シンプラル法律事務所
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論点整理(会社法(田中))

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

★第1章 序論・・・会社と会社法
◆第1節 会社とは何か  
     
◆第2節 株式会社・・・その基本構造、特徴および法の課題  
     
◆第3節 持分会社  
  ■1 意義 
合名会社、合資会社および合同会社
持分会社の構成員は「社員」
社員の地位が「持分」
  ■2 持分会社の特徴 
     
  ■3 社員の責任と持分会社の種類 
合名会社:
社員全員が、会社の債務について無限責任を負う。

会社債権者が会社財産から満足を得られない場合、社員は連帯して、会社の債務を弁済する責任を負う。
合資会社
合同会社
     
◆第4節 会社法の法源および構造  
     
     
★第2章 会社法総則  
     
     
◆第4節 会社の使用人  
  ●(1) 総説 
  ●(2) 支配人 
  ◎  ◎(a) 意義 
  ◎(b) 権限 
  ◎  ◎(c) 支配人の義務
会社法 第12条(支配人の競業の禁止)
支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自ら営業を行うこと。
二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
三 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。
四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。
  ◎(d) 表見支配人 
  ◎コラム:支払人の意義 
  ●(3) ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人
  ●(4) 物品の販売等を目的とする店舗の使用人 
     
     
     



株式
株式の評価  ■評価の必要性(田中p93)
最高裁H23.4.19:
市場株価がある場合は原則としてそれによって評価売すrことが合理的であるとするが、
市場株価が企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情がある場合は、例外。
■DCF法
株式が価値を持つ理由:
株式会社が事業活動を通じてお金を稼ぎ、そして株主が、剰余金の配当等を通じてその分配に与れるから。

会社が将来どれだけのお金を稼ぐか(=将来のフリー・キャッシュ・フロー(FCF)。おおむね、会社の現金収入から賃金や投資など事業に必要な現金支出を差し引いた額)を予測し、その金額を、投資のリスクを加味した適切な割引率で割り引くことにより、当該会社の現在価値(企業価値)を求め、そこから会社の負債の額を差し引いて株主価値を決める。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法
■DFC法以外の株式評価手法
@配当還元方式:株主に対して将来支払われる配当の額を予測し、これを株式投資のリスクを反映した割引率で割り引いて、1株当たりの株式の価値を算定。
A収益還元方式
B類似会社批准方式
C純資産額方式
   

★第3章 株式と株主
     
     
     
     
◆第5節 投資単位の調整(128頁)  
     
     
     
★第4章 機関
  ■1 総説 
  会社法は、各会社が、株式の併合や分割によって、発行済株式数(ひいては1株当たりの価値)を調整する自由を認めている。
また、一定数の株式を一単元とし、単元に満たない株式については限定的な権利んぼみを認める制度(単元株制度)を採用することもできる。
  ■2 株式の併合・分割
●    ●(1) 意義 
規定 会社法 第一八〇条(株式の併合)
 株式会社は、株式の併合をすることができる。
2株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
四 効力発生日における発行可能株式総数
3前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
4取締役は、第二項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
株式の併合(180条1項):
数個の株式(たとえば10株)を合せてそれよりも少数(たとえば1株)の株式にすること。
株式の分割(183条1項):
その逆に、既発行の株式を分割してそれよりも多い数の株式にすること。 
  ●(2) 株式の併合の手続 
  ◎(a) 株主総会の特別決議 
株主総会の特別決議により、
@併合の割合(たとえば、100株を1株にする場合、併合の割合は100分の1)や
A株式併合の効力が生じる日(効力発生日)
等を定める必要(180条2項、309条2項4号)。
たとえば、併合割合が10分の1の株式併合⇒9株以下しか株式を持たない株主は株主の地位を失う⇒株主総会の特別決議を要求。
  ◎  ◎(b) 発行済み株式総数に関する規制 
株主総会決議においては、効力発生日における発行可能株式総数(113条参照)を定める必要(180条2項4号)。
公開会社では、当該総数は、効力発生日における発行済株式の総数の4倍を超えることができない(180条3項)。

公開会社では、原則として取締役会の決議によって新株の発行をすることができるが(201条1項)、既存株主の持株比率の低下の限界を画すため、発行可能株式の総数は発行済株式の総数の4倍を超えてはならないものとされている。
  ◎(c) 株主の保護
単元株制度をとる会社が、併合により端数となる株式が単元未満株式に限られるような株式の併合をする場合(ex.100株を1単元とする会社が10分の1の割合の株式併合をする場合)は、適用されない。
←この場合、株主の利害に与える影響が小さい。
@端数株式の買取請求権
A差止請求権
B事前の情報開示
C事後の情報開示
  ◎コラム3−21:株式の併合に関する法改正 
株式の併合は、株式の割合の分母を大きくすることによって、併合後は大部分の株主の保有株式を1株未満の端数にするという形で、少数派株主の締め出し(キャッシュ・アウト)の手段として用いることができる。

平成26年改正により、端数株式の買取請求など、株主保護の手続を創設。
  ◎(d) 株式の併合の効力発生 
株式の併合は、会社の定めた効力発生日(180条2項2号)に、効力を生じる(182条1項)。
会社は、効力発生日に、発行可能株式総数についての定め(180条2項4号)に従い、定款の変更をしたとみなされる。
     
