シンプラル法律事務所
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論点整理(債権総論償(潮見説))

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

★★★★新債権総論T     
★★★第1編 契約と債権関係 
★★第1部 契約総論 
 ★第1章 契約自由の原則
     
★第2章 契約の成立(その1)・・申込みと承諾     
         
★第3章 契約の成立(その2)・・約款による契約(p29)
      ◆第1節 約款に関する一般理論(p29) 
      ■T 約款の意義 
      □1 約款の意義 
        多数の契約に用いられるためにあらかじめ定式化された契約条項の総体
@多数の契約を処理する目的で作成されたものであること
Aあらかじめ作成されたものであること
B契約条項の内容が定型化・画一化されたものであること(内容の定型性・画一性)
C約款内容の形成に関する当事者間の交渉可能性の欠如(約款使用者側による一方的策定)
      □2 約款による契約の特徴 
        @約款条件について個別交渉がなく、一方当事者が作成または使用した契約条件を他方が受け入れるのが通例
A相手方にとっては、その契約条件を受け入れるか否かの自由しかないのが通例

相手方が自己決定権を行使する機会が保障されているのか、約款による契約が私的自治の原則に合致するといえるのかが問題。
but
約款に含まれる個々の条項についての合意(個別条項合意)がされていないことを理由にその拘束力を否定したのでは、取引の実態やニーズに合わない。

約款は、取引交渉のコストを低く抑え、事業者の活動を効率化し、結果的に社会全体の効用を増す。
        @個々の条項につき個別の合意がされていない約款の拘束力を認めるための法理の構築
A拘束力を認められた約款の条項についても、それが約款使用の相手方の利益を不当に害するときにはその条項を不当条項として無効にするための法理の構築。
      ■U 約款の拘束力 
      □1 問題の所在
        今日における学説の多くは、約款の拘束力は約款を契約に組み入れるとの当事者の意思に根拠づけられるとする考え方を支持。
〜当該約款を契約に組み入れるとの当事者の合意(組入れ合意)を要求する立場。
      □2 約款の拘束力の根拠・・・組入れ合意
      ●2−1 組入れ合意の必要性 
        約款の拘束力の根拠は組入れ合意にある。

@約款の拘束力を当事者の意思に基礎づけることで私的自治原則に依拠
Aその意思は約款を契約内容とするということに向けられていれば足り、個別の条項についての個別の合意(個別条項合意)を要しないとすることで、
社会的・経済的要請との調和をはかった。
      ●2−2 例外・・・国家により内容の公正さが担保された約款 
      □3 組入れ合意の前提・・・約款内容を認識する機会の確保(開示要件) 
        組入れが合意がされるためには、組み入れられる対象となる約款を当事者が認識したうえで、これを契約に組み入れるとの合意をすることが不可欠。

約款使用の相手方には、約款の内容を認識する機会が確保されていなければならない(約款内容を知る機会の保障)。
        「開示」要件(または「約款内容についての相手方の認識可能性」要件)を充たさない場合には、組入れ合意がされたとしても、約款は契約内容とならない。
      ◆第2節 「定型約款」に関する特則 
      ■T 序論・・「約款」に関する規律から「定型約款」に関する規律へ 
        民法の「定型約款」に関する規律は、約款の一般的な定義や約款一般に妥当する準則を扱うものではない。
      ■U 定型約款の定義 
      □1 総論 
        ☆第五四八条の二(定型約款の合意)
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
        定型約款:
定型取引(「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」をいう)において、「契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」。
        次のすべての用件を充たす「条項の総体」
@「定型取引」に用いられるものであること
A契約内容とすることを目的として準備されたものであること
B当該定型取引の当事者の一方により準備されたものであること
      □2 定型取引
        「定型取引」とは次のいずれをも充たす取引
        @特定の者が「不特定多数の者」を相手方として行う取引であること
〜相手方の個性に着目せずに行う取引であるか否かに注目
×労働契約
×「一定の集団に属する者」との間で行われる取引
        A取引の内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの

(i)多数の相手方に対して同一の内容で契約を締結することが通常であり、かつ
(ii)相手方が交渉をおこなわず、一方当事者が準備した契約条項の総体をそのまま受け入れて契約の締結に至ることが取引通念に照らして合理的である取引(その結果、交渉による修正や変更の余地のないもの)
×取引内容を画一的に定めることについて当事者の一方にとって主観的な利便性が認められる場合
×取引内容を画一的に定めることが当事者の一方にとってのみ合理的である
×当事者が交渉によってその内容を全般的に修正・変更する余地を残している場合
×当事者がその書式を契約準備段階でのたたき台として交渉することにより契約を締結する場合
×個別に交渉して合意した条項

取引内容の「全部又は一部が画一的であること」の要件を充たさず、「定型取引」にあたらない。
        生命保険約款、損害保険約款、旅行業約款、宿泊約款、運送約款、預金規定、コンピュータ・ソフトウェアの利用契約等は該当。
but
銀行取引約定書は、顧客の要望に応じて、個別契約において主要な条項を修正したり、その適用を全面的に排除したりするのが実務の実態であるとすれば、定型約款にはあたらない。
「ひな型」とよばれるものも、その多くは「定型取引」の要件をみたさず、定型約款とはいえない。
      □3 給付・対価条項の扱い 
        契約の目的である給付とその対価(反対給付)については、定型取引にあたる取引においても、これへの拘束が認められるためには、当事者の個別の合意を要する。

@「いかなる物品・サービスを、いかなる対価で提供するか」は、両当事者の合意(主体的判断)によってしか形成できない部分(=合意を擬制するのに親しまない部分)
A給付とその対価は、法律の規定によってではなく、市場メカニズムにより調整されるもの。
注:
主たる給付(価格・給付関係)については、市場経済秩序の中で契約当事者が自律的に確定する。
法律の規定によってではなく、市場メカニズムにより調整される。
⇒法律の規定によってではなく、市場メカニズムにより調整される。

不当条項に対する内容規制としてではなく、商品その他の給付を提供する際の給付記述・対価面での『透明性』を改善する・・・『透明性』確保によって、市場における最適な決定を支援する・・・ことに照準が合せられるべき。

