シンプラル法律事務所
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論点整理(債権総論償(潮見説))

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

★★★★新債権総論T     
★★★第1編 契約と債権関係 
★★第1部 契約総論 
 ★第1章 契約自由の原則
     
★第2章 契約の成立(その1)・・申込みと承諾     
         
★★★第2編 債権の内容     
         
★★★第3編 債務の不履行とその救済     
★★第1部 履行請求権とこれに関連する制度     
         
★★第2部 損賠償請求権(T):要件論     
         
★第5章 表明保証    
      ■T 意義 
米国では、表明保証条項は、
約束の内容を構成しない表示について、これを補償(保証)の対象とすることにより、表明された事項に齟齬があった場合に、表意者に対して損失補償(賠償)を求める根拠とするために、契約に組み込まれてきたもの。
      ■U 表明保証が用いられる場面 
      ■V 狭義の表明保証条項 
      ■W 広義の表明保証条項 
      ■X 表明保証の対象の確定・・・契約解釈の重要性 
      ■Y 表明保証された事項の錯誤取消しの可能性 
      ■Z 相手方が悪意の場合の処理 
      ■[ 不実表示を理由とする損害賠償との関係 
      ■\ 債務不履行との関係・・・狭義の表明保証の場合 
★★第3部 損害賠償請求権(U):効果論     
★第1章 損害論     
      ◆第1節 差額説 
      ■T 差額説の意義 
      ■U 差額説の各種 
      ■V 差額説と結び付けられた賠償範囲確定・金額算定理論 
      ◆第2節 差額説に対する批判と、差額説に代わる理論 
         
      ◆第3節 規範的損害 
         
      ◆第4節 履行利益(積極的利益)と信頼利益(消極的利益) 
         
      ◆第5節 損害の捉え方に対する著者の立場(p440)
      ■T 仮定的事実状態と現実の事実状態の差としての「損害」 
A:差額説
vs.
債務不履行がなかった状態の回復という原状回復の理念により、賠償されるべき損害を確定するための指針を示しているが、
損害の本質、賠償対象の確定問題と、それへの金銭評価という次元を異にするプロセスを中間省略し、算定結果のみを捉えて損害概念を定義している点で問題。
B:損失説や損害事実説
vs.
どの損害項目を賠償されるべき損害とみるのか、それをどのような基準で確定するのかということを指示する理念ないし指標が損害概念にあらわれてこない。
債務不履行に遭遇して(全体的または部分的に)妨げられた契約上の地位を金銭的価値において実現するのが損害賠償

損害は、
@債務不履行がなければ債権者が置かれていたであろう仮定的な事実状態と、
A債務不履行の結果として債権者が現実に置かれている事実状態
との「差」として把握されるのが適切(事実状態比較説)。

契約上の地位の価値的実現という観点のもと、仮定的事実状態と現実の事実状態の差として損害を捉えるということは、損害の規範的評価とあいまあって、債務不履行を理由とする損害賠償の制度は何を目的としたものであるかという損害賠償制度の目的ないし理念を個々の債務不履行事例に投影し、賠償されるべき損害の範囲の決定に正当性を与え、損害賠償制度、ひいては契約制度や権利の体系全体に体系的一貫性をもたらすもの。
      ■U 積極的利益の賠償・・・契約上の地位の価値的実現(契約利益説)(p441)
      ●1 損害賠償請求権の権利追求機能 
事実状態の差を捉える際に、「契約上の地位」ないしは「債権」という権利の実現を損害賠償の形で保障するのが損害賠償であるという面に着目⇒債務不履行による損害賠償請求権は、「契約上の地位」ないしは「債権」の価値代替物の意味を有する。

金銭に形を変えての本来的権利内容の貫徹という、権利追求機能(権利保護機能)が前面に出てくる。
契約上の債務の不履行を理由とする損害賠償における権利追求機能(権利保護機能)