     
  ■3 株式無償割当て 
     
  ■4 端数の処理 
     
  ■5 単元株制度 
  ●(1) 意義 
単元株制度:
株式会社が定款により、一定数(たとえば100株)の株式を一単元とし、単元株主には完全な権利を認めるが、単元に満たない株の株式しか有しない株主(単元未満株主)に対しては限定された権利のみを認める制度。
単元未満株主には議決権がない(189条1項)⇒会社は株主総会の招集通知を発しなくてよくなるなど(298条2項かっこ書、299条1項参照)、株主の管理のための費用を節約できる。
but
単元未満株主も、最低限、会社から配当等の経済的利益を受ける権利は有する。

会社が投資単位を現在より大きくしたいが、株式の併合によって多数の株主の地位を奪うことに抵抗があるときなどは、単位株制度の採用が有効。
単位株制度を採用するには、
@定款で一単位の株式の数を定めなくてはならない(188条1項)。
A一単元の発行数は、1000を超えてはならない。
B種類株式発行会社では、一単元の株式数は種類ごとに定める。
  ●(2) 単元未満株式の権利 
議決権がなく、
株主提案権など、議決権を前提にした権利も有しない。
それ以外の株主権については、原則としてすべて有するが、
定款で排除することができる。
  ●(3) 単元未満株主の投下資本回収方法 
単元未満株主の権利は制限される⇒その譲渡は実際上困難となるおそれがある⇒単元未満株主はいつでも会社に対して保有単元未満株式の買取りを請求することができる(単元未満株式の買取請求権(192条))。
     
     
     
     
     
     
     
     
◆第3節 取締役・取締役会  
■1 総論・・・業務執行の決定および業務の執行
■    ■2 取締役
  ■3 取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)における業務執行の決定および業務の執行 
□1 総説 
□  □2 取締役会 
□3 代表取締役 
  ●(1) 意義 
  ●(2) 選任・終任 
  ●(3) 権限
  ●(4) 代表権の制限に反する行為の効力 
  ◎(a) 問題の所在 
設例
@Y株式会社は、取締役会規則により、会社が保証を行うときは常に取締役会の事前承認を要するとしていた。
Y会社の代表取締役Aは、Y会社の関連会社が、X銀行から50万円の借入をするに際して、Y会社を代表して当該借入金債務を保証したが、取締役会の承認を得ていなかった。
A@の場合で保証金額がY会社の総資産の20%に達する場合は?
  ◎(b) 内部的制限に反する場合
取締役会規則という、会社内部の制限も、会社内部では有効。
制限違反⇒代表取締役の任務懈怠(423条1項)
but
善意の第三者には対抗できない(349条5項)。
第三者に重過失⇒対抗できると解すべき。

設例@の場合、
@Y会社がこのような規則を有しており、かつ
AAが当該規則に反して取締役会の承認を得ずに取引をしたことをX銀行が知っていたか、または重過失で知らなかった場合を除き、
当該保証は有効になる。
会社法 第349条(株式会社の代表)
4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
  ◎(c) 362条4項違反の場合 
  ◎  ◎(d) その他の制限違反の行為の効力 
  ●(5) 代表権濫用 
  ◎(a) 意義 
代表取締役が、その権限を自己または第三者の利益のために利用する行為。

当該行為自体は、代表取締役の権限の範囲内で行われている点で、代表権に対する制限に違反して行為した場合とは異なる。
  ◎  ◎(b) 代表権濫用の行為の効力
判例:
民法93条(心裡留保)を類推適用し、
原則的に有効であるが、
相手方が代表取締役の真意(濫用目的であること)を知りまたは知りうべきとき(悪意または有過失のとき)は無効(最高裁昭和38.9.5)。
代表権濫用の行為は
●    ●(6) 代表取締役の不法行為 
  ●(7) 表見代表取締役 
     
     
□4 代表取締役以外の業務執行取締役 
■    ■4 非取締役会設置会社における業務の決定および業務の執行
■    ■5 利害対立の場面における規制 
  □1 総説 
取締役は、株式会社に対して善管注意義務(330条、民法644条)、忠実義務(355条)を負っている。
これらの義務の解釈として、取締役は一般に、会社の利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図ってはならないという義務を負う。
そうした一般的規制に加えて、会社法は、取締役と会社の利益が対立しうる一定の場合(競業・利益相反取引・報酬等)について、会社の利益を保護するため、特別の規定を置いている。
  □2 競合避止義務(p237)
  ●(1) 総説 
  ●(2) 規制の範囲
  ●(3) 承認の方法 
  ●(4) 競業の効果 
  □3 利益相反取引(p239)
  ●(1) 総説 
@取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとするとき、または
A株式会社が取締役の債務を保証することその他、取締役以外の者との間において会社と当該取締役との間において会社と当該取締役が相反する取引をしようとするときは、
・・・取締役会設置会社では取締役会の承認が必要。
  ●(2) 直接取引
  ◎(a) 意義 
取締役が自己または第三者のために会社と取引をする場合、自ら会社を代表するときはもちろん、他の者が会社を代表するときにも、法定の決議機関の承認を得させることとした。

