シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室TEL(06)6363-1860
MAIL    MAP


HBR(ハーバードビジネスレビュー)

トヨタの成功を導く反駁(2008年6月 p96) 
B  コメント
前文 ハードイノベーション:TPS(Toyota Production System)
ソフトイノベーション:反駁とパラドクスを内包する文化
従業員は、常に挑戦と問題をかかえ、新たなアイデアをださないといけない。→トヨタは常により良くなる。 
 
トヨタは従業員を単なる手ではなく、最前線での経験智を蓄積するナレッジワーカーとみる。→人と組織の能力に投資し、全ての人からアイデアを集める。  
人が異なる洞察をもつとき、彼等は問題の異なる面を理解しており、効果的な解決に至る。→トヨタは意図的に組織内で反駁的な視点を育て、従業員に譲歩ではなく差異を超えることによる解決の発見に挑戦させる。  
反駁の文化  イメージ 低い配当と巨大な貯蓄→非効率なイメージ
トヨタの配当は20% 200億ドルの貯蓄
ダイムラークライスラー:47.5%
 
重役のほとんどは日本人  
ルーツは名古屋。 ライバルは東京に移転。  
低い役員報酬。(フォードの10分の1)  
管理者はヒエラルキーをゆっくりと上る。
副社長の平均年齢は61歳。
 
2%しかもたない創業家の影響力。
重要な判断を仰ぐ。創業家から社長がでる。
 
トヨタはゆっくり動くが、大きな収穫をする:
・米国での生産はゆっくりする。(1984年GMとの合弁でスタート。4年後ケンタッキーに自社工場を建設)
・1997年日本でのプリウスの開発により大きな収穫を得る。
 
トヨタは着実に成長するが、偏執企業である:
・1950年代に倒産の危機。その後40年間、販売とマーケットシェアを拡大。
・「満足するな!」「よい方法があるはず!」「事業がうまくいっている時に改革せよ!」「変化しないのは悪!」
 
トヨタのオペレーションは効率的であるが、従業員の時間を無駄に見える方法で使う:
・トヨタでは議論に参加しない人間も含め、多くの社員が会議に参加する。
・重役の多くが実に多くの時間をディーラー訪問に費やす。
・多くの多言語コーディネーターを置く。(カルロスゴーンは撤廃。)
 
トヨタは倹約するが、キーとなる分野で大金を使う:
・倹約(昼食時のオフィスの消灯、大部屋での作業)
・製造施設、ディーラーネットワーク、人材開発に多額の投資をする。
・1990年以来220億ドルを米国とヨーロッパの製造センターとサポート施設に投資し、過去6年間で毎年1.7億ドルをフォーミュラワンレースに投資した。
 
トヨタは社内コミュニケーションがシンプルであるべきであるとするが、複雑な社会的ネットワークを作る:
・コミュニケーションではシンプルな言葉を使うという不文律。
・プレゼンテーションでは、背景情報、目的、分析、アクションプラン、予想結果を紙1枚に要約する。
・「全ての人に全てを知ってもらうために」複雑なウェブとソーシャルネットワークを作る。
・職務や地理的境界を越えた従業員間の水平的リンクをつくり、専門と入社年度によりグループ分けをし、教育関係を通じてヒエラルキーをまたぐ縦の関係を作り、出身、スポーツ、趣味などに基づくクラブに誘うことで非公式な結びつきを育む。
 
トヨタは厳格なヒエラルキーをもつが、従業員に押し戻す自由を与える:
・反対する意見をいい、問題を公表し、上司の指示に盲目的に従わないことが、従業員に許される。
 
拡大の力  トヨタは、従業員にいかに新たな顧客、新たなセグメント、新たな地域に達し、競合の挑戦、新たなアイデア、新たなプラクティスに取り組むかを考えさせることで、硬直性を回避する。  
不可能な目標:
・会社のグローバル戦略:全ての顧客のニーズを満たし、全ての市場においてフルラインを提供する。
(マイケルポーター:戦略の中核はしないことを選ぶこと。)
・トヨタの価値:「人々、社会そして我々が分け合う地球のより良い未来を作り、常に全ての顧客の幸せを最大化する。これが我々の義務であり、これがトヨタである。」
・従業員がそのエネルギーを多様な方向に向け、異なる機能の専門家がその枠を超えて協力するよう、トヨタの目標の多くは意図的に漠然としている。
・目標を具体的にしたら従業員はその十分な潜在能力を発揮できない。あいまいな目標は研究者に開発への新たな道を、必要な技術を持つ新たな道の供給者を獲得させ、かかる製品の販売に必要な次のステップを考えさせる。
 
