シンプラル法律事務所
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詳解相続法(潮見)

はしがき  
     相続法全体を見直す民法改正が、2018年7月6日に成立。
施行:
自筆証書遺言の方式緩和⇒2019年1月13日
多くのもの(遺産分割等の見直し、遺言執行者の権限の見直し、相続の効力と対抗要件制度の見直し、遺留分制度の見直し、特別寄与料の制度)⇒2019年7月1日
配偶者居住権・配偶者短期居住権の制度⇒2020年4月1日
遺言書保管法⇒2020年7月10日
 ★第1章 相続制度(p1)
     
     
★第2章 相続の開始・・・人の死亡(p11)
     
     
★第3章 相続人(p14)
     
     
★第4章 相続資格の具体的確定(p37)
     
     
★第5章 相続人の不存在(p96)
  ☆第1節 相続人不存在制度の存在理由 
  ☆第2節 相続財産法人の成立 
  ◇Ⅰ 「相続人のあることが明らかでない」こと 
  ■1 「相続人のあることが明らかでない」場合 
  ■2 相続人の存在が明らかであるけれども行方不明の場合 
  ■3 包括受遺者がいる場合 
    相続財産全部について全部包括受遺者がいる⇒該当せず。
←必要がない。
  ■4 将来的に相続人が発生するかもしれない状況が存在する場合
  ◇Ⅱ 相続財産法人(p100)
  相続財産法人は、被相続人死亡の時点で、法律上当然に成立。
相続財産管理人の選任は、相続財産法人成立の要件ではない。 
    相続財産法人:
被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位。
相続財産に関する訴訟につき、当事者適格を有する。
   
  ◇Ⅲ 相続財産管理人(p100) 
  ■1 家庭裁判所による選任 
  ■2 相続財産法人の法定代理人
     
  ◇Ⅳ 相続人の存在が後日明らかとなった場合(p101) 
  ■1 相続財産法人は当初より存立せず 
  ■2 相続財産法人が消滅する時期 
  ■3 相続財産管理人のした行為の効力 
     
  ☆第3節 相続人不存在を確定するための手続・・・相続人の捜索を相続財産法人の清算
  ◇Ⅰ 相続人の創作と失権 
  ■1 制度の概要 
    民法は、人が死亡して「相続人のあることが明らかでない」場合に、それでもなお、次のような相続人捜索のための手続を用意。
①出発点⇒相続財産管理人の選任。
②相続財産管理人⇒遅滞なく、その旨を公告。
相続人捜索公告としての機能。
③②の公告から2か月間、相続財産を保存しながら、相続人の出現を待つ。
④③の公告期間内に相続人が現れない⇒遅滞なく、すべての相続債権者および受遺者に対して、2か月を下らない期間を定めて、債権の申し出をするように公告。
(既に判明している相続債権者および受遺者に対しては個別的に債権の申し出をするよう催告)
⑤④の期間が満了⇒清算が開始。
期間内に申し出をしたか、またはすでに判明している相続債権者および受遺者に対して弁済。
⑥④の公告期間内に相続人が現れない⇒6か月を下らない期間を定めて、最後の相続人捜索公告をする。
⑦⑥の期間満了⇒相続人の不存在が確定。
  ■2 失権の範囲
   
  ◇Ⅱ 相続財産法人の清算 
     
  ☆第4節 残余財産の帰属・・・特別縁故者への相続財産の分与と残余財産の国庫帰属 
  ◇Ⅰ 特別縁故者制度の意義 
     
  ◇Ⅱ 相続人不存在の枠内での特別縁故者制度 
     
  ◇Ⅲ 特別縁故の意味 
  ■1 被相続人と生計を同じくしていた者 
  ■2 被相続人の療養看護につとめた者 
  ■3 その他、被相続人と特別の縁故があった者 
     
  ◇Ⅳ 縁故関係が存在した時期 
     
  ◇Ⅴ 特別縁故資格を有する人 
     
  ◇Ⅵ 分与の手続 
     
  ◇Ⅶ 分与される財産 
     
  ◇Ⅷ 分与の実行 
     
  ◇Ⅸ 遺産の国庫への帰属 
     
     
     