@契約により得られた利益(給付利益)それ自体のもつ金銭的価値を保障するものとしてあらわれる(=給付の客体それ自体の価値の賠償)とともに、
A債権者がその保持したであろう給付利益を用いて社会生活のなかで人格的活動を展開することにより得るであろう財産的利益を保障するもの
=被害者が社会生活のなかで権利・法益の客体を用いて自己の人格を自由に展開すること(人格権・自己決定権に由来する人格の展開の事由。財産的管理・処分の自由を含む)によって享受することができた財産状態を被害者に実現することを目的とした賠償(=人格の展開の自由が侵害されたことにより、被害者の総体財産に生じた損害の賠償)としてあらわれる。
      ●2 規範的損害論と規範的評価の視点・・・・契約上の地位の金銭的価値による実現 
債務不履行による損害賠償請求権は、契約上の地位の金銭的価値による実現保障(=金銭的価値に形を変えての本来的権利内容の貫徹)という面をもつ(契約利益説)。
損害概念は、ある事態の存在を前提としているという意味で事実的でありながら、
債権者が本来有していた権利内容(契約上の地位)を金銭的価値で実現するという目的に出て仮定的事実状態と現実の事実状態を確定するために規範的評価をするという意味で、規範的でもある(規範的損害論)。
      ●3 契約上の地位に対して結びつけられるべき価値・・・具体的損害計算と抽象的損害計算 
    ◎3−1 具体的損害計算と抽象的損害計算 
具体的損害計算:当該債権者を基準として、損害項目が何か、それぞれの損害項目に割り付けられる金額がいくらであるかを確定していく価値計算方法
抽象的損害計算:当該債権者と属性を同じくする平均的な人(類型人)であれば、どのような損害項目が観念され、それぞれの損害項目に割り付けられる金額がいくらであるかを画定していく価値計算方法
一棟の建物の賃貸借で、賃貸人Aが当該建物を賃借人Bに使用収益させなかったという例(賃貸人の債務不履行)では、
Bを基準として賠償されるべき損害および額を画定していくのが具体的損害計算
Bと同じ属性を有し、同種同等の建物を賃借した平均人を基準として賠償されるべき損害およびその額を確定していくのが抽象的損害計算
具体的損害計算・抽象的損害計算は、いずれも、@損害項目の選定とA金銭評価の2面で問題となる。
    ◎3−2 具体的損害計算の原則・・・当該契約のもとので個別・具体的な価値の賠償 
債務不履行による損害賠償請求は、契約上の地位の金銭的価値による実現保障(金銭的価値に形を変えての権利内容の貫徹)という面をもつ
⇒当該契約において当事者が契約上の地位にどのような具体的な価値を結びつけたのかを個別に探求し、これによって導かれた個別・具体的な価値を損害賠償によって実現するのが、損害賠償請求権の第1の目的
    ◎3−3 抽象的損害計算による補充・・・客観的・類型的価値の賠償 
具体的損害計算により確定されるべき「契約上の地位」の有していた利益・価値を当該具体的契約の解釈を経てもなお確定することができない
⇒補充的(第2次的)に、抽象的・類型的に捉えられた契約上の地位に対し私法秩序によって与えられるべき客観的価値について、その賠償を認めるという方向で調整。
当該契約の属する類型に結び付けられた価値、すなわち、当該契約に客観的・類型的に結び付けられた価値を評価して、この観点から導きだされた価値を債務者から債権者に与えるのが、課題の利益を与えることなく債権者の地位を保障し(=私的自治・契約自由の原則のもとでめざされた結果も確保される。)、他方で債務不履行をおかした債務者にとっても過剰とはいえない負担を課することになり(=「契約は守られるべきである」との原則のもとでめざされた結果も確保される。)、合理的。
      ●4 損害賠償確定問題と損害論との重複・・・損害論の体系的意義 
規範的観点から損害の定義、すなわち、「債務不履行における損害は何か」という点からの判断(@)(=「仮定的事実状態と現実の事実状態の差」の判断)のなかに、
「債権者が本来有していた権利内容を金銭的評価で実現するためには、どこまでの損害が賠償されるべきか」という規範的評価(A)がとりこまれてくる。

