。
  判例特報p38
大津地裁H30.7.11  
  日野町第二次再審請求事件:再審開始決定 
  事案 日野町事件第二次再審請求について、大津地方裁判所が再審開始を決定したもの 
  確定審 一審:
他の証拠と矛盾し、不自然な疑問が多数ある⇒aの自白を信用できない。
but
aにつき、
本件当夜の犯行の機会、被害者方の物色の痕跡(丸鏡にaの指紋が付着)、金庫発見場所及び死体発見場所の知情性、虚偽のアリバイ主張等の間接事実
⇒aの犯人性が推認できる。
控訴審:
aの自白の根幹部分は十分信用できる。
丸鏡からの指紋検出、本件当夜、被害者方付近でaが目撃されたこと、被害者手首の紐による結束方法等の間接事実
アリバイ主張の虚偽性

自白、各間接事実及び虚偽のアリバイ主張を総合すれば、aを犯人と認定できる。 
  ◆再審請求における新証拠の明白性の判断方法
白鳥決定(最高裁):
①新証拠と旧証拠を総合的に評価すべきこと
②再審開始可否の判断においても「疑わしきは被告人の利益に」の原則が適用されること
を判示。

総合評価の具体的方法については、
①新証拠がその立証命題と関連する旧証拠の証明力を減殺するか否かを検討し(限定的再評価による新証拠の証明力判断)
②仮にこれが肯定された場合、新旧全証拠を総合的に評価して(全面的再評価による新証拠の明白性判断)、確定判決の有罪認定に合理的疑いが生じれば新証拠の明白性が肯定される
という手法が、近時の再審請求審の判断において主流として採用されている。

①の再評価では、新証拠の持つ重要性及び立証命題が、これと有機的に関連する確定判決の証拠判断及びその結果の事実認定にどのような影響を及ぼすかを審査すべき。
    ◆本決定の各論部分のポイント 
  ●金庫投棄場所への引当捜査 
aが金庫投棄場所を案内した引当捜査の帰路において、aが案内しているかのような写真が撮影。

これらの写真も使用した引当捜査報告書が作成された事実を示すネガの分析報告書
同引当捜査担当警察官の本件再審請求審における証言等の新証拠

警察官による直截的な誘導は否定したが、aが正解である金庫発見場所にたどり着けることを強く期待していた警察官が、意図的な断片情報の提供を行ったり、警察官と、自白を維持し警察と協調するaとの間で、正解到達に向かう無意識な相互作用を生じさせたりした結果、金庫発見場所を案内できた可能性が合理的にみて認められる。
  ●殺害態様 
第一次再審請求において裁判所が選任した鑑定人医師の鑑定書等、東京医科大学のg1医師の鑑定書及び同医師の本件再審請求審における証言等を始めとする新証拠から認められる、犯人の左手の顔面に対する圧迫位置

aの自白のうち、左手を頸部の後面に当てていたとする点は、死体の損傷状況と整合しない。
  ●自白の任意性の否定 
①新証拠から認められる、aが多くの重要な点で客観的状況と矛盾する自白をしている点
②aは自白を継続する捜査段階から、警察官から暴行及び脅迫的言動を受けて自白したと述べていたこと
③aの同供述を裏付ける弁護人の申入書や妻子の供述があること

aは、警察官から暴行を受け、また、脅迫的文言を申し向けられた結果、自白をした合理的疑い。

aの自白の任意性を再評価するための直接の新証拠は存在しないものと見受けられるが、自白の信用性及び自白した状況に関して、重要と思われる新証拠が多数列挙されており、本決定は、有機的に関連する任意性についても再検討。
実質的にみて、松橋事件に係る福岡高裁H29.11.29がいわゆる「連鎖」と判示したものと同様の見解に立つものと理解。
  ●新旧証拠の総合評価を経た上での各間接事実の総合考慮 
直接の争点はaの犯人性であり、新旧全証拠によって認められる間接事実を総合考慮して、aが犯人であると推認できるか否かを判断する構造。
平野母子殺害放火事件(最高裁H22.4.27)が判示した枠組を用いる。

新旧証拠の総合考慮の結果、aが被害者方付近で目撃されたことなどの間接事実が数個残るものの、推認力は減殺されて小さく、他方、本件当夜、知人方の酒席で眠り込んで宿泊したというアリバイ主張が一定の裏付けを有していることなど、推認を妨げる事情も生じた

aが犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係は含まれていないと結論。
  民事p101
東京高裁H29.6.28  
  不動産売買に当たっての、弁護士である資格者代理人の不法行為責任(否定)
  事案 Xは、売主Aと称する者か、土地建物を購入。
弁護士Yは、Aとは面識がなかったが、本件不動産の売買契約に当たり、第三者を介して契約への立会いを求められるとともに、Aについて、平成27年法務省令第51号による改正前の不当規則72条に基づく本人確認情報を提供し、登記義務者の代理人として所有権移転登記申請をした。 
自称Aは売主に成りすました他人であり、本件住基カード等の書類も偽造⇒真実の所有者だえるAから所有権移転登記抹消登記手続を求められ、本件不動産の所有権を取得することができなかった。
⇒XはYに対し、不法行為に基づく損害賠償を求める本訴を提起。
  判断 そもそもYが本件売買契約において依頼を受けた内容が必ずしも明らかでなく、売買代金が現金決済であることについて、Yが売買契約締結時まで認識していたとは認められない。 
自称Aが登記名義人であることを疑うに足りる事情があるときは格別、そうでない場合にまで、不登規則72条2項1号による方法以外の本人確認をすべき義務を負うことはない。
①本件住基カードに外見上不自然な点はなく、資格代理人にはQRコードを読み取る義務まではなく、
②Yにおいてできる限りの本人確認を行ったこと、
③本件遺産分割協議書の印鑑登録諸運命所の印影と同一ないしは酷似した印影が押印されている⇒相続開始日の誤記から直ちに成りすましまで疑うことはできない

Yの注意義務違反を認めず、不法行為責任を否定。
  解説  不登法23条4項、不登規則72条2項に定める資格者代理人による本人確認情報制度については、平成27年法務省令第51条による改正前の不登規則72条2項1号が、住民基本台帳カードによる本人確認を認めていた。 
本件は、結果として、地面師による詐欺事件に関与することとなった資格者代理人が、面識のない者について本人確認情報を提供する場合の注意義務について、
住民基本台帳カードに外見上不自然な点はなく、多額の現金決済であったこと、その他の事情に照らしても成りすましを疑うべき事情はなかった⇒Yの注意義務違反を否定。 
  労働p107
最高裁H30.6.1   
  定年退職後に再雇用された有期契約労働者と労働契約法20条
  事案 Y(セメント等の輸送事業を営む株式会社)を定年退職した後に、有期労働契約をYと締結して就労しているXらが、無期労働契約をYと締結している従業員との間に、労契法20条に違反する労働条件の相違があると主張し、
主位的に、
前記従業員に関する就業規則等が適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、
労働契約に基づき、前記就業規則等により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額等の支払を求め、
予備的に、
不法行為に基づき、前記差額に相当する額の損害賠償金等の支払を求めた。
  一審 嘱託乗務員と正社員との職務内容等が同一であるにもかかわらず、その賃金額に相違を設けることは、これを正当と解すべき特段の事情がない限り不合理
⇒Xらの主位的請求を全部認容。 
  原審 定年後再雇用に当たり、定年前に比較して一定程度賃金額が減額されることは一般的であり、社会的にも容認されている⇒一審判決を取り消し、Xらの請求を全部棄却。
  判断 精勤手当及び時間外手当(超勤手当)に係る相違は不合理⇒原判決のうち、精勤手当に係る損害賠償(予備的請求)に関する部分を破棄自判。
超勤手当に係る損害賠償(予備的請求)に関する部分を破棄して原審に差し戻し。 
  有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは、当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において、労契法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たる。 
  有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労契法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かを判断するに当たっては、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき。
  乗務員である無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で、定年退職後に再雇用された乗務員である有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違は、両者の職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である場合であっても、
次の(ア)~(カ)など判示の事情の下においては、労契法20条にいう不合理と認められるものに当たらない。
(ア)有期契約労働者に支給される基準賃金の額は、当該有期契約労働者の定年退職時における基本給の額を上回っている。

(イ) 有期契約労働者に支給される歩合給及び無期契約労働者に支給される能率給の額は、いずれもその乗務するバラ車の種類に応じた係数を月稼働額に乗ずる方法によって計算するものとされ、歩合給に係る係数は、能率給に係る係数うの約2倍から約3倍に設定されている。

(ウ) 団体交渉を経て、有期契約労働者の基本賃金が増額され、歩合給に係る係数の一部が有期契約労働者に有利に変更されている。

(エ) 有期契約労働者の賃金体系は、その乗務するバラ車の種類に応じて額が定められている職務給を支給しない代わりに、前記(ア)により収入の安定に配慮するとともに、前記(イ)により労務の成果が賃金に反映されやすくなるように工夫されたもの。

(オ) 有期契約労働者に支給された基本賃金及び歩合給と合計した金額並びに当該有期契約労働者の賃金に関する労働条件が無期契約労働者と同じであるとした場合に支払われることとなる基本給、能率給及び職務給を合計した金額を計算すると、前者の金額は後者の金額より少ないが、その差は約2%から約12%にとどまる。

(カ) 有期契約労働者は、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができる上、その報酬比例部分の支給が開始されるまでの間、調整給の支給を受けることができる。
  規定 労働契約法 (期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第二〇条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
  解説  ●労契法20条の「その他の事情」 
労契法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するにあたっての考慮要素として、
労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、
当該職務の内容及び配置の変更の範囲
その他の事情
を規定。

①②は、労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するかに当たり考慮要素となる事情の例示⇒③を①②に準じるものに限定すべき理由はない。
  ●有期契約労働者と無期契約労働者の相違が労契法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かについての判断方法 
会社によっては、ある賃金項目を支給しない代わりに異なる手当を支給しているといった場合もあり得る。
本判決:個々の賃金項目を形式的に比較するのではなく、そのような事情(賃金体系における当該賃金項目の位置付け等)をも踏まえて判断すべき旨を説示。
  ●本件各賃金項目に係る相違の不合理性 
本判決:
本件各賃金項目に係る相違のうち、
①嘱託乗務員に対して精勤手当が支給されないこと、
②正社員の超勤手当の計算に精勤手当が含まれるにもかかわらず、嘱託乗務員の時間外手当の計算の基礎には精勤手当が含まれないこと
は、労契法20条にいう不合理と認められるものに当たる。
but
それ以外の相違については、同条にいう不合理と認められるものに当たらない。
本件:
労務の内容や成果に対する賃金項目(能率給、職務給、歩合給)についての相違が問題とされている。
本判決:
正社員の賃金項目(基本給、能率給及び職務給)と嘱託乗務員の賃金項目(基本賃金及び歩合給)とを比較し、その賃金体系の趣旨を検討した上、
その格差の程度、嘱託乗務員が定年後に再雇用された者であること、嘱託乗務員の労働条件が団体交渉を経て有利に変更されてきたことといった諸事情を総合勘案
⇒嘱託乗務員に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件緒相違は不合理とはいえない。

これらの賃金項目が、労務の内容や成果に対する対価であり、月例給の根幹(基礎)を成すものとして、同質性を有しているとの理解を前提。
本判決:
嘱託乗務員に対して住宅手当及び家族手当を支給しないという労働条件の相違は不合理であると評価することはできないと判断。

労働者の属性(手当の必要性等に影響する事情)の相違に着目して、福利厚生及び生活保障の趣旨で支給される手当の要否・内容を区別すること自体が不合理とは言い難いとの理解を前提。
本判決:
嘱託乗務員に対して賞与が支給されないとの相違が労契法20条にいう不合理と認められるものには当たらないと判断。

賞与の要否・内容については様々な考え方があり得るとの理解を前提に、本件の事実関係の下においては、その不支給が不合理であるとまではいい難いと判断。
  ●労契法20条違反の効果 
  労契法20条の効力により、有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない。
Yの就業規則の合理的な解釈として、
①嘱託乗務員であるXらが精勤手当の支給を受けることのできる労働契約上の地位にあると解することはできず
②精勤手当を割増賃金の計算の基礎となる賃金に含めるべきであると解することもできない。

Yが、嘱託乗務員につき従業員規制とは別に嘱託社員規則を定め、その賃金に関する労働条件を嘱託社員労働契約によって定めることとしているという事実関係の下において、正社員に適用される就業規則を嘱託乗務員に適用するとの解釈は合理的とはいい難いと判断。
本判決:
精勤手当及び時間外手当に係る予備的請求(不法行為に基づく損害賠償請求)について、いずれもYの違法な取扱いには過失があったとして、
①精勤手当に係る予備的請求につき、正社員であったならば支給された精勤手当の額に相当する金額の損害賠償金等の支払を命じ、
②時間外手当に係る予備的請求につき、Xらの時間外手当の計算の基礎に精勤手当が含まれなかったことによる損害の有無及び額につき更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻した。

①嘱託乗務員と正社員との間の職務内容及び変更範囲が同一であり、
②その精勤手当に差異を設けるべき事情がうかがわれないこと等
⇒精勤手当の全額(5000円)を算定の基礎にした。
2388   
  行政p3
東京地裁H30.5.24  
  東京都建築安全条例32条6号に違反するとされた事案
  事案 Xらが建築主となって建築する共同住宅(「本件マンション」)の建築計画について、指定確認検査機関であるAが建基法6条1項前段に定める建築確認処分及び同項後段に定める建築計画変更確認処分

