シンプラル法律事務所
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離婚した父母と子どもとの法的関係(井上武史教授)

山口コメントへの再応答 井上武史
  ◆1
  ◆2
    憲法からみた離婚後単独親権制度:
@離婚時に1人の親権者から親権が全面的に剥奪される
A離婚後の両親が親権者と非親権者という非対等な関係に置かれる
    @:
従来、離婚後単独親権制度がもたらす国家による権利剥奪の側面はほとんど注目されてこなかったが、おそらく、現行システムを憲法上正当化することは困難。
    A:
子との関係で父母が対等⇒法律上の地位についても平等であることが原則。
フランス家族法学のフルシロン教授:
単独親権から共同親権に移行した背景には、子の権利の確保とともに、男女の平等減速の考え方がある。
父母の平等は離婚後の親子関係のデフォルト・ルールになっている。
日本:
実際には、母が親権者となる場合が圧倒的に多い
⇒父(男性)に対する権利侵害的な運用になっている
⇒権利享有レベルで男女の平等が貫徹される必要がある。
大村敦志教授:
親権は常に父母に帰属するものとし、
行使レベルで同居親と別居親に合理的理由に基づく差異を設けるのが憲法適合的な制度。
     
  ◆3 
    面会交流権:
別れて暮らす親が子と人格的な接触を行うことができる正当な権利であり、
欧州人権裁判所では「家族生活の尊重を受ける権利」として保護されている。
米国でも、面会交流権は親の憲法上の権利であると位置づけられている(山口先生)。
日本でも、面会交流権を憲法13条に基づく人格権として保障すべきという見解(二宮)
⇒面会交流を権利として規定しない法状況は、立法不作為と評価される。
    面会交流は、子の利益のためでもあるということは、各国の法的文書でも確認されている。
ドイツ民法:「父母双方との交流は原則として子の福祉に適う」と規定し、別居親との交流の重要性を明記。
子どもの権利条約「児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利」(9条3項)が掲げられている。
日本は2019年、上記の権利の実現が不十分であるとして、国連子どもの権利委員会から是正勧告を受けた。
面会交流の明文化があたかも失敗であったかのような評価には、面会交流権が人権として位置づけられるほどの重要な権利であるとの認識は見られない。
権利論としては、面会交流を原則として肯定し、子の利益の観点から例外を考えるという判断枠組みしかあり得ない。
     
  ◆4 
   
    共同親権制度は原則として子の利益になるものと考えて(マクロの視点)
それが個別の事案で子の利益を損なうおそれがあるときには(ミクロの視点)、
例外的に単独親権にするという制度設計。
    多くの国は、子どもの権利条約を受けて共同親権制度を採用。

離婚後も父母が子の養育に関与することが子の利益に適うと判断。
国際人権法や憲法を踏まえた議論が強く望まれる。
     


離婚した父母と子どもとの法律関係・・井上報告へのコメント 山口亮子
★1 離婚後の単独親権の状態  
    父母の未成年子に対する親権が、婚姻中の共同親権から離婚後の単独親権になるとき、親権者とならなかった親の親権はどのようなh状態になるのか?
  ◆(1) 親権喪失説(通説)
   
親権の内容である子に対する監護教育の権利義務がなくなり、
居所指定権、懲戒権、職業許可権、および財産管理権がなくなる。
法律行為と身分行為の法定代理権もなくなる。
     
  ◆(2) 親権停止説 
    未成年者の親でありながら、親権が行使できない状態:
@離婚後の非親権者
A子を普通養子縁組へ出した後の実親
B子の出生前の離婚または未婚の父、およびこれらの場合に父を親権者と定めたばあ甥の母
C親権喪失、親権停止の審判
D辞退
    父母共同親権の原則は維持され、親権行使のみが停止する。

@離婚後に非親権者は親権者変更審判により親権者となり得る
A普通養子縁組は離縁されると養親子関係が消滅し、実親は当然に親権行使を回復する。
B未婚であれば婚姻により共同親権者となる。
C訴因兼喪失・停止の審判の取消し、親権辞退事由の消滅により親権は回復する。
     