Aは、金銭的価値に形を変えて本来的権利内容を実現するとい目的に出た賠償範囲の確定作業であるところ、このことは、「損害とは何か」(@)が論じられる際に、同時に「賠償されるべき損害範囲がどこまでか」(A)が論じられることを意味する。
さらに、債務不履行を理由とする損害賠償請求における「債務不履行により債権者に生じた損害」という要件は、一面において「損害とは何か」(@)を述べるものであると同時に、他面において「賠償範囲」(A)(=民法416条が担当する判断)を述べるもの。
      ■V 消極的利益の賠償・・・原状回復的損害賠償(p444)
      ●1 原状回復的損害賠償の有用性 
原状回復的損害賠償(費用賠償):
債務不履行を理由とする損害賠償という手法を用いて、契約がなかった状態の価値的な回復がめざされている。

@「債権の価値の実現」(契約利益が有する価値の金銭による実現)ではなく、
A「契約がなかった状態への原状回復」が、
債務不履行の効果として損害賠償によって企図されている。
積極的利益の賠償と合わせてこうした原状回復の方向での消極的利益の賠償を求めることは、回復を求める利益の方向の点で矛盾するために許されない。
but
債権者が消極的利益の回復(原状回復)にしぼって債務不履行に基づき損害の賠償を請求することは、排除されるべきではない。
      ●2 解除制度との関係
解除要件を解することなく、損害賠償という方法で契約がなかった状態の価値的現状回復を認めるというのは、解除なしでの契約の拘束力からの解放を認める意味で、解除制度を回避することとなるのではないか?との疑問。
      ●3 原状回復的損害賠償制度の保護目的・・・・費用投下に向けた自己決定権 
債務不履行を理由とする原状回復的損害賠償(費用賠償)は、債権侵害(契約上の地位の侵害)を契機とするものの、自己決定(すなわち、契約の締結や費用投下)に伴うコストを債務者に転嫁することにより、この種のコスト負担から債権者を開放することを目的にする点で、債権者の自己決定権を保護している。
★第2章 損害の分類     
      ◆第1節 財産的損害と非財産的損害 
      ◆第2節 積極的損害と消極的損害 
      ◆第3節 通常損害と特別損害 
★第3章 損害賠償の範囲     
      ◆第1節 賠償されるべき損害の範囲の捉え方 
      ■T 緒論・・・民法416条の規定の変遷:旧法と新法 
      ■U 賠償範囲の確定法理に関する諸説(その1)・・・相当因果関係論 
      ●1 基本的な考え方 
      ●2 相当因果関係論の特徴 
      ◎2−1 責任原因(帰責事由)と責任効果の社団 
      ◎2−2 因果関係による賠償範囲の確定 
      ◎2−3 因果関係の起点としての債務者(または補助者)の行為 
      ◎2−4 法的因果関係・・・相当性 
行為のもつ原因力の探究ではなく、損害を行為者に帰属させるという規範的評価がされている。
      ◎2−5 相当性の判断基準 
行為の当時、行為者が知っていたか、または合理的な行為者であれば知ることのできた事実に基づいて、当該行為が損害の発生にとっての相当な原因でったか否かを評価する考え方が支配的。

