シンプラル法律事務所
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☆いじめと不法行為)
★いじめと不法行為責任
(裁判法実務体系16巻 櫻井登美雄) 
◆一 はじめに
    遠藤は、その発生態様から、
(1)いたずら型
(2)ふざけ遊び型
(3)けんか
(4)りんち
の4つに分類。
    「いじめ」とは、通俗的には強者が弱者に対し、精神的・肉体的な苦痛を与えること
    昨今の「いじめ」は、前記通俗的な意味の「いじめ」の域を超え、集団の力を借り、又はサディスティックな方法で、非常に陰湿的継続的に、より弱い立場にある者に対し、精神的・肉体的に耐え難い苦痛を与えるものであること、そして
殴る蹴る等の暴力その他被害児童・生徒の身体に対する有形力の行使を伴ういわば外形的に明確な態様によるものばかりでなく、むしろ「いじめ」は潜行しこのような有形力の行使を伴わない不明確で捉えにくい態様のものが増える傾向にあり、
またその結果は、被害児童・生徒の登校拒否、転校、非行等、更には自殺という悲劇的な事態に至る場合があることが指摘。
     
  ◆二 加害生徒と父母の責任 
  ◇1 加害生徒の責任能力 
  ◇2 加害行為の違法性 
    違法性の有無は、非侵害利益の性質と侵害行為の態様との相関関係により具体的に判断される、と解するのが一般的。
   
    「いじめ」が、例えばわざと被害児童・生徒と口を利かず、殊更にこれを無視するような態度に出る、所持品を隠す、心身に欠陥があるかのごとく言い触らす(容姿や方言等をヤユする)、身体の一部に軽く触れる等、それ自体では、被害者児童・生徒の声明・身体に侵害を与えるものではなく、いわば有形力の行使を伴わず、被害児童・生徒に精神的苦痛を与えるに止まる態様の場合はどうか。
    一般的にいえば、このような「いじめ」を、違法な加害行為と認めることは困難。

個別的にみれば
but
個々の「いじめ」が右のようなものであっても、それが特定の児童・生徒に専ら向けられたものであって、多数の児童・生徒により、長期にわたって執拗に繰り返され、被害児童・生徒の心身に耐え難い精神的苦痛を与えるような場合には、被害児童・生徒の人格的利益を侵害するものとして、違法となるものと解される。
    有形力の行使を伴わない場合には、例えば被害女子生徒の外貌にいわれない中傷を絶えず加える行為を含む場合などもあろうが、その違法性が認められるのは、右に述べたような特別な事情のある場合に限られることになろう。
     
  ◇3 「いじめ」と被害生徒の自殺 
  ◇4 父母の責任 
     
  ◆三 学校設置者と教師の責任 
  ◇1 学校設置者の使用者責任 
  ◇2 学校設置者の安全配慮義務 
  ◇3 教師の責任 
     
  ◆四 おわりに 
     
★いじめ自殺事故
(現代裁判法体系H 伊藤進)  
  ◆一 問題の所在 
     
  ◆二 判例・学説の動向 
  ◇1 いじめ被害の認定 
     
    「いじめ」自殺事例で、「いじめ」認定につき、慎重なのは、自殺を「いじめ」によるものであると認定することに躊躇を感ずるから。
but
「いじめ」があったとしても、それが自殺の原因であるか否かは因果関係に関わる問題であって、「いじめ」認定の段階操作すべきではない。
  ◇2 「いじめ」自殺被害と過失 
    〇いわきいじめ自殺事件判決:
学校側の安全保持義務違反の有無を判断するに際しては、悪質かつ重大ないじめはそれ自体で必然的に被害生徒の心身の重大な被害をもたらし続けるもの⇒本件いじめが被害生徒の心身に重大な危害を及ぼすような悪質重大ないじめであることの認識が可能であれば足り、必ずしも被害生徒が自殺することまでの予見可能性があったことを必要としない
⇒過失を認定。
    ×新潟いじめ自殺事件判決:
認定の一連の事実から直ちに教師が自殺を予見し、これを防止する措置がとられたとと認めることは困難⇒自殺を防止できなかったことについて過失があると断定し得る証拠はない。

×岡山中学いじめ自殺事件判決:
自殺について責任を問うためには、学校側において、加害行為当時、被害生徒の自殺を予見することができる状況(予見可能性)が存することが必要であり・・・学校側に自殺の予見が可能であったとすることはできない⇒被害生徒の自殺について、学校側に義務違反の存在は認めることはできない。
    過失認定の前提となる予見可能性については、「行為当時、行為者が現に認識していた事実および通常人(職業・立場等を基礎として類型的通常人)が認識可能であった事実を基礎として、社会生活一般的に要求される基準(結果回避義務)を定立するに際し、その回避すべき対象としてどのような損害結果(危険)を通常人が一般的に予見・想定できるかということで」客観的・類型化されたものであり、相当因果関係判断のための加害者の主観的・具体的予見可能性と区別する必要があるとの指摘。

不法行為における過失については、客観的、定型化された抽象的過失でよい。
いわきいじめ自殺判決について、
学校側の「悪質重大ないじめ」であることの認識⇒通常人にとって予見可能な「被害生徒の心身に対する重大な被害」の発生を防止するための結果回避義務が生じ、学校側に被害生徒の自殺についての具体的予見がなくても、この結果回避義務に違反すること自体で直ちに過失の成立を認めたものであるとの解説。
「いじめ」自殺事故で、「回避すべき対象となる損害結果(危険)」は
「いじめ」自体なのか、
自殺なのか。

「いじめ」自殺被害は「いじめ」という加害行為が継続的、反復的になされた結果の積み重ねとして顕在化するものであり、「自殺は「いじめ」被害の一内容」に過ぎないとみることができる
⇒「いじめ」自体を回避の対象とみるべきであり、この「いじめ」について、予見、想定できていたかを判断するだけでよい。
     
  ◇3 「いじめ」自殺被害と因果関係 
     
    因果関係・相当因果関係については、
@不法行為の成立要件としての学校の過失と自殺との因果関係と、
A自殺も賠償の範囲に含まれるかを判断するための因果関係とに区別して検討すべき。
成立要件としての因果関係:
「いじめ」につき予見可能性があったにもかかわらず、「いじめ」回避措置が取られなかったことが過失⇒自殺の原因が「いじめ」であったのかどうかという客観的事実の有無によって判断すべき。
その際、自殺自体は被害生徒の意思的行為ではあたっととしても、そのような意思的行為を結果する原因が「いじめ」にあったのであれば、因果関係を認めて、不法行為の成立を認めるべき。

「いじめ」が自殺の原因となる可能性が極めて大きい⇒「いじめ」の存在が認定される限りにおいては、他に明確な自殺原因が存在しない限り、成立要件としての因果関係は認定されてよい。
(学校や教師の自殺についての予見可能性は問題にすべきではなく、単なる事実的因果関係があれば足りる。)
    自殺も賠償の範囲に含まれるか?
〜相当因果関係ないし保護範囲の問題。
     
     
  ◆三 今後の課題 
     
     
     



☆パワハラによる自殺の事案  
判例時報2374号
労働p78
名古屋高裁H29.11.30
  従業員の自殺について、業務起因性を認定し、勤務先会社の損害賠償責任が認められた事例
事案 Aが、被控訴人Y2及びY3からいじめ等を受け、かつ、被控訴人Y1は、前記事態を放置した上、十分な引継をすることなくAの配置転換をして、過重な業務を担当させた結果、Aが強い心理的負荷を受けてうつ状態に陥り自殺