  ◆(3) 親固有の権利義務説 
    離婚後の非親権者、および親権喪失後の親も、子との関係で失われない親固有の権利義務がある。
@未成年者の婚姻同意権
A15歳未満の子の普通養子縁組の代諾権・同意権
B特別養子縁組の同意権
C扶養義務
D面会交流権
@
A:現行法では、法定代理人に代諾権があり、離婚後監護者と指定された者、および親権停止された親に同意権がある。
離婚後の非親権者と親権喪失者にこの権利はない。
B:親権喪失の効果とは異なり、法的親子関係の終了となるもの
⇒婚姻外の非親権者、親権喪失者、親権停止者にも特別養子縁組に同意する権利は民法817条の6により保障されている。
C:親権の有無にかかわらず、親は未成熟子を扶養する義務があり、親から引き離された児童福祉施設に入所した児童の費用について、国は扶養義務者である親から徴収することができる(児童福祉法56条)
D:
   
★2 単独親権の手続的・実質的問題  
  ◆(1) 非親権者となる手続 
    裁判所において親権者指定されるとき、父母の親権者としての比較衡量が行なわれるが、必ずしも他方が不適格であることが審査されるわけではない。
⇒適正な手続なく権利が剥奪されるという問題点。
     
  ◆(2) 単独親権の効果 
    単独親権⇒親権者は単独で親権の行使ができなくなる。
@非親権者の同意なく子を普通養子縁組させることができる
A非親権者の同意なく子の氏を変更できる
B非親権者の同意なく子の監護教育、医療等の決定ができる
C非親権者の同意なく子を転居させることができる

非親権者に親固有の権利が存続しているとしても、その行使ができなくなる。
@
A
B非親権者は親固有の扶養義務を果たしており、その費用は子の監護教育に用いられているはずでありながら、子の監護教育、医療等の決定に関与できない。
C非親権者は親固有の面会交流権を有しているにもかかわらず、同意なく転居されてしまえば、実質的に子との交流が阻害される。

親固有の権利の効果は、親権行使の場面に現れてくるため、単独親権制度により、親固有の権利は実質的に侵害されうる。
     
★3 単独親権の理由  
    戦後の民法改正⇒
婚姻中は父母共同親権
but婚姻外は単独親権

親権の共同行為は一般的に困難。
  ◆(1) 親権の共同行使の不可能性 
    学説:
親権の共同行使に際し、親権の内容を
子の養育に関する重要事項と日常事項に分け、
前者を共同で行使し、後者は単独で行使することが提案。
重要事項:
子の身分行為として普通養子縁組の代諾または同意、および氏の変更
監護教育権として学校決定、進学の選択、宗教教育、生命にかかわる医療行為、および妊娠中絶の許可、
居所指定権として住居の決定
職業許可権として長期間勤務する会社への就職の許可等
日常事項:
子の服装や髪形、子の食事、子の習い事の決定、日常的な医療、大学生や社会人となった子の住居の決定、アルバイトの許可等。

これらの子の日常的決定や日常の世話は、子と同居している親が単独で行使できる。
    共同生活がなくとも、連絡手段が多様化
⇒子の法定重要事項に関して双方が決定権者となることは可能。
but
婚姻中の夫婦間でも意見が対立することはある
諸外国では父母の意見が一致しないとき、一方の申立てにより裁判所が決定権限を一方に与えるという立法をもつところもある。
     
  ◆(2) 子の利益 
    心理学や社会学の観点からの実証的な研究がなく、
あったとしても、その実証的研究が客観的な正当性の根拠となり得るのか

一律的に子の利益を定義づけることはできない、との指摘。
vs.
子の利益は個別具体的に検討するものと位置付けられている。
にもかかわらず、現在、親権制度の検討が子の利益についての価値判断の議論にすり替わってしまっており、制度の議論を困難にしている。」
    子の法的利益:
離婚により親権が単独
⇒普通養子縁組や氏の変更といった子の身分行為に関する法定代理が一方の親のみの判断にゆだねられることの危険性。
親権者の再婚時に、親権者の代諾により継親子養子縁組した後、子が継親から虐待される事件。
vs.
離婚によりDV配偶者と分かれることにより、他方親に黙って子を継親子養子縁組させて子をDVの親から遠ざける。
面会交流中に子や親権者が非親権者から殺害。
    子の経済的利益:
    子の心理的利益:
    単独親権の現状で子の利益が達成されない場面もあり、達成される場面もある。
子の利益は、それぞれの仮定の状態や個々の子により異なってくる⇒そのような子の利益を土台に制度を議論しても平行線のまま。
     
