シンプラル法律事務所
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コンメンタール(民事訴訟法)

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  ★17条 
  規定 第17条(遅滞を避ける等のための移送)
第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
  ◆1 本条の趣旨 
     
  ◆2 移送の要件 
    @訴訟の著しい遅滞を避けるため必要があること、
A当事者間の衡平を図るために必要があること
のいずれかの要件を満たす必要。
     
    Aは、現行法で新たに加えられた要件で、旧法では「著しき損害」を避けるため必要があることが要件とされていた(旧31条)のを緩和・修正したもの。
特に、一般市民が企業と契約をするなど当事者間の実質的な対等関係が他のされていない場面で、合意管轄条項や義務履行地の裁判籍によって、一般市民が自己の住所から遠隔地にある企業の本店所在地等の裁判所に訴えられると、応訴について経済的・時間的に困難を生じる。
but
従来は、その困難が「著しき損害」といえる程度のものでない限り、移送による救済はできなかった。

現行法は、個々の事案ごとに当事者双方の事情は訴訟経済等を総合考慮して、「当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは」移送ができることとした。
    著しい遅滞といっても、当事者間の衡平といっても、その要件は抽象的なものであるので、結局は当事者双方の事情、訴訟経済その他の公益上の理由を総合的に比較衡量して判断すべき。
    当事者及び尋問を受けるべき証人の住所
使用すべき検証物の所在地
その他の事情
「その他の事情」として、
当事者の具体的事情、
訴訟代理人の有無およびその事務所の所在地、
当事者双方の経済力、
請求の趣旨・内容等
さらに交通の・通信の便、
関連請求の継続など併合審理の便なども考慮されよう。
    いずれにせよ、平成8年の改正は、当事者の利益を十分に考慮して移送をしやすくする趣旨を含む。 
     
     
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  ★92条
  規定 民訴法 第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。
一 訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。
二 訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法第二条第六項に規定する営業秘密をいう。第百三十二条の二第一項第三号及び第二項において同じ。)が記載され、又は記録されていること。
2 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、第三者は、秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができない。
3 秘密記載部分の閲覧等の請求をしようとする第三者は、訴訟記録の存する裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の決定の取消しの申立てをすることができる。
4 第一項の申立てを却下した裁判及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第一項の決定を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。
民訴規則 第34条(閲覧等の制限の申立ての方式等・法第九十二条)
秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができる者を当事者に限る決定を求める旨の申立ては、書面で、かつ、訴訟記録中の秘密記載部分を特定してしなければならない。
2 前項の決定においては、訴訟記録中の秘密記載部分を特定しなければならない。
  ◆1 本条の趣旨 
  ◆2 保護される秘密 
  ◇1 総説
  ◇2 秘密としてのプライバシー 
    プライバシーのうち
@「当事者の私生活についての重大な秘密」であり、かつ、
A「第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある」ものであることが必要。
    一般に、民事訴訟においては個人のプライバシーが問題となることが少なくないが、訴訟記録の閲覧等の制限は例外

@秘密の重大性
A秘密の開示に伴い影響の顕著性
が要件とされる。
    〇性的被害(例えば、強姦)を受けた被害者の氏名等を特定する事実など、秘密の公開によってその人の社会生活が破壊され、立ち直れなくなるようなもの。
    セクハラ被害を請求原因となる慰謝料請求訴訟において、被害女性(原告)が求めた訴訟記録の第三者に対する閲覧等の請求の制限の申立てに対し、
これを第三者に閲覧ささえると、被害を受けた女性にとって重大な秘密が明らかにされることになり、社会生活を送るうえで重大な障害になることは容易に推認できる

全記録中の被害女性の住所・氏名・生年月日・愛称部分を全面的に、一部記録部分につき第三者に対する閲覧を禁止したケース。
   
  ◇3 営業秘密
     
  ◆3 閲覧等の制限の方法 
  ◇1 当事者の申立て 
     
  ◇2 閲覧等制限決定 
     
  ◇3 閲覧等制限申立ての効果 
     
  ◆4 訴訟記録の閲覧等の制限手続 
  ◇1 手続の概要 
     
  ◇2 閲覧等制限決定の取消しの申立ておよび不服申立て 
  ■ア 閲覧等制限決定の取消しの申立て 
  ■イ 即時抗告 
     
  ◆5 相手方当事者および弁護士の秘密保持義務 
  ◇1 相手方当事者の秘密保持義務
     
  ◇2 訴訟代理人である弁護士の秘密保持義務
     
第5節 裁判  
  ★ 前注 
  ◆1 裁判の意義 
  ◆2 裁判の種類 
  ◆3 本節に規定してあること 
  ◆4 確定判決の効力 
     
  ◇(2) 確定は寝k都賀有する効力 
  ■(ア) 既判力 
    既判力:終局判決において判断された事項についての裁判所および当事者に対する拘束力
     
     
  ★114 既判力の範囲 
  ◆(1) 本条の趣旨 
     
  ◆(2) 確定判決 
     
  ◆(3) 既判力の意義および作用 
     
     
     
