シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室 【地図】
TEL(06)6363-1860 mail:kawamura@simpral.com 


勉強会(判例時報2021前半)

判例時報の勉強会用の資料です(随時更新)

                   
                    
       
       
       
       
2462   
  民事p6
最高裁R2.4.7  
  民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目についての不法行為に基づく損害賠償請求(否定) 
  事案 X(被上告人)は、Yら(上告人ら)に対し、Xの所有する建物の一部の明渡しを命ずる仮執行の宣言を付した判決を取得し、同判決に基づく強制執行を実施。その際民執法42条1項に規定する強制執行の費用で必要なものに当たる費用を支出。

Xが、本件執行費用はYらによる本件建物部分の占有に係る共同不法行為による損害であるとして、Yらに対し、不法行為に基づき、本件執行費用及びその弁護士費用相当額並びに遅延損害金の連帯支払等を請求。 
  争点 民執法42条1項の「費用」の範囲は、民訴費用法2条各号に列挙されたものに限定されるところ、強制執行の申立てをした債権者が、当該強制執行における債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において、前記「費用」に該当する本件執行費用を損害として主張することができるか。 
  原審 執行費用の請求について認容。
  判断 強制執行の申立てをした債権者が、当該強制執行における債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において、当該強制執行に要した費用のうち民訴費用法2条各号に掲げられた費用のものを損害として主張することは許されない。 
  解説 民執法は、強制執行の費用で必要なもの(「執行費用」)を債務者の負担とする旨を定め(42条1項)、このうち同条2項の規定により執行手続において同時に取り立てられたもの以外の費用については、その額を定める執行裁判所の裁判所書記官の処分を経て、強制執行により取立得ることとしている(同条4項ないし8項、22条4号の2)。

民執法は、執行費用の負担者を一律債務者と定め、強制執行をせざるを得なかった責任の所在が任意に履行しなかった債務者にあるか否か等の事情にかかわらず、強制執行が行われ、その執行に必要であった以上常に債務者の負担とすることを明言したもの。 
  強制執行の申立人である債権者は、強制執行をするに当たり、先に執行費用を予納(民執法14条)⇒予納した執行費用を、債務者から事後的に取り立てる必要。
①金銭執行の場合はその手続内での同時取立ての方法により(42条2項)
②非金銭執行の執行費用や金銭執行で①の方法で取り立てられたもの以外については、執行裁判所の裁判所書記官による執行費用額確定処分を申し立てる方法(同条4項~9項)によるべきことを規定し、
執行費用額確定処分はそれ自体が債務名義になることとしている(22条4号の2)。
  民訴費用法2条各号に限定列挙された訴訟費用について不法行為等に基づく損害賠償請求が許されるか
学説:
A:否定説
B:肯定説
b1:制限的肯定説: 費用負担の裁判を受けるまで、あるいは費用額確定処分を受けるまでに限りこれを肯定

①民執法や民訴法は、費用額確定手続を設けているものの別訴での請求を禁止する趣旨の定めはない。
②費用償還請求権と民法上の賠償請求権とでは発生原因が異なり、訴訟物が異なる⇒当然に訴えの利益が否定されるものではない。
③費用額確定手続が簡易迅速であるとしても、簡易迅速性は権利者側の便宜のためのものであるから、権利者自身があえて訴訟による請求を選択することを禁止する理由にはならない。
(ex.支払督促(民訴法382条)や少額訴訟(民訴法368条)について、債権者はあえてこれらの手続によらず通常訴訟を提起することも任意に選択できる。)
vs.
費用額確定処分は、民訴費法2条所定の「費用」についての額の確定や取立てを認めた制度であるところ、同条では、前記「費用」を、訴訟等において一般に必要とされ、かつ当事者にとって公平な費用に限定する趣旨で、その「範囲」を同条各号において費目を掲げ、その「額」を同条各号において定めているものと解され、これを強行規定とした。