取締役としての影響力を利用して、取引の条件を自己または第三者に有利、会社に不利なものにするおそれ。
  ◎(b) 規制の対象 
取締役が自己または第三者のために会社との間で行う取引(365条1項2号)
「ために」とは、名義でなく、計算のこと。
計算説でも、取締役が会社と取引をするのでなければ、356条1項2号の適用はない。
ex.
A・B両会社の取締役であるYが、A会社を代表して、Zが代表するB会社と取引
⇒B会社の法定の決議機関の承認が必要だが、A会社では不要。
A会社の取締役YがB会社の全株式を保有⇒B会社を代表するのがY以外の者であったとしても、Y自身がA会社と取引する場合と同視できるとするか、または間接取引(法356条1項3号)に該当(A会社が、A会社とYの利益が相反する取引をしている)ことを理由に、A会社の法定の決議機関の承認が必要。
YがB会社の過半数の株式を有していれば、A会社の法定の決議機関の承認が必要とする見解。
YがB会社の主催者としてB会社を支配しているときは、A会社の機関の承認が必要とした裁判例(大阪高裁H2.7.18)。
〜実質的に考えている(MKA)。
●    ●(3) 間接取引
  ◎(a) 意義
株式会社が、取締役の債務を保証するなど、取締役以外の者との間で会社と取締役の利益が相反する取引(間接取引)を行う場合には、たとえ当該取締役は取引をしていなくても、取締役としての影響力を利用して、自己の利益のため会社が不利な取引をするように仕向けるおそれがある。
⇒決定の決議機関の承認が必要。
  ◎(b) 規制の対象 
取締役の債務を会社が保証する場合(356条1項3号)
会社が取締役の債務を引き受ける場合や、物上保証をする場合も同様。
上記以外に、何が「会社と取締役の利益が相反する取引」に当たるか?
     
  ●(4) 規制の例外 
  ◎(a) 定型的に会社を害するおそれのない取引
取締役が会社に財産を贈与する場合
無利息・無担保で金銭を貸し付ける場合
普通取引約款により一般の顧客と同一の条件で取引をする場合
のように、定型的に会社を害するおそれのない取引について、利益相反取引の規制はかからない。
A:定型的に会社を害するおそれがないとはいえない取引であっても、取引の具体的な条件に鑑み、会社にとって公正・合理的であると認められる場合は、規制の適用はない。
vs.
取引の公正さは容易に判断できるものではなく、それを判断させるにも、当該取引は利益相反取引であるとして、法定の決議機関の承認は必要。
  ◎(b) 株主全員の同意を得た取引
  ●(5) 承認の方法 
  ●(6) 利益相反取引の効果
  ◎(a) 取締役の責任 
利益相反取引について、法定の決議機関の承認を得ない場合はもちろん、
承認を得た場合でも、
取引により会社に損害が生じたときは、取締役の責任が生じうる(法423条1項)。
  ◎(b) 規制違反の取引の効力 
会社と取締役との間の取引が、法定の決議機関の承認を得ていなかった場合⇒会社は取引の無効を主張することができる
取締役の側からは無効を主張できない。
間接取引の場合は、第三者が取引の当事者になる⇒取引の安全を保護するため、無制限に会社の無効主張を認めるべきではない。
判例:会社が取締役の第三者に対する債務を引き受けた場合について、会社は当該第三者の悪意(当該取引が利益相反取引の要件に該当し、かつ、取締役が法定の決議機関の承認を受けていないことを知っていること)を主張、立証して初めて、当該取引の無効を主張できる(相対的無効説)。
  ●(7) 利益相反取引の開示 
     
■    ■6 取締役の義務および責任
□1 総説
□2 取締役の義務 
□3 義務の内容の詳細 
●(1) 総説

  
  ●(2) 注意深く業務執行の決定を行う義務・・・経営判断原則
取締役が、取締役会の構成員として、また業務執行の決定を委任された業務執行取締役として、会社の事業活動に関する決定(いわゆる経営判断)を行う際には、善良な管理者の注意をもってこれを行う義務がある(法330条、民法644条)。
◎経営判断原則 
事業経営はリスクを必然的に伴うもの⇒経営判断の結果として会社に損害が生じたからといって、取締役の義務違反が容易に認められるとすれば、経営は萎縮し、また取締役のなり手もいなくなり、結果として会社・株主の利益とはならない。
⇒経営判断については、取締役に広い裁量が認められるべきであり、その判断の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役の善管注意義務に違反するものではない(最高裁H22.7.15)。
=経営判断の原則。
「著しく不合理」かどうかの審査は、経営判断がされた当時における、当該会社の属する業界の通常の経営者の有すべき知見・経験を基準に、これを著しく下回っているかどうかによって判断すべきであり、その後に得られた知見に基づく(後知恵の)審査をしてはならない(東京地裁H16.9.28)。
コラム(田中p260)
米国で発展

@経営の専門家でない裁判所が経営判断の合理性を審査することは困難
Aそれにもかかわらす、裁判所が経営判断の合理性を厳格に審査しようとすると、取締役は過剰に保守的な経営に陥る危険があり、それは一般に、高いリターンを求めて会社に投資する株主の利益にはかなわない
B法的責任を厳格に課さなくても、取締役は、会社の利益となるような経営判断をする動機を有すると考えられる(よい経営判断により会社の業績が向上すれば、取締役の報酬や地位の上昇につながりうるほか、自尊心も満足するであろう)
経営判断の過程面内容面とを区別し、過程面(十分な情報収集や分析・検討をしていかどうか)については、裁判所はそれが「合理的」かどうかを審査し、内容面については「著しく(または明らかに)不合理」かどうかのみを審査すべきとする考え方
vs
経営判断に際してどれだけの情報を集め、どれだけの検討をすべきかとういこともまた、経営判断であって、裁判所がそれについて立ち入った審査を行うことは、取締役が情報収集や検討に時間をかけすぎるという形で過剰に保守的な経営に結びつく危険が大きい。