     
     
     
     
     
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  ★137条 
    第137条(裁判長の訴状審査権)
訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
3 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
  ◆(1) 本条の趣旨 
  ◆(2) 訴状の受付
  ◆(3) 訴状の必要的記載事項の不記載
  ◆(4) 手数料の不納付 
  ◆(5) 補正命令 
  ◇(1) 補正命令の主体・意義
    裁判長の補正命令に対しては、即時抗告または通常抗告の提起ができない。
補正命令に対して不服のある原告は、これに従わずに、その後にされる訴状却下命令に対して即時抗告を提起し、そのなかで補正命令の当否を争うことができる。 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
  ★152条
  規定 第152条(口頭弁論の併合等)
裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
2 裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
   
   
  3 弁論の分離 
    弁論の分離は、併合訴訟において、
@当事者や請求が多いため訴訟が複雑になり、審理が遅滞し、事案の解明の進まない
A当事者によって争点が異なり、それが訴訟の円滑な進行の妨げになる
B審理が進むにしたがって、当事者間で訴訟対応が異なってきた

訴訟(事件)を別個の手続に分離することによって審理を単純化し、迅速で円滑な審理を図るために行われる。
     
     
     
     
     
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  ★202条 
  規定 第202条(尋問の順序)
証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
2 裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
3 当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
     
     
  ◆9 質問の制限 
  ◇(1) 総説 
  ◇(2) 証人を侮辱し、または困惑させる質問
  ◇(3) 誘導質問 
  ◇(4) すでにした質問と重複する質問 
  ◇(5) 争点に関係のない質問
  ◇(6) 意見の陳述を求める質問
  ◇(7) 証人が直接経験しなかった事実について陳述を求める質問 
  ◇(8) 当事者の申立て等による質問の制限 
     
     
  ★220条(文書提出義務) 
   
     
     
     
     
  ◆(13) 自己利用文書(4号ニ) 
    ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
     
    カッコ書き

公務員が組織的に用いるものとして保有している文書は本来行政情報公開法による開示の対象となる文書であり(行政情報公開2条2項参照)、自己利用のみを根拠に開示の拒絶を認めることは相当ではない。
     
  ◇(1) 基本的準則 
     
    最高裁H11.11.12:
@ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、
A開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、
B特段の事情がない限り
自己利用文書に当たる。
    @内部文書性
A不利益性(看過し難い不利益の存在)
B特段の事情の不存在
    @について:
作成目的という主観的要素だけではなく、
記載内容や所持の経緯など客観的な事情も勘案して判断。
Aについて:
一種の法創造に近い作用。
開示の範囲について評価的な判断をすることを可能にした。
Bについて:
一般要件を満たした場合にも、なお個別の事情によよって(提出)義務を肯定できる余地を残した。
   
     
  ◇(2) 内部文書性 
    内部文書かどうかを判断する基準は、物理的な文書それ自体ではなく、その文書の中身である情報。

物理的文書それ自体ではなくその記載内容を証拠資料とする所掌の本質に整合的な理解。
    法令上の作成義務がある場合およびそれに準じる場合⇒原則として内部文書性は否定される。
←法令上の義務や根拠があるような場合には、客観的にみて、内部のみで文書の利用が完結することが想定されていない。
but
法令上の作成義務や根拠がない場合であっても、それだけで内部文書性が肯定されるわけではなく、肯定の判断に傾く1要素となるにとどまる。
    文書作成目的の公益性⇒内部文書性を否定するファクターとして機能。
最高裁H16.11.26:
法律上の根拠の存在に加え、
本件管理人および本件調査委員会は保険契約等の保護という公益のために調査を行うものというこができる
⇒4号ニ該当性を否定。
    開示の相手方が守秘義務を負っていても、それは内部文書性の否定には影響しない
開示を受ける者が守秘義務を負っていても(=それ以上に文書が開示されないことが前提とされるとしても)、純粋の内部利用ではなく外部に開示される点にかわりはないという考え。

一般義務化の趣旨に適合し、法の文言に鑑みても相当な判断。
    たまたま外務調査等の資料となることがありうるとしても、それが直接の作成目的にはなっていない⇒内部文書性は肯定。
外部での利用が作成目的に含まれている⇒主観的に内部理由を目的としていても、内部文書性は否定。
but
微妙な判断
●内部文書性肯定例
最高裁H11.11.12:
稟議書について、担当官の守秘義務を根拠にそれを排斥することは相当ではなく、
そのような検査の資料としての利用が予定されているものではない⇒内部文書性を肯定。
最高裁H17.11.10:
地方議会の議員が政務調査費によって行なった調査研究に係る報告書等に関する事案。
本件各文書は、本件要綱に基づいて作成され、各会派に提出された調査研究報告書及びその添付書類⇒専ら、所持者であるYら各自の内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であると認められる。