民訴費法が民事訴訟等の費用を費目や額をもって限定し、費用の負担者の側にとっても予測可能で公平な額とし、また、その算定も記録から容易に可能なものとすることにより、民事訴訟等の手続がその当事者双方にとって利用しやすく、公平なものとなることをその目的としている。

本判決:
①民訴費法2条の趣旨を、
当該手続の当事者等に予測できな負担が生ずること等を防ぐとともに、当該票の額を容易に確定することを可能とし、民事執行法等が費用額確定処分等により当該費用を簡易迅速に取立得るものしていることとあいまって、適正な司法制度の維持と公平かつ円滑なその利用という公益目的を達成する趣旨に出たもの
②強制執行に要した費用のうち、民訴費用2条各号に掲げられた費目のものを不法行為に基づく損害として主張し得るとすることによって、前記の趣旨が損なわれることがあってはならない

否定説。
  民訴費法の趣旨から導かれる⇒民訴費法に定められた民事訴訟費用についても同様のことが妥当。
本判決は、強制執行の申立てをした債権者と債務者との間の規律を述べている⇒当事者以外の者に負担を求める場合にまで射程がおよぶもpのではない。
宇賀克也裁判官の補足意見:
登録免許税法31条2項の過誤納金の還付制度を例に挙げ、
法が特別な手続を定められている場合でも、それが専ら権利者の便宜のためのものであれば債権者の任意の手続選択が認められるが、
公益性が認められる場合には手続の排他性が認められ得る旨を述べる。
  民事p14
東京高裁R2.6.29
   
  民事p22
東京地裁R1.12.11
   
  民事p29
千葉地裁R2.6.30
   
  民事p41
大阪地裁R1.12.20  
   
  事案 破産者が自動車販売会社から購入した自動車の代金を立替払いして、破産者に対する立替金等債権を有していたYが、本件自動車について留保した所有権に基づいて(代理人の受任通知前に)破産者から本件自動車の引渡しを受けて、本件自動車を査定し、破産者に不足額を通知して清算⇒破産者の破産管財人Xが、前記一連の行為又は不足額の通知による清算行為が破産法162条1項1号に該当すると主張⇒Yに対し、否認権を行使して、本件自動車の返還に変わる価額償還等を求めた。
  判断 破産者とYとの間の立替払契約においては、Yは、立替金等債務を担保するために留保された所有権を有するにすぎず、同担保部分を除くと、本件自動車の実質的な所有権は破産者が有していた。
①Yが破産者の代理人にした不足額の通知により、破産者が実質的な所有権を有する本件自動車の評価額等をもって、立替金等債務の弁済に充当されたことになり、
②この不足額の通知は、立替払契約により予定された行為であり破産者の行為と同視することができる

不足額の通知は、破産法162条1項の「債務の消滅に関する行為」に該当し、その他の要件も充足する。
否認権の行使により、本件自動車の実質的な所有権が破産財団に帰属することになり、Xが、その管理処分権限を有するため、Yに対し本件自動車の返還を請求することができる。
but
Yは、既に本件自動車を売却し、返還できない⇒Xに対して、本件自動車の返還に変わる価額償還義務を負う。
Yは、本件自動車の本体価格本体価額、リサイクル料預託金相当額については価額償還義務を負う。
but
仮に否認権行使により本件自動車が返還されて破産財団に帰属し、Xがこれを換価しても、消費税相当分が最終的に破産財団に帰属することはない⇒消費税相当額については価額償還義務を負わない。
⇒一部認容。
  解説 最高裁H22.6.4:
自動車の売買代金の立替払をした者が、販売会社に留保されていた当該自動車の所有権の移転を受けたが、購入者に係る再生手続が開始した時点で当該自動車につき所有者としてに登録を受けていない⇒立替金等債権を担保するために留保した所有権を別除権として行使することは許されない。 
最高裁H29.12.7:
自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するために販売会社に留保される旨の合意がされ、売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後、購入者の破産手続が開始した場合において、その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは、保証人は、前記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができる。
平成22年判決は、販売会社、信販会社及び購入者の三者間において、販売会社に売買代金残額の立替払をした信販会社が、販売会社に留保された自動車の所有権について、売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため、販売会社から代位によらずに移転を受け、これを留保する旨の合意がされたと解される場合に関して判断したもの⇒平成29年判決の事案とは事案を異にする。
本件の留保所有権が、販売会社、信販会社及び購入者の三者間の合意により、売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するために新たに設定されたもの⇒その合意内容は法定代位と相容れない。 