Z2(被告参加人)を含む本件マンションの周辺住民らが本件処分の取消しを求めて審査請求 

東京都建築審査会(裁決行政庁)は、本件マンションの建築計画には条例違反の違法があるなどとして、前記審査請求を認容し、本件処分を取り消す旨の裁決。

建築主であるXらが、Y(東京都)を相手に、本件裁決の取り消しを求める事案。
  争点 本件マンションの建築計画の東京都建築安全条例(「都条例」)32条6号違反等に関する本件裁決の判断の誤りの有無等。 
  判断 南側道路出入口が「直接知情へ通ずる出入口」(施行令13条1号)に当たるとした上で、
①南側道路出入口が、本件建築物一の南棟2階とほぼ同じ高さに設けられているのに対し、本件駐車場は、南棟1階とほぼ同一水面上にある北棟1階に設けられており、南棟2階とほぼ同一水面上である北棟2階にはゲストルーム等が設けられている
②本件駐車場の床面(スロープが設けられていない部分)と南側道路出入口の床面との高低差は、約2.5メートルであり、これは、本件駐車場の床面から天井面までの高さにほぼ相当するという形状

本件駐車場は、南側道路出入口のある階、すなわち「直接地上へ通ずる出入口のある階」に設けられているとは認められないとして、「避難階」に設けられているとはいえない。
①都条例32条6号の「避難階段」は施行令ににいう「避難階段」と同義であって、施行令123条の定める避難階段の構造を有するものをいうと解するのが相当⇒避難階段A及びBは都条例32条6号所定の避難階段に当たらない。

②都条例32条6号所定の避難階段は、当該「建築物の部分」(都条例31条)に設けられなければならないところ、ある階段が自動車車庫等の部分に設けられているといえるか否かは、当該階段と自動車車庫等の用途に供する部分との位置関係を考慮するのみならず、都条例32条6号等の趣旨をも考慮して判断するのが相当。
本件駐車場は北棟に設けられているのに対し、避難階段Cは東棟に設けられている⇒避難階段Cが、本件駐車場から避難しようとする者のための避難施設であるといえないことは客観的に明らか。
本件駐車場から避難階段Cまで円滑に移動することができないおそれがあり、避難階段Cが本件駐車場との関係で都条例32条6号所定の避難階段に当たると解すると、都条例の規定の趣旨に沿わないものとなる。

避難階段Cについても都条例32条6号所定の避難階段に当たらない。

Xらの請求を棄却。
  解説 本件マンションのように建築物内部に自動車車庫が設けられているマンションは珍しいものではなく、自動車車庫について建基法及び施行令に避難施設に関する定めはないところ、特殊建築物である自動車車庫の規模等に応じ、条例で直通階段の設置等の制限(建基法40条)を附加する例がみられ、
条例の解釈において、建基法や施行令との関係が問題となり得る。 
  民事p22
大阪高裁H29.7.12   
  ハーグ条約実施法の事案
  事案 子の父であるX(米国在住)が母であるY(日本在住)に対し、Yによる連れ去りによりXの子に対する監護の権利が侵害されたとして、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(「実施法」)に基づき、子を常居所国である米国に返還することを求めた事案。 
原審がXの申立てを認容⇒Yが即時抗告
  事実 Xが提起した離婚訴訟が米国の裁判所に係属し、その過程で、Xの書面による同意又は裁判所の命令がない限り、Yが子を連れて当該州の外に出ることを禁じる裁判所の命令が発令されているにもかかわらず、Yが子とともに日本に帰国。 
YがXによるDVを主張しており、その主張がYによる連れ去りの背景を成している。
  争点 争点①:子の常居所地国 
  Yの主張 日本へに単身帰国した時点ですでにX及びYの婚姻生活は破綻し、Yは米国での生活を引き払って日本で生活を開始したものであり、その後の米国への帰国も米国での裁判のための一時的なもの
⇒日本への単身帰国以降、Yの常居所地国は日本であり、その期間中に日本で出生した子の常居所地国も日本。 
  判断 常居所とは、人が常時居住する場所で、単なる居所とは異なり、相当期間にわたって居住する場所をいうものと解され、
その認定は、居住年数、居住目的、居住常況等を総合的に勘案してすべき。
とりわけ、連れ去り時に未だ生後7か月余りの本件子について常居所地国を判断するに当たっては、その監護者の意思が重要な要素となる。
①出生からYとの渡米までの子の日本滞在期間が51日間であるのに対し、米国滞在期間は、日本への連れ去りまでで180日間となっている
②Y及び子の渡米後のX及びYとの電子メールのやりとりにおいて、Yが日本に帰る意思がない旨等を述べていた
③渡米時に子が片道チケットを使用し、日本に帰ることを当然の前提としていなかった

連れ去りがされた時点で子の常居所地国は米国。
  争点 争点②:重大な危険の例外 
  Yの主張 Yは、XがYに対して銃口を向けたとか、重量のある箱をぶつけたとかいったYによる暴行等を主張するとともに、XがYと子を車で轢こうとしたと主張し、実施法28条1項4号のいわゆる重大な危険の例外の適用を求めた。
  判断 前者の主張:
それらの事実を認めるに足りる客観的な証拠がない
後者の主張:
Xが子との面会交流後にYと子をYと子が入居しているDV保護シェルターまで送ろうとしたことでトラブルとなり、Yが子を抱いて車から逃げ出し、警察官が出動する騒動になったことは認められるものの、
XがY及び子を轢こうとした事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
  民事p33
広島高裁H29.3.31  
  老親に対する扶養義務についての兄弟間の紛争
  事案 Z(参加人(母)・事件本人)の二男X(申立人・抗告審相手方)が、Zの長男Y1及び三男Y2に対し、
①Zの扶養料として月3万円ずつをZに支払うこと、
②XのZ及び亡きP(Zbの夫)に対する金銭的援助につき、過去の扶養料の求償として、Xの負担した合計額の3分の1ずつをXに支払うこと
を求めた。 
  原決定  Y1及びY2に対し、
Zの扶養料として、X、Y1及びY2の収入に応じて按分した分担額(Y1につき月額1万7200円、Y2につき月額4万6700円)をZに支払うこと、
過去の扶養料の求償として、金銭的援助と認めた額を扶養義務者らの収入に応じて按分した金額(Y1につき168万6081えん、Y2につき457万4763円)をXに支払うことを命じた。
    Y1のみが即時抗告。
Zの扶養料につき、Y1の分担額を月額5000円、Y2の分担額を月額5蔓延とすること、
過去の扶養料の求償を認めないこととする
裁判を求めた。
  判断 子の親に対する扶養義務=生活扶助義務(自らの社会的地位等に相応する生活をした上で余力がある限度において負担する義務)

扶養料の額は、原則として、
被扶養者が実際に要する生活費ではなく、
被扶養者が生活を維持するために必要な最低生活費から収入を差し引いた額を超えず、かつ、扶養義務者の余力の範囲内の金額とするのが相当。 
被扶養者(Z及びP)の必要生活費:
生活保護基準によって算出した最低生活費を基礎として算出し、
これと収入(年金支給額)との差額を不足分として、
扶養義務者らの収入に応じて按分した分担額を算出。
扶養義務者らの余力:
人事院が算定した標準生計費(平成26年人事院勧告の参考資料)に依拠し、
Y1は、収入が標準生計費に満たないものの、Y1の妻が看護師として稼働(収入資料が提出されていないため、賃金センサスの年収額を斟酌)しており、Y1世帯の生活費の分担能力があることを前提として、Y1に自己の分担額を負担する余力があると判断。
Y2:
自己の収入だけで生活費を負担しても、自己の分担額及びより多額である原審判が命じた額を負担する余力があることに加え、Y2の妻が会社員として稼働し、Y2の長女にもパート収入があること、Y2が、Xとの協議に基づき、平成27年1月以降、月5万円(同月4月以降は5万5000円)を負担していると主張し、原審判に抗告していないこと等⇒原審判で定めた額のとおり。
Xは、 標準生計費及び収入によると負担する余力はない
but
過去の扶養料については、Y1及びY2の分担額をもって不足額を満たす
⇒それを超える金額を求償することはできず、
Zの扶養料については、現にZ及び亡Pに対して経済的援助を継続できている⇒Y1及びY2の分担額と不足額との差額(約3000円)を分担すべき。
  解説 扶養義務者の扶養義務の程度については、
夫婦間及び親の未成熟子に対する生活保持義務(被扶養者に扶養義務者の生活程度の生活を保持すべき義務)と、
前記以外の直系血族及び兄弟姉妹間等における生活扶助義務(自らの社会的地位等に相応する生活をした上で余力がある限度において負担する義務)に区別されるとするのが一般的。 
本決定:
子の親に対する扶養義務について、生活扶助義務であると解した上で、被扶養者の生活保護基準に基づく最低生活費を基準とした。
扶養義務者が複数ある場合の分担額:
各人の余力(扶養義務者の収入ー社会的地位に相応する生活費用)に応じて分担させることも考えられるが、
本決定は、扶養義務者らの収入額に応じて按分して原則的な分担額を算定した上で、それとの関係で余力の有無について判断。
扶養義務者の配偶者(扶養義務者でない)の収入を扶養義務者の収入と合算して余力の有無を判断することは、実質的に扶養義務者でない者に負担させる結果となるため相当でないが、
扶養義務者世帯が分担することが相当と考えられる額を検討する際に、配偶者の収入を斟酌することは許容されると考えられる。
  民事p37
札幌高裁H30.2.13  
  同居親(母親)が試行的面会交流の実施を拒絶⇒面会交流実施の諸条件が整っていない⇒面会交流否定
  事案 別居している離婚訴訟中の夫Xが、妻Yに対し、未成年の子らとの面会交流を求めた事案。 
  原審 Yは、Xに対し、本審判確定の日の属する月の翌月以降、Xが未成年者らとそれぞれ2か月に1回程度面会することを許さなければならない。 
    Yが不服として抗告
  判断 父母が別居した場合であっても、子が非監護親と面会交流することは、子が非監護親からこれまでと変わらぬ愛情を注がれていることを知り、親子の間の深い結びつきを感じ取る機会となるのみならず、子の養育及び発達について配慮すべき責務を有する非監護親にとっても、子の置かれた状況や心情などを認識し、当該責務をより的確に全うすることにつながるものといえる

子の利益が害されると認められる特段の事情がない限り、子と非監護親が面会交流をすることを禁止すべきではない。
but
原審で試行的面会交流が実施できなかったことにより、面会交流の実施可能性を見極め、面会交流の具体的内容や条件の検討をすることが困難になっており、
当事者間の紛争の実情に鑑みると面会交流を実施できるだけの信頼関係と協力関係が形成されているとも言い難く、
当事者間で面会交流の実施に向けた具体的協議をすることも困難

現時点でXと未成年者らとの面会交流を実施するにあたっての諸条件が整っているとは認められない。
Yが試行的面会交流の実施を拒否したことは、試行的面会交流の意義、目的を考えると遺憾と言わざるを得ないが、その拒否の事実を面会交流実施の可否を判断するにあたって、面会交流を実施する方向での一事情とすることは未成年者らの福祉の観点からは相当とは言い難い

本件においては、現時点でXと未成年者らとの面会交流を実施することが相当であると認めることができない。
  解説 XがYに対して損害賠償請求を提起したこと、
長期間婚姻費用の分担を行わなかったこと
などの事実を認定した上、
原審で試行的面会交流の実施ができなかったことを重視し、
Xの面会交流を否定。 
  民事p42
札幌高裁H30.5.22  
  雑誌の記事が人格権侵害に当たる⇒雑誌の販売、頒布の禁止等を命ずる仮処分(肯定)
  事案 雑誌の出版社であるY(相手方)が発行した月刊誌において、公共交通等を事業内容とするA社の代表取締役であるX(抗告人)について、Xが業務上横領により告発されたことに関する記事(旅費が振り込まれたX名義の口座番号を含む銀行口座の情報など)を掲載⇒Xにおいて、本件記事によりXの名誉及びプライバシーが侵害されたとし、Yに対し、人格権(名誉権及びプライバシー権)に基づき、本件記事を切除又は抹消していない本件雑誌について販売等の禁止等を求めた。 
  原審 ①本件記事によるXの名誉権侵害及びプライバシー権侵害が重大なものであるとは言い難い
②Xの損害又は危険が仮処分命令によりYの被る不利益を比較して著しく大きいものともいい難い
③公共交通等を事業目的とし、公益性もあるA社の代表取締役につき業務上横領による告発がなされたという、公共の利害に関する事項についての表現行為という面を有する

Xの損害又は危険は事後的な損害賠償等によって対処すべきものであり、仮処分命令を必要かつ相当とするほどの保全の必要性があるとは認められない。

Xの申立てを却下。 
  判断  ●被保全権利の存否
本件記事は、「一般の読者に対し、Xが業務上横領で告発された事実自体を伝えるにとどまらず、XがA社の代表取締役就任前であり同社から旅行費用の支払を受ける根拠がないにもかかわらず、不当に高額な旅行費用を絶対服従といえるような関係にある同社の経理責任者に支払わせたとするもの」⇒Xが実際に業務上横領という犯罪を犯したという印象を与えるもの⇒Xの社会的評価を低下させ、名誉を毀損するというべき