ローカルカスタマイゼーション:
・トヨタは製品とオペレーションを各国の消費者の洗練さのレベルに応じて改良する。
・この戦略はオペレーションの複雑さを増大させるが、新たな技術、新たなマーケティング方法、そして新たなサプライチェーンを開発する必要があるため、従業員の創造力を最大化する。
ローカルカスタマイゼーションの追求は、トヨタを、ローカル嗜好の洗練にさらすことになる。
 
実験:
・従業員に実験を促すことにより、トヨタはその心地よい場所から未知の領域に踏み出すことになる。
・不可能を達成するための現実的な方法は深く考え、小さなステップを踏み出し、決して諦めないことを知る。
・最初に、大きな目標を処理できる挑戦にブレークダウンする。そして、各兆戦のより困難な部分を処理するための新たなイニシアティブとプロセスを見つけだすために実験する。
・トヨタは、広く知られた厳格なルーティンを用いることで実験を組織する。
8つのステップのTBP(Toyota Business Practices)手続き(問題の明確化、問題のブレークダウン、目標設定、根本理由の分析、対策の開発、対策の実行、結果とプロセスの監視、成功的プロセスの標準化)が、従業員に、旧態に挑戦する道筋を与える。
・A3レポートは、簡明なコミュニケーションツールであり、従業員に、問題解決に必要な最も重要な情報を1枚のシートにとらえることを求め、それは広範に広まり得る。
 
トヨタの文化を異ならせているのは、従業員を彼等が行う過ちや直面する問題に向き合わせることにある。
中核的価値としてオープンコミュニケーションを促すことにより、トヨタは失敗に対して驚くべき耐性をもつ文化を持つ。
 
統合の力 いかにして継続的変化と成長の機器を処理するか?  
創業者からの価値:
・創業者達がトヨタの価値(継続的改善、人々とその能力への敬意、チームワーク、謙虚さ、顧客第一、現地現物)を作っていった。
・4つの単純な信念
@ 明日は今日より良くなる
A 全ての人が勝つべきである
B 現地現物
C 顧客第一、ディーラー第二(彼等のサラリーを支払うのは会社ではなく顧客) 
 
Up-and-inの人事マネジメント:
多くの会社はup-or-out(昇進するか外に出るか)
・トヨタは、低パフォーマンスの従業員を追放せずに、その能力を向上させる。
・長期雇用。(全てのコストをカットしろ。しかし人は触るな。)
・on-the-job トレーニングの重視。最初の10年間は、従業員に問題解決方法を訓練する。
・トヨタがマネジャーを評価するとき、結果より、プロセスと学びを重視する。
(いかに目的を達成したか。いかに問題を取り扱ったか。いかに組織的スキルを育てたか。いかに人を育て、動機付け、力づけたか。)
・会社は不明確で主観的な5種類の基準を持つ。
(ex.人望・粘り強さ)
 
オープンコミュニケーション:
・トップエグゼクティブは「全員が他のビジネスを知っている」という前提をもつ。
・トヨタのユニークなコミュニケーションシステムを理解する5つの要素
@ノウハウを横に浸透させる。(大部屋・見える化)
A反対意見を述べる自由を与える。(しばしば地域のオペレーションはヘッドクォーターのアドバイスに従わないことで成功した。)
B頻繁に面と向かって対話する。(従わないのは良いが、聞かないのはダメ。)ディーラーの意見を聞く。
C暗黙の知識を明確にする。(組織中で共有されるようにする。)
Dサポートメカニズムを創造する。(Global Knowledge Center, 委員会、自主研)
 
トヨタからの学び @
存続のためには否定を内包するしかない。
過去の成功プロセス/プラクティスに執着することで、多くの企業は成長を止める。
A
否定を解決するためのルーティンを開発する。
(ex.Plan-Do-Check-Act モデル、8つのステップのToyota Business Practices process, A3レポートシステム、何故かを5回問う等)
B
従業員の反対意見を奨励する。
新たなアイデアを望むなら、批判にオープンになり、反対の見解を聞くべき。
 

