シンプラル法律事務所
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論点整理(クルーグマン マクロ経済学)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

T 経済学ってどんな学問?
★序章 日常の生活
  経済学は「ありきたりの生活をおくる人間の研究」
「ありきたりの生活」について何が言えるか
  ◆1 見えない手 
経済:社会の生産活動・・人々が望む財・サービスを作り出し、欲しがる者にそれを届ける活動・・を調整するシステム。
経済学:個人のレベルと、社会全体のレベルの両方の視点で経済を考える学問
市場経済:個々の生産者や消費者が生産や消費の決定を行う経済
計画経済:中央当局が生産と消費を決定する計画経済。
見えない手(見えざる手):個人の自己利益追求が社会全体のために良い結果をもたらす可能性があることを表すもの。
@市場経済の美徳とA見えない手の力を学ぶべき。
自己利益追求が非生産的な行動に堕してしまう場合も学ぶ。
ミクロ経済学:人々がどのように意思決定をし、そのような意思決定が相互にどう作用するかを学ぶ経済学の一分野
  ◆2 私の利益、あなたの費用 
個人の自己利益追求が社会全体に悪い結果をもたらすとき、「市場の失敗」が生じる。
ex.交通渋滞、魚介や森林など天然資源の乱獲・乱伐、大気と水の汚染
本書を読んでミクロ経済学を学べば、経済分析を使って市場の失敗を診断できるようになる。
経済分析は問題の解決策を考えるのにもしばしば役に立つ。
  ◆3 いいいとき、悪いとき 
不況:経済の下降期のこと。
マクロ経済学:経済全体の浮き沈みを研究対象とする経済学の一分野。
  ◆4 前進、そして上昇 
経済成長:経済が財・サービスを生産する能力の増加
  ◆5 発見のエンジン 
経済学は・・・個々の真理の集合体ではなく、個々の真理を発見するエンジン
 ★第1章 最初の原理
  この章で学ぶこと
@個人がどのように選択するかを理解するための原理
(4つの原理)
A個人の選択がどのように相互作用するかを理解するための原理
(5つの原理)
  ◆1 個人の選択:経済学の核 
個人の選択:個人が何をすべきかを決定することだが、何をすべきでないかの決定も含まれる。
個人の選択の経済学の基礎にある4つの原理:
@資源は希少。
A何かの本当の費用は、それを手に入れるためにあなたがあきらめなければならないもののこと。
B「どれだけか」というのは限界での意思決定。
C人々は通常、自分の暮らしを良くする機会を見逃さない。
  ◇1.1 資源は希少だ 
資源が希少⇒
人は選択しなければならない。
社会全体も何らかの選択をする必要。
資源:何か別のものを生産するために仕えるもののこと。
土地、労働(利用可能な労働時間)、資本(機械、建物、その他の人工の生産設備)、人的資本(労働者の教育実績やスキル)等
資源は希少、つまり、すべての生産的用途を満たすのに十分なほど存在しない。
  ◇1.2 機会費用:何かの本当の費用は、それを手に入れるためにあなたがあきらめなければならないもののことだ。
ある品目の本当の費用はその機会費用、すなわちそれを手に入れるためにあなたがあきらめなければならないもののことだ。
究極のところ、あらゆる費用は機会費用。
ex.大学に行くこの機会費用:授業料と住宅費に、仕事について稼いだはずの所得を加算したもの。
多額の所得を稼ぐことができる者にとっては、特に高くつく。
  ◇1.3 「どれだけか」は限界での意思決定 
ex.経済学と化学をとっている場合、経済学の勉強にもっと時間をかけることには、便益(この科目の成績が上がる)と費用(その時間に化学の成績を上げるための勉強ができない、睡眠時間が減る等)がある。
⇒その決定はトレードオフ(費用と便益を比較)を必要とする。
何かの活動をもうちょっとだけ増やすか、あるいはもうちょっとだけ減らすかの決定(=「どれだけ」なすべきかの決定)は限界的決定である。
それらが前提としているのは、限界のところでのトレードオフ、すなわち何かをもう少しだけ増やすか、あるいはもう少しだけ減らすかの便益と費用を比較考量すること。
このような決定の研究は限界分析として知られている。
限界的決定の例:
仕事場で何人の働き手を雇うべきか、どれくらいの走行距離でマイカーのオイル交換をすべきか、新薬の副作用の許容限度はどのくらいか。
  ◇1.4 人々は自分の暮らしを良くする機会を見逃さない 
個人がある経済状況でどう行動するかを予測しようとするなら、自分の利益になる機会を見逃さず行動すると考えれば間違いない。しかも、そのような機会を使い尽くすまで、つまり完膚なきまでに徹底的に利用し続けるだろう。
人々は自分の利益になる機会に飛びつくという原理こそ、経済学者によるあらゆる個人行動の予測の基礎にあるもの。
何であれ、行動を変える人たちに報酬を与えるような要因は「インセンティブ(誘因)」と呼ばれる。
経済学者は、人々のインセンティブを変えずに行動を変えさせようとするいかなる試みにも懐疑的。
  ◇1.5 個人の選択:要約してみよう
  □女性労働 
家庭電気製品が導入される前の時代には、家庭外で働くことの機会費用が非常に高かった。
〜女性が家庭の外で働くのは通常経済的に窮迫した場合だけだった。
  ◆2 相互作用:経済が働く仕組み 
私の選択があなたの選択に影響し、逆にあなたの選択が私の選択を左右するという選択の相互作用。
こうした相互作用によって、個人が意図したこととは全く異なる結果が生じることが少なくない。
農家の新しい農法や品種の取り入れ、費用削減、収穫を増やす⇒増産に成功⇒価格は着実に低下⇒所得の減少⇒倒産。
1人の農家が改良品種のトウモロコシを作付けすればもうかるけど、多くの農家が改良品種のトウモロコシを生産したら、グループ全員が貧窮する。
個人の選択の相互作用の基礎にある5つの原理:
@取引は利益をもたらす
A市場は均衡に向かう
B社会的目標を実現するため、資源はできるだけ効率的に用いられなければならない
C市場は通常は効率を達成する。
D市場が効率を達成しない場合には、政府の介入が社会的厚生を高める可能性がある。
  ◇2.1 取引は利益をもたらす 
市場経済では、人々は取引に従事する。言い換えれば、他の人々に財・サービスを提供し、他の人々からその見返りに財・サービスを受け取っている。
そこに取引利益が存在する。
人々は取引を通じて自給自足でいるよりも欲しいものをより多く手に入れることができる。この生産量の増加は特化、すなわち各人が特化するものに専念することによるものだ。
誰にとっても(自給自足より)はるかに良い生活のキーワードは取引。仕事を分割し、各人が他人の必要とする財やサービスを自分が望む財やサービスと交換すること。
取引利益←「取引による生活>>>自給自足による生活」
各人が1つの仕事に特化して他の人々と取引するとき、社会全体としてより多くのものを生産できるようになる。
  ◇2.2 市場は均衡に向かう 
ある経済状況にあって何か違うことをしてみても誰も自分の暮らしを改善できなくなったとき、その状況は均衡の状態にあると言われる。
個々人が自分の生活を良くする余地があるかぎり、価格は上がったり下がったりする。市場はこうした価格の変化を通じて均衡に向かう。
変化が起きた時はいつでも事態は均衡に向かう。

市場の動きを予測し信頼するための基礎となる。
  ◇2.3 社会的目標を達成するため、資源はできるだけ効率的に用いられなければならない
経済の資源が効率的に利用されていると言えるのは、資源がうまく用いられ、みんなの暮らしを良くするためにあらゆる機会が活用し尽くされているような状態
与えられた利用可能な資源の下で、最大限の取引利益が引き出されている状態。
他の人々を犠牲にすることなく誰かの暮らしを良くするようなあらゆる機会が活用し尽くされているとき、経済は効率的だ。
ex.学生数に比べ狭すぎる教室⇒大きい方の教室をあてるのが効率的。
効率的⇒誰か1人でももっと幸せにするように資源の利用の仕方を変更すれば、必ず他の人たちの暮らし向きを悪化させることになる。
公平性とは、誰もが自分の公正な分け前を受け取るということ。
but何が「公正」かについては意見が分かれる⇒公平の概念は効率の概念ほど明確に定義されているとはいえない。
公平性と効率性はトレードオフの関係にある。
公平性を推し進めるような政策は経済の効率性を損なうという費用がかかり、逆もまた真。
ex.身体障害者用駐車スペース(=公正)⇒出口に近い駐車スペースが使われないまま放置⇒効率性と矛盾。
効率性よりも公正性を正確にどのくらい優先すべきかは、政治過程の核心に迫る難しい問題で、経済学者に答えの出せる問題ではない。
経済学者にとって重要なのは、社会的目標がどんなものであっても、その達成のために社会の資源をできるだけ効率的に利用する方法を探すこと。
  ◇2.4 市場は通常は効率を達成する 
市場の効率性は、見えざる手の仕事。
互いに利益になる機会は通常逃されず使われる=ある人々の利益になるやり方があれば、通常その機会は利用される=みんなの暮らしを良くする機会が残らず利用されるという効率性の定義に含まれている。
市場は一般に効率的であるという原則の例外:
市場の失敗が起こる場合=自己利益の追求が社会の厚生を損なう、すなわち市場が非効率的な結果を生み出す場合。
  ◇2.5 市場が効率性を達成しない場合には、政府の介入が社会的厚生を高める可能性がある
ex.交通渋滞による市場の失敗(←自分の行動が他の運転者に対し交通混雑の増加という形で与える費用を考慮するインセンティブを持っていない)
対策:道路使用料の徴収、公共輸送への政府の補助金、運転者に対するガソリン税の賦課等

潜在的な運転者のインセンティブを変えることによって運転を減らし、他の交通手段を利用するように動機づけるもの。
市場の効率性達成しない⇒適切に設計された政府の政策が社会の資源利用を変化させ社会の資源配分をより効率的にすることができる。
市場が失敗する理由:
@個人の行動は市場では適切に考慮されない副作用を及ぼす。
A取引の一方の側が自分の資源の分け前を増やそうとして、相互に有益な取引の実現を妨げる
Bある種の財は、もともと市場での効率的な処理には適さない性質を持っている。
ex.ロサンゼルスの地震後の交通の例:
新しい均衡に落ち着き、個々の通勤者たちは、他の人々の行動を所与として自分にとっていちばんよい通勤方法を選択するようになった。
  ◇第1章のまとめ 
◇個人の選択についての4原則
@資源の希少性⇒選択が必要
A全ての費用は機会費用(=それを手に入れるためにあきらめなければならないもの)
B「どれだけか」の決定は、限界でのトレードオフ(=もう少しするか、もう少ししないかの費用と便益の比較)によりなされる。限界的決定と限界分析。
C人々は、自分の暮らしを良くする機会を見逃さず活用する。機会が変われば、人々の行動も変わる。みんなインセンティブ(誘因)に反応。

◇相互作用についての5原則
@取引利益の存在⇒特化による取引⇒相互作用。
A経済は均衡(=誰も従来と違った行動をとることによって自分の暮らしをさらに良くすることができなくなるような状態)に向かう。
B効率的(他の誰の暮らしも悪くすることなく、誰かの暮らしを良くする機会が利用尽くされているとき)と公平性。両者にはトレードオフがある。
C通常市場は効率を実現するが、例外も存在
D市場が失敗し効率を実現しない場合、政府の介入で社会の厚生を高める。
  ★第2章 経済モデル:トレードオフと取引 
  この章で学ぶこと:
Tなぜ経済学でモデル・・すなわち現実を単純化した表現・・が重要な役割を果たすのか
U3つの単純だが重要なモデル、@生産可能性フロンティア、A比較優位、B経済循環フロー図
V経済を描写し、その動きを予測する解明経済学と経済政策を処方する規範経済学の違い
Wどんな場合に経済学者の意見が一致するのか、またなぜ時に対立するのか
  ◆1 経済学のモデル:重要な例 
モデルとは、現実を単純化して表現したものであり、現実の生活状況を理解するために用いられる。
@現実の、しかし単純な経済を見つけるか、そうでなければ作り出す
Aコンピュータで経済の動きをシミュレートする
モデルの重要な点は、経済学者が関心を持つただ1つの変数だけに焦点を当ててその効果を見ることができること。
他の条件一定の仮定は、他のすべての要因が変化しないとする仮定。
多くの目的のために最も効果的なモデル化の形は、「思考実験」、すなわち現実生活の単純化された、仮想的な模型の構想。
  ◇カネになるモデル 
ノーベル賞学者をかかえたロングターム・キャピタルマネジメント社の失敗
彼らのモデルでは、当時のように不運な出来事が相次いで起こる確率はきわめて低いはずだった。
⇒センスの良い経済学者なら知っているように最良のモデルでさえ重要な可能性を見逃すことがある
  ◇1.1 トレードオフ:生産可能性フロンティア 
生産可能性フロンティア:2つの財だけを生産する単純化された経済によってトレードオフの理解を深めようとするもの。
生産可能性フロンティア:2財のみを生産する経済が直面するトレードオフを描き出す。それは、一方の財の生産量が任意の水準に与えられているときに、最大可能なもう一方の財の生産量を示す。
現実を単純化⇒モデルを使わない場合よりも現実経済のある側面をいっそう良く理解できるようになる。
T効率性の説明:
トムが生産可能性フロンティアの上にいる限り、彼の生産は効率的。
U機会費用の説明:
トムが魚20匹だけでなく30匹を捕獲⇒ココナッツは25個でなく20個

追加された魚10匹の機会費用はココナッツ5個
魚1匹ごとの機会費用は、0.5個のココナッツ。
V機会費用は逓増する。
トムが魚の捕獲量を増やすにつれて、魚をもう1匹捕るためにますます多くのココナッツをあきらめなければならない。
魚を全く捕らない状態から20匹捕るまでいくには5個のココナッツをあきらめればいい。(魚20匹の機会費用=ココナッツ5個)
漁獲量をもう20匹追加するには、25個のココナッツをあきらめなければならない。

@ある財をほんのわずかな量だけ生産しているときには、その生産に特に適合した資源を使うことができる。(トウモロコシにぴったりだが、小麦には向いていない土地で栽培⇒少量の小麦をあきらめればすむ)
A大量のトウモロコシ生産⇒トウモロコシにはあまり適さないが小麦には適した土地も使う必要⇒追加的なトウモロコシの生産は、もっと多くの小麦の生産を犠牲にしなければならない。
W経済成長の意味を理解。
経済成長:経済が財・サービスを生産する能力の増加。
生産可能性のフロンティアのモデルでは、成長はフロンティアの外側への拡大として表される。
  ◇1.2 比較優位と取引利益 
ある個人にとって、ある財の機会費用が他の人々より低い時、その人はその財に比較優位を持つ。
ある個人があることを他の人々よりもうまくやれるとき、その人はその活動に絶対優位を持つ。
比較優位≠絶対優位
ex.
トム(ココナッツだけだと30、魚だけだと40)⇒4匹の魚を捕るごとに3個のココナッツをあきらめる⇒魚1匹の機会費用はココナッツ3/4
ハンク(ココナッツだけだと20、魚だけだと10)⇒魚1匹の機会費用はココナッツ2個

取引なし:
トム:ココナッツ9、魚28
ハンク:ココナッツ8、魚6

取引あり:
トム:魚40、ハンク:ココナッツ20で10づつ交換⇒
トム:ココナッツ10(プラス1)、魚30(プラス2)
ハンク:ココナッツ10(プラス2)、魚10(プラス4)

特化し取引きすることにより、2人の遭難者は両方の財を以前よりも多く生産・消費できるようになる。
T:取引利益を例示
U:人々の機会費用が異なっている限り、誰でも何かの財に比較優位を持ち、何かの財に比較劣位を持つ。
取引による相互利益の基礎絶対優位にあるのではなく比較優位にある
  ◇1.3 比較優位と国際貿易 
経済学者は国際貿易を非常に高く評価している。
←比較優位の視点から見ている。
アメリカが豚肉に、カナダが航空機に比較優位を持つ。

アメリカが豚肉だけを、カナダが航空機だけを作って、それぞれ生産物の一部を相手に輸出すれば、両国とも自給自足のときよりも多くの消費を実現することができる。
  ◇1.4 取引:経済循環フロー図 
自分が持っている財・サービスを自分が欲しい財・サービスと直接交換する取引はバーター(物々交換)と呼ばれる。
経済循環フロー図:経済で行われる取引を円の周りのフローとして表すモデル。
〜経済学者が市場経済で行われる取引を分析するときに役立つもの。
家計:個人か、所得を分け合う個人のグループ
企業:販売を目的として財・サービスを生産する組織
企業は生産した財・サービスを財・サービスの市場で家計に売る。
企業は要素市場で生産に必要な資源・・生産要素・・を買う。
生産要素:財・サービスを生産するのに用いられる資源。
通常、財・サービスを生産するのに用いられる資源のうち、使い尽くされないような資源を生産要素と呼んでいる。
ex.労働者がミシンでシャツに仕立てる場合、
労働者とミシン〜生産要素。
布〜生産要素ではない。

主要な生産要素:
労働、土地、資本(=機械や建物のような「人工の」資源)、人的資本(=労働力の生産性を高める教育や熟練)
要素市場の例:
労働市場(労働者が時間を売って賃金を受け取る)
会社が家計の構成員である株主に配当を支払うのは、つきつめて考えれば株主(投資家)が所有しているといえる機械や建物の賃貸料を支払っているといえる。
モデル(=現実を単純化して表現=複雑な特徴を無視)
@現実の世界では、企業と家計の区別はそれほどはっきりしたものではない(ex.零細な家族経営のビジネス)。
A企業の売上の多くは家計に対するものではなく企業に対するもの
B政府が示されていない
単純化しているが、他の良い経済モデルと同様、経済について考えるのに役立つ道具となる。
ex.経済循環フロー図は、増加しいていく人口に対して経済がどのように働き口を提供できるかを理解できるようになる。
1962年から1988年の間に、アメリカ人の被雇用者あるいは求職者の数は71%増加。
but
同じ時期に、新しい職の数もちょうど同じ割合で増えた。
1962年から1988年にかけて働き手はほぼ2倍に増えたが、
その間に家計と企業の間の貨幣フローは9倍に増えた。
要素市場でもっと多くの労働力が売られ、もっと多くの人たちが仕事をするようになる
⇒家計が使える所得増
⇒増加した所得を使って財・サービス市場で多くの財・サービスを購入
⇒財・サービスを生産するために、企業はもっと多くの労働者を雇用
モデル:
@働き口の数は家計がどれだけお金を使うかによって変化
A家計がどれだけお金を使うかはどれだけの人たちが働いているかに依存