人格権(名誉権)の侵害を肯定。
本件記事には、
X名義の預金の銀行名、口座の種類、口座番号等の情報が示されており、これらが通常、私生活上秘匿されるべき情報であり、公開を欲しない情報であって、プライバシーにわたる情報といえる。
とりわけ銀行口座の口座番号等も含む情報は、第三者に悪用される可能性が高く、極めて高い秘匿性を有する情報であって、これがマスキングもされずに公開された点において、プライバシー侵害の程度は著しい。
マスキングもせずに公開することについて何らの公益性は認められない。

人格権(プライバシー権)の侵害も肯定。
  本件雑誌は既に販売されているが、名誉毀損及びプライバシー侵害の程度は高く、これによる被害の更なる拡大やインターネットによる拡散を防ぐ必要性も高い

保全の必要性も肯定。
  解説 雑誌等による名誉毀損行為を理由とする差止請求の可否:
人の社会的評価に係る事実の摘示や意見表明は言論活動の一環であることが多く、これについて安易に事前の差止めを認めることになれば、民主主義の根幹を形成する自由な言論市場における意見の交換を妨げる危険性が生じることになる⇒表現の自由との関係の調整が必要。 
本決定:
最高裁昭和61.6.11(北方ジャーナル事件)を参照しつつ、
名誉権に基づく出版物の頒布等に対する事前差止めは、表現行為に対する重大な制約となる⇒憲法21条の趣旨に照らし、原則として許されない。
but
その表現内容が真実でないか、又は専ら公益を図る目的でないことが明白であって、
かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあると認められる場合には、
これが許されると解するのが相当。
本件雑誌が既に発売されており、その意味において事前の差止めとは異なる
but
出版物の販売禁止やその回収等を求めている
⇒表現行為に対する制約となるもの⇒前記同様の要件の下に申立ての適否を検討するのが相当。
プライバシー侵害と差止請求の可否:
実務では、
①出版する記事等の対象が債権者のプライバシーに属するものであること
②出版する記事等の内容が社会の正当な関心事でないか、表現内容、表現行為が正当なものでないこと
③出版する記事等の公表によって、債権者が重大な損害を受けること
が求められている。 
最高裁H14.9.24:
名誉、プライバシーを含む人格権侵害の事案について、
公共の利益にかかわらないプライバシーにわたる事項を表現内容に含む小説の公表により公的立場にない者の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害され、小説の出版等により重大で回復困難な損害を被らせるおそれがある

出版等の差止請求を認容した原審の判断に違法はないとする。
  民事p46
大阪地裁H30.3.30  
  北朝鮮によるミサイル攻撃を受ける危険を理由に、高浜原発の運転差止めを求めた事案
  事案 大阪府に居住するXが、高浜原発3号機及び4号機を設置している電気事業等を営むY(関西電力)に対し、本件原発が北朝鮮より弾道ミサイルで攻撃された場合には、放射性物質が大量に放出されて債権者の人格権(債権者の生命、身体、健康及び平穏生活権)が侵害される⇒人格権に基づく妨害予防請求として、稼働中の本件原発の運転を仮に差し止めることを命じる仮処分命令を求めた。 
  争点 ①本件差止請求の要件と疎明責任の所在
②北朝鮮が本件原発をミサイルで攻撃する具体的危険性があるといえるか 
  判断 ●本件差止請求の要件と疎明責任の所在 
一般に、実態的権利に基づく妨害予防請求権が認められるためには、少なくとも、当該実体的権利が違法に侵害される高度の蓋然性が認められることが必要であり、債権者において、これについて主張、疎明責任を負う。
発電用原子炉施設の設置主体である事業者が、北朝鮮からのミサイル攻撃のような他国からの武力攻撃に関しては、専門的技術的知見及び資料を十分に保持しているとは認められない

①北朝鮮からのミサイル攻撃の危険性に関し、Yが疎明責任を負担するという疎明責任の転換
②Xの人格権侵害があるとの事実上の推定が認められたり、
③Xの疎明責任が軽減されたりすると解することはできない。
  ●北朝鮮が本件原発をミサイルで攻撃する具体的危険性があるといえるか
北朝鮮が本件原発をミサイル攻撃する具体的危険があることについて、疎明されたとはいえない。
  民事p56
京都地裁H30.3.27  
  医師の過誤を認めたが(脳性麻痺等との)因果関係を否定した事案
  事案 平成23年4月に出生したX1、X1の両親であるX2及びX3が、X1が脳性麻痺となったのは、医療法人Y1の代表者理事長であり、X1の担当医であったY2の診療行為の過失により低酸素状態に至らしめた⇒Y1及びY2に対し、不法行為を理由に損害賠償金約1億円を請求⇒X1が訴訟係属中に死亡⇒X2及びX3が法定相続分に応じX1を承継。 
  判断 被告医師の注意義務違反は認めたが、
注意義務違反とX1が罹患した分娩中の低酸素症、脳性麻痺との間には因果関係は認められない⇒請求棄却。 
①脳性麻痺の発症原因は様々なものがあり、一概に特定できないケースが多い⇒分娩中の低酸素が脳性麻痺の原因になり得ると判断する条件について、米国産婦人科学会の産科臨床委員会の基準(「ACOG基準」)が広く用いられている。
②の脳性麻痺のうち、分娩時の低酸素症や新生児仮死が原因であるものは約10パーセントであるとされているデータもある⇒本件がそのケースに該当すると認定判断するためには、ACOGの基準を充足しているかが重要な考慮要素になる。
③ACOGの基準によれば、4つの項目をすべて満たす必要があるところ、1つの証拠上不明

因果関係の存在を否定。
ACOGの基準を満たさないとしても、被告医師の注意義務違反とX1の脳性麻痺との間に因果関係を認める余地がないかをさらに検討
but
X1の脳性麻痺が、分娩中の被告医師の注意義務に起因する低酸素を原因としているものとは認められないとして、これを否定。
  民事p69
広島地裁H30.5.30  
  暴力団員への責任追及と使用者責任
  事案 性風俗店を経営しているXらが、暴力団員から、それぞれ
①X1が、みかじめ料の要求、車両の襲撃及び金員の喝取等の脅迫行為を、
②X3社及びその代表者であるX2が、みかじめ料の要求及び車両の襲撃等の一連の脅迫行為を、
③X4が、みかじめ料の要求並びに車両及び事務所の襲撃等の一連の脅迫行為を受けたと主張して、
①及び②につき、指定暴力団の参加暴力団の各組長であるY2及びY3並びに構成員であるY4の共謀による共同不法行為責任を、
Y2又はY3とY4の共謀が認められない場合に、Y2又はY3の使用者責任を、
③につき、Y3及びY4の共謀による共同不法行為責任を、
Y3とY4の共謀が認められない場合、Y3の使用者責任を、また、
①から③までにつき、
当該暴力団からみて最上位に当たる指定暴力団(A会)の会長であるY1の使用者責任又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(「暴対法」)31条の2所定の責任を、
それぞれ主張し、損害賠償を請求。 
  判断 ①から③までの各脅迫行為の事実があったこと、①及び②につき、Y2、Y3及びY4の、③につきY3及びY4の、共謀の事実がそれぞれあったことを認定し、各共同不法行為責任を肯定するとともに、Y1の使用者責任も肯定。
実損額が加え、慰謝料として、X1及びX2につき各400万円(請求額は各500万円)の、X4につき600万円(請求額は800万円)の損害を認めた。
Y1の使用者責任:
①最上位の暴力団(A会)が、指定暴力団に指定されている
⇒暴対法3条1号及び3号の要件を満たすものと判断されている、
②A会は、その傘下組織がA会の威力を利用した資金獲得活動として性風俗店等からみかじめ料を徴収することを促し、これを管理していた上、その一部を上納金として受け取っていた
③A会の「代表者等」(暴対法3条3号)に当たる会長であるY1は、参加組織を含めた暴力団の構成員に対し、自らの指示や意向に従わせる統制下におき、指揮監督をする関係にあった

事業のために他人であるY2、Y3及びY4らを使用する者にY1が当たる。
各脅迫行為は、当該暴力団及びその傘下組織の威力を利用した資金獲得活動として、Y1の事業の執行として行われたもの。
  解説 暴力団の上位者である組長らに対して使用者責任に基づく損害賠償責任を追及する訴訟の1つであり、
最高裁H16.11.12:
階層的に構成されている暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立しているとされた事例
の法理に従った事例判断。
①みかじめ料の支払を断った性風俗店経営者らの運転する車両を襲撃しフロントガラスをたたき割るなどした暴力団員による悪質な不法行為について、最上位の指定暴力団の代表者等の使用者責任を肯定した事例であるとともに、
②当該不法行為が生命や身体にまで危害を加えかねない著しい恐怖を与える態様のものであったことなどを考慮して高額の慰謝料を認めた事例
  商事p84
東京高裁H29.6.15  
  虚偽の有価証券報告書の提出で罰金・課徴金⇒幇助者にその損害賠償請求(否定)
  事案 Xは、長年にわたり損失の会計処理に窮していた⇒経営コンサルティング会社を営むYらの関与により、損失隠しのスキーム及び損失解消のスキームを構築してその実行:
Xの新規事業の投資先とされていたベンチャー企業を利用して、その株式を簿外ファンドに取得させて、それを不当に高額に評価して買い取り、さらに実態の伴わない過大なのれんを計上する不適切な会計処理を行い、これに基づく虚偽の有価証券報告書を作成して提出
⇒有価証券報告書虚偽記載の罪に問われて罰金7億円及び課徴金1986万円を納付

Xは、Yらによって、不当な管理手数料や報酬などのほか、ベンチャー企業の株式取得原価とXの購入価格の差額分572億9540万円及び課徴金相当額の損害を被った

主位的に、ベンチャー企業の株式取得原価とXの購入価格の差額分及び課徴金相当額が損害であるとし、
予備的に、ファンド管理手数料等としてYらに支払った費用等並びに罰金及び課徴金相当額が損害であるとして、
その一部を請求。 
  原審 ①罰金及び課徴金相当額の損害賠償請求につき、Yらが加担したことによって、罰金刑の言渡しという不可分の1個の結果を招来したものと認められる
②罰金や課徴金は、それを科された者が自ら納付すべきものであるとしても、財産的な損失であることに変わりはない
⇒不法行為と相当因果関係のある損害であると判断。 
  判断 主位的請求について:
そのうちベンチャー企業の株式取得原価とXの購入価格の差額分については最終的にXに償還されたものとして、損害に当たらず
罰金及び課徴金相当額について:
①刑罰は一定の法益の剥奪であり、犯罪行為者に加えられるもの⇒本質的に一身専属的な性質を有する
②本犯者の従犯者に対する全額の損害賠償請求を許容することは、刑罰の他に転嫁するに等しい

信義則に照らして、罰金及び課徴金相当額の損害賠償請求は許されない。
予備的請求であるファンド管理手数料等については、控訴審における請求の拡張分までこれを認容。
  解説 刑の言渡しは、犯罪行為者に対するもの⇒言渡しを受けた本人以外に効力は及ばず、その他の者に刑を執行することは許されないのが原則。 
例外:刑訴法491条、492条。
  労働p104
東京高裁H30.2.7  
  日雇派遣ないし日々職業紹介での「即給サービス」での振込手数料の天引きが違法とされ、慰謝料の支払いも命じられた事案。
  事案 Xは、派遣スタッフとして登録していたY1から日雇派遣労働者としてY2に派遣されて、合計7日程度就労し、その後、Y1の日々職業紹介により、Y2に日々雇用されて、合計19日就労。 
Xの給料の支払に当たって、給料日前日に給料を受け取るには105円ないし315円の振込手数料を要する「即給サービス」というシステムを用い、給料から同振込手数料を天引き。
⇒賃金の全額払いの原則を定めた労基法24条1項に違反するところ、Yらに対し、民法709条、719条1項に基づき、他の不法行為の分と合わせて、連帯して慰謝料300万円及びこれに対する遅延損害器の支払を求めた。
  一審 Xの請求をいずれも棄却。 
  判断 ・・・即給サービスの利用手数料の負担者については、Y1の「銀行口座振込依頼書(兼 即給サービス利用申込書)」によれば、利用者である労働者とされているが、YらがXの賃金と即給サービスの利用手数料を相殺することができるためには、Xが相殺に同意していることだけでは足りず、当該同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足る合理的理由が客観的に存在しなければならない(最高裁H2.11.26)。
本件の場合、Yらは、Xら就業者に対し、即給サービスの利用を誘導しているといわざるを得ないところ、これにより、Yらは現金による賃金支払の事務の負担を免れることができる一方、Xら就業者は、日雇派遣及び日々職業紹介という不安定な雇用に置かれている者であり、不本意ながら即給サービスを利用せざるを得ない立場にあるといえ、現に45パーセントに及ぶ就業者が即給サービスを利用している