信販会社は、平成22年判決を受けて約款を改め、法定代位構成を明確にすることによって対応を試みているが、本件は、改定前の約款に基づく対応が問題となった事案。 
  刑事p47
①②
  ①大阪高裁H25.3.13
②東京高裁H28.4.20
  刑事p64
大阪地裁R2.2.19
   
       
       
       
2461   
  行政p3
最高裁R2.3.19   
  固定資産評価基準により隣接する2筆以上の宅地を1画地として認定して画地計算法を適用する場合の算定方法
  事案 境地の共有分割により分筆後の土地に係る他の共有者の持分を取得したX1が、Y(大阪府)の府税事務所長から不動産取得税賦課決定処分を受けた⇒X1から訴訟を承継したX2が、前記の取得に対しては地税法(「法」)73条の7第2号の3の規定により不動産取得税を課することはできず、本件処分は違法⇒Yを相手に、その取り消しを求めた。
  法の概要 法73条の7第2号の3:
共有物の分割による不動産の取得に対しては、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分(「持分超過部分」)の取得を除き、不動産取得税を課することができないと規定。
法73条の21第2項:
道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産については、法388条1項の固定資産評価基準によって、不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものと規定。
固定資産評価基準:
第1章第3節において、
主として市街地的形態を形成する地域における宅地については、
市街地宅地評価法によって各筆の宅地について評点数を付設し、これを評点1点当たりの価額に乗じて、各筆の宅地の価額を求めるものとしている。

