シンプラル法律事務所
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論点整理(セクハラ等)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

判例
東京地裁H8.6.7 1.結婚情報サービスを悪用した女性との交際が当該女性の人格権の侵害に当たるとして慰謝料の支払が命じられた事例
2.計画的不法行為に関し、損害賠償訴訟の不法行為抑止の効果に着目して、比較的高額の慰謝料が認容された事例
判断 Yは結婚する意思を有しないのにその意思があるかのように装い、婚約ないし結婚の承諾をすること巧妙に避けながら長期間性的関係の継続を図ったとして、Yに対し、Xの人格権侵害を理由に、300万円の慰謝料の支払を命じた
解説 婚約破棄ないし結婚の承諾の撤回を不法行為と認め、慰謝料の支払を命じた判例は多数あるが、婚約ないし承諾に至らない男女交際について、その解消を不法行為と認めた判決は見当たらない。

男女の交際の解消が不法行為に当たるかどうかの判断において、婚約ないし結婚約束が社会規範条契約的要素を持つものと考えられ、それに至っているかどうかが重視されてきた。
本判決は、これらの先例とは異なり、婚約に至らない男女関係の解消について、女性の人格権の侵害であるとの主張を認め、不法行為性を肯定したものであり、時代を反映した事例に関する判決。
慰謝料の額を認定するに際し、本件が計画的不法行為で、行為者に反省の意思がなく、損害賠償を認容して不法行為の抑止を図るほかないものであるとの観点を加味して、原告の請求額全額である300万円を認容している。
千葉地裁H13.7.30
判例時報1759
大学院医学部研究科の女性院生が、男性の指導教官から性的嫌がらせを受けたとして求めた損害賠償が認容された事例(慰謝料300万円)
判断 YのXに対する行為は、教育上の支配従属関係の影響の下になされたXの性的事由または人格に対する侵害であって不法行為を構成する。
Xの被った損害については、指導教官Yから研究発表の直前になされたこと、右行為により信頼を覆されて研究者としての立場を否定されたことによる精神的苦痛は耐え難いものである
⇒慰謝料として金300万円が相当。
Xには過失がない⇒過失相殺の主張は否定
東京高裁H16.8.30 大学のゼミの招へい講師が、ゼミの懇親会後にホテル内において、同行した女子学生から拒絶されることなく性行為をした場合においても、事実経過に照らし不法行為が成立するとして、慰謝料請求が認められた事例
判断 行為者である男性が、「一種のゲーム」「遊び」であったと説明するほかないような態様の性行為について、たとえ外観的・物理的には、そこに至るまでの間に、女性からいくらでも「帰ります」と言える機会や黙って逃げる機会があり、男性からの性行為を拒絶することができたといい得る状況であったとしても、それまでの過程において、その女性が、精神状態において、その男性の誘いを拒絶することができない心理的束縛を受け、「帰ります」と言ったり、その場から逃げたり、誘いを拒んだりする意思が働くなり、又はそのような意思を行動に移す決断ができなくなるという心理状態に陥ったことについて、男性の側に女性をそのような状態に誘導しようとする明確な意図があると認められる場合には、その男性の性的行為は、除尾性がそのような心理的状況において拒絶不能の状態にあることを悪用し、女性を一時的な性的欲望の対象としてもてあそんだものと評価すべきであり、人の性的自由ないし性的自己決定権を侵害する不法行為を構成する。
解説 女性が男性からの性的行為に対し、行為の外形上、拒絶の態度を示していないように見える事案である。このような事案においても、性的自由ないし性的自己決定権を侵害する不法行為が成立することを示す裁判例。
東京地裁H18.5.12 1.大学助教授が元教え子である非常勤講師に対して、大学講師職のあっせんと引換えに行った性交渉及び交際要求等が、非常勤講師の性的自由ないし人格権を侵害するものであり、不法行為を構成するとされた事案
2.元教え子である非常勤講師に対するセクシュアル・ハラスメント問題で虚偽の告発を雑誌に掲載され、名誉を棄損されたとして元大学教授が提起した慰謝料など請求事件において、その掲載内容な部分におおいて真実であるとされた事案
判断 原告と被告乙山との間における事実経過を詳細に認定した上で、原告から被告乙山にたいする一定の言動については、被告乙山の性的自由ないし人格権を侵害する行為であり不法行為が成立すると判断。
被告乙山による強姦の主張については、これを否定したが、性交渉(その存在は原告及び被告乙山の間において争いがない。)が非常勤講師の職の紹介と全く無関係になされたものではないとして、原告と被告乙山との間における性交渉自体が不法行為になる旨判断した。
また、原告が、被告乙山の留学の推薦状の作成等に必要であるとして、被告乙山にホテルの部屋を予約させて同質させ、その際に男女の交際や性交渉を求める言動に出た点を被告乙山の人格権を侵害する不法行為に当たると判断した。