シンプラル法律事務所
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詳解相続法(潮見)

はしがき  
     相続法全体を見直す民法改正が、2018年7月6日に成立。
施行:
自筆証書遺言の方式緩和⇒2019年1月13日
多くのもの(遺産分割等の見直し、遺言執行者の権限の見直し、相続の効力と対抗要件制度の見直し、遺留分制度の見直し、特別寄与料の制度)⇒2019年7月1日
配偶者居住権・配偶者短期居住権の制度⇒2020年4月1日
遺言書保管法⇒2020年7月10日
 ★第1章 相続制度
     
     
★第2章 相続の開始・・・人の死亡  
     
     
★第3章 相続人  
     
     
★第4章 相続資格の具体的確定  
     
     
★第5章 相続人の不存在  
  ◆第1節 相続人不存在制度の存在理由 
  ◆第2節 相続財産法人の成立 
  ◇T 「相続人のあることが明らかでない」こと 
  ■1 「相続人のあることが明らかでない」場合 
  ■2 相続人の存在が明らかであるけれども行方不明の場合 
  ■3 包括受遺者がいる場合 
    相続財産全部について全部包括受遺者がいる⇒該当せず。
←必要がない。
  ■4 将来的に相続人が発生するかもしれない状況が存在する場合
  ◇U 相続財産法人(p100)
  相続財産法人は、被相続人死亡の時点で、法律上当然に成立。
相続財産管理人の選任は、相続財産法人成立の要件ではない。 
    相続財産法人:
被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位。
相続財産に関する訴訟につき、当事者適格を有する。
   
  ◇V 相続財産管理人(p100) 
  ■1 家庭裁判所による選任 
  ■2 相続財産法人の法定代理人
     
  ◇W 相続人の存在が後日明らかとなった場合(p101) 
  ■1 相続財産法人は当初より存立せず 
  ■2 相続財産法人が消滅する時期 
  ■3 相続財産管理人のした行為の効力 
     
  ◆第3節 相続人不存在を確定するための手続・・・相続人の捜索を相続財産法人の清算
  ◇T 相続人の創作と失権 
  ■1 制度の概要 
    民法は、人が死亡して「相続人のあることが明らかでない」場合に、それでもなお、次のような相続人捜索のための手続を用意。
@出発点⇒相続財産管理人の選任。
A相続財産管理人⇒遅滞なく、その旨を公告。
相続人捜索公告としての機能。
BAの公告から2か月間、相続財産を保存しながら、相続人の出現を待つ。
CBの公告期間内に相続人が現れない⇒遅滞なく、すべての相続債権者および受遺者に対して、2か月を下らない期間を定めて、債権の申し出をするように公告。
(既に判明している相続債権者および受遺者に対しては個別的に債権の申し出をするよう催告)
DCの期間が満了⇒清算が開始。
期間内に申し出をしたか、またはすでに判明している相続債権者および受遺者に対して弁済。
ECの公告期間内に相続人が現れない⇒6か月を下らない期間を定めて、最後の相続人捜索公告をする。
FEの期間満了⇒相続人の不存在が確定。
G
  ■2 失権の範囲
   
  ◇U 相続財産法人の清算 
     
  ◆第4節 残余財産の帰属・・・特別縁故者への相続財産の分与と残余財産の国庫帰属 
  ◇T 特別縁故者制度の意義 
     
  ◇U 相続人不存在の枠内での特別縁故者制度 
     
  ◇V 特別縁故の意味 
  ■1 被相続人と生計を同じくしていた者 
  ■2 被相続人の療養看護につとめた者 
  ■3 その他、被相続人と特別の縁故があった者 
     
  ◇W 縁故関係が存在した時期 
     
  ◇X 特別縁故資格を有する人 
     
  ◇Y 分与の手続 
     
  ◇Z 分与される財産 
     
  ◇[ 分与の実行 
     
  ◇\ 遺産の国庫への帰属 
     
     
     