市街地宅地評価法:標準宅地の単位地積当たりの適正な時価に基づいて付設した路線価を基礎として、画地計算法(評価基準別表第3)を適用して各筆の宅地の評点数を付設するもの、
  事実 X1及びその弟であるX2は、土地の持分各2分の1の割合により共有。
領有物分割⇒同土地を本件土地1(617㎡)及び本件土地2(566㎡)に分筆する登記。
本件土地1をX1が取得、本件土地2をX2が取得。
本件各土地は、連続して舗装されるなどして、全体が駐車場として一体的に利用。 
本件土地1が本件取得時において固定資産税課税台帳に価格が登録されていない不動産⇒法73条の21第2項に基づき、評価基準により本件土地1の価格を算定⇒同価格は分筆前の土地の価格の2分の1相当額を超えている⇒持分超過部分の取得が含まれる⇒本件処分。
本件土地1の価格は、
①本件各土地につき、その形状、利用状況等からみて一体を成している⇒1画地と認定
②これと接する街路の路線価を基礎に画地計算法を適用して、本件各土地の1㎡当たりの評点数を算出
③これに本件各土地の地積及び評点1点当たりの価額を乗じて、本件各土地の評価額を算出、
④これに本件土地1と本件各土地との地積比を乗ずることにより、算定。
  判断 評価基準により隣接する2筆以上の宅地を1画地として認定して画地計算法を適用する場合において、各筆の宅地の評点数は、画地計算法の適用により算出された当該画地の単位地積当たりの評点数に、各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出される。
持分超過部分の有無及び額を判断する場合であってもこれと別異に解する理由はない。 
  民事p14
東京地裁R1.9.5  
  再転相続人による相続放棄が問題となった事例
  事案 A銀行がBに貸し付けた住宅ローン債権を譲り受けたXが、同債権についての連帯保証人C(Bの妻)の再転相続人であるYに対して、保証債務履行請求権に基づき債権残額を請求。 
  事実 ①H10.12.7:本件住宅ローン貸付及びCによる連帯保証
②H15.1.5:C死亡、法定相続人はB並びにD及びE(Cの父母)
③H16.12.3:D死亡。法定相続人はE及びY(Dの子、Cの弟)
④H25.8.27:本件住宅ローン債務につき期限の利益喪失
⑤H27.9.7:本件債権譲渡
⑥H30.1.16:E死亡、法定相続人はY
⑦同年6.1:本件債権譲渡通知がYに到達
⑧同年8.29:Yによる被相続人をCとする相続放棄の申述
⑨同年9.20:本件相続放棄の申述受理 
  争点 再転相続人であるYの僧都億放棄の有効性。
①Cの相続人であるD及びEが相続の承認又は放棄をしないで死亡したか否かについて、相続放棄の申述に関する熟慮期間の起算点
②D及びEが相続の承認又は放棄をしないで死亡したと認められる場合におけるCの再転相続に係るYの熟慮期間の起算点
  判断  ●争点①について
最高裁を引用し、
①相続人が相続開始原因事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、
②被相続人の生活歴、被相続人と相続人間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、
③相続人においてそのように信ずるについて相当な理由があると認められる時には、
熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算。
①Cの相続財産は帆ねん保証債務以外に見当たらず、D及びEが本件保証債務の存在を意識していたのであれば、速やかに相続放棄を行うのが通常であり、本件保証債務の存在を知りながら敢てこれを相続する意思を有していたのだとすれば、Dの死後にEとYが行なったDの遺産分割協議において本件保証債務の負担について取り決めるのが通常
but
D及びEが相続放棄を行っておらず、Dの遺産分割協議において本件補償保証債務について取り決めがない。

D及びEがCについて相続財産がないものと信じていたことが強く推認される。

②主債務者による弁済が継続していれば保証人が直ちに弁済の負担あるいは債権者からの請求を受けるものではなく、保証債務の負担を知らない相続人がこれを認知しないことも多い
③A銀行及びXのいずれもD及びEに対して本件保証債務に関する通知をしていない

E及びEがCについて相続財産がないものと信じていたために相続放棄をしなかったこと及びそのように信じたことについて相当な理由があると認められる。
D及びEは、Cの相続についていずれも熟慮期間の起算点を迎えないまま死亡⇒相続の承認及び放棄をしないで死亡。
  ●争点②について 
再転相続人が、相続の諸運又は放棄をしないで死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を自己が承継した事実を知った場合(民法916条)であっても、
①再転相続人が同事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、
②信じたことについて前記の相当の理由がある場合には、
熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算。
①YがCの弟であり、平成1年以降は東京都において妻子と居住し、C(和歌山県在住)と同居していなかった
②A銀行及びXがYに対して通知を送付したのは、・・・が初めてであった