顧客中心のイノベーション地図(2008年5月 p109) 
B  コメント
ジョブマッピング  人々は作業のため製品やサービスを使う。
作業を最初から最後まで分解することで、顧客が製品やサービスに期待する全てのポイントの完全な描写を得る。
 
製品やサービスの最大の欠点を分析できる。
作業の成功をはかる尺度を特定する包括的な枠組みを与える。
ジョブマッピング(顧客が全てのステップにおいて行おうとすることの特定)はプロセスマッピング(実際に何をしているか)とは異なる。
作業の全ステップをマッピングし、イノベーション解決の機会を把握することで、そのオファーを差別化する新たな方法を発見する。
 
顧客の作業の分析:
3つの基本原則
全ての作業はプロセス  特定の作業の実行に関するステップを、顧客の視点からマップアウトする。  
ステップを把握すると、多くの方法で価値を創造できる。
・特定の作業ステップの実行の改良。
・特定のインプット又はアウトプットの必要性の削減。
・全体的ステップを顧客の責任からはずす。
・見過ごされていたステップへの言及。
・ステップの順序の組み替え。
・ステップを新たな場所又は時期に行われるようにする。
 
ex.洗濯について、
汚れが残っているかどうかの確認は通常最後にされるが、それでは遅い。
洗濯機が認識できるようにする⇒その時点で汚れを除去。
 
全ての作業は共通の構造を持つ 普遍的なプロセス手順:
@作業が必要とするものを特定
A必要なインプットの特定と確認
B構成要素と環境を整える
C全てが用意できているかを確認
D作業の実行
E結果と環境の監視
F修正
G作業の完了
 
イノベーションの可能性は各作業ステップの中にある。  
作業は解決と区別される 様々な方法:税務申告も、税理士のサービスを得る人もいれば、申告ソフトを使う人もいる。
多くの会社は、顧客の作業に際して、与えるべき助力ではなく、自分達が開発したサービスや競合が提供するサービスにフォーカスする。
 
作業が価値創造の焦点であるとき、会社はその既存の提供を改善できるだけでなく、新たな又は「ブルーオーシャン」市場をターゲットにすることができる。
他のMP3製造者は顧客が音楽を聴くことを助けることに集中したが、アップルは、音楽マネジメントの作業全体を見直し、顧客が音楽を取得し、配列し、聴き、シェアすることを可能にした。
 
以上の基本原則は、会社の顧客価値を創造する機会のサーチの基礎を形成する。  
ジョブマップを作る その狙いは、顧客の作業方法を見つけることではなく、作業実行における異なる時点において顧客がしようとしていることと、作業が成功的に実行されるためには各連結点において何が起こるべきかを発見すること。  
@定義
(Define)
顧客はまず、作業履行のいかなる面を定義しないといけないのか。
このステップは、@目的の決定、Aアプローチの計画、B作業完了のため必要又は利用可能なリソースの評価、Cリソースの選択を含む。
財務アドバイザーにとっての「投資状況の評価」
麻酔医にとっての「麻酔計画の策定」
 
このステップで、会社は、顧客が目的を理解し、リソースプランニングプロセスを単純化し、必要なプランニングを削減することを助ける方法を探すことができる。  
Weight Watcher がダイエットをする人を助ける例:
会社は核となるダイエットプランを提供し、ダイエットする人がカロリー、炭水化物その他の計算をすることなく、適切な食事を選ぶことを助ける。
ポイントベースのダイエット計画にフィットする食事アイデアとレシピを提供する。
より柔軟性を希望する人のため、27,000種類の食べ物のポイント価値へのアクセスと食べ物の影響を計るオンラインツールを提供する。
 
A配置
(Locate)
顧客は、作業のために、いかなるインプットやアイテムを配置しないといけないか。
インプットは有形のもの(例えば、看護士が手術のために配置しないといけない手術道具)と無形のもの(例えば、開発者がコードを書くのに使うビジネスその他の要請)がある。
必要物を利用しやすくし、必要な時と場所でそれらを利用できるようにし、インプットの必要性を削減することにより、ステップの簡素化を考えるかもしれない。
 