★4 単独親権の正当性  
  ◆(1) 国家と家族 
    フランスをはじめ欧米諸国:子の問題を国家の問題ととらえている。
欧州人権裁判所:親子の交流を確保することを国家の義務ととらえる。
ハーグ子奪取条約:子の連れ去りに対し各国の中央当局がその支援を行う仕組み。
    日本:
制度上、離婚に国家の関与は必要とされていない。
養育費支払取決割合と実行割合:
母子世帯:42.9%と24.3%
父子世帯:20.8%と3.2%

面会交流の取決割合と実行割合:
母子世帯:24.1%と29.8%
父子世帯:27.3%と45.5%
     
  ◆(2) 親の権利について 
    米国:
家族法が憲法化し、親の権利が憲法上の権利として確立。
    米国:
親の権利は憲法が保障する自由権。
米国では、各州法は合衆国憲法に合致していなければならない
⇒親は、親の権利を制限する州法を憲法違反であると主張することによって、親の権利を勝ち取ってきた。
「人が婚姻し家庭を設け子を育てること」は、合衆国憲法第14修正が保護する自由に当たる。
「未婚の父と未婚の母を異なって扱うことは平等保護条項に反しており、未婚の父の子に対する養育権の侵害については実体的デュー・プロセス条項に反している。
婚姻外の共同親権制度については、最高裁判断を待たずに各州法の改正により成立。
その背景:
親の憲法上の権利を根拠に、婚姻関係にかかwらず、州法により適正手続なく子に対する権利が剥奪されないという主張。
同様に、面会交流に対しても親の憲法上の権利から主張。
子に対する親の権利義務:監護権(custody)
憲法上保護される権利は親の権利(parental rights)
子に対する監護権:
他方の親や子の利益との関係において調整されて伸縮する可能性のある権利
国に対し主張する権利:
親自身がもつものであり、正当な理由がない限り、国家(州)によって制限されない。
親固有の権利義務として日本民法にも存在しているのではないか。
これらの権利が侵害されている現状は、憲法上の侵害ではないか。
井上教授:親の子に対する権利義務は日本国憲法においても保護されるものと指摘。
     


離婚した父母と子どもとの法律関係
(夫婦の別れは親子の別れなのか?) 
★1 問題状況  
  離婚後の親子関係をめぐる憲法訴訟
@離婚後の単独親権
A面会交流をめぐる問題
B子の連れ去りの問題
  @面会交流の頻度が少ない⇒親権取得の必要
A監護の継続性の原則

子の取り合いや子の連れ去り
    2020年2月:
フランス上院が「日本人親による連れ去りによってフランス人親とのあらゆる関係を断たれた日仏間の子どもに関する決議」を全会一致で採択
同年7月:
欧州議会が「国境を越えた親による子の連れ去りおよび日本国内での親による欧州人の子の連れ去りに関する決議」が採択
2019年2月:
国連子どもの権利委員会は、日本に対し、離婚後も父母に子の共同養育を認めるよう法改正を勧告。
    日本:
法務省は、24か国を調査した報告書「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について」(2020年)を公表
関係省庁が参加する家族法研究会(公益社団法人商事法務研究会が主催)では、父母の離婚後の子の養育のあり方が幅広く検討されている。
    離婚後に親が子の養育に関わることができないことや、親子交流の頻度が極めて少ないことは、
子の権利に関わる人権問題。
★2 離婚後単独親権の憲法上の問題点  
  ◆(1) 問題の所在
    民法819条
    山口亮子民法教授:
「夫婦間の問題で親が離婚する場合、一方の親が自動的に親権を失い、子に対する権利義務を失うことを法的にどのように正当化できるであろうか」
親子の剥奪が国家によってもたらされる⇒離婚後単独親権は、公法学的・憲法学的にも正当化できるかの検討が必要。
     
  ◆(2) 離婚によってなぜ親権が剥奪されるのか 
    親権剥奪が憲法上許されるといえるためには、
@親権又は親権者が憲法の保護範囲に含まれているか
A含まれているとすれば親権剥奪という国家介入が正当化できるか
が問題。 
    親権:
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
(民法820条)
  ●親の子に対する監護や養育憲法で保護されていると言えるか?
◎  鉛筆1本でも財産権として憲法の保護⇒均衡??
米国:
親が自らの子どもを世話し、監護し、監督する利益が、憲法第14修正に基づく「基本的な自由の利益」にあたるとし、子を養育する親の権利が憲法上の権利として保護されることが確立している。
日本の最高裁:旭川学力テスト事件判決:
「子どもの教育は、その最も始源的かつ基本的な形態としては、親が子との自然的関係に基づいて子に対して行う養育、監護の作用の一環としてあらわれる」