最高裁H22.7.15が示したように、過程面と内容面とで審査基準に差異を設けることなく、いずれについても、裁判所は「著しく不合理」かどうかの審査をするにとどめるべき。
◎経営判断に関する裁判例 
◎利害対立のある場面の経営判断 
経営判断の対象について取締役が会社と対立する利害関係を有する場合には、取締役が会社に不利益な判断をする危険が大きい
経営判断原則は適用されず、裁判所は、当該判断の合理性について立ち入った審査を行うべき(大阪地裁H25.1.25(判時2186号):取締役が会社の資産(他社の株式)を自己に近しい者に売却した事例において、当該資産の価格を詳細に認定し、廉価売却であったとして取締役の責任を認めた。また、東京地裁H15.5.22(判時1835号)では、代表取締役が会社をして自己の関連企業に融資をさせたことにつき、責任が認められている)。
経営判断の対象となる行為が取締役会の決議によって行われる場合、特別利害関係人である取締役自身は、議決に加われない(法369条2項)。
but
その場合でも、他の取締役が、当該取締役に従属する地位にいる場合(業務執行において指揮・監督を受けていたり、経済的に従属する近親者である場合など。他の取締役の過半数が当該取締役に従属していれば、取締役会自体が当該取締役に従属していると考えてよかろう)には、そうした従属関係から会社に不利益な経営判断を行う危険がある。
⇒裁判所は、経営判断の合理性について立ち入った審査を行うべき。
◎銀行業の特殊性 
最高裁は、銀行業についてはその高い公益性から、経営判断原則が適用される余地は限定的なものにとどまると判示。
●(3) 法令遵守義務 
会社法 第三五五条(忠実義務)
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
ここにいう「法令」とは、
@取締役を名宛人としてその義務を定める規定に限らず、
A株式会社を名宛人とし、株式会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定を含む(最高裁H12.7.7)。 
違法な業務執行またはその決定に自ら関与していない取締役は、法令遵守義務違反とはならないが、@監視義務違反またはA内部統制システム整備義務違反のために、責任を負うことはある。
◎コラム:法令違反と過失
最高裁H12.7.7は、取締役が法令違反を認識し得なかったと認められる場合に、過失が否定されるとしたもの。
法令違反について過失の有無が問題となる場合:
@法理違反を認識しなかった場合
A当該行為が法令違反となる可能性には気づいているが、法解釈が不明であったり争いがあるため、弁護士等の専門家の意見を徴しても、果たして当該行為が法令違反かは確実ではない(適法とされる可能性も十分ある)場合。
Aの場合、取締役は、会社が法令違反のリスクをとることの利益と不利益とを比較考量(費用便益計算)し、当該行為の決定時点において、当該行為をするほうが会社の利益になると合理的に判断した場合は、当該行為をしても過失はないと解すべき。
〜過失は、単に結果を予見できたというだけではなく、結果回避義務に違反したことを意味するところ、上記の場合は、取締役には結果(法令違反)を回避する義務はなかったと評価できる。
but
取締役は費用便益計算をするに際し、会社にとっての不利益を、当該行為が外部に発覚する確率でディスカウントすることは許されない(すでに発覚している行為が、裁判所によって法令違反と判断される確率でディスカウントすることは許される)と解すべき。

取締役が外部に発覚しない形で(密かに)法令違反を行っても、法解釈の明確化に役立たず、社会に何の利益も生じないから、取締役がそうした行為をすることは、たとえ会社の利益になると期待できるときであっても許されないと解すべき。
(東京地裁H8.6.20は、違法行為の露見を防ぐためにさらに違法行為を重ねた取締役の責任を認めた。)
会社が外国で事業を行う場合には、当該外国において会社が遵守すべき当該国の法令も、法355条により取締役が遵守すべき「法令」に含まれる(大阪地裁H12.9.20)。 
  ●(4) 監視義務 
◎総説
取締役会設置会社の取締役会は、会社の業務を監督する職務を負っている⇒取締役会の構成員である個々の取締役も、代表取締役等による業務執行を監視する義務(監視義務)を負う(最高裁昭和48.5.22)。 
取締役は、取締役会に上程された事項にとどまらず、業務執行一般についてこれを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集しまたは招集することを求め(法366条)、取締役会を通じて会社の業務が適正に行われるようにする義務を負う。

上記判例は、取締役会を開催せず会社の業務を専断していた代表取締役が任務懈怠により第三者に与えた損害について、他の取締役も、監視義務違反による責任を負うとした(法429条1項の責任を肯定)。
非取締役会設置会社の取締役も、善管注意義務・忠実義務の一環として、業務執行の監視義務を負う(新潟地裁H21.12.1)。
◎信頼の原則 
通常、会社の業務は、業務執行取締役や使用人の間で分担。
⇒各取締役は、他の取締役または使用人が担当する業務については、その内容につき疑念を差し挟むべき特段の事情がない限り、適正に行われていると信頼することが許され、仮に当該他の取締役または使用人が任務懈怠をしたとしても、監視義務違反の責任は負わない(大阪地裁H12.9.20)。

信頼の原則。
but
取締役または使用人の任務懈怠が、内部統制システムの不備のために起きた場合、他の取締役は、内部統制システムの整備義務違反による責任を負うことがある。
監視義務違反の履行方法 
  ●(5) 内部統制システムの整備義務 
◎総説 
事業規模が大きくなった株式会社では、取締役が自分で会社の業務全部を監視することは非現実的