Aの両親である控訴人Xらが、
被控訴人Y2及び被控訴人Y3に対しては、不法行為に基づき、
被控訴人Y1に対しては、債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為に基づき、
損害賠償金の支払を求めた。
労働者災害補償保険において、平成25年12月、Aの死亡について業務起因性を認定。
原審 Aは仕事上の入力ミスなどが比較的多かったが、
被控訴人Y3が、平成23年9月以降、Aに対して、仕事上のミスがあると、厳しい口調でかつ頻繁にわたり叱責し、
営業事務に配置転換となった以降も、ミスがある毎に、Aを呼び出して、被控訴人Y2と一緒に同様に叱責していたことは、
業務上の注意や指導の範囲を超えて、Aに精神的苦痛を与えるもので、
不法行為に該当する。
被控訴人Y2は、Aの前記配置転換後の業務遂行状況を踏まえて、Aに対する適宜の支援を行うべき職責を負っていたが、これを怠ったほか、
配置転換後のAに対する叱責行為は、不法行為に該当する。
被控訴人Y2及びY3の前記各不法行為及び配置転換後の業務の負担と、
Aの自殺との相当因果関係:
@Aがうつ病を発症していたとは認められず、
A前記配置転換後の業務負担がAの心身の健康の喪失に繋がるようなものでなく、業務外の原因が影響した可能性もある
⇒否定
Aの損害について、165万円の限度で認容。
判断 Y3の責任については、原審と同様。
Y2の責任について、
Aに対する叱責行為は原審判決と同様に不法行為になる
Aに対する適宜の支援を行うべき義務を怠った点については、
従業員の業務分配の決定権は、上司であるB(取締役)にある
⇒この点はBの注意義務違反。
Aは、被控訴Y2及びY3から厳しい叱責を受け、かつ、Bが叱責を制止せず、本件配置転換後のAの業務内容や業務分配の見直しが必要であったのはこれを検討しなかったことにより、Aが受けた心理的負荷の程度は、全体として強いものであったと認められ、客観的に見てうつ病を発症させる程度のものと評価することができる。

Aは遅くとも平成24年6月中旬には、うつ病を発症していたと認められ、これらの不法行為とAの自殺との間には、相当因果関係がある。
Y2及びY3の各不法行為については、それのみでうつ病を発症させる程度のものと評価することはできず、Aの自殺との間の相当因果関係は認めなかった。

Aの損害については、被控訴人Y1の不法行為について、控訴人Xら固有の損害を含めて約5574万円を認め、
被控訴人Y2及びY3の不法行為については、限定的な範囲で認めた。
解説 使用者は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う。’(最高裁H12.3.24) 
不法行為とAの自殺との相当因果関係の判断
原審判決:
@配置転換直前からの時間外労働時間が月約50時間から67時間程度であってそれほど長時間とはいえない
A周囲の従業員らでAが精神障害に関連する症状を発症していると感じた者がいなかった
B家庭生活においても明らかな異常は見られず、精神障害に関連する受診歴がなく
C配置転換後も趣味に関するツイートがある
D異性との交際問題が自殺に影響した可能性もある

Aがうつ病を発症したとは認めなかった
本判決:
@時間外労働時間が配置転換前と比較して明らかに増加傾向にある
A身なりにかまわなくなったこと、B食慾が減退し、趣味に関するツイート数が大幅に減少し、被控訴人Y2及びY3から叱責されて落ち込んでいた

Aが受けた心理的負荷の程度は、全体として強いものであったと認められ、中等症うつ病エピソードの患者と診断できる状態にある。

自殺との相当因果関係を肯定
      「被控訴人Aは,Eがミスをすることが多かったことから,事実確認や注意のためにEをEDP室に呼び出すことも多く(なお,Iに関するミスの場合には,Iの売掛管理の総務担当者であった被控訴人Cの在席時を選んでいた。),その際には,Eに対し,(被控訴人C在席時には同人とともに)「何度言ったらわかるの」などと強い口調で注意・叱責をするなどしており,同じ注意・叱責を何回も繰り返し,相応に長い時間にわたることもあった(甲17,50,51,56,57,丙1,原審証人H,原審における被控訴人A本人及び同被控訴人C本人)。
被控訴人Aは,Eがミスをすることが多かったことから,事実確認や注意のためにEをEDP室に呼び出すことも多く,その際には,Eに対し,(被控訴人C在席時には同人とともに)「何度言ったらわかるの」などと強い口調で注意・叱責をするなどしており,
同じ注意・叱責を何回も繰り返し,相応に長い時間にわたることもあったことが認められる。

かかる被控訴人AのEに対する叱責行為は,その態様,頻度等に照らして,被控訴人Cの場合と同様に,業務上の適正な指導の範囲を超えて,Eに精神的苦痛を与えるものであったと認められる⇒
不法行為に該当するというべきである(当該不法行為を「被控訴人A不法行為」という。)。

かかる叱責の態様に照らせば,被控訴人Aにおいて,これが社会通念上許容される業務上の適正な指導の範囲を超えて不法行為に該当するものであることを認識することは容易であったと認められる。
      使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務(雇用契約上の安全配慮義務及び不法行為上の注意義務)を負うと解するのが相当である(なお,最高裁判所平成12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁参照)。
     

(1) Eがうつ病を発症していたか否かについて

以上によれば,Eは,遅くとも平成24年6月中旬には,軽症エピソードもしくは中等症エピソードの患者と診断できる状態にあったと認められるから,Eは,遅くともその頃には,うつ病を発症していたと認めるのが相当である。

エ なお,補正後の前示1(7)のとおり,被控訴人会社の多くの従業員は,Eの自殺直前まで,Eの心身状態の変化を特に感じなかったことが認められる。しかし,上記イのEの状態によれば,Eはうつ病を発症していたと認められ,被控訴人会社の従業員らの上記印象は,上記結論を左右するものとはいえない。

      (2) 被控訴人らの不法行為とEの死亡(自殺)との間の相当因果関係の有無について
      ア 補正後の前示2のとおり,被控訴人Cが,平成23年秋以降,Eに対し,「てめえ。」「あんた,同じミスばかりして。」などと厳しい口調で叱責し,控訴人Dから被控訴人会社に対してEのことで相談の電話があった後もEのミスがなくならなかったことから,Eに対し,「親に出てきてもらうくらいなら,社会人としての自覚を持って自分自身もミスのないようにしっかりしてほしい。」と述べ,本件配置転換後は,Eを頻繁にEDP室に呼び出し,被控訴人Aとともに叱責していたほか,自身でも別途Eを叱責していた(本件叱責行為)ことは,不法行為に該当し,前示4のとおり,被控訴人会社がこれを制止ないし改善するよう注意・指導をしなかったことは不法行為に該当する。
また,補正後の前示3のとおり,被控訴人Aが,本件配置転換後,EDP室において,Eに対し,(被控訴人C在席時には同人とともに)「何度言ったらわかるの」などと強い口調で注意・叱責をするなどしたことは,不法行為に該当し,前示4のとおり,被控訴人会社がこれを制止ないし改善するよう注意・指導しなかったことは,不法行為に該当する。
さらに,前示4のとおり,被控訴人会社がEの業務内容や業務分配の見直し等を怠ったことは,不法行為に該当する。
      イ 被控訴人Cの本件叱責行為は,Eに対し,一方的に威圧感や恐怖心を与えるものであったことや,本件配置転換後の被控訴人AのEに対する注意・指導は,強い口調で注意・叱責するというもので,同じ注意・叱責を何回も繰り返し,相応に長い時間にわたることもあり,また,被控訴人Aと被控訴人Cの二人から注意・叱責をするということも多かったというものであり,また,このような注意・叱責について被控訴人会社から制止ないし改善の指導がなく,状況に変化はなかったというのであるから,