労働人口が急速に増加しているときでも十分な仕事が生み出されたのは偶然ではなかった。
  □経済を使ってみよう・・・富んだ国、貧しい国 
経済の生産性が低い=一定の資源から少しの生産物しか作れない⇒貧しい
バングラデシュはアメリカに比べてほとんどの産業で絶対劣位にあるが、衣料産業に比較優位⇒バングラデシュがアメリカに衣類を供給し、アメリカがバングラデシュにもっと高度な財を供給することで、アメリカもバングラデシュもより豊かな消費生活を送れる。
  ◆2 モデルを使う 
経済学は主として一連の基本的な原理に基づきながら、特定の場面にそれらの原理を適用できるようにさらに特定の仮定を付け加えてモデルを作るという学問。
  ◇2.1 解明経済学と規範経済学 
解明経済学:経済が実際にどうなっているかを記述する経済分析の一分野
規範経済学:経済学がどうあるべきかについて処方箋を書く分野
予測は将来の単純な予報。
3つの質問
@来年、州の高速道路からどれくらいの料金収入が上がるだろうか?
A料金を1ドルから1.5ドルに引き上げたら、収入はどれほど増えるだろうか?
B料金引上げが交通量と道路付近の大気汚染を減らす効果を持つ反面、通勤者に財政負担をかけることを考慮したうえで、料金引上げに踏み切るべきか
@は単純な予測
Aは「もし・・・なら」型の問題で、モデルは特に「もし・・・なら」型の問題に答えるのに向いている。
Bは価値判断の問題⇒規範経済学。
政策Aが政策Bよりもすべての人たちの暮らしを良くする・・とまではいかなくても他の人たちの暮らしを損なうことなく誰かの暮らしを良くする場合、政策A>>政策B
〜価値判断の問題ではない。
政策をうまく順序づけられる場合には、経済学者の意見は一般に一致する。
  ◇2.2 経済学者の意見はどんなときに、なぜ食い違うか 
評判:
@メディアが経済学者の意見の違いを誇張する傾向がある。
(全ての経済学者の意見が一致⇒報道に値するニュースはない。)
A経済学はよく政治に巻き込まれる。
〜多くの問題について有力な利益団体が存在し、自分たちが聞きたい意見を知っている。彼らは、そういう意見を表明している経済学者を探し出して応援。
実際の相違:
@価値観の違い
ex.社会的平等・所得の平等に対する価値観の相違。
A経済モデルの違い
〜2人の経済学者がどんな単純化が妥当かについて意見を異にし、異なる結論となる
ex.付加価値税の導入について
経済学者Aは課税システムの行政費用(監視、書類の作成、徴税等の費用)に焦点を合わせたモデル
経済学者Bは行政費用を無視して、法案が貯蓄行動をどのように変えるかに焦点をしぼるモデル

さまざまなモデルのうちどれが事実に適合するかを示す証拠の蓄積により解決。
重要な点は、経済分析は方法であって決まった結論ではないということ。
  □経済学者の意見が一致するとき 
多くの主張についてプロの経済学者たちの間に高い水準で合意がある。
経済学者の意見が大きく対立する問題もあるが、大きな共通の基盤もある。
90%以上の経済学者が合意した最上位の主張
@課税と輸入割当ては通常一般的な経済厚生を損なう
A家賃の上限規制は利用可能な借家の質と量を低下させる
  ◇第2章のまとめ 
ほとんどすべての経済学はモデルに基づいている。
モデルは、「思考実験」すなわち現実を単純化したもので、その多くはグラフのような数学的ツールを使う。
経済学で重要な仮定は、他の条件一定の仮定
他の関係ある要因を固定することで、ある要因の変化の効果を分析できるようになる。
重要な経済モデルの1つは、生産可能性フロンティア
それによって、
@機会費用(ある財の生産を増やすのに他の財の生産をどれだけ減らさなければならないかを示す)
A効率(経済は生産可能性フロンティアの上で生産しているなら効率的)
B経済成長(生産可能性フロンティアの拡張)
がわかる。
もう1つ重要な経済モデルは、個人間、国家間の取引利益の源泉を説明する比較優位のモデル。
誰でも何かに比較優位を持っている⇒その人が他の誰よりも低い機会費用で作り出せる財かサービスがある。
これは絶対優位(ある財やサービスを他の誰よりも上手に作れる能力)と混同される。
経済循環フロー図は経済の取引を家計企業の間の財・サービスおよび所得のフロー(流れ)として表すモデル。
これらの取引は、財・サービス市場と、労働のような生産要素の市場である要素市場で行われる。
このモデルは、支出、生産、雇用、所得、さらには成長がいかに関連しているかを理解するのに役立つ。
・・・・
★第2章付録 経済学のグラフ 
  ◆1 イメージをつかむ 
視覚的なイメージは、言葉による記述、数字の情報、アイデアなどの理解をぐっと容易にしてくれる。
経済学では、グラフは理解を容易にするために使われる視覚的イメージの典型。
  ◆2 グラフ、変数および経済モデル 
2つ以上の値をとる数量は変数と呼ばれる。
ほとんどの経済モデルは、2つの変数の関係を記す。
そこでは、この関係に影響を与える可能性のある他の変数は一定に保たれると単純化されている。
  ◆3 グラフの働き 
  ◇3.1 2変数のグラフ 
2つの経済変数の関係を描いたグラフは、ほとんどすべて因果関係、すなわち一方の変数の値が他方の変数の値を直接左右する、あるいは決定するという関係を表している。
因果関係では、決定する側の変数は独立変数(戸外の気温)と呼ばれ、決定される側の変数は従属変数(ソーダの販売数量)と呼ばれる。
慣習的に、独立変数を横軸に、従属変数を縦軸にとる。
例外は、生産物の価格と生産数量との経済関係を示すグラフ。価格は一般に数量を決定する独立変数だが、いつでも縦軸にとられる。
  ◇3.2 グラフ上の曲線 
曲線2つの変数の間の関係をグラフ上に示す線で、まっすぐな線であることも曲がった線であることもある。
この曲線が直線である場合、それらの変数は線形関係を持つと言われる。
その曲線が直線ではない場合、それは非線形関係を持つと言われる。
1つの変数の値の増加が他の変数の値の増加と結びついているとき、2つの変数は正の関係をもつと言われる。
1つの変数の値の増加が他の変数の値の減少と結びついているとき、2つの変数は負の関係をもつと言われる。
  ◆4 鍵となる概念:曲線の傾き 
直線、あるいは曲線の傾きは、その傾斜の程度を図るものさしであり、y変数がx変数の変化からどれくらい影響を受けやすいか(ex.気温が1度上がるごとに、ソーダの販売数量がどれだけ増えるか)を示す。
  ◇4.1 線形曲線の傾き 
線形曲線の場合、その傾きは、曲線上の2点間の「上昇」を同じ2点間の「距離」で割るで求められる。
yの変化/xの変化=凾凵^凾=傾き
(凵iデルタ)という記号は「変数の変化」を表す。)
変数が増加するときはその変化は正の数で表され、減少するときはその変化は負の数で表される。
  ◇4.2 水平な曲線と垂直な曲線、その傾き 
水平⇒傾きは0
垂直⇒傾きは無限大

x変数とy変数は無関係。
  ◇4.3 非線形曲線の傾き 
非線形曲線:それに沿って移動するにつれて傾きが変化する曲線のこと。
右上がりで傾斜が緩やかになっていく曲線は、正の逓減的(次第に減少すること)な傾きを持つと言われる。
  ◇4.4 非線形曲線の傾きを計算する 
定弧法:弧の2つの端点を結ぶ直線を引く。
この直線の傾きは、曲線上のこれらの2つの端点の間での平均的な傾きを図るもの。
定点法:非線形曲線の傾きを特定の点を決めて計算するもの。
点Bでの接線の傾きが、この非線形曲線の点Bでの傾き。
  ◇4.5 最大点と最小点 
  ◆5 数値情報を示すグラフ 
グラフは、因果関係を想定せずにデータを要約し図示するための便利な方法としても用いることができる。
単純にデータを図示するグラフ:数値グラフ
@時系列グラフ、A散布図、B円グラフ、C棒グラフ

さまざまな経済変数に関する現実の経験データを図示するために広く用いられている。
←経済学者や政策担当者が経済に見られるパターンやトレンドを認識する助けになる。
  ◇5.1 異なるタイプの数値グラフ 
時系列グラフ:よく軸に日付をとり縦軸にそれらの日付に生じた変数の値を示すもの。
散布図:x変数とy変数の実際の観測値に対応する諸点を示す。通常、散布点に当てはまる曲線が加えられる。
円グラフ:何かの総計がさまざまな構成要素にどのように分けられるかを示し、通常パーセントで示される。
棒グラフ:各変数の観測値の相対的な大きさをさまざまな高さまたは長さの棒を使って示すもの。
  ◇5.2 数値グラフを解釈するときの問題点
グラフは(意図するかしないかにかかわらず)まぎらわしく作成され、不正確な結論に導く可能性もある。
作図の特性
軸の目盛あるいは増分の大きさに注意を払う必要がある。
グラフの作成に用いられる目盛は変化の意味の解釈に、不当な影響を及ぼすおそれがある。
グラフの作成にトランケーション(切り詰め)が使われることがある。その場合、トランケートされず小さな目盛り幅を使ったグラフの変数に比べて大きく見えることになる。
グラフが正確に何を示しているかも周到に注意する必要がある。
除外された変数:他の諸変数への影響を通じてそれらの間に直接的な因果関係があるかのような強い見かけ上の効果を作り出す観察されない変数のこと。
ex.1週間の降雪量がいつもより多いと、人々はその週にいつもより多い@雪かきシャベルを買うし、いつもよりたくさんのA解凍液も買う。⇒@Aをグラフ化したら、上向きの点パターンを示す散布図ができる。
butこれら2つの変数の間に因果関係があるというのは誤って導かれた結論。
(@雪かきシャベルの販売数量の増加はA解凍液の販売数量の増加の原因ではないし、逆もあり得ない。これらの変数が一緒に動いたのは、この場合の除外された変数である第3の決定的な変数・・・1週間の降雪量・・・の影響によるもの。)

散布図のパターンから因果関係があると決めつける前に、そのパターンが除外された変数の結果ではないかと考えてみることが重要。
因果関係の逆転:2つの変数の間の因果関係の真の方向を逆転して解釈するとき、因果関係の逆転という誤りをおかすことになる。
ex.クラスメート20名の@GPAと、それぞれがA勉強に使った時間をとった散布図
⇒正の傾き⇒勉強に使った時間が独立変数でGPAが従属変数。
but高いGPAが学生に勉強する気を起させ、低いGPAが勉強する気をなくさせると推論することもできる。
U 供給と需要 
  ★第3章 供給と需要
  経済学者にとっては、供給と需要の概念は厳密な意味を持っている。
それは、市場がどように振る舞うかを示すもでるで、多くの市場を理解するのに役立つ。
  ◆1 供給と需要:競争市場のモデル 
競争市場は、同じ財、あるいはサービスについて多数の買い手と多数の売り手がいる市場のこと
供給と需要のモデルは競争市場がどう働くかを示すモデル。
5つの要素
@需要曲線、
A供給曲線、
B需要曲線をシフトさせる要因と供給曲線をシフトさせる要因、
C均衡価格、
D供給曲線ないし需要曲線がシフトしたときの均衡価格の変化の仕方
  ◆2 需要曲線 
何かを買いたいという人の数は、その価格に依存している。
価格が高い⇒買いたい人は少なくなる
価格が低い⇒買いたい人は多くなる
  ◇2.1 需要表と需要曲線 
需要表:消費者がある財・サービスをそれぞれの価格水準でどれだけ買っても良いと思うかを示した表
縦軸:チケットの価格、横軸:チケットの数量
需要曲線は右下がり
ある財の価格の上昇は(他の条件が一定なら)それを買いたいと思う人たちの数を減らすという一般命題(=需要法則)を反映
  ◇2.2 需要曲線のシフト 
グレツキー選手の引退宣言⇒価値が上がる⇒新しい需要曲線。
どの価格のところでも、需要量が増えている。
需要曲線のシフト:すべての価格水準での需要量の変化。
それは、当初の需要曲線が新しい位置へ移動することで表される。
需要曲線に沿った移動:価格変化の結果として生じる需要量の変化。
  ◇2.3 需要曲線のシフトを理解する 
「需要の増加」⇒需要曲線の右へのシフト
「需要の減少」⇒需要曲線の左へのシフト。
需要曲線をシフトさせる要因:
@関連する財の価格変化
A所得の変化
B嗜好の変化
C予想(期待)の変化
  ●関連する財の価格変化
  ◎代替財
 一方の財(コンサート)の価格が下がると、もう一方の財(アイスホッケーゲーム)を買いたいという消費者の気持ちが弱くなる場合、2つの財は代替財
〜価格が下がった方に流れる(=客を奪われる)。
ex.コンサートとアイスホッケー、マフィンとドーナツ、電車とバス
代案となる財の価格が下がる⇒もともと買おうと思っていた財の代わりにその財を買う消費者が出て来る⇒需要曲線を左にシフト
◎   ◎補完財 
1つの財の価格が下がると、もう1つの財を買いたいという消費者の気持ちをより強くなる場合、2つの財は補完財
〜価格が下がった方に流れる(=客が増える)。
ex.スポーツ観戦のチケットとスタジアムの駐車券、ハンバーガーの肉とバンズ、車とガソリン。
アイスホッケー場が無料駐車券を提供⇒チケットの価格がどうあっても「パック」(=ゲーム+駐車)の料金が下がる⇒人数が増える。
ある財の需要量は、その補完財の価格が下がれば、どの価格水準でも増加⇒需要曲線は右にシフト
  ●所得の増加 
所得の増加が、ある財の需要を増やす場合、その財は正常財
所得の増加が、ある財の需要を減らす場合、その財は下級財
〜高所得者が低所得者に比べて買いそうにない財。
所得の増加⇒需要曲線を左にシフト。
  ●嗜好の変化 
帽子に対する需要の減少⇒帽子の需要曲線は左にシフト。
ある財を好むように嗜好が変化⇒需要曲線は右にシフト。
ある財を好まないように思考が変化⇒需要曲線は左にシフト。
嗜好の変化にかかわる主な注意点は、経済学者はそれについて何もいうべきことはなくて、ただそれを与えられたものとして受け入れるということ。
ある財を好むよう嗜好が変化⇒どの価格水準でもそれを買いたいという人が増加⇒需要曲線は右にシフト
逆⇒左にシフト。
  ●予想の変化 
4月15日のアイスホッケーゲームのチケットに対する需要の増加は、予想の変化(=将来グレツキー選手の活躍を見る機会があると期待できなくなった)による。
将来の値下がり予想⇒現在の需要減少。
将来の値上がり予想⇒現在の需要増。
将来の所得増予想⇒今お金を借りてある種の財に対する需要を増やす。
将来の所得減予想⇒今貯蓄をして何かの財に対する需要を減らす。
※  ※交通渋滞を考える
市の中心部での運転を抑制
@代替財の価格を下げて自動車乗り入れの需要を減らす。
〜バスと鉄道サービスへ補助金。
A補完財の価格をあげる。
〜商業駐車場に高い税金。駐車メーターの時間制限+厳しい駐車規制。
ロンドンの手法:
B運転コストを引き上げて混雑を減らす。
〜ビジネスアワーに市心に乗り入れる全ての自動車に5ポンド(約9ドル)の「混雑課徴金」
C支払義務の遵守は、乗り入れ車のナンバープレートを自動カメラで撮るという方法
支払わず捕まったら、1回の違反に100ポンド(約180ドル)の罰金
⇒ロンドンの中心部への交通量は32%減少し、車は約3割速く移動。
  ◆3 供給曲線
ある財・サービスの供給量は、それぞれの価格水準で人々が実際にこれを売りたいと思う数量のこと。
人々がダフ屋に売りたいと思うチケットの数量・・・供給量・・・は支払ってもらえる価格に依存している。
  ◇3.1 供給表と供給曲線 
ある財・サービスの供給表は、それぞれの価格水準でそれらが供給される数量を示す。
供給曲線は、人々が財・サービスをそれぞれの価格水準でどれだけ売ってもよいと思うかをグラフで示すものだ。
価格の上昇⇒供給量の増加
〜右上がり。
  ◇3.2 供給曲線のシフト 
供給曲線のシフト:すべての価格水準で財あるいはサービスの供給量の変化。当初の供給曲線の、新しい供給曲線で示される新しい位置への移動で表される。
ex.グレツキー選手の引退宣言前の供給曲線から引退宣言後の供給曲線へのシフト。
@供給曲線のシフトと、A供給曲線に沿った移動(=価格の変化によって生じる供給量の変化)を区別することが大切。
価格が250ドルから200ドルへ下がる⇒供給量が9000から8000に減少(A)
供給が減少する(=供給曲線が左にシフトする)ときには、価格が変化しなくても供給量は減少(@)。
(価格が250ドルのままで、供給量は9000から8000に減少)
  ◇3.3 供給曲線のシフトを理解する 
経済学者が
「供給の増加」⇒供給曲線の右へのシフト(=どの価格水準でも人々が以前より多くの数量を供給)
「供給の減少」⇒供給曲線の左へのシフト
供給曲線のシフトの要因
@投入物価格の変化
A技術の変化
B予想(期待)ぼ変化
●投入物価格の変化:
投入物他の財の生産に用られる財のこと。
投入物の価格上昇⇒コスト高⇒供給曲線は左にシフト
投入物の価格の低下⇒コスト安⇒供給曲線は右にシフト
●技術の変化:
技術:必ずしも高度な技術のことではない。人々が投入物を役に立つ財に変換するあらゆる方法のこと。
生産コストを下げる(=以前とじ生産量を以前より少ない投入量で生産できる)改良技術⇒供給増加⇒供給曲線は右にシフト。
●予想の変化:
ある財の価格が将来上がるという予想⇒現在の供給を減らす
ある財の価格が将来下がるという予想⇒現在の供給を増やす
  □農産物の価格支持(および抑制)
先進諸国で農産物価格を引き上げる法制〜農家の所得を引き上げるためで、生産量を増やすためではなかったbut生産量が増加。
価格支持制度⇒生産量拡大。
ガーナでは農産物価格を抑制する政策⇒生産量は激減(カカオのガーナのシェアは12%に下がる)
そのような政策をとらなかった他のカカオ豆輸出国は、着実に売り上げを伸ばした。
今日では、ヨーロッパは農業価格を改革、発展途上国では価格抑制政策を放棄
〜政府はやっと供給曲線が右肩上がりであることを学んだようだ。
  ◆4 供給、需要、均衡 
供給と需要のモデルの3つの重要な要素
@供給曲線
A需要曲線
B各曲線をシフトさせる諸要因
これらをつなぎ合わせて、ある財が売買される実際の価格をいかに予測するか?
市場は均衡に向かう(第1章)
均衡:今取っているのとは違う行動をとっても誰も自分の満足を高めることができない状態
競争市場の場合、ある財の価格が需要量と供給量が等しくなる水準に落ち着いた状態。
  ◇4.1 均衡価格と均衡数量を見つける 
  ◇4.2 市場で販売と購入が同一価格で行われるのはなぜか
良くできた、継続性のある市場では、すべての売り手がほぼ同じ値段を受け取り、すべての買い手がほぼ同じ値段を支払うことになる。
=市場価格
  ◇4.3  市場価格が均衡価格よりも高いとき、市場価格が下がるのはなぜか
市場価格が均衡水準より高い350ドル⇒5000枚の需要に対して8800枚が供給される(=3800枚分供給過剰)
⇒3800人の売りたい人達は値下げをして、他の売り手から顧客を奪おうとする
⇒均衡価格に近付いていく