透明性を欠くことを理由とする契約への組入れ(契約内容になること)の否定または条項の無効処理は、条項の内容が約款使用者の相手方にとって不利であることの理由によるものではなく、条項の記載・記述が不透明であるため相手方に不利であるとの理由によるもので、内容規制とは別次元の問題。

暴利行為・公序良俗違反(民法90条)、事情変更を理由とする契約改訂など、個別合意を扱う意思表示・法律行為の法理によって処理すべき。
条項の記述・記載が不透明であるために相手方の利益を一方的に害する場合には、このことを理由として当該部分が契約内容となることを否定し・・・不透明または理解しづらい記述・記載が給付・対価に関することにかかわる場合には、透明性を欠く部分は合意内容を成さない・・・またはその部分を無効と評価すべき。
        約款による契約(広くは、複数の条項から成る契約一般)について、その条項を規制する原則・準則
@透明性の原則:
「契約条項は、明確かつ理解しやすく(平易に)記述・記載されなければならない」
A不明瞭条項解釈準則:
契約で用いられた文言について複数の解釈可能性が残るためにその解釈に疑いがある場合⇒その契約文言を作成または使用した当事者に不利に解釈されなければならない
との準則。
B不意打ち禁止の準則:
契約中に置かれているある条項が、相手方がそれを考慮に入れる余地がないほどに異例な場合には、その条項は契約の内容とはならない
との準則
C契約条項の内容規制(内容コントロール):
相手方の利益を不当に害する(不公正な)内容の契約条項は無効である
との準則。
@ABは約款条項・契約条件の契約への組入れ(契約内容とすること)および契約の解釈の問題を扱う原則・準則。
Cは、契約内容となった約款条項・契約条件の内容に対するコントロールを扱う準則。
      ■V 定型約款とされることの効果(p42)
      ■W 定型約款による契約内容の補充
      □1 個別条項についての合意擬制(「みなし合意」)・・・そのための要件 
      規定 民法 第五四八条の二(定型約款の合意)
 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

2前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
        民法548条の2第1項の規定:
およそ契約条項に対する拘束力が認められるためには「個別の条項」について合意が必要であるということを前提とし、
定型約款に関しては「個別の条項」への合意を擬制するという観点に出た立案。
(個別条項合意擬制構成)
@「定型取引合意」をした者が定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき⇒定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
「定型約款を契約の内容とした」=「組入れの合意をした」という意味。
A定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)が「あらかじめ」その定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき⇒定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

あらかじめ定型約款が相手方に対して表示された上で、これに続いて両当事者が定型取引に関する合意をする場面が想定。
Aは@と同質。
「表示」は「公表」では足りず、当該契約の相手方に対してされたものでなければならない。
B取引自体の公共性が高く、かつ、約款による契約内容の補充の必要性が高い一定の取引で用いられている定型約款については、
定型約款準備者がその定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ公表⇒当事者がその定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

民法ではなく、特別法で規定。
      □2 不当条項は契約内容とならず・・・個別条項合意擬制からの除外 
      規定 民法 第五四八条の二(定型約款の合意)

2前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
      民法548条の2第2項:
@相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって、
A当該定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして民法1条2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの
⇒合意したものとみなされる条項には「含まない」。

消費者契約法や約款の不当条項規制に関する理論(=契約内容になったうえでその不当性ゆえに無効とされる)と異なり、不当条項は個別条項に関する合意擬制(個別条項合意擬制)の対象とならず、契約内容にならないという枠組み。
        Aの「当該定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして民法1条2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」

事業者・消費者間の情報格差医・交渉力格差に照準を合わせた消費者契約法10条における不当条項規制とは異なり、合意内容の希薄性、契約締結の態様、健全(合理的)な取引慣行等を考慮に入れて当該条項の不当性の有無が評価される。
⇒規範構造上は事業者間契約を例外としない。
      ■X 定型約款の内容の開示義務 
      □1 開示義務が認められる場面・・・相手方からの開示請求 
      規定 民法 第五四八条の三(定型約款の内容の表示)
 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
2定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
        定型約款準備者が約款内容の開示義務を負う場面を、定型取引合意の前または定型取引合意の後相当の期間内に相手方から開示請求があった場合に限る

@相手方も定型約款の中身を逐一見ようとしない場合が多くある
A相手方が、みずからが締結しようとした契約または締結した契約に用いられる定型約款の内容を確認できるようにするのが必要
      □2 開示の位置づけ・・・約款の一般理論との違い
        定型約款についての
@開示が約款の拘束力(=約款が契約内容となること)を認めるための必須の要件とはなっていないこと(=約款の拘束力と開示の問題が切り離されている)
A開示義務は一定期間内に開示請求があった場合に限られている

約款の一般理論とは異なっている。
      □3 定型約款準備者が開示義務を負わない場合 
        定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたとき
      □4 定型約款準備者が開示請求を拒絶した場合の効果 
      ●4−1 定型取引合意前に開示請求がされた場合 
        個別合意擬制(民法548条の2)は働かない
      ●4−2 定型取引合意後に開示請求がされた場合 
        定型取引合意は成立。
相手方は、
@開示義務違反を理由とする損害賠償請求、
A開示義務の履行強制としての定型約款を記載した書面・電磁的記録の交付の強制
正当な事由のない不開示⇒信義則上、約款内容である契約条項の定型約款準備者による援用が否定との見解もある。
      ■Y 定型約款の変更 
      □1 定型約款変更ルールの必要性 
      規定 民法 第五四八条の四(定型約款の変更)
 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

2定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

3第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

4第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。
        民法は、所定の要件を充たせば、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意をしたものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができるとしている(法548条の4第1項)。
but
定型約款に入れられている給付・対価条件は、民法548条の4の規制対象ではないというべき。

給付および対価についての一方的変更は認められるべきではない。
      □2 定型約款の変更の要件・・・変更の合理性
        民法548条の4第1項は、変更の合理性の要件として、次のいずれかを満たすことを求めている。
@定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合すること(1号)。
A定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、「変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものである」こと(2号)