Cんぼ両親であるD及びEが認識していなかった本件保証債務の存在をYが認識していたとは考え難く、かつ、再転相続人であるYに相続財産の有無を調査することを期待するのは著しく困難。
  Cの相続について、相続人であるD及びEについて熟慮期間は経過していなかった。
再転相続人であるYについて熟慮期間の起算点は平成30年6月1日⇒同日から所定の熟慮期間内にされた本件相続放棄の申述は有効なもの。
  民事p20
さいたま地裁R1.12.11  
  県公安委員会がした運転免許取消処分について、国賠請求が認められた事例
  事案 運送会社X2の取締役であり、Y(埼玉県)公安委員会から原付免許・中型一種免許の交付を受けていたX1が、平成23年10月25日、訴外Aに自車を接触させ死亡させる事故を起こした⇒神奈川県警はX1を現行犯逮捕し、自動車運転過失致死の疑いで横浜地方検察庁に送致。
Y公安委員会は、平成24年3月末日までに神奈川県警から捜査資料の写しの送付を受け、同年4月11日、X1に対する意見聴取を行った上で、X1に対し、道交法70条所定の安全運転義務違反があった⇒運転免許を取消し、運転免許取得欠格期間を1年(平成25年4月10日まで)とする処分。
横浜地方検察庁:平成24年7月10日、X1を不起訴処分に。
X1は、平成25年2月19日、本件処分の取り消しを求める訴えを提起⇒平成28年2月25日、X1の請求を認容する判決が確定。
X1及びX2が、本件処分が国賠法上違法であり、同処分により損害を受けた⇒Yに対し、損害賠償請求。
  判断 ●国賠法上の違法について
国賠法上の違法性について、職務行為基準説を採用した最高裁H5.3.11を採用し、
公安委員会ののする免許取消処分は、後にその処分が取り消されたとしても、そのことから直ちに国賠法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、公安委員会が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすることなく漫然と処分をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法になる。
本件処分に際してY公安委員会が判断の基礎とした資料からX1の安全配慮義務違反を合理的に認定することできないのに本件処分が行われたとすれば、その処分には「公安委員会が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認め得るような事情」があるといえ、国賠法上違法となる。
本件基礎資料の範囲を確定した上、同資料を子細に検討して判断代置的に審査⇒同資料からは事故態様を明らかにすることができず、安全配慮義務違反の前提となる結果回避可能性を認めることができない。
その他、X1の安全運転配慮義務違反を認定するに足りる的確な資料は認められない。

本件処分は国賠法上違法。
●X1の損害
Xは本件処分による欠格期間満了後の平成25年6月に普通免許を取得。
Y:運転免許再取得費用は本件処分による運転免許の喪失状態を回復するために必然的に要する費用とはいえない。
判決:社会通念に従って判断し、本件処分との相当因果関係を肯定。
最高裁昭和44.3.6を参照の上、
その遂行のため支出を余儀なくされた弁護士費用のうち相当と認められる範囲内の費用は、本件処分と相当因果関係に達立つ損害。

本件処分との相当因果関係を認めた。
自動車を運転できないことによる日常生活上の不便に対して相当な慰謝料額を算定。
●X2の損害 
X2:本件処分によりX1が運送業務に就けなくなった後も役員報酬を支払い続けた⇒間接損害の中でもいわゆる反射損害を主張。
本判決:本件処分によるX1の労務提供の質的量的減少並びにX2における逸失利益及び経費の増大は認められない⇒損害の発生を否定。
  知財p30
知財高裁R2.6.17  
  当該発明には当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果が認められる⇒進歩性肯定事例
  事案 発明の名称を「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物」とする特許(「本件特許」)の審決取消訴訟について、
最高裁からの差戻審判決。 
  差戻前上告審 原審は・・・本件各発明の効果、取り分けその程度が、予測できない顕著なものであるかについて、優先日当時本件各発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から十分に検討することなく、本件化合物を本件各発明に係る用途に適用することを容易に想到することができたことを前提として、
本件化合物と同等の効果を有する塩酸プロカテロール、ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム及びぺミロラストカリウム(「本件他の各化合物」)が存在することが優先日当日知られていたということのみから直ちに、 本件各発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定して第3次審決を取り消したものとみるほかなく、このような原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
  判断 (1)本件明細書の記載⇒本件発明1における本件化合物の効果として、ヒト結膜肥満細胞からのヒスタミン放出阻害率は、30uM~2000uMの間で濃度依存的に上昇し、最大値92.6%となっており、この濃度の間では、クロモリンナトリウムやナドクロミルナトリウムと異なり、阻害率が最大値に達した用量(濃度)より高用量(濃度)にすると、阻害率がかえって低下するという現象が生じていない。 
(2)本件優先日当時、本件化合物について、前記(1)が明らかであったことを認めることができる証拠はない。また、甲1の記載に接した当業者が、ケトチフェンの効果から、本件化合物のヒト結膜肥満細胞に対する効果について、前記(1)のような効果を有することを予測することができたということはできないし、本件他の各化合物のスギ花粉症に対する効果に関する文献があったとしても、本件化合物のヒト結膜肥満細胞からのヒスタミン放出阻害について前記(1)のような効果を有することを予測することができたということはできない。