価格が均衡水準より高いとき(=供給過剰があるとき)、その財の価格は必ず下がる。
  ◇4.4 市場価格が均衡価格よりも低いとき、市場価格が上がるのはなぜか
均衡水準(250ドル)より低い価格(150ドル)⇒1万枚の供給不足(=超過需要)
⇒供給不足が続く限り価格の引き上げ⇒価格は、均衡水準より低ければ必ず上がる。
  ◇4.5 均衡を使って市場を描写する
市場価格はいつも均衡価格、すなわち供給過剰も供給不足もない価格に向かって動いていく。
  □ 魚の話 
  ◆5 需要と供給の変化 
グレツキー選手の引退宣言⇒チケットの需要量増加と供給量減少
フロリダの寒波⇒オレンジの供給を減らす
卵が健康によくないとの医療報告⇒卵の需要を減らす
  ◇5.1 需要曲線がシフトすると何が起こるか
コーヒーと紅茶は代替財。
紅茶の価格上昇⇒コーヒーの需要増加
紅茶の価格下落⇒コーヒーの需要減少
●まとめ
需要の増加⇒需要曲線が右にシフト⇒@均衡価格とA均衡数量の両方の上昇をもたらす。
需要の減少⇒需要曲線が左にシフト⇒@均衡価格とA均衡数量の両方の減少をもたらす。
  ◇5.2 供給曲線がシフトするとき何が起こるか 
現実の世界では、需要の変化より供給の変化のほうがいくらか予測しやすい。
←投入物の利用可能量のような供給に影響する物理的要因は、需要に影響するきまぐれな嗜好よりも捕まえやすい。
but本当によくわかっているのは、供給曲線のシフトの効果の方。
●まとめ
供給の増加⇒供給曲線が右にシフト⇒@均衡価格の低下とA均衡数量の増加をもたらす。
供給の減少⇒供給曲線が左にシフト⇒@均衡価格の上昇とA均衡数量の減少をもたらす。
  ◇5.3 供給と需要の同時シフト 
需要曲線と供給曲線が反対方向にシフトする場合:
@需要が増加し供給が減少⇒価格は上昇するが数量がどう変化するかは明らかでない。
A需要が減少し供給が増加⇒価格は低下するが数量がどう変化するかはあきらかでない。
需要曲線と供給曲線が同じ方向にシフトする場合:
@需要と供給がともに増加⇒数量は増加するが、価格がどう変化するかは明確でない。
A需要と供給がともに減少⇒数量は減少するが、価格がどう変化するかは明確ではない。
  プレーン・バニラが出世した 
インド洋の悪天候⇒バニラの価格上昇⇒需要量の低下〜消費量が35%も減少。
消費者は合成バニリンで風味づけられたアイスクリームに転向。
バニラの供給不足が生じたわけではない。値段を支払さえすればいつでも店の食品棚から手に入ることができる〜バニラ市場は均衡している。
  ◆6 競争市場:そしてその他の市場
@小麦の作付けを増やすかどうかを決めなければならない小麦農家。
Aアルミニウムの生産を増やすかどうかを決めなければならない巨大アルミ企業の社長。
@については、単純に追加的に生産する小麦が生産コストをまかなうだけの高値で売れるかどうか。
Aについては、自分の行動が市場価格に無視できない影響を及ぼすことを自覚。
〜生産者がしなければならない決定に全く新しい複雑さを付け加える。
市場が競争的なときには、個々人は非競争的な市場に比べ複雑でない分析に基づいて決定を下すことができる。
  ◆要約
供給と需要のモデルは、市場の価格が均衡価格、あるいは市場清算価格、すなわち需要量が供給量に等しくなる価格に向かって動くという原理に基づく。 
この時の需給量は均衡数量と呼ばれる。
価格が市場清算水準よりも上⇒供給過剰⇒価格を押し下げる。
価格が市場清算水準よりも下⇒供給不足⇒価格を押し上げる。
需要の増加⇒均衡価格と均衡数量を上昇させる。
(需要の減少は逆)
供給の増加⇒均衡価格を引き下げ、均衡数量を増やす。
(供給の減少は逆) 
両曲線が反対方向にシフト⇒価格の変化は予測できるが、数量の変化は予測できない。
両曲線が同方向にシフト⇒数量の変化は予測できるが、価格の変化は予測できない。
  ★第4章 価格統制と割当て:市場へのおせっかい
  ニューヨークの住宅不足は家賃統制の結果。
ニューヨークでタクシーの供給に限りがあるのは、1930年代に導入された許可制度の結果。
  ◆1 なぜ政府は価格を統制するのか 
価格統制は市場価格がどこまで高くなってもよいか、あるいは低くなってもよいかを定める法的な制限。
@売り手がある財に付けられる最高の価格を定める上限価格規制
A買い手がある財に支払うべき最低の価格を定める下限価格規制
この章の分析は、競争市場だけを対象に、価格統制が課されると何が起こるのかを考察するもの。
  ◆2 上限価格規制 
  ◇2.1 上限価格規制のモデル化 
(単純化のために、すべてのアパートの質は全く同一で、統制のない市場ではどれも同額の家賃で貸し出されると考える。)

需要曲線と供給曲線⇒統制のない市場での均衡点Eでは、200万戸のアパートが付き1000ドルで賃貸。
政府が家賃を800ドルでの上限価格規制
800ドル⇒
供給は自由な市場に比べて20万戸少ない180万戸。
需要は自由な市場に比べて20万戸多い220万戸。
⇒持続的な賃貸アパートの不足。
  ◇2.2 なぜ上限価格規制は非効率の原因となるのか 
市場経済は、ほうっておけば通常は効率的(=他の人々の状態を悪化させることなく誰かの状態を良くすることができない状況)に働く。
価格統制が引き起こす他のすべての供給不足と同様、非効率性をもたらし深刻な害悪となり得る。
失われた機会があるとき、つまり他の人々の状態を悪化させることなくある人の状態を良くできるとき、市場あるいは経済は非効率
家賃統制⇒3つの非効率(@借家人への非効率なアパートの配分、Aアパート探しに要する時間の浪費、B家主がアパートを非効率的に低い質や状態にしておく)
  ●消費者への非効率的な配分:
アパートの効率的な配分⇒本当にアパートを欲している人(=より高い価格を支払っても良いと思っている)がアパートを得て、そうでない人は見つけることができない。
but
家賃統制⇒人々は通常偶然や個人的コネのおかげでアパートを得る⇒数少ない利用可能なアパートの消費者への非効率的な配分
上限価格規制はしばしば消費者への非効率な配分という非効率性をもたらす。これは、その財を非常に欲していて高い価格を支払う意欲のある人がそれを得られず、その財に比較的低い関心しかなく、低い価格を支払う意欲しかない人がそれを得る、というもの。
  ●資源の浪費: 
家賃統制⇒リー一家は何か月もの間をすべてアパート探しのために使う⇒失われた機会を作り出す。
アパートの市場が自由に機能⇒均衡家賃1000ドルですぐにアパートを見つけることができる。
一般的に、上限価格規制は資源の浪費という非効率性をもたらす。これは、上限規制で生じる供給不足に対処するため、お金と労力が費やされるというもの。
  ●非効率に低い品質: 
上限価格規制が非効率に低い品質という非効率性をもたらすことがよくある。
これは、たとえ買い手が高価格で高品質の財を好んだとしても、売り手は低価格手低品質の財を提供する。
  ●ブラック・マーケット: 
ブラック・マーケットは、財やサービスが非合法に売買される市場だ。
その財を売ること自体が非合法な場合もあるし、付けられた価格が上限価格規制で法的に禁じられている場合もある。
この場合、違法な行為が、正直たらんとしている人の立場をより悪くしてしまう。
  ◇2.3 それでもなぜ上限価格規制があるのか 
上限価格規制

T持続的な供給不足
Uそのために生じる、@消費者への財の非効率な配分、A財をみつけるための資源の浪費、B売りに出される財の非効率に低い品質
V非合法なブラック・マーケットの出現
価格統制がニューヨークで続いている理由。
@一部の人には便益をもたらす(=ごく少数の借家人は統制のない市場で同じ住居を得るときの価格に比べるとはるかに安く住居の提供を受けている。)
A買い手は統制がない場合に何が起きるかがわからない。
B政府の役人が供給と需要の分析を理解しないことが多い。
  ◇1970年代の石油不足
1979年イランの石油生産中断⇒原油価格は300%急騰but供給不足はなかった。
アメリカでは、ガソリンに上限価格規制⇒供給不足⇒パニック。
  ◆3 下限価格規制(2p147)
ex.最低賃金。
最低賃金が均衡賃金率の上にあるとき、働きたいと思う人々、すなわち売り手である労働者のなかに、買い手すなわち彼らに仕事を与えたいと思う雇用を見つけることができない人が出る。
    下限価格規制とバタークッキー:
欧州連合は、いわゆる共同農業政策(CAP)の下に農産物に対して下限価格規制⇒大量の供給過剰⇒CAPはバターのような財を輸出する会社に補助金を出す⇒アメリカで人為的に安くなっている。
  ◇3.1 下限価格規制はどのように非効率の原因となるのか(2p149) 
    下限価格規制が引き起こす持続的な供給過剰⇒失われた機会=非効率をもたらす。
  ●非効率に低い数量 
下限価格規制⇒消費者にとって財の価格を上げる⇒その財の需要量を減少させる。
売り手は買い手が買いたいと思う以上の量をうることはできない⇒下限価格規制は売買される財の数量を均衡数量以下に減少させ、死荷重をもたらす。
効率的市場の均衡は消費者余剰と生産者余剰の総計を最大化する⇒数量を均衡数量よりも下げる下限価格規制はそう余剰を減少させる。
  ●売り手間での販売機会の非効率的な配分:
下限価格規制は売り手間での販売機会の非効率な配分をもたらす。
つまり、最も低い価格で財を売ろうとしている人が、実際にそれを売る人になるとは限らない。
ベルギーは高い最低賃金⇒若者たちにとっての職は希少
ロゼッタはもっと安くてもよいから働きたいと思ったが、職がない。
  ●資源の浪費: 
政府が下限価格規制を課された農産物の望ましくない余剰を買い上げる⇒廃棄
最低賃金の下で長期間にわたり職を探したり、職を得るための行列に並んだりする人々は、上限価格規制の下でアパートを探す不運な家族と同じような役割を演じている。
  ●非効率に高い品質: 
下限価格規制が、非効率的に高い品質という非効率性をもたらすことがよくある。
たとえ買い手が低価格で低品質の財を好んだとしても、売り手は高価格で高品質の財を提供。
大西洋路線の航空運賃が国際協定により人為的に高く設定⇒航空会社は乗客に低い価格を提供して競争することを禁止された⇒ほとんど食べ残される無駄な機内食といった豪華なサービスを提供。
1970年代のアメリカ航空会社の規制緩和⇒小さな座席と低い食事といった機内サービスの質の低下を伴う航空券価格の大幅な下落⇒航空会社の利用者数は規制緩和以来、数百パーセントに増加。
  ●非合法活動: 
高い最低賃金⇒就業に絶望的な労働者は、雇用主との間で帳簿外の労働に同意するか、政府の検査官に賄賂を送る。
  ◇3.2 それでもなぜ下限価格規制があるのか(2p152)
下限価格規制⇒
@財の持続的な供給過剰

A非効率に低い数量(死荷重)、売り手の間での販売機会の非効率な配分、資源の浪費、供給者によって提供される非効率的に高い品質、といった形態の非効率
B非合法活動にかかわる誘惑、特に政府役人の収賄行為と腐敗
下限価格規制を課す理由:
役人がモデルを理解していない。
上限価格規制が影響力を持つ一部の買い手に便益をもたらすという理由で課されるように、
下限価格規制はしばしば影響力を持つ一部の売り手に便益をもたらすという理由で課される
    南ヨーロッパの「やみ市場」:
最低賃金は、労働者の労働供給量と雇用主の労働需要量を一致させる賃金よりかなり高い。
⇒高い失業率。
スペインでは、国が報告する失業者の約3分の1はやみ労働市場にいると推計。
イタリアの労働規制は、15人以上の労働者を抱える企業のみに適用される⇒高い賃金と各種の給付の支払い義務を避けるため、小企業のままとどまっている⇒イタリアのいくつかの産業では、零細企業が驚くほど急激に増加。
イタリアで最も成功している産業の1つである毛織物の加工業はプラント地区に集中しているが、その地区の平均的な織物企業は4人しか労働者を雇っていない。
  ◆4 数量を統制する 
数量規制あるいは割当ては、ある財の購入可能量や販売可能量の上限。
合法的に取引されうる財の数量の総計は割当て制限
許可制は、その所有者に財を供給する権利を与える。
ex.
ニューヨークのタクシーの許認可システム(タクシーの大メダル)
ニューヨークでタクシー業を営みたいなら、大メダルを借りるか、あるいは現行価格の25万ドルでそれを買わなくてはいけない。

人々の外国為替の購入限度額
ニュージャージーの漁船のハマグリの漁獲限度量
価格統制は均衡価格のどちら側にも課せられる・・・上限価格規制と下限価格規制があるが、
数量統制は、常に上限を設定(人々が買いたい、あるいは売りたいと思っている数量を超えて売買を行うよう強制することはできない。)。
  ◇4.1 数量統制の構造 
全てのタクシー乗車は同一だと想定・・・あるタクシー乗車の区間は別の乗車区間よりも長く、そのためにより高額になるというような現実世界の複雑さを無視。
供給表と需要表⇒均衡は1回の乗車の運賃5ドルと1000万回の乗車回数。
ある所与の数量の需要価格とは、消費者がその数量を需要する価格のこと。
(1回の乗車運賃が5ドルのとき、人々は何回タクシーに乗りたいと思うか?
人々が年間1000万回タクシーに乗りたいと思うのは、1回の乗車運賃がいくらのときか?)
ある所与の数量の供給価格とは、生産者がその数量を供給する価格のこと。
(1回の乗車運賃が5ドルのとき、タクシー運転手は何回のh乗車を供給したいと思うか?
供給者が年間1000万回の乗車を供給したいと思うのは、1回の乗車運賃がいくらのときか?)
需要価格:1000万回で5ドル。600万回で7ドル。
供給価格:1000万回で5ドル。600万回で3ドル。
大メダルシステム⇒乗車回数年間800万回を提供。
自分でタクシーを運転してもよいり、料金をとってそれを他人に貸してもよい。
800万回の乗車の需要価格は6ドル。
800万回の乗車の供給価格は4ドル。
タクシー乗車の対価として支払われる価格が6ドルなのに、タクシー運転手が受け取る価格が4ドルになるのはどうして?
〜大メダルにも市場がある。
@タクシーの乗車の取引と価格
A大メダルの取引と価格
という2組の取引と価格を考慮する必要がある。
サニルは彼の大メダルをハリエットに1日貸すと仮定。
ハリエットは大メダルを持てば1回6ドル得られることを知っているが、彼女は少なくとも1回4ドルえを得られるときのみ大メダルを借りたいと思う。
ハリエットはレントとして2ドルを提供する必要(1.5ドルだと、それより少し上で大メダルを借りようとする熱心な運転手がでてくる)。
数量統制や割当ては、財の需要価格と供給価格の間にウェッジ(くさび)を打ち込む。
買手が支払価格>売り手が受け取る価格
割当て制限を課された数量の需要価格と供給価格の差が割当てレント
それは、許可証の保有者が財を売る権利を所有することから得られる収入で、割当てレントは、許可証が取引されるときの許可証の市場価格に等しい。
ニューヨークの大メダルの価格は、2004年におよそ25万ドルだった。
上限価格規制や下限価格規制と同じように、割当ても常に実質的な効果を持つとは限らない。
割当てが1200万回(=規制のない市場での均衡数量よりも多い)に設定⇒それは拘束的なものとはならず、実質的な効果はない
  ◇4.2 数量統制の費用 
@失われた機会による非効率性の問題:
市場が自由市場の均衡数量である1000万回に達したときにのみ「失われた乗車機会」がなくなる。
800万回の割当て制限は200万回の「失われた乗車機会」の原因となる。
一般に、所与の数量での需要価格が供給価格を上回る限り、失われた機会が存在する。
買い手は売り手が受け取ってもよいと思う価格を支払って財を買おうとするが、割当てで禁止されているので、そのような取引は起こらない。
A非合法活動へのインセンティブ
人々が行いたくとも許されていない取引⇒法律を潜り抜けたり、法律を破ろうとするインセンティブ。
    ニュージャージーのクラム1980年代に乱獲のため、ニュージャージーのハマグリ養殖場が全滅するおそれ⇒送料を設定した割当てを導入。
  ◆5 驚くべき類似:税 
割当てを理解するためにここまで用いてきた分析は、ほとんど修正することなく、税の予備的な分析をするのにも用いることができる。
  ◇5.1 なぜ税は割当てに似ているのか 
物品税は財やサービスの売上に課される税。
均衡価格は5ドルで1000万回。うち2ドルは税。
⇒税額の分だけ供給曲線を上にシフトさせる。
⇒市場均衡は、1回の乗車の価格が5ドルで1000万回が提供・利用されるE点から、1回の乗車の均衡が6ドルで800万回が提供・利用される点Aへの移動。
乗車への2ドルの課税があるときの均衡は提供・利用される乗車数を800万回に減少させるが、それは2ドルの割当てレントを生じさせる、800万回の割当てを課したときの均衡と同じように見える。
割当てと同じように、税も需要価格と課税前の供給価格の間にウェッジを打ち込む。
唯一の違いは、運転手が2ドルのレントを許可証の所有者に支払うのではなく、2ドルの税を市に支払う。
物品税と割当てを完全に同じものにする方法:
市が、許可証を1回につき2ドルで販売〜2ドルの許可証代金は、事実上2ドルの物品税となる。
市が特定の価格で許可証を販売する代わりに800万枚の許可証を発行してオークション。
許可証の価格は2ドルとなる。
  ◇5.2 誰が物品税を支払うのか 
これまで税を売り手が払うという前提
but
それを買い手が払うとしたら?
乗客が2ドルの税を支払う⇒課税前と課税後でタクシー乗車の需要量を同じにするには、乗客が支払う運賃は課税後の方が2ドル低くなくてはならない。
⇒需要曲線は税額の分だけ下にシフト⇒均衡点はEからBに移動し、Bでは市場価格は乗車1回当たり4ドルで、800万回が提供・利用される。
4ドルは800万回の供給価格で、6ドルはその需要価格
but乗客は税金を含めて6ドルを支払っている。
どちらの場合も、買い手は実効価格6ドルを支払、売り手は4ドルを受け取り、800万回の乗車が提供され、利用される。
誰が形式的に税を支払うかは何の違いももたらさないように見える。
税の帰着・・・本当に税を負担するのは誰か・・・は、政府に対して実際にお金を支払うのは誰かということ答えられる問題ではない。
ここでの例では、タクシー乗車に課される2ドルの税は、買い手(乗客)の支払い価格の1ドル増加と、売り手(運転手)の受け取る価格の1ドル減少に反映されている⇒税の帰着は売り手と買い手で半々。
but
供給曲線と需要曲線の形状に応じて、物品税の帰着は異なる分けられ方をする。
  ◇5.3 物品税からの収入 
買い手と売り手の双方が物品税で損失を被るが、政府は収入を得る。
収入=2ドル×800万回の乗車=1600万ドル。
物品税で集められた収入は、高さが供給曲線と需要曲線の間に税が打ち込んだウェッジで、幅は税が課されたときの売買量である四角形の面積に等しい。
  ◇5.4 税の費用 
税は割当てと同じく、相互に利益のある取引が生じるのを妨げる。
乗客は6ドルを払うが、運転手は4ドルしか受け取らない。
税がなければ実現していた200万回の潜在的なタクシー乗車があって、それは実現すれば乗客と運転手の双方に便益をもたらすが、税のために実現されない。
税は、過剰負担あるいは死荷重という追加的な費用をもたらす。それは相互に利益のある取引を阻害するという非効率性。
悪く設計された税は、よく考えられた税よりも大きな死荷重を課す。
人々は税を逃れるために行動を変える。
ex.タクシーに乗る代わりに歩くことで、相互に利益を得る機会が失われる。
    ニューヨーク州ではタバコ税は州レベルと地方レベルの両方で引き上げられ、1箱3ドルに。
butタバコを栽培するバージニア州では1箱2.5セント。
⇒タバコ栽培州からニューヨークのような税の高い地域への、大規模なタバコの違法取引。
    FICA(連邦保険寄与法)を支払うのは誰?
労働者から7.65%、雇用者も同額支払う。
ほとんどの経済学者は、FICAの実質的な効果は、賃金から労働者と雇用者の支払額の合計を差し引くのにほぼ等しいと信じる。
自分の分担する額だけを支払うのではなく、雇用者が分担する額はすでにあなたの低い賃金に反映されているので、実質的に雇用者の分まで支払っていることになる。
雇用者は税金を支払ってはいるが、それは賃金の減少によって全額補償されている。
⇒雇用者ではなく、労働者が税の全額を負担している。