変更される条項の内容が個別合意の対象となることなしに契約に組み込まれる

@その変更が相手方にとって利益となるか、
A当該定型約款の変更の必要性、変更後の内容の相当性等に照らし、定型約款の変更が合理的であること
を要する。
      □3 定型約款準備者の周知義務
        定型約款の変更をする場合には、定型約款準備者は、
インターネットの利用その他の適切な方法により、
定型約款を変更する旨および変更後の定型約款の内容ならびにその効力発生時期を周知させる義務を負う(法548条の4第2項)。
        民法548条の4第1項2号による定型約款の変更(上記A):
変更後の定型約款の効力発生時期が到来するまでに周知をしなければ、その効力を生じない(民法548条の4第3項)。
but
民法548条の4第1項1号による定型約款の変更(上記@)は、同条3項の対象外。

相手方の一般の利益に適合する変更ゆえ、周知義務を課すことで変更を制約する必要はない。
★★★第2編 債権の内容     
★★第1部 総論    
         
★★第2部 特定物債権(p188)    
★第1章 特定物債権の意義    
      ◆第1節 特定物債権の意義 
        特定物債権:特定物の引渡し(占有の移転)を目的とする債権。
ex.
特定物売買における買主の目的物引渡し請求権
賃貸借契約ににおける賃借人の目的物引渡請求権
賃貸借契約終了時の賃貸人の目的物返還請求権
契約が無効であったり、取り消されたり、解除されたりした場合における既に引き渡された特定物の返還請求権
      ◆第2節 特定物・不特定物と代替物・不代替物 
        特定物か不特定物(種類物)か:当事者の主観で定まる
代替物か不代替物か:客観的に定まる

特定物で代替物もある。
★第2章 債務者の負担する義務・・・引渡義務と保存義務    
      ◆第1節 引渡義務(占有移転義務) 
      ■T 契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務 
        引渡義務の内容は、当該特定物債権を発生させた契約や法律の内容に即して決定。

契約上の債権:
契約の内容に適合した物を引き渡すことが、引渡義務の内容を成している。

単に「この物」(特定物)を引き渡せば引渡義務が履行されたというものではない。
売買契約では、売主は当該売買契約の内容に適合した性質の物を引き渡す義務(しかも、結果債務である)を負う(民法559条を介して有償契約一般に準用)。
      ■U 贈与についての特則 
         
         
         
      ◆第2説 保存義務 
        民法 第四〇〇条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
      ■T 保存義務の内容 
        債務者は、引渡しをする時点まで、その物を保存しなければならない(民法400条)。
        「善良な管理者の注意」:
一般に、合理的な人(平均人)ならば他人の財産を管理するときに尽くすであろう注意
        新法400条:
この保存義務の程度としての「善良な管理者の注意」の内容が、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる」としている。

「善良な管理者の注意」の内容が
@契約上の債権の場合には契約によって定まり、
Aその他の発生原因(事務管理、不当利得など)から生じる債権の場合には当該発生原因によって定まる
ことを明らかにしている。
        「取引上の社会通念」

特定物債権が契約に基づいて発生した場合を主として想定し、
この場合に、保存のための必要な措置が、
契約当事者の主観的意思のみによって定まるのではなく、当該契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の取引をとりまく客観的事情をも考慮して定まることがありうることを示すもの。
契約の内容(契約規範の内容)を導く際に当事者の主観的事情とともに客観的事情も考慮されうることも示すために、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という表現が用いられたにすぎない。
      ■U 保存義務違反の効果 
         
      ◆第3節 引渡義務と保存義務の関係 
         
      ◆第4節 民法400条の守備範囲 
         
★第3章 その他の義務    
         
    ★★第3部 種類債権(p208)
         
★★第4部 金銭債権(p224)    
         
★★★第3編 債務の不履行とその救済     
★★第1部 履行請求権とこれに関連する制度     
         
★★第2部 損賠償請求権(T):要件論     
         
★第5章 表明保証    
      ■T 意義 
米国では、表明保証条項は、
約束の内容を構成しない表示について、これを補償(保証)の対象とすることにより、表明された事項に齟齬があった場合に、表意者に対して損失補償(賠償)を求める根拠とするために、契約に組み込まれてきたもの。
      ■U 表明保証が用いられる場面 
      ■V 狭義の表明保証条項 
      ■W 広義の表明保証条項 
      ■X 表明保証の対象の確定・・・契約解釈の重要性 
      ■Y 表明保証された事項の錯誤取消しの可能性 
      ■Z 相手方が悪意の場合の処理 
      ■[ 不実表示を理由とする損害賠償との関係 
      ■\ 債務不履行との関係・・・狭義の表明保証の場合 
★★第3部 損害賠償請求権(U):効果論     
★第1章 損害論     
      ◆第1節 差額説 
      ■T 差額説の意義 
      ■U 差額説の各種 
      ■V 差額説と結び付けられた賠償範囲確定・金額算定理論 
      ◆第2節 差額説に対する批判と、差額説に代わる理論 
         
      ◆第3節 規範的損害 
         
      ◆第4節 履行利益(積極的利益)と信頼利益(消極的利益) 
         
      ◆第5節 損害の捉え方に対する著者の立場(p440)
      ■T 仮定的事実状態と現実の事実状態の差としての「損害」 
A:差額説
vs.
債務不履行がなかった状態の回復という原状回復の理念により、賠償されるべき損害を確定するための指針を示しているが、
損害の本質、賠償対象の確定問題と、それへの金銭評価という次元を異にするプロセスを中間省略し、算定結果のみを捉えて損害概念を定義している点で問題。
B:損失説や損害事実説
vs.
どの損害項目を賠償されるべき損害とみるのか、それをどのような基準で確定するのかということを指示する理念ないし指標が損害概念にあらわれてこない。
債務不履行に遭遇して(全体的または部分的に)妨げられた契約上の地位を金銭的価値において実現するのが損害賠償

損害は、
@債務不履行がなければ債権者が置かれていたであろう仮定的な事実状態と、
A債務不履行の結果として債権者が現実に置かれている事実状態
との「差」として把握されるのが適切(事実状態比較説)。

契約上の地位の価値的実現という観点のもと、仮定的事実状態と現実の事実状態の差として損害を捉えるということは、損害の規範的評価とあいまあって、債務不履行を理由とする損害賠償の制度は何を目的としたものであるかという損害賠償制度の目的ないし理念を個々の債務不履行事例に投影し、賠償されるべき損害の範囲の決定に正当性を与え、損害賠償制度、ひいては契約制度や権利の体系全体に体系的一貫性をもたらすもの。
      ■U 積極的利益の賠償・・・契約上の地位の価値的実現(契約利益説)(p441)
      □1 損害賠償請求権の権利追求機能 
事実状態の差を捉える際に、「契約上の地位」ないしは「債権」という権利の実現を損害賠償の形で保障するのが損害賠償であるという面に着目⇒債務不履行による損害賠償請求権は、「契約上の地位」ないしは「債権」の価値代替物の意味を有する。