これによりEが受けた心理的負荷は相応に大きいものであったということができる。
なお,前示4(1)エ(ウ)のとおり,厚生労働省は認定基準を発出しているところ,認定基準は,法令と異なり,行政上の基準にすぎないが,各分野の専門家による精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書に基づき,医学的知見に沿って作成されたもので,一定の合理性は認められるから,本件における因果関係の判断に際しては,参考となるというべきである。そして,Eに対する上記指導・叱責は,認定基準のD(対人関係)出来事29の具体的出来事(「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」)のうち,心理的負荷が「中」となる例(上司の叱責の過程で業務指導の範囲を逸脱した発言があったが,これが継続していない)を参考とすると,心理的負荷の程度は少なくとも「中」に該当すると考えるのが相当である。
ウ また,Eは,負担が比較的軽い本件配置転換前業務においても入力ミスが多かったところ,本件配置転換により従前より負担が大きい本件配置転換後業務に従事することになり,その上,本件配置転換に当たり,その時点では前任者からの引継ぎが十分でなかったため,被控訴人Aの支援を受けることが予定されていた。しかし,Eは,本件配置転換後業務においても入力ミスは減らず,時間外労働時間は,平成24年1月22日から同年2月20日までは合計32時間32分,同月21日から同年3月21日までは合計41時間25分であったところ,同月22日から同年4月20日までは合計67時間01分,同月21日から同年5月20日までは合計49時間28分(ただし,いわゆるゴールデンウィークの関係で休みが前期間は5日であったのが10日となり(甲18),残業時間が抑えられたにすぎない。),同月21日から同年6月19日までは合計58時間08分とさらに増加し,負担感も相応のものとなっていたにもかかわらず,被控訴人会社がEの業務の負担や遂行状況を把握することなく,被控訴人AをEDP室に移動させるなどして,Eの業務内容や業務分配の見直しを行わなかったというのであるから,これによりEが受けた精神的負荷は相応のものであったということができる。なお,認定基準に当てはめると,C(役割・地位の変化等)出来事21のうち,「配置転換があった」という具体的出来事に当てはめるのが相当であり,配置転換後の業務が容易に対応できるものであり,変化後の業務の負荷が軽微であったものが「弱」とされ,過去に経験した業務と全く異なる質の業務に従事することになったため,配置転換後の業務に対応するのに多大な労力を費やしたものが「強」とされていることを考慮すると,心理的負荷の程度は「中」に該当すると考えるのが相当である
エ 以上によれば,被控訴人A及び被控訴人Cから注意・叱責を受け,かつ,被控訴人会社が,被控訴人A及び被控訴人Cの注意・叱責を制止ないし改善を求めず,Eの業務内容や業務分配の見直しを検討しなかったことにより,Eが受けた心理的負荷の程度は,上記各心理的負荷の程度やこれらの違法行為が密接に関連するものであることも考慮すると全体として大きなものであったと認めるのが相当である(認定基準に当てはめると「強」に相当すると認められる。)。
したがって,被控訴人会社の不法行為(使用者責任を含む)によるEの心理的負荷は,社会通念上,客観的に見てうつ病という精神障害を発症させる程度に過重なものであったと評価することができ,また,被控訴人会社の不法行為(使用者責任を含む)とEの自殺との間には,相当因果関係があると認めるのが相当である。
なお,Eの自殺については,自殺の前日である平成24年6月20日の被控訴人Aとの電話がきっかけとなった可能性があるところ,同電話での被控訴人Aの言動が不法行為に該当すると認められないことは,補正後の前示3(3)のとおりである。しかし,同電話で確認されたEのミスは,それほど重大なものではなく,それ自体が直ちに自殺の原因となるようなものではなかったが,当時,Eがうつ病を発症していたことから,絶望感ないし自責感に駆られて自殺するに至ったものと考えられる。そして,被控訴人会社が,Eの業務内容や業務分配の見直しをしなかったことは,上記ミスと関連性を有しているといえる。したがって,上記電話が,被控訴人会社の不法行為に該当しないことは,被控訴人会社の不法行為(使用者責任を含む)とEの自殺との間に相当因果関係があるという上記結論を左右しないというべきである。
       


☆検索結果削除請求   
  特報p10
最高裁H29.1.31  
判例時報2328号
  グーグル検索結果削除請求事件許可抗告事件
  事案 Xの居住する県の名称及びXの氏名を条件としてYの提供する検索サービスを利用⇒関連するウェブサイトにつき、URL及び当該ウェブサイトの表題及び抜粋(URL情報等)が提供されるが、この中に、本件事実等(児童買春で逮捕された事実)が含まれる。
⇒Xが、Yに対し、人格権ないし人格的利益にに基づき、本件検索結果の削除を求める仮処分命令の申立てを行った。
  原審 Xの主張の多岐にわたる被保全権利の主張を、名誉又はプライバシーに基づく削除請求権(差止請求権)に帰着するものと解した上で、これらの被保全権利及び保全の必要性をいずれも否定。 
    Xが抗告許可の申立て等⇒原審が抗告を許可
  判断 検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、
@当該事実の性質及び内容、A当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、Bその者の社会的地位や影響力、C上記記事等の目的や意義、D上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、E上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較考量して判断すべきもので、
その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当。
本件においては本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない⇒Xの抗告を棄却
  解説   平成20年第中頃まで:
検索事業者は飽くまでも媒介者であって、媒介内容について検索事業者は原則として責任を負わず、法的責任を負うとしても二次的なもの。
〜検察事業さhが法的責任を負う場合を限定的、補充的に考える判断枠組みが有力。
平成20年代中盤以降:
出版メディアの領域で集積されてきた判例理論の判断枠組みに基づいた判断をした裁判例が増えている傾向。
but
比較衡量論の枠組みを採用する裁判例の中でも2つの枠組み。

A:比較考量の結果、プライバシーに属する事実を公表されない利益が優越するとされる場合には、原則として削除請求権を肯定。

B:「石に泳ぐ魚」事件控訴審判決と同様に、比較衡量に当たり、被害の明白性、重大性や回復困難性等をも考慮要素として加えるもの。
  一般的の用いられるロボット型検索エンジンは、
@インターネット上のウェブサイトに掲載されている無数の情報を網羅的に収集してその複製(キャッシュ)を保存し
Aこの複製を元にした検索条件ごとの索引(インデックス)を作成するなどして情報を整理し、
B利用者から示された一定の検索条件に対応するURL等情報を前記検索に基づいて検索結果として提供する
という3段階の情報処理を経るという仕組み。 
@検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った検索結果を得ることができるように設計作成されたもの⇒検索事業者自身の表現行為という側面⇒人格的な権利利益と検索事業者の表現行為の制約との調整が必要
A検索事業者による検索結果の提供は、現代社会におけるインターネット上の情報流通基盤として、一層大きな役割を果たすようになっている。
B被害者の明白性、重大性や回復困難性にとどまらず、検索サービスの正確や重要性等も考慮要素として取り込む判断枠組みを採ることは、人格的な権利利益の保護範囲を事実上切り下げることになることが懸念。
本判決は、印刷メディアの伝統的な法理に沿った比較衡量の判断枠組みを基本としつつ、削除の可否に関する判断が微妙な場合における安易な検索結果の削除は認められるべきではないという観点から、プライバシーに属する事実を公表されない利益の優越が「明らか」なことを実体的な要件として示したもの。
  本決定の列挙した考慮要素の検索に当たっては、収集元ウェブサイトの内容を吟味することを要するが、当該内容は、ロボット型検索エンジンの一般的な仕組みに照らすと、検索結果の内容から容易に推認可能なことが多いであろう。
もっとも、収集元ウェブサイトの内容について個別に主張、立証することを本決定が否定するものではないと思われる。 
★グーグル側解説 (判例時報2328)  
      ◆第一 はじめに
      ◆第二 本決定に対する評価 
      ◇一 法的保護の対象(「忘れられる権利」にあえて触れていないこと) 
        「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきである」(判断)
         
  ◇      ◇二 検索結果の表示は、他の「表現行為」と同一に論じられるべきものか 
        ・・・この情報の収集、整理及び提供はプログラムにより自動的に行われるものの、同プログラムは検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたもの⇒検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する。
         
      ◇三 検索事業者の公益的役割とその制約の是非
        最高裁:
@検索事業者による検索結果の提供は、公衆が、インターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている
A検索事業者による特定の検索結果の提供行為が違法とされ、その削除を余儀なくされるということは、上記方針に沿った一貫性を有する表現行為の制約であることはもとより、検索結果の提供と通じて果たされている上記役割に対する制約でもあるといえる。
        グーグル:
@多くの思想・信条・趣向を持った人間が多様な情報求めてアクセスする検索エンジンは、恣意的な情報選択を排除し、できるだけバイアスのかからない価値中立的な情報を提供することによって、初めて公益性を有すると考えられる
A価値中立的に、ありのままの情報を検索結果として提供することに公益性が認められる

