シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室TEL(06)6363-1860
MAIL    MAP


論点整理(海外関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)



国際司法共助
★意義 ある国で行われている裁判の進行・審理のために他国の裁判機関が国際的に協力する活動。
その中心は送達と証拠調べについての国際的な司法共助。
@国際司法共助を行う段階
A国際司法共助に基づいて下された外国判決がわが国で承認・執行の段階でも問題。

外国判決の承認・執行の段階では、公示送達によらないで訴訟の開始に必要な呼出しもしくは命令の送達を受けたこと(民訴法118条2号)や手続的公序(同条3号)が要件。
民訴法 第118条(外国裁判所の確定判決の効力)
外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
★法源     ★法源
  ●国際的法源
○多国間条約:
@民事訴訟手続に関する条約(1954年)(「民訴条約」)
A民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約(1965年)(「送達条約」)

日本は昭和45年に各々批准。
○二国間条約
相手国の領事館が任意に送達または証拠調べを実施することを認める条約
@日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約(「日米領事条約」)
A日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約(「日英領事条約」)
B20か国以上の国との間で、交換公文、口上書、先例による国際司法共助についての二国間とりきめを行っている。
○条約や二国間取決めによらないで共助がなされた事例も、相当数存在。 
  ●国内的法源 
@外国裁判所の嘱託に因る共助法(「共助法」)
A民事訴訟手続に関する条約尚dの実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律(「実施法」)
B民事訴訟手続に関する条約尚dの実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する規則(「実施規則」)
○   日本の民事訴訟のための外国における送達、証拠調べについての民訴法108条と184条の規定
民訴法 第108条(外国における送達)
外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする。
民訴法 第184条(外国における証拠調ベ)
外国においてすべき証拠調べは、その国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してしなければならない。
2 外国においてした証拠調べは、その国の法律に違反する場合であっても、この法律に違反しないときは、その効力を有する。
★        ★送達の国際司法共助
  ■日本の事件のために外国で行う送達 
●方法 
@民訴条約により日本の領事館から外国の指定当局を経由する方法(民訴条約締約国の場合)
A送達条約により外国の中央当局を経由する方法(送達条約締約国の場合)
B外国に駐在するわが国の領事館を経由する方法(民訴条約または送達条約の締約国でこの方法に異議を述べていない国の場合。日米領事条約、日英領事条約はこの方法を認める)
C二国間の司法共助取決めによる方法(日本との間に二国間司法共助取決めがある国の場合)
D民訴条約または送達条約の締約国でなく、また二国間条約や二国間司法共助取決めがない外国であっても、具体的な事件において必要性が生じて受訴裁判所の嘱託がなされれば、外交上の努力によって二国間司法共助取決めが結ばれ、それに基づき送達がなされることもある。
  ●民訴条約による送達 
当該外国が同時に送達条約締約国でもある場合、送達条約のほうが簡便であり優先する
⇒送達条約の方法による(送達条約22条)。
日本の領事館⇒外国の指定する当局に要請⇒当該外国の国内法により送達権限がある当局が送達を行う形で実施。
締約国が送達文書が外交上の経路を通じて時刻に提出されるよう他の締約国にあてた通告により宣言した場合:
当該外国に駐在する日本の大使⇒当該外国の外務省に送達要請⇒自国内で定める手続で送達。
送達文書に送達受託当局が用いる言語または両関係国間で合意する言語による翻訳文と、日本の外交官もしくは領事館または当該外国の宣誓した翻訳者の翻訳証明の添付が必要(3条2項、3項)。
任意交付の場合、名宛人が任意に受領しないときは、日本に文書が返送されるが、前述の翻訳文添付があれば、当該外国の国内法による強制的な送達が行われる。
●    ●送達条約による送達
日本の最高裁⇒締約国の中央当局に要請。
送達すべき文書の翻訳文の添付は必ずしも義務的ではなく、義務的なのは国内法送達か特別方法送達の場合でかつ中央当局の要請があった場合に限られ(送達条約5条3項)、任意交付の場合は翻訳文の添付は義務的ではない。
(実務上の取扱いでは、日本が外国からの送達依頼に対して原則として翻訳文の添付を要請していることとのバランスから、外国への任意交付以外の送達を要請する場合には翻訳文の添付を必要的としている。)
翻訳文の添付を行う場合には、当該外国の公用語による翻訳文が必要であるが、民訴条約の場合のような翻訳証明は必要ない。
名宛人(被告)の防御権に対する配慮から、「訴訟手続きを開始する文書又はこれに類する文書」について、被告が出頭しないときは、被告の防御のために十分な期間を置いて、国内法送達(告知も含む)または送達条約の定める他の方法により被告もしくはその住居において実際に交付されたことが立証されるまで、裁判所は裁判を延期しなければらなあい(送達条約15条1項)。 
被告の防御権保障の「最後の砦」として、帰責事由なく訴訟手続開始文書ないしそれに基づく裁判を知らなかった被告に、期間のとかにより失った不服申立権を、一定の要件の下で回復させることを認める。
●領事送達 
●二国間司法共助取決めによる送達