金銭に形を変えての本来的権利内容の貫徹という、権利追求機能(権利保護機能)が前面に出てくる。
契約上の債務の不履行を理由とする損害賠償における権利追求機能(権利保護機能)

@契約により得られた利益(給付利益)それ自体のもつ金銭的価値を保障するものとしてあらわれる(=給付の客体それ自体の価値の賠償)とともに、
A債権者がその保持したであろう給付利益を用いて社会生活のなかで人格的活動を展開することにより得るであろう財産的利益を保障するもの
=被害者が社会生活のなかで権利・法益の客体を用いて自己の人格を自由に展開すること(人格権・自己決定権に由来する人格の展開の事由。財産的管理・処分の自由を含む)によって享受することができた財産状態を被害者に実現することを目的とした賠償(=人格の展開の自由が侵害されたことにより、被害者の総体財産に生じた損害の賠償)としてあらわれる。
      □2 規範的損害論と規範的評価の視点・・・・契約上の地位の金銭的価値による実現 
債務不履行による損害賠償請求権は、契約上の地位の金銭的価値による実現保障(=金銭的価値に形を変えての本来的権利内容の貫徹)という面をもつ(契約利益説)。
損害概念は、ある事態の存在を前提としているという意味で事実的でありながら、
債権者が本来有していた権利内容(契約上の地位)を金銭的価値で実現するという目的に出て仮定的事実状態と現実の事実状態を確定するために規範的評価をするという意味で、規範的でもある(規範的損害論)。
      □3 契約上の地位に対して結びつけられるべき価値・・・具体的損害計算と抽象的損害計算 
    ●3−1 具体的損害計算と抽象的損害計算 
具体的損害計算:当該債権者を基準として、損害項目が何か、それぞれの損害項目に割り付けられる金額がいくらであるかを確定していく価値計算方法
抽象的損害計算:当該債権者と属性を同じくする平均的な人(類型人)であれば、どのような損害項目が観念され、それぞれの損害項目に割り付けられる金額がいくらであるかを画定していく価値計算方法
一棟の建物の賃貸借で、賃貸人Aが当該建物を賃借人Bに使用収益させなかったという例(賃貸人の債務不履行)では、
Bを基準として賠償されるべき損害および額を画定していくのが具体的損害計算
Bと同じ属性を有し、同種同等の建物を賃借した平均人を基準として賠償されるべき損害およびその額を確定していくのが抽象的損害計算
具体的損害計算・抽象的損害計算は、いずれも、@損害項目の選定とA金銭評価の2面で問題となる。
    ●3−2 具体的損害計算の原則・・・当該契約のもとので個別・具体的な価値の賠償 
債務不履行による損害賠償請求は、契約上の地位の金銭的価値による実現保障(金銭的価値に形を変えての権利内容の貫徹)という面をもつ
⇒当該契約において当事者が契約上の地位にどのような具体的な価値を結びつけたのかを個別に探求し、これによって導かれた個別・具体的な価値を損害賠償によって実現するのが、損害賠償請求権の第1の目的
    ●3−3 抽象的損害計算による補充・・・客観的・類型的価値の賠償 
具体的損害計算により確定されるべき「契約上の地位」の有していた利益・価値を当該具体的契約の解釈を経てもなお確定することができない
⇒補充的(第2次的)に、抽象的・類型的に捉えられた契約上の地位に対し私法秩序によって与えられるべき客観的価値について、その賠償を認めるという方向で調整。
当該契約の属する類型に結び付けられた価値、すなわち、当該契約に客観的・類型的に結び付けられた価値を評価して、この観点から導きだされた価値を債務者から債権者に与えるのが、課題の利益を与えることなく債権者の地位を保障し(=私的自治・契約自由の原則のもとでめざされた結果も確保される。)、他方で債務不履行をおかした債務者にとっても過剰とはいえない負担を課することになり(=「契約は守られるべきである」との原則のもとでめざされた結果も確保される。)、合理的。
      □4 損害賠償確定問題と損害論との重複・・・損害論の体系的意義 
規範的観点から損害の定義、すなわち、「債務不履行における損害は何か」という点からの判断(@)(=「仮定的事実状態と現実の事実状態の差」の判断)のなかに、
「債権者が本来有していた権利内容を金銭的評価で実現するためには、どこまでの損害が賠償されるべきか」という規範的評価(A)がとりこまれてくる。

Aは、金銭的価値に形を変えて本来的権利内容を実現するとい目的に出た賠償範囲の確定作業であるところ、このことは、「損害とは何か」(@)が論じられる際に、同時に「賠償されるべき損害範囲がどこまでか」(A)が論じられることを意味する。
さらに、債務不履行を理由とする損害賠償請求における「債務不履行により債権者に生じた損害」という要件は、一面において「損害とは何か」(@)を述べるものであると同時に、他面において「賠償範囲」(A)(=民法416条が担当する判断)を述べるもの。
      ■V 消極的利益の賠償・・・原状回復的損害賠償(p444)
      □1 原状回復的損害賠償の有用性 
原状回復的損害賠償(費用賠償):
債務不履行を理由とする損害賠償という手法を用いて、契約がなかった状態の価値的な回復がめざされている。