Xら就業者の同意があるとしても、それが労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足る合理的理由客観的に存在する場合に当たらず、Xの賃金から即給サービスの利用手数料を控除することは、労基法24条1項に違反する。
労基法24条1項は、賃金の全額払いを確保することができる労働者の権利・利益を保護するもの⇒これに違反することは、労働者の権利・利益を侵害するものとして、民法の不法行為における違法性を構成。
①ここでの労働者の権利・利益には、賃金が労働者の生活の基盤であることからすると、単に経済的利益だけでなく、人格的利益も含まれるとするのが相当。
②Yらは、賃金全額を支払っていないことを認識していた⇒Xの権利・利益を違法に侵害することについて、過失があった。
⇒Xの請求を1万円及びこれに対する遅延損害金の限度で認容。
  解説 最高裁H2.11.26:
労働者が相殺に同意していることだけでは足りず、
当該同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足る合理的理由が客観的に存在しなければならない。
⇒条件付きで労基法24条1項の賃金の全額払いの原則に反しない。 
  刑事p114
東京地裁H29.4.27  
  無線LANアクセスポイントへの接続に必要なWEP鍵は、電波法109条1項にいう「無線通信の秘密」に当たらないとされた事例
  事案 被告人は、フィッシングメールを利用して、企業が管理するインターネットバンキングのログインのパスワード等を不正に取得し、不正ログインやそれに引き続く不正送金を行ったという
不正アクセス法違反、電子計算機使用詐欺などの罪で起訴されたほか、
被告人方の向かいの家(V8)に設置された無線LANへのただ乗りが電波法違反の罪にあたるとして起訴。 
  争点 無線LANアクセスポイントへの接続に必要な「WEP鍵」をハッキングツールを用いて割り出し、それを利用して同アクセスポイントに接続することが、電波法109条1項にいう「無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を・・・・窃用した」といえるか。 
  規定  電波法 第109条 
無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、又は窃用した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  判断 電波法109条1項の「無線通信の秘密」とは、当該無線通信の存在及び内容が一般的に知られていないもので、一般に知られないことについて合理的な理由ないし必要性のあるものをいう。
①WEP鍵は、あくまで暗号文を解いて平文を知るための情報であり、その利用は平文を知るための手段・方法に過ぎない
②WEP鍵を計算によって求めるためには、必ずしも無線LANルータと端末機器との間で送受信されるパケットを取得する必要はなく、ARPリプライ攻撃によってパケットを発生させることでも足りる⇒WEPカギは通信内容の如何にかかわらず取得することができる

WEP鍵は、無線通信の内容として送受信されるものではなく、「無線通信の秘密」にあたる余地はない。
   刑事p130
東京家裁H29.7.14
  軽微な窃盗保護事件での第1種少年院送致の事案
  事案 たばこ1箱を万引きしたという軽微な窃盗保護事件において、保護処分歴のない19歳の女子少年を第1種少年院に送致。 
  決定 非行に至る経緯及び家庭裁判所継続歴からうかがわれる
少年の万引きへの抵抗感、規範意識の希薄さ、
少年緒生活歴について、母親の許容もあっての不登校、
中学1年からの喫煙、、万引きといった逸脱行動の出現
母親が処方された睡眠薬等の乱用にみられる少年の薬物依存傾向
就労経験の乏しさ 

知的能力の制約に起因する社会適応力及び生活意識の乏しさや深刻な無力感といった少年の資質上の問題

怠惰な生活を許容し、逸脱行動を助長してきた母子関係をよりどころにする保護環境上の問題

そうした問題の表れともいうべき少年の基本的生活習慣の欠如、
処理しきれないほどの負担を抱え込むことによる対人関係における依存性、逃避傾向
を指摘。
本件は少年が抱える問題の表れとみることができ、現状の生活が続いた場合の再非行危険性は高く、自己の問題に対処する能力及び保護環境を初めとする少年の改善更生に向けた社会的資源の不十分さ

社会内処遇によって少年の再非行を防止し、その改善更生を果たすことは極めて困難。

少年については保護処分歴はないものの、少年院に収容することが必要不可欠。
なお、少年緒保護環境に鑑み、社会復帰後の帰住先の確保に係る環境調整命令を発している。
  解説  ●少年にこれまで保護処分歴がないこと 
収容保護への謙抑的な傾向や段階的処遇が指摘される一方、
非行性が深化することのないよう適時適切な保護処分の必要性も指摘される。
少年保護手続が個々の少年の資質・環境・非行内容等を総合的に判断し、最適な処遇を個別に追求し、その健全育成を図ることを目的

事案の内容と要保護性の程度に即して健全な判断を個別的に下していくほかなく、初回係属でも少年院送致を選択することが必要な場合もある。
本決定:
少年の再非行危険性とその背景にある少年の社会適応力の乏しさ、生活意欲の乏しさ、深刻な無力感といった根深い少年の資質上の問題に加え、
少年の睡眠薬等への依存傾向の深刻さ、不適切な養育態度により怠惰な生活が許容され、逸脱行動が助長されるような母子関係をよりどころとする長期間にわたる保護環境の問題などからうかがわれる少年の要保護性の高さを重視
⇒収容処遇を選択。
  ●非行内容自体がたばこ1箱の万引きという軽微なものであること 

手続面における少年審判における審判対象は何か(実体面からみた場合の保護処分の要件)という問題に関連するとともに、処遇決定における非行事実の機能をどう捉えるかという問題。
A:少年の保護・教育に最適な処遇を目指す健全育成(少年法1条)のためには要保護性が審判対象で非行事実の存在は審判条件にすぎないとする人格重視説

〇B:非行事実も要保護性とともに審判対象であるとする非行事実重視説

少年審判の私法的機能や適正手続の理念を重視
  非行事実がに認定され、裁判所が少年を保護処分に付す必要がある判断した場合、いかなる保護処分を選択するかはその少年の要保護性に応じて決定。 
要保護性の意義:
①犯罪的危険性(少年の性格、環境に照らして将来再び非行に陥る危険性)
②矯正可能性(保護処分により犯罪的危険性を解消できる可能性)
③保護相当性(少年の処遇にとって保護処分が最も有効、適切な手段であること)
で構成されるとするのが通説・実務の立場。
  非行事実を重視する立場⇒非行事実の軽重と保護処分の間に一定の均衡が必要とされ、少年審判の司法的機能等を強調する立場⇒非行事実が保護処分の限界を画する。
vs.
非行事実との均衡を要求すると、場合によっては、少年の要保護性に対応しないがゆえにその改善教育には役立たない保護処分を課すことになり、それを避けようとすれば、少年に要保護性が認められるにもかかわらず不処分とせざるを得なくなる。 
非行事実については、
その動機・目的・経緯、常習性ないし同種非行歴、保護処分歴、保護環境が非行にもたらす影響などを総合的に考慮して非行事実の軽重を判断すべきであり、これらの事実を少年緒問題点を解明するための重要な事情と捉え、非常事実の結果は大きくなくとも軽微な非行とみるべきではない場合がある。
本件:
たばこ1箱の万引き
but
少年は中学1年のころから喫煙と万引きを行うようになり、
いずれも審判不開始ではあったものの3件の同種非行歴を有し、
本件万引きに至った経緯や前日にも同様の状況の下でたばこを万引き

少年の万引きへの抵抗感、規範意識は極めて希薄であり、
少年の資質上の問題と保護環境上の問題は根深く深刻

本件非行事実が軽微であるとはいえない。
2387   
  行政p3
東京地裁H30.3.14  
  障害者雇用枠の契約社員の障害等級が問題となった事案
  事案 障害者雇用枠の契約社員として就労しているXが、知的障害により、20歳に達した日に障害等級に該当する程度の障害の状態にあり、国年法(「法」)所定の障害基礎年金の支給要件を充足している⇒障害基礎年金の支給の裁定を請求⇒厚生労働大臣から、障害等級に該当する程度の障害の状況にあるとはいえないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分⇒同処分の取消しを求めた。 
規定 法30条の4第1項:
初診日において20歳未満であった者が障害認定日後の20歳に達した日又は20歳に達した日後の障害認定日(「基準日」)において障害等級に該当する程度の障がいの状態にあることを障害基礎年金の支給要件とする。
法30条2項は、障害等級を障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とした上で、各級の障害の状態は政令で定めるものとし、これを受けた国年法施行令は、障害等級の各級の障害の状況につき、別表を定め、その上で、厚生労働大臣による障害等級の認定の基準として、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(「障害認定基準」)を定めている。
  争点 Xの基準日における障害の状態が障害等級2級に該当するのか、具体的には、障害認定基準において、知的障害に関し、障害等級2級に該当する障害の状態の例示として挙げられている「知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの」に相当するかが争われた。 
  判断  障害等級2級に該当するかは、特段の事情がない限り、障害認定基準を参酌して判断すべきで、知的障害に関しては、前記の例示又はこれと同等程度の障害の状態にあると認められるか否かで判断するのが相当。
その際には、障害認定基準自体が定めるとおり、知能指数のみに着目することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断するべきであるし、
就労をしている者も援助や配慮の下で労働に従事していることが通常であることを踏まえ、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、
現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断すべき。
判断の資料となる精神障害に係る所定の診断書の記載を踏まえ、日常生活能力の判定に当たっては、対象者が単独で生活することを仮定して判断すべき。
  Xから提出されている医師の診断書における日常生活能力の判定の各項目(適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性の7項目)及びその程度の記載の相当性について、
Xから提出されている病歴状況申立書や、Xの母や中学校時代の担任教師の供述等の他の資料も踏まえて検討し、
前記診断書は、Xの日常生活の能力の判定のうち、いくつかの項目においては日常生活能力をやや過少に評価しているきらいがないではないが、全体的な記載内容としてはおおむね相当であり、その内実に照らせば、原告の日常生活能力の程度について、診断上の所定の選択項目のうち「(4) 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。(たとえば、簡単な文字や数字は理解でき、保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し、身辺生活についても部分的にできる程度)」を選択した前記診断書の判断は相当。
  民事p13
東京高裁H29.12.13  
  地面師詐欺事件で本人確認情報提供制度の資格者代理人たる司法書士の責任(肯定)
  事案 いわゆる地面師詐欺事件に伴って生じた、被害者X(土地の買主)から、土地所有者になりすました女性(真実の所有者ではないので土地の登記識別情報を有していない)について、不登法23条4項1号の資格者代理人として本人確認情報の提供をした司法書士Y2に対する損害賠償請求事件。 
地面師グループは、A社に無断で本件土地の売買契約を締結して買主から売却代金を騙取することを企て、A社の代表者B(女性)になりすました女性を用意。
地面師グループは、自称BにA社とY1との本件土地の売買契約を締結させ、形式的には本件土地売買契約の飼い主をY1からXに変更する形で、転売話が進んでいった。
Y2は、Y1及び自称B側が用意した司法書士。
自称Bは、本件土地の登記識別情報を持っていない⇒Y2を資格者代理人として、不登法23条4項1号の資格者代理人による本人確認情報提供制度を利用することとし、精巧に偽造されたB名義の印鑑登録証明書、運転免許証、健康保険証やA社の印鑑証明書を用意。
Y2はこれらの偽造文書の確認や自称Bへの人定質問を行い、自称BがB本人である旨の本人確認情報を提供。

Xは、Y1に2億円を支払って本件土地の所有権移転登記の抹消登記手続訴訟を提起。
but
Xは、A社から本件土地の所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟を提起され、敗訴判決が確定。

Xは、Y2に対して本件訴訟を提起し、Y2が不登法23条4項1号の資格者代理人として必要な自称Bに対する確認を怠った過失があるとして、損害賠償請求。
  一審 人証調べを実施せず、書証のみで審理、判決。 
B名義の印鑑登録証明書、運転免許証、健康保険証やA社の印鑑証明書は偽造されたものであったが、精巧に偽造されたもので、A社の印鑑証明書は登記申請の際に登記官も偽造が見抜けないほどであった⇒これらの証明書の確認により本人確認をしたY2の行為に過失があるとはいえない。
  判断 人証調べを実施し、審理、判決。
資格者代理人が本人確認情報を提供する場合において、原則として不登規則72条に規定された方法による本人確認(本件でY2が実行した方法による本人確認)を行わば足りる。
but
以来の経緯や業務遂行過程で入手した情報及び専門的知見に照らし、なりすまし等を疑うべき事情がある場合には、本人確認のための更なる調査を行うべき注意義務がある。
①自称BはA社が休眠会社であると発言したが、A社には本件土地からの駐車場賃料収入があるはずであるから休眠会社であるという自称Bの発言と矛盾
鹿児島県の小規模有限会社が時価1億円以上の更地を東京都内に所有していながら休眠会社であるということも不自然。
②自称Bは、Y1に送金された本件土地の売買代金の一部をY1からA社への本件土地の売買代金として送金させるに当たり、送金先の口座として、A社名義の口座ではなく、B個人名義のゆうちょ銀行口座を指定。
③自称Bは、前記②のB個人名義のゆうちょ銀行口座に、Y1から送金された売買代金が着金されたことを確認しないまんま、A社からXへの所有権移転登記申請手続に必要な書類をY2に預けた。


自称Bがなりすましであることを疑うべき事情があった。
  民事p22
広島高裁岡山支部H30.3.22  
  保険契約者の代表取締役が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係⇒保険契約の解除(有効)
  事案 Xと保険会社Y1(生保)、Y2(損保)とは、生命保険契約・損害保険契約を締結。
本件各保険の約款には「重大事由による(保険契約の)解除」という表題が付された条項で、
本件契約者等が「その他反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有していると認められること」(密接交際者)に該当する場合、
保険者が保険契約を解除することができる旨の暴力団排除条項(反社会的勢力排除条項)が規定。 
Z県は、Xにつき「暴力団又は暴力団関係者と社会的に非難されるべき関係を有していると認められた」として、県の建設工事等入札参加資格者に係る指名停止等要領に基づき、1年間入札指名業者から排除する旨の措置(本件排除措置)

Yらは、本件排除条項に基づき、本件各保険契約を解除

Xは解除の無効を主張して、Yらに対し、本件各保険契約に基づき、Xが保険契約者としての地位を有することの確認を求めた。
  判断 本件暴排条項の趣旨
⇒本件暴排条項は、「保険金の詐取のような場合とは異なり、公共の信頼や業務の適法性及び信頼性の観点から、外形的な基準によって、これらを害する恐れがある類型の者を保険契約者から排除しようとしたもの」
本件暴排条項の「社会的に非難されるべき関係」とは、
①(被保険者等自身が)反社会的勢力に該当すると認められること
②反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供するなどの
関与をしていると認められること
③反社会的勢力を不当に利用していると認められること
のいずれかに準じるものであって、
反社会的勢力jを社会から排除していくことの妨げになる、
反社会的勢力の不当な活動に積極的に協力するもの、
反社会的勢力の不当な活動を積極的に支援するもの、
反社会的勢力との関係を積極的に誇示するもの
等をいい、適用すべき場合の限界を画されている。
P1が、暴力団関係者に対し顔を立てさせることによって傷害事件の被害者に被害申告しないことを約束させ、暴力団関係者からの害悪を告知して未払の工事代金の回収を断念させたなどの事実関係

保険契約の解除事由たる「反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有している」の適用による保険契約の解除は有効。
  解説 暴排条項が保険法上の重大事由解除として位置づけられるのかそれとは異なる独自の約定解除として位置づけられるのか? 
but
本件では、X・Yらとも、本件暴排条項が保険法上の重大事由解除として位置づけられることを前提として主張⇒本件暴排条項の保険法上の位置づけは争点にはならなかった。
その解除事由(反社会的勢力等の属性又は反社会的勢力との一定の関係性)に関して、信頼関係破壊の要件を充足するか?