労働の供給(その仕事を進んでしようとする労働者の数)が労働の需要(雇用者が進んで提供しようとする仕事の数)よりも賃金率に対してはるかに感応的ではない。
労働者は賃金率の低下に対して相対的に非感応的⇒雇用者は税の負担を低い賃金を通じて簡単に労働者へ転嫁できる。
★第5章 国際貿易  
  ◆1 比較優位と国際貿易 
     
  ◆2 供給、需要、国際貿易 
     
◆    ◆3 貿易保護政策の効果 
     
◆    ◆4 貿易保護政策の政治経済学 
     
  ★第5章付録 消費者余剰と生産者余剰 
  ◆本で利益を上げる
  ◆1 消費者余剰と需要曲線 
鍵となるのは、需要曲線は嗜好や選考から導かれること・・・そしてその選考が、中古教科書の購入機会からの便益の大きさを確定するということ。
  ◇1.1 支払い意欲額と需要曲線 
消費者の財への支払い意欲額とは、消費者がこの財を買ってもいいと思う最高価格のこと。
  ◇1.2 支払意欲額と消費者余剰 
個別消費者余剰は、財の購入から個々の買い手が得る純便益で、その買い手の支払い意欲額と支払った価格の差に等しい。
総消費者余剰は、財の買い手の個別消費者余剰を全員分合計したもの。
消費者余剰という用語はたいていの場合、個別消費者余剰と総消費者余剰の両方の意味でつかわれる。
総消費者余剰は需要曲線の下側で価格より上の領域の面積に等しい。
  ◇1.3 価格変化は消費者余剰にどのような影響を与えるか 
価格が変化したとき消費者余剰がどれだけ変化するか?
例えば、フロリダの霜害でオレンジ価格が上昇すると、消費者がどれだけ害を受けるか?
養殖が導入されてサケが安くなったときに消費者がどれだけ便益を得るか?
消費者余剰の増加には2つの部分がある。
中古教科書が30ドルでなく20ドルで販売
@もっと高い価格でも中古教科書を買うつもりがある人々の便益
A中古教科書に20ドル以上支払っても良いと思っているが30ドルでは買おうとしない人の便益

需要曲線の下側で価格より上側の領域の増加分。
    新しい薬がほしい
新しい生産物の経済への寄与をどう計算すればよいか?
新しい薬・・・どんな新しい生産物でもそうだが・・・からの便益を測る正しい方法は、人々がその財に支払っても良いと思う額を明らかにして、そこから実際に支払った額をひくこと。
別の言葉で言えば、新しい薬の便益は消費者余剰を計算することで測定されるべき。
    お金では十分じゃないとき
消費者余剰の概念⇒購入することから消費者は純便益を得る。
つまり、消費者は、その財に対して自分が支払っても良いと思う額よりも低い額しか支払っていない=現行価格で財を買う権利はそれ自体価値のあるもの。
第二次大戦中の制限。
  ◆2 生産者余剰と供給曲線 
買い手が財を購入する際、実際に支払う価格よりも高い価格を支払っても良いと思っているように、
売り手は、彼らが実際に受け取る価格よりも低い価格で売っても良いと思っている。
⇒生産者余剰と供給曲線を分析できる。
  ◇2.1 費用と生産者余剰 
潜在的な売り手の費用は、売り手がその財を売っても良いと思う最低の価格。
中古教科書を売った学生はそれ以降、個人蔵書の一部としてその本を所有することはできない⇒それを売ることの機会費用が存在する。
経済学の基本原理の1つ:何かをすることの費用を測る真の尺度は常に機会費用・・・何かの本当の費用はそれを得るためにあなたがあきらめなくてはならないもの。
個別生産者余剰は、財を売ることから個々の売り手が得る純便益。それは受け取った価格と売り手の費用の差に等しい。
市場での総生産者余剰は、財の売り手の個別生産者余剰を全員分合計したもの。
経済学者は生産者余剰という用語を個別生産者余剰と総生産者余剰の両方の意味で使う。
ある価格水準で財を販売したときの総生産余剰は、供給曲線より上側で価格より下側の領域の面積に等しい。
  ◇2.2 生産者余剰の変化 
    災害からの利益:
1992年、ハリケーンアンドリューがフロリダに上陸し、何千もの家屋やビルを倒壊。
州当局は、一時的にフロリダ半島に移ってきた多数の建設労働者の力を借りて、ただちに再建。
労働者たちの動機付けは、住民への同情ではなく、高い賃金;
労働者は便益を費用よりも高くみているが、彼らが得た生産者余剰は彼らが得た金額よりはるかに小さいもの。
  ◆3 消費者余剰、生産者余剰、取引利益 
経済学の原理の1つは、市場は通常は効率を達成するというもの。
それを説明。
  ◇3.1 取引利益 
市場で生じる総余剰は、消費者と生産者が市場で取引することから得る純便益の総計で、消費者余剰と生産者余剰を合計したもの。
この図で決定的なのは、消費者と生産者の両方が便益を受けている
=この財の市場が存在することで、消費者と生産者の両方の状態が良くなっている。
=「取引は利益をもたらす」
  ◇3.2 市場の効率性:予備的な視点 
最大可能な総余剰が市場均衡で実現している
〜市場均衡は最大限可能な便益を社会にもたらすように潜在的な消費者の間で消費を割り振り、また潜在的な売り手の側で販売機会を割り振る。
均衡で中古教科書を買おうとする学生は皆30ドル以上の支払い意欲額を持っており、買おうとしない学生は皆30ドル未満の支払い意欲しか持っていない。
⇒消費者間での財の再配分は、中古教科書をより高く評価する学生から取り上げて、それをより低くしか評価しない学生に与えることを意味する。
=必然的に消費者余剰を減らす。
市場均衡は消費者余剰と生産者余剰の合計である総余剰を最大化する。

市場の4つの機能
@市場は財を、最も高くそれを評価する潜在的な消費者に配分する。それは、その消費者が最高の支払い意欲額を持っているという事実からわかる。
A市場は販売機会を、財を販売する権利を最も高く評価する潜在的な売り手に配分する。それは、その売り手の費用が最低だという事実からわかる。
B市場は、財を購入する消費者は誰でも、財を販売する売り手よりも財を高く評価することを保証するので、すべての取引は両方に便益をもたらす。
C市場は、財を購入しない潜在的な買い手は誰でも、財を販売しない潜在的な売り手よりも財を低く評価することを保証するので、両方に便益をもたらす取引は行われない。
市場均衡が総余剰を最大化するといっても、それが各消費者個人や各生産者個人にとって最適な効果を意味しない。
しかし市場均衡では、他の人々の状態を悪くさせることなくある人々の状態を良くする方法はない・・・そしてこれが効率性の定義。
  ◇3.3 いくつかの注意 
市場の失敗は、市場が効率的であることに失敗したときに起こる。
市場が時として実際に効率的でなくなる3つの理由
@取引において一方の側がより多くの資源を獲得しようとして相互に利益のある取引が生じることを阻むとき、市場は失敗することがある。
ex.独占者。
独占者は利潤を増加させるために市場価格を操作し、相互に利益のある取引を阻むことで、非効率性を生じさせる。
A個人の行動が他人の厚生に対して市場では想定されない副作用(=外部性)をもたらすことがある。
ex.汚染
汚染者がどれくらいの汚染を出すかを判断するとき、その汚染者は自分たちの汚染のせいで他の人々がどれほどの費用を負担させられるかは考慮に入れない。
汚染者は社会全体という観点で見れば多すぎる汚染を出そうとし、汚染を出すことで得られる利益以上の損害を社会におしつけてしまう。
B市場による効率的な管理にふさわしくない性質をもつ財を扱う市場は、失敗することがある。
ex.私的情報(=ある人は持っているが他の人は持っていないという情報)の問題を抱える財。
中古車市場で車を売る場合、自分の車が「レモン」ではないと知っているけれど、潜在的な買い手はそのことはわからない⇒レモンであることを恐れて、あなたが考える車の価値よりも低い額しかし晴らそうとしない。⇒相互に利益をもたらす取引が行われなくなる。
ex.公共財
だれもが、他人の負担によって供給される公共財に「ただ乗り」しようとする。but負担者が極端に少ないと、公共財の供給が過小になって非効率性が発生。
    eベイと効率性 
自らの使命は「地球上のほぼすべての人が実質上あらゆるものを取引するのを手助けする」ことだとし、珍しい品や中古品の買い手や売り手になりうる人々がたとえ近所や同じ都市に住んでいなくても、お互いを見つける方法を提供。
  ◆4 消費者余剰と生産者余剰を応用する:税の効率費用 
税によって、消費さが支払う価格と生産者が受け取る価格との間にウェッジが打ち込まれる。
消費者が支払う価格は上昇し、生産者が受けとる価格は下がり、その差が1単位当たりの税額に等しくなる。
消費者と生産者がそれぞれどれだけを負担するかという税の帰着は、誰が実際に政府に税を支払うかとは関係がなく、価格変化に対して需要量と供給量がそれぞれどれくらい変化するかによって決まる。
ある財の価格変化に応じその財の需要量が敏感に変化するとき、その財の需要は弾力的だという。
逆は非弾力的。
価格がある一定率上昇したとき、その上昇率以上に需要量が減少する財⇒弾力的。
ex.
ポテトチップスの価格が10%上昇⇒需要量が25%減少⇒25%>10%⇒弾力的
ガソリン価格が15%上がる⇒需要量5%減少⇒非弾力的⇒需要曲線は急(価格が大きく変化しても、需要量はそれほど大きく変化しない。)
価格の変化に応じた供給量の変化の敏感さについても同様。
税の帰着との関係。
生産者に物品税⇒価格上昇の形で消費者に「転嫁」⇒需要弾力性が高い⇒需要は劇的に減少⇒「転嫁」せず、税の大部分は生産者が負担。
供給が弾力的な場合は、その逆になる。
需要が弾力的になるほど、生産者の税負担が大きくなり、供給が弾力的になるほど、消費者の税負担が大きくなる。
図5−14(152頁):
税がなければ均衡点はE、均衡価格はとj均衡数量はPeとQe
税⇒ウェッジを打ち込み、売買数量を減らす。
税はTドルで、売買数量はQtに減少。

消費者が支払う価格は減少した数量のQtの受領価格Pcに上昇し、生産者が受け取る価格は、その数量の供給価格Ppに下落。その差Pc−Ppは物品税Tに等しい。

それにより(価格上昇により)失われる消費者の損失はA+B
生産者が受け取る価格下落による生産者余剰の減少はC+F

政府の収入はT×Qt=A+C〜消費者と生産者が失う余剰の一部
政府の利益では相殺できない部分が2つの三角形のBとF=死荷重
死荷重の底辺はTで、高さは税による販売量の減少分QeーQt
QtがQeより小さくなければ、死荷重はなくなる。
死荷重を三角形の面積で測るというやり方は、多くの場面で繰り返される。
これは、物品税だけでなく、他の税からも生じるし、独占のような別の種類の市場の歪みからも生じる。
経済政策の一般的なルールは、他の条件を一定とすれば、市荷重が最も小さい政策を選ぶというもの。
  ◇4.1 死荷重と弾力性 
物品税で死荷重が生じるのは、それが相互に利益のある取引を阻害するから。
需要か供給のどちらか、あるいはその両方の弾力性大(=傾きが小さい(少しの価格差で数量が大きく変わる))⇒死荷重が大きくなる。
課税の費用を小さくしたいなら、需要か供給のどちらかまたはその両方が相対的に非弾力的な財に税を課すべき。
逆に、未成年の飲酒のような害のある活動を減らす目的で税を使うときは、その活動の需要や供給が弾力的になっているときがいちばんインパクトがある。
    ヨットが消えた:
需要か供給のどちらかまたはその両方が十分に弾力的⇒税収がほとんどないのにかなりの損失を生み出すという事態。
1990年のヨット税〜アメリカ政府が10万ドル以上のヨットに課税⇒アメリカの10万ドル以上のヨットの売上が71%も減少し、ヨット産業の雇用も製造と販売の両方で25%も減少した⇒税収はわずか700万ドル

ヨットの需要は極めて弾力的
失われた雇用の大きさ⇒供給も比較的弾力的

苦痛のわりに得られる税収はわずかしかない⇒1993年に撤廃
  ◇要約 
V マクロ経済学入門 
★第6章 マクロ経済学:経済の全体像  
  2000年の春には経済が好況で、雇用主はより多くの人を雇い入れようと躍起になっていた。
2002年の春は経済は弱くなっていた⇒一時解雇。
この章で学ぶこと:
@経済学の概観と、マクロ経済学とミクロ経済学の違い
A景気循環
B長期成長
Cインフレーションとデフレーション、物価の安定
D開放経済のマクロ経済学
  ◆1 ミクロ経済学 対 マクロ経済学 
ミクロ経済学の問題対マクロ経済学の問題
@ビジネススクールに進学すべきか、それとも今すぐ就職すべきか vs. 
経済全体で、今年はどれだけの人が雇用されているか
Aコロンビア大学の新卒MBAシェリー・カマヨがシティバンクから提示される給料を決める要因は何か vs.
ある年に労働者に支払われる給与総額の水準を決める要因は何か
B大学が新たな科目を設置するための費用を決める要因は何か vs.
経済全体の物価水準を決める要因は何か
C低所得家庭の子どもが大学に進学しやすくなるように、政府がどんな政策を実施すべきか vs.
経済全体の雇用と成長を高めるために、政府はどんな政策を実施すべきか
Dシティバンクが上海に支店を開設すべきか否かを決める要因は何か vs.
アメリカと外国の間で行われr、財・サービスや金融資産の総取引水準を決める要因は何か
ミクロ経済学:個人や企業がどのように意思決定をするのかという問題に焦点を当てている。
マクロ経済学:経済のあらゆる個人・企業の行動が互いに影響しあった結果、経済全体に関わる特定の経済効果がどのように生じるかという観点から、経済の総体的動向を考察
  ◇1.1 マクロ経済学:全体は部分の合計よりも大きい 
何千、あるいは何百万という個人の行動は、それらの個人の行動を単に合計したものよりも大きな帰結を生み出す
「倹約のパラドックス」
不況で心配⇒家計や企業は支出を抑える⇒経済を停滞