@「債権の価値の実現」(契約利益が有する価値の金銭による実現)ではなく、
A「契約がなかった状態への原状回復」が、
債務不履行の効果として損害賠償によって企図されている。
積極的利益の賠償と合わせてこうした原状回復の方向での消極的利益の賠償を求めることは、回復を求める利益の方向の点で矛盾するために許されない。
but
債権者が消極的利益の回復(原状回復)にしぼって債務不履行に基づき損害の賠償を請求することは、排除されるべきではない。
      □2 解除制度との関係
解除要件を解することなく、損害賠償という方法で契約がなかった状態の価値的現状回復を認めるというのは、解除なしでの契約の拘束力からの解放を認める意味で、解除制度を回避することとなるのではないか?との疑問。
      □3 原状回復的損害賠償制度の保護目的・・・・費用投下に向けた自己決定権 
債務不履行を理由とする原状回復的損害賠償(費用賠償)は、債権侵害(契約上の地位の侵害)を契機とするものの、自己決定(すなわち、契約の締結や費用投下)に伴うコストを債務者に転嫁することにより、この種のコスト負担から債権者を開放することを目的にする点で、債権者の自己決定権を保護している。
★第2章 損害の分類     
      ◆第1節 財産的損害と非財産的損害 
      ◆第2節 積極的損害と消極的損害 
      ◆第3節 通常損害と特別損害 
★第3章 損害賠償の範囲     
      ◆第1節 賠償されるべき損害の範囲の捉え方 
      ■T 緒論・・・民法416条の規定の変遷:旧法と新法 
      ■U 賠償範囲の確定法理に関する諸説(その1)・・・相当因果関係論 
      □1 基本的な考え方 
      □2 相当因果関係論の特徴 
      ●2−1 責任原因(帰責事由)と責任効果の社団 
      ●2−2 因果関係による賠償範囲の確定 
      ●2−3 因果関係の起点としての債務者(または補助者)の行為 
      ●2−4 法的因果関係・・・相当性 
行為のもつ原因力の探究ではなく、損害を行為者に帰属させるという規範的評価がされている。
      ●2−5 相当性の判断基準 
行為の当時、行為者が知っていたか、または合理的な行為者であれば知ることのできた事実に基づいて、当該行為が損害の発生にとっての相当な原因でったか否かを評価する考え方が支配的。

契約の内容がどのようなものであったかという点は、相当性の判断にとっては二次的・間接的なもの。
      ●2−6 民法416条と相当因果関係の関係 
民法416条1項は、相当因果関係の原則を定めたもの。
その上で、同条2項は、相当性判断の際に、行為から損害へと展開するにあたって作用した事情のうち、どのような事情を考慮に入れるかを定めたもの。
通常の事情は当然に考慮するが、特別の事情については、「行為者」が行為の当時に予見または予見できたものは考慮するけど、それ以外のものについては排除することを述べたもの。
      □3 相当因果関係論に対する批判 
@相当因果関係論は、完全賠償原則を採用するドイツにおいて、賠償範囲を限定するために用いられた理論であり、完全賠償原則を採用していないわが国にもちこむべきではない。
A因果関係判断とは、過去に生じた事実の復元を目的とするものであり、この意味で、因果関係概念は、事実的なものとしてとらえられるべきもの。
B当該契約に照らせば債務者が負担すべきとされる損害が何かは、債務不履行と事実的因果関係があるものとされた損害を対象として、具体的な契約規範の目的に即して個別的に考察される。
C民法416条は、債務不履行(契約違反)の場合に、事実的因果関係が認められる損害のうちのどこまでを賠償させるべきかを扱う規定⇒保護範囲を画定するためのルールとして予見可能性のルールが妥当しない不法行為責任に、旧法416条は妥当しない。
      ■V 賠償範囲の確定法理に関する諸説(その2)・・・保護範囲論・契約利益説 
      □1 基本的な考え方 
契約のもとでのリスク分配に照準を合わせ、「契約」・「契約規範」・「契約利益」という観点を入れることによって賠償範囲の確定法理に関する転換を促す。
当該契約のもとで両当事者が損害リスクをどのように予見していたのかを、締結された契約から、その解釈を通じて、確定すべきであるとし、こうして確定された損害のみが賠償されるべき。
ここでの予見可能性は、事後的予見可能性ではなく、規範的評価と結び付けられた予見可能性である。
不法行為責任では、保護範囲論は、責任原因である故意・過失によって賠償範囲を画する立場としてあらわれる。
具体的に発生した「損害」を起点としたうえで、過失による不法行為の場合には、過失を「損害」を回避すべき義務に対する違反と捉える⇒生じた損害(=不利益な事実)が加害者の行為と事実的因果関係に立ち、かつ、損害回避義務の射程内にあれば、賠償されるべきであるとする(義務射程論)。
また、故意による不法行為の場合には、故意を「損害」発生の意欲または認容の意味で捉えたうえで、意欲または認容された損害については、すべてが賠償されるべきであるとする。
      □2 保護範囲論の特徴・・・「契約利益」を基礎に据えた賠償範囲の確定 
      ●2−1 総論 
賠償されるべき損害の範囲について、契約規範によって保護されている契約利益を基点に据え、その契約利益が実現されたのと同等の利益状態を債権者に対して価値的に実現するように賠償範囲を決定すべき。
      ●2−2 責任原因と責任効果の連関(責任設定規範としての契約規範)  
責任設定規範としての契約規範の保護目的を考慮して、賠償されるべき損害の範囲を決する。
〜責任原因と責任効果とが関連づけられている。
責任設定規範とは、両当事者の合意に基づき設定された契約規範であって、伝統的見解が説くところの故意・過失規範(履行過程における注意義務(具体的行為義務)を根拠づける規範)ではない。
      ●2−3 契約利益を基点とした損害リスクの分配
契約によって設定された規範(契約規範)が一定の利益(契約利益)の保護に向けられたものであるところ、その保護された契約利益に対して加えられた侵害を原因とする損害のうち、当該契約の内容に即してみれば債務者に分配されるべきもののみが、債務者によって賠償されるべき。
賠償されるべき損害の範囲の決定、すなわち、ある損害を債務者に帰属させることを正当化する基礎となるのが契約上の合意。

契約規範によって保護されている契約利益を基点として賠償範囲を確定するという保護範囲論の考え方は、債務不履行の帰責の根拠を、契約、したがって、両当事者が合意により設定した契約規範に求める思想(=合意は遵守されるべし)と調和。
      ●2−4 損害リスクの分配という観点からの契約内容の探求 
当該契約により債務者に分配された損害リスクが何かが、具体的な契約規範の目的に即して個別的に考察される。 
@契約不履行のあった当該契約当事者の職業(商人であるかどうか等)、A目的物の種類(有価証券、商品、建物、山林、船舶等)、B契約の目的(転売、原材料・営業設備としての使用、自家の消費、生活上の使用等)、C契約当事者間の属する取引圏における慣行などを考慮し、
当該契約当事者にどれだけの範囲について損害賠償義務を負わせるのが妥当かに基づき、契約の解釈を通じて、賠償されるべき損害の範囲が決定される。
      ●2−5 予見可能性ルールの捉え方 
予見ないし予見可能性が重要なのではなく、契約規範の保護範囲の確定と、それに即した解釈が決定的となる。