本件発明1の効果は、当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであると認められる⇒当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
  解説 ●「予測できない顕著な効果」について
多くの裁判例で、進歩性判断において予測できない顕著な効果を考慮することが肯定されてきたし、特許庁の審査基準も顕著な効果があることが、進歩性を肯定する事情になるとする。
「効果の顕著性」の進歩性判断における位置付け
A:独立要件説:
相違点に至る構成が容易に想到できるとしても、当該発明の効果が当業者が予測し得ない顕著なものである場合には、進歩性を認める。

B:総合考慮説(二次的考慮説、間接事実説、評価障害事実説等といわれることもある):
進歩性の判断では「予測できない顕著な効果」も含め、全判断要素が総合的に考慮される。

本判決:
発明の構成自体は容易想到であることを前提としたうえで、顕著な効果の有無を判断⇒独立要件説に親和的。
何と比較して顕著な効果があるといえるのか?
A:主引用発明比較説:
対象発明の奏する効果と主引用発明の奏する効果のみと比較して、顕著で、かつ、予測できないことをいう

〇B:対象発明比較説(本件差戻前最判):
対象発明が奏する効果を、当業者が進歩性判断基準時当時に対象発明の構成が奏するであろうと予測できる効果と比較して、顕著で、かつ、予測できないことをいう

C:技術水準比較説:
対象発明が奏する効果を、進歩性判断基準時の技術水準において達成されていた同種の効果と比較して、顕著で、かつ、予測できないことをいう
●前訴判決の拘束力 
最高裁H4.4.28:
「判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断」に拘束力が生ずる

本判決:前訴判決について、本件各発明の構成に至る動機付けがあるとの判断のみに拘束力が生じると認定判断した上で、「予測できない顕著な効果」の有無については、前訴判決の拘束力は及ばない。
  労働p53
札幌高裁R2.2.27  
  嘱託契約(有期労働契約)の更新の申込があったとは認められないとされた事例
  事案 Xは、Yを定年退職した後、Yとの間で、期間を1年間とする嘱託契約を締結⇒タクシー乗務員として勤務。
Xの主張:
契約期間満了に際して契約の更新の申込みを拒絶されたが、これは、Yと労働組合との間で締結された協定の内容を変更して新しい賃金体系を導入しようとしたYが、これに反対する労働組合の執行委員長であるXをYから排除し、労働組合の弱体化を図ることを目的としてしたもの⇒前記拒絶は不当労働行為⇒労契法19条2号に基づき、Yが前記申込みを承諾したとみなされ、Yによる前記拒絶につき不法行為が成立。

Xが、Yに対し、嘱託契約上の権利を有する地位にあることの確認と、不法行為に基づき賃金相当額の損害賠償を認めた。
  判断 嘱託契約の期間満了に際して、X及び労働組合とYとの間でされたやりとりの経過を認定⇒Xが契約の更新の申込みをしたとは認められない。 
「労働契約法の施行について」を指摘し、それを踏まえても更新の申込みがあったとはいえない。
  解説 労契法19条2項が適用されるための要件:
①有期労働契約が更新されると期待することにつき合理的理由があること、
②労働者がその更新の申込みをしたこと、
③使用者がこれを拒絶したこと、
④この拒絶が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないこと
②の要件は、事実認定の問題であり、本判決はこれを否定。
現実の雇止めは、
まず使用者から不更新(雇止め)の通知⇒それに対して労働者に異議がある場合に、雇止め法理の適用の有無が問題となるのが通常。