不況に備えて用心深く貯蓄を増やすという一見美徳と思われる行動が、あらゆる人々に経済的な悪影響を及ぼす。
逆に、一見浪費的に見える行動が、すべての人々に好景気をもたらす。
  ◇1.2 マクロ経済政策 
ミクロ経済学者:市場がどのように機能するかを注意深く研究することで、通常政府は市場に介入すべきでないという結論に至っている。
マクロ経済学者:政府はより積極的な役割を果たす
@財政政策
A金融政策
  ◇1.3 長期成長 
マクロ経済学:長期成長を研究対象とする。
@長期成長率を高める要因は何か?
A政府の政策は長期成長率を高めることができるのか?
Bある社会がより高い成長率とより高い生活水準を達成するために必要な生産的資源の総量をどうしたら増やせるのか
ミクロ経済学:経済で生産できる産出量を一定として、その前提の下で解くべき問題に焦点
一定量の資源をできるだけ効率的に利用するにはどうすればよいか?
長期成長という課題は基本的に経済集計量の利用に依存〜集計量の研究
  ◇1.4 経済集計量 
経済集計量とは、財、サービス、労働、資産などの多様な市場のデータを要約した経済尺度のこと
    大恐慌:
マクロ経済学の中心的使命は、大恐慌のような事態が二度と起こらないように予防すること。
大恐慌は1929年8月に、総産出量がわずかに減少したことから始まった⇒1929年10月の株価大暴落⇒失業率の異常な上昇⇒産出量の急激な減少
失業率は、1929年当事者わずか3.2%⇒1933年までに24.9%に
アメリカ人労働者の4人に1人が職を失い、多くの人が、食べるために無料の給食施設やその他の事前施設に頼ることを強いられた。1939年でも、失業率は17%。
実質国内総生産(GDP)は、1929年から1933年にかけて27%も下落。
経済パフォーマンスを記録するために今日使われている統計の多くは、1930年代に収集されはじめた。
1936年に出版された、ケインズによる「雇用・利子および貨幣の一般理論」によって、経済理論は劇的な変貌を遂げた。
  ◆2 景気循環 
景気循環は、景気後退として知られる経済の下降期と、景気拡大として知られる経済の上昇期の短期間の繰り返し。
恐慌はとても深刻で長い経済の下降のこと。
景気後退(不況)は産出量と雇用が減少する経済の下降期。
景気拡大あるいは景気回復は産出量と雇用が増大する経済の上昇期。
全米経済研究所(NBER)によれば、アメリカは第2次世界停戦後に10度の刑期後退を経験。
この間の平均的な景気後退は10か月続き、平均的な景気拡大は57か月継続。
景気後退の開始から次の景気後退が始まるまでの期間である景気循環の平均的な長さは、5年と7か月。
最短の景気循環は18か月で、最少は10年8か月。
2002年の求職者が味わった景気後退は2001年に始まった。
1948年以降のアメリカの平均失業率は5.6%。
3つの課題
@景気後退と景気拡大が失業に及ぼす影響
Aそれが総産出量に及ぼす効果
B政府の政策が果たしうる役割
    景気後退と景気拡大を定義する:
正確な定義はない
多数の国で採用されているルール:
少なくとも2連続四半期(四半期とは3か月のこと)で産出量が低下することを景気後退とする。
←短いしゃっくりのような経済変動を景気後退に分類しないため。
but
この定義は厳しすぎる。
3か月にわたり産出量が急激に減少し、若干のプラス成長が3か月続いた後、再び3か月急速に減少するような場合は、景気後退が9か月間続いたと見なされるべき。
米国では、景気後退の始まりと終わりの時期を確定する仕事を、全米経済研究所(NBER)の中にある独立した専門委員会に委ねてる。
  ◇2.1 雇用と失業 
景気後退は、@高い失業率、A産出量の減少、B所得の減少、C生活水準の低下を招く。
雇用とは、経済で現在雇われている人たちの数。
失業とは、職を探しているが現在のところ雇われていない人たちの数、。
労働力人口とは、雇用と失業の合計。
労働力人口の公式統計には、@就職意欲のない労働者や、A不完全就業者(数)に関する情報も含まれていない。
就職意欲のない労働者とは、能力があるにもかかわらず職探しを断念して働いていない人たち。
不完全就業者(数)とは、景気後退期でも働いてはいるが、労働時間の短縮や低賃金の仕事のせいで、またはその両方の理由で、景気拡大期に比べると低い賃金しか受けとっていない労働者(の数)
失業率とは、労働人口に占める失業者数の割合。
失業率=(失業している動労者数/(失業している労働者数+雇用されている労働者数)×100
失業率が高い⇒仕事を見つけにくい貧弱な雇用状況
失業率が低い⇒簡単に仕事を見つけられる良好な雇用状況
景気後退期⇒失業率上昇
景気拡大期⇒失業率低下
好況期では失業率は4%かさらに低下
深刻な景気後退期には、失業率は2桁台にまで上昇
  ◇2.2 総産出量 
総産出量(総生産)とは、ある一定期間(通常1年)に経済で生み出される最終財・サービスの生産総額。
総産出量には、他の財の生産に投入される目的で生産された財・サービス(=中間財)は含まれない。ex.自動車生産のために製造される鋼鉄は総産出量に含まれないが、自動車は含まれる。
実質GDPは総産出量を表す実際の数値尺度。
総産出量は、景気後退には通常低下し、景気拡大期には通常上昇する。
1948年から2004年まで、アメリカの実質GDPは、平均すると毎年3.5%上昇。
1950年には8.7%。1982年にはンマイナス1.9%。
第二次大戦後総産出量が最も急激に低下(マイナス1.9%)した1982年には、失業率は第二次大戦後の最も高い水準(10.8%)に到達。
第二次大戦後の期間を通して見ると、アメリカの実質GDPは500%以上も成長。
総産出量の長期的な上昇傾向と景気循環とは関係がない。
  ◇2.3 景気循環を平準化する 
景気後退時の厳しい経済状況を改善するために、あるいは加熱する景気を引き締めるために行われる政策を景気の安定化政策と呼ぶ。
@金融政策とは、貨幣供給量や利子率の操作を通じて、またはその両方の手段を用いて行われる景気安定化政策。
A財政政策とは、課税や政府支出の操作を通じて、またはその両方の手段を用いて行われる景気安定化政策。
    景気循環は平準化されてきたのか
  ◆3 長期の経済成長 
アメリカの平均的労働者が得る賃金の購買力は、平均的家計の所得や、あるいは普通の人々が得られるものを測る他のどんな指標で見ても、少なくとも19世紀半ばから一貫してっ上昇してきた。
1948年から2004年にかけて総産出量の平均成長率は3.5%。
同時期に、アメリカの人口の成長率は1.3%。
⇒刑事宛来なパイの1人当たりの大きさは、総産出量の年成長率3.5%から人口の年成長率1.3%を引いた、年率2.2%で成長。

全てのアメリカ人の生活水準を35年ごとに2倍にするほどの数字。
総産出量の持続的な上昇トレンドは、超長期成長(数十年にわたる経済成長)、または単に長期成長として知られている。
長期成長⇒アメリカ経済の2004年の1人当たりの総産出量は、1900年に比べて約7倍。
1人当たりの実質GDPが7倍になったこの期間に、実質GDPは20倍に増加
←人口増加
マクロ経済学は、@長期成長を考察するときと、A景気循環を考察するときで、異なるモデルを使う。
両方のモデルを頭に入れておく必要
←長期的には良いことが短期的には悪いことになるかもしれないし、その逆もあり得る。
貯蓄を増やすという家計の試みは短期的には経済にとって望ましくない。
but長期経済成長の促進に決定的な役割を果たす。
    長期成長はいつ始まったのか?
長期成長は比較的最近の現象。
アメリカ経済は19世紀の半ばまでにはすでに持続的に成長していた(ex.鉄道)。
but
1800年より前の時期の世界経済の成長率は、驚くほど低いものだった。
〜生活水準の変化が見られなかった。
    1ポイントが生み出す違い
2.5%成長と3.5%成長。
長期成長率の違いは複利で広がっていく⇒3.5%で成長する経済は、25年後には、2.5%で成長する経済に比べて30%も大きくなっている。
1948年〜1973年まで、アメリカ経済は年平均3.9%(長期平均よりも0.5%速いスピード)の成長。
⇒人々に奇跡的繁栄を感じさせた。
1973年から1995年までは、2.7%まで低下。

経済的なパイは拡大を続けたが、その成長スピードは誰をも満足させるほどのものではなかった。
インフレーションに見合うかたちで賃金が上昇せず、ブルーカラーの労働者たちは購買力が低下したと感じた。
投資家たちは、企業の利潤をみてがっかり。
1995年以降⇒経済成長は加速。
◆      ◆4 インフレーションとデフレーション 
名目値とは、時間を通じた価格の変化を調整しない数値
実質値とは、時間を通じて価格の変化を調整した数値
名目賃金は、1948年から2004年までに20倍上昇
実質賃金は、1948年から2004年までに3倍上昇

労働者が購入する財・サービスの価格変化を賃金の変化がどれだけ上回っているかを捉えている。
2002年ドルで表示された平均的な労働者の2002年の実質賃金・・・平均的な労働者の2002年の賃金で購入できる2002年の財・サービスの数量は、
2002年ドルで表示された平均的な労働者の1948年の実質賃金・・・平均的な労働者の1948年の賃金で購入できる2002年の財・サービスの数量・・・よりも3倍高い。
経済学者は通常、賃金を実質値で表す。
←労働者の購買力が時間の経過とともにどう変化したのかを示す指標として、実質賃金の方が優れている。
物価水準とは、経済のあらゆる最終財や最終サービスの価格の全体的な水準のこと。
物価水準の上昇をインフレーションという。
物価水準の下落をデフレーションという。
物価水準の2つの尺度
@GDPデフレーター
A消費者物価指数(CPI)
インフレ⇒現金を持ちたがらなくなる(現金の価値が下がる)
デフレ⇒新しい工場やその他の生産的資産に投資するよりも、現金を保有する方が魅力的になる⇒景気後退をさらに悪化
物価水準が穏やかに変化していることを、物価の安定といい、経済学者は望ましい目標と考えている。
インフレ率とは、物価水準の年変化率。
  ファストフードによるインフレの測定:
マクドナルドは、オープンした1954年から400%上昇
物価指数のCPIは600%以上上昇
◇4.1 インフレーションとデフレーションの原因(p234)
  需要と供給により説明できるのは、ある財やサービスの価格が他の財・サービスとくらべてなぜ高くなるのかということにすぎない。
   
  ◆5.開放経済 
閉鎖経済とは、外国と財・サービスや資産を貿易しない経済
開放経済とは、外国と財・サービスや資産を貿易する経済
国際貿易は相互に利益をもたらす⇒経済は時とともに開放的になっていく。
各国が比較優位を持つ活動に特化すると、資源をより効率的に利用できるようになる。
開放マクロ経済学は、国境を超えて行われる財・サービスや資産の取引から影響を受けるマクロ経済学の研究。
2つの国の通貨の為替レートとは、一方の国の通貨の価値を他方の国の通貨で表示した数値(交換比率)。
為替レートの主要な効果:@物価水準への影響
物価水準を示す指標には、外国車のような輸入財の価格が含まれている⇒他の通貨に対するドルの為替レートの変動は、物価指標に影響を与える。
@1ユーロ=0.85ドル。A1ユーロ=1.3ドル
@の時の方が、ヨーロッパの財はアメリカ人にとって安く見える。
A貿易収支への影響
ある国の貿易収支は、外国に売った財・サービスの価値と外国から買った財・サービスの価値の差額。
為替レートが変動してアメリカ製の財が外国人にとってより安くなる(ドル安)⇒@アメリカの貿易黒字が大きくなるか、A貿易赤字が小さくなる。
為替レートの変動でアメリカ製の財が外国人により高くなる(ドル高)⇒@アメリカの貿易赤字が大きくなるか、A貿易黒字が小さくなる。
資本移動とは金融資産の国際移動のこと。
資本移動あり⇒
@その国の生産能力を高めるために多く支出できる⇒より高い生活水準の実現へ。
A国際的な投資家は、より高い収益をあげられる⇒投資家にとって高い生活水準の実現へ。
開放マクロ経済学における最も難しい問題は、各国通貨の存在それ自体に関するもの。
独自の通貨かユーロか?
    国境の北:
値段が米ドルで。
ルーニーが下落⇒
@アメリカから輸入される財・サービスの小売価格が上昇
but
Aアメリカの顧客にものを販売しているカナダの生産者は、費用面で、アメリカの競争相手より優位に立てる。
★第7章 GDPとCPI:マクロ経済を追跡する 
  ◆1.国民経済計算
ほぼすべての国で、国民所得・生産物計算と呼ばれる一連の統計数字が算定されている。
一般に、経済的に発展している国ほど経済計算の信頼度は高くなる。
国際機関が途上国への援助を考えるときに第1に取り組むべき仕事は、通常、その国の経済計算を監査・改善するための専門チームを派遣すること。
  ◇1.1 経済循環フロー図の再考と拡張 
消費支出:財・サービスに対する家計の支出
株式:株主が保有する企業の所有権の一部
債券:利払いを伴う借用証書のかたちをとる借入
政府移転支出:対価として財・サービスの提供をすることなく、財布から個人に与えられる支出
所得に政府移転支出を加えて税金を差し引いた可処分所得は、家計が消費や貯蓄に回せる所得の総額
可処分所得から消費支出を除いた民間貯蓄は、可処分所得のうち消費に回されない部分
民間貯蓄や外国貸付を投資支出、政府借入、外国借入へと誘導する銀行取引、株式市場、債券市場は金融市場と呼ばれる。
政府借入は、金融市場で政府が借り入れる資金
財・サービスの政府購入は財・サービスを買うための政府の支出
外国の居住者に販売される財・サービスは輸出
外国の居住者から購入する財・サービスは輸入
投資支出は、機械や建造物などの生産的な物的資本や、在庫変動に対する支出
  ◇1.2 国内総生産
国民総生産(GDP)ある年にある経済で生産された最終財・サービスの総額
最終財・サービス:最終需要者(エンド・ユーザー)に販売される財・サービス
中間財・サービス:ある企業が別の企業から購入する財・サービスで、最終財・サービスを生産する際の投入物となる。
国内総生産(GDP)は、通常1年という一定期間に、ある経済で生産されるすべての最終財・サービスの総額。
2004年のアメリカのGDPは11兆7340億ドルで、1人当たりにして約4万ドル。
GDPの計算方法:
@直接計算:企業を調査し、生産された最終財・サービスの総額を求める。
AGDPはある経済で生産された最終財・サービスの総額に等しい
⇒財・サービスの市場で企業が受け取った資金の流れにも等しい(財・サービスの市場から企業へ向かう矢印が「国内総生産」)。

あるボックスからの資金の流出はそのボックスへの資金の流入に等しいという会計原則

財・サービスの市場から企業への資金の流出=
企業以外部門から財・サービス市場への資金の流入

財・サービスの市場へ流入する資金の総額=
国内で生産された最終財・サービスへの総支出・・・(消費支出、投資支出、財・サービスの政府購入)の合計に(輸出ー輸入)を加えたもの


GDPを計算する第2の方法は、ある経済で生産された最終財・サービスへの総支出を求めること。
B企業から要素市場への資金の流入=賃金、利潤、利子、賃貸料として企業が家計に支払った要素所得

企業から家計への要素所得の流入額=
財・サービス市場から企業への資金の流入額=
経済の総生産(GDP)

経済のあらゆる売上げは、賃金、利潤、利子、または賃貸料として誰かの所得になる。

GDPを計算する第3の方法は、家計が企業から得た要素所得の総計を求めること。
  ◇1.3 GDPの計算 
  ※私たちの帰属生活 
ある人がその他人の家政婦や料理人と結婚するとGDPが低下?
これは正しい。
GDPの標準的な計算にはそうした帰属価値は含まれていない。
but
GDPの推定値には、「持ち家」の帰属価値は含まれている。
以前借りていた家を購入したとしても、GDPは低下しない。
統計の専門家は、アパートであれ家であれ、住んでいるところに家賃を支払うとしたらいくらになるかを推計する。

アメリカのように持ち家の多い国では、住居から得られる満足は生活水準の重要部分を占めている。⇒GDPの推計は、正確性を確保するために、貸家だけでなく持ち家の価値も考慮に入れられるべき。
  ●最終財・サービスの生産額としてGDPを測定する
ある生産者の付加価値とは、その売上額から投入物の購入額をひいたもの
各生産者の付加価値のみを合計
自動車会社の付加価値は、製造した自動車の価値から購入した鉄鋼の費用を引いた額=1万2500ドル。
製鉄会社の付加価値は、生産した鉄鋼の価値から購入した鉄鉱石の費用を引いた額=4800ドル。
鉄鉱石採掘会社は中間投入物を購入していない⇒4200ドル。
以上合計2万1500ドル=GDP。
  ●国内で生産された最終財・サービスへの支出としてGDPを計算する 
GDPを計算する第2の方法は、国内で生産された最終財・サービスへの総支出を計算すること。
GDPは企業への資金の流入を見て測定できる。
最終購入者に対する売上のみを計算。
支出における二重計算を避けるには、支出データを使ってGDPを推計する際に、ある企業から別の企業への投入物の販売を除外すればいい。
企業の投資支出は国民経済計算では最終支出の一部とされる。
自動車会社が自動車を作るのに必要な鉄鋼を購入⇒最終支出とはされない
工場に設置する機械を購入⇒最終支出とされる

鉄鋼は生産の際に消費されつくされるが、機械は同じように生産に利用されるが、数年間にわたり継続的に使える。
機械のように、長きにわたって耐久力のある資本財を購入することは、現時点の生産と密接に関連するわけではない⇒国民経済計算はそれを最終支出の一部とする。
図7−1のサービス市場:
企業の売上の構成要素
@消費支出(C)。
A他企業の投資支出による売上げ(I)
B財・サービスの政府購入(G)
C外国人に対する売上=輸出(X)
but
最終支出がすべて国内で生産された財・サービスへ向かうわけではない。輸入のための支出IMは、国境を越えて「漏れる」
GDP=C+I+G+X−IM
  ●企業から得られる要素所得としてGDPを計測する 
GDPを計算する最後の方法は、生産要素が企業から得たあらゆる所得、つまり労働者が稼いだ賃金、企業や政府に貯蓄を貸し出した人が得る利子、土地や建物を貸し出した人が得る賃貸料、企業の物的資本を所有する株主が得た利潤、のすべてを合計すること。
←企業が財・サービスを販売して得た貨幣は、必ずどこかに行かなければならない。
  ●GDPの構成 
投資支出
  ◇1.4 GDPかわわかること 
異なる国の経済パフォーマンスの比較。
2004年には、アメリカのGDPは11兆7340億ドル。日本のGDPは4兆6650億ドル。
EU25カ国のGDP総額は12兆7340億ドル。

日本は、国民経済の大きさでは世界第2位だが、アメリカに比べると世界経済全体に占める割合はかなり小さい。
EUは全体でアメリカにほぼ等しい。
異時点間の比較は注意が必要。

時間を通じたGDPの上昇のうち一部は、産出量の増大ではなく、財・サービス価格の上昇によって起こっている。
総産出量の実際の変化を測るには、価格の変化を織り込んだ修正版のGDPである実質GDPを使う必要がある。
    国民経済計算の誕生は、大恐慌がきっかけ。

経済が不況に陥った時、政府の役人たちは、対策がとれない原因は、適切な経済理論がないだけでなく、適切な情報を持っていないことにあることに気付いた。
  ◆2 実質GDPと総産出量 
    GDPの変化のうちどれだけが、価格の変化から切り離された総産出量の変化によって引き起こされたのかを計算する必要。
  ◇2.1 実質GDPを計算する 
    実質GDP:
1年間に生産された最終財・サービスの総額であり、ある基準年と価格が変わらないという想定の下に経産される。
     
  ◇2.2 技術的な詳細:「連鎖」ドル
     
  ◇2.3 実質GDPでは測れないもの
     
    実質GDPの増加を経済の生産可能性フロンティアの拡張だと見なす。
経済が生産能力を拡大させている⇒社会が達成できることも増えている。
but
その拡大した可能性を生活水準の改善に向けて実際に使うかどうかは別問題。
昨年より今年のほうが所得は増えているかもしれないが、その高くなった所得を生活の質を向上させるために用いるかどうかは各人の選択次第。
    国連:
1人当たり実質GDP以外の指標を使って各国を順位づける試みとして「人間開発報告書」という年次報告書を作成。

各国がどれだけ生産したかだけでなく、社会がどれほどうまくいっているかを見定める試み。
    1人当たり実質GDPは一国の各個人の平均総産出量を示す。
つまり何が可能かを示す尺度。
but
その尺度では、その国がその産出物を生活水準を良くするために使っているかどうかを示せない。
     