いかにしてU-Haulが、運搬作業に必要なインプットを配置することを助けるかを考える。
引越用品のワンストップショップである以外に、U-Haulは顧客に、多様な箱や運搬に必要な備品を入手するための時間を節約するパッケージされた運送キットを提供する。
eMoveとの協力により、素早く手助けする人・・荷造りする人、ベビーシッター、清掃員、ペインター・・の多様なインプットをそろえることができる。
無形のマテリアルの組み立て(蓄積されたデータの引き出し、新たな情報収集の促進、データが正確で完全かの確認)を助けるも多い。
 
B準備
(Prepare)
顧客はいかにインプットと環境を準備するか。
ほとんど全ての顧客の作業はマテリアルのセットアップと配置に関係する。ファストフードの従業員は、フレンチフライを料理する前に、カバンを開け、1人前に分け、バスケットに入れる。
看護士は、手術が始まる前に、手術器具を並べ配置しなくてはならない。
作業の表面又は物理環境のその他の側面を準備する必要があるかもしれない。
歯医者は歯を再生する前に臼歯の表面を準備ができた状態にする。
ペインターは最初のペイントをする前に壁を掃除する。
 
この段階では、段取りをより簡単にする方法を考えるべきである。
準備プロセスを自動化する方法を発明し、物理的マテリアルの配置を容易にし、ワークエリアの適切な配置を確かなものにするためのガイドと装置を作り出すかもしれない。(情報を扱う顧客のため、会社はひつよなデータを配置し、統合し、検証することを助けることができる。)
屋根の専門家がのこぎりでの傾斜のセットを迅速にしたいと話した時、Boschは木を切るために準備を助ける機会を学んだ。
Boschは、そのCS20回転のこぎりに調整可能なレバーを加え、30度、45度、60度という最も通常の傾斜調整を取り入れた。これは、木を切るために必要な時間を減らし、調整の精度をあげた。
 
C確認
(Confirm)
準備が完了すれば、顧客は作業を始める前に、何を確認する必要があるか?
マテリアルと作業環境が適正に準備されていることを確認し、マテリアルと情報的要素の品質と能力を有効にし、実行オプションがある場合の選択において優先順位を確認する。
このステップは、作業の遅れが顧客の金、時間又は安全を危険に晒す場合特に重要。
例えば、手術患者の準備後、看護士は患者(宝石をはずし、活力をチェックする)、機器(バッテリーパワー、メスの用意)、手術室(用具は用意され、無菌フィールドに瑕疵はないか)を確認しなくてはならない。
 
この段階で差別化しようとする会社は、準備の確認や実行の選択決定のために必要な情報やフィードバックへのアクセスを助けることができる。
他のアプローチは、確認を配置及び準備段階に組み込む方法を探すこと。そうすれば、顧客はより素早く容易に作業を始めることができる。
例えば、OracleのPfofitLogic 商売最適化ソフトウェアは、製品レベルで何千もの異なる需要シナリオを分析し、各製品について最高の利益を生み出すであろうシナリオを推奨することで、最適なタイミングと値下げ幅の確認を不要にする。
 
D実行
(Execute)
作業を成功的に実行するために、顧客は何をしなくてはいけないか?
書類の印刷でも、麻酔の実行でも、顧客は実行手順を作業の最も重要な部分と考える。
実行は最も目に見える手順であるから、顧客は、特に、最適な結果の達成とともに、問題と遅れの回避に関心をもつ。
書類を印刷する事務員は、紙詰まり、トナー切れ、時間のかかる印刷を避けたいと思う。また、印刷結果の品質改善も望む。
麻酔医は、患者のネガティブ反応の回避と患者が痛みを感じないことを望む。
 
新規性に富んだ会社はその技術的ノウハウ使い、顧客にリアルタイムのフィードバックを提供し又は自動的に実行問題を正す。
会社はまた、異なる文脈でも一定のパフォーマンスを維持できる方法を考えることができる。
Kimberly-Clark のPatient Warming System はこの方法で付加価値をだす好例である。
そのシステムは手術中の体温の急変を避けるため、患者に設置されたサーマルパッドを通じて自動的にお湯を循環させる制御装置に依拠する。
そのシステムは患者の身体の20%をカバーするだけで正常な体温を維持することができ、それは装置が様々な複雑な外科的プロセスにおいて一定かつ効果的に作用することを意味する。
 