★第6章 相続財産の包括承継(p115)
     
     
     
     
     
     
     
     
  ☆第4節 相続財産に属する権利か、受取人固有の権利か?
  ◇Ⅰ 生命保険金請求権 
  ■1 保険金受取人の指定方法と相続財産性 
     
     
     
     
     
     
★第7章 遺産共有(p137)
  ☆第1節 総論 
     
     
  ☆第2節 遺産共有の二元的構造 
     
     
  ☆第3節 共有される遺産の管理
     
     
     
     
  ■V 相続財産の管理費用の負担(p154)
     
     
     
  ☆第4節 共有される相続財産と、分割される相続財産 
  ◆第1項 問題の所在 
    共同相続の場合には、相続人に承継される個別財産の中に、共同帰属()さらに、遺産分割の手続)という形態に親しまないものがあるのではないか。
すなわち、相続開始と同時に共同相続人の各自が分割承継するものがあるのではないか?
  ◆第2項 金銭債権①・・・当然分割される金銭債権 
  ■Ⅰ 427条による当然分割 
  規定 民法 第四二七条(分割債権及び分割債務)
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
    金銭債権は共同相続人に準共有され、遺産共有の対象となるようにみえる。
判例・通説:多くの金銭債権につき、これを可分債権としたうえで、427条を適用して処理。

損害賠償請求権、貸金債権、不動産賃料債権などは、遺産分割の手続を待つまでもなく、法律上当然に相続分に従い分割され、各共同相続人に帰属する。(判例・通説)
  ■Ⅱ 分割基準・・・相続分の指定がある場合 
  □1 共同相続人の内部関係 
    平成17年最高裁判決
「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと相当とする」
     「その相続分」は、相続分の指定があるときには、指定相続分なのか、法定相続分なのか?
可分債権である金銭債権につき、共同相続の場合に分割債権説をとる論拠が、相続財産の共同所有の法的性質を「共有」と解する立場を基礎としているにもかかわらず、多数債権者のものでの金銭債権の共同的帰属の場合には、債権総則中の規律に427条があるため、同債権は「共有」とならず、「可分債権」として処理されるとされている。

分割基準につき私的自治に優位性を認め、当事者の意思による割合決定が尊重されるとする427条の解釈論からは、相続分が指定されているとき、少なくとも共同相続人間の内部関係においては、最高裁判例に言う「その相続分」とは法定相続分ではなく、指定相続分であるというべき。←遺言による相続分の指定の場合には、被相続人の最終意思がそこに現れている。
    共同相続人間の内部関係において指定相続分により金銭債権を帰属させることは、多くの裁判例においても、既に認められている。
ex.
「特定の遺産を特定の相続分に相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)は、特段の事情がなければ①遺産分割方法の指定であるとともに、「特定の遺産」の価額が当該相続人の法的相続分を超えるときは、②その相続人に対する相続分指定を伴っているといのが、確立した判例。
     
   
相続分尾指定がある場合には、金銭債権の共同相続につき、当該金銭債権は、共同相続人間では、当該指定相続分に応じて分割あsれるという帰結。
  □2 債務者その他の第三者との関係・・・対抗構成
  ●2-1 債務者対抗要件 
  規定 民法 第八九九条の二(共同相続における権利の承継の対抗要件)
 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
    相続分の指定による債権の承継は、次のいずれかの要件を備えなければ、法定相続分を超える部分については、債務者に対抗することができない(法899条の2第2項)。
①共同相続人の全員が債務者に対して通知
②法定相続分を超えた相続分を取得した相続人または遺言執行者が、遺言の内容を明らかにして債務者に対して通知
③債務者が承諾したこと
     
  ●2-2 第三者対応要件 
    上記①~③の通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。(899条の2第1項)
     
  ■Ⅲ 共同相続人の合意による遺産分割対象への組入れ 
  □1 共同相続人の内部関係 
    被相続人の有していた可分債権である金銭債権も「相続財産」に属する
⇒遺産分割にあたり、協議・調停の際に共同相続人全員が同意すれば、これを遺産分割の対象財産の中に取り込んで分割の対象とすることは差し支えがない。