準拠法
法源 平成18年に
「法例」を全面改正し、平成19年1月1日から施行された「法の適用に関する通則法」に。
@法律行為(契約)の準拠法については、当事者による準拠法の選択のない場合には、契約に最も密接に関係する地の法による
A消費者契約および労働契約について消費者と労働者保護の観点から特則
B不法行為の準拠法については、原則として結果発生地法による
C生産物責任および名誉・信用毀損についての特則を設け
D当事者による準拠法の変更や柔軟な準拠法決定のための例外的処理を可能にした
E債権譲渡については譲渡対象債権準拠法に
F隔地的な法律行為の方式、行為能力の制限に関する取引保護、後見開始の審判、失踪宣告、外国人の被後見人に対する日本法の適用などについての規定を整備 
判例による法創造機能
 国際財産法
契約  規定 法適用通則法 第8条(当事者による準拠法の選択がない場合)
前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
2 前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
3 第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
説明 「行為地」という単一の、明確で固定的な連結点に代えて、最密接関連地法というきわめて柔軟なアプローチを採用。

法的安定性や予想可能性よりも具体的妥当性の確保が重視。 
●最密接関連地法の探求と実質的には同様の機能を営んできた黙示意思探求の方法
○契約の類型化と連結点の集中
A:契約の類型ごおtに特定の連結点を強調し、原則としてその法によるとの一般的推定を行う

不動産に関する契約については不動産所在地法
労働契約には常時労務給付地法
銀行取引は銀行営業所所在地法
による推定

B:契約の類型のほか、当事者の国籍、住所、契約の締結地、履行地、目的物の所在地などの個別的事情を考慮し、もっと個別的に決定するか。
一般論としては、可能な限り類型化を促進すべきであるが、いずれも一応の推定であって、争点のいかんや具体的状況によって、より適切な他の方の適用を否定するものであってはならない。
○最密接関係地法の決定と個々の争点
A:争点ごとに異なる準拠地法を適用
vs.複数の争点が同一の事件で争われているときは、複数の準拠法相互間の調整、適応が問題となり、準拠法の適用が複雑になる。
but
いま現に訴訟で問題となっている争点について最も適切な法を適用すべしとする要請を無視することもできない。

明示の指定において分割指定を認めたように、ある争点が特定の国ととくに密接な関係をもつときは、争点ごとの最密接関係地法の決定を認めてよい。
○法の内容と適用の結果の考慮
特定の契約条項の有効性が問題となる場合、当事者はふつう契約条項が有効と期待して契約を締結⇒契約を有効視する法を優先的に適用。
労働契約や消費者契約⇒労働者や消費者に有利な法を優先的に適用。
不法行為   規定 法適用通則法 第17条(不法行為)
不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。
説明 「加害行為の結果が発生した地」:
法益侵害の直接の結果が発生した地

人身・有体物に対する侵害については、通常、当該人・物の所在地が結果発生地。 
知的財産権等の所在地が一義的に明らかでない権利に対する侵害⇒結果発生地の確定は困難⇒各々の権利の性質等に照らして判断。
特許権などの登録された知的財産権については、登録国が結果発生地となるのが通常(最高裁H14.9.26)。
「通常予見することのできないもの」かどうかの判断は、加害者の主観だけではなく、加害者と同一の立場にある一般人を基準に、加害者および加害行為の性質・態様、被害発生の状況等の諸事情に鑑み、客観的・類型的に判断されるべき。