E監視
(Monitor)
作業が成功的に実行されるために、顧客は何を監視する必要があるのか。
問題が生じた場合に仕事を軌道に戻すための修正をするかどうかを決めるため、実行中に結果やアウトプットを監視しなくてはならない。
いくつかの作業について、調整が必要かどうか、いつすべきかどうかを知るため、環境的要因を監視しなくてはならない。
例えば、ネットワーク管理者は、システムのオーバーロードを避けるためウェブトラフィックを監視する。
 
(ペースメーカーが心拍を監視するように)いくつかの監視活動は受動的であるが、他は顧客にとて時間と手間がかかり得る。
手術のように、貧弱な実行のコストが重大な場合、問題や状況変化に注意を向ける解決は特に価値がある。
同じく、改善された作業実行を伴い又は診断的なフィードバックを提供する監視につながる解決は価値がある。
NikeがどうやってNike+iPodを使ってランナーによるワークアウトの監視を助けるのかを考えよう。
Nikeシューズに取り付けられたセンサーがランナーが身につけるiPodに情報を送り、時間、距離、ペース、消費カロリーについての継続的音声フィードバックを提供する。
ランナーは、挫折しそうなとき、自らを鼓舞する「パワーソング」を選ぶことができる。
そのキットはまた、事前に決められたゴールへの前進をトラックする。
 
F修正
(Modify)
作業が成功的に完了するよう変更するには何が必要か?
インプットや環境が変化する場合、実行に問題がある場合、顧客は、アップデート、修正又はメンテナンスについて助けを必要とするかもしれない。
この段階で、何が修正されるべきかを決め、いつ、いかに、どこで変えるべきかを決めるため、顧客は助けを要する。
監視と同じく、正しい修正の模索には時間とコストがかかり得る。
会社は、問題が起きた時に実行を軌道に戻す方法を提供することができる。
彼等はまた、好ましい結果を達成するためにすべきアップデートと多くの修正のための時間を削減する方法を提供することができる。
(さらに、配置と準備段階をターゲットとする解決は修正を削減するようデザインされ得る。)
多くのソフトウェアプログラムはこの段階をサポートする。
マイクロソフトは、顧客をセキュリティ脅威から保護するため、そのコンピューターを修正する作業を助ける。
オペレーティングシステムの自動アップデートは、どのアップデートが必要かを決定し、見つけ、その調整がオペレーティングシステムの様々な要素と両立するかを確かめる面倒を取り除く。
 
G完了
(Conclude)
作業を完了するため、顧客は何をしなくてはならないか。
手洗いといった単純な作業の場合、結論は自明である。
他方で、複雑な作業には、いくつかの完了プロセス段階があリ得る。
オフィス事務員はプリンターから書類をとりだし、落丁を調べ、綴じ、保管する。
麻酔医は手術の詳細を記録し、術後の回復エリアへの移転を監視する。
 
中核作業は既に完了しているため、顧客はしばしば完了段階を負担と思う。よって、会社はプロセスの単純化を助ける必要がある。
また、ある作業サイクルの完了はしばしば他のスタートであり、次の最初に影響し得る。
作業が循環的であれば、完了活動が次の作業サイクルの起点に密接に結びつくように助けることができる。
 
作業を終了することを助ける1つの方法は、完了時に求められるベネフィットをプロセスのより早い段階にデザインすることである。
例えば、3MのCoban Self-Adherent Wrap は、伸縮し自身にのみ粘着する素材でできているため、医療関係者に治療の最後に包帯を確実にする便利な方法を提供する。
それは、患者の皮膚やけがに粘着しないため、包帯をはずしやすくする。
3Mはそのように製品をデザインし、包帯の装着はそれをはずす行為を予想する。
 
付帯的ステップ 作業の実行にあたり、顧客はどのような問題を処理し解決しなくてはならないか?
最も単純な作業においても、物事は時折悪化する・・・指示の遅れ、プリンターの紙詰まり、外科器具の置き間違い、ソフトウェアテストケースの失敗。
それらが生じるとき、顧客は中核的作業プロセスから離れ、目下の問題の処理や解決という付帯的な作業に入る。
このような時に顧客が望むものは、明確に問題を理解することの機能である、迅速な解決である。
例えば、プリンターが詰まったとき、オフィス事務員はいかに詰まった紙を取り出すか。
外科医がメスを手渡すときに看護士が手を切ったら、感染を避けるためにどのようなステップをとるべきか。
 