社会的縫い流通が許容されないことが明らかな情報でない限り、当該情報を流通させることに正当性が認められる。
        最高裁H17.7.14(船橋市図書館事件判決):
@公立図書館について、
住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場
A公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうもの
         
      ◇四 検索結果削除の判断基準 
        本件:
検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、
@当該事実の性質及び内容、
A当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、
Bその者の社会的地位や影響力、C上記記事等の目的や意義、
D上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、
E上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較考量して判断すべきもので、
その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当。
        最高裁H14.9.24(「石に泳ぐ魚」事件):
小説の出版差し止めに係る事件において
予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と
侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべき。

侵害行為が明らかに予想され、
その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり、かつ、
その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるとき

侵害行為の差止めを肯認すべき。
        名誉権侵害が問題となる事案:
人格権としての名誉権に基づく出版物の頒布等の事前差止請求において
@
その表現内容が真実でなく、
又は
それらが専ら公益を図る目的のものでないことが明白
であって
A
被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき

事前差止めを認めた。
(最高裁昭和61.6.11、北方ジャーナル事件)
      ◆第三 今後の課題 
        次に述べる点も十分考慮して「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」といえるか否かの判断がされるべき。
      ◇一 検察結果の削除を認めることによる情報流通制限 
        グーグル・インクは、欧州において、任意で43%(URL数ベース)の削除リクエストに応じており、それ自体が既に過大な負担となっている。
      ◇二 表現の自由・知る権利に対する過剰な制約 
        違法な人格権侵害が認められた表現部分についてのみ削除請求が認められる一般的なウェブページや電子掲示板等に対する請求と比較して過剰な制約。
      ◇三 元投稿の表現者による反論機会の確保 
      ◇四 補充性の問題 
        問題の抜本的解決を図るためには、まず元投稿の作成者への削除請求が第1になされるべき。
         
★原告側弁護士(神田知宏) 判例時報2328号
      ◆1 検索結果削除請求をめぐる論考と最高裁の判断 
      (1)削除請求しにくい個別サイトの増加

@フーイズ保護サービスの利用が一般的となり、ドメイン登録者に関する情報が調べにくくなっている
A海外サーバーをクレジットカードだけで借りられるサービスが増えたことで、個人でも比較的用意に海外サーバーを使って匿名サイトを開発できるようになっている。 

(2)炎上やコピーサイトの問題
      欧州司法裁判所判決
平成26年5月
「忘れられる権利」

「検索結果は検索サイトのコンテンツであっる」との主張を検討。 
        人格権侵害差止請求は不作為を求める請求
なのに
削除という作為を求める
vs.
削除という言葉は慣例的に使われているだけであり、実態は自動公衆送信の差止
      ◇媒介者論 
        本判決:
「検索事業者自身による表現行為という側面を有する」
      ◇明白性基準 
      ◇補充性 
        本判決は採用していない。
      ◇第三者の表現の自由と知る権利 
      ◇違法性判断の対象となる記事 
      ◇削除対象となる範囲 
         
  ◆      ◆2 「優越することが明らか」の意義 
  ◇      ◇「明らか」とは何か 
      ◇厳格な要件と捉えない考え方 
  ◇      ◇立証の程度問題との考え方 
      ◇優越の程度問題との考え方 
  ◇      ◇プロバイダ責任制限法の「明らか」要件からの検討 
        特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報のj開示に関する法律4条1項1号
「権利が侵害されたことが明らかであるとき」

この「明らか」は、「違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情の不存在」だと考えられている。
      ◇比較衡量と「明らか」 
         
      ◆3 実名報道記事の削除請求 
  ◇      ◇刑事政策上の問題 
        最高裁:
原々審が示した「更生を妨げられない利益」については触れず、プライバシーの問題として処理。
but
前科前歴がある者の「更生を妨げられない利益」は、最高裁H6.2.8が示した憲法上の利益⇒追加的に検討・主張することは矛盾しない。
      ◇時間経過と公益性の喪失 
      ◇長良川リンチ事件差戻後控訴審における更生を妨げられない利益 
         
  ◆      ◆4 本件裁決の射程 
      ◇ 本件裁決の規範は名誉権侵害の検索結果にも適用されるか 
  ◇      ◇ 長良川リンチ事件上告審判決との比較 
  ◇      ◇ 名誉権侵害の検索結果の削除請求 
         
  ◆      ◆5 本件裁決の示唆 
  ◆      ◆6 忘れられる権利 
         
         



☆The Art of Cross-Examination 
  ◆1 Introductory (p21)
◆2 The Manner of Cross-Examination (p27)
      証人に礼儀正しく、紳士であれ
    巧妙さ
論理的思考の習慣
理解の明確さ
無限の忍耐と自制

次の力:
直感的に人の心を読む
顔からその性格を判断する
動機を評価する

力と正確さをもって行動する能力

主題についての熟達した知識

極度の用心

何より尋問下の証人の弱点を発見する直観力
論理・理解
主題

証人の虚偽がどこからくるか?
⇒相手の立場にたって考え、その矛盾をつく
無限の異なる状況において証言する実に多様な証人を扱わなくてはならない。

人のモラル、情熱、知性の全ての影と様相に関係する。
それは、代理人と証人との間の知的な格闘である。
 
       
    相手方による主尋問終了⇒
@不利に作用したか?
A有利なことが引き出せるか?
 
       
  ◆3 The Matter of Cross-Examination (p39) 
      主題を明確に
質問しないと相手の属性がわからない時もある。
    @嘘をつかないか
A嘘をつくか
A⇒一部のみ嘘をつく(通常)
    証人を見きわめる
・その誤解がどこから来るか?
(事後的な知識等)
・偽証の動機等
 
       
       
   



☆刑法総論(平野)
 
◇第三項 不能犯
  ■一 不能犯の意義 
    段階的にみれば「実行の着手」に達した場合でも、なお、未遂犯として処罰すべきでない場合:
その行為が結果を発生させる実質的な危険性をもっていない場合。
     
  ■二 不能犯と未遂犯との限界 
  □(1) 
    ドイツ:
「行為者の計画に従えば、実行の着手をなす行為」があれば未遂犯
〜行為者が表象したことがそのまま事実だとしたとき、結果発生の危険があるか。
    純主観説
←行為者の危険性
     
  □(2) 
    A:定型的に不能であるかどうかによって、未遂犯か不能犯かを決めようとする見解。
  □(3) 
    B:古い客観説ないし客観的危険説:
結果発生の純客観的な危険性を要求し、不能犯と未遂犯とを、絶対的不能か相対的不能かを規準として区別。
ex.
青酸カリを飲ませて殺そうとした場合、毒そのものが「およそ人」を殺すに足りない量⇒絶対的不能
人を殺すに足りる量ではあったが、「その人」を死に至すには足りなかった⇒相対的不能

ピストルの引き金をひいたが弾丸が入っていなかった
ピストルで撃ったが相手方はその前にすでに死んでいた場合(客体の不能の場合はすべて)
絶対的不能
but
人を殺すに足りない量の青酸カリを与えた場合
弾丸の入っていないピストルの引き金をひいいた場合
にも未遂犯の成立を認める。

「およそ青酸カリで他人を殺すことは可能か」
「およそピストルで他人を殺すことは可能か」
vs.
どの程度類型化するかによって、結論に大きなちがい。
  □(4) 
    C:新しい客観説ないし具体的危険説:
客観的危険性の存否を、純客観的・類型的にではなく、具体的事実に即して判断しようとする。

その具体的状況を、一般人の立場からみて、結果発生の危険性があると思われる場合には、未遂犯として処罰すべき。

未遂犯は、通常侵害犯である既遂犯を具体的危険犯としたものであり、危険性の判断は、純粋に物理的な判断ではなく、一般人の立場からする判断であるから、不法犯であるかどうかについての判断についても、右のような基準に従うのが、基本的に妥当。
     
