シンプラル法律事務所
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判例時報での特集

       
       
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   ★許可抗告の実情(令和5年度)
    規定 民訴法 第三三七条(許可抗告)
高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
  解説 許可抗告:決定に対して法が特に認めた最高裁判所に対する不服申立て方法であって、法令解釈に関する重要な事項を含む事件であると高裁が認めて許可したことを申立ての要件とするもの。

民事執行法や民事保全法の制定等に伴い、決定で判断される事項に重要なものが増え、重要な法律問題について高等裁判所の判断が分かれているという状況が生じていたので、最高裁の負担が過重にならないように配慮した上で、重要な法律問題についての判断の統一を図ろうとしたもの。
高裁には、自らの判断に判例と異なる点がある場合又は真に法令解釈に関する重要な事項を含む場合に限って抗告を許可するという制度の趣旨に沿った運用が求められている。

高裁が許可した以上、最高裁は当該論点への応答をする義務を負うことになる。
  法令の解釈自体は既に明確になっている場合に、個別事件における事実認定や要件ないし法理への単純な当てはめの判断は、通常は、法令解釈に関する重要な事項とはいえない。 

最高裁の判例により示された法令解釈の基準の具体的適用に関わる事項は、当該実務を担当する下級裁における事例集積にこそ意味がある。このような場合、・・・事例集積、要件の類型化に関する実務的検討が十分にされていない段階で、個別事案に関する要件該当性の争いを法律審である最高裁に求めることは相当ではない。
論点自体としては法令解釈に関する重要な事項に当たるが、当該事案の結論に影響しない論点については、許可は不相当。

@許可項抗告は、法令の解釈に関する重要な事項について、解釈統一の機能を有する特別な抗告ではあるが、当該事案の解決を目的とするもの。
A抽象的な法令解釈のために抗告を許可することは、当事者を具体的事件の解決を離れた論争に巻き込むことになり、事案の解決を目的とする制度の趣旨に反する。