A:反社会的勢力等の属性は、それ自体が保険法の重大事由解除の要件たる信頼関係破壊を基礎付ける⇒「全面的有効説」
B:道徳的危険に直接関連しない事情は信頼関係破壊の評価根拠事実として考慮することはできないとし、その上で、反社会的勢力のうち道徳的危険を招来する高度の蓋然性がある者との関係においては暴排条項を有効とする「限定的有効説」
C:重大事由解除と暴排条項とは本来異なる性質のもの⇒保険契約者等が反社会的勢力という属性を有し、又は、反社会的勢力との関係性を有することが直ちに保険者の信頼を損なうと評価するのではなく、なお慎重に検討すべきとする「慎重説」
  民事p31
仙台高裁H30.4.26  
  東北地方太平洋沖地震後の津波による児童の死亡と小学校の校長らや教育委員会の安全配慮義務違反(肯定)
  事案 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震後の津波により、石巻市立大川小学校に在学していた児童74名及び教職員10名が死亡
⇒死亡した児童のうち23名の父母である第一審原告らが、第一審被告石巻市の公務員であり、第一審被告宮城県がその給与等を負担していた同小学校の教員等に児童の死亡について過失があるなどと主張⇒第一審被告らに対し、国賠法1条、3条等に基づき、総額約22億円余の損害賠償を請求。 
  判断 ①宮城県防災会議は、2004年、同県沖で30年以内にマグニチュード8の地震が極めて高い確率で発生すると報告⇒市教委は、遅くとも2008年度から、すべての学校で地域の事情に即した災害対応マニュアルの策定や見直しに取り組むよう施策を進め、2010年4月30日までにマニュアルの作成、改訂を終えるよう義務づけた。
②同時点で前記マニュアル作成・改訂義務の内容は規範性を帯び、大川小の校長や教頭、教務主任は、地震で発生する津波の危険から、児童の生命、身体の安全を確保すべき義務を負っていた。 
前記安全確保義務を果たすために、校長や教頭、教務主任に求められる知識や経験は、大川小がある地域住民の平均レベルより、はるかに高いものが必要。
①前記防災会議の報告は有力な科学的知見。
②地震に伴う地盤沈下や津波による堤防の破壊で、約200メートルの距離を隔てて隣り合っている北上川が大川小を浸水させる危険があることを示唆する知見などを総合して詳細に検討

前記防災会議の報告で大川小が津波浸水域予測に含まれていなかったとしても、大川小が津波被害を受ける危険性があったというべきで、校長らはそのことを十分予見可能であった。
市教委は、大川小に対し、危険発生時に教職員がとるべき措置の具体的内容や手順を定めた危機管理マニュアルを作成するように指導し、それが地域の実情等を踏まえた内容となっているかを確認し、不備があれば是正を指示する義務があった。
but
校長は、市教委に提出した前記マニュアル内で、避難場所として「近隣の空き地・公園等」と記載するだけで、避難経路や避難方法は何ら記載しておらず、義務を怠ったと認めるのが相当。
市教委も、内容を確認せず、是正させる指導をしなかった。
適切な避難場所等の記載があれば、今回の津波による被害は回避できた。
  解説 学校事故における安全確保義務のほとんどは、教師個人の問題とされている。
but
教育活動に伴って生ずる危険から、生徒の生命・身体の安全を確保する義務は、直接、教育活動を指導する教師個人にあるが、それよりも第一次的には、教育組織としての学校自体にある。
⇒学校という組織の管理上の過失を問題としていくことが先決。 
  民事p108
東京地裁H30.1.31  
  仮装通貨ビットコインの交換取引所を運営していた会社が破産⇒利用者がビットコインの返還請求権として届け出た破産債権の金額が争われた事案
  事案 仮装通貨ビットコインの交換取引所を運営していたAの破産手続において、本件取引所の利用者XとAの破産管財人Yとの間で、Xがビットコインの返還請求権として有する破産債権の金額が争われた事案。 
Xは、本件破産事件において、ビットコイン35000BTCの返還請求権を有する⇒これを日本円に換算した金額と遅延損害金の合計約17億7277万円を破産債権として届け出⇒Yは、債権調査期日において、Xが保有するビットコインの残高は約0.05BTCにすぎないとして、届出債権のうち2564円及びこれに対する遅延損害金30円のみを認め、その余の届出金額を認めなかった。
Xは破産裁判所に債権査定の申立⇒管財人と同じ決定⇒破産債権査定異議の訴え(破産法126条1項)を提起。
  判断 Yは、Aが保有していた、本件取引所の利用者のアカウント情報が記録されたデータベースを届け出破産債権と照合し、当該データベースに記録されたビットコイン残高に従って届出破産債権の認否。
~信用性を肯定。 
X:Aの代表者によって本件取引所からビットコインの不正な引出しが行われてビットコインが喪失した旨の主張。
仮にXが主張するうような事実があったとしても、その場合には既にビットコインは他に移転して、同時にコイン債権(ビットコインにつき通貨類似の取扱いをすることを求める債権)も他に移転したことにんる⇒破産手続開始時においてXはAに対しコイン債権を有しなかったことになる⇒Xの主張を退けた。
  解説 仮装通貨については、資金決済法の平成28年改正によって規定が設けられ、
物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」 と定義。(同法2条5項)
but
その私法上の性質についてはなお不明な点が多い。
民法上、所有権の対象は有体物に限定されており(民法85条)、無体物にすぎない仮装通貨は所有権の対象にならない。
仮装通貨には発行者が存在しないものが多い⇒特定の者に対する債権と構成することも困難。
仮装通貨の私法上の性質
A:物権ないし準物権と同様の構造をもつ
B:排他的な帰属関係が認められる財産的利益を包摂する概念である「財産権」に含まれる
C:仮装通貨やその取引はネットワーク参加者によって「合意」された存在として捉えれば足り、あえて明確な性質決定をする必要はない
本件:
ビットコインの返還請求権を破産債権と扱うことを前提としたうえで(破産法103条2項1号イ)、その金額が争われた。
本判決は、「コイン債権」という新たな概念を立て、ビットコインが移転したときはこのコイン債権も一緒に移転するとした。

金銭において所有と占有が一致するとされていることとのアナロジーによったもの。
通常の金銭であれば、預り金を不正に流出させた場合であっても受寄者は寄託者に対する返還請求を免れないが、本判決によれば、ビットコインについてはこれとは異なる扱いをされることになる。
  民事p112
広島地裁H30.4.24  
  警察署に保管中の押収物である現金が盗難被害⇒被押収者による請求(否定)
  事案 自ら及びその関係先から現金を押収されたXが、警察署内に保管されていた押収物である同現金が何者かに窃取される盗難被害に遭い、これに司法警察職員の過失があり、占有権又は押収物還付請求権を侵害されたと主張

同警察署を設置運営するY(広島県)に対し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償請求。 
Yの主張:
①Xは押収物について占有権を有しない
②Xの押収物還付請求権はいまだ発生していない
  判断 占有権侵害の点:
押収物については被押収者による占有が継続しているものではない⇒Xの占有権が侵害されたとはいえない。
(仮に、被押収者の間接占有が認められるとしても、損害の発生が認められない。)
還付請求権侵害の点:
押収物の盗難によってもこれが発見される可能性がないとはいえない⇒Xの還付請求権の行使が不能になったとまでは認められない。
押収物の留置の必要性が失われたものではない⇒Xの還付請求権はいまだ発生していない。
  解説  ●占有権について: 
捜査機関のする押収により被押収者がその占有を失うか?
A:公法占有説(公権力による占有の取得によっては私法上の占有は何らの影響を受けない)⇒被押収者の押収物に対する占有は間接占有として持続。
vs.
①私法的にみた場合に公権力による占有と従前の占有との関係がどうなるかが問題であり、これらの占有が民法上の占有の要件を備えていれば、民法上の占有として取り扱うべきであって、公権力による占有が民法上の占有権の得喪に全く無関係であるとすることには理論的な難点がある。
②刑事手続上の押収は、証拠物のほか没収すべき物についてもなされるもので、被押収者の間接占有という観念に親しまない
B:押収後に被押収者の占有を否定
  ●還付請求権について: 
捜査機関による押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない(刑訴法222条1項、123条1項)。
その還付は、被押収者が還付請求権を放棄するなどして原状を回復する必要がない場合又は被押収者に還付することができない場合のほかは、被押収者に対してすべき(最高裁H2.4.20)。
いつまでも(還付請求権が)不能にならないというものではなく、社会通念等に照らして発見が不可能な事態に至ったと認められる場合には、不能といことも考えられる。
本判決:現時点(口頭弁論終結日)においては、いまだ発見が不可能な事態に至っていないと判断。
公判手続が終了するなどして留置の必要性がないとされ、かつ、原告に直ちに還付されるべき状況にあるといえる場合
⇒原告の還付請求権が観念でき、権利侵害が認められると解する余地もあろう。 
  民事p115
大津地裁H30.2.27 
● 
  監査請求人の氏名、住所、職業等が記載された名簿の写しを市議会議員の全員協議会の出席者に配布⇒プライバシー侵害の違法行為(肯定)
  事案 Y市議会議員全員から成る全員協議会が、前議員及びP市長の出席の下、開催された。
3名の議員が、A監査委員事務局長に対し、監査請求人の名簿の開示を求めた⇒A事務局長は、P市長の指示の下、監査請求書の当事者目録(本件名簿)の写しを本件全員協議会に出席していた議員らに配布(本件開示行為) 
Xらは、本件開示行為がプライバシー権を侵害する違法行為であるとして、国賠法1条1項に基づき、Y市に対し、1人につき12万円の支払を求めて本件訴訟を提起。
  Y市 ①本件名簿の情報はインターネット上で公開され、周知のもの⇒プライバシー情報に当たらない
②監査結果は公表が予定されており、住民訴訟が提起されてれば本件名簿の情報は公開される⇒推定的同意がある
③Y市議会議員において、本件監査請求の適法性、従前の監査請求との関係を確認し、住民訴訟となった場合の対応を検討するために誰が監査請求人であったかを知る必要があり、配布の態様も目的に適った相当なもの⇒本件開示行為はプライバシーを違法に侵害する行為ではなかった 
違法性阻却事由として、全員協議会における情報提供要求は地自法98条所定の検査権の行使と同視できるとも主張。
  判断 本件名簿に記載された情報は、秘匿性の高いものではない
but
自己の欲しない他者にみだりにこれを開示されたくないという期待は保護されるべき
⇒プライバシーに係る情報として法的保護の対象になる。
①インターネット上にXらが監査請求人であることやその住所、印影などは公開されておらず、本件名簿記載の情報の全てが周知となっていない
②Y市における監査結果の従前の公表の在り方を踏まえると、Xらが事前に市議会議員全員に本件名簿が開示されることまで同意していたと推定できない、
③誰が監査請求したかを議員が知る必要のある場合が想定されず、本件名簿の開示により、どのような具体的な対応に結び付いたのかも一切明らかにされていない⇒開示の必要性は存在しなかった