そのような会社の取締役は、善管注意義務・忠実義務の一内容として、会社の業務の適正を確保するために必要な体制(内部統制システム)の整備をする義務を負う。
◎会社法の規定 
◎内部統制システム整備についての取締役の裁量 
最高裁H21.7.9は、会社の従業員による不正行為(売上の架空計上)について、代表取締役の内部統制ステムの整備義務違反の有無が問題とされた事例で、代表取締役は通常想定される不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていたと認め、本件は、従業員による通常の想定を超えた巧妙な偽装工作がされたものであり、代表取締役がその発生を予見すべきであったという特別な事情も見当たらないとし、代表取締役の義務違反(過失)を否定。
内部統制システムの整備には費用があっかる⇒システムの内容は、対費用効果を考慮して決定する必要があり、高度な経営上の知見・経験を必要とする。⇒どのような内部統制システムを整備するかについては、取締役に広い裁量が認められるべきであり、義務違反の審査は、経営判断原則の枠組み(=「著しく不合理」かどうか)によって行うことが適当。
but
会社が過去に不正行為を経験しながら、何らその再発を防止する体制ととらなかったため、同種の不正行為が繰り返された場合のように、当該体制を整備しなかった取締役の判断が著しく不合理であるといえる場合は、取締役の義務違反が認められる(名古屋高裁金沢支部H17.5.18:管理体制の不備により法令違反の食品製造が繰り返された末、食中毒が発生した事例)(大阪高裁H27.5.21:代表取締役が資金の不正利用を行ったにもかかわらず、当該代表取締役を解職せず、再発防止策もとらなかったために不正利用が繰り返された事例(セイクレスト事件))。
◎金商法の内部統制 
金商法上の内部統制は、会社法におけるような業務の適正を確保するための体制一般を指すものではなく、そのうち、財務情報の適正を確保するための体制をいう。
  ●(6) 親会社取締役の子会社に対する監督義務 
子会社がその取締役や使用人のして違法行為等により損害を被れば、保有する子会社株式の減価を通じ、親会社も損害を被る。
⇒親会社取締役は、自ら違法行為を指示しない限りは子会社の経営に全く無関心でいてよいという解釈は妥当でない。 
親会社取締役は、子会社の業務を直接感得する法的権限はもたない。
but
株式保有を通じて親会社が子会社に対して有する影響力を行使して、子会社の取締役会に対し、一定水準の内部統制システムを整備するよう指示するといった形で、その業務を監督することは可能。

親会社取締役は、親会社bに対するl善管注意義務・忠実義務の一内容として、相当の範囲で、子会社の業務を監督する業務を負うと解すべき。
平成26年改正後の会社法は、内部統制システムを、「株式会社の業務並びに株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」と定義(法362条4項6号等)。

子会社を有する株式会社の取締役は、相当の範囲で子会社を監督する義務を負っていることを前提にした規定と解すべき。 
親会社が子会社の業務をどこまで監督すべきかは、当該子会社の規模や重要性のほか、監督に要する費用や子会社の独立性の尊重(親会社がが子会社の業務を過度に監督すると、子会社の役職員のやる気を損なうかもしれない)といった反対の考慮要素も踏まえて決定する必要があり、高度の経営上の知見・経験を要する。

子会社に対して行う監督の内容・程度については、親会社取締役に広い裁量が認められ、義務違反の審査は、経営判断bの枠組みによって行うべき。
  ●(7) 会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図らない義務 
取締役は、善管注意義務・忠実義務の一内容として、株式会社の利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図ることをしないという一般的な義務を負う。 
取締役が職務上知った会社の営業秘密を、自己または第三者のために利用することは禁じられる(大阪高裁H6.12.26)。
◎コラム:従業員の退職勧誘(引き抜き)、会社の機会(田中p270) 
◎従業員の退職勧誘(引き抜き)
会社を退任して自ら事業を始めようとしている取締役が、会社の従業員(当該取締役の部下であることが多い)に対し、一緒に退職して事業に参加するよう勧誘すること(いわゆる引き抜き)(A)

自己の利益のため会社の利益を害する行為であり、当然に善管注意義務・忠実義務に違反するという裁判例が多い(東京高裁H1.10.26、前橋地裁H7.3.14等)。
取締役は仕事上のノウハウの伝授等、職務上要求される以上のものを部下に対してつぎ込んでいる場合があり、従業員を会社の所有物のようにしか見ない考え方は妥当ではない
⇒勧誘行為を当然に違法とするのではなく、取締役と当該従業員との関係や退任・勧誘に至った経緯等の事情を考慮し、不当な勧誘のみが義務違反とすると解する学説(江頭)(B)。
(←従業員が会社に抱え込まれるのでなく、むしろ一定の自律性をもつチームを構成し、当該チームが企業間を自由に移動することができたほうが、組織の柔軟性を確保し、従業員の技能形成を促す等の点から望ましいとする企業統治の経済理論)
ABいずれの立場でも、取締役が従業員に対し退職を勧誘せず、単に自分が退任して事業を始める意図であることを伝えただけでは、たとえそれが契機になって多くの従業員が退職したとしても、取締役の責任は生じない(東京地裁H5.8.25)。
取締役の退任後に、従業員を勧誘することは自由。
◎会社の機会
取締役が第三者から、会社の事業の部類に属する取引ではないものの(それゆえ、356条1項1号の競業規制には抵触しない)、会社にとって有益たりうる資産ないし事業を取得する機会を提供された場合に、個人的にこれを取得することが許されるか?
取締役が、@会社の資産・情報を利用して当該機会を取得したとか、Aもともと当該機会を取得する職務を会社に負っていたのにそれに違反して個人で取得したといった場合(大阪高裁H6.12.26)⇒善管注意義務・忠実義務の違反となる。
but
当該第三者が、取締役個人と事業を行う趣旨で機会を提供したような場合は、取締役の事業活動の自由(退任後の事業活動のための準備活動の自由も含む)に配慮し、原則として義務違反には当たらないと解すべきではないか。
  □4 任務懈怠責任 
  ●(1) 総説 
  ●(2) 任務懈怠責任の要件 
  ●(3) 任務懈怠責任に関する特則
  ◎  ◎(a) 競業避止義務違反の場合 
  ◎  ◎(b) 利益相反取引の場合
利益相反取引によって株式会社に損害発生