@主観的事情の考慮を認めると、事実上、恣意的な準拠法選択権を加害者に与える結果となる
A加害者の主観的事情をめぐる争いが拘泥化して訴訟遅延を招く恐れ
●合衆国の学説や判例での新たな方法論 
@不法行為の種類・争点のいかんを問わず一律に不法行為地法を適用するのは妥当ではなく、当事者の住所などをも含めて事件に関連を有する複数の連結点を考慮する必要
A法は一定の法目的を実現するためのものであるから、ある法が適用されるかどうかを決定するにあたっては、問題tなっている争点に関する各国(州)の不法行為法の内容とその法目的を考慮する必要。
規定  法適用通則法 第18条(生産物責任の特例)
前条の規定にかかわらず、生産物(生産され又は加工された物をいう。以下この条において同じ。)で引渡しがされたものの瑕疵により他人の生命、身体又は財産を侵害する不法行為によって生ずる生産業者(生産物を業として生産し、加工し、輸入し、輸出し、流通させ、又は販売した者をいう。以下この条において同じ。)又は生産物にその生産業者と認めることができる表示をした者(以下この条において「生産業者等」と総称する。)に対する債権の成立及び効力は、被害者が生産物の引渡しを受けた地の法による。ただし、その地における生産物の引渡しが通常予見することのできないものであったときは、生産業者等の主たる事業所の所在地の法(生産業者等が事業所を有しない場合にあっては、その常居所地法)による。
法適用通則法 第19条(名誉又は信用の毀損の特例)
第十七条の規定にかかわらず、他人の名誉又は信用を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、被害者の常居所地法(被害者が法人その他の社団又は財団である場合にあっては、その主たる事業所の所在地の法)による。
法適用通則法 第20条(明らかにより密接な関係がある地がある場合の例外)
前三条の規定にかかわらず、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたことその他の事情に照らして、明らかに前三条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。
説明 ex.
被害者と加害者の双方が日本に居住する日本人であって、短期の旅行先であるオンタリオ州で事故が偶然に発生
⇒結果発生地であるオンタリオ州法よりも日本法の方がより密接な関係を有する 
「不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していた」場合、原則として当該常居所地が「より密接な関係がある地」と判断される。

@当事者の社会生活の基礎となっている法である常居所地法は当事者にとって密接な関連性を有する。
A当事者の常居所地法の適用は当事者の予見可能性にも適う。
B当事者の同一常居所地法を適用することは当事者間の公平にも適う。
「当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われた」場合、原則として当該契約の準拠法の属する地が「より密接な関係がある地」と判断。

@当事者の予見可能性に資する
A契約の不法行為のいずれと法性決定すべきかという困難な問題や適応問題の発生を回避できる。
規定 法適用通則法 第21条(当事者による準拠法の変更)
不法行為の当事者は、不法行為の後において、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力について適用すべき法を変更することができる。ただし、第三者の権利を害することとなるときは、その変更をその第三者に対抗することができない。
法適用通則法 第22条(不法行為についての公序による制限)
不法行為について外国法によるべき場合において、当該外国法を適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは、当該外国法に基づく損害賠償その他の処分の請求は、することができない。
2 不法行為について外国法によるべき場合において、当該外国法を適用すべき事実が当該外国法及び日本法により不法となるときであっても、被害者は、日本法により認められる損害賠償その他の処分でなければ請求することができない。
説明 法22条は、日本法の累積的適用を規定
法22条1項の趣旨:
不法行為に関する規定は公の秩序に関する規定⇒外国法律によれば不法行為でも、日本法上不法行為とならなければ、救済を付与すべきではない。
通説:不法行為の成立要件のすべてにわたって日本法が累積的に適用される。
国際親族法 
婚姻 規定 法適用通則法 第24条(婚姻の成立及び方式) 
婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
法適用通則法 第25条(婚姻の効力)
婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
離婚 規定 第27条(離婚)
第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。
扶養義務  規定  扶養義務の準拠法に関する法律 第1条(趣旨)
この法律は、夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務(以下「扶養義務」という。)の準拠法に関し必要な事項を定めるものとする。
扶養義務の準拠法に関する法律 第2条(準拠法)
扶養義務は、扶養権利者の常居所地法によつて定める。ただし、扶養権利者の常居所地法によればその者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、当事者の共通本国法によつて定める。
2 前項の規定により適用すべき法によれば扶養権利者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、扶養義務は、日本法によつて定める。
扶養義務の準拠法に関する法律 第3条(傍系親族間及び姻族間の扶養義務の準拠法の特例)
傍系親族間又は姻族間の扶養義務は、扶養義務者が、当事者の共通本国法によれば扶養権利者に対して扶養をする義務を負わないことを理由として異議を述べたときは、前条の規定にかかわらず、その法によつて定める。当事者の共通本国法がない場合において、扶養義務者が、その者の常居所地法によれば扶養権利者に対して扶養をする義務を負わないことを理由として異議を述べたときも、同様とする。
2 前項の規定は、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約(昭和五十二年条約第八号)が適用される場合には、適用しない。
扶養義務の準拠法に関する法律 第4条(離婚をした当事者間等の扶養義務の準拠法についての特則)
離婚をした当事者間の扶養義務は、第二条の規定にかかわらず、その離婚について適用された法によつて定める。
2 前項の規定は、法律上の別居をした夫婦間及び婚姻が無効とされ、又は取り消された当事者間の扶養義務について準用する。
説明 原則:扶養権利者の常居所地法による(2条1項本文)。 
子に対する扶養義務の準拠法に関するハーグ条約(「子条約」)と同様に、常居所地法の原則を導入。