     
     
★第8章 失業とインフレーション  
◆    ◆1 失業率 
     
  ◆2 自然失業率
     
◆    ◆3 インフレーションとデフレーション 
     
     
W 長期の経済 
★第9章 長期の経済成長 
    一部の国は、長期の経済成長の達成に大成功⇒1人当たりの財・サービスの生産量が100年前に比べて多くなった⇒平均的な生活水準は(当時より)はるかに高くなっている。
マクロ経済学の最も重要な問題:
長期の経済成長の問題・・・なぜ成長が起きて、どのようにそれが実現されるかという問題。
  ◆1 時空を超えて経済を比べる 
  ◇1.1 1人当たり実質GDP 
    経済成長を記録する鍵となる統計:
実質GDPを人口で割った1人当たり実質GDP。
    GDP:
ある1年間に
その経済が稼いだ所得を測るものであり、
その経済が生産する最終財・サービスの総価値額を測るもの。

実質GDPを使う
←物価水準の影響を取り除いたうえで財・サービスの数量の変化を見るため。

1人当たりのGDPを使う
←人口の変化の影響を取り除く。
    アメリカ経済:
2000年には、1900年に比較し、1人当たりGDPはおよそ7倍。
2000年のインドや中国は、1900年のアメリカよの生活水準を達成できていない。
2003年時点で、世界人口の50%を超える人々が、1900年時点のアメリカより貧しい生活。
  ◇1.2 成長率 
    70の法則:
変数が2倍になる年数=70/変数の年間成長率

1人当たりの実質GDPが年率1%⇒2倍になるのに70年
年率2%⇒2倍になるのに35年
    アルゼンチン:大きな後れ
旧ソビエト連邦:1991年のソ連崩壊後深刻な経済的衰退
     
  ※アイルランド人の幸運 
1975〜2003年の1人当たりの実質GDPの年平均成長率
アイルランド:5.2%

インフラストラクチャーと人的資本がよく整っていたことが大きな原因
@非常に良い教育システム
A非常に良い空港
B完璧な電気通信・輸送設備
⇒アメリカや日本の企業が多くの投資を行った。
  ◆2 長期の成長の原因 
    長期の成長・・・生産性の上昇
  ◇2.1 生産性の決定的な重要性 
    持続的な経済成長が生じるのは、平均的な労働者の産出量が着実に増大するときだけ。
労働生産性、または単に生産性:
労働者1人当たりの産出量を指す。
    一般に、実質GDP全体は人口成長によって成長し得る
but
1人当たり実質GDPの大きな上昇をもたらすのは労働者1人当たりの産出量の増加=生産性の上昇。
     
  ◇2.2 生産性の成長を説明する 
    アメリカの平均的労働者が、1世紀前の平均的労働者よりはるかに多くの生産をしている理由:
@機械やオフィス空間といった物的資本が多くある
A良い教育を受け、はるかに多くの人的資本を身につけている
B技術改善の蓄積が、大きな技術進歩となって現代の企業に優位性をもたらしている
  ●物的資本 
  ●人的資本
  ●技術 
過去の経済成長の原動力となったのは、鉄道や半導体チップのような大きな発明ばかりでなく、
何千という地味な技術革新だった。
ex.
1870年に特許が取得された、平底の神バッグ
1981年に登場したポストイット
   
  ※ウォルマートの効果 
@技術をどう適用するかがすべての違いを生み出す:
小売業者はみなコンピュータのことは知っていたが、ウォルマートはそれを使って何をするべきかを理解していた。
A経済成長の大部分は新しい技術よりもむしろ日常的な改善に起因する
     
  ◇2.3 成長会計:集計的生産関数 
    他の条件が一定なら、労働者が物的資本、人的資本、より良い技術、あるいはそれらの組合せをより多く備えるほど、生産性は高くなる。
    集計的生産関数:
生産性が、労働者1人当たりの物的資本や人的資本の量、また技術水準にどう依拠しているかを表わす関数。
Y/L=f(K/L、H/L、T)
f:カッコ内の変数の関数
Y:生産される実質GDP
L:雇用者数
Y/L:労働者1人当たりの実質GDP
K/L:労働者1人当たりの物的資本
H/L:労働者1人当たりの人的資本
T:生産技術の水準
     
     
     
★第10章 貯蓄、投資支出、金融システム 
  ◆1 貯蓄を投資支出に回す
  ◇1.1 貯蓄・投資支出恒等式
     
     
  ◇1.3 貯蓄、投資支出、政府の政策 
     
     
    1990年代の財政と投資支出: 
     
★第10章付録 現在価値をより深く理解するために
  ◆1 単年度事業の現在価値をどのように計算するか? 
◆    ◆2 複数年度事業の現在価値をどのように評価するか? 
◆    ◆3 事業がもたらす収入とそれにかかる費用の現在価値はどのように計算するか? 
     
 X 短期の経済変動
★第11章 所得と支出  
◆    ◆1 乗数:インフォーマルな導入 
  ◆2 消費支出 
  ◆3 投資支出 
  ◆4 所得・支出モデル 
     
 ★第11章付録 乗数を代数的に導く
     
 
 ★第12章 総供給と総需要
@1929年から1933年までの大恐慌においては、アメリカ経済は物価水準が下落する激しいデフレに直面。
A1979年から1982年までの不況では物価水準が上昇する激しいインフレが生じ、インフレ率は13%にまで到達⇒所得の購買力の低下⇒職を失うのと同様のショック。

不況の原因が異っていて、適切な政策はその原因次第で変わる。
@信用危機⇒大恐慌⇒企業や消費者の支出を低下させ、銀行危機によってさらに問題が悪化⇒不況とデフレの組合せ。
対策は、経済に現金を注入して不況と闘い、物価を安定させること、。
A中東での出来事に端を発して世界中の原油生産が急速に縮小⇒原油や他の燃料価格が急上昇⇒不況とインフレの組合せ。
経済政策上のジレンマ:
経済に現金を注入して不況と闘うか、それとも現金を引き揚げてインフレと闘うかというジレンマ。
大恐慌:需要ショック(物価水準下落)
1970年代:供給ショック(原油価格高騰⇒ガソリン緒小売価格制限⇒ガソリン不足) 
@総供給
A総需要
BAS-ADモデル
  ◆1 総供給 
1929年〜1933年にかけて、需要曲線が左にシフト(=どの価格水準でも需要は減少)

@ほとんどの財・サービスの価格が下落(GDPデフレーターは26%低下)
Aほとんどの財・サービスの生産量が減少(GDPは27%低下)
B失業率が3%から25%に急上昇
総供給曲線物価水準と総供給量(総産出量)の関係を表現したもの
1929年から1933年にかけてアメリカ経済は短期総供給曲線に沿って左下に移動。
  ◇1.1 短期総供給曲線
物価水準上昇⇒総供給量増加
物価水準下落⇒総供給量減少
生産物1単位当たりの利潤=生産物1単位当たりの価格ー生産物1単位当たりの生産費用
名目賃金(=ドル表示の賃金)は「固定的」となる。

失業者が多くても下がりにくく、労働者が不足しても上がりにくい。
名目賃金やその他の生産費用は固定的だと見なせる期間の物価水準総供給量との正の関係を表現しているのが、短期総供給曲線
短期には物価水準と総供給量に正の関係⇒短期総供給曲線は右上がりになる。
     
  ◆2 総需要 
総需要曲線は、物価水準と家計・企業・政府・外国の総需要量との関係を表現したもの
物価水準と総需要量の負の関係を表す。
物価水準が上昇⇒総需要量は減少
物価水準が下落⇒総需要量は増加
  ◇2.1 どうして総需要曲線は右下がりなのか
GDP=C+I+G+X−IM
C:消費支出
I:投資支出
G:財・サービスの政府購入
X:輸出
IM:輸入
×A:総需要曲線が右下がりになるのは、第3章で定義した需要法則による自然な結果ではないか?
個々の財の需要曲線は右下がり⇒総生産物の需要曲線も右下がり
vs.
個別の財の需要曲線は、それ以外の財・サービスの価格を一定としたときの、その財の価格と総需要の関係を表わしたもの。
その財の価格が上昇したときに需要量が減少する主な理由は、消費者がその財から別の財・サービスに消費を切り替えるため。
but
@総需要曲線の形状を議論する場合には、すべての最終財・サービスの価格が同時に変化することを考えなくてはならない。
A財・サービスへの支出構成が変化したとしても、それは総需要曲線には関係がない。
●   ●どうして、物価水準が上昇すると国内で生産された最終財・サービスの総需要量が減少するのか? 
◎@資産効果:
他の条件を一定とすれば、物価水準が上昇⇒たいていの資産の購買力が低下する。
5000ドルの銀行預金を持っている人は、物価水準が25%上昇すると、以前は4000ドルで買えていたものしかかうことができなくなる⇒銀行預金の保有者は自分の消費計画を縮小し、最終財・サービスへの支出が減少。
物価水準が上昇⇒消費支出Cが低下し、総需要曲線が右下がりになる。
◎A利子率効果:
物価水準上昇⇒保有している貨幣の購買力低下⇒物価水準の上昇以前と同じ財・サービスの組合せを購入するには、より多くの貨幣を持っておく必要がある⇒借入を増やすか債券のような資産を売却することで、貨幣の保有量を増やそうとする⇒他の借り手に貸し出すために利用できる資金が減少するので、利子率が上昇⇒
@借入の費用が大きくなり、投資支出は低下
A家計は可処分所得の中からより多くを貯蓄に回そうとするため、消費支出も低下

物価水準の上昇は保有している貨幣の購買職を低下させ、投資支出Iと消費支出Cを低下させる。

物価変動の利子率効果。
  ◇2.2 総需要曲線のシフト 
  総需要曲線の右へのシフト〜(どの物価水準でも)総需要が増加
総需要曲線の左へのシフト〜(どの物価水準でも)総需要が減少
●総需要曲線をシフトさせる要因
◎@予想の変化 
消費支出と投資支出は、ともに、人々の将来に対する予想にも依存。
より楽観的⇒支出は増加
より悲観的⇒支出は減少
実際に短期の経済予測を行う人々は、消費者心理や企業心理の調査に注目。
コンファレンス・ボード(全米産業審議会)が毎月提供している消費者態度指数と
ミシガン大学提供している消費者心理指数
◎A富の変化 
消費者の支出は資産価値にも依存。
資産の実質的な価値が上昇⇒資産の購買力増加⇒総需要の増加。
ex.
大恐慌の要因の1つは、1929年の株式市場の暴落。
2000年以降アメリカの株式市場が急速に停滞したことが、2001年の不況の大きな原因。
◎B物的資本のストックの変化
企業は物的資本のストックを増加させるために投資を行っている。
他の条件が一定だと、より多く所持⇒新たに追加する必要を感じなくなる。
2000年〜2001年に投資支出が低下
←それ以前の数年間に多額の投資支出を行った結果、コンピュータや光ファイバーのような特定の物的資本が必要以上に多くなってしまった。
     
  ◇2.3 政府の政策と総需要 
    政府が総需要に大きな影響力を持っている
⇒その影響力をうまく使えば経済のパフォーマンスを改善できる場合がある。
  ●財政政策 
財政政策:
経済を安定させるために、最終財・サービスの政府購入や政府移転支出などの政府支出か、課税の操作を通じて行われる。
不況への対応⇒政府支出の拡大や減税
インフレへの対応⇒政府支出の抑制や増税
最終財・サービスの政府購入Gが総需要に与える効果は直接的。
第2次世界大戦⇒連邦支出は400%も急増⇒大恐慌の終焉
1990年代に経済が停滞した日本では、総需要を増加させるため、政府が融資して道路・:橋・ダムなどを建設する大きな国家プロジェクトが行われた。
政府移転支出(社会保障や失業保険の給付等)は可処分所得への影響を通じて経済に作用するという意味で、間接的な効果。
税率が低い⇒消費者は所得の多くを手元に残せる⇒可処分所得増大⇒消費支出増大⇒総需要曲線は右にシフト。
税率が高い、総需要曲線は左にシフト。
  ●金融政策 
金融政策:
貨幣供給量や利子率を操作して経済を安定化させること。
中央銀行が貨幣供給量を増やす⇒人々は多くの貨幣を所有し、より多く貸し出そうとする⇒どの物価水準でも利子率は低下し、投資支出と消費支出が増加⇒総需要曲線は右にシフト。
貨幣量が減少⇒人々が保有する貨幣量が少なくなって、借入が増え、貸出が減少⇒利子率が上昇⇒投資支出と消費支出が減少⇒総需要曲線は左にシフト。
     
  ◆3 乗数 
    ×500憶ドルの投資支出の増加⇒総需要曲線は500億ドル分だけ右にシフト
vs.
産出量の増加は、家庭が手にする利潤や賃金などの可処分所得を増加させる⇒消費支出が増加⇒さらに企業が産出量を増やす⇒可処分所得が増加してもう1度消費支出が増加。

総産出量の増加は複数のラウンドにわたって起こる。
  このような支出の増加をすべてのラウンドで集計したとき、それは総産出量に全体としてどれだけの影響を与えるか? 
限界消費性向(MPC):可処分所得が1ドル増加したときの消費支出の増加分
MPC=消費支出の変化分/可処分所得の変化分

追加的な可処分所得のうち、消費しない部分は貯蓄される。
限界貯蓄性向(MPS)は、追加的な1ドルの可処分所得のうち貯蓄される部分のことで、1−MPC
税のことを無視⇒実質GDPが1ドル増加すれば可処分所得も1ドル増加すると仮定。
実質GDPに対する全効果
投資支出の増加分=500億ドル
+第2ラウンドでの消費支出の増加分=MPC×500億ドル
+第3ラウンドでの消費支出の増加分=MPC^2×500億ドル

=(1+MPC+MPC^2+MPC^3+・・・)×500億ドル
xが0と1の間の数のとき
1+x^2+x^3+・・・・=1/(1−x)

Iが500憶ドル増加したことによる実質GDPの増加分の合計
=500億ドル×1/(1−MPC)

MPC=0.6とすれば、
500億ドル×1/1−0.6=1250億ドル。
  総需要曲線をシフトさせるその他の要因についての分析 
国際貿易のない単純な経済
国内の総支出:
消費支出C、投資支出I、財・サービスの政府購入Gの合計
総支出のこれらの3つの構成要素のどれに自律的な変化が生じても、総需要曲線のシフトが起こる。
重要なのは、実質GDP=が変化する前の最初の総支出の変化(自律的変化)と、連鎖反応が展開していく過程でうまれる実質GDPの変化による総支出の追加的な変化を区別すること。

何らかの理由で富が増加⇒これにより実質GDPが増加。
but
その前に、消費支出の増加が起こる。
そして、実質GDPが増加するにつれて、第2ラウンド以降のさらなる消費支出の増加が起こる。
総支出の最初の増加や減少:総支出の自律的変化
〜連鎖的反応の結果ではなく原因
乗数:総支出の自立的変化の大きさに対する実質GDPの変化分の比率
総支出の自立的変化の大きさ:凾`AS
実質GDPの変化分:凾x
乗数:凾x/凾`AS
乗数=1/1−MPC=凾x/凾`AS
凾x=1/(1−MPC)×凾`AS
     
第6章 安定化政策 
★第13章 財政政策 
  ◆1 財政政策:基本的な議論 
   
   
   
  ◇1.4 注意点:財政政策のラグ 
     
  日本の拡張的財政政策 
    バブル経済←資産や不動産の価値の上昇を合理的な計算では説明できない。
1980年代の終わりにバブル崩壊
⇒資産や不動産の価値は急落し、消費支出や投資支出が落ち込むにつれて経済は不況へ
    1990年代に始めに拡張的財政政策:
総需要を支えるために巨額の財・サービスの政府購入(主にインフラ建設のための支出)
1996年、インフラ整備に3000億ドルも費やした
     
     
     
     
     
  ◆4 財政政策の長期的意味合い 
  ◇4.1 赤字、黒字、そして債務 
     
  ◇4.2 政府債務の増加によって生じる問題 
    政府が財政赤字を出し続けていることを懸念すべき理由 
@政府が金融市場で資金を借入れ⇒投資支出のために資金を借入れようとしている企業と競合⇒政府が民間の投資支出を「クラウド・アウト」して(押しのけて)、長期の経済成長率が下がってしまう。
A現在の赤字が政府債務を増加させ、将来の予算に財政上の圧力を加えてしまう。
   
     
★第13章付録 税と乗数 
     
★第14章 貨幣、銀行、連邦準備制度 
  ◆1 貨幣の意味 
  ◇1.1 貨幣とは何か? 
    貨幣供給量の定義:
財・サービスの購入にすぐさま使えるかそうでないかに応じて区別されている。
    貨幣自体は直接には何も生み出さないが、取引利益の発生を促して経済厚生を高めてくれる。
     
  ◇1.2 貨幣の役割 
    3つの役割:
@交換媒体
A価値の貯蔵手段
B計算単位
     
  ◇1.3 貨幣の種類 
    商品貨幣
    商品担保貨幣
    法定不換貨幣(フィアット・マネー):交換媒体として公式に認められているという理由だけで価値が発生している貨幣
     
  ◇1.4 貨幣供給量を測る 
    連邦準備制度は3種類の貨幣集計量を測定。
    M1:現金、トラベラーズチェック、当座預金(2005年で1兆3684億ドル)
    M2:M1に準貨幣と呼ばれる何種類かの資産(普通預金、定期預金、MMF)が付け加わったもの。 (2005年で6兆5097億ドル)
     
  ドルの歴史 
     
  ◆2 銀行の貨幣的役割 
    銀行預金は、貨幣供給量の大部分を占めている。
  ◇2.1 銀行がやっていること 
    銀行:銀行預金という流動的な資産(流動資産)を貸出という非流動的な投資に回す金融仲介機関。
   
  ◇2.2 銀行取り付けの問題 
     
  ◇2.3 銀行規制 
  ●預金保険制度 
     
  ●自己資本規制 
    @預金者は損失を被らないように保護されている⇒銀行の財務状況が健全かどうかをしっかりと監視するインセンティブがない
A銀行の所有者は、高利子率での貸出のような、リスクが高すぎる投資行動をとるインセンティブを持つ。
(←投資がうまくいけば銀行所有者は儲かるし、うまくいかないと、政府がその損失を穴埋めしてくれる)

規制当局は、銀行の自己資本を義務付け。
     
  ●支払準備制度 
    支払準備率の下限を維持するように義務づけること。
(米国では、当座預金の最低支払準備率は10%)
     