契約の内容がどのようなものであったかという点は、相当性の判断にとっては二次的・間接的なもの。
      ◎2−6 民法416条と相当因果関係の関係 
民法416条1項は、相当因果関係の原則を定めたもの。
その上で、同条2項は、相当性判断の際に、行為から損害へと展開するにあたって作用した事情のうち、どのような事情を考慮に入れるかを定めたもの。
通常の事情は当然に考慮するが、特別の事情については、「行為者」が行為の当時に予見または予見できたものは考慮するけど、それ以外のものについては排除することを述べたもの。
      ●3 相当因果関係論に対する批判 
@相当因果関係論は、完全賠償原則を採用するドイツにおいて、賠償範囲を限定するために用いられた理論であり、完全賠償原則を採用していないわが国にもちこむべきではない。
A因果関係判断とは、過去に生じた事実の復元を目的とするものであり、この意味で、因果関係概念は、事実的なものとしてとらえられるべきもの。
B当該契約に照らせば債務者が負担すべきとされる損害が何かは、債務不履行と事実的因果関係があるものとされた損害を対象として、具体的な契約規範の目的に即して個別的に考察される。
C民法416条は、債務不履行(契約違反)の場合に、事実的因果関係が認められる損害のうちのどこまでを賠償させるべきかを扱う規定⇒保護範囲を画定するためのルールとして予見可能性のルールが妥当しない不法行為責任に、旧法416条は妥当しない。
      ■V 賠償範囲の確定法理に関する諸説(その2)・・・保護範囲論・契約利益説 
      ●1 基本的な考え方 
契約のもとでのリスク分配に照準を合わせ、「契約」・「契約規範」・「契約利益」という観点を入れることによって賠償範囲の確定法理に関する転換を促す。
当該契約のもとで両当事者が損害リスクをどのように予見していたのかを、締結された契約から、その解釈を通じて、確定すべきであるとし、こうして確定された損害のみが賠償されるべき。
ここでの予見可能性は、事後的予見可能性ではなく、規範的評価と結び付けられた予見可能性である。
不法行為責任では、保護範囲論は、責任原因である故意・過失によって賠償範囲を画する立場としてあらわれる。
具体的に発生した「損害」を起点としたうえで、過失による不法行為の場合には、過失を「損害」を回避すべき義務に対する違反と捉える⇒生じた損害(=不利益な事実)が加害者の行為と事実的因果関係に立ち、かつ、損害回避義務の射程内にあれば、賠償されるべきであるとする(義務射程論)。
また、故意による不法行為の場合には、故意を「損害」発生の意欲または認容の意味で捉えたうえで、意欲または認容された損害については、すべてが賠償されるべきであるとする。
      ●2 保護範囲論の特徴・・・「契約利益」を基礎に据えた賠償範囲の確定 
      ◎2−1 総論 
賠償されるべき損害の範囲について、契約規範によって保護されている契約利益を基点に据え、その契約利益が実現されたのと同等の利益状態を債権者に対して価値的に実現するように賠償範囲を決定すべき。
      ◎2−2 責任原因と責任効果の連関(責任設定規範としての契約規範)  
責任設定規範としての契約規範の保護目的を考慮して、賠償されるべき損害の範囲を決する。
〜責任原因と責任効果とが関連づけられている。
責任設定規範とは、両当事者の合意に基づき設定された契約規範であって、伝統的見解が説くところの故意・過失規範(履行過程における注意義務(具体的行為義務)を根拠づける規範)ではない。
      ◎2−3 契約利益を基点とした損害リスクの分配
契約によって設定された規範(契約規範)が一定の利益(契約利益)の保護に向けられたものであるところ、その保護された契約利益に対して加えられた侵害を原因とする損害のうち、当該契約の内容に即してみれば債務者に分配されるべきもののみが、債務者によって賠償されるべき。
賠償されるべき損害の範囲の決定、すなわち、ある損害を債務者に帰属させることを正当化する基礎となるのが契約上の合意。

契約規範によって保護されている契約利益を基点として賠償範囲を確定するという保護範囲論の考え方は、債務不履行の帰責の根拠を、契約、したがって、両当事者が合意により設定した契約規範に求める思想(=合意は遵守されるべし)と調和。
      ◎2−4 損害リスクの分配という観点からの契約内容の探求 
当該契約により債務者に分配された損害リスクが何かが、具体的な契約規範の目的に即して個別的に考察される。 
@契約不履行のあった当該契約当事者の職業(商人であるかどうか等)、A目的物の種類(有価証券、商品、建物、山林、船舶等)、B契約の目的(転売、原材料・営業設備としての使用、自家の消費、生活上の使用等)、C契約当事者間の属する取引圏における慣行などを考慮し、
当該契約当事者にどれだけの範囲について損害賠償義務を負わせるのが妥当かに基づき、契約の解釈を通じて、賠償されるべき損害の範囲が決定される。
      ◎2−5 予見可能性ルールの捉え方 
予見ないし予見可能性が重要なのではなく、契約規範の保護範囲の確定と、それに即した解釈が決定的となる。