  ■三 判例の検討 
    「行為の性質上結果発生の危険を絶対的に不能ならしめるもの」をいう(最高裁昭和25.8.31)。
  □(1) 方法の不法 
  ●(イ) 手段の持つ効果に錯誤があった場合 
    フ:不能犯を肯定 
ミ:未遂犯
    フ:硫黄を飲ませて殺そうとした
←その方法が絶対に殺害の結果を惹起するに足りないもの
vs.
一般の人は硫黄を飲ませたと聞いて、死ぬかもしれないという危険を感じないであろうか?
    ミ:30ccないし40ccの空気を血管に駐車して殺そうとした場合⇒殺人未遂
←被注射者の身体的条件その他の事情の如何によっては、その結果発生の危険が絶対にないとはいえない。
vs.
空気をどれだけ駐車すれば死ぬかは常識では判断しにくい⇒医学的には身体的条件のいかんにかかわらず、死ぬことは絶対にない量であったとしても、一般の人は危険を感じるであろう
⇒そのようないいで未遂犯を肯定すべき
    ミ:青酸カリなどの毒物の量が致死量に達していなかった場合 

医学的に致死量であるかどうかが一々厳密に吟味されているわけではない。
  ●(ロ) 手段として用いられた物自体について錯誤がある場合 
    ミ:ピストルの引き金をひいたが弾丸が入っていなかった

制服を着用している警察官が勤務中右腰に着用している拳銃には常時たまが装てんされているべきものであることは一般社会に認められていることであるから、勤務中の警察官から右拳銃を奪取し、苟しくも殺害の目的で、これを人に向けて発射するためその引鉄を引く行為は、その殺害の結果を発生する可能性を有する

具体的危険説の判断方法
     
  ●(ハ) 手段として使う物を錯誤によって取りちがえた場合 
    (a)Aという毒薬で殺そうと思い、薬屋に買いに行ったが、薬の名前をまちがえてBという栄養剤を買い、これを飲ませた場合
(b)毒薬を買ってきて戸棚に入れておいたが、取り出す時にビンをまちがえて、となりにあったビンを取り出して飲ませた場合
    実行の着手の段階だけをとってみれば、客観的に全く危険はない⇒不能犯?
but
(b)の場合は、錯誤に相当な理由があり、結果発生の危険がある、と考えることも不可能ではない。
but
飲ませた薬物が異様な味で吐き出した場合はまだしも、ふつうの飲物を飲ませたにすぎない場合には、飲ませる過程は全く正常な状態であって、それ自体に客観的な異常さ全くない
⇒この場合まで、行為者が毒薬がはいっていると思っていたというだけで未遂犯とするのは適当ではない。
  ●(ニ) 
    実行の着手の時期に危険性があれば、その後、事態の振興にともなって、結果の発生が不可能になったとしても、不能犯ではない。
    ミ:青酸カリを米飯中に入れたところ、米飯が黄色になり臭気を発したため被害者が食べなかった
←何人もこれを食べることは絶対にないとは断定できない
vs.
青酸カリを米飯に投入したとき実行の着手を認めてよい事案⇒その時点での危険性を認定すれば、右のような無理をしなくともすんだ。
     
  □(2) 客体の不能の場合 
    絶対的不能・相対的不能⇒すべて不能犯で不可罰
    ミ:強盗が墓地で通行人を引き倒して、懐中物を奪い取ろうとした自事件
←通行人が懐中物を所持するが如きは普通予想し得べき事実であるからこれを奪取せんとする行為は、結果を発生する可能性を有する

通行人は「財物」は持っていたのであって、客体が全く不存在であったわけではない。
    ミ:死体に対する殺人未遂
Aは甲を殺そうとして拳銃を発射し、3発を命中させたが、この発射音を聞いた被告人Bは、Aを応援しようとかけつけ、倒れている甲を殺そうと思って、その左右腹部、前胸部を日本刀で突き刺したが、その時点で甲はすでに死んでいた

一般人も当時その死亡を知り得なかったであろうkと、従ってまた被告人Bの前記のような行為により甲が死亡するであろうとの危険を感ずることはいずれも極めて当然で、行為の性質上結果発生の危険がないとはいえない

まさに具体的危険説の適用であり、その危険が極めて高度の場合
   
    客体の存否を判断するにあたって、行為者が盗ろうとした特定の物を基準として能不能を判断すべきか、それとも、構成要件上の客体である「財物」を規準として判断すべきか、という問題。 
ミ:養蚕室に侵入して、馬鈴薯その他の食糧物を物色
←不能犯という主張に答えず、「財物を物色した」から窃盗の未遂

構成要件を規準とした。
but
目的物がもっとはっきりと特定しているときは、その物の存在の可能性を考えるべき場合もある。
   
  ■四 幻覚犯と主体の不能 
    幻覚犯は処罰されない。
    ある事実が違法であるにもかかわらず違法でないと思った場合⇒違法性の錯誤
違法でないにもかかわらず違法だと思った場合⇒幻覚犯
     
     
     
     
     


☆条解刑法
 
 
     
     
     
     
     
虚偽告訴の罪  
    刑法 第一七二条(虚偽告訴等)
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
  ◆1 本条の趣旨 
    通説・判例:
@国家的法益と同時に
A第2次的には個人的法益をも保護法益と解している。
     
  ◆2 客体 
     
  ◆3 目的 
     
  ◆4 行為 
   
    申告の内容である虚偽の事実については、人に刑事又は懲戒の処分を受けさせるに足りる程度のものであることが必要である。

また、その事実は、それ自体で捜査官又は監督者が直ちに公訴を提起しあるいは懲戒処分をおなし得る程度に詳細であることは必要でないが、抽象的事実だけでは足りず、少なくとも特定の犯罪行為又は職務規律違背行為であることを当該捜査機関又は当該監督機関等に認知させ、これによって捜査又は懲戒処分上の取調べ・調査を促すに足りる程度に具体的なものでなければならない。
     
     
     
     
     
     
     
     
   



☆弁護士法概説 
 
 
   
     
     
第7章 懲戒  
  ◆第1節 弁護士懲戒制度の概要 
  ◇T 自治的懲戒制度 
     
  ◇U 懲戒制度の概要
  弁護士について懲戒の事由があると思料する者は誰でも、その弁護士が所属する弁護士会に対して懲戒請求をすることができる。 
   
  ◇V 懲戒制度の透明化・迅速化・実効化 
     
     
  ◆第2節 懲戒請求(p258) 
  ◇T 懲戒請求権 
  ■1 懲戒請求権の性格 
    弁護士法 第五八条(懲戒の請求、調査及び審査)
何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。
    広く何人にも対しても懲戒請求権を認めた

弁護士の懲戒権限を自治的団体である弁護士会に認めたことから、弁護士の懲戒権限が適正に行使され、公正な運用がなされることを期するため。(最高裁H19.4.24)
    弁護士の非行によって被害を被った者の救済を目的とするものではない。
    懲戒請求:
弁護士会に対してその懲戒権の発動を促す申立ての意味をもつものであって、懲戒請求者は、弁護士会に対して所属弁護士を懲戒するよう請求する具体的な権利を有するわけではない。

懲戒請求が不適法であることが当然に発動された懲戒権の行使自体を違法とするものではない。
     
  ■2 違法な懲戒請求権の行使 
   
懲戒請求を受けた弁護士は、
@根拠のない請求によって名誉・信用等を不当に侵害されるおそれがあり
A弁明を余儀なくされる負担も負うことになる

懲戒請求をする者は、
被懲戒請求者の利益が不当に侵害されることがないように、
被懲戒請求者に懲戒事由があることを事実上および法律上裏付ける相当な根拠について調査・検討すべき義務がある。
法律上または事実上の根拠を欠く場合に、
@懲戒請求者がそのことを知りながら、または
A通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、
あえて懲戒請求をするなど、
懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨に照らし相当性を欠くと認められるときは、
違法な懲戒請求として不法行為を構成する。
(最高裁H19.4.24)
     
  ◇U 懲戒請求者・被懲戒請求者 
     
  ◇V 懲戒請求手続 
  ■1 請求の手続 
    弁護士法 第五八条(懲戒の請求、調査及び審査)
何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。
     