問題が生じたとき、顧客は、素早く解決を決定し自らと影響を受けたであろうリソースを守り、いつ問題が回復するかを知ることを助けるリソース、ツール及び診断を必要とする。
彼等は、また、各作業ステップにおける問題を回避する解決を求める。
MasterCard がいかに問題が生じた時に、商品やサービスの支払作業を行う顧客を助けるかを考えよう。
そのゼロライアビリティー方針に加え、MasterCard は、旅行中にカードを失った顧客が正確に会社に紛失を報告できるよう、ダウンロードできる電話番号を提供する。
MasterCard は48時間以内に、緊急現金供与と代わりのカードを提供する。
 
  イノベーション機会を認識するため、ある会社は製品リーダーシップに焦点をおき、ある会社はオペレーションの優位性に、ある会社は顧客との親密さに焦点をおく。
ある会社はサービスを提供し、ある会社は商品を提供する。
会社が選択するビジネスモデルに関係なく、成長機会を認識するための基本は同じである。
顧客が製品、サービス、ソフトウェア、アイデアを、作業のために使うことを理解するとき、その作業を分析し、成長への鍵となるイノベーション機会を発見することができる。
 
イノベーション機会を発見する ジョブマップを手に、 体系的に価値創造の機会を探し始めることができる。
以下の質問はその探求のガイドとなり、見落としを回避することに役立つ。
始めるべき方法はマップの各段階における現行の最大の欠点・・特に、実行スピード、変化性、アウトプットの品質に関係する欠点・・を考えること。
このアプローチの効果を増すため、議論に参加する専門家・・マーケティング、デザイン、エンジニアリング及び先端顧客・・の多様なチームを招く。
 
作業レベルでの機会 ・作業はより効率的又は効果的な順序で実行できるか?
・ある顧客は他より作業の実行により苦労しているか。(例えば、未熟者と熟練者、年配と若者)
・作業を行うため多様な解決によらなくてはならないことから、どのような苦労や不便を経験しているか。
・特定のインプットやアウトプットの必要性を排除できるか?
・顧客が現在責任を負っている全段階を実行する必要があるか?負担を自動化し又は他の誰かにシフトできないか?
・トレンドが将来の作業実行方法に影響するか。
・いかなる文脈で今日作業実行に最も苦労しているか?(他の)いつ、どこで、顧客は作業を実行することを希望するか?
 
段階レベルでの機会 ・この段階の実行において何が変動性(又は不安定性)を導くか。何が、実行を軌道からはずすか?
・この段階で、ある顧客は他の顧客より苦労しているか?
・この段階の理想的なアウトプットはどのようなものか?
いかなる方法で現在のアウトプットは理想と異なるか?
・この段階は、何らかの文脈で、成功的に実行するのが他より難しいか?
・この段階を実行するための現在の解決の最大の欠点は何か?
・何がこの段階の実行を時間がかかり、不便なものにするか?
 

サービスビジネスがすべき4つの点(2008年4月 p71) 
コメント
4つの要因 @提供(offering)
A財務メカニズム(funding mechanism)
B従業員マネジメント(employee managment)
C顧客マネジメント(customer managment)
 
4つの要因は相互に影響/依存する。  
@提供(offering) 属性:便利さ、ブランドへの親近性、延長時間、場所的近さ、より大きなサービス範囲、低価格。  
顧客が望む経験に焦点をあて、どの属性で競争するかを明確化。
顧客がどの属性を重要視するかを発見する。
すぐれたサービス要素についての考えを共有する顧客を対象とする。
 
どの属性で優位にたち、どの属性で劣後するかを選択する。
あるサービスでの劣後が他のサービスでの優位の燃料となる。
特定の属性を最適化する一方、評価しない属性への過大投資をしない。
 
Wal-Mart 低い価値:店の環境、店員による購入サポート  
高い価値:低価格、種類の多さ  
Commerce Bank 個人顧客で急成長  
焦点は支店を訪れることを重視する顧客(初めて銀行を訪れる若者から時間がないプロ、老人まで)  
低い価値:(ここでは競争しない)
@値段
A製品種類
 
高い価値:
@便利さ(夕方と週末)
A従業員の親切さ(元気な親近感のある銀行員)
B店の雰囲気(愛らしく楽しい)
 