前記通達は、この要件を緩やかにとらえ、「更新の申込み」は要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでよい、としているとの指摘。
労働者が少なくとも同一労働条件での更新がされない事態に対して労働者の不満の意思表示が認定できる限りは、労働者による更新の申込みの認定が可能であり、
このような更新の申込みに対して、使用者が従前よりも不利な労働条件での更新を提案したいということは、新たな労働条件の提案を行なうことにより労働者による更新の申込みを拒絶したと解することができるとの指摘もなされている。
本件:
既に新しい賃金体系が適用されており、労働組合が新しい賃金体系に応じることはYにとって不可欠の要件ではなく、
応じなければ更新をしない方針をYがとっていたとは認められない

労働組合として新しい賃金体系に応じない意向を表明していたことをもって更新の申込みがあったとはいえない。
  労働p62
東京地裁R1.9.4  
  劇団員の労働基準法上の労働者該当性が問題となった事例
  事案 原告は、被告が運営する劇団との間で入団契約を締結し、公演への出演や、音響照明、大道具、小道具等の業務を行っていたほか、被告が運営するカフェで店員として勤務。
被告は、原告に対し、劇団業務に関して毎月6万円を支給し、カフェでの業務に対しては1会の勤務(午後4時から午前0時、又は午前0時から午前5時)に対して5000円の支給。
  主張 自身の手帳に記載された勤務予定を実労働時間に関する主たる証拠とした上で、
①法定労働時間に対する最賃法による賃金及び時間外労働に対する労基法所定の割増賃金並びに付加金等の請求。
②被告が原告に休日を与えず長時間労働させたこと及び被告従業員による暴言や脅迫が不法行為に該当⇒不法行為に基づく損害賠償等を求めた。
  争点 ①原告の労働法上の労働者性
②実労働時間
③不法行為の成否
  判断   ●労働者性 
労基法上の労働者性について、
契約の名称や形式に関わらず、一方当事者が他方当事者の指揮命令下にあり、
労務の提供に対して賃金を支払われる関係にあったか
により決せられ、
指揮命令下にあったかどうかは、
業務に対する諾否の自由の有無
業務の時間的、場所的拘束性、
労務提供に対する対価の有無等
を検討すべき。
劇団が、稽古10日間、本番6日間の公演を年間90本行っており、劇団員を小道具課、大道具課などの「課」に所属させて業務を行わせ、公演に滞りが生じないようにしていたほか、
公演のセット入替え作業は、劇団員で賄えるようスケジュール調整が行なわれ、
音響照明は、劇団員に割り振られた担当公演の機関に不都合がある場合は、劇団員自ら交代できる者を探して交代していた
⇒これらの業務を担当しないことを選択する自由はなく、業務を行うには時間的場所的拘束があった。
原告が所属していた小道具課では、原告を含む2名で全公演の小道具を担当し、マニュアルに従った作業を行うほか、演出担当者の指示に従う必要があった
⇒原告には小道具の業務を行わないことを選択する自由はなく、劇団の指揮命令に従う必要があった。
劇団は、原告ら劇団員が劇団業務とアルバイトの両立が出来なくなっていたことなどから月額6万円を支給するようになり、最近では、音響所運命やセット入替え作業にアルバイト従業員を使用している
⇒劇団員に毎月支払われていた金銭は、小道具や音響照明、セット入替え作業等の業務に対する対価であったと不押下するのが相当。