  ■2 不適法な請求 
    懲戒請求にあたり、
@懲戒請求者の特定、A懲戒事由に該当する事実の特定
は、最低限の事項として必要。
これが特定しない⇒不適法な請求。
     
  ◆第3節 懲戒事由(p263) 
  ◇T 序説 
   
  ◇U 懲戒事由の類型 
   
     
     
  ■4 品位を失うべき非行 
    品位を失うべき非行:
職務の内外を問わない⇒私生活上の非行も含まれる
     
     
     
     



☆弁護のゴールデンルール
★法廷弁護の諸次元 
  ◆第1の次元(p15)
  コモンローの国では、公判は真実を発見するために営まれるものではない。
    公判におけるわれわれの目的は、究極の真実ではなく、自己に有利な意見である。
公判は、厳密に管理されたプレゼンテーションの場。
     
  ◆第2の次元(p17)
  人間は聴覚的というよりもずっと視覚的な動物である
    メッセージの60%はボディー・ランゲージと全体的な見た目によって伝わる。
メッセージの30%は、声の調子で伝わる。
メッセージのわずか10%が言葉によって伝達される。

聞いたことのわずか10%しか記憶されない。
他方、聞きながらそれに関連したものを見ている時には50%を記憶することができる。
    ちゃんとした服装をしなさい
    相手方弁護士と馴れ馴れしくしているのを見せてはいけない
    陪審員抜きに微笑んだり、笑ったり、冗談を言ったりしてはいけない
    いついかなる時も完璧に誠実に振る舞え
    伝えることを意図していない視覚的情報を決して伝えるな
    事実認定者にいつも何かを見せているようにせよ
    視覚補助道具を用いよ
    事実認定者とのアイコンタクトを忘れるな
     
  ◆第3の次元(p24)
  人々は弁護士を嫌っている 
    あくまで真実にこだわれ
    人を操っているように見られるな
    弁護士らしく話してはいけない
     
  ◆第4の次元(p28) 
  時間
    第1のプレッシャー
    第2のプレッシャー 
    繰り返すな
     
★必修ルール  
  ◆必修ルールその1 
  弁護士は法廷で自分の意見を述べてはならない 
    あなたがそこにいるのは、できる限り効果的に証拠を提出し、提出された証拠を吟味し、意見の食い違いがある時は、関連する法について弁論を行い、そしてできる限り魅力的にすべてのことを要約するため。
     
  ◆必修ルールその2 
  弁護士は証人にはってはならない
また、証人のように振る舞ってもいけない 
   
  ◆必修ルールその3 
  最終弁論では証拠に基づく事柄しか述べることができない 
     
  ◆必修ルールその4 
  相手方証人にこちらの主張事実を「ぶつける」のを忘れるな 
     
  ◆必修ルールその5 
  被告人の前科や示談交渉に言及してはならない 
     
  ◆必修ルールその6 
  自分の証人の口に言葉をはめ込んではならない 
    誘導尋問:
質問自体の中に答えがある質問。
イエスかノーかで答えられる質問。
    誘導尋問の禁止

@誘導尋問によれば、証言は証人の口からではなく、弁護士の口から提供されることになる。
A証人の信ぴょう性を判断できない。
B証人の価値を薄めてしまい、遂には無価値なものにしてしまう。
     
★演劇としての法廷弁護  
    全力を尽くせ。手抜きをするな。全身全霊を捧げられないならば、転職しなさい。
    彼らを楽しませよ。
    彼らに物語を伝えよ。
←人は誰でも上手に語られた物語に対して耳をふさぐことができない。
    はじまりと中間、そして結末を考えよ。
    行動の流れを持続せよ。
    シンプルにまとめよ。
    ディテールは危険だ。
    削ってもよいと思われることはすべて削るようにせよ。
    手短にせよ!
    彼らを退屈な場面に備えさせよ。
    自分の声の音量を知れ。
    話すスピードと音質を変化させよ。
    タイミングと中断の力を知れ。
    声量を上げる時には細心の注意をせよ。
     
★法廷弁護の心理学  
    法廷弁護の素材は壊れやすい 
    好人物たれ
    共感ルール
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★証人尋問  
     
     
★主尋問  
     
     
★反対尋問  
     
     
★再主尋問  
     
     
★最終弁論  
     
     

☆民事裁判と証明(藤原弘道)
  ★第1章 文書提出命令の判例準則
     
  
     
     
3 一応の推定と証明責任の転換(p61)  
  ◆一 はしがき 
    要証事実それ自体が複雑で立証しくにいものである場合には、事実の証明はきわめて困難なものとなることが予想される⇒実体法上は権利を有しながら、権利保護を受けることができないことになり、きわめて不当な結果を生じる
⇒いくつかの立証軽減の法理
「一応の推定」
表見証明
証明責任の転換
  ◆二 一応の推定 
  ◇1 「一応の推定」の概念 
     
  ◇2 判例における「一応の推定」 
    判例での「一応の」の意味は「反証なき限り」と同義であるように思われる。

その実体は事実上の推定と異ならない。
    通常の事実上の推定:ある事実から他の事実を推認
過失の一応の推定:事実ではなく、法的価値判断の結果である過失そのものが推定される
     
  ◇3 j過失の「一応の推定」 
     
     
     
  ■(2) 過失の「一応の推定」の性質 
  過失の「一応の推定」が認められたからといって、証明責任の分配に変更が生ずるわけではない。
過失の「一応の推定」によって相手方に移転するのは立証の必要であって、証明責任ではない。
     
  ■(3) 「一応の推定」の対象である過失の性質とその推定の許容性 
     
    中野:過失の「一応の推定」は、経験則の適用により法的価値判断たる過失そのものを推定するものではなく、過失と評価されるべきなんらかの事実が存在したとの事実判断がなされ、これに基づいて過失を認定するという趣旨であり、ただ表現が実務的に簡略化されているにすぎない。
vs.
事実判断がされるといってみても、推定される事実がなんらかの事実だというのでは、結局何を推定したのか明らかでなく、その明らかでない事実に基づいて過失の判断がされるということになると、ある事実からいきなり過失そのものが推定されるのと少しも変わりがないようにも思われる。
but
経験則上、ある事実が存在するときには、具体的にはこれと特定できなくても、注意義務と法的に評価されるようななんらかの時jちうが存在するに相違ないとの判断が可能な場合があることも否定できない。
     
     
     
  ◇4 「一応の推定」の機能と性格 
     
     
  ◆三 表明責任 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     



☆文書提出命令の理論と実務(第2版)
第1編 総論  
  ★第1章 文書提出命令の判例準則
     
   
  ★第2章 文書提出命令の理論的意義 
     
  ★第3章 文書提出命令の審理における意義 
     
  ★第4章 文書提出命令の実務 
  ◆T はじめに 
  ◆U 実務で文書提出命令が問題となるケース 
   
     
  ◇9 交通・航空・船舶の事故に関する訴訟(p108) 
  ■(1) 交通事故訴訟 
     
     
  ■(2) 航空事故訴訟 
     
    損害論については、被害者のカルテや検査結果、診断書等が必要となるが、通常は任意に提出される⇒文書提出命令が問題となることはあまりない。
     
  ◆V 審理手続上の問題 
     
     
     
     
     
第2編 所持者からみた文書提出命令  
  ★第1章 金融機関の文書 
     
  ★第2章 一般企業の文書 
  ◆T はじめに 
  ◆U 根拠規定別の検討 
     
  ◆V 類型別検討 
   
  ◇2 各種調査報告書 
  ■(1) 交通事故調査報告書(p268) 
  □(ア) 裁判例 
    福岡地裁H18.6.30:
交通事故の態様が原告の主張する内容ではなく、被告らが答弁書で主張する内容のものである
⇒交通事故の損害賠償の代位権者である保険会社の所持する外部の調査会社の作成した事故調査報告書に対する文書提出命令が申し立てられた。

本件文書は、相手方(保険会社)が調査会社に対して本件事故に関する調査を依頼し、その報酬を支払って入手した報告書⇒専ら原告の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書