★第6章 相続財産の包括承継  
     
     
★第7章 遺産共有  
     
     
★第8章 相続分の確定  
  ◆第1節 相続分の種別・・・概要 
     
  ◆第2節 法定相続分 
  ■T 配偶者相続人と法定相続分 
    配偶者は、常に相続人となる(890条)
他の血族相続人との組合せになった場合の法定相続分⇒U
     
  ■U 血族相続人と法定相続分 
  □1 第1順位の相続人・・・子 
  ●1−1 配偶者とともに相続した場合 
    子のグループ:2分の1
配偶者:2分の1
(900条1号)
  ●1−2 子が複数いる場合 
    子が複数⇒同順位で、かつ、均等の相続分(900条4号本文)
  Aが死亡し、相続には、妻Wと、子X・Y・Z
⇒Wが2分の1、X・Y・Zが各6分の1
  ●1−3 嫡出子と婚外子がいる場合 
  Aが死亡し、相続人は妻Wと嫡出子X・Y、ならびにAに認知されたFとの間の婚外子D
⇒2013(平成25)年12月の民法の一部改正の結果、Wが2分の1、X・Y・Zが各6分の1
    2013年(平成25)年12月15日の改正まで、900条4号ただし書前段で、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1と規定。
    最高裁H25.9.4:
遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。

@家族の多様化
A諸外国の状況の変化
B国際人権規約・児童の権利条約の履行状況等に対する勧告等が、わが国に対してされている
C家族という共同体の中における個人の尊重の意識が高まりをみせている
D法律婚という制度自体はわが国に定着しているとしても、法律婚制度のもとで父母が婚姻関係になかったという、子にとってはみずから選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべき。
(合憲説がその基礎としていた法律婚尊重の必要性との切断)

2013(平成25)年12月5日に民法が改正され、900条4号ただし書前段が削除。
  ●1−4 養子がいる場合(p194) 
    養子は、縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得(809条)
⇒養親の相続につき、養子は、実子と同じ相続分。
    養子:
@縁組後も実方との親族関係が従前どおりに存続する普通養子
A実方との親族関係が終了する特別養子
  ●1−5 胎児がいる場合
    相続に関して、出生擬制がはたらく(886条)
  ●1−6 代襲相続・再代襲相続の場合 
    代襲相続(887条2項。再代襲相続についても同じ(同条3項))の場合において、代襲資格を有する直系卑属が数人ある⇒被代襲者が受けるべきであって指定相続分または法定相続分について、900条4号の規定に従い、相続分を有する(株分け説。901条ただし書)。
     
  □2 第2順位の血族相続人・・・直系尊属(p196)
    親等の異なる直系尊属間⇒親等の近い者がいれば、その者が相続資格を取得し、これ以外の者は相続資格を取得しない(889条1項1号)。 
    同順位の直系尊属⇒それぞれが均等の相続分。
    相続人が@直系尊属とA配偶者との組み合わせ⇒@のグループが3分の1でAが3分の2
(900条2号)
     
  □3 第3順位の血族相続人・・・兄弟姉妹(p196) 
    相続人が@兄弟姉妹とA配偶者の組合せ⇒@のグループが4分の1でAが4分の3
(900条3号)
    兄弟姉妹が数人⇒同順位で均等の相続分
    半血兄弟姉妹(死亡した被相続人と親の一方のみを共通にする者)は全血兄弟姉妹の2分の1