本件開示行為はXらのプライバシーを違法に侵害するものであると判断。
Y市に対し、Xら1人につき6000円の支払を命じた。
検査権の行使による違法性阻却の主張については、地自法所定の手続きを経ていないとして排斥。
  解説 個人を識別する住所、氏名等のように秘匿性が高いとはいえない単純な情報であっても、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となることは、平成15年判決及び平成29年判決において確認されている。
プライバシー情報は周知のものでないことが前提⇒本件でも、Yが、Xらのインターネットでの活動を捉え、この点を争った。
but
本判決:インターネットで一定の個人情報が公表されているだけでは周知のものとはいえないとした。
  杉原最高裁H15解説:
相関関係説を前提に、プライバシー侵害が違法となるか否かは、
①それについての定型的な推定的同意が認められるか否か、
②受忍限度の範囲内といえるか否か、
③公益が優先される場合か否か
などといった観点を踏まえ当該情報の内容や開示の態様を総合考慮して判断。
違法性阻却事由として、被害者の承諾、正当業務等を挙げる。
  知財p121
東京地裁H30.3.29  
  販売用の写真素材と著作権
  事案 写真等のコンテンツの販売、撮影業務等を目的とするXが、
YにおいてXの販売する写真素材(「本件写真素材」)をXに無断で参照して描き、自らの作品に使用して販売した行為が、Xの本件写真素材に係る著作権(複製権、本案権及び譲渡権)を侵害
⇒Yに対して、不法行為に基づき、損害賠償金の支払を求めた事案。
  争点 ①本件写真素材の著作物性
②本件写真素材に係る著作権(複製権、翻案権及び譲渡権)侵害の成否 
  判断 ●本件写真素材の著作物性(争点①)
  写真は被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、シャッターチャンスの捕捉、被写体と光線との関係(順光、逆光、斜光等)、陰影の付け方、色彩の配合、部分の強調・省略、背景等の諸要素を総合してなる1つの表現であり、そこに撮影者等の個性が何らかの形で表れていれば創作性が認められ、著作物に当たるというべきである。
本件写真素材は、被写体の配置や構図、被写体と光線の関係、色彩の配合、被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現において撮影者の個性が表れているものといえる⇒本件写真素材は総合的表現を全体としてみれば創作性が認められる⇒著作物性を肯定。
  ●本件写真素材に係る著作権侵害の成否(争点②) 
争点①で判示した本件写真素材の創作性⇒本件写真素材の表現上の本質的特徴は、被写体の配置や構図、被写体と光線の関係、色彩の配合、被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現に認められる。
本件写真素材と本件イラストを比較対照

両者が共通するのは、右手にコーヒーカップを持って口元付近に保持している被写体の男性の、右手及びコーヒーカップを含む頭部から胸部までの輪郭の部分のみであり、
他方、本件イラストと本件写真素材の相違点としては、
①本件イラストでは、本件写真素材における被写体と光線の関係は表現されておらず、かえって、本件写真素材にはない薄い白い線が加入されていること、
②本件イラストでは、本件写真素材における色彩の配合は表現されていないこと、
③本件イラストでは、本件写真素材における被写体と背景のコントラストは表現されていないこと、
④本件イラストでは、本件写真素材における被写体の頭髪の流れやそこへの光の当たり具合、被写体の鼻や口は再現されておらず、さらに、本件イラストでは本件写真素材における被写体のシャツの柄も異なっていること等

本件イラストは、本件写真素材の総合的表現全体における表現上の本質的特徴(被写体と光線の関係、色彩の配合、被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず、本件写真素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない
⇒複製権及び翻案権等の侵害を否定。
  解説  写真の著作物性:
撮影者による撮影の工夫に撮影者の個性が表現されていることが創作性を基礎付けるものとされている。
さらに、被写体の選択や組合せ、配置等を考慮要素に含めるか?
A:肯定説
B:否定説
C:折衷説:被写体に関する工夫も写真の著作物性の根拠になるものと解しつつ、被写体自体が完結した独立の表現物を構成するものと評価し得る場合には、被写体はもはや写真の著作物の構成要素ではなく、写真の著作物とは別個の著作物として保護されるべきであるとするもの。
  翻案の意義:
最高裁:翻案の意義について、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更を加えて、新たに思想または感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為。
判断方法:
①原告作品と被告作品の同一性を有する部分を抽出し、それが思想または感情の創作的な表現に当たるか否かを判断する濾過テストと呼ばれる手法
②原告作品の著作物性を認識してから、被告作品における複製・翻案を判断する二段階テスト
  商事p129
最高裁H29.12.19  
  吸収分割による地位の承継で賃借人の地位の変更による違約金債務を免れることは信義則に反するとされた事案
  事案 Y:土木建築請負業を主たる事業とし、資本金は5000万円、平成27年6月30日現在の純資産額は約8億5000万円。 
XとYは、平成24年5月、Xが老人ホーム用の建物(「本件建物」)を建築し、YがXから賃借する旨の本件賃貸借契約(期間20年、賃料月額499万円)を締結。
20年契約が継続することを前提にXが投資

中途解約禁止
Yが契約当事者を実質的に変更した場合にはXは本件賃貸借契約を解除することができる旨の条項(「本件解除条項」)
及び
本件解除条項による解除の場合には、YはXに対し15年分の賃料から支払済みの賃料額を控除した金額を違約金として支払う旨の条項(「本件違約金条項」)
が付されていた。
平成28年5月17日にYが資本金100万円全額を出資することによってAが設立。
同月26日、YとAとの間で、効力発生日を同年7月1日として、本件事業に関する権利義務等のほか1900万円の預金債権がYからAに吸収分割(「本件吸収分割」)により移転、
Yは本件事業に関する権利義務等についての本件吸収分割後は責任を負わないものとする旨の契約が締結。
Yは、同年5月27日、債権者が翌日から1か月以内に異議を述べることができる旨を公告⇒異議を述べた債権者はいなかった。
Xは、平成28年12月9日、Y及びあに対し、Yが本件賃貸借契約の契約当事者を実質的に変更したことを理由に、本件解除条項に基づき、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。
本件:Xが、Yが本件吸収分割によって賃借人の地位を移転したことを理由に本件賃貸借契約を解除した上で、Yに対して、本件違約金条項に基づく違約金債権(「本件違約金債権」)を請求債権として、Yの第三債務者に対する請負代金債権に仮差押命令の申立てをした事案。
Y:本件吸収分割がされたことを理由に、本件違約金債権に係る債務(「本件違約金債務」)の責めを負わないと主張。
  原決定 本件解除条項及び本件違約金条項を認識しながら本件吸収分割を行ったYが本件違約金債務を免れるとすると、Xは、純資産約8億5000万円を有するYではなく純資産100万円を有するにすぎないAから本件違約金債権を回収しなければならず著しく不合理⇒Xの申立てを認容 
    Yから抗告許可の申立て⇒許可
  解説・判断  会社分割:
会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、
吸収分割の場合は分割後承継会社に、
新設分割の場合は分割によって設立する設立会社に
承継される行為(会社法2条29号、30号参照)。 

債権者の同意なく、契約上の地位等を承継会社又は設立会社に移転することができる⇒企業再編のための有用な制度。
but
会社分割契約の内容いかんによって、分割会社の一部の債権者の債権の引当財産を恣意的に減少させるように利用されるおそれ。
優良な資産や事業を分割会社から移転し、残存する分割会社の債権者を害する会社分割の事案に関して、
最高裁H24.10.12は分割会社に残存する債権者が新設分割について詐害行為取消権を行使することを認めた。

平成26年法律第90号による会社法改正において、残存債権者保護規定(会社法759条4項等)が設けられた。
  本件のように、不採算事業を分割会社から移転する会社分割の事案において、会社分割後に分割会社に対して自らの債務の履行を請求することができない債権者は、会社分割の効力発生前の定められた期間内に異議を述べれば、分割会社から相当の担保が提供される(会社法789条)などの保護。 
  判断 本決定:
本件違約金債務の請求を受ける地位を含む本件賃貸借契約上の権利義務が、本件吸収分割によって、YからAに承継されるとの前提。
その上で、
①本件違約金条項は、Xが賃借人の変更による不利益を回避することを意図して設けられたものであり、YもXの前記意図を理解して本件賃貸借契約を締結した。
②Aは、本件吸収分割前の資本金が100万円で、本件吸収分割によっても本件違約金債務を大幅に下回る額の資産しかYから承継しておらず、支払能力を欠くことが明らか。
③Xの本件違約金債権は本件解除条項に基づいて解除の意思表示をすることによって発生するものであって、本件吸収分割に対して会社法789条による異議を述べることができたとはいえない。

本件吸収分割後は責任を負わないとするYの主張は信義則に反し、Yは本件吸収分割後も本件違約金債務を負う。 
  ①⇒Xの信頼を害することが著しい⇒信義則違反であるとの判断にあたっての事情の1つとして考慮。
会社分割に備えた契約の条項の工夫?
②について:
吸収分割前の承継会社の資力や吸収分割によって分割会社から承継会社に移転された資産の額などを考慮した結果、承継に係る債権の債権者が吸収分割によって著しい不利益を受けるとまではいえない場合、
例えば、承継会社において前記債権に対して引当となる資産の割合が、仮に前記債権を吸収分割の効力発生前に分割会社に請求した場合に分割会社における引当となる資産の割合を下回ることのない場合には、分割会社の吸収分割後責任を負わない旨の主張が信義則に反するとまではいえない?
③について:
①将来発生する本件違約金債権のような内容の債権に基づき異議申立てが可能かについては疑問もあるところ。
②本件違約金債権は、本件吸収分割が効力を生じて本件賃貸借契約の賃借人の地位がYからAに移転した後に、Xが本件解除条項に基づき解除の意思表示をすることによって発生するところ、本件賃貸借契約の契約内容等に照らしてXが解除を即断し得たか疑問もある。

Xが本件吸収分割の効力発生前の異議を述べることができる期間(会社法789条2項4号)には異議を述べることができなかったとした。
  刑事p133
東京地裁H29.5.30  
  捜査の違法により覚せい剤及び尿に関する証拠の証拠能力が否定された事案
  事案 侵入窃盗及び車両窃盗、覚せい剤使用及び所持の各事案に係る窃盗、建造物侵入、覚せい剤取締法違反被告事件。 
覚せい剤取締法違反の各事実につき、GPS捜査(被告人使用車両と窃盗共犯者の使用車両に、被告人らの承諾なく密かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する捜査)及び警察官によるけん銃使用とこれに引き続いてなされた覚せい剤及び尿の押収手続には、令状主義の精神を没却する重大な違法があり、それと密接に関連する覚せい剤及び尿に関する証拠を許容することは、将来における違法捜査抑制の見地から相当でない⇒証拠能力を否定し無罪。
  争点 ①無令状による本件GPS捜査の違法性
②本件GPS捜査の違法性の程度と覚せい剤や尿の鑑定書等の証拠収集手続との関連性の程度
③警察官によるけん銃使用とこれに引き続く覚せい剤の押収手続の違法の有無と程度 
  判断 ●争点①
  最高裁大法廷H29.3.15:
GPS捜査が、個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に密かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり、令状がなければ行うことができない強制の処分である旨判示。
本判決:無令状により行われた本件GPS捜査が、強制処分法定主義(刑訴法197条1項但書)に違反し違法であると判示。
  ●争点②
本件GPS捜査の実施期間や規模、位置情報の精度、警察内部の運用要領や実施態様
⇒被告人や共犯者らを含む個人のプライバシーの侵害の程度が大きかった。

①本件GPS捜査の目的は、被告人に対する窃盗被疑事件について逮捕状の発付を受けた後は、被告人の所在確認を身柄確保にあり、かつ、GPS捜査の期間を通じて現行犯人逮捕等の令状を要しない処分と同視すべき事情ははなかったこと
②警察組織全体で保秘の徹底を図って司法審査を困難にし、違法捜査の問題が生じ得ることを把握した後の公判中にGPS捜査に関する捜査メモを廃棄したこと
などの警察官らの態度

本件GPS捜査の違法の程度は、令状主義の精神を潜脱し、没却する重大なもの。
本件GPS捜査と証拠との関連性:
①警察の捜査方針(窃盗被疑事件の逮捕状を執行するのではなく、違法薬物の任意提出を受けて違法薬物所持の被疑事実で現行犯人逮捕する方針)⇒本件GPS捜査の目的が覚せい剤所持の捜査目的を兼ね備えていた。
②実際に本件GPS捜査の結果を直接的に利用して収集されたものであり、密接な関連性を有する。
③覚せい剤押収から4時間後の尿に関する証拠も、覚せい剤使用の事実での令状の請求や令状発布などの司法審査が一切されていない⇒違法状態を直接的に利用したものであり違法性を帯びる。

本件GPS捜査及び及びこれに引き続いて行われた覚せい剤及び尿の押収手続には、令状主義の精神を没却する重大な違法がある。
  ●争点③ 
被告人について既に窃盗の逮捕状が発付され、また、未成年者略取の容疑があった⇒警察官らがけん銃を携帯したこと自体は必要かつ相当。
but
①それ以上に、釣り竿以外には何も所持せず、抵抗や逃走の気配もない被告人にいきなり銃口を向けて構えて「動くと撃つぞ。」などと複数回警告した警察官の行為は、犯人逮捕等のために例外的に武器の使用を認めた警職法7条本文に違反し、違法。
②その後も被告人に銃口を向けて所持品の提出を求め、徹底的に行った所持品検査や身体検査は、任意捜査の限界を超えた明らかな違法捜査。
③けん銃使用から約20分後になされた覚せい剤の押収手続は、その経緯や時間的な接着の程度から、違法なけん銃使用とこれに引き続く違法な身体検査、所持品検査を直接利用してなされたもので違法性の程度は高い。
④警察官らがけん銃の使用について明らかな虚偽証言をして違法行為を隠ぺいしている。