@356条1項の取締役(=自己または第三者のために会社と取引(直接取引)をした取締役か、または間接取引における会社と利益の相反する取締役)
A会社のため当該取引をすることを決定した取締役
B当該取引の承認決議に賛成した取締役
は、任務懈怠をしたと推定される。
取締役の側が、任務懈怠がないことを主張、立証して責任を免れることは可能。
     
     
◆第6節 会計監査人 (p292〜)
■      ■1 意義 
会計監査人の経営陣からの独立性を確保するため、会計監査人の選任・就任および報酬等の決定には、監査役(監査役会設置会社では監査役会・・・監査機関)が関与。
 
  ■2 選任・終任、株式会社との関係 
  ●(1) 選任 
  ◎(a) 選任方法 
株主総会の決議によって選任(329条)。
  ◎  ◎(b) 資格
  ◎(c) 選任議案等の内容の決定権
株主総会に提出する会計監査人の選任議案の内容は、監査機関が決定する(法344条、399条の2第3項第2号、404条2項2号)。
会計監査人の解任議案および会計監査人を再任しない旨の議案についても同様(同条)。

会計監査人の選任や交替のプロセスを経営権が支配することを防ぐことにより、会計監査人が経営陣から独立した立場で、実効的な監査を行えるようにする趣旨。
規定 会社法 第三四四条(会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定)
監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。
2監査役が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監査役が」とあるのは、「監査役の過半数をもって」とする。
3監査役会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。
  ◎(d) 意見陳述権 
  ●(2) 株式会社との関係
  ◎(a) 委任関係 
  ◎  ◎(b) 任期 
会計監査人の人気は、1年(厳密には、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで)であるが(338条1項)、株主総会で不再任の決議をしない限り、自動的に再任される(388条2項)。
不再任議案の決定権も監査機関にある。
規定 会社法 第三三八条(会計監査人の任期)
会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。
  ◎(c) 報酬等 
  会計監査人の報酬等は、会計監査人と株式会社の間の契約で定められる。
報酬等の決定には、監査機関の同意が必要。
←会計監査人が十分な監査を行えないような低い報酬額にされるおそれ。
but
監査機関には報酬等の決定権までは与えられていない。
取締役が決めた会計監査人の報酬内容に監査機関が同意しない場合、会計監査人は、報酬を受け取れないことになる。
  規定 会社法 第三九九条(会計監査人の報酬等の決定に関する監査役の関与)
取締役は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
2監査役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査役会」とする。
  ●(3) 終任 
  ◎(a) 就任事由 
任期が満了し、かつ株主総会で不再任の決議がされれば、会計監査人は退任する(338条1項2号)。
・・・・
  ◎(b) 解任 
会計監査人の解任は、いつでも、株主総会の決議(定足数要件が厳格化された普通決議)によって行える。
解任議案の決定権は、監査機関にある。
  ◎(c) 意見陳述権 
会社法 第三四五条(会計参与等の選任等についての意見の陳述)
会計参与は、株主総会において、会計参与の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができる
2会計参与を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。
3取締役は、前項の者に対し、同項の株主総会を招集する旨及び第二百九十八条第一項第一号に掲げる事項を通知しなければならない。
4第一項の規定は監査役について、前二項の規定は監査役を辞任した者について、それぞれ準用する。この場合において、第一項中「会計参与の」とあるのは、「監査役の」と読み替えるものとする。
5第一項の規定会計監査人について第二項及び第三項の規定会計監査人を辞任した者及び第三百四十条第一項の規定により会計監査人を解任された者について、それぞれ準用する。この場合において、第一項中「株主総会において、会計参与の選任若しくは解任又は辞任について」とあるのは「会計監査人の選任、解任若しくは不再任又は辞任について、株主総会に出席して」と、第二項中「辞任後」とあるのは「解任後又は辞任後」と、「辞任した旨及びその理由」とあるのは「辞任した旨及びその理由又は解任についての意見」と読み替えるものとする。
 
 
  ◎  ◎(d) 一時会計監査人 
     
     
     
     
◆第9節 役員等の責任およびその追及等に関する法規制  
  ■1 捜査説 
  ■2 任務懈怠責任 
  ■3 会社業務の適正を確保するための株主の権利
  ■4 役員等の第三者に対する責任 
□    □1 総説 
  会社法 第四二三条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
会社法 第四二九条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

2次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)

二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
  □2 悪意または重過失による対第三者責任 
  ●(1) 趣旨 
役員等がその職務を行うについて悪意または重過失⇒当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

@株式会社が経済社会において重要な地位を占めていること、
Aしかも株式会社の活動は、その機関である役員等の職務執行に依存するものであること
に鑑み、役員等に法定の特別責任を課して第三者の保護を図ったもの。
(最高裁昭和44.11.26)