「兄弟姉妹の資格で相続する場合」にのみ妥当する。
   
  ◆第3節 具体的相続分の確定 
  ◇第1項 特別受益の持戻し 
  ■T 意義
    共同相続人の中に被相続人から特別受益(贈与・遺贈)を受けた者がいる

@この特別受益のうち贈与を相続財産に加算して「みなし相続財産」としたうえで、共同相続人の相続分(一応の相続分を確定。
A特別受益(贈与・遺贈)を受けた相続人(受益相続人)についてその特別受益額を一応の相続分から控除し、残額をもってこの者の具体的相続分とする(903条1項)。
    2つの系譜:
@「被相続人は、諸子を平等に扱うに違いない」との被相続人の意思を推測したのが、特別受益持戻しの制度。(ローマ法)
A「特別受益は遺産の前渡し⇒相続開始時の相続財産の評価に加えるべき」とするのが、特別受益持戻しの制度。(ゲルマン法)
    特別受益の「持戻し」といっても、贈与の価額を増族財産に加算して、これをもとに具体的相続分(率)を計算することが考えられている。 
  特別受益に関しては、持ち戻し免除の制度、すなわち、受益相続人の具体的相続分を算定する際に特別受益を考慮しない意思を被相続人が表示した場合に、贈与の目的物またはその価額を受益相続人に保持させ、これをもって受益相続人の取り分をより多く確保する制度(903条3項)

@被相続人が特定の相続人に対して特別の利益を与えたのは、この者に特別に多くの財産を承継させようという意図によるもの
A自分の財産をどのように承継させるかについては被相続人の意思が尊重されるべき
平成30年の民法改正では、この持戻し免除の制度を活用することにより、婚姻期間が20年以上の夫婦について、配偶者の相続分をそれまでの制度により、婚姻期間が20年以上の夫婦について、配偶者の相続分をそれまでの制度よりも手厚く保障することを企図した明文の規定が新たに設けられた(903条4項。)
    特別受益の持戻しの計算は、他の共同相続人が、特別受益を有する相続人に対して持戻しの主張をすることによって、おこなわれる。
他の共同相続人からの主張がないのに、家庭裁判所が、特別受益の存在が認められるとして職権で、持戻し計算をして具体的相続分を算定してはならない。
    超過特別受益⇒持戻し計算に関する特則が設けられている(903条2項)。
   
  ■U 特別受益と確認の訴え・・・確認の利益の有無 
     
  ■V 特別受益か否かが問題となるもの 
  □1 緒論 
    第903条(特別受益者の相続分)
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
    民法903条1項は、特別受益として、遺贈のほか、婚姻や養子縁組のため、または生計の資本として、被相続人から共同相続人に贈与された財貨を、「特別受益」として規定。
特別受益性が問題となるのは、
     
  □2 「相続させる遺言」(特定財産承継遺言)の対象財産 
    「特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』」旨の遺言(特定財産承継遺言)がされた場合:
この遺言は、
@遺産分割方法の指定であるとともに、
A特段の事情のない限り、遺産分割その他特別の行為を待つまでもなく、相続開始と同時に「特定の遺産」が「特定の相続人」に移転する(最高裁H3.4.19)。

相続開始と同時に「特定の相続人」に移転し、遺産分割の対象からはずれる。
⇒特定の相続人に対する遺贈と同質のもの。
     
     
  ■X みなし相続財産の算定 
  □1 「相続開始の時において有した財産」・・・積極財産のみ 
    民法 第九〇三条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額その贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
    903条1項:
具体的相続分を計算する際の基礎となる「みなし相続財産」を確定する際の基点に「相続開始の時に有した財産」の価額を置く。

@基礎となるのが相続開始時に存在していた財産であることを意味するとともに、
A相続財産の価額の評価も相続開始時を基準とすべきであることを意味
    ここにいう「財産」の価額とは、債務(消極財産)を控除しない積極財産の価額を意味

@わが国の民法は、相続と同時の当然清算主義(積極財産から消極財産を控除した財産をもって相続財産とする主義)を採用していないし
A遺留分の基礎財産に関する1043条1項と異な債務の控除が903条の条文には書かれていない
     
  □2 贈与の価額の加算と、遺贈の価額の非加算 
    903条1項:
具体的相続分を計算する際の基礎となる「みなし相続財産」を確定するときには、
@「相続開始時に現存する相続財産」の価額に、
A相続人が受けた「贈与」の価額を加算。
ここでの「贈与」とは、相続分の前渡しと評価されるような贈与のみを指す。
    相続人の受けた「遺贈」(遺言による財産の無償処分):
相続開始時に現存する相続財産の価額には加算しない。