けん銃使用に引き続く覚せい剤の押収手続には、令状主義の精神を潜脱し、没却するような重大な違法がある。
  解説 無令状のGPS捜査は違法

残された問題は、
①GPS捜査の違法が刑事手続に及ぼす影響の有無や程度、
②GPS捜査により得られtら証拠の証拠能力 
本判決:
GPS捜査のみならず、けん銃使用とこれに引き続く違法な身体検査、所持品検査という2つの違法が重畳的に存在。
but
違法が重畳的に存在した結果重大な違法があるとしたのではなく、いずれの違法も独立して重大であり、それぞれに密接に関連する証拠を排除相当として証拠能力を否定。
最高裁昭和53.9.7:
①証拠の収集手続に令状主義の精神を没却するよな重大な違法があること(違法の重大性)と、
②手続の違法に密接に関連する証拠を許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でないこと(排除相当性)
の2つの要件により証拠能力を判断する相対的証拠排除の立場を採用し、その後の最高裁判例においても踏襲されてきた。 
最高裁H15.2.14:
違法の重大性と排除相当性のいずれの要件をも充足する証拠につき、最高裁として初めて違法収集証拠排除の判断を示すとともに、
違法な手続と密接に関連する第一次証拠に基づいて獲得された派生証拠については、関連性が密接でなく違法の重大性の要件が欠けるとしてその証拠能力を肯定。
本判決:
GPS捜査と押収された覚せい剤及び尿との間にはいずれも密接関連性があり、また、
けん銃使用とこれに引き続く所持品検査、身体検査によって押収された覚せい剤との間に密接関連性がある
として、いずれの違法も重大で排除相当であるとし、証拠能力を否定。
平成29年大法廷判決後に無令状のGPS捜査が実施されたとすれば、捜査機関の令状軽視の態度が著しいことは容易に認定されよう。 
警察庁:
「検証として行うものも含め、移動追跡装置を用いての車両の位置情報を取得する捜査を控えるよう指示する」旨通知。
2386   
  行政p3
津地裁H30.3.22  
  第二次納税義務が問題となった事案
  事案 処分行政庁が原告に対して行った、Aの滞納にかかる市県民税につき、原告を第二次納税義務者とする告知処分の適法性が争われた事案。 
  Aは、甲及び乙において代表社員として登記されている者であり、原告は、甲の業務執行社員として登記されている者。
(原告は、Aとの関係で、地方税法11条の8に規定する特殊な関係にある個人であることは当事者間において争いがない。) 
①乙が、原告に対し、原告の居住する建物の持分3分の2を譲渡したとの登記
⇒処分行政庁は、法人格否認の法理によりAによる行為と同視でき、かつ実際には無償で行われたものと認め
②甲又はAが、原告に対し、平成25年1月1日から平成26年12月31日までの間、月額10万円(合計240万円)を支払ったことにつき、処分行政庁はAが無償で支給していたものと認め
原告に対し、Aの滞納にかかる市県民税につき、原告を第二次納付義務者として、本件処分を行なった。
原告は、本件訴え提起に先立ち、前記市県民税を完納した上で、
①につき、乙は法人格の実体がある⇒法人格否認の法理の適用はなく、
また、本件譲渡は無償ではない。
第二次納税義務の前提として法人格否認の法理を適用する場合はやむを得ない場合に限定すべきであるが、本件では、やむを得ない事情はない。
②につき、甲から業務執行社員の報酬として支払われたものである
と主張して争った。
  争点 ①訴えの利益の有無
②本件処分の適法性(とりわけ、法人格否認の法理の適用の可否) 
  判断 ●訴えの利益について 
行政処分の取消判決が確定したときは、その形成力によって当該処分は遡及的に失効することに帰する⇒これにより公法上又は私法上の原状回復請求権の行使が可能となる場合にはなお訴えの利益を肯定することができる。
本件処分に係る取消判決が確定すれば、当該処分は遡及的に執行することとなり、原告が納付した市県民税について、被告が保持すべき法律上の原因がないこととなる⇒納付に相当する金額について、不当利得返還請求義務が肯定されることになる⇒訴えの利益を肯定。
  ①乙の本店所在地には事務所としての実体がないこと、
②Aは、乙を関連会社の経理の操作や顧問先の脱税の道具として利用していた
⇒法人格の濫用に当たるとして法人格を否認
第二次納税義務の前提として法人格否認の法理を適用する場合にはやむを得ない場合に限定すべきである旨の主張は、同制度の趣旨に照らして採用できない。
  解説 ●処分の執行と訴えの利益 
行訴法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
行政処分が執行によりその目的を達成する場合、処分の執行完了により、以後の処分をされることはなくなる⇒訴えの利益が消滅することが多い。
but
処分を取り消すことによって法的に原状回復義務が生じると解されるときは、訴えの利益は消滅しないと解される。
地方税法は、過誤納金の還付に関する規定を置く。(地方税法17条)
  ●課税処分と法人格否認の法理 
税法上、実質所得者課税の原則により、法人格否認の法理を用いずとも、課税することが可能な事例が多い。
  民事p9
最高裁H29.10.10  

  債権差押命令の申立てにおいて、申立日の翌日以降の遅延損害金が取り立てた金員の充当の対象となるか
  事案 税理士である債権者Xが、債務者Yに対して有する報酬等の元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払請求権を表示した債務名義による強制執行として、債権差押命令の申立てをした事案。 
本件債務名義による強制執行として既に発せられた債権差押命令(「前件差押命令」)に基づく差押債権の取立てに係る金員(「本件取立金」)が、前件差押命令の申立書に請求債権として記載されていなかった申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当されるか否かが争われた。
  事実 Xは、平成28年1月12日、東京地裁に、Yを債務者、荒川区を第三債務者とし、債権差押命令の申立てをし、同月20日、差押命令が発せられた。
①請求債権
②差押債権 
本件債務名義は、元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とするもの。
but
東京地裁では、第三債務者が遅延損害金の額を計算する負担を負うことのないように、債権差押命令の申立書には、請求債権中の遅延損害金につき、申立日までの確定金額を記載させる取扱い(「本件取扱い」)⇒請求債権中の遅延損害金を前記申立日までの確定金額とした。
Xは、平成28年2月22日から同年3月1日までの間に、荒川区から、前記差押命令に基づく差押債権の取立てとして4回にわたり、請求債権に相当する額の支払を受けた。
Xは、平成28年4月11日、原々審に対し、Yを債権者、荒川区を第三債務者とし、債権差押命令の申立て。
①請求債権:本件債務名義に表示された債権のうち、本件取立金が前件申立日の翌日から前記各支払日までの遅延損害金にも充当されたものとして計算された残元金、最終支払日の翌日以降の遅延損害金及び執行費用。
  原審 Xが本件取扱いに従って前件差押命令の申立書に請求債権として元金、前件申立日までの遅延損害金及び執行費用の各確定金額を記載
⇒前件申立日の翌日以降の遅延損害金は本件取立金の充当の対象とはならないものと解すべき⇒本件取立金が前件申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当されたものとする本件申立ては許されない⇒本件申立てを却下すべき。
    Xが抗告許可の申立て⇒原審が抗告を許可
  判断 債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令に基づく差押債権の取立として第三債務者から金員の支払を受けた場合、申立日の翌日以降の遅延損害金も前記金員充当の対象となる。

原決定を破棄し、本件申立てを却下した原々決定を取り消した上、本件を原々審に差し戻した。
  解説  ●  本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者は、債務名義に表示された元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を受けるため、取立金が取立日までの遅延損害金に充当されたものとして計算した残元金等を請求債権として再度の申立てをすることができるのか、それとも、申立ての際に本件取扱いに従った以上、債務名義に表示された債権の一部執行を申し立てたものとして請求債権の表示(民執規則133条1項、21条2号、4号)による制約を受けることになり、請求債権全額相当を取り立てた場合には取立金が申立日の翌日以降の遅延損害金に充当されず、元金が消滅し、残元金等を請求債権とする再度の申立てをすることは許されないのか?
  配当手続の場面における関連判例:
最高裁H21.7.14:
本件取扱いに従って申立てをした債権者が、配当額の計算の基礎となる債権額に申立日の翌日から配当期日までの遅延損害金の額を加えて計算された額の配当を受けることができるか

本件取扱いは、法令上の根拠に基づくものではないが、第三債務者に請求権中の遅延損害金の額を計算する負担を負わせないための配慮として合理性を有している。
本件取扱いに従った債権者は、第三債務者の負担への配慮をする限度で本件取扱いを受け入れたものであり、もはや前記配慮を要しない配当手続の場面では、特段の事情のない限り、債務名義に基づいて、肺と行き実までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えて計算された金額の配当を求める意思を有するとの意思解釈。
⇒債権者は前記金額の配当を受けることができる。
本決定:
取立金の充当の場面においても、もはや第三債務者への配慮を要しない
⇒前記最高裁H21.7.14が示すところの本件取扱いに従った債権者の通常の意思解釈⇒債権者債務名義に基づいて取立金が充当されるとの合理的期待を有している⇒申立日の翌日以降の遅延損害金も取立金の充当の対象となると判断。
  規定 民執規則 第133条(差押命令の申立書の記載事項)
債権執行についての差押命令の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、第三債務者の氏名又は名称及び住所を記載しなければならない。
民執規則 第21条(強制執行の申立書の記載事項及び添付書類)
強制執行の申立書には、次に掲げる事項を記載し、執行力のある債務名義の正本を添付しなければならない。
二 債務名義の表示
四 金銭の支払を命ずる債務名義に係る請求権の一部について強制執行を求めるときは、その旨及びその範囲
  請求債権の表示に関する民執規則の規定自体は、最高裁判所の規則制定権(憲法77条1項)の性質及び範囲に鑑み、実体法上の充当関係まで規律するものとは解されない。 
  再度の申立てを認める本決定の考え方⇒申立日と取立日には必ずずれがある⇒本件取扱いがされる限りいつまでも元金は消滅しない⇒申立てが繰り返される可能性。
but
債務者が任意に債務を履行しない以上、やむを得ない。 
  民事p13
東京高裁H30.2.14  
  主位的予備的併合訴訟での予備的請求の認諾
  事案 株式会社Xは、株式会社Y1の代表取締役を務めるY2から勧誘を受けて、合同会社Aを営業者とする匿名組合が裁定取引システムにより外国為替売買で出資金を運用することを事業目的とする投資ファンドに合計6億700万円を出資。 
Xは、Y1及びY2に対し、
主位的に、完成していない裁定取引自動売買システムに関して虚偽の説明を受けた上、リスクの高いアルゴリズム取引が行われたために多額の損失が発生
⇒共同不法行為又は会社法350条に基づき、損害の一部として1億146万2401円の賠償を請求
予備的に、Aとの間で締結された本件ファンドに係る利益配分金の分配債務をもって消費貸借の目的とする準消費貸借契約につき、Y1及びY2との間で連帯保証することを内容とする連帯保証契約に基づき、同額の支払を求めた。
  主張  Yら:連帯保証契約に基づく請求を認諾する旨の陳述⇒本件訴訟は終了。 
  原審・判断  予備的請求のみに係る認諾は無効。
Y2が本件ファンドに関する虚偽の事実を述べてXを勧誘して出資させ損害を被らせた⇒Yらの不法行為を認めてXの主位的請求を全部認容。 
  規定 民訴法 第136条(請求の併合)
数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。
  解説  併合請求(民訴法136条):
①単純併合
②選択的併合
③予備的併合
複数の請求が論理的に両立し得るもの⇒選択的併合
論理的に両立しない⇒予備的併合
予備的併合は、通常、論理的に両立しえない⇒原告による順位付けによって裁判所が拘束される。
論理的に両立し得る請求であっても、特に順位をつけて審判を求めている場合についても、不真正予備的請求の併合として、実務上認めている。
  請求の認諾は無条件確定的になされる必要がある。 
  民事p33
東京高裁H29.11.29  
  ネットショップ用ホームページの制作に係る契約の勧誘における説明義務違反(肯定)
  事案 X:昭和47年生まれの女性であり、
Y1:ネットビジネスを展開する企業に対してホームページの企画、運営等のサポートを提供する事業を営む株式会社
Y2:クレジット業等を営む株式会社 
Xは、Y1との間で、ホームページ制作業務等の提供を受ける契約を締結し、
Y2との間で、その契約に基づき支払うべきウェブシステム構築費につき個別信用購入あっせん契約を締結。
  請求 Xは、
Y1に対し、消費者契約法4条1項に基づく本件HP制作契約の申込みの意思表示の取消しによる不当利得返還請求権又は勧誘の適合性原則違反及び説明義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権により、既払金相当額及びY2に対する未払金の支払を求めるとともに、
Y2に対し、割賦法または信義則に基づいて未払分割支払金の請求を拒絶することができる地位にあることの確認
を求めた。
  原審 ①ネットショップも小売業であるから、商品ラインナップの決定、販路の確保・拡大等は事業主体が自らの判断と責任で行うべきで、Xもそのことを認識してしかるべき
②自ら卸売業者等に対して商品の登録を申し込む必要があるところ、本件HP制作契約締結後に、X自身もこれを前提とした行動を取っている

本件HP制作契約の内容自体がXに適合しないものであるとはいえず、説明義務違反はない。 
  判断  Y1による説明義務違反を認め、原判決を変更し、XのY1に対する請求を一部認容。 
①ネットショップは、内職的な仕事を探している者に勧められる仕事ではなく、商流を有しない素人がホームページだけ先に制作しても月額の固定費用の支出負担がかかるだけ
②Y1が説明に用いたパンフレットには、ホームページ開設の時点で販売すべき商品が準備されていることを前提とする記載があり、他方で、実店舗を有しないか、又は商品の在庫もしくは仕入先を有しない場合についての記載は全くない⇒Y1は、提供するサービスがXに適合しないことを十分認識していたものと推認できる。