原告において諾否の自由を有していた公演への出演及びそれに伴う稽古等を除いて、労働者性が認められる。
  ●実労働時間
実労働時間に関する客観的証拠がない⇒原告が劇団の裏方業務に従事していた時間を算出するため、原告の手帳の記載や、元気団員が共有していたスケジュールの記載等をもとに、謙抑的に労働時間を認定。 
公演の出演には諾否の自由があり、出演は指揮命令下における労務の提供ではない⇒出演及び稽古に割いた時間は労働時間とは認められなかった。
●不法行為 
休日がとれなかったことを原因とする損害賠償請求:
原告の元気談における活動は、稽古等の自身の出演に伴う活動にも相当の時間が割かれていた⇒認めず。
暴行や脅迫を理由とする損害賠償請求は、的確な証拠なし⇒棄却。
  解説 労基法上の労働者性に関する最高裁:
傭車運転手(車持ち込み運転手)の労働者性を否定(最高裁H8.11.28)
研修医の労働者性を肯定(最高裁H17.6.3)
大工の一人親方の労働者性を否定(最高裁H19.6.28)
but
いずれも事例判断で、労基法上の労働者性に関する一般論は示されていない。
下級審:
吹奏楽団員の労働者性を肯定
オペラ合唱団員の労働者性を否定

自営業者と労働者との区別が問題となったものとして、
フリーの映画撮影技師の労働者性を肯定
NHKの集金等業務受託者の労働者性を否定
バイシクルメッセンジャーの労働者性を否定
の裁判例あり。
  刑事p115
大阪高裁R2.3.16  
  死刑判決に対する控訴取下げの無効が問題とされた事案
  事案 一審死刑⇒一審弁護人は即日、被告人は平成30年12月31日、それぞれ控訴を申立て、被告人は、令和1年5月18日、大阪拘置所において同所長に対し控訴取下書を提出⇒弁護人らは係属部に対し、同月30日、本件控訴取下げが無効であるとして審理継続を求める申入書を提出し、後日、同取下げ前後の経緯に関する被告人からの聴取報告書や精神科医作成の意見書等の資料を提出。 
  原決定 本件控訴取下げを無効と認め、控訴審訴訟手続を再開・続行する旨原決定をした。

①本件控訴取下げの経緯をみると、死刑判決を確定させるという極めて重大な効果に照らして余りと言えば余りの軽率さであり、被告人が法的帰結を明確に意識していなかった疑いを生じさせる
②本件が死刑判決に対する控訴の取下げである点を十分に考慮する必要があり、死刑判決等に対する上訴放棄ができない旨の刑訴法360条の2の存在も参考になる。
    検察官が、異議を申し立てると共に最高裁に特別抗告を行った。
  異議審での決定等 ●不服申立ての方法
本決定:
高等裁判所が控訴取下げを無効と認め、控訴院訴訟手続を再開・続行する旨の決定⇒同決定に対し、不服のある者は3日以内に異議の申立てをすることができる。
検察官は、原決定に対し、論理的には矛盾する異議と特別抗告の両方の申立てを行った。
原決定に対する特別抗告⇒最高裁で不適法として棄却。
本決定に対する特別抗告⇒最高裁で棄却。
⇒本決定が維持された。

控訴取下げを無効として訴訟手続を再開・続行する旨の決定に対する不服申立ては異議申立てによるべきことで、判例上決着。
●本決定 
原決定が述べる前記理由に関し、
①本件控訴取下げが軽率になされた点を強調し、被告人が法的効果を明確に意識していなかった疑いが同取下げの効力に一定の疑念を生じさせるという点につき、合理的根拠を示しておらず、
②上訴取下げと上訴放棄とは局面が違う⇒刑訴法360条の2が根拠になると解し得ない。
意思表示や訴訟行為の無効事由がある場合には控訴取下げが無効となると解される。
but
原決定が述べる理由で無効を認めることは法解釈の枠を超える。
精神科医2名作成の意見書や証拠能力に関する証拠を精査しても、被告人の本件控訴取下げ時点における訴訟行為能力についての資料が甚だ不十分である⇒原決定の判断には誤りがあるとして取り消した。
①被告人の本件控訴取下げ時点での訴訟行為能力につき極めて慎重な検討が必要であるが判断資料が不足している
②さらなる事実の取調べは自判が原則(刑訴法428条3項、426条2項)の異議審裁判所の性格にそぐわず、自判に馴染まない事情がある。

原裁判所への差戻しを選択。