共同相続人が遺産の合目的的配分をするうえで金銭債権を含めた分割に合理性を見出したときには、このような共同相続人の意思を尊重すべき
  □2 債務者その他の第三者との関係・・・対抗構成
  ●2-1 債務者対抗要件
    遺産分割による債権の承継は、次のいずれかの要件を充たさなければ、法定相続分を超える部分についてえは、債権者に対抗することができない。(899条の2第2項)
①共同相続人の全員が債務者に対して通知
②法定相続分を超えた相続分を取得した相続人または遺言執行者が、遺言の内容を明らかにして債務者に対して通知
③債務者が承諾したこと
  ●2-2 第三者対抗要件 
     記①~③の通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。(899条の2第1項)
     
     
     
  ◆第3項 金銭債権②・・・遺産共有の対象となる金銭債権(p162)
  ■Ⅰ 遺産共有の対象となる場合 
  □1 預貯金債権ほか 
    金銭債権であれば、すべてのものが相続により相続分に応じて共同相続人間で当然に分割される(=遺産共有の対象とならない)というわけではない。
当該金銭債権の性質に照らせば共同相続人による遺産共有の対象となり、その最終的な帰属は、遺産分割の手続によって決せられるものがある。
   
   
  預貯金債権は金銭債権であるが、「各預貯金債権の内容及び性質」に照らせば、預貯金債権が共同相続されたときは、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることなく、遺産共有の対象となり、遺産共有に服する他の財産とともに、遺産分割を経て各相続人に承継される(最高裁H28.12.19、最高裁H29.4.6)。

(i) 遺産としてみた場合の金銭と預貯金との同質性:
預貯金は、確実かつ簡易に換価することができる点で現金との差がなく、評価についての不確定要素が少ない⇒具体的な遺産分割の方法を定めるにあたっての調整に資する財産、。
(ii) 預貯金契約上の地位の承継としての側面:
預貯金債権の相続と一口に言っても、「金銭の給付を目的とする債権」の承継としてのみ捉えてはならず、「預貯金者という契約上の地位」の承継という観点からも捉えなければならない。
(iii)個々の預貯金債権の内容・属性:
普通預金債権や通常貯金債権は、1個の債権として同一性を保持しながら、常にその残高が変動しうるものであり、この理は、預貯金者が死亡した場合においても異ならない。
定期貯金は、一定の預入期間を定め、その期間内には払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預け入れるものであって、分割払戻しが認められず、共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるをえず、単独でこれを行使する余地はない。
     
  □2 遺産分割前の預貯金の払戻し 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★第8章 相続分の確定(p185)
  ☆第1節 相続分の種別・・・概要 
     
  ☆第2節 法定相続分 
  ◇Ⅰ 配偶者相続人と法定相続分 
    配偶者は、常に相続人となる(890条)
他の血族相続人との組合せになった場合の法定相続分⇒Ⅱ
     
  ◇Ⅱ 血族相続人と法定相続分 
  ■1 第1順位の相続人・・・子 
  □1-1 配偶者とともに相続した場合 
    子のグループ:2分の1
配偶者:2分の1
(900条1号)
  □1-2 子が複数いる場合 
    子が複数⇒同順位で、かつ、均等の相続分(900条4号本文)
  Aが死亡し、相続には、妻Wと、子X・Y・Z
⇒Wが2分の1、X・Y・Zが各6分の1
  □1-3 嫡出子と婚外子がいる場合 
  Aが死亡し、相続人は妻Wと嫡出子X・Y、ならびにAに認知されたFとの間の婚外子D
⇒2013(平成25)年12月の民法の一部改正の結果、Wが2分の1、X・Y・Zが各6分の1
    2013年(平成25)年12月15日の改正まで、900条4号ただし書前段で、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1と規定。
    最高裁H25.9.4:
遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。