要扶養者が現実に生活の本拠つぃている常居所地の法によるのが要扶養者の保護の必要性に対応することができり、かつ、実効的である。
要扶養者保護の連結政策は、扶養義務が認められない場合に段階的連結(補正的連結)を定めることにより徹底
@常居所地法により扶養義務が認められない⇒A当事者の共通本国法による(2条1項ただし書)⇒BAでも扶養義務者から扶養を受けることができない場合には、日本法による(2条2項)。
●特則 3つの特則
⇒上記の原則がそのまま適用されるのは直系継続間の扶養義務の場合に限られる。
@
A離婚、法律上の別居、無効婚、取消婚の場合における当事者間の扶養義務の準拠法:
離婚その他の婚姻関係の解消につき適用された法律による(4条)。
「離婚に適用された法律」というのは必ずしも法適用通則法27条の離婚準拠法を指すとは限らない。
ex.外国における離婚について婚姻住所地法が適用され、かつ、その離婚がわが国で承認されるとすれば、当事者間に別に共通本国法がある場合にも、その婚姻住所地法を指す。

このような当事者間の扶養は、婚姻関係の解消と密接不可分なものとされることが多く、国際私法上も同一の準拠法によらしめる方が困難な適応問題を生じることが妥当。
B
     

国際関係についての日本での裁判権
損害賠償請求 マレーシア航空事件(最高裁昭和56.10.16) 事案
日本人から外国法人に対する損害賠償請求訴訟。
Aは、昭和五二年一二月四日マレーシア連邦国内で上告会社と締結した航空機による旅客運送契約に基づきペナンからクアラ・ルンプールに向け飛行する上告会社の航空機に搭乗していたが、同日右航空機が同国ジヨホールバル州タンジユクバンに墜落したため死亡した、そこで右Aの妻である被上告人B、子である被上告人C及び同Dの三名は、右航空機の墜落という上告会社の航空運送契約上の債務不履行により右Aが取得した四〇四五万四四四二円の損害賠償債権を各三分の一の割合により相続したとして上告会社に対し各自一三三三万円の損害賠償の支払を求める。 
判断 思うに、本来国の裁判権はその主権の一作用としてされるものであり、裁判権の及ぶ範囲は原則として主権の及ぶ範囲と同一であるから、被告が外国に本店を有する外国法人である場合はその法人が進んで服する場合のほか日本の裁判権は及ばないのが原則である。しかしながら、その例外として、わが国の領土の一部である土地に関する事件その他被告がわが国となんらかの法的関連を有する事件については、被告の国籍、所在のいかんを問わず、その者をわが国の裁判権に服させるのを相当とする場合のあることをも否定し難いところである。そして、この例外的扱いの範囲については、この点に関する国際裁判管轄を直接規定する法規もなく、また、よるべき条約も一般に承認された明確な国際法上の原則もいまだ確立していない現状のもとにおいては、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理にしたがつて決定するのが相当であり、わが民訴法の国内の土地管轄に関する規定、たとえば、被告の居所(民訴法二条)、法人その他の団体の事務所又は営業所(同四条)、義務履行地(同五条)、被告の財産所在地(同八条)、不法行為地(同一五条)、その他民訴法の規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあるときは、これらに関する訴訟事件につき、被告をわが国の裁判権に服させるのが右条理に適うものというべきである。
ところで、原審の適法に確定したところによれば、上告人は、マレーシア連邦会社法に準拠して設立され、同連邦国内に本店を有する会社であるが、Eを日本における代表者と定め、東京都港区ab丁目c番d号に営業所を有するというのであるから、たとえ上告人が外国に本店を有する外国法人であつても、上告人をわが国の裁判権に服させるのが相当である。それゆえ、わが国の裁判所が本件の訴につき裁判権を有するとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、右と異なる独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない
離婚事件の判例 最高裁昭和39.3.25 本件は朝鮮人(韓国人)夫婦間の離婚訴訟であるが、上告人の主張によると、妻たる上告人はもと日本国民であつたところ、昭和一五年九月当時中華民国上海市において朝鮮人である被上告人と婚姻し、同市において同棲をつづけた後、昭和二〇年八月終戦とともに朝鮮に帰国し被上告人の家族と同居するに至つた、しかし上告人は慣習、環境の相違からその同居に堪えず、昭和二一年一二月被上告人の事実上離婚の承諾をえて、わが国に引き揚げてきた、爾来被上告人から一回の音信もなく、その所在も不明である
思うに、離婚の国際的裁判管轄権の有無を決定するにあたつても、被告の住所がわが国にあることを原則とすべきことは、訴訟手続上の正義の要求にも合致し、また、いわゆる跛行婚の発生を避けることにもなり、相当に理由のあることではある。しかし、他面、原告が遺棄された場合、被告が行方不明である場合その他これに準ずる場合においても、いたずらにこの原則に膠着し、被告の住所がわが国になければ、原告の住所がわが国に存していても、なお、わが国に離婚の国際的裁判管轄権が認められないとすることは、わが国に住所を有する外国人で、わが国の法律によつても離婚の請求権を有すべき者の身分関係に十分な保護を与えないこととなり(法例一六条但書参照)、国際私法生活における正義公平の理念にもとる結果を招来することとなる。(最高裁昭和39.3.25)