予見可能性要件のもとで考慮されるのは、単なる事実としての予見可能性ではなく、「予見すべきであったかどうか」という価値判断であるとみるのが、当を得ている。
      ●2−6 民法416条と保護範囲論との関係 
保護範囲論が想定している予見可能性は、「損害」を対象としたものとなる。
文言上は、「特別の事情」についての予見を問題としているものの、これを「特別の損害」についての予見を問題としたルールと理解したうえで、契約解釈を通じた損害範囲の確定の場面に妥当させようとしている。
      □3 契約に基づくリスク分配の意味 
      ●3−1 緒論・・・保護範囲論の多様性 
      ●3−2 契約締結時のリスク分配に依拠する立場 
保護範囲論を支持する論者の多くは、契約に基づく損害リスクの分配を重視
⇒契約締結時に両当事者が予見することのできた損害リスクのみが契約に組み込まれる
⇒契約締結時における、両当事者の予見可能性を基準とすべき。

@契約のなかで、契約違反(不履行)が生じたときに債権者生じる損害を予測・計算し、両当事者間でそのリスクを分配しているという理解をしたうえで、
A契約締結にあたり両当事者によって予見することのできなかった損害は、債務者に分配されていないゆえに、債務者に帰責事由のある債務不履行であったとしても債務者はそのリスクを負担する必要がない
という枠組み。
      ●3−3 契約規範によるリスク分配に依拠する立場 
契約締結時から債務不履行時までに予見できた事情に由来するリスクを、債務不履行をした債務者ではなく、債権者に負担させるのは適切でない(債務不履行をした債務者こそ、債務不履行時までに予見できた事情に由来するリスクを負担すべきである)
⇒予見の当事者を債務者、予見の時期を債務不履行時
      ●3−4 故意の債務不履行の場合の特別の処理を説く立場 
      ●3−5 政策的価値判断による保護範囲の確定を強調する立場 
      ■W 著者の立場 
      □1 積極的利益の賠償と原状回復的損害賠償 
      □2 積極的利益の賠償範囲 
      ●2−1 契約利益説 
保護範囲論を支持する多くの論者は、両当事者の合意(そして、契約利益)を基点とする損害リスクの分配を決定的なものとみている。
〜契約のもとで、契約違反(不履行)が生じたときに債権者に生じる損害を予測・計算し、両当事者間で分配しているという理解をしたうえで、契約締結にあたり両当事者によって当該契約のもとで把握されなかった損害は、そのリスクが債務者に分配されていないゆえに、たとえ免責されない債務不履行であったとしても、債務者はこれを負担する必要がないという枠組み。
      ●2−2 契約に基づく損害リスクの分配 
契約に基づくリスク分配の考え方は、債務者が故意に損害を惹起した場合にも等しく妥当すべき。
損害賠償法上で、契約を離れて故意による損害賠償を特別に扱うのであれば、不法行為を理由とする損害賠償の枠組みに依拠するほかない。
      ●2−3 履行過程における債務者の損害予見・回避義務 
契約を締結することで契約利益の実現を保障⇒債務者には、契約締結後も、債権者のもとで契約利益が本旨に適って実現されるよう、契約を尊重して。誠実に行動しなければならない(民法1条2項にいう「義務の履行」。多数説がいうところの履行過程での付随義務の一種)。
契約を尊重し誠実に行動しなければならない義務の向けられた対象(契約に基づく損害リスクの分配の射程)は、債務の履行のみならず、契約締結時点では予見することができなかった損害の発生ならびに拡大の認識・回避にも及びうる。
契約締結時点で両当事者が認識または考慮していなかった債権者の損失であっても、契約締結後に債務者がその発生または拡大を予見すべきであったものについて、「契約を締結することにより契約利益の実現を保障した以上、債務者は、契約締結後も、債権者のもとで契約利益が本旨に適って実現されるよう、誠実に行動すべきである」との規範を介して、債務者の損害回避義務違反を理由に賠償を認めるのが適切。
      □3 事実的因果関係について
保護範囲論の多くは、「損害」を「事実」(債権者に生じた不利益な事実)と捉えたうえで、因果関係の確定問題を、賠償範囲の確定という規範的評価の問題から切り離し、発生した損害が債務不履行に原因を有するものであるかどうかという事実認定の問題として捉える。
作為の場合⇒「あれなければ、これなし」の不可欠条件公式
不作為の場合⇒「債務者が債務を履行していれば、この損害は生じなかった」といえるときに、債務不履行と損害との間の因果関係が肯定。
他方
「因果法則に照らせば、その債務不履行から、この損害が生じた」といえるときに因果関係を肯定すべきであるとの立場。
〜合法則条件公式に即して因果関係の有無を判断する立場。
問題の原因から因果法則に即して事象を展開したときに、問題の結果に到達できる場合に、因果関係ありとする立場。
「その債務不履行から、この損害が生じた」ということを因果法則に従って探求していく(過去の事実を再現していく)のが、この考え方の核心。
合法則条件公式による因果関係の判断を支持。
賠償範囲の因果関係の判断過程および賠償範囲の確定に関する規範的評価(最近の有力説の枠組みによるならば、事実的因果関係の確定と保護範囲内か否かの判断)は「損害があったかどうか」の判断に組み込まれる。
この限りにおいて、因果関係論・賠償範囲論は損害概念と切り離された独自性を有しない。
      □4 完全賠償原則と制限賠償原則について 
契約のもとでの損害リスクの分配という観点から賠償範囲を契約(責任)規範により限定するとの考え方(これは、制限賠償原則が起点に置く考え方である)をもとに、賠償範囲を画する評価の視点と評価の基準を明らかにするのが適切。
      □5 新法416条に対する評価 
@当事者は、当該契約のもとで契約利益の実現を保障することを義務づけられるとともに、当該契約のもとで定型的に生じうる損害について、そのリスクを引き受けたうえで契約を締結したものとみるべき(当該契約のもとで定型的に生じうる損害については、当該契約のもとで、そのリスクは債務者に割り当てられている)。
⇒その損害が債務不履行により現実化したときには、債務者が賠償をしなければならない。
「通常生ずべき損害」が賠償されるべきであるとする第1号は、この旨を定めたもの。
A契約に基づく損害リスクの分配という観点⇒契約を締結することで契約利益の実現を保障した以上、債務者は、契約締結後も、契約利益が本旨に適って実現されるよう、契約を尊重して、誠実に行動しなければならない。