①家族の多様化
②諸外国の状況の変化
③国際人権規約・児童の権利条約の履行状況等に対する勧告等が、わが国に対してされている
④家族という共同体の中における個人の尊重の意識が高まりをみせている
⑤法律婚という制度自体はわが国に定着しているとしても、法律婚制度のもとで父母が婚姻関係になかったという、子にとってはみずから選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべき。
(合憲説がその基礎としていた法律婚尊重の必要性との切断)

2013(平成25)年12月5日に民法が改正され、900条4号ただし書前段が削除。
  □1-4 養子がいる場合(p194) 
    養子は、縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得(809条)
⇒養親の相続につき、養子は、実子と同じ相続分。
    養子:
①縁組後も実方との親族関係が従前どおりに存続する普通養子
②実方との親族関係が終了する特別養子
  □1-5 胎児がいる場合
    相続に関して、出生擬制がはたらく(886条)
  □1-6 代襲相続・再代襲相続の場合 
    代襲相続(887条2項。再代襲相続についても同じ(同条3項))の場合において、代襲資格を有する直系卑属が数人ある⇒被代襲者が受けるべきであって指定相続分または法定相続分について、900条4号の規定に従い、相続分を有する(株分け説。901条ただし書)。
     
  ■2 第2順位の血族相続人・・・直系尊属(p196)
    親等の異なる直系尊属間⇒親等の近い者がいれば、その者が相続資格を取得し、これ以外の者は相続資格を取得しない(889条1項1号)。 
    同順位の直系尊属⇒それぞれが均等の相続分。
    相続人が①直系尊属と②配偶者との組み合わせ⇒①のグループが3分の1で②が3分の2
(900条2号)
     
  ■3 第3順位の血族相続人・・・兄弟姉妹(p196) 
    相続人が①兄弟姉妹と②配偶者の組合せ⇒①のグループが4分の1で②が4分の3
(900条3号)
    兄弟姉妹が数人⇒同順位で均等の相続分
    半血兄弟姉妹(死亡した被相続人と親の一方のみを共通にする者)は全血兄弟姉妹の2分の1

「兄弟姉妹の資格で相続する場合」にのみ妥当する。
   
  ☆第3節 具体的相続分の確定(p198)
  ◆第1項 特別受益の持戻し(p198)
  ◇Ⅰ 意義
    共同相続人の中被相続人から特別受益(贈与・遺贈)を受けた者がいる

①この特別受益のうち贈与を相続財産に加算して「みなし相続財産」としたうえで、共同相続人の相続分(一応の相続分を確定。
②特別受益(贈与・遺贈)を受けた相続人(受益相続人)についてその特別受益額を一応の相続分から控除し、残額をもってこの者の具体的相続分とする(903条1項)。
    2つの系譜:
①「被相続人は、諸子を平等に扱うに違いない」との被相続人の意思を推測したのが、特別受益持戻しの制度。(ローマ法)
②「特別受益は遺産の前渡し⇒相続開始時の相続財産の評価に加えるべき」とするのが、特別受益持戻しの制度。(ゲルマン法)
    特別受益の「持戻し」といっても、贈与の価額を増族財産に加算して、これをもとに具体的相続分(率)を計算することが考えられている。 
  特別受益に関しては、持ち戻し免除の制度、すなわち、受益相続人の具体的相続分を算定する際に特別受益を考慮しない意思を被相続人が表示した場合に、贈与の目的物またはその価額を受益相続人に保持させ、これをもって受益相続人の取り分をより多く確保する制度(903条3項)

①被相続人が特定の相続人に対して特別の利益を与えたのは、この者に特別に多くの財産を承継させようという意図によるもの
②自分の財産をどのように承継させるかについては被相続人の意思が尊重されるべき
平成30年の民法改正では、この持戻し免除の制度を活用することにより、婚姻期間が20年以上の夫婦について、配偶者の相続分をそれまでの制度により、婚姻期間が20年以上の夫婦について、配偶者の相続分をそれまでの制度よりも手厚く保障することを企図した明文の規定が新たに設けられた(903条4項。)
    特別受益の持戻しの計算は、他の共同相続人が、特別受益を有する相続人に対して持戻しの主張をすることによって、おこなわれる。
他の共同相続人からの主張がないのに、家庭裁判所が、特別受益の存在が認められるとして職権で、持戻し計算をして具体的相続分を算定してはならない。
    超過特別受益⇒持戻し計算に関する特則が設けられている(903条2項)。
   