  素晴らしきかな、銀行制度 
     
   
  ◆3 貨幣供給量の決定 
    銀行が存在しない⇒「貨幣供給量=流通現金量」となる。
    銀行は2つの方法で貨幣供給量に影響を与える。
@市中に出回っている流通現金を吸収(銀行の金庫にしまってある現金は貨幣供給量に含まれない)
A銀行は預金を受け入れることで貨幣を作り出し、市中に出回っている流通現金より多くの貨幣供給量を実現できる。
  ◇3.1 銀行はどうやって貨幣を創出するか
    @サイラス⇒銀行へ1000ドル預金:現金⇒預金で、貨幣供給量に影響なし
A銀行⇒メアリーへ900ドル(9割)貸出:流通現金が900ドル増える
Bメアリー:900ドルでテレビとDVDを購入
C店は900ドルを銀行に預ける
D銀行はそのうち810ドル(9割)を貸し出す:貨幣供給量はさらに増える
    この貨幣創出プロセス
第10章の、実質GDPの当初の増加⇒消費支出増加⇒実質GDPを増加⇒消費支出増加
の乗数プロセス。
ここで説明してきたのは、もう1つの乗数プロセスの貨幣乗数。
     
  ◇3.2 準備金、銀行預金、貨幣乗数 
     
     
     
     
★第15章 金融政策 
  ◆1 貨幣需要 
  ◇1.1 貨幣保有の機会費用 
貨幣保有は低い収益しかもたらさない。
保有すべき最適な貨幣量を決めるには、@財布の中にお金を入れたときの追加的な利便性と、Aそれを他の金融資産として保有したときに得られた高い収益の間のトレードオフを考慮。
短期利子率:6か月以内に満期になる金融資産の利子率。
投資家は平均以下の利子率しか得られないような短期金融資産からは富を引き揚げる⇒短期金融資産の利子率はだいたい同じになる。
貨幣の利子率は上昇しない⇒短期利子率が高くなるにつれて貨幣保有の機会費用は高くなる⇒貨幣の需要量は減少
長期利子率:満期まで数年の期間がある金融資産の利子率
  ◇1.2 貨幣需要曲線 
貨幣需要曲線:貨幣需要量と利子率の関係を示すもの。
高い利子率⇒貨幣保有の機会費用を高め、人々の貨幣需要量を減少させる⇒曲線は右下がりに。
どれだけの貨幣を保有するかを判断する際にたいていの人が問題とするのは、短期米国債のように簡単に貨幣に替えられるほかの資産に資金を回すかどうか。
そして、貨幣に「近い」資産の収益率は、短期利子率と密接に連動している。
  ◇1.3 物価と貨幣需要 
実質貨幣量は、名目貨幣量(M)/物価水準(P)
他の条件を一定とすれば、名目貨幣需要量は物価水準に比例する。
実質貨幣需要曲線は実質貨幣需要量と利子率の関係を示す。
  ◇1.4 実質貨幣需要曲線のシフト 
実質貨幣需要曲線や名目貨幣需要曲線は多くの要因によってシフト。
●実質総支出の変化
家計と企業は財・サービスの購入を容易にする手段として貨幣を保有
買いたいと思う財・サービスの数量が大きくなるにつれて、どの利子率の水準でも保有したいと思う実質貨幣量は多くなる
⇒実質総支出の増加は実質貨幣需要曲線を右にシフトさせる。
実質貨幣需要量は、他の条件を一定とすれば、実質総支出に比例する。
●技術の変化
情報技術が進歩すると多額の貨幣を保有しなくとも買い物とすることが容易になる⇒実質貨幣需要が減少する傾向。
ex.ATM、インターネットを通じてのクレジットカード取引
●制度の変化
当座預金口座に利子をつけることが合法化⇒実質貨幣需要の増加
  ◇1.5 貨幣需要に対する流通速度アプローチ 
貨幣の流通速度:名目GDPを名目貨幣量で割ったもの
・・・・
  ◆2 貨幣と利子率 
FF金利:支払準備制度を遵守するために銀行が互いに準備金を融通しあうときの金利。
企業向けの銀行貸出金利のような他の短期利子率は、FF金利に連動して変化する。
  ◇2.1 均衡利子率 
利子率の流動性選好モデル:利子率は貨幣の供給と需要によって決まる
利子率の供給曲線:名目貨幣供給量が利子率に応じてどう変化するかを示すもの
利子率が低い⇒人々は実際の貨幣供給量よりも多い貨幣量を保有したいと思う(=富の一部を短期米国債などの利子のつく非貨幣金融資産から貨幣へとシフト)

@貨幣需要量>貨幣供給量
A利子の付く非貨幣金融資産の需要量は、供給量より少ない

利子のつく資産を売ろうとする人々は、買い手を惹きつけるためにより高い利子率を提示しなければならない⇒利子率引き上げ
  ◇2.2 利子率の2つのモデル? 
利子率の貸付資金モデル:利子率は貸付資金市場で、貸し手による資金供給と借り手による資金需要が一致するよう決まる。
ここでのモデル:利子率は貨幣市場で貨幣の供給と需要が一致するように決まる。

どちらも正しい。
  ◇2.3 金融政策と利子率 
人々が実際の貨幣供給量であるM2を保有しても良いと思う唯一の利子率がr2

貨幣供給量が増加⇒利子率は下がる
貨幣供給量が減少⇒利子率は上がる
現実には、FOMCは各会の会合で次の会合までの6週間の利子率を決めている。
FRBは、望ましいFF金利である目標FF金利を設定。
ニューヨーク連銀の公開市場デスクは、実際のFF金利が目標FFj金利に等しくなるまで、短期米国債の売買を通じて貨幣供給量を調整。
    長期利子率
満期まで数年の期間がある債券や貸付の利子率である長期利子率は必ずしも短期利子率とは連動していない。
長期利子率>短期利子率
〜短期利子率が将来上がると予想しているという合図を市場が送っている。
    FRBは行動する
@FF金利、Aプライム・レート、B30年物の住宅ローン金利
  ◆3 金融政策と総需要 
  ◇3.1 拡張的金融政策と緊縮的金融政策 
     
★第15章付録 利子率の2つのモデルを整合させる  
  ◆1 短期利子率 
  ◆2 長期利子率 
     
Y サプライサイドと中期 ??
★第15章 労働市場、失業、インフレ??
  ◆1 失業の性質  
経済が潜在生産量を生み出していて完全雇用にあると仮定したときの財政収支である景気循環調整済み財政収支を計算する際に、完全雇用時の失業率は5.2%だと想定。
  ◇1.1 雇用の創出と破壊 
@新技術の出現や消費者のし好の変化に伴う産業の浮き沈み
A個別の企業が経営の質の問題や単なる運の良し悪しで成功したり失敗したり
B個々の労働者の個別事情

経済が完全雇用にあるときにも相当量の失業が存在
  ◇1.2 摩擦的失業 
就職先を探すことに時間を費やしている労働者は職探し(ジョブサーチ)をしている。
摩擦的失業は、労働者が職探しに時間をかけるために生じる失業
一定の摩擦的失業は避けられない

@雇用創出と雇用破壊という恒常的なプロセス
A新しい労働者が常に労働市場に参入してくるという時jちう
摩擦的失業は、限られた量なら比較的無害で、良いものであるある。

時間を割いて自分の技能に適した仕事を見つけるなら、経済はより生産的になる。
失業率が高い時期は労働者の失業期間が長くなる傾向があり、それは摩擦的失業の割合が小さくなることを示唆
  ◇1.3 構造的失業 
構造的失業:原告賃金率の下で、提供される職の数よりも多くの求職者が労働市場にいる結果生じる失業
最低賃金:
最低賃金>均衡賃金
⇒労働市場に持続的な供給過剰(=構造的失業)が生じている。
高い最低賃金は雇用削減効果を持つ。
労働組合:
労働組合の活動⇒労働者が受け取る賃金を均衡賃金より高い水準まで押し上げる
⇒その賃金水準で働こうとする人の数>就ける職の数
⇒構造的失業を引き起こす。
効率賃金:
労働者から良いパフォーマンスを引き出すためのインセンティブとして、雇い主が均衡賃金率より高く設定する賃金。
多くの企業が市場均衡賃金よりも高い賃金を支払う⇒構造的失業
公共政策の副作用:
寛大な失業給付金⇒新しい職を探そうとする労働者のインセンティブを削ぐ
  ◇1.4 自然失業率 
自然失業率:
正常な失業率のことで、実際の失業率はその周りを変動する
循環的失業率:
実際の失業率と自然失業率とのギャップのこと
     
  ◆2.失業と景気循環
   
     
  ◆3.なぜ労働市場はすつに均衡しないのか
  ◆4.失業とインフレーション:フィリップ曲線 
1978年にハンフリー=ホーキンス法案で4%の失業率という目標設定:
4%<自然失業率の推定値
⇒加速的なインフレ懸念
  ◇4.1 短期フィリップス曲線 
短期フィリップス曲線:
失業率とインフレ率の間にある短期的な負の関係
失業率が低い⇒インフレ率は高い
失業率が高い⇒インフレ率は低い
インフレ率:物価水準の変化率
短期総供給曲線(SRAS)が示しているのは、
総需要曲線の右へのシフトで物価水準上昇⇒実質GDPも増加

@物価水準と実質GDPの間には正の関係がある。

A実質GDPと失業率の間には負の関係がある。

オークンの法則:
「実質GDP(総産出量)>潜在産出量」の方が、「実質GDP<潜在産出量」の時より失業率が低い
物価水準が高い⇒実質GDPが大きくなる⇒失業率は低くなる
前述の短期総供給曲線の議論:失業率の変化とインフレの関係を表わしている
短期フィリップ曲線:失業率の水準とインフレの関係を表わしている
短期フィリップ曲線の関係自体は非常に直感的:
低い失業率⇒労働その他の資源が不足していて価格上昇が起きている経済に対応。
失業率が高い⇒生産能力に比べて経済は大きく落ち込んでいる
労働や他の資源の供給が過剰⇒価格は低下
  ※総供給曲線と短期フィリップ曲線
 
  ◇4.2 インフレ予想と短期フィリップ曲線 
予想インフレ率(期待インフレ率):雇い主と労働者が予想する近い将来のインフレ率
予想インフレ率が失業とインフレの短期的なトレードオフ関係に影響を与える。
賃金が固定的。
合意される賃金率は、多くの理由から、高いインフレ(賃金の上昇を含む)が予想される場合のほうが、価格が安定的だと予想される場合より高くなる。

@労働者は所得の購買力が将来低下することを織り込んだ賃金率を望むだろうし、また自分の賃金率が他の労働者たちよりも低くならないことを望む
A雇い主も、後になってから労働者を雇うのはより高くつきそうだというときには、今のうちに賃金の引上げに同意しようという傾向が強くなる。
B価格上昇⇒雇い主の売上げは増える⇒雇い主が賃金を引き上げる余裕は大きくなる。
インフレ予測⇒賃金はインフレ予測を織り込む⇒短期フィリップ曲線を上にシフトさせる。
どの失業率の下でも、予想インフレ率が高いときには実際のインフレ率も高くなる。
人々は経験に基づいてインフレ予想を形成する。
  ◇4.3 長期フィリップ曲線 
失業率は6%
過去のインフレ率が0%と仮定
⇒予想インフレ率は0%
政策立案者がハンフリー=ホーキンス法案のため失業率を4%に低下させるため、金融政策、財戦政策あるいはその両方を駆使⇒実際のインフレ率は2%に⇒2%のインフレ率を予想
⇒SRPC2へシフト
それを前提に失業率を4%に維持⇒実際のインフレ率は4%に

4%のインフレも良そうに織り込まれ、短期フィリップ曲線は上にシフト
時間の経過とともにインフレが加速するのを避けるには、実際のインフレ率と予想インフレ率が一致するのに十分なほど失業率が高くなる必要。
時間が経過してもインフレ率が変化しない失業率=インフレ非加速的失業率(NAIRU)
NAIRU未満の失業率では常にインフレが加速。
  ◇4.4 自然失業率再考 
自然失業率:実際の失業率がその周りを変動する正常な失業率。
インフレの加速を避けるために経済が「必要とする」失業率の水準は、@摩擦的失業率とA構造的失業率の合計に等しい。
ヨーロッパのインフレは、失業率が9%から下がり始めて8%に近づいたときに加速を始めた
⇒自然失業率は9%以上
    恐怖の70年代から素敵な90年代へ
A:1970年代〜1980年代初めの米国:
@平均を上回る失業率とA近代アメリカ市場空前のインフレ率
〜インフレと景気停滞の共存という「スタグフレーション」
1970年代、米国経済は連続する負の供給ショック(中東での戦争と革命で石油供給が減少したり、意図的に生産抑制⇒石油価格が急騰)
労働生産性成長の鈍化

経済の実績を思わしくないものにした。
1960年代に好況の結果としてインフレ加速⇒1970年代には人々が高いインフレを予想⇒短期フィリップ曲線に
B:1990年代後半の米国:
@低い失業率とA低いインフレ率の組合せ
石油その他の原材料の価格が全般的に下がり、生産性成長が加速
★第16章 インフレ、ディスインフレ、デフレ
   
米国1970年代の終わり:年13%の上昇
ブラジルでは多くの都市で3桁〜4桁のインフレ率
ドイツ:1922年〜1923年:物価は1日に16%上昇

紙幣の価値は1時間単位で失われていった。
  ◆1 貨幣のインフレーション 
人々:インフレによって賃金の上昇が割り引かれると考える
経済学者:インフレは名目賃金の増加をもたらすので、家計の購買力を自動的に縮小させるものではない。
急激なインフレは常に急激な貨幣供給量の増加が関係。
  ◇1.1 貨幣と価格:再考 
貨幣供給量の増加⇒利子率を低下させ、投資支出と消費支出を刺激⇒短期的には実質GDPを増加させる。
but
より長期的には、名目賃金や他の固定的な価格も上昇⇒実質GDPは元の水準に戻る。

長期的には、貨幣供給量がどのような率で増加しても実質GDPは変化しない。
2005年1月、トルコは通貨であるトルコリラから6個のぜルを取り去ったが、トルコの実質GDPは変化しなかった。
変わったのは、価格に含まれるゼロの数。
物価水準の古典派モデルによれば、実質貨幣量はいつも長期均衡の水準にある。
総需要曲線:AD
短期総供給曲線:SRAS
マクロ経済均衡:E
    インフレ補正
賃金契約にはCOLAという生産費調整が含まれることが多い
〜消費者物価指数が上昇すれば自動的に労働者への賃金の支払が増えるというもの。
but
今では、アメリカの賃金契約でCOLAを含む者は少ない。
物価スライド制には、貨幣供給量の変化に対する物価水準の反応を速める効果がある。
貨幣供給量の増加が物価水準を同じ率だけ上昇させるという「長期」がとても速く訪れることになる。
  ◇1.2 インフレ税 
政府が増税や借入ではなく、単に紙幣を印刷することで出費の一部を賄うことを妨げるものはあるか?何もない。
米国では、財務省とFRB(貨幣発行)が協力して行っている。
FRBは貨幣を創出し、公開市場で短期国債を国民から買い戻すことでその債務を貨幣に転換。

紙幣を印刷することで収入を増やすことができ、実際にそれを実行。
政府が巨額の財政赤字を抱えているが、増税や支出削減によって赤字を消し去る能力も政治力も持ち合わせていない。
政府はその赤字を賄うために借金を重ねることもできない(←潜在的な貸し手は、政府の弱体化が続いて債務の返済が滞ることを恐れて、貸付を増やそうとはしない)。

政府は財政赤字を賄うため紙幣の印刷に手を染めてしまう。
but
債務を返済するために紙幣を印刷⇒市中の貨幣量が増加やj理宇市それに匹敵する物価水準の上昇に転換される⇒インフレ。
新しく発行された貨幣を元手にした財・サービスの政府購入を最終的に負担するのは、貨幣による支払を行おうとしているすべての人々。
←インフレは、人々が保有している貨幣の購買力を損なう。

財政赤字をマナ飼うために貨幣を増発しインフレを生み出すことで、政府は、国民が保有している貨幣の価値を減少させるインフレ税(=インフレによって国民が保有する貨幣価値が減少すること)を課すことになる。
インフレ率をが5%⇒1年後の1ドルで購入できる剤・サービスの価値は今日の0.95ドル
〜国民が保有するすべての貨幣の価値に5%の税を課したことと同等の意味。
インフレ税=インフレ率×(名目)貨幣供給量
実質インフレ税=インフレ率×実質貨幣供給量
  ◇1.3 ハイパーインフレーションの論理 
ハイパーインフレーション⇒実質貨幣の保有額をも減少
(←実質貨幣の保有額が大きければ大きいほど、インフレ税を通じて政府に奪われる資源の失質量が大きくなる。)
高率のインフレに直面した国民は実質貨幣保有額を減らす⇒政府はより高いインフレを発生しなければ、人々が貨幣保有額を減らす前に集めていたインフレ税と等しい額の税を手中にすることができない⇒新しいより効率のインフレに対し実質貨幣保有量をさらに減少
というプロセスが続く。
  ◆2 インフレーションの影響 
  ◇2.1 予想されないインフレーションの勝者と敗者 
実際のインフレ率が予想よりも高かったり低かったりすると、借り手と貸し手のどちらかが、もう一方の犠牲にもとに利益を得る。
実際のインフレ率が予想より高い⇒借り手が
逆の場合⇒貸し手が
利益を得る。
名目利子率:貨幣で測った利子率
実質利子率:インフレを調整した利子率であり、名目利子率ーインフレ率
現代のアメリカでインフレが勝者と敗者を生み出す最も重要な事例は住宅ローン。
物価水準全体が上昇すれば、借り手の月々の実質返済額は時間の経過とともに減少。
1970年代のインフレ⇒伝統的に住宅金融に特化した銀行だった貯蓄貸付組合の多くを破たんに追い込んだ。
(←それまでの長期貸付の価値がインフレによって大きく損なわれたのに、預金者を集めるために短期預金の利子率をインフレに合わせて上昇させた)
  ◇2.2 予想されたインフレーションと利子率 
インフレは借り手が実際に支払う、また貸し手が実際に受け取る実質利子率に影響⇒予想されたインフレ(インフレ予想)は名目利子率に大きな影響を与える。
予想インフレ率が0%の時の貸付資金の供給と需要
⇒均衡はE0で、均衡名目利子率は4%。
予想インフレ率が0%⇒均衡での予想実施利利子率、つまり借り手と貸し手が貸付契約時に想定する実質利子率もまた4%。
but
予想インフレ率が10%に上昇⇒資金の需要曲線は上方にD10までシフト。
←借り手は4%で借りたいと考えていたのと同じ額を、14%の名目利子率で借りても良いと思う。
(←インフレ率が10%のとき、14%の名目利子率は4%の実質利子率の相当する)
同様に、資金の供給曲線も情報にS10までシフト。
←4%での貸出額と同じ額の貸出を実行するために、貸し手は14%の名目利子率を要求

貸出均衡はE10となり、10%の予想インフレ率は、均衡名目利子率の4%から14%への上昇という結果をもたらす。
フィッシャー効果:
予想実質利子率は予想インフレの率の変化の影響を受けない。
予想インフレ率の上昇は名目利子率のみ上昇させ、予想実質利子率は変化しない。
インフレは、それが予想されたものであれば、貸付資金の均衡数量や予想実質利子率に影響を与えることはない。
その影響は均衡名目利子率にのみ及ぶ。
  ◇2.3 インフレーションの費用 
予想されたインフレは経済全体にとって費用となるか?
結果として経済全体の所得水準を変化させるのか?
予想されたインフレは経済に実質的な費用を負担させる。
  ●靴底コスト 
インフレは人々の貨幣保有意欲に水をさす⇒取引がより困難になる。
それまでと同じ量の財・サービスを購入するとしても取引回数を増やす。
1984年から1985年にかけて、イスラエルは非常に高いインフレ。
利子のつく口座から現金を出し入れするため、頻繁に銀行やATMを訪れる必要。
インフレが引き起こした問題を対処するために必要となった銀行部門の大幅な拡大=社会の実物資源の喪失。
  ●メニューコスト 
頻繁な価格の変更
頻繁な価格表示のラベルの張替え
  ●計算単位コスト 
インフレの貨幣単位コスト:インフレが貨幣という尺度の信用度を低下させることによる費用
多くの国で課税対象となる所得それ自体が名目値で計算。
課税対象となる利潤は企業の名目収入と名目費用の差で計算。
ある衣料品店が、夏に600ドルの卸売価格でコートを購入し、その3か月後にそれを1000ドルの小売価格で販売。その場合400ドルが利潤。
but
インフレ率が高く、販売時に卸売価格が800ドル⇒実際の利潤は200ドル。
だけど、IRSは400ドルを基準に課税。

インフレのせいでIRSが真の利潤を肥大化して評価
⇒企業の中には生産性を高める投資を控えるものも。
逆にインフレは持ち家への過剰な支出を助長。
アメリカの所得税制は住宅ローンの利子支払の控除を認める⇒実質でなく名目での利子率が高いとき、住宅の購入は安い買い物となる。
    貨幣需要の利子率ってどっち?
 
