シンプラル法律事務所
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論点整理(公正証書関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)


確定日付の付与
効力  本来の効力  確定日付⇒証書作成の日につき完全な証拠力を有し、証書作成の日にこの証書の存在したことが証明される。 
but
当該証書の成立の真正を保証するものではなく、また、証書の内容たる事実の存否とか、思想の当否の認定に影響を与えるものではない。
特殊の効力 指名債権の譲渡 :
指名債権を目的とする質権の設定。抵当権の処分、弁済者の任意代位の場合:
債権者の交替による更改:
手続 付与 公証役場に対する請求によって公証人が証書に確定日印(日付のある印象)を押捺して付与(民施6条1項) 
請求権者 証書の作成名義人、作成者に限らず、その文書を所有する者ならば請求できる。
文書を所持する者は、所有者と推定される。
証書の所持人が、何某の代理人または使者である旨陳述するときは、特に疑うべき合理的理由がない限り、その陳述を真実と推定し、特に請求者の資格証明書、印鑑証明書、委任状等の提出は不要。
公証役場の事務処理 公証役場に備え付けてある確定日付簿に署名者の氏名またはその1人の氏名に外何名と附記したものおよび件名を記載し、請求を受けたその証書に登録番号を記入し、帳簿および証書に確定日付印を押捺し、かつその印象をもって帳簿と証書とに割印をする(民施6条1項)。
証書が数紙より成る場合には毎紙の綴目または継目に契印をする(同条2項)。
証書中に訂正箇所がある場合には、訂正箇所の欄外に加入ないし削除の字数を記入させ上部に確定日付を押捺。

公正証書(執行)関係
メリット 判決の場合、確定まで時間と費用がかかる。
手形の場合も、手形訴訟を提起して、勝訴判決を得る必要。 
執行証書  規定 民事執行法 第22条(債務名義) 
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
要件 ●執行証書に表示される請求権 
その原因が具体的に表示され、他の請求権とその同一性が識別できる限度に特定されていることが必要。
×金100万円を支払う
その発生原因(ex.消費貸借、売買、損害賠償、不当利得等)と発生日時を特定することが必要。
●給付金額および数量 
給付すべき金額および数量は一定していることが必要。

その執行証書に全額または数量が計数的、確定的に明記されているか、または利率と期限が定まっている場合のように、証書自体からその金額を算出できることが必要。
給付すべき金額、数量が一定している以上、その請求権が、期限付、条件付、反対給付にかかわるものでも一定性の要件は具備されたことになる。
●支払約束と執行受諾文言 
債務者の支払意思の表示が記載され、債務者がただちに強制執行に服する旨の陳述が記載されていることが必要。
執行 規定 民事執行法 第26条(執行文の付与)
執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
2 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
手続 債権者は、公証人から公正証書の執行分の付与を受け、これを裁判所に提出して強制執行の申立てをして、債務者の財産である、不動産、動産、債権を差し押さえることができる。
時効 規定 民法 第147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
三 承認
説明  債務弁済契約⇒債務者は債務を承認⇒承認による時効中断。
時効中断によって債務の性質が変わるものではない。

承認の売買代金:2年
運送賃:1年
貸金:商行為によるもの:5年
    一般の場合:10年

公正証書(手続)関係
確認 規定 第28条〔嘱託人の確認〕
公証人証書ヲ作成スルニハ嘱託人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルコトヲ要ス
A公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス
B急迫ナル場合ニ於テ公証人証書ヲ作成スルトキハ前項ノ手続ハ証書ヲ作成シタル後三日内ニ証書ノ作成ニ関スル規定ニ依リ之ヲ為スコトヲ得
C前項ノ手続ヲ為シタルトキハ証書ハ急迫ナル場合ニ非サルカ為其ノ効力ヲ妨ケラルルコトナシ
個人 公証人が、嘱託人の氏名を知り、かつ、嘱託人と面識あり⇒改めて証明を必要としない(法28条2項)。
確認資料:
印鑑証明書
○運手免許証、パスポート、船員手帳、外国人登録証明書