本件HP制作契約を積極的に勧誘することは相当でなく、本件HP制作契約により負担すべき費用を上回る利益を上げられないリスクが無視できないことについて説明する義務を負っていた。
Aは、「月商10万円位ならすぐに稼げるようになります」などと断定的判断を提供⇒説明義務を果たしているとは認められない。
⇒Y1の不法行為責任を肯定。
  Xはインターネットを利用して商品を販売する事業を営むことを目的として本件HP制作契約を締結⇒消費者契約上の「消費者」にあたらない。
同様の理由により、Y2に対する割賦法の適用を前提とする主張には理由がない。
  解説 契約締結の過程において、その判断に重要な影響を及ぼすべき情報を提供せず契約を締結して損害が発生⇒情報を提供しなかった当事者は、信義則上の説明義務違反として不法行為による損害賠償責任が認められる(最高裁H23.4.22)。 
消費者と事業者の交渉力の格差に鑑み、平成30年法律第54号により、事業者の情報提供を明文化する消費者契約法3条1項2号が新設された。
  民事p47
大阪地裁H30.3.23   
  リードが離れ犬がランニング中の者の前に⇒犬を避けようとして転倒負傷⇒保険金支払い請求(一部認容)
  事案 原告Xが、路上をランニング中、被告Y1が散歩させていた犬を避けようとして転倒した⇒ 
①前記犬の占有者であるY1に対し、民法718条に基づき、損害賠償として、
②Y1を被保険者とする、個人賠償責任補償特約等が付された自動車損害損害保険契約を締結した被告Y2会社に対し、同保険契約の約款に基づき、Y1に対する支払請求の判決の確定を条件として、
3940万円余の連帯支払を求めた事案。
  規定 民法 第718条(動物の占有者等の責任)
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
  判断 Y1が、特別な状況でもないにもかかわらず、突然、飼い犬が走り出したことにより手を放してしまい、飼い犬が単独で道路を進行したことにより事故が発生⇒事故の主たる原因は、Y1が飼い犬を係留しない状態にさせたことにある。 
ランニング中のXにおいて前方確認や進行速度を適切に調節することが不十分であり、これが自己の発生に影響したことも否定できない⇒1割の過失相殺。
Yらに対し、1280万円余の支払を命じた。
  商事p55
東京高裁H29.9.27  
  銀行の取締役の責任と、離婚に伴う慰謝料、財産分与及び養育費として支払われた贈与契約と通謀虚偽表示
  事案 経営破綻した銀行(「B銀行」)の元取締役及びその親族らに対して損害賠償を求めた事案。 
Xは、B銀行の取締役会において、後に破綻したノンバンクから商工ローン債権の買取りをY1らが承認したことが善管注意義務違反に当たるとして、B銀行から、元取締役Y1らに対する損害賠償請求権を譲り受けた上、Y1に対して損害賠償を請求。(①事件)
Y1が、B銀行の破綻前後に、妻であったY2に対しては、離婚に伴う慰謝料、財産分与及び養育費の名目で、実弟のY3に対しては、Y3からB銀行株式を購入した代金として、それぞれ多額の送金

Xは、
Y2及びY3に対して、Y2との金銭の贈与契約は通謀虚偽表示にあたるとして、また、
Y2又はY3に対する送金行為は詐害行為にあたるとして、
債権者代位権による不当利得返還請求権又は詐害行為取消権に基づき、それぞれ損害賠償請求。
  原審 ①事件につき、一部認容。 
②事件につき、
Y2(元妻)との関係で一部認容し、
Y3(弟)との関係で全部認容。
  判断 ①事件について:
原審をほぼ引用しつつ
善管注意義務違反に関し、銀行の取締役にいわゆる経営判断の原則が適用されると解されるとしても、銀行の取締役の特殊性に照らし、その分だけ限定的なものにとどまる。
  ②事件について 
Y2に対する請求に関して、
Y1が、B銀行の債権者等から民事責任の追及を受けることを覚悟し、債権者等から預金の仮差押えを受けることを避けるために金銭を移動し、急遽Y2との合意書を作成した⇒本件贈与契約は通謀虚偽表示により無効である。
詐害行為取消権にかかる主張について、
養育費はその性質上定期的に支払われるべきものであるところ、
Y1が支払時期の到来していない養育費をまとめて支払ったことは、期限の利益を放棄した行為であり、その放棄は債務者の義務を履行したとはいえない
⇒代物弁済や担保の提供等と同じ性質の行為として詐害行為となる。
  解説 銀行の取締役の善管注意義務違反については、刑事判例である最高裁H21.11.9において、融資業務における注意義務が一般の株式会社の取締役に比べて高い水準にあり、いわゆる経営判断の原則が認められる余地は限定的である旨が示されていたが、
①民事事件において同様の考えに従うべきことを示した点、及び
②その考えが融資業務ではない与信業務についても適用されることを示した点
で意義を有する。 
  離婚に伴う財産分与等:
財産関係と密接な関係がある法律関係であって、それによって新たな身分関係が生じるわけではなく、民法94条の適用がある(最高裁昭和44.11.14)。 
  詐害行為取消権については、
従来、離婚に伴って負担すべき金銭の額を超えて支払った部分につき、その行使が認められてきた(判例)。
  刑事p109
大阪高裁H29.6.30  
  私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 3条(私事性的画像記録提供等)違反の罪及びわいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法175条)の事案
  事案 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 3条(私事性的画像記録提供等)違反の罪及びわいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法175条)の成立が問題とされた事案。
  規定 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 第三条(私事性的画像記録提供等)
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
刑法 第一七五条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
  判断 ヤフーボックスでは、ユーザー以外の者はファイルを見ることはできないが「公開機能」を使えば、ヤフーボックス内の特定のファイル又はフォルダーを第三者に閲覧させることができる。
・・・
ヤフーユーザーがヤフーボックスに保存したデータを公開設定した時点では、そのユーザーに公開URLが発行されるにすぎず、同データを第三者が閲覧し得る状態にするには、公開設定に加え、公開URLを電子メールで送信するなどの外部に明らかにするヤフーユーザーによる別の行為が必要。 
①被告人が本件データを公開設定した時点では、いまだ同データの内容を不特定又は多数の者が認識することができる状態に置いたとは認められず、
②被告人が公開URLを被害者に送信した点についても、特定の個人に対するものにすぎないから、同データの内容を不特定又は多数の者が認識しうる状態に置いたと認めることもできない

結局、被告人は、本件データの内容を不特定又は多数の者が認識することができる状態に置いたとは認められない。
  解説 わいせつ物公然陳列罪の「公然と陳列した」の意義について、最高裁H13.7.16は、
「その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも必要ないものと解される。」 
  刑事p114
札幌高裁H29.1.26  
  過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条)の事案
  事案 自動車死傷法によって新設された、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(4条)における「その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的」及び「その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させること」についての解釈を示した裁判例。 
被告人は、事故直後から約6時間半の間、事故現場から逃走し、知人方で過ごすなどして、飲んだ酒の影響の発覚を免れるべき行為をした。
  規定 自動車死傷法 第四条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
 アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、十二年以下の懲役に処する。
  主張 本件のような、事故現場から立ち去っただけの行為が問題となる事案で、本罪が成立するためには、逸脱目的として、更にアルコールを摂取するいわゆる追い飲み行為に匹敵する程度に、身体のアルコール濃度という重要な証拠収集を妨げる積極的な目的を要する。
but
被告人については、そのような逸脱目的を肯認できない。 
  解説 アルコール等の影響による危険運転致死傷罪(本法2条1号及び3条1項)は、客観的にこれらの影響により「正常な運転に支障が生じるおそれたある状態」にあったことが構成要件となっている
⇒犯人がその場から逃走するなどすれば、アルコール等による影響の程度が立証できなくなる可能性が高い。

その場合、
自動車運転過失致死傷罪と同交法上の救護義務違反の罪(報告義務違反の罪は、これと科刑上1罪となる)との併合罪となり、処断刑の上限は懲役15年。

重い処罰を免れようとして、アルコール等の影響という点について証拠収集を妨げるといった、より悪質性の高い行為に対して、適切な処罰を欠くことになりかねない。

本罪が規定され、その法定刑は12年以下の懲役とされ、本罪が成立する場合でも、救護義務違反の罪は別罪として成立するので、併合罪加重すると、処断刑の上限は懲役18年。 
  判断 客観的行為:
その場から立ち去れば直ちに本罪が成立するのではなく、一定程度の時間が経過し、その間に、摂取した物質の濃度に変化をもたらす(代謝によるものと考えられる。)など、運転時の当該物質の影響の有無又は程度の立証に支障を生じさせかねない程度のものであることが必要。 
逸脱の目的:
アルコール等の得協の発覚を免れる目的は、それが、積極的な原因や動機となっている必要はなく、むしろ、全く別の目的で、その場を離れたような場合を除外する趣旨。
  解説 除外される例:
自宅で飲酒していた際に、子どもが急病となったため、病院に連れて行くために自動車を運転して病院に向かう途中で事故を起こしたが、まずは、子供を病院に連れて行き、子供の無事が確認できた後に警察署に出頭 
       
       
↓旧雑誌(12月)   
  行政p9
仙台地裁H29.11.2  
  政務調査費の支出の一部が違法とされた事例
  事案 仙台市民オンブズマンである原告が、仙台市議会の会派である補助参加人らにおいて、仙台市から交付を受けた平成23年の政務調査費の一部を違法に支出し、これを不当に利得した⇒地自法242条の2第1項4号に基づき、
仙台市長である被告に対し 
補助参加人らに対して違法に支出した政務調査費相当額の金員の返還及びこれに対する遅延損害金又は法定利息の支払を請求するよう求めた。
  争点 ①政務調査費の支出の違法性に係る判断枠組み
②選挙期間中の政務調査費の支出の適法性 
  判断 ●政務調査費の支出の違法性に係る判断枠組み 
  ◎違法性の判断基準 
法が政務調査費の制度を設けた趣旨を指摘した上で、
条例における使途に係る定めが法の趣旨に反しない限り、その定めに基づいて政務調査費の支出の違法性を判断するのが相当。
具体的な支出の違法性は、本件使途規準(本件条例の委任を受けて定められた本件規則において定められている使途基準)に合致するか否かを基準に判断。

本件使途規準に合致しない場合:
当該支出の客観的な目的や性質に照らして、当該支出と議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がない場合をいう。

仙台市においては、政務調査費の対象外となる経費や支出手続等の本件条例の施行に関し必要な事項を定めた要綱(本件要綱)があり、法の趣旨に反しない限り、これを具体的支出の本件使途規準への適合性判断の指標とする。
  ◎主張立証責任 
原告において、支出が本件使途規準に合致せず違法であることを主張、立証することを要する。
but
①本件各支出が本件使途基準に合致せず違法であることを具体的に明らかにすることは困難である一方、被告らが本件使途基準に合致することについて説明することは比較的容易
②法の趣旨には、政務調査費の使途の透明性の確保も含まれている

原告は、当該支出と議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がないことを示す一般的、外形的な事実の存在を主張、立証すれば足り、前記の事実が認められた場合には、被告らにおいて、当該支出により市政に関する具体的な調査研究が現にされたなどの特段の事情を立証しない限り、当該支出は本件使途規準に合致せず違法である。
  ◎本件要綱に基づく経費の按分 
本件要綱は、政務調査費に係る経費と政務調査費以外の経費を明確に区分し難く、従事割合その他の合理的な方法により按分することが困難である場合には、按分割合について2分の1を上限として計算した額を政務調査費の支出額とすることができる旨規定。
前記規定は、法の趣旨及び前記の会派の活動の性質に照らして合理的

原告が、調査研究費活動以外の活動にも利用されることが推認される経費であることを示す一般的、外形的な事実を立証した場合は、
被告らにおいて、当該経費が調査研究活動のみに利用されたこと、又は、当該経費に関し、調査研究活動に利用された割合とそれ以外の以外の活動に利用された割合について、客観的資料に基づき立証することを要する。
  ●選挙期間中の政務調査費の支出の適法性 
①議員にとって、次回の選挙に当選するか否かは議員としての活動を続けようとする自らの立場を左右する重要な事項
②会派代表者の尋問結果に照らせば、会派及びその所属議員は選挙期間中には選挙活動に集中しており、調査研究活動はほとんど行われていないことが推認される

選挙期間中の活動に対し政務調査費が支出されたという事実は、当該支出と議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がないことを示す一般的、外形的事実であることが認められ、
原告がその事実の存在を立証した場合には、被告らにおいて当該支出により市政に関する具体的な調査研究が現にされたことを客観的資料に基づいて立証しない限り、当該支出は本件使途規準に合致せず違法であると判断するのが相当。
  解説 ●政務調査費の支出の違法性に係る判断枠組み 
◎違法性の実体要件
違法性の実体要件について、
A:裁量説:
議員側に市政との関連性や支出の必要性等について広範な裁量があることを前提に、裁量権の逸脱濫用があることを前提に、裁量権の逸脱濫用がある場合にのみ、違法となる。
B:合理的解釈説:
政務調査費の使途に応じて、比較的緩やかに必要性が認められるものと、それほど緩やかに解されないものがあるとして、個別の事案ごとに、条例等の使途規準に係る規定の合理的な解釈によって解決するとの見解。
◎主張立証責任 
①不当利得の要件事実的な考え方と
②現実の立証問題への配慮
⇒一般的、外形的な事実の立証を原告に求める一般的、外形的事実説が妥当であると考えられている。
but
どのような事実をもって一般的、外形的事実とするかはなお議論。