シンプラル法律事務所
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条解民事執行法(第2版)

★概説
 
★第1章 総説  
     
     
     
     
     
第10条(執行抗告)  
     第一〇条(執行抗告)
 民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。
2執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
3抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から一週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。
4執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。
5次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。
一 抗告人が第三項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。
二 執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。
三 執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。
四 執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。

6抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。

7抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。
8第五項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。
9第六項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
10民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百四十九条の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
     
  ◆1 本条の趣旨 
     
  ◆2 執行抗告が許される裁判
     
     
  ◆3 執行抗告の提起 
     
  ◇(4) 執行抗告の理由 
     
  ◆4 執行抗告の提起と原裁判所の効力 
  ◇(1) 執行抗告の提起による執行停止効の有無 
     
   
裁判の告知によって裁判が取り消された場合に手続の不安定がもたらされたりするおそれがあるので、執行抗告期間中と執行抗告提起後は、その決着がつくまで効力を生じさせないようにされている。 
     
     
  ◇(2) 抗告裁判所または原裁判所による執行停止の決定(p82) 
     
    個別の事案ごとの必要性や相当性を考慮して(原裁判が及ぼす影響、執行停止が及ぼす影響、抗告が許容される可能性の程度等が勘案される)
職権で執行停止等をン命ずるもの。
    当事者等の関係人には申立権がなく、裁判所の職権発動を事実上促すことができるにとどまる。
     
    原裁判所の執行停止が原則であり、民事執行手続の停止まで認める必要があるのは、原裁判の執行停止だけではその後の民事執行手続の執行を止めることができず、執行抗告を認めた意味がなくなるおそれがある場合に限られる。 
     
     
     
★第2章 強制執行  
     
     
     
     
     
     
☆第2節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行  
     
     
     
     
83条(引渡命令)  
    第八三条(引渡命令)
執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
2買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。
3執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第一項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。
4第一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5第一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない
   
  ◆1 本条の趣旨 
     
     
     
     
     
     
☆第3節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行  
     
     
     
     
     
172条(間接強制)  
    第一七二条(間接強制)
 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
3執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
4第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
5第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。
  ◆1 本条の趣旨 
     
  ◆2 間接強制の要件 
     
  ◆3 間接強制金 
  ◇ 
     
   
     
  ◇(3) 間接強制金の帰属と損害賠償との関係 
     
◇     
   
     
  ◆4 間接強制の決定 
   
  ◇(2) 審理 
  ■(a) (不作為請求権について)義務違反または義務違反のおそれがあること 
    かつて:
A:一定時の不作為はその時期まで履行期が到来せず、反復的・継続的不作為もぐむのない間は履行されている⇒執行開始の要件を充たさず、債務者が不作為義務に違反しない間は強制執行を問題とする余地がない。
B:一般の執行開始の要件として履行期の到来を要する(30@)が、違反行為があったことを間接強制の要件として加える必要はないという見解。

C:間接強制の決定は義務違反がなくてもすることができる。

@不作為義務は性質上違反があった後の追完的実現が不可能
A履行期未到来であってもその到来に準じて執行を認めうる
    最高裁H17.12.9:
営業の差止めを命ずる確定判決に基づき債権者が間接強制の申立てをしたが、申立て後に債権者が義務に違反する営業をしていないという事案について、
債権者において、債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はない。

@間接強制は将来の債務の履行を確保しようとするもの⇒義務違反が生じていなければ間接強制の決定をすることができないというのではその目的を達することができない。
A不作為請求権は、その性質上、いったん不履行があった後にこれを実現することは不可能。
B間接強制金の取立の際に執行文の付与を受けるために義務違反の事実を立証することが求められる⇒債務者の保護に欠けるところはない。
義務違反の立証が不要⇒違反のおそれの立証の要否・程度が問題となる。
A:違反のおそれがあるから債務名義が作成されている⇒間接強制の決定における違反のおそれの立証不要。

B:上記最高裁判決:義務違反のおそれの立証が必要。

債務者が不作為義務に違反するおそれがない場合にまで間接強制の決定をする必要性が認められない。
立証の程度について、義務違反のおそれは高度の蓋然性や急迫性に裏づけられたものである必要はない。
  ■(作為請求権について)債務者が義務を履行したこと
債務者が義務を履行したことは請求異議事由⇒間接強制の決定の申立てについての審理の対象とはならない。
  ◇(3) 間接強制の決定 
◇    ◇(4) 執行抗告 
  ◇(5) 間接強制の決定の効力 
  間接強制の決定は確定前に効力を生じる
     
  ◇(6) 変更決定 
     
  ◆5 間接強制金の取立て 
  ◇(1) 債務名義 
    債務者が間接強制金を支払わない⇒間接強制の決定(間接強制金の支払命令)を債務名義として金銭執行をすることができる。
     
  ◇(2) 執行分の付与 
     
  ◇(3) 請求異議の訴え 
    作為・不作為請求権について:それを表示する債務名義に対する請求異議の訴え(35条)により、
間接強制金支払義務について(たとえば、間接強制金を支払ったこと):間接強制の決定に対する請求異議の訴えにより、主張することができる。
間接強制の決定に対する請求異議の訴えにおいて、作為請求権・不作為請求権の不存在・消滅を主張することはできない。
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大阪高裁昭和54.7.20:
間接強制決定に表示された金銭の給付義務自体の不発生、消滅等の事由として構成できるものである限りは、間接強制決定に対する請求異議事由になると述べ、使用者の団体交渉に応じる義務の仮処分の執行としてされた間接強制につき、当該義務を履行したことを間接強制の決定に対する請求異議事由として認めた。
     
  ◇(4) 間接強制の停止・取消しと間接強制の決定に基づく金銭執行の停止・取消し