本件文書作成者が本件事故の客観的状況や事故当事者双方の言い分に基づき、自己の状況を推測し、事故当時者双方の言い分について忌憚のない評価を加え、自己の最終的な原因を考察して、双方の過失割合を結論付けているもの⇒この部分が公表されると、調査会社自らあるいはこれを依頼した相手方の自由な意思形成が阻害されるなど、開示によって相手方の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある。

自己利用文書性を肯定。
but
調査報告書のうち客観的な写真や、当事者の言い分に基づいた図面等

開示によって相手方に看過しがたい不利益が生ずるおそれはない
⇒自己利用文書性を否定。
  □(イ) 検討 
    調査報告書の内部文書性を認めたうえで、「開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれ」の比較衡量の際に、文書の所持者とともに第三者である文書作成者の不利益も考慮。
本件報告書の内容は、第三者である民間の調査機関が作成した過失割合に対する意見にすぎず、仮に報告書の中で挙証者に有利な記載がなされていたとしても、当該記載はあくまでも調査機関の意見の表明にすぎず、警察の実況見分調書等と異なりその証明力はそれほど大きくない
⇒証拠としての必要性、重要性(文書提出の必要性)はそれほど大きいということはできない。
客観的な写真や図面等については、看過しがたい不利益が生じるおそれはないとして、開示を命じている。

1つの文書についてその記載内容ごとに「看過し難い不利益の生ずるおそれ」の有無をきめ細かく判断する手法は、文書の一般提出義務を認める現行法の趣旨に照らせば、今後とも一層増大していくものと推察。
     
  ■(2) 大学病院における医療事故報告書 
     
  ★第3章 公的機関の文書 
     
第3編 訴訟類型からみた文書提出命令  
  ★第1章知的財産訴訟 
     
  ★第2章 医療訴訟 
     
  ★第3章 労働訴訟 
     
  ★第4章 交通事故訴訟 
  ◆T はじめに 
     
  ◆U 交通事故訴訟の動向および最近の主な論点 
  ◇1 交通事故訴訟の動向 
  ■(1) 新受件数の変遷 
     
  ■(2) 訴訟内容の複雑化 
     
  ■(3) 東京地裁民事第27部の構成と法・経済環境の変化 
     
  ◇2 交通事故訴訟における主な争点 
    最近の交通事故訴訟において多く争われるのは、
@事故当時者の過失の有無およびその割合を中心とする事故態様
A損害論のうち、被害者がうけた傷害または後遺障害の内容や程度等の認定・評価
B同じく損害論のうち、被害者の休業損害や後遺障害による逸失利益を算定するうえでの基礎となる収入の認定・評価
     
     
  ◆V 事故態様の審理 
  ◇1 事故態様の把握の必要性 
     
    実務上主に議論となる加害者の過失について:
他人の権利または法益の侵害による損害の発生を予見し得た⇒それを回避するための適切な行動をとるべきであったにもかかわらず、それを怠ったこと(客観的過失)
    審理における主張・立証責任の分配:
「規範的要件」の一種として、過失を基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)の主張・立証責任⇒過失の存在を主張する被害者である原告
過失の成立を妨げる具体的事実(評価障害事実)⇒過失の存在を否定する加害者とされる被告
    今日:
実際の審理においては、原告は、外部に現れた行為態様から評価される道路交通法規における定型的注意義務とその違反行為の存在(速度超過、前方不注意、一時停止なしい徐行義務違反、車間距離不保持等)を主張・立証すれば足りるという考え方。
   
     
     
  ◇2 刑事事件の記録の審理における活用の状況 
     
  ◇3 刑事事件の記録と文書提出命令 
     
     
  ◆W 被告の帰責原因の審理 
     
  ◆X 損害に関する審理 
  ◇1 傷害または後遺障害の内容や程度等の認定・評価 
    近時の運用⇒医療機関が訴訟外における被害者からの診療録等の開示の求めや文書送付の嘱託に基本的に応じている。
     
  ◇2 逸失利益等の算定の基礎となる収入の認定・評価 
     
  ◇3 慰謝料の増額事由としての交渉経過等の把握 
    加害者側の事故後の態度が著しく不誠実であるなどの事情⇒慰謝料の金額が基準とされるところを上回って認められる⇒加害者または同人に代わって示談交渉等にあたったいわゆる任意保険会社の所持する文書について、文書提出命令の申立てをする例。
    任意保険会社の保険機支払に関する稟議書:内部文書肯定
任意保険会社内部の運用上の通達等:否定
     
  ◇4 損益相殺的調整の処理 
     
  ◆Y 最後に 
     
  ★第5章 租税訴訟 
     
資料編 関連判例一覧  
     
     
     
     
     
     


☆「虚偽自白」がどのようなものかを知らずに「虚偽自白」を見抜くことはできるのか(浜田寿美男)
判例時報2389
  ◆一 はじめに
    自白調書を「証拠」として見るのではなく、取調べの場における人間現象を記録した「データ」と見なして、そこに心理学的視点から分析を加え、そのデータを非体験者が語ったものとしか理解できないような痕跡が残されていないか(無実仮説)を検証。
    今市判決には、
無実の人の虚偽自白の現実をよく理解していると思える部分と、
その現実をまったく理解していないと思える部分とが
混在
  ◆二 自白のなかに真犯人が「作出した虚構」が混じり込んでいる? 
  ◆三 無実の人の虚偽自白過程についての控訴審判決の理解 
    判決が、無実の人の虚偽自白問題を捉え、理解していると思われる部分:
第一審で裁判員に取調べの録音録画記録を見せ、その結果、それが自白の信用性判断にも影響を与えてしまったことを批判して、その問題性を指摘した部分:

取調べ過程の録音録画媒体によって可視化したのは、そこで自白がなされた場合、その任意性に問題がないかどうかをチェックするためであって、その録音録画記録を自白の信用性判断の証拠に用いてはならない。
←自己に不利益な供述を行う契機としては様々なものが想定できるのであって、自発的であっても虚偽供述の可能性が見落とされる危険性がある。
  ◆四 無実の人の虚偽自白過程についての控訴審判決の無知と無理解
    虚偽自白は、一般に取調官が把握した客観的事実から犯行筋書を想定して、その想定に沿って無実の人を意図的に誘導して出来上がるものだと考えられやすいが、実態はそのようなものではない。
むしろ無実の人が自白に落ちてしまった後は、自ら「犯人になり」「犯人を演じる」かたちで、取調官の追及に沿いつつ、犯行筋書きを自分から想像して、語り出していくいほかない。
同じ栃木県内で起きた足利事件を見ても、無実の菅家氏が自白に落ちた後、取調官の追及をヒントにしながら、「自分で話をつくってしまったんです」と告白していたことはよく知られている。
    問題の自白内容が後の捜査あるいは検証過程で客観的証拠と合致しないと判明したとき、それは無実の人が想像で語ったためだという可能性が浮かび上がる。
〜「無知の暴露」として、犯行の非体験者の自白である証拠。

被疑者が全面自白した後に、真犯人がもはや嘘を言う理由もなければ、記憶違いをする可能性もない部分について、客観的証拠と決定的に食い違う自白が語られたとき、それは無実の人が問題の犯行を知らないことを示す。

そこでの「無知」は、単に被疑者のみの「無知」ではなく、被疑者と取調官の両者の「無知」。
  ◆五 「事実の認定は、証拠による」の基本理念とその現実 
    実際には自白に落ちた被疑者に対して「謝罪」を表す文書を作成させて、これを「証拠」として提出するような例が、これまでの冤罪事例でいくつも見られる。
    「事実の認定は、データによる。」
科学は「データ」を選んではならない。自らの仮説に沿う「データ」だけを集めて、そこから導いた結論を、誰も信用はしない。
自分の立てた仮説にとってどれほど不都合なデータであっても、それを排除したのでは、真の結論は得られない。

そこで言う「データ」はあくまでその出所が確かなものでなければならない。
作成過程の不明な本件被告人の「手紙」などは、その作成過程が明らかになってはじめて「データ」と言えるものであって、その「手紙」そのものはそれだけで何らかの結論を導き出せるような「データ」ではない。