@本規定による責任は、不法行為責任(民法709条)とは独立の責任であり、役員等が第三者に対し不法行為責任を負わないときでも、本規定による責任を負うことがある。
A役員等が会社に対する任務を怠ったこと(任務懈怠)について悪意または重過失があれば、たとえ第三者に対する加害行為について悪意または重過失がなくても、本規定の適用がある。
B役員等の悪意または重過失による任務懈怠と第三者の損害との間に相当因果関係がある限り、任務懈怠によって会社に損害が生じ、ひいて第三者に損害を生じた場合(=間接損害)であると、任務懈怠によって直接第三者に損害が生じた場合(=直接損害)であるとを問わず、役員等は本規定による責任を負う。
●    ●コラム:429条1項の趣旨および存在意義 
  ●(2) 要件 
いずれも、責任追及者が主張、証明責任を負う。
@役員等が株主会社に対する任務を懈怠したこと。
A当該任務懈怠について役員等に悪意または重過失があること。
B第三者に損害(間接損害または直接損害)が生じたこと。
C当該損害と任務懈怠との間に相当因果関係があること。
●    ●(3) 間接損害事例 
◎(a) 意義 
間接損害:役員等が任務懈怠により株式会社に損害を与え、ひいて第三者に損害を与えた場合。
  ●(4) 直接損害事例
  ◎(a) 意義 
役員等が悪意または重過失により任務を怠ったことにより、株式会社の損害を通さず、直接、第三者に損害を与える場合の当該損害(=直接損害)
取締役が、悪意または重過失により、業務執行の監視義務または内部統制システムの整備義務を怠った結果、違法な会社業務(=使用人の職務上の不法行為等)が行われて第三者が被害を受けた場合、取締役は、429条1項により、当該第三者の損害を賠償する責任を負う。
     
  ●(5) 429条1項による責任を負う者についての論点
  ◎  ◎(a) 名目的取締役 
名目的取締役といえども、適法な手続(株主総会の選任決議と就任の承諾)を経て取締役に就任⇒監視義務を含む取締役の義務を負うことは否定しない(最高裁昭和55.3.18)。
名目的取締役は何も職務をしていない⇒任務懈怠を容易に認められることになりやすい(最高裁昭和44.11.26、最高裁昭和55.3.18参照)。
but
下級審の裁判例には、名目的取締役は会社経営に対する影響力も持たないため、代表取締役等の違法な業務執行を止めようとしたとしてもそれができたとは認められない⇒名目的取締役の任務懈怠(監視義務違反)と第三者の損害との間には相当因果関係がないなどとして、責任を否定するものが少なくない(東京高裁等)。

名目的取締役は無報酬であることが多く、その責任を厳格に問うことが酷であるといった考慮。
     
     

★第10章 会社法総則
◆第1節 解散  
  ■1 意義 
解散:株式会社の法人格の消滅の原因となる事由
解散⇒清算⇒清算結了⇒消滅
■     ■2 解散事由 
規定 第8章
会社法 第471条(解散の事由)
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判.
会社法 第309条(株主総会の決議)
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
●株主総会の特別決議 
  ■3 休眠会社のみなし解散
  ■4 解散後の株式会社の継続
  会社法 第473条(株式会社の継続)
株式会社は、第四百七十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合(前条第一項の規定により解散したものとみなされた場合を含む。)には、次章の規定による清算が結了するまで(同項の規定により解散したものとみなされた場合にあっては、解散したものとみなされた後三年以内に限る。)、株主総会の決議によって、株式会社を継続することができる。
◆第2節 清算(通常清算)  
  ■1 総説 
●(1) 意義 
規定 会社法 第475条(清算の開始原因)
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
会社法 第481条(清算人の職務) 
清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
  解散⇒合併または破産の場合を除き、清算
清算:解散した会社の法律関係の後始末をするための手続き。
@会社の現務の結了
A会社財産の換価
B債権の取立て
C債務の弁済
D株主に対する残余財産の分配
●(2) 清算の種類 
  会社財産をもってその債務を完済できることが見込まれる場合⇒通常清算
会社が債務超過であるかまたはその疑いがある場合⇒清算人は特別清算または破産の申立をする義務(法484条、511条2項)
規定 会社法 第484条(清算株式会社についての破産手続の開始)
清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
2 清算人は、清算株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。
3 前項に規定する場合において、清算株式会社が既に債権者に支払い、又は株主に分配したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
会社法 第511条(特別清算開始の申立て)
債権者、清算人、監査役又は株主は、特別清算開始の申立てをすることができる。
2 清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならない。
●(3) 清算株式会社の権利能力
◎     ◎(a) 総説
規定 会社法 第476条(清算株式会社の能力)
前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
会社法 第481条(清算人の職務) 
清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
  清算の目的の範囲内でのみ、権利能力を有する(法476条)。