遺贈は相続開始時に現存する相続財産の中から支弁される(=「被相続人が相続開始の時において有した財産」に含まれる)もの。
     
    ここで問題となる遺贈は、「相続人に対する特定遺贈」。
包括遺贈⇒受遺者は相続人と同一の権利義務を有する⇒「被相続人が相続開始の時において有した財産」と切り離して特別扱いをする必要はないし(相続分指定と同じ扱い)、特別受益の受戻の枠組みにも載らない。 
   
  □3 贈与の価額の算定基準時・・・相続開始時の価値(原則) 
     
  □4 贈与財産の滅失または価額の増減 
     
     
     
  ◇第2項 寄与分 
     
  ◆第4節 相続分の譲渡ほか 
     
★第9章 遺産分割  
     
     
★第10章 配偶者の居住の権利(配偶者短期居住権・配偶者居住権)  
     
     
★第11章 相続人以外の者による貢献の考慮  
     
     
★第12章 遺言  
     
     
★第13章 遺贈  
     
     
★第14章 遺留分  
  ◆第1節 遺留分の概要 
  ■T 遺留分と自由分
  ■U 遺留分制度の系譜 
  □1 ローマ・ドイツ的「義務分」の制度 
    被相続人が遺言で遺産を自由に処分できる。
but
これによって近親者が経済的に困窮する事態が生じることがある

近親者の実質的救済を図る(生活保障する)ため、一定程度の相続財産(義務分。近親に遺留すべき財産)が与えられなかったか、またはわずかしか与えられなかった一定範囲の近親者に、義務分に不足する額の支払を内容とする金銭的請求権(債権的請求権)を与えた。
  □2 ゲルマン・フランス的「遺留分」の制度 
    家族共同体の財産は家族に承継させる(家産の維持)との観点から、
@遺言による処分の自由を否定し、
A相続財産中の一定部分について相続人の「相続権」を保障する(不可侵的財産権)

被相続人は、相続権に対応する遺留分を除いた部分(自由分)についてのみ、遺言により自由に処分することができる。
  ■V 遺留分制度の目的 
   
     
   
  ■W わが国の遺留分制度 
  □1 2018(平成30)年民法改正前の規律・・・遺留分減殺請求権、現物返還原則 
    遺贈・贈与を対象とする遺留分減殺の意思表示⇒現在に服する範囲で遺贈・贈与は失効し(遺留分減殺請求=形成権)、遺留分権利者が減殺対象となった財産に対する物権的支配権原を回復する(物権的効果)
そのうえで、減殺の対象となった財産の現物返還が原則とされ、例外的に減殺相手方からの価額弁償の抗弁を認める。
    vs.
@事業者が事業承継をする者に対して不動産・株式ほかの財産の譲渡をしたときに、遺留分減殺の結果、これらの財産について事業承継者と他の相続人とに共有状態が生じ、事業承継に支障が生じる
A一般的にみても、遺贈・贈与の目的物について共有状態⇒受遺者・受贈者の持分処分に支障をきたす
     
     
  ■X 遺留分の放棄 
  □1 相続開始前の遺留分の放棄と家庭裁判所の許可 
  □2 相続開始後の遺留分の放棄 
  □3 遺留分放棄の効果 
     
  ■Y 中小企業の事業承継のための遺留分制度の特例・・・遺留分の算定に係る合意についての許可の審判 
  ■Z 遺留分の侵害が問題となる場面 
     
  ◆第2節 遺留分権利者 
  ■T 共同姉妹以外の相続人 
  ■U 相続欠格者・日廃除者・相続放棄者に遺留分なし 
 
 
    
     
     
  ◆第3節 遺留分の割合・・・2つの意味の遺留分(率)
  ■T 相対的遺留分・・・1042条1項の「遺留分」 
  □1 相対的遺留分 
  □2 直系尊属のみが相続人である場合 
  □3 直系尊属以外の者が相談人に含まれる場合 
  □4 共同相続人間での一優分侵害・・・遺留分権利者であるということと、遺留分を侵害しているということ
     