予見可能性要件のもとで考慮されるのは、単なる事実としての予見可能性ではなく、「予見すべきであったかどうか」という価値判断であるとみるのが、当を得ている。
      ◎2−6 民法416条と保護範囲論との関係 
保護範囲論が想定している予見可能性は、「損害」を対象としたものとなる。
文言上は、「特別の事情」についての予見を問題としているものの、これを「特別の損害」についての予見を問題としたルールと理解したうえで、契約解釈を通じた損害範囲の確定の場面に妥当させようとしている。
      ●3 契約に基づくリスク分配の意味 
      ◎3−1 緒論・・・保護範囲論の多様性 
      ◎3−2 契約締結時のリスク分配に依拠する立場 
保護範囲論を支持する論者の多くは、契約に基づく損害リスクの分配を重視
⇒契約締結時に両当事者が予見することのできた損害リスクのみが契約に組み込まれる
⇒契約締結時における、両当事者の予見可能性を基準とすべき。

@契約のなかで、契約違反(不履行)が生じたときに債権者生じる損害を予測・計算し、両当事者間でそのリスクを分配しているという理解をしたうえで、
A契約締結にあたり両当事者によって予見することのできなかった損害は、債務者に分配されていないゆえに、債務者に帰責事由のある債務不履行であったとしても債務者はそのリスクを負担する必要がない
という枠組み。
      ◎3−3 契約規範によるリスク分配に依拠する立場 
契約締結時から債務不履行時までに予見できた事情に由来するリスクを、債務不履行をした債務者ではなく、債権者に負担させるのは適切でない(債務不履行をした債務者こそ、債務不履行時までに予見できた事情に由来するリスクを負担すべきである)
⇒予見の当事者を債務者、予見の時期を債務不履行時
      ◎3−4 故意の債務不履行の場合の特別の処理を説く立場 
      ◎3−5 政策的価値判断による保護範囲の確定を強調する立場 
      ■W 著者の立場 
      ●1 積極的利益の賠償と原状回復的損害賠償 
      ●2 積極的利益の賠償範囲 
      ◎2−1 契約利益説 
保護範囲論を支持する多くの論者は、両当事者の合意(そして、契約利益)を基点とする損害リスクの分配を決定的なものとみている。
〜契約のもとで、契約違反(不履行)が生じたときに債権者に生じる損害を予測・計算し、両当事者間で分配しているという理解をしたうえで、契約締結にあたり両当事者によって当該契約のもとで把握されなかった損害は、そのリスクが債務者に分配されていないゆえに、たとえ免責されない債務不履行であったとしても、債務者はこれを負担する必要がないという枠組み。
      ◎2−2 契約に基づく損害リスクの分配 
契約に基づくリスク分配の考え方は、債務者が故意に損害を惹起した場合にも等しく妥当すべき。
損害賠償法上で、契約を離れて故意による損害賠償を特別に扱うのであれば、不法行為を理由とする損害賠償の枠組みに依拠するほかない。
      ◎2−3 履行過程における債務者の損害予見・回避義務 
契約を締結することで契約利益の実現を保障⇒債務者には、契約締結後も、債権者のもとで契約利益が本旨に適って実現されるよう、契約を尊重して。誠実に行動しなければならない(民法1条2項にいう「義務の履行」。多数説がいうところの履行過程での付随義務の一種)。
契約を尊重し誠実に行動しなければならない義務の向けられた対象(契約に基づく損害リスクの分配の射程)は、債務の履行のみならず、契約締結時点では予見することができなかった損害の発生ならびに拡大の認識・回避にも及びうる。
契約締結時点で両当事者が認識または考慮していなかった債権者の損失であっても、契約締結後に債務者がその発生または拡大を予見すべきであったものについて、「契約を締結することにより契約利益の実現を保障した以上、債務者は、契約締結後も、債権者のもとで契約利益が本旨に適って実現されるよう、誠実に行動すべきである」との規範を介して、債務者の損害回避義務違反を理由に賠償を認めるのが適切。
      ●3 事実的因果関係について
保護範囲論の多くは、「損害」を「事実」(債権者に生じた不利益な事実)と捉えたうえで、因果関係の確定問題を、賠償範囲の確定という規範的評価の問題から切り離し、発生した損害が債務不履行に原因を有するものであるかどうかという事実認定の問題として捉える。
作為の場合⇒「あれなければ、これなし」の不可欠条件公式
不作為の場合⇒「債務者が債務を履行していれば、この損害は生じなかった」といえるときに、債務不履行と損害との間の因果関係が肯定。
他方
「因果法則に照らせば、その債務不履行から、この損害が生じた」といえるときに因果関係を肯定すべきであるとの立場。
〜合法則条件公式に即して因果関係の有無を判断する立場。
問題の原因から因果法則に即して事象を展開したときに、問題の結果に到達できる場合に、因果関係ありとする立場。
「その債務不履行から、この損害が生じた」ということを因果法則に従って探求していく(過去の事実を再現していく)のが、この考え方の核心。
合法則条件公式による因果関係の判断を支持。
賠償範囲の因果関係の判断過程および賠償範囲の確定に関する規範的評価(最近の有力説の枠組みによるならば、事実的因果関係の確定と保護範囲内か否かの判断)は「損害があったかどうか」の判断に組み込まれる。
この限りにおいて、因果関係論・賠償範囲論は損害概念と切り離された独自性を有しない。
      ●4 完全賠償原則と制限賠償原則について 
契約のもとでの損害リスクの分配という観点から賠償範囲を契約(責任)規範により限定するとの考え方(これは、制限賠償原則が起点に置く考え方である)をもとに、賠償範囲を画する評価の視点と評価の基準を明らかにするのが適切。
      ●5 新法416条に対する評価 
@当事者は、当該契約のもとで契約利益の実現を保障することを義務づけられるとともに、当該契約のもとで定型的に生じうる損害について、そのリスクを引き受けたうえで契約を締結したものとみるべき(当該契約のもとで定型的に生じうる損害については、当該契約のもとで、そのリスクは債務者に割り当てられている)。
⇒その損害が債務不履行により現実化したときには、債務者が賠償をしなければならない。
「通常生ずべき損害」が賠償されるべきであるとする第1号は、この旨を定めたもの。
A契約に基づく損害リスクの分配という観点⇒契約を締結することで契約利益の実現を保障した以上、債務者は、契約締結後も、契約利益が本旨に適って実現されるよう、契約を尊重して、誠実に行動しなければならない。