A財務メカニズム(funding mechanism) (1)好ましい方法で顧客にチャージする 顧客が公平/好ましいと感じる方法を創造的に考える。
ex.スターバックスで、雰囲気への投資を、時間ではなく、コーヒー代金で受け取る。
 
(2)オペレーションの省力化と高価値サービスのwin-winの創造 一般的にフリーランチは長続きしない。(すぐに認識され、真似される。)  
驚くほど長持ちする場合がある。
ex.Progressive Casualty Insurance
A:即座に事故現場に向かう

@被保険者を救助し、損害を評価する。(顧客満足度大)
A詐欺的請求・訴訟費用を回避(コスト削減)

B:他の保険会社による見積もりをだす(同社が最低金額の場合は約半分)
事故発生率からしたら適正な保険料
→他の保険会社が低い場合、競争者に赤字を被らせることになる。
 
時間の短縮→@サービスの向上とともにAコストを削減する→しばしば好ましい。  
(3)今費やし後で節約する 先行するオペレーション投資→顧客への附帯サービスが不要になる。   
ソフトウェア産業
A:顧客はサポート費用を負担すべき
B:Intuit
顧客からの問い合わせ→製品開発に生かす(→問い合わせの減少)
 
(4)顧客に働いてもらう ex.セルフサービス給油スタンド、自分で管理する証券口座  
顧客がフルサービスより自らする方を好む状況にする。  
B従業員マネジメントシステム リクルーティング、トレーニング、ジョブデザイン、パフォーマンス管理、その他の要素   
会社が目指すサービス属性を反映するものである必要。  
2つの診断的質問
@何が従業員に合理的にexcellenceを達成できるようにするのか?
A従業員がexcellenceを達成するよう合理的に動機付けるものは何か?
⇒会社のポリシーとプログラムに反映させる。
 
平均的な従業員が成長するようにシステムをデザインする必要。  
Commerce Bank:
(学校の成績ではなく)態度とサービス訓練に重点を置く。
 
(能力ではなく)態度に重点⇒適性能力が低くてもサービスが提供できるようにする設計する必要。  
C顧客マネジメントシステム 顧客もサービス提供に影響を与える。
(建築についての顧客の説明、ファストフードのカウンターでまごつく顧客はその後に並ぶ顧客へのサービスを遅らせる。) 
 
従業員から顧客へ作業を移転する
@能力の差
A顧客には従業員より裁量がある
 
キーとなる質問
@どのような顧客に焦点を置くか
Aどのような行動を希望するか
Bどのようなテクニックが最も効率的に態度に影響するか
 
顧客の適時性が大切
ex.予約制の歯医者、ヒット作品のレンタルビデオ屋
⇒時間遵守に向けた戦術が必要
 
顧客の態度を修正する技術
@技術的(ディスカウント、延滞料)
A規範(恥、プライド)
 
強調するサービス属性と整合する方法で行うことが大切  
要素の統合 サービスデザインの4つの要素の整合が大切。
 
マルチフォーカス企業になる 最適化されたサービスモデルにより、複数のニッチを追及する。
それぞれは、他の劣ったパフォーマンスにより、いくつかの範囲でエクセレンスを達成するようにデザインされる。
 
成長が失速する時(2008年3月 p51) 
コメント
主要な失速要因 戦略の選択か組織的デザインから生じる⇒コントロール可能。  
半分は次の4つの範疇に入る。
@優位なポジションへの捕われ(premium position captivity)
Aイノベーションマネジメントの崩壊(innovation management breakdown)
B早すぎるコアの放棄(premature core abandonment)
C才能有る人材の欠如(talant bench shortfall)
 