     
  ◆第4節 遺留分算定の基礎財産(p528)
  ◇第1項 基礎財産の確定に臨む態度 
    基礎財産:遺留分率をもとに相続人各自の遺留分を算定するときの基礎となる財産(価額)
  ◇第2項 基礎財産の確定 
  ■T 基本的算定式 
    基礎財産=
@被相続人が相続開始時点で有していた財産(遺贈財産を含む)

A贈与財産

B相続債務の全額
遺産共有の場合における「みなし相続財産」および「具体的相続分」の算定の場合(903条、904条、904条の2)と異なる点:
@「寄与分」(特別の寄与)が考慮されない
A「相続債務」が控除される
B組み込まれる贈与財産に違いがある
C対象となる受贈者は、共同相続人に限られない
  ■U 被相続人が相続開始時点で有していた財産の加算 
  □1 相続開始時点で有していた財産 
    「被相続人が相続開始時点で有していた財産」:
相続人が承継した積極財産
(祭祀財産(=相続の対象から除外(897条1項本文))は含まれない) 
  □2 条件付権利や存続期間が不確定な権利の処理 
     
  □3 遺贈の処理 
  債権的効力しかないもの:
「相続財産が承継した積極財産」から遺贈債務が履行されるべき
基礎財産を考える際に特別扱いをする必要がない
     
  物権的効力をもつとわれている遺贈:
特定物の遺贈

相続開始時点で既に「相続人が承継した積極財産」から離脱
but
この場合にも遺贈の目的物である特定物を基礎財産に含める「結論」、すなわち、「被相続人が相続開始時点で有していた財産」に遺贈財産を含める処理を肯定。 
     
  □4 生命保険金の処理 
  被相続人Aが自己を受取人と指定⇒相続財産を構成し、基礎財産に含まれる。
  but
第三者を保険金受取人に指定⇒「贈与」または「遺贈」に準じるものとすることはできない

@死亡保険金請求権は保険金受取人固有の権利であり、保険契約者または被保険者である被相続人から承継取得するものではない
A死亡保険金請求権は被保険者の死亡時にはじめて発生⇒保険契約者が払い込んだ保険料と等価関係に立つものではない
B死亡保険金請求権は被保険者の稼働能力に代わる給付ではない⇒死亡保険金請求権が実質的に保険契約者または被保険者の財産に属していたものとみることはできない。
  but
@保険金受取人として指定された者が共同相続人の1人であった場合で、
A保険金受取人である相続人と他の相続人との不公平が到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情
⇒1044条2項により、死亡保険金請求権がその受取人である相続人の得た「特別受益」(904条参照)と評価され、基礎財産に算入される余地はある。 
     
  □5 死亡退職金の処理 
    死亡退職金は、遺留分と同様に、遺族の生活保障を目的としたものであるところ、
遺留分制度を前提としたうえでなお、死亡退職金の受給権者への交付が承認されている

死亡退職金の需給制度に対して遺留分制度による介入を認めるべきではない
⇒死亡退職金を遺留分算定の基礎財産に含めるべきではない。
     
  ■V 贈与財産の加算 
  □1 1044条に言う「贈与」の意義
  すべての無償処分を指す。
ex.
一般財団法人への拠出
信託の設定
無償での債務免除
無償での担保供与
  遺留分算定の基礎財産に算入される贈与は、「みなし相続財産」の場合(903条参照)と異なり、相続人への贈与に限られない
  死因贈与(554条)は贈与契約の一種であるが、通説は「遺贈」として取り扱うべきとする。
⇒基礎財産への参入に際しても、死因贈与は1044条によって処理されるのではなく、1043条1項にいう「被相続人が相続開始の時において有した財産」に含まれることになる。 
   