  ◇Ⅱ 特別受益と確認の訴え・・・確認の利益の有無 
    確認の利益なし。

①特別受益にあたるか否かは遺産分割審判の「前提問題」として審理判断されるものであって、これを離れて別個独立に判決によって確認する必要がない。
②特別利益にあたることが確定しても、相続開始時における相続財産の範囲・価額等が定まらなければ具体的相続分が定まることはない⇒相続分をめぐる紛争を直接かつ抜本的に解決することにはらない。
     
  ◇Ⅲ 特別受益か否かが問題となるもの 
  ■1 緒論 
    第903条(特別受益者の相続分)
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする
    民法903条1項は、特別受益として、遺贈のほか、婚姻や養子縁組のため、または生計の資本として、被相続人から共同相続人に贈与された財貨を、「特別受益」として規定。
特別受益性が問題となるのは、
     
  ■2 「相続させる遺言」(特定財産承継遺言)の対象財産 
    「特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』」旨の遺言(特定財産承継遺言)がされた場合:
この遺言は、
①遺産分割方法の指定であるとともに、
②特段の事情のない限り、遺産分割その他特別の行為を待つまでもなく、相続開始と同時に「特定の遺産」が「特定の相続人」に移転する(最高裁H3.4.19)。

相続開始と同時に「特定の相続人」に移転し、遺産分割の対象からはずれる。
⇒特定の相続人に対する遺贈と同質のもの。

特別受益としての処理においては、遺贈と同様に扱うべき。
     
     
  ■3 婚姻・養子縁組のための贈与 
    婚姻・養子縁組の際の持参金・支度金⇒特別受益
    結納金や挙式費用~
子にン・縁組当事者(推定相続人)に対する親からの贈与というよりは、結納の相手方の親に対する贈与、挙式に関して親がみずからのために費やした契約費用とみるのが相当。
     
  ■4 生計の資本としての贈与・・・・大学学費・生命保険金・死亡退職金等 
    生計の資本としての贈与広く、生計の基礎として有用な財産上の給付を意味。
but
その贈与が生計の資本となりうるものの、被相続人の財産状態に照らして夫婦間の生活保持義務、親族間の扶養義務の範囲内のものとであると評価できる⇒903条の特別受益には含まれない。
これらの義務の範囲を超えた贈与のみが、特別受益としての持戻しの対象となる。
  □4-1 大学の学費・入学金
    被相続人の資産状況・社会的地位に照らして「子に対する扶養」の範囲内にあたるか否かを吟味。
これに当たる⇒「生計の資本としての贈与」とは認められない。
この範囲を超えるもの⇒特別受益。
     
  □4-2 生命保険金請求権 
    共同相続人の1人が受取人とされる生命保険金請求権は、相続財産を構成しない。
but
被相続人が保険料を支払っていた⇒
保険金請求権は保険契約に基づき発生するものであって、贈与または遺贈であるとは言えないものの、共同相続人の1人が被相続人の保険料支払の結果として保険金請求権を取得するのは、共同相続人間の均衡を失する。
    判例:「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平」が「903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、「同条の類推適用により、当該・・・・保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象とする」とする。
「特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」
(最高裁H16.10.29)

判例は「特別の事情が存する場合」にのみ、生命保険金を特別受益とみなしている(原則としては、特別受益であることを否定している)。
     
  □4-3 死亡退職金 
    死亡退職金は、相続持参を構成しない
but
被相続人が受けるはずであった賃金の後払の性質を有する⇒特別受益性を肯定すべきとの見方もある。
but
死亡退職金が受給権者の生活保障を目的とした制度に依拠して支出されたもの
⇒生命保険金と同様、制度趣旨を損なわないためにも、共同相続人間に生じる不公平が903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合がなければ、持戻しの対象とすべきではない。(潮見)
     