契約締結時では定型的なものとして把握することのできなかった事情(特別の事情)が契約締結後に生じ、それが損害の発生ならびに拡大につながった場合であっても、契約から導かれる債務者の予見・回避義務を介して債務者がその損害を負担すべきものとされることがある。
第2項は、不完全ながらも、その旨を定めたもの。
★第4章 履行遅滞と遅延賠償     
         
★第5章 填補賠償(履行に代わる損害賠償)     
         
★第6章 損害賠償算定の基準時・・・損害の金銭的評価     
         
★第7章 賠償額の減額事由(p500)
      ◆第1節 損益相殺 
○  債権者が、損害が被ったのと同時に、債務不履行と同一の原因によって利益を受けた場合に、損害と利益の間に同質性・相互補完性がある限り、損害額から利益額を差し引いて、その残額をもって賠償すべき損害額とする。
ex.
・売買契約において、売主(債務者)の債務不履行を理由に買主(債権者)が契約解除⇒飼主(債権者)自信も自己の反対債務(代金支払債務)や履行費用を免れた⇒その額は、買主から売主に対する履行利益の損害賠償請求において、損害額から控除される。
・使用者(債務者)の安全配慮義務違反の結果として労災事故により死亡した労働者(債権者)の遺族が損害賠償を請求した場合に、労働者が支出を免れた将来の生活費の額は、損額額から控除される。
ここにいう「利益」自体は、規範的概念で、法的にみて考慮に値するものでなければなrない。
最高裁H22.6.17:
売買の目的物である新築建物の重大な瑕疵があって、これを建て替えざるを得ない場合に、買主からの施工業者らに対する損害賠償請求において、買主が当該建物に居住していたという利益(居住利益)を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできない。
宮川補足意見:居住利益を控除することになれば、賠償を遅らせる誠意なき売主等を利するという事態を招き、公平でないと指摘。 
差額説を採用した場合、
A:債務不履行によって債権者が得た利益は、差額計算のなかに取り込まれ、損害とその額の算定において考慮されるのか、
B:差額計算のもとで損害とその額が算定された後に、損益相殺によって債権者が得た利益を控除して賠償額を見飛びき出すのか
という問題。
      ◆第2節 過失相殺 
      ◆第3節 その他の減額事由の問題