官公署が作成して本人に交付した公文書で、被交付者の写真が貼付。
性別、生年月日の記載と写真で本人であることを確認できる。
実際は、印鑑証明書による場合が大多数。
嘱託人が外国人⇒パスポートか外国人登録証明書
印鑑証明書は、作成後6か月以内のものであることが必要。
外国居住の日本人に対して、その国駐在の日本領事が発行した印鑑証明書も含まれる。
法人 ●会社その他の法人
@法人の存在、
Aその代表権を有する者が誰であるか、共同代表かなど、代表権限についての確認と
B代表者である本人の確認が必要。
代表者であること等の確認:
@会社等の登記簿謄本又は登記事項証明書(いわゆる資格証明書)
A印鑑証明書とその印鑑
作成後6か月以内のものであることが必要
●公法人であって登記する規定のないもの
ex.知事、市町村長等
職印を押した書面の提出
●外国法人
実務上は、事前にどのような種類、形式の資料が入手できるからを嘱託人側から確かめて対応
一般的には、その法人資格証明書、代表権限証明書、署名証明書は、その国の公証権限のある官公署や公証人の作成した証明所でよい。
場合によっては、その外国法人の定款や議事録などが補充的に必要となる場合も。
訳文を添付するのが相当。
but公証人がその外国語に通じている場合は、必ずしも添付の必要ない。
証明文書について、いわゆるリーガライぜーションを求めるかは、個々、具体的な状況によって判断。
●法人格のない団体
団体名による公正証書の嘱託は許されない。
公正証書の作成の嘱託は、団体の代表者個人の名でせざるを得ない。
証書の記載上、団体の財産と管理者の個人の財産が、強制執行の際に混淆しないよう工夫が必要。
代理人による場合
規定 第31条〔代理嘱託の場合〕
代理人ニ依リ嘱託セラレタル場合ニ於テハ前三条ノ規定ハ其ノ代理人ニ之ヲ適用ス

第32条〔同前〕
代理人ニ依リ嘱託セラレタル場合ニ於テ公証人証書ヲ作成スルニハ其ノ代理人ノ権限ヲ証スヘキ証書ヲ提出セシメ其ノ権限ヲ証明セシムルコトヲ要ス
A前項ノ証書カ認証ヲ受ケサル私署証書ナルトキハ其ノ証書ノ外官公署ノ作成シタル印鑑又ハ署名ニ関スル証明書ヲ提出セシメ証書ノ真正ナルコトヲ証明セシムルコトヲ要ス但シ当該公証人ノ保存スル書類ニ依リ証書ノ真正ナルコト明ナル場合ハ此ノ限ニ在ラス
B証書ノ作成ニ関スル規定ニ依リ代理又ハ其ノ方式ノ欠缺ヲ追完シタルトキハ証書ハ其ノ欠缺アリタルカ為効力ヲ妨ケラルルコトナシ
代理人による嘱託は可能。
遺言の場合は不可。
●委任状
様式について、法律上特段の定めはない。
@何某に対し、自分の代理人として、○○の公正証書の作成を公証人に嘱託することを委任する旨の記載。
A契約公正証書の嘱託の場合は、その委任の内容、範囲を明確にするため、証書に記載されるべき条項が具体的に記載されていること。
B委任者の署名(記名)と実印の押印。
C委任者が法人⇒代表者がその肩書を付して署名(記名)し、登録されている代表者印が押捺。
認証を受けていないものについては、官公署の作成した印鑑または署名に関する証明書によって「真正」であることを証明する必要。(法32条2項)

ほとんど印鑑証明書
・住所の記載や氏名の文字が一致しているかも点検の対象
・委任者が法人⇒代表者の肩書、氏名と押捺されている代表者印を、商業登記簿謄本や代表者印の印鑑証明書と対照。
代理人の同一性確認:
印鑑証明書、運転免許証、パスポート等