  ◇Ⅳ 「相続人」の特別受益 
  ■1 相続人であることと、相続放棄の場合 
    相続の放棄⇒放棄者は最初から相続人でなかったものと「みなす」(939条)⇒持戻しの対象外 
  ■2 代襲相続と特別受益者 
  □2-1 被代襲者の得た特別の利益 
    代襲相続が問題⇒持戻しの対象となるのは、被代襲者の得た特別受益

代襲相続は代襲者が自己固有の資格に基づき被相続人の地位を相続により承継するものではあるが、代襲者が被代襲者の相続資格に代位することを基礎に据えた制度であり、代襲者としては被代襲者が生存していたならば置かれたであろう地位よりも有利な地位に置かれるべきではない。
  □2-2 代襲者の得た特別の利益 
    代襲原因が発生した後の代襲者の受益⇒持戻しの対象となる。
代襲原因が発生する前の代襲者の受益

それが実質的に被代襲者のへの遺産の前渡しと評価することのできる特段の事情がなければ、持戻しの対象とならない。

①代襲原因が発生する前の時点では、(将来の)代襲者は相続人ではなく、生存している(将来の)被代襲者が相続人。
②この時点で被相続人から(将来の)代襲者に利益が与えられても、遺産の前渡しとは言えない。
③代襲相続をすることとなった直系卑属と、代襲が問題とならない直系卑属が被相続人から生前に特別の利益を受けている場合において、その後にたまたま生じた代襲原因のために前者が受けた利益は持戻しの対象となり、後者が受けた利益は持戻しの対象にならないというのは均衡を失する。
     
  ◇Ⅴ みなし相続財産の算定(p207)
  ■1 「相続開始の時において有した財産」・・・積極財産のみ 
    民法 第九〇三条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額その贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
    903条1項:
具体的相続分を計算する際の基礎となる「みなし相続財産」を確定する際の基点に「相続開始の時に有した財産」の価額を置く。

①基礎となるのが相続開始時に存在していた財産であることを意味するとともに、
②相続財産の価額の評価も相続開始時を基準とすべきであることを意味
    ここにいう「財産」の価額とは、債務(消極財産)を控除しない積極財産の価額を意味

①わが国の民法は、相続と同時の当然清算主義(積極財産から消極財産を控除した財産をもって相続財産とする主義)を採用していないし
②遺留分の基礎財産に関する1043条1項と異なり債務の控除が903条の条文には書かれていない
     
  ■2 贈与の価額の加算と、遺贈の価額の非加算 
    903条1項:
具体的相続分を計算する際の基礎となる「みなし相続財産」を確定するときには、
①「相続開始時に現存する相続財産」の価額に、
②相続人が受けた「贈与」の価額を加算。
ここでの「贈与」とは、相続分の前渡しと評価されるような贈与のみを指す。
    相続人の受けた「遺贈」(遺言による財産の無償処分):
相続開始時に現存する相続財産の価額には加算しない。

遺贈は相続開始時に現存する相続財産の中から支弁される(=「被相続人が相続開始の時において有した財産」に含まれる)もの。
     
    ここで問題となる遺贈は、「相続人に対する特定遺贈」。
包括遺贈⇒受遺者は相続人と同一の権利義務を有する⇒「被相続人が相続開始の時において有した財産」と切り離して特別扱いをする必要はないし(相続分指定と同じ扱い)、特別受益の受戻の枠組みにも載らない。 
   
  ■3 贈与の価額の算定基準時・・・相続開始時の価値(原則) 
     