☆Overcoming A Witness With Selective Memory
  ◆用語 
    Deposition:証言録取書
Affidavit:宣誓供述書
Declaration:供述
  ◆序文
    「思い出せない」という証言への対応
    準備が大事。

良い質問⇒対処となるトピックをカバーし、答えを釘付けにする。
良くない質問⇒後で異なる又は「一新した」証言へのドアを開く。
    答えが不十分、あるいは証人の回答が答えに十分な自信なし⇒追い打ちをかける。
助けになる書類があるか?
会社により良く答えられる立場にある人がいるか?
何故証人は答えに自信がないのか?
    究極的に、質問は、証人が回答する正しい人であり、回答を変化又は精練す重要なことを知らないことを示する回答を引き出すべきである。
質問に関係なく、承認が記憶にないと答える場合どうするか?
  ◆タクティクス
   
    証人の記憶を回復させる努力が効果がない⇒彼女の答えを固定する。
出来る限り、証人を中立化させ彼女を、審理やサマリージャッジメントから除去する一連の質問で、「思い出せない」という答えを保存する。
それらの質問は
「何故あなたは憶えていないのか?」
「これについてのあなたの記憶を呼び起こすものが何かあるか?」
「誰が答えを知っているか?」
「いかにあなたはこの質問への答えを得ることができるか?」
「●を議論する理由があるか?」
を含む。
    これらのフォローアップ質問とそれらへの回答は、さらなるフォローアップ質問を思いつかせる。
ex.
証人が記憶を喚起させるものを述べる⇒そのものがディスカバリーでなく、あるべきであれば、証人に何故ないのか説明させる。
不存在が証人の証言の重要な分野に関する⇒新たな情報が引き出し調査する機会を与えるよう、宣誓証言を続ける
    忘れっぽい承認を全ての道がつきるまでプッシュする。
次に行く前に、証人の答えに、追求すべきものがなにも残っていないことを確認させる。
できるなら、証人の記憶を食い違わさせる。
トライアルで弱点をつくより、デポジションで答えを聞く方が常にいい。
    証人のトピックについての知識の欠如を固定し、無知の自認をクライアントに有利につかう。
そうする最も明らかな機会は、サマリージャッジメントの申立てとトライアルでの反対尋問においてである。
    サマリージャッジメントでは、申請する当事者は、事実の純粋な争点の欠如を立証し、他方当事者は重要な事実の争点が存在することを示さなくてはならない。
かれらの鍵となる承認がデポジションでの同じ事実について全くの知識の欠如を示したのであれば、相手方代理には困難に陥る。
  ◆The Sham Affidavit Rule(虚偽アフィダビットルール)
    証人がでポジションで思い出せないトライアルでのサブジェクトについての事実の争点をつくり出すために、同じ証人からのデクラレーションかアフィダビットを提出することが普通である。
ほとんどの裁判所は、「虚偽アフィダビットルール」として一般に知られるものを通じて、このタイプの行動を禁じる。
    連邦裁判所では、当時者はその以前のでポジションでの証言と矛盾するアフィダビットにより事実の争点を創造できない。
このルールは、承認がデポジションで思い出せないと証言し、その後デクラレーションで思い出す場合にも適用される。
     
  ◆Impeaching Inconsistent Testimony 
◆    ◆Using Motions 
  ◆ Well handled, evasive deposition testimony can bolster your client's position
     




☆国際的な子の連れ去りへの制度的対応(一問一答)  
     
     
     

☆親の面会交流を改めて考える
  ◆1 はじめに
  ◆2 面会交流をめぐる紛争の分類
     
◆    ◆3 面会交流をめぐるこれまでの学説 
    子を養育する親の権利を奪うことは、
@親から子育ての喜びを奪うこと、
A愛着追求を子どもから奪うことになり
「幸福追求権」や「プライバシー権(自己決定権)」侵害と解されるという見解。
     
  ◆4 面会交流を扱ったこれまでの先例 
   
   
  ■(3) 親と子ども双方に面会交流権を認めたもの
  規定  憲法 第26条〔教育を受ける権利、教育を受けさせる義務、義務教育の無償〕
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
Aすべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
教育基本法 第1条(教育の目的)
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
    子どもは「人格の完成をめざし、心身の健全な発達を求める基本的人権が保障されなければならない(憲法26条1項、教育基本法1条)」
憲法上の権利主体である子どもの面会交渉権の性質は「子の監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方、人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求める子の権利としての性質をも有する」

同時に
「子の福祉を無視して、単に親または親権者であるからというだけで当然に面会交流権を有する旨の見解には同調することができない」

親の面会交流に関する権利性は子どものそれに比べると後順位におかれている。
   
     
  ◆5 面会交流と別居親の利益 
  ■(1) 子どもと面会交流の必要性
  ■(2) 別居親と面会交流の必要性 
    @子どもへの責任
    A別居親自身が自分の福祉を実現するための面会交流
別居親の自然な情として成長する子ども見守りたい・交流したい
     


☆離婚訴訟中でDV保母命令下との父との面会交渉(却下) 民商法雑誌129巻945頁
     
  ◆ 民法上は明文規定のない離婚後あるいは別居中の面会交渉権について:
    判例:民法766条あるいはその類推適用及び家事審判法9条1項乙類4号に基づき、家庭裁判所が審判により決定できる(最高裁昭和59.7.6)
⇒手続上は確立

面会交渉権の決定にあたっては、子の利益を考慮すべき。
  ◆面会交渉権の法的性質論 
    面会交渉権について民法766条に基づく家裁の審判権が認められるという手続面と法的性質論は別個に考えてよい。
民法上の単独親権規定(819条)⇒親権・監護権以外の親子間の法的効果の1つとして面会交渉権を位置づけるべき。
A:両性説(親の権利・子の権利説)が妥当。

面接交渉権は、、憲法13条に基づく家族生活の形成・維持・解消に関する権利としての親子関係を維持する(監護養育などに係わり、愛情ある交流を維持する)権利の1つとして民法上具体化されたものと捉え、
親権者・監護者にならなかった親にも認められる親子関係を維持する権利として保障され、同時に子の権利としても認められるものである。

面接交渉についての親の権利と子の権利はそれぞれ独立したものと捉えるbえきであるが、
親の利益と子の利益が対立すつ場面では、子の権利が優先する。

非訟事件手続法・家事事件手続法の制定の理念と課題 山本和彦
法律時報83巻11号
  ◆1 立法の経緯 
■    ■(1) 旧非訟事件手続法の制定 
■    ■(2) 家事審判法の制定及び「訴訟の非訟化」 
  ■(3) 改正の経緯 
     
  ◆2 改正の意義と理念 
  ■(1) 形式的意義 
  ■(2) 実質的意義@・・・手続保障の強化
    憲法 第32条〔裁判を受ける権利〕
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
    当事者等の手続き件について(訴訟事件の場合と全く同じではないとしても)その根幹部分は非訟事件手続においても保障されるべきことに、今日の学説ではほぼ異論がない。
多くの見解は、そのような手続保障を憲法上の保障(憲法32条に基づく審尋請求権)として把握する。
高田「審問請求権は、人間の尊厳に根ざした手続基本権であり、家事審判手続においても認められるべきもの」
筆者(山本)も、非訟事件であっても、国家権力によって自己に不利な三番がされ、それに拘束される以上、事前に意見を述べる機会を付与されることは、憲法の保障に基づく人権を構成する。
  ■(3) 実質的意義A・・・柔軟性の維持(手続の利用しやすさ)
  ■(4) 実質的意義B・・・家事調停の在り方 
     
  ◆3 新法の課題と将来 
■    ■(1) 「訴訟の非訟化」論への影響 
  ■(2) 相手方のある手続・・・会社非訟等の整備
  ■(3) 家事事件における子の利益
  ■(4) 「家裁らしさ」の維持と変容
  ■(5) 家事調停と民間ADRの役割分担 
  ■(6) 家事審判の実効性強化 
  ■(7) 手続を担う人材の育成