シンプラル法律事務所
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新基本法コンメンタール第2版 民事執行法

★★第1章 総則
 
 
     
     
     
     
     
     
     
第10条 執行抗告(p26)
     第一〇条(執行抗告)
 民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。
2執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
3抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から一週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。
4執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。
5次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。
一 抗告人が第三項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。
二 執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。
三 執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。
四 執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。
6抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。
7抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。
8第五項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。
9第六項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
10民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百四十九条の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
     
  ◆1 本条の趣旨 
     
     
  ◆3 執行抗告手続 
     
  ◇2 抗告期間 
    裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間
     
  ◇3 提出先 
    原裁判所
     
  ◇4 抗告理由 
    理由の記載をしていないときは、抗告状を提出した日から1週間以内に理由書を原裁判所に提出
     
  ◇9 確定しなければ効力を生じない執行抗告と執行停止 
    抗告の提起期間または抗告がなされた場合に、裁判の効力が生じてしまうと、当事者その他の関係者に回復不能な結果をもたらしてしまう裁判があり、そうした裁判については、確定しなければ効力を生じないものと定められ、そのような定めのある裁判に対する執行抗告は、事実上裁判の確定を遮断する効果をもつ。
     
  ■ア 例 
   
     
    B売却のための保全処分の申立てについての決定を事情変更により取消し、または変更する決定とそれに対する執行抗告(42CDFG)

55条1功の保全処分に対する執行抗告に執行停止効がないのと異なり、事情変更による保全処分の取消し等の決定に直ちに効力を生じさせるとすると、取消対象となる保全処分を直ちに失効させてしまうことになるが、それでは差押債権者に回復不能な損害を与える恐れがある。 
    D売却許可決定・売却不許可決定とそれに対する執行抗告(69・74@D・188)

直ちに効力が生ずるとすると、許可については代金納付手続が行われ、不許可については再度売却手続が進められ、関係当事者に回復困難な損害が生じ得る。
    E不動産損傷による売却許可決定の取消決定とその執行抗告(75@AB)

売却許可決定の取消決定に基づいて再度売却が進められると関係当事者、債権者に損害が生じ得る。
    G引渡し命令の申立てについての決定と執行抗告(83CD)

確定前に引渡命令による執行を求めることは占有者の権利保護に欠ける。 
    I転付命令の申立てについての決定とそれに対する執行抗告(159@CD)

転付の効果が生じてしまうと、抗告の利益が失われ、執行抗告の意義がなくなる。
    L財産開示手続実施決定申立てについての裁判とこれに対する執行抗告(197@ADE)

財産開示手続実施決定は、債務者のプライバシーを開示させる性質を有するもので、その手続実施につき慎重を帰する。
     
  ■イ  執行抗告が認められるが執行停止効のないものの例
     
    間接強制の申立て等についての裁判(171D)
     
  ◇10 執行停止の裁判(10E) 
    抗告裁判所は、必要がある場合に、執行抗告についての裁判が効力が生ずるまでの間、担保を立てさせ、または立てさせないで、原裁判所の執行の停止等の処分をすることができる。 
     
     
     
第11条(執行異議)  
    第一一条(執行異議)
執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。
2前条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による申立てがあつた場合について準用する。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★★第2章 強制執行  
     
     
     
     
     
     
     
★第2節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行  
☆☆第1款 不動産に対する強制執行  
☆第1目 通則  
     
     
☆第2目 強制競売  
     
     
     
     
     
83条(引渡命令)  
    第八三条(引渡命令)
執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
2買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。
3執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第一項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。
4第一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5第一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
     
     
     
     
     
★第3節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行  
     
     
     
172条(間接強制)  
    第一七二条(間接強制)
作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
3執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
4第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
5第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。
     
     
     
  173条
    第一七三条
第百六十八条第一項、第百六十九条第一項、第百七十条第一項及び第百七十一条第一項に規定する強制執行は、それぞれ第百六十八条から第百七十一条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第一項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第二項から第五項までの規定を準用する。
2前項の執行裁判所は、第三十三条第二項各号(第一号の二、第一号の三及び第四号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。
     
     
     
174条(子の引渡しの強制執行)  
     第一七四条(子の引渡しの強制執行)
 子の引渡しの強制執行は、次の各号に掲げる方法のいずれかにより行う。
一 執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる方法
二 第百七十二条第一項に規定する方法
2前項第一号に掲げる方法による強制執行の申立ては、次の各号のいずれかに該当するときでなければすることができない。
一 第百七十二条第一項の規定による決定が確定した日から二週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合にあつては、その期間を経過したとき)。
二 前項第二号に掲げる方法による強制執行を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき。
三 子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき。
3執行裁判所は、第一項第一号の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。ただし、子に急迫した危険があるときその他の審尋をすることにより強制執行の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
4執行裁判所は、第一項第一号の規定による決定において、執行官に対し、債務者による子の監護を解くために必要な行為をすべきことを命じなければならない。
5第百七十一条第二項の規定は第一項第一号の執行裁判所について、同条第四項の規定は同号の規定による決定をする場合について、それぞれ準用する。
6第二項の強制執行の申立て又は前項において準用する第百七十一条第四項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。