@事業上の取引は不可
Aすでに締結した契約の履行や当該履行のために必要な新たな契約をすることは(解散前に受けた注文に応じるための商品の仕入等)は、現務の結了(法481条1号)のための行為であり、可能。
  ◎(b) 組織再編の制限 
  ■2 清算株式会社の機関(p690)
  □1 清算人・清算人会 
  ●(1) 意義 
会社法 第477条
清算株式会社には、一人又は二人以上の清算人を置かなければならない。
清算人:清算株式会社のための清算事務を行う者。
1人または2人以上の清算人を置かなければならない(法477条1項)。
  ●(2) 就任 
会社法 第478条(清算人の就任) 
次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。
一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 株主総会の決議によって選任された者
2 前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。
原則:清算開始原因発生の時点で取締役であった者が、清算人に就任(法478条1項1号)
定款又は株主総会の決議により、新たに清算人を選任することもできる(同項2号3号)。
  ●(3) 清算人と清算株式会社の関係 
  ●(4) 清算人の義務と責任 
  ●(5) 退任 
  ●(6) 清算人会 
精算株式会社は、定款の定めにより、清算人会を置くことができる(477条2項)。
清算人会を置く旨を定款で定めなければ、清算人会は置かなくてよい。
  ●(7) 生産株式会社の業務執行の方法 
  □2 その他の機関 
  ●(1) 株主総会 
  ●(2) 監査役 
精算の開始原因が生じたときに公開会社または大会社⇒監査役を置く必要(477条4項)。
これ以外の場合は、監査役を置くかどうかは各社の定款による選択に委ねられる(同条2項)。
  ●(3) 監査役会 
  ●(4) その他の機関 
  ■3 清算事務 
  ●(1) 総説 
  会社法 第481条(清算人の職務) 
清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
  @生産株式会社の財務状況を調査し、現務を結了
A財産を換価
B債権の取立ておよび債務の弁済
C残余財産の株主への分配
(会社法481条)
  ●(2) 財産状況の調査 
規定 会社法 第492条(財産目録等の作成等)
清算人(清算人会設置会社にあっては、第四百八十九条第七項各号に掲げる清算人)は、その就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日における財産目録及び貸借対照表(以下この条及び次条において「財産目録等」という。)を作成しなければならない。
2 清算人会設置会社においては、財産目録等は、清算人会の承認を受けなければならない。
3 清算人は、財産目録等(前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の承認を受けたもの)を株主総会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければならない。
4 清算株式会社は、財産目録等を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該財産目録等を保存しなければならない。
  就任後遅滞なく、生産株式会社の財産状況を調査し、
清算原因発生の日における@財産目録およびA貸借対照表を作成し、
株主総会の承認を得る(492条)。
各清算事業年度の
@貸借対照表およびA事業報告書ならびにこれらのB附属明細書を作成し(494条)、定時株主総会の承認を受ける(497条)。
貸借対照表等は、本店に備え置き、株主および債権者の閲覧等請求に供される(496条)。
  ●(3) 現務の結了 
現務の結了(481条1号)=株式会社の業務の後始末をつけること
取引先との継続的な契約関係や従業員との雇用関係を終了させることが含まれる。
  ●(4) 財産の換価 
  ●(5) 債権の取立て(481条2号) 
  ●(6) 債務の弁済(481条2号) 
清算の開始原因発生

遅滞なく、債権者に対し2か月を下らない一定期間(債権申出期間)内に債権を申し出るべき旨を官報公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告(499条1項)
当該公告には、債権申出期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記(同条2項)。
債権申出期間中は、裁判所の許可を得てする場合(500条2項)を除き、債務の弁済をすることができない(同条1項前段)。
but
それによって清算株式会社が債務不履行の責任(民法415条)を免れるわけではないし(500条1項後段)、債権者が清算株式会社の財産に対して強制執行をして債権の弁済を受ける権利が妨げられるわけでもない。
債権申出期間経過後は、清算株式会社は、申し出られた債権についてその全部の弁済。
債権申出期間内に申出をしなかった債権者は、清算から除斥される(503条1項)。
〜いまだ分配がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求できる(503条2項3項)。
  ●(7) 残余財産の分配 
清算株式会社が会社債務を弁済してなお残る財産(残余財産)があるときは、これを株主に対して分配(残余財産の分配。504条)。
  ■4 清算の結了 
  ●(1) 決算報告 
■3で説明した清算事務が終了⇒清算人は、遅滞なく決算報告を作成し、株主総会の承認を受ける(507条)。
清算人に不正の行為(任務懈怠の事実を隠蔽するなど)があった場合を除き、当該承認は、清算人の任務懈怠責任(486条)を免除。
  ●(2) 清算の結了 
清算事務の終了、及び、幹部主総会の決算報告の承認(507条3項)
⇒清算は結了し、株主総会の法人格は消滅(清算決了の登記をするまでもない)。
清算が結了⇒株主総会の承認の日から2週間以内に、本店の所在地において清算結了の登記(929条1号)。
  ●(3) 帳簿資料の保存 
清算人は、清算決了の登記の日から10年間、清算株式会社の帳簿ならびにその事業および清算に関する重量な資料(帳簿資料)を保存(508条)。
◆第3節 倒産  
  ■1 総説 
  ●(1) 意義 
倒産:債務者が自ら負っている債務の返済ができないような経済状態。
  ●(2) 倒産状態の株式会社で生じる問題 
「会社の事業が生み出すフリー・キャッシュ・フローの割引現在価値として定義される継続企業価値>会社が事業を廃止しその保有資産を処分した場合に実現する価値(=清算価値)」の場合、事業を存続させることが効率性の観点から望ましい。
  ●(3) 私的整理 
  ●(4) 法的倒産手続
  ■2 清算型倒産手続 
  □1 特別清算 
  ●(1) 意義
特別清算:
@清算株式会社の清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があるか、または
A債務超過(会社財産がその債務を完済するのに足りない状態のこと。510条2号)の疑いがある場合に、
裁判所の監督下で行われる特別の清算手続(510条)。
  ●(2) 特別清算の概要 
  ◎(a) 特別清算の開始 
  ◎(b) 個別的権利実行の禁止 
  ◎(c) 清算人の義務・裁判所による監督 
  ◎(d) 協定 
清算株式会社が、債務の減免その他、債権者の権利を変更する協定を債権者集会に申し出て(563条)、債権者の多数決による同意(567条)および裁判所の許可(569条)を得ることにより、その権利を(債権者のものも含めて)変更すること(570条、571条)を認めている。
  ◎(e) 特別清算の終了 
@特別清算が結了したとき、または
A特別清算の必要がなくなったとき(十分な資産超過であり通常清算の手続によることができると判明した場合等)
〜清算人等の申立てにより、裁判所が特別清算終結の決定をする(573条)。
協定の見込みがないとき、協定の実行の見込みがないときまたは特別清算が債権者の一般の利益に反するときであって、破産手続の開始原因があると診ろめるとき
⇒裁判所は、破産手続開始の決定をしなければならない(574条1項)