@優位なポジションが裏目にでる時(When a Premium Position Backfires) ex.
競争者の破壊的価格や価値のシフト
ブランドの過剰評価
これまでの前提・成功に執着しない。 
長期間成功してきた企業は環境変化から遮断される⇒衰退する製品属性への執着。
他方で、参入者は、違ったそれまで認識されない属性を強調。
Aイノベーションマネジメントが崩壊する時 ex.
R&D資金の削減又は一貫性のなさ
過度に拡散されたR&D
遅い製品開発
新たな基準を策定する能力の欠如
中核的な会社技術との矛盾
過度のイノベーション
バランスがとれ、一貫したイノベーションマネジメントが必要。 
細部の投資と将来のための投資のバランス。
細部の投資とは別に会社レベルのR&Dとイノベーションのための予算が組まれているか。
イノベーションのための予算の一部は既存製品/サービスの低価格のものの創設のために割当てられているか。
イノベーションプロセスはリードタイムが長い⇒欠陥はなかなか現れず、その修復に時間がかかる。
Bコアビジネスが捨てられる時 ex.
財務的多角化
市場飽和についての誤解
オペレーション障害についての誤解
国際的成長により隠された中核的問題
中核的再投資を越える収益成長
飽和状態でも競合のシェアを奪うことができる。
コア市場が飽和していると信じ、コアビジネスモデルにおけるオペレーション障害を新たな、容易に競争しやすく見える分野への移行へのシグナルと見る。
RCAは消費者電子機器分野を捨てる⇒Steve JobsやBill Gates による革新
Kmartが消費財小売を飽和状態と考え、新分野を模索⇒WalMartの台頭
最も「成熟した」ビジネスでさえ若返らせる新たなビジネスモデルの可能性を積極的に開発すべき。
C人材が不足する時 戦略実行に必要なスキルと能力を有するリーダーとスタッフの不足・欠如。  
シニアエグゼクティブが狭い経験基礎しかない場合、戦略的問題への対応ができない。
社内の有力部門からのみの昇進システム。(かつて、日立は重機部門以外からの昇進はなかった。)
 
シニアマネジメントの10〜30%は外部の人間であるのが良い。  
成長失速の危険信号の例 ・自分達の戦略を支える市場と能力についての中核的前提が明記されていない。
・数年間、市場定義の境界と、現在及び将来の競争相手のリストを見直していない。
・数年間、自分達のコア市場の定義と市場シェアの理解を見直していない。
・自分達の製品/サービス属性の主たる顧客グループの評価に変化についてあまりテストしていない。
・顧客の視点の新たな製品及びサービスへの移植において、競合者より効率的でない。
・主たる顧客が、徐々に、我々のブランドやすぐれたサービスに超過額を支払おうとしなくなってきた。
 
知っていることがもはやそうではない時 犯人は、ギャップの存在/拡大についての無知や誤った優先順位からくる、会社の戦略を外部環境の変化に整合させるための基本的仮説設定の失敗。
無知は特にやっかい。
チームが最も長く、最も深くもっていた仮説が、破滅の原因であることが多い。
 
トップとエグゼクティブチームは、ビジョンの開発とその執行が期待されており、仮説を疑わない。
翌年への戦略作的がカレンダーに組み込まれており、深い探索的な検証がなされない。
CEOは不安を表明できない。
 
戦略的仮説の明確化とテスト 戦略的有効性における変化を導くには遅いため、財務分析は意味がない。  
@Aは戦略的仮説を明確にするのに有効。
BCは仮説が継続的関連性と正確性があるかをテストする。
会社の仕事の流れにはめ込まれる。
 
@中核的信念を認識する部隊を作る
多様なクロスファンクションチームに会社とその産業に関する最も深層の仮定を検証させる。
チームには会社に染まっていない若い新しい従業員が重要な割合を占めるのが良い。
・我々が存在する産業は何か?
・我々の顧客は誰か?
・顧客が我々について言っていることを聞いたことがないことを10あげる。
・産業のルールを突破することにより8成功した企業はどこか?
・彼等はどのような因襲をくつがえしたか?
 
A戦略分析を行う
将来の成功の競争的ビジョンの開発。
シニアマネジメントと世界からの優秀なスタッフによる1〜2日のオフサイトでの集まりで行われる。
 
Bシャドウキャビネットを任命する
シャドウキャビネットを作り、エグゼクティブコミティーの会議の前日に集まり、エグゼクティブコミティーと同じ議題を論じる。
 
C戦略的再考のためベンチャーキャピタルを招く。
戦略的仮説に外部の視点を伝える効果的方法は、能力のあるベンチャーキャピタリストにビジネスユニット戦略を検討し、投資検証をしてもらい、潜在的弱さを調査してもらう。
 
戦略における的確性を検証する ビジネスモデルの寿命が短くなっている。
対応するために素早く変化を把握することはより重要になっている。
成長失速への対応こそが、議題のトップにくるべき。
コントロールできる危険を管理するためのより強力な投資を知らない。