   
  □2 原則・・・加算される贈与 
  ●2-1 相続開始前1年間になされた贈与 
    遺留分算定の基礎財産に算入される贈与を、時期的に限定
←過去に無条件にさかのぼって贈与を基礎財産に算入することによって生じる取引の安全を害する危険を回避。
   
  □3 例外(その1)・・・遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与の加算 
    当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は、相続の1年前の日よりも前にされたものであっても、遺留分算定の基礎財産に算入される。
    判例:「損害を加えることを知って」とは、損害を加えることの認識、すなわち、遺留分権利者に損害を加えるべき事実を知っていること。
    判例:損害を加えることをを知ってしたというためには、贈与当時に贈与財産の価額が残存財産の価額を超えることを知っていただけでは足りず、将来において相続開始までに自己の財産が増加しないことの予見のもとで当該贈与がされたことを必要とする(予見必要説)。
     
  □4 例外(その2)・・・相続人に対する特別受益としての贈与の加算 
    共同相続人の1人に対してされた贈与は、
@それが特別受益(904条参照)に該当し、かつ、
A相続開始前の10年間にされたもの

特別受益と評価される価額に限り、遺留分算定の基礎財産に算入される。

@共同相続人の1人に対してされた贈与は実質的に相続財産の前渡しであるという点に着目し、共同相続人相互の公平を維持するための処理。
A相続開始よりもかなり前に贈与を受けた受贈者の地位の安定性を確保する必要から、基礎財産に組み入れることのできる贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限られる。 
    代襲相続が生じた場合における被代襲者への贈与および代襲者への遺贈:
通説:
@被代襲者(Y)への贈与⇒相続開始前の10年間にされたものであれば、当然に、遺留分算定の基礎財産に算入される。
A代襲者(K)への贈与⇒実質的に被代襲者への遺産の前渡しと評価できる特段の事情がなければ、遺留分算定の基礎財産には参入されない。
    相続開始の10年前より前にされた贈与

共同相続人に対するものであったとの理由のみをもってしては、基礎財産に算入することができない。
この場合には、その贈与を基礎財産に算入しようとするのであれば、1044条1項後段(遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与)によるしかない。
    共同相続人に対して相続開始前の10年間にされたものであっても、
それが904条の「特別受益」にあたるもの、すなわち、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与」でなければ、1044条2項、3項の特則は適用されない。
「特別受益」にあたるときでも、基礎財産に算入されるのは、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額」に相当する額に限られる。
    「共同相続人に対する」贈与であることが必要⇒受贈者Xが相続放棄をしてしまえば、この者は最初から相続人にならなかったものとみなされる⇒たとえ相続開始前の10年間にされたものであっても、1044条2項、3項によって基礎財産に算入することができない。
この場合に、その贈与を基礎財産に算入しようとするのであれば、同条1項後段(遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与)によるしかない。
     
□5 負担付贈与の扱い
    贈与財産の価額から負担の価額を控除した額を、遺留分を算定するための基礎財産に算入。 
   
  □6 不相当な対価でされた有償行為の扱い 
    不相当な対価でされた有償行為:
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、
「当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす」
⇒対象財産の価額から対価を控除した額を、遺留分算定の基礎財産に算入。
     
  ■W 遺産債務の控除 
    遺留分算定の基礎財産を確定する際には、「みなし相続財産」の確定の場合と異なり、遺産債務の全額を相続財産から控除。

遺留分制度が「相続人が現実に取得する(または取得すべき)価額」を基礎として遺留分権利者に一定割合を留保する制度⇒積極財産から消極財産を控除するのが当然
    私法上の債務のみならず、所得税支払債務や罰金支払債務など公法上の債務も含まれる。
    保証債務:
主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その支出額を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような特段の事情が存在する場合であない限り、1043条1項所定の「債務」に含まれない。
  ◇第3項 基礎財産の評価の基準時と評価方法 
  ◆第5節 遺留分侵害請求と金銭給付請求権 
   
     
★第15章 相続回復請求権