シンプラル法律事務所
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論点整理(刑事裁判員裁判関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

裁判員裁判
概要 対象事件 @ 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件
A 法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る
もの
裁判員やその親族等に対して危害が加えられるおそれがあるような事件については、対象事件から除外されうる。
合議体の構成 裁判員の参加する合議体の裁判官の員数は3人、裁判員の員数は6人
第1回公判期日前の準備手続(公判前整理手続)の結果、被告人が公訴事実を認めている場合において、当事者に異議がなく、かつ、事件の内容等を考慮して裁判所が適当と認めるときは、その事件を裁判官1人と裁判員4人の合議体で取り扱うことができる。
裁判官・裁判員の権限及び評決 裁判員法 第6条(裁判官及び裁判員の権限)
第二条第一項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第三百三十三条の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条の規定による刑の免除の判決若しくは同法第三百三十六条の規定による無罪の判決又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第一号及び第二号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。
一 事実の認定
二 法令の適用
三 刑の量定

2 前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
一 法令の解釈に係る判断
二 訴訟手続に関する判断(少年法第五十五条の決定を除く。)
三 その他裁判員の関与する判断以外の判断

3 裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。
有罪・無罪の決定及び量刑の判断は、裁判官と裁判員の合議体の過半数であ
り、かつ、裁判官及び裁判員のそれぞれ1人以上が賛成する意見による。
法令の解釈及び訴訟手続に関する判断は、裁判官の過半数の意見による。
裁判員の資格・選任手続等 衆議院議員の選挙権を有する者の中から、一年毎に無作為抽出で裁判員候補者名簿を作成し、裁判員は、その中から事件毎に無作為抽出する。
欠格事由及び就職禁止事由等に該当する者、不公平な裁判をするおそれがある者並びに
当事者から理由を示さない不選任請求をされた者は、裁判員となることができない。
辞退事由に該当する者は裁判員となることを辞退することができる。
裁判員は、公判期日への出頭義務、守秘義務等の義務を負う。義務違反その他一定の場合に、裁判員は解任される。
裁判員には、旅費、日当等が支給される。
裁判員裁判の手続 公判前整理手続を必ず行う。
裁判員も、証人に対する尋問、被告人に対する質問を行うことができる。
その他 裁判員に対する請託・威迫行為、裁判員の秘密漏洩行為等は、刑事罰の対象
となる。
雇用主は,従業員が裁判員の職務のために仕事を休んだことその他裁判員に
なったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
何人も、氏名等の裁判員を特定できるような情報を公開してはならない。
何人も、担当事件について裁判員に接触してはならない。
共犯 検察の基本方針 共犯事件の取扱いとして,証拠関係が共通である場合には,併合して審理することが望ましいであろうが,共犯者間で争い方が大きく異なり,書証,取り分け複数の供述人の調書が一部の被告人の関係では同意されて取り調べられるのに,他の被告人の関係では不同意とされて取り調べられない場合などには,裁判員が,それぞれの被告人ごとに,それぞれ取り調べられた証拠のみに基づいて心証形成を行うことは,容易ではないと思われる。
もっとも,このように供述調書に対する同意・不同意の意見が共同被告人間で異なる事案であっても,当該供述調書に係る立証を当初から証人尋問を行うこととする対応を採ることによって,取り調べられる証拠の不整合を回避することが可能な場合もあろう【注3】。
しかし,そのような対応をすることもできず,共犯者間で争い方が異なるため,証拠関係が被告人ごとに大きく異なってしまうような事件については,併合せず別々に審理せざるを得ないと考えられる。
【注3】特に,性犯罪に係る被害者のように複数回の証人尋問をできる限り回避すべき証人がいる事案については,留意が必要である。
本来,裁判員が心証形成しやすく,その負担を軽減した公判遂行を実現する責務は,検察官を始めとする法曹三者が負うべきものなのであるから,上記のような証人にそのしわ寄せが及ばないよう,法曹三者は可能な限りの努力をしなければならない。本文記載のような対応は,そのための一つの手段となろう。
やむを得ず,併合せずに別々に審理することとした場合には,被害者を含む同一の証人が複数の公判で証言することを余儀なくされる場合が想定され,その負担が増大することとなる。
検察官としては,それぞれの事件ごとに争点や証拠関係が異なることを踏まえ,漫然と,すべての公判で,同一証人に同一証言を求めるような訴訟活動をすることなく,それぞれの事件ごとに必要十分な内容に限って尋問を行うことで,可能な限り,証人の負担を軽減するよう配慮すべきであろう【注4】。
【注4】例えば,裁判員法65条3項により,ビデオリンクの方式で行った証人尋問については,同条1項による記録媒体(具体的には,DVDが想定されている。)を公判調書の一部とすることとされており,その結果,刑訴法321条の2第1項により,当該DVDを含む公判調書は,他の共犯者が被告人となっている公判においても証拠能力を有することとされている。
したがって,ビデオリンクの方式で尋問を行った証人については,他の共犯者が被告人となっている公判における検察官の主尋問に代えて,当該DVDを含む公判調書の取調べを行うことができ,その限度で,当該証人の負担を軽減することが可能となっているので,その積極的な活用を図るべきである。