契約締結時では定型的なものとして把握することのできなかった事情(特別の事情)が契約締結後に生じ、それが損害の発生ならびに拡大につながった場合であっても、契約から導かれる債務者の予見・回避義務を介して債務者がその損害を負担すべきものとされることがある。
第2項は、不完全ながらも、その旨を定めたもの。
★第4章 履行遅滞と遅延賠償     
         
★第5章 填補賠償(履行に代わる損害賠償)     
      ◆第1節 履行に代わる損害賠償請求(p474) 
      ■T 「履行に代わる損害賠償」の意味 
民法415条2項は「履行に代わる損害賠償」という概念

債務の本旨に従った履行がされたならば債権者が得たであろう利益を金銭で填補することを目的とした損害賠償(填補賠償)
      ■U 履行に代わる損害賠償請求をすることができる場合 
      □1 総論 
      □2 履行不能 
      □3 明確な履行拒絶(確定的な履行拒絶) 
 
      □4 契約の解除権が発生した場合
      ●4−1 総論 
      ●4−2 旧法下での議論・・・催告後相当期間が経過した後の填補賠償請求 
相当期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がされない場合には、債権者は、履行を拒絶して填補賠償を請求できる(大判昭和8.6.13)。
      ●4−3 中間試案の考え方 
      ●4−4 新法の考え方 
      □5 契約が解除された場合 
      ■V 履行請求権と填補賠償請求権の関係 
      □1 旧法下の伝統的立場・・・履行請求権から填補賠償請求権への転形 
伝統的学説:
填補賠償請求権(履行に代わる損害賠償請求権)は履行請求権が形を転じた(転形した)ものであり、かつ、履行請求権が消滅すると同時に転形が生じるものと理解。

債権者は、債務者に対して履行をすることができる一方、填補賠償請求することができない。
but
伝統的学説も、例外として、
相当期間を定めた履行の催告がされた後も履行がされない場合(しかし、解除がされていない場合)と、執行不能の場合に備えてあらかじめ填補賠償をする場合。
      □2 旧法下における著者の立場
不履行に遭遇⇒
@債務者に対し履行請求権を行使することも、
A填補賠償請求権を行使することも
原則として自由である。
これら複数の手段を利用することが可能な場合でも、債権者には合理的な行動が要請される。

@本来の給付につき履行がなお可能である場合において、
債務者から遅延賠償とともに本来の給付の提供

遅延賠償とともにする遅れた履行では不都合があることを正当化できるだけの根拠がなければ、債権者としてはこれを拒むことはできない。
A履行がなお可能な場合において、いまだ債務者から本来の給付の提供はないけれども、債務者から遅延賠償とともに本来の給付の提供がされれば
債権者に不都合がない場合であり、かつ、
填補賠償請求をしたのでは、債務者に対してみずからのおかした不履行と比較して過大な負担を課す結果となるときには、

債権者としては、まず履行請求権を行使すべきであり、
相当期間を定めて履行を催告し、その経過後に相当期間つき催告をしたにもかかわらず履行をしないという債務者の行為態様の不当性をも評価して、填補賠償請求を認めるのが適切。
      □3 新法の考え方
      ●3−1 転形論の否定 
      ●3−2 履行に代わる損害賠償請求(填補賠償請求)をした場合の履行請求権の処遇 
      ■W 関連問題・・・追完に代わる損害賠償請求権 
         
★第6章 損害賠償算定の基準時・・・損害の金銭的評価     
         
★第7章 賠償額の減額事由(p500)
      ◆第1節 損益相殺 
○  債権者が、損害が被ったのと同時に、債務不履行と同一の原因によって利益を受けた場合に、損害と利益の間に同質性・相互補完性がある限り、損害額から利益額を差し引いて、その残額をもって賠償すべき損害額とする。
ex.
・売買契約において、売主(債務者)の債務不履行を理由に買主(債権者)が契約解除⇒飼主(債権者)自信も自己の反対債務(代金支払債務)や履行費用を免れた⇒その額は、買主から売主に対する履行利益の損害賠償請求において、損害額から控除される。
・使用者(債務者)の安全配慮義務違反の結果として労災事故により死亡した労働者(債権者)の遺族が損害賠償を請求した場合に、労働者が支出を免れた将来の生活費の額は、損額額から控除される。
ここにいう「利益」自体は、規範的概念で、法的にみて考慮に値するものでなければなrない。
最高裁H22.6.17:
売買の目的物である新築建物の重大な瑕疵があって、これを建て替えざるを得ない場合に、買主からの施工業者らに対する損害賠償請求において、買主が当該建物に居住していたという利益(居住利益)を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできない。
宮川補足意見:居住利益を控除することになれば、賠償を遅らせる誠意なき売主等を利するという事態を招き、公平でないと指摘。 
差額説を採用した場合、
A:債務不履行によって債権者が得た利益は、差額計算のなかに取り込まれ、損害とその額の算定において考慮されるのか、
B:差額計算のもとで損害とその額が算定された後に、損益相殺によって債権者が得た利益を控除して賠償額を見飛びき出すのか
という問題。
      ◆第2節 過失相殺 
      ◆第3節 その他の減額事由の問題 
         

★★★★新債権総論U   
★★★第5編 債権の消滅 
★★第1部 弁済・弁済供託・代物弁済
 ★第1章 弁済・・・総論
     
★第2章 弁済の方法
      ◆第1節 弁済の時期・時間 
      ◆第2節 弁済の場所(履行場所)と方法 
      ■T 弁済の場所の意義 
        弁済の場所(履行場所):債務の履行のために必要とされる行為が完了する場所。
      ■U 持参債務の原則と例外 
      □1 特定物の引渡しを目的とする債務の場合 
債権発生当時にその物の存在した場所が、弁済の場所(法484条1項前段)。
but
特定物の引渡債務の不履行を理由とする損害賠償債務⇒法484条1項後段の原則に従い、持参債務。
         