外国判決等の承認
外国判決等の承認 問題 外国で訴訟が定期されたとの通知を受けた場合、その外国で費用・労力を費やしてでも応訴するか(その外国に拠点がなければ、弁護士の選任、通信・連絡など費用もかかるしその手間も大変)、無視して放置しておくかの判断。
日本で承認・執行されない⇒将来その外国に進出する計画でもない限り放置しておいてもほとんど実害はない。
日本で承認・執行される⇒放置しておくと、当該外国での訴訟は敗訴し、その外国判決の承認・執行を日本で求められてきたら、実体的な主張が出せず手遅れとなる。
規定 民事訴訟法 第118条(外国裁判所の確定判決の効力)

外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
要件 @裁判権 間接的国際裁判管轄の存在:
外国裁判所が日本の国際裁判管轄の準則に従って国際裁判管轄を有すること。
外国判決に日本の判決と同様の既範力を付与し、必要があれば執行判決(民事執行法24条)により執行力を付与する外国判決承認制度の趣旨
従来の通説:直接的一般管轄権と間接的一般管轄権は一致する。
日本に直接的一般管轄権を認めるような場合は、外国にも一般管轄権を認め、そのような外国でなされた裁判は日本で承認するが、日本に一般管轄権を認めないような場合には、仮にある外国が自国に一般管轄権を認めて裁判をしても、その裁判は日本の国際手続上、間接的一般管轄権の要件を備えていないとして承認を拒否する。
A送達 「応訴」は送達の瑕疵を治癒するための要件であることから、応訴管轄を生じさせるための応訴までは要求されず、外国裁判所での管轄地外の抗弁等の本案前の抗弁を提出したにすぎない場合でもよい。
民訴法118条2号の「応訴」は、起訴の了知という手続保証を被告に担保するものであれば足り、同条1号の間接的国際裁判管轄を生じさせる「応訴」管轄とは区別される必要。
B公序良俗 民訴法118条3号の公序良俗の範囲は、国内法しか関係しない民法90条の公序良俗の範囲より狭い。
公序良俗に反することを理由にその承認・執行を拒絶するのは、外国判決を承認・執行することが我が国の法秩序にとって非常に困る結果をもたらす場合に限定される。

そもそも日本の外国判決の承認・執行制度は、外国判決の内容の当否を吟味しない「実質的再審査禁止」を大原則にしている。
民事執行法 第24条(外国裁判所の判決の執行判決)
外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
公序良俗に反するかの判断にあたっては、外国判決の主文だけでなく理由も審査の対象となる。
C相互保証 当該外国判決を下した外国が我が国と同等の条件(つまり、民訴法118条の条件)で我が国の判決を承認・執行してくれることを要件としたもの。
「我が国の裁判所がしたこれと同種類の判決が同条各号の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力を有するものとされていること」(最高裁昭和58.6.7)