親の子に対する監護や養教育は、憲法以前の関係として当然に保護されるべきものと考えているよう。??
  竹中勲教授:
親が子をもうけたいという自己決定を尊重する観点から、
親による子どもの養教育が公権力によって妨げられないという意味での「親の子どもを養教育する自由」が、憲法13条によって保障されるという見解。

離婚後単独親権では、父母の一方は公権力によって子どもの養教育が妨げられることになる⇒憲法で保護された上記自由が制限されると評価される。
憲法学説:
家族の形成・維持やリプロダクションにかかわる事柄は「個人が自己の人生を築いていくうえで基本的重要性をもつと考える事柄」として憲法13条の自己決定権として保護される。

夫婦関係とならぶ家族の根幹である親子関係にもあてはまる。
     
  ●離婚を理由として、国家が一方の親から親権を剥奪することに合理性が認められるか? 
    民法 第834条(親権喪失の審判) 
父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、
家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

児童虐待があった場合など、父母に親権者として不適格な行為が認められた場合であり、
その場合でも、親権喪失になるのは、その重大な効果に照らして、子の利益を「著しく害する」ときに限定。
     
    単独親権⇒適格性を有している親の監護・養育を受けられなくなる点で、子の利益にも反する。
山口亮子教授:
単独親権者は、必ずしも子の利益を理解しうる唯一の者であるわけではない⇒子の養育の権利や責任を一方が抱え込むより、双方で分担する方が、子どもが持つ危機感も分散されるであろう。
     
  ◆(3) 離婚後はなぜ父母の一方しか親権者になれないのか・・・なぜ共同親権でないのか? 
    憲法の平等原則⇒離婚後の親子関係法制の設計にあたっては、父母が対等であることが出発点。
  フランス民法:
「両親の離別は、親権行使の帰属に関する準則に影響を及ぼさない」
「父母は各々、子との人格的関係を維持し、他方の親と子との関係を尊重しなければならない」

離婚後も子に対しては父母が対等な地位にあることが原則。
フルシロン教授:
フランス民法では、親権の共同性の原則と男女の平等の原則を確認し尊重して、子の権利の推進の観点から、親権は共同行使を原則とし、単独親権行使を例外的なものとして位置付けた。 
  大村敦志教授「今日において、単独監護・単独親権を積極的に擁護する理由は乏しい。父母の権利・子どもの権利の双方の観点から、立法論としては、共同監護・共同親権を原則とすべきであろう」 
     
★3 面会交流の問題  
  ◆(1) 問題状況 
    父母が面会交流について合意できない場合、裁判所の命じるのはせいぜい月1回数時間が限度。
履行確保の仕組みが不十分⇒親権者である同居親の一方的拒絶によって反故にされることも多い。 
    2019年:
日本は国連子どもの権利委員会から
「非同居親との人格的な関係及び直接の接触を維持するための子どもの権利が定期的に行使できることを確保する」ために必要な措置をとるべきとの勧告を受けた。
     
  ◆(2) 面会交流の権利性 
    諸外国では訪問権と呼ばれ、親の権利として確立している。
フランス:
双方の親との関係を維持することが子の利益に適うという理念が、離婚家庭の子どもの問題に関わる人々の間で広く共有されるようになった。
面会交流権を、親の権利としてだけでなく、子の権利として定める例(ドイツ、韓国)もある。
but
日本の家族法学
「非監護親との面会交流を認めることが子の利益に合致するという前提が、どれほど確立したものなのか、客観的にも論証された前提なのかという点が問題として残されている」
  ●憲法上保護されている別居親と子との面会交流権の権利行使の機会を確保するために必要な措置がとられていないとする立法不作為が問題
東京地裁:
「別居親において、面会交流について人格的な利益を有することを前提としても、その具体的な内容を特定することは困難」としたうえで、「これを憲法13条により保障された権利と解することは困難なもの」とした。
東京高裁:
面会交流の法的性質や権利性自体について議論があり、別居親が面会交流の権利を有していることが明らかであるとは認められない」⇒「別居親の面会交流圏が憲法上の権利として保障されているとはいえない」と判断。
vs.
面会交流権は、実現内容・方法に具体的な形式が必要なだけで、例えば環境権のように具体的に何を求める権利なのかが明確でないというものではない。(櫻井智章教授)
     