  ◇2.4 最適なインフレ率 
ほとんどの中央銀行はわずかにプラスのインフレ率を目標とする。

デフレに対処する場合、国民が0%のインフレを予想しているよりも適度なインフレを予想している方が、金融政策をより有効に利用できると信じている。
    アメリカのインフレ率と利子率
1980年頃がピークで、インフレ率も利子率も2ケタ
インフレ率と名目利子率の動きは完全には一致していない

@インフレ以外の要因が名目利子率に影響を与えている
A名目利子率が実際のインフレではなく予想されたインフレを反映
  ◆3 緩やかなインフレーションとディスインフレーション 
  ◇3.1 緩やかなインフレーションの原因 
  ◇3.2 ディスインフレーションの問題 
  ◇3.3 供給ショック 
  ◆4 デフレーション 
第2次大戦後、すべての国々でインフレが当たり前
1990年第になると日本でデフレが再び現れ、それを反転させるのは難しいことだとわかった。
  ◇4.1 予想されないデフレーションの効果 
予想されないデフレは予想されないインフレと同じように勝者と敗者を生み出す。
デフレは実際に、借り手から実質の資源を取り上げてそれを貸し手に再配分するもの。
債務デフレ:
デフレによって未払い債務の実質負担が重くなることでんもたらされる総需要の減少
  ◇4.2 予想されたデフレーションの効果 
デフレ⇒@名目利子率の低下とA貨幣需要の増加
インフレ率が0%⇒均衡名目利子率は4%
予想インフレ率がマイナス3%⇒均衡名目利子率は1%
予想インフレ率がマイナス5%⇒均衡名目利子率はー1%とはならない
(←マイナスの名目利子率で金を貸す人はいない(=現金を保有する方が望ましい)。)
名目利子率にはゼロ下限がある⇒ゼロを下回ることはできない。
名目利子率がゼロ下限を下回ることができないため金融政策が使えなくなる状況を、流動性の罠という。
貸付資金需要が急激に落ち込んだときは常に流動性の罠が起こりえる。
    日本の罠:
1980年代終盤の好況の後、1990年代初めに日本は不況を経験。
日本のインフレ率はじわじわ下落し、1990年代半ばに、日本は主要先進国経済としては1930年代以降初めてとなるデフレを経験。

日本は利子率を切り下げることで経済を刺激することがえきなかった

1990年代に日本が大規模な拡張的財政政策を利用。

流動性の罠が現代世界の現実問題である。
   
★第17章 危機とそれがもたらしたもの  
  ◆1 銀行の仕事:その便益性と危険性
     
  ◆2 銀行危機と金融パニック 
     
  ◆3 銀行危機の帰結 
     
◆    ◆4 2008年の危機とその余波 
     
  ◆5 危機後の規制改革 
     
Z 事件とアイデア
★第18章 マクロ経済学:事件とアイデア 
  ◆1 古典派のマクロ経済学 
  ◇1.1 貨幣と物価
古典派モデル:
貨幣供給量の増加はそれと比例的な物価上昇をもたらすが、総産出量には何の影響も及ぼさない。
〜貨幣供給量の増加はそれと比例的な物価水準の上昇をもたらすが、総産出量二は何の影響も及ぼさない。
but
1930年代以前にほとんどの経済学者が、貨幣供給量の変化は短期的には物価水準だけでなく総産出量にも影響(=短期総供給曲線は右肩上がり)に気付いていた
but
このような短期的効果は重要でないと考え、長期的な効果に注目していた。
vs.
ケインズ:「長期的には、われわれはみな死んでしまう」と揶揄
  ◇1.2 景気循環 
     
    景気循環はいつ始まったか:
全米経済研究所が持っているこれまでの景気循環の記録では、1854年までしかさかのぼれない。
19世紀前半のアメリカは圧倒的に農業中心の経済
1840年には農業が鉱工業を圧倒しており、経済的重要性という点では1880年代に入るまで鉱工業は農業に追いつけなかった。
農業経済の総産出量の変動は、景気循環とは全く違う。
主に天候のせいで農業生産が変化して短期総供給曲線がシフト
現在の景気循環は、それとは対照的に、主として総需要曲線のシフトによるもの
  ◆2 大恐慌とケインズ革命 
    この経済不振は市場経済の基本路線を変えることなく解決できるし、そのように解決すべきと主張する経済学者:ケインズ
経済を動かすためには、全面的な大修繕ではなく、ちょっとした手直しが必要なだけという主張。
  ◇2.1 ケインズの理論 
1936年にケインズは、彼の大恐慌の分析をまとめた「雇用・利子および貨幣の一般理論」という本を発表。
@物価水準が長期的にどう決まるかという点よりも、総需要のシフトが総産出量に与える短期的な効果を強調した。
短期総供給曲線が右肩上がりで、総需要曲線のシフトが物価だけでなく総産出量と雇用量に影響することに経済学者の目を向けさせた。
A古典派の経済学者は総需要曲線をシフトさせる要因として貨幣供給量の変化を強調。but他の要因にはほとんど目を向けなかった。
but
ケインズは他の要因、とりわけアニマル・スピリット(景況感(ビジネス・コンフィデンス))が景気循環の立役者だと主張。

ケインズ以前:貨幣供給量が一定に保たれるかぎり、景況感が物価水準や総産出量に影響するはずがないと論じる学者が少なくなかった。
  ◇2.2 不況を克服する政策 
ケインズの仕事⇒
マクロ経済政策の積極主義:
景気循環を平準化するために金融・財政政策を活用すること。
今日、金融・財政政策が不況と闘ううえで有益な役割を果たしうるという幅広い合意が形成されている。
    大恐慌の終わり
1930年代にケインズのアイデアを受け入れた多くの若い経済学者たちが彼の著作から学んだ基本的な教訓:経済の回復には積極的な財政拡大・・・雇用創出につながるような大規模な赤字支出・・・が必要。
戦争⇒アメリカは巨額の赤字支出、1943年度には、その赤字はGDPの30%
⇒経済再生
  ◆3 ケインズ経済学への挑戦 
    経済学者は、マクロ経済政策の積極主義の限界をもっとよく知るようになった。
  ◇3.1 金融政策の復活 
ケインズの「一般理論」では、金融政策は恐慌下ではあまり有効ではない。
〜流動性の罠
ケインズが執筆していた1930年代には、利子率はほとんど0%の水準に下がっていた。
第2時大戦後、0%近辺の低利子率の時代は終わった
but
多くの経済学者は
財政支出>金融政策
の風潮。
アメリカ金融史(フリードマンとシュワルツ):
景気循環が歴史的に貨幣供給量の変動と相関していることを明らかにした。
大恐慌が始まった時期に貨幣供給量が急激に減少している。
⇒FRBが貨幣供給量の減少を食い止めるように行動していたなら大恐慌は回避できたかもしれないとする議論。
金融政策への関心が復活⇒
財政政策が経済運営の重荷を負わなくてすむようになった(=経済運営が政治家の手を離れた)

財政政策は税率の変更や政府支出の修正を要する⇒必然的に政治的な選択の対象となる。
@減税による経済刺激⇒誰の税金を下げるべきか
A政府支出による経済刺激⇒何にお金を使うか
政策の柱が財政政策から金融政策に切り替われば、マクロ経済運営は政治色を薄め、より技術的な性格のものになる。
  ◇3.2 マネタリズム 
ミルトン・フリードマン:
金融政策の重要性は維持しながら、マクロ経済政策の積極主義を排除しようとした。
マネタリズム:貨幣供給量が一定で増加すればGDPも一定率で成長するという主張。
短期が重要であり、総需要の短期的な変化が物価と総産出量の両方に影響を及ぼす。
大恐慌の最中にはもっと拡張的な政策が行われるべき。
〜ケインズと同様。
but
政策担当者が経済の浮き沈みを平準化しようとしても、そうした試みの大半は事態を悪化させるだけ。

@政府の状況認識は現実から遅れがち
A財政政策の変更にも、その効果が経済に浸透するまでさらなる遅れがつきまとう。
フリードマンはまた、
中央銀行が彼のアドバイス通りに経済の変動に応じて貨幣供給量を調整することをもし拒否⇒財政政策はケインズ派が言うよりもはるかに小さな効果しか発揮できないと主張。

財政赤字⇒利子率を高めて投資支出を抑え込むクラウディング・アウトという現象を引き起こす。
フリードマン:貨幣供給量が固定されている状況で政府が拡張的な財政政策⇒それが総需要に与える効果はクラウディング・アウトによって弱められる。
総需要曲線:物価↑⇒需要↓
総供給曲線:物価↑⇒供給↑
@総産出量の上昇とA物価水準の上昇
⇒貨幣需要の増加⇒貨幣需要曲線のシフト⇒均衡利子率上昇⇒投資支出を押し下げ、当初の政府支出の増加を一部相殺
M(貨幣量)×V(貨幣の流通速度)=P(物価水準)×Y(実質GDP)
マネタリストはVが安定していると信じた

FRBがMを着実な成長軌道に乗せれば、GDPも着実に成長すると信じた。
but
貨幣の流通速度は十分に安定的なものではない
(1980年以降マネタリストの提案を採用⇒貨幣の流通速度はむちゃくちゃに暴れまわるようになった)
  ◇3.3 インフレーションと自然失業率
    1940年代と50年代:
ケインズ派の経済学者の中には拡張的な財政政策で恒久的に完全雇用を実現できると信じる者が多かった。
    1960年代:
多くの経済学者は拡張的な政策に頼るとインフレという問題が生じることに気付いた。
but
政策担当者のやり方しだいでは、高いインフレと低い失業という選択が長期的にも可能と考える者が多かった。 
    1968年、ミルトン・フリードマンとエドモンド・フェルプスが、自然失業率の概念を同時に、かつそれぞれ独立に発表。
自然失業率:インフレを加速させない失業率、すなわたNAIRU(インフレ被加速的失業率)と呼ばれるもの。
インフレは早晩人の予想予想に織り込まれる⇒失業率を自然失業率よりも低い水準に抑えようとすればインフレがどんどん加速する。
〜NAIRUの仮説。

マクロ系税政策の積極的役割をより限定:
政府は失業率を自然失業率以下に抑えることはできない⇒政府の役割は、失業が自然失業率から上下に大きく変動しないように安定化を図ること。
    フリードマンとフェルプス仮説
⇒強力な経済予測を生み出した。
失業とインフレの間にみられるトレードオフは物価上昇が長く続けば崩れ去る
←インフレがひとたび人々の予想に組み込まれてしまえば、失業率が高くなってもインフレは持続する。

実際に1970年代にそのような事態が生じた。
⇒自然失業率仮説は、ほとどのマクロ経済学者によって受け入れられた。
(一部のマクロ経済学者は、インフレ率が低いか負になる場合には、この仮説の妥当性は失われると信じる。)
     
     
     
     
     
     
     
[ 開放経済 
★第17章 国際貿易??
  ◆1 比較優位と国際貿易 
  ◇1.1 生産可能性と比較優位、再考 
    労働、エネルギー、資本等々の資源は他の財の生産にも用いられたはずのもの。
1本のバラを生産するために、その他の財の生産が減らされてしまう。
〜バラの機会費用。
    他国よりもある財を生産する機会費用が低い国はその財の生産に比較優位を持つ。
     
  ◇1.2 国際貿易の利益 
    特化によってどちらの財も世界生産が拡大。
特化していない:コンピュータ:1500台、バラ:1500箱
but
特化⇒コンピュータ:2000台、バラ:2000箱
     
  ◇1.3 比較優位の要因 
  ●気候の違い
  ●生産要素賦存量の違い 
カナダが木材製品に比較優位
←労働力に対する森林地帯の比率がアメリカよりもはるかに大きい
生産の要素集約度:
各財を清算する際にどの生産要素が相対的に多く利用されるかを示す指標。
ヘクシャー=オリーン・モデル:
各国は国内に豊富にある生産要素を集約的に使う財に比較優位を持つ。
ex.
資本を豊富に保有⇒石油精製のような資本集約的な産業に比較優位を持つ。
労働を豊富に持つ国⇒衣類生産のような労働集約的な産業に比較優位を持つ。
ある生産要素の機会費用とは、その要素が別の用途に利用された際に生み出す価値。
ある生産要素が豊富にある国⇒その生産要素の機会費用は低い。
(ex.アメリカの降雨量が多い地域では、居住者の水の機会費用は低い。
←農業など別の用途に使える水もまた豊富に供給される。)
衣類の生産は労働集約的⇒豊富な労働力を持つ中国やバングラデシュのような国が衣類の生産に比較優位を持つ。
  ●技術の違い 
日本が自動車生産で比較優位
←日本企業が開発した優れた生産技術。
⇒欧米のライバル企業と同じ量の労働と資本を使ったとしても、ライバルたちより多くの自動車を生産することができる。
   
  ※アメリカの比較優位 
アメリカはほとんどすべてのもので絶対優位を持っている。
1953年、ワシリー・レオンテイエフの発見:
多くの経済学者:アメリカの輸出品生産は輸入品生産よりも、資本集約的だと考えていた。
vs.
実際には、アメリカが輸入する財のほうが輸出する財よりもいくらか資本集約的。
アメリカの輸出は機械や建物のような物的資本に関して集約的ではなく、人的資本に関して集約的。
輸出産業のほうが教育水準の高い労働者を、そうでない労働者よりも多く雇っている。
逆に、アメリカは大量の衣類を輸入しているが、その多くはわずかな教育しか受けていない労働者によって生産されている。
 
 
     
     
★第19章 開放経済のマクロ経済学 
◆    ◆1 資本の流れと国際収支 
  ◇1.1 国際収支勘定
    コスタ家の会計年(ドル)
                  入ってくするお金     出て行くお金       差額
財・サービスの販売と購入 アンティチョークの販売   農場の運営と生活費
                    100,000      110,000       ー10,000
利子支払い         銀行預金からの利子  住宅ローンの利子支払
                        500       10,000        ー9,500
ローンと預金         新たな借り入れ     銀行に預け入れ
                      25,000       5,500        19,500
合計                125,500    125,500        0
    その国と他国との取引を要約したもの
    アメリカの国際収支(10億ドル)
                   外国人からの支払      外国人への支払   差額
@財・サービスの輸出と輸入    1838            2338        ー500
A要素所得              663             498         165
B移転支出                                         ー136
経常収支(@+A+B)                                  ー471
C公的部門による資産の売買    350              ー6        356
D民間部門による資産の売買    910             1011      ー101
金融収支(C+D)                                      255
合計                                             ー216
    第1行:財・サービスの販売から生じる受取金額
ex.
アメリカの小売りの輸出額 外国人がアメリカのコンサルティング会社に支払う手数料⇒第2列
アメリカの石油輸入額 アメリカの会社がインドのコールセンターに支払う費用⇒第3列
第2行:要素所得:各国が外国の居住者が所有する生産要素の使用に対して支払う所得額
そのほとんどが投資所得:海外からの貸付の利子、外国人が所有する会社の利潤等
アメリカに本拠があるウォルト・ディズニー社が所有するディズニーランド・パリが稼ぐ利潤⇒第2列
日本の自動車会社がアメリカで稼ぐ利潤⇒第3列

この項目は労働所得も含む
⇒ドバイの建設現場で一時的に働くアメリカ人技師の賃金⇒第2列
第3行:国際トランスファー(国際移転支出:一国の居住者から外国の居住者に送られた資金)
ex.アメリカで雇用された何百万人ものメキシコ生まれの労働者のような移民が母国の家族に送るお金
資産の売買から生じた支払いを取引主体別に分けて示す
第4行:政府、あるいは政府の代理者、主に中央銀行に関わる取引
2010年にはこの項目に示した政府支払の大部分は中国および産油国の中央銀行の外国為替準備の蓄積によるもの

第5行:民間の主体による資産の売買
2010年にフォード・モーターのボルボ・ブランドが中国のジーリー自動車に売却⇒第2列に
ヨーロッパの株式がアメリカの投資家によって購入⇒第3列に
    アメリカの居住者が小麦のような財を外国人に売却〜取引はそれで完結
but
債券のような金融資産は、それで終わりにならない。
債券〜将来利子や元本を支払う約束。
アメリカの居住者が外国人に債券を売却〜負債を作り出す⇒将来、アメリカの居住者は利子と支払い元本を償還しなければならない。
負債を作り出さないような取引⇒経常勘定収支、簡単にいえば経常収支に記録。
会場収支=財・サービス収支+純国際移転収支+純要素所得
将来の負債を生み出すような取引は金融勘定収支、簡単に金融収支。
    アメリカの経常収支は赤字:
アメリカが財・サービス、生産要素のために外国に支払った金額>受け取った金額
金融収支では黒字:
外国に売った資産の価値>外国から買った資産の価値
    国際収支会計の基本原則:
経常収支(CA)+金融収支(FA)=0
CA=ーFA
受け取った現金の合計は使われた現金の合計に等しくなければならない
     
     
  ◆2 為替レートの役割 
     
  ◆3 為替レート政策 
     
◆    ◆4 為替レートとマクロ経済政策