★第3章 弁済の充当    
         
★第4章 弁済の提供    
         
★第5章 受領遅滞・受領障害
         
★第6章 弁済供託    
         
★第7章 代物弁済    
         
★★第2部 弁済の当事者    
         
         
★★第3部 相殺(p241)    
★第1章 相殺の仕組みと機能    
      ◆第1節 相殺(法定相殺)の意義 
      ◆第2節 相殺の機能 
      ◆第3節 法定相殺の概要 
      ■T 緒論
      ■U 当事者援用主義 
      ■V 相殺の遡及効 
      ■W 相殺の充当
  ★旧版(旧法)(p303)
規定 第512条(相殺の充当)
第四百八十八条から第四百九十一条までの規定は、相殺について準用する。
民法 第491条(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
自働債権または受働債権として複数の債権が対立関係⇒弁済充当に関する規定が相殺の場合に準用(民法512条)。
元本債権が複数存在している場合、
@どの債権とどの債権を相殺で消滅させるかについて債務者の指定権(指定充当)を認めてよいか?
A民法491条の規定をそのまま準用することができるか?
相殺が相殺適状にある債権・債務間の簡易決済に基礎を置く制度⇒
@の点につき、債務者の意思により決済されるべき債権・債務を選択させるのが適当とは言えず、相殺適状が生じた時期の先後により相殺の順序を決するのがよい。
Aの点についても、
複数の元本債権がどのような順序で相殺するかが決まらなければ佐生氏適状の時期が確定しない⇒利息の範囲も決まらない⇒491条に書かれてあるところをそのままあてはめて費用・利益を先に充当するという操作ができない(相殺適状の時期を問題とすることなく、相殺の意思表示がされた時までの各債権についての利息額を算定して491条に載せる、相殺の遡及効にてらして妥当性を欠く)。
最高裁:
@について、当事者の指定による選択の余地を認めている(最判昭和56.7.2)。
まず債務者(相殺の意思表示をなした者)に指定させ、債務者の指定がなければ相手方の指定という前提。

法上当然主義を採らず、当事者援用主義を採っている。
Aについては、最高裁は、当事者による相殺の順序の指定が無ければ、
「民法512条、489条の規定の趣旨」にのっとり、
まず、元本債権相互間で相殺適状となった時期に従って相殺の順序を決定し、
次に、次期を同じくする元本相互間および元本債権と利息・費用債権との間で民法489条と491条の規定の準用によって相殺充当を行うべき。
      注釈民法12p458 
大判昭9.10.12:
相殺の意思表示は双方の債務が互いに相殺を為すに適したる始めに遡りてその効力を生ずるものなるをもって、右相殺額を確定するためには、相殺適状を生じたる時期及びその時における双方の債権額を判定し、もし双方の債権が数個なる時はいずれの自働債権がいずれの受働債権と相殺せられたるやをも説示しなければならない。
自働債権及び受働債権がいずれも数個にして自働債権の総金額が受働債権のそれに超過するときは、相殺を為すに当たり自働債権中何れより先ず相殺を為したるやの順位を審究するにあらさればいずれの自動債権が一部残存してその余についてのみ請求成立の既判力を生じたるものなりやを確定することはできない。
        民法 第五一二条(相殺の充当)
 債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
2前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
一 債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第四百八十八条第四項第二号から第四号までの規定を準用する。
二 債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第四百八十九条の規定を準用する。この場合において、同条第二項中「前条」とあるのは、「前条第四項第二号から第四号まで」と読み替えるものとする。
3第一項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。〔本条の施行は、平二九法四四施行日〕
      □1 問題の所在・・・相殺充当の合意がない場合 
        当事者間に充当の順序に関する合意⇒その順序に従って充当(民法512条1項)
        合意なし⇒2つの問題
@複数の元本債権相互間の相殺の順序をどのように決するか?
Aどの債権とどの債権を相殺で消滅させるかについて、債務者の指定権(指定充当)を認めてよいか?
      □2 複数の元本債権相互間の充当の順序・・・相殺適状となった順に従った充当 
        債権者が債務者に
元本30万円のA債権 弁済期5月1日
元本25万円のB債権 弁済期7月1日
を有し
元本40万円のC債務 弁済期6月1日
元本20万円のD債務 弁済期8月1日
を負担。
債権者が10月10日に相殺の意思表示
@A債権とC債権の相殺により、C債権の元本10万円が残り
AB債権とC債権(相殺後の残債権10万円)との相殺により、B債権の元本15万円が残り、
BB債権(相殺後の残債兼15万円)とD債権との相殺により、D債権の元本5万円が残る。
        相殺制度の趣旨が、相対立する債権が差引計算されるという当事者の期待を保護し、当事者間の公平を図る点にある(相殺の簡易決済機能・公平維持機能)⇒相殺適状が生じた順序に従って相殺をすることが当事者の期待が合致し、公平の理念にも適う。
      □3 指定充当の可否 
        民法512条1項⇒充当の対象となる元本債権が決定される。
but
相殺に適するようになった時期を同じくする債務が複数あるときは、その時期を同じくする元本債権相互間および元本債権とこれについての利息・費用債権との間での処理が問題。
        旧法:当事者による指定のによる選択(指定充当)の余地を残していたい。
新法:指定充当を認めない。

相殺に遡及効を認めることと指定充当を認めることが整合的ではない。
      □4 法定充当 
    ●4−1 承前 
      ●4−2 債権者が数個の債務を負担する場合 
      ●  ●4−3 債権者が1個または数個の債務について元本・利息・費用を支払うべき場合 
      ●4−4 1個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合 
      □5 関連問題・・・・複数の受働債権がある場合の自働債権への充当
         
         
      ◆第4節 相殺契約 
      ◆第5節 法定相殺の要件・・・総論 
         
★第2章 相殺適状    
      ◆第1節 相殺適状 
         
★第3章 相殺の禁止    
         
         
★第4章 差押えと相殺    
         
         
★第5章 相殺権の濫用    
         
         
★★第4部 更改・免除・混同    
         
         
★★★第6編 債権関係における主体の変動    
         
         
         
         
         
         
         
★★★第2編 債権の内容