  ◆(3) 面会交流権の憲法上の位置づけ 
    竹内勲(憲法学):
親子の面会交流権は親子の親交権の一内容をなすとして、憲法13条で保障される
    二宮周平(民法学説):
面会交流権を憲法13条の個人の尊重および幸福追求権で保護される人格権として構成。

面会交流は子にとっても、非監護親にとっても人格的利益がある。
@子にとっては、親を知ることを通じて、自己のアイデンティティを確立するという人格的利益
A非監護親にとっても、親としてのアイデンティティを確立するという人格的利益
二宮教授:
親権者が拒絶すれば面会交流が実現しない現状
⇒そのような「強力な親権」に対抗するために、「面会交流の権利性を肯定し、子と非監護親の人格的利益を保障するために、監護親が反対しても面会交流を実現する方向」を目指す。

面会交流の権利性の論証に加えて、同権利が国によって実効的に保障されることも課題に。
     
  ◆(4) 欧州人権裁判所の考え方 
    欧州人権裁判所:
面会交流権を「家族生活の尊重を受ける権利」(欧州人権条約8条)に含まれる権利であると認めている。
    欧州人権裁判所:
「父母が葛藤状態にある場合であっても、国は、親と子が再統合するための措置をとらなければならない。この国家の義務は、子が親と合流すること又は親又は親と連絡をとることへの配慮に限定されず、そのような結果に至るための準備的措置に及ぶ。さらに、子と親を再統合する措置が十全になるためには、それらの措置は迅速に実施されなければならない。というのも、時の経過によって、子と非同居親との関係は取り返しのつかない結果になるかもしれないからである。」
「申立人(父)は、2006年以来、息子との接触を試みたが、訪問権(面会交流権)を認めた裁判所の判決にもかかわらず、母親の強い反対によって極めて限られた方法でしか訪問権を行使することができなかった。」「離婚した父母に協力関係がないことは、家族関係を維持するあらゆる手段を講じなければなない国の責任を免除しない。」「国は、申立人の訪問権を実現するために必要かつ十分な努力をしておらず、当事者の家族生活を尊重される権利を侵害している。以上から、欧州人権条約8条違反が認められる。」

@面会交流権の行使のために国は積極的措置を講じる義務を負う
A時の経過が親子関係に取り返しのつかない結果をもたらす⇒国は迅速な措置が求められる
     
  ◆(5) 祖父母の面会交流権 
   
    フランス民法:
「子は、その直系尊属と人格的な関係を維持する権利を有する。子の利益のみが、この権利の行使を妨げることができる」として、祖父母の訪問権を明記。

憲法学者の概説書:
子どもは祖父母を知る権利、とくに祖父母との関係を維持する正当な権利をもっている。
両親と祖父母の不和は、原則として、子どもと祖父母とのあらゆる関係を切断する正当な理由にはならない。 
    欧州人権裁判所:
@「家族生活の尊重を受ける権利」は、親子だけでなく、祖父母と孫との関係にも及ぶ
A国家は面会交流を実施するために必要な措置をとる積極的な義務を負う
ことを確認し、
@祖父母が約12年も孫娘と会えていないこと
A祖父母が関係当局の指示に従って行動してきた
Bそれにもかかわらず祖父母と孫娘との家族関係を再構築する措置が取られてこなかった

国の当局が祖父母と孫娘との家族関係を維持するために適切かつ十分な努力を怠ったことが祖父母らの家族生活の尊重を受ける権利を侵害するとして、条約違反にあたる。
     
★4 おわりに  
     

2019年2月:
国連子どもの権利委員会は、日本に対し、離婚後も父母に子の共同養育を認めるよう法改正を勧告。
2020年2月:
フランス上院が「日本人親による連れ去りによってフランス人親とのあらゆる関係を断たれた日仏間の子どもに関する決議」を全会一致で採択
同年7月:
欧州議会が「国境を越えた親による子の連れ去りおよび日本国内での親による欧州人の子の連れ去りに関する決議」が採択