ここで根拠とされる条例・要綱の趣旨は、
政務調査費の交付を受けた会派が議長に提出すべき文書は収支状況報告書・執行状況報告書であり、調査研究報告書自体はあくまでも会派内部にとどめて利用すべき文書とされ、それが証拠書類等の資料とされているとしても、それは例外的に議長に対してのみ提示提示されるにすぎない。
証拠資料等とされることの例外性、すなわちそれが直接の作成目的ではない点が重視。
最高裁H22.4.12:
同様の文書が問題となった事案。
政務調査費の適正な使用についての各会派の自律を促すとともに、各会派の代表者らが議長等による事情聴取に対し確実な証拠に基づいてその説明責任を果たすことができるようにその基礎資料を整えておくことを求めたものであり、議長等の会派外部の者による調査等の際にこれらの書類を提出させることを予定したものではない。
⇒内部文書性を肯定。
 
●内部文書性否定例
最高裁H19.11.30:
銀行の資産査定の前提として債務者区分を行なうために作成・保全している資料に関して、

債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行なうために作成し、事後的検証に備える目的もあって保存した資料であり、このことからすろと、本件文書は、前記資産査定のために必要な資料であり、監督官庁による資産査定に関する前記検査において、資産査定の正確性を裏付ける資料として必要とされているものということができる。
⇒Y自身による利用にとどまらず、Y以外の者による利用が予定されているものということができる。

本件文書は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であるということはできない。
     
  ◇(3) 不利益性(p414)
  第1:その中核的なものは、法人内部の自由な意思形成の阻害、個人のプライバシーの侵害、営業秘密の侵害。
     
  当該文書の開示によって爾後の調査の目的達成が阻害されることなども不利益性として考慮。 
    最高裁H17.11.10:
地方議会の議員が政務調査費によって行った調査研究に係る報告書等に関する事案において
「前記のとおり、本件各文書には調査研究に協力するなどした第三者の氏名、意見等が記載されている蓋然性があるというのであるから、これが開示されると、調査研究への協力が得られにくくなって以後の調査研究に支障が生ずるばかりか、その第三者のプライバシーが侵害されるなどのおそれもあるものというべきである。」

本件文書の開示によってYら各自の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある。
     
  第2:不利益の判断方法として、文書の種類に応じた類型的な判断が基本とされている。
    最高裁H11.11.12:
「文書の性質」を重視し、具体的な対象文書の記載内容に論及しない
⇒文書の種類に応じた類型的な判断を基本とする判例の姿勢を示したのの。
     
    but
例外的な取扱いも認められ、そのような文書の種類による類型的判断が困難と考えられる場合には、個々の記載内容を問題にすることはでき、その場合にはイン・カメラ審理もあり得るものとされている。
    最高裁H12.3.10:
電話装置の機器の回路図等に関する事案

個別性の強い文書については、イン・カメラ審理を含めて個別的な判断を要する。
最高裁H18.2.17:
社内通達文書に関し、類型的判断を前提としながらも、
営業秘密の記載などがあると想定される場合に、それが看過し難い不利益をもたらすか否かは個別的な判断となり得、場合によってはイン・カメラ審理を前提とすべき。
     
     
  ◇(4) 特段の事情 
    最高裁H12.12.14:
信用金庫の会員代表訴訟において信用金庫の所持する貸出稟議書の提出義務に関する事案で、
「特段の事情とは、文書提出命令の申立人がその対象である貸出稟議書の利用関係において所持者である信用金庫と同一視することができる立場に立つ場合をいう」
but
会員代表訴訟を提起した会員は、信用金庫が所持する文書の利用関係において信用金庫と同一視することができる立場に立つものではない⇒特段の事情なし。

特段の事情は、内部文書性・不利益性の要件を例外的に阻害する事情として捉えられ、
本件では内部文書性を例外的に阻害する事情として、申立人と所持者の実質的同一性が問題となりうる点に鑑み、上記のような判断をした。
    最高裁H13.12.7:


文書提出により自由な意見の表明に支障を来し自由な意思形成が阻害されるおそれはない⇒「特段の事情があることを肯定すべきである」とした。
(現に営業活動を行っている金融機関が経営破綻後の文書開示の可能性を危惧して自由な意思形成が阻害されるおそれがあるといった影響は、上記結論を左右するに足りるほどのものとは考えられないと判示。)

文書所持者の特殊性、文書作成者の現状の特殊性、所持者交替事由の特殊性などが勘案され、結果として、不利益性を否定する趣旨の特段の事情が例外的に認められたもの。
    結局、文書の類型的性質から内部文書性要件および不利益性要件に該当する場合であっても、個々的事件においてそれらを阻害する特別の事情がある場合に、提出義務を例外的に肯定する要件とされているものと解される。
ex.
内部文書性要件との関係:申立人と文書所持者を同一視できるような例外的事情
不利益性要件との関係:文書を開示しても例外的に法人の意思形成の自由やプライバシーを害さない事由がある場合
において、特段の事情によって提出義務が認められる場面を肯定。