  ■4 贈与財産の滅失または価額の増減 
     
  ◇Ⅵ 一応の相続分から具体的相続分へ(p211) 
  ■1 具体的相続分の確定
    ①以上のようにして確定した「みなし相続財産」に、法定相続分または指定相続分を掛けて、各共同相続人の相続分(一応の相続分)を確定する。
②そのうえで、この一応の相続分から、各相続分が受けた「贈与」または「遺贈」の価額を控除する。
  ■2 超過特別受益者がいる場合 ●●
    ある相続人について、一応の相続分から具体的相続分を控除⇒ゼロまたはマイナス
⇒その相続人(超過特別受益者)には、相続財産から現実に取得する額はない(903条2項)
but
それを超えて超過受益を返還する必要はない。
⇒特別受益者の具体的相続分はゼロ。
    超過特別受益者がいる場合に、他の共同相続人の具体的相続分(率)をどのように算定すべきか?
①:残りの共同相続人の「具体的相続分」(具体的相続分率)で相続財産(遺贈を除いた積極財産)の共有割合を決定する方法。
②:超過受益額を残りの共同相続人が「一応の相続分」(指定相続分または法定相続分)に応じて分担するものとして、相続財産(遺贈を除いた積極財産)の共有割合を決定する方法。
    CASE216:
Aには、妻Wと子X・Y・Zがいる。
遺産総額は9000万円。
AはXに生前贈与をしており、その額は相続開始時の価額に換算して3000万円。
Aは遺言でYに1200万円を遺贈。
①の方法による場合:
贈与を持ち戻した「みなし相続財産」の額は1億2000万円。
W⇒6000万円
X、Y、Z⇒各2000万円
but
X:2000-3000=-1000
Y:2000-1200=800

X:⇒超過特別受益者⇒具体的相続分はゼロ
遺産から遺贈を取り分ける:9000-1200=7800
この7800万円の支配割合(具体的相続分)は次のとおり
W:X:Y:Z=6000:0:800:2000=15:0:2:5
②の方法による場合:
贈与を持ち戻した「みなし相続財産」の額は1億2000万円。
この1億2000万円を各共同相続人に割り付けたうえで、特別受益を控除。
W:12,000×1/2=6,000
X:12,000×1/6=2,000 2,000ー3,000=(ー1,000)
Y:12,000×1/6=2,000 2,000ー1,200=800
Z:12,000×1/6=2,000

Xは超過特別受益者⇒具体的相続分はゼロ
Xの超過受益分1,000万円につき、残りの相続人に一応の相続分(法定相続分)で割り付ける
W:Y:Z=1/2:1/6:1/6=3:1:1
⇒Wが600万円、Yが200万円、Zが200万円を負担。

遺産から遺贈を取り分ける。
9,000ー1,200=7,800

この7,800万円の支払割合(具体的相続分)は、次のとおり
W:X:Y:Z=(6,000ー600):0:(800-200):(2,000ー200)
(なお、Yは、このほかに1,200万円を遺贈として受けている。)
    (実務p253):超過特別受益が他の相続人の遺留分を侵害⇒その限度で遺留分減殺請求の対象となる。
  ◇Ⅶ 持戻しの免除(p213)
  ■1 持戻しの免除の意義 
    被相続人は、持戻しの免除をすることができる(903条3項)

特別受益がもともと被相続人の意思による財産処分であることとのつながりにおいて、被相続人の意思による持戻しの免除が認められている。
    被相続人がする生前贈与:
①相続分とは別枠で贈与ををするという意思をもってする場合と
②法定相続分に含めて・・・相続分の前渡しとして・・・贈与をするという意思をもってする場合
とがあるところ、
903条3項には、被相続人が①の意思をもって贈与をした場合には持ち戻しの対象としないという考え方を見てとることができる。
     
  ■2 持戻し免除の意思表示の方法 
     
  ■3 配偶者に対する遺贈・贈与に関する推定規定 
     
  ◇Ⅷ 特別受益証明書(相続分不存在証明書) 
     
  ◆第2項 寄与分 
  ◇Ⅰ 制度の概要 
  ■1 寄与分の意義
  共同相続人の中に被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいた場合、この特別の寄与を考慮し、この者に対して特別に与えられる相続財産への持分=「寄与分」
  1980年の民法改正で904j法の2として導入
①共同相続した財産を分割するにあたっては、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者に対し、当該寄与によって相続財産が維持・増加した分を加えるべきとの考慮
(=財産の維持・増加への寄与に対する利益の還元。純粋に財産法的な性質を有する考慮要因。)
② 被相続人に対して特別の寄与をした「相続人」がいる場合には、具体的相続分を決定する際にその寄与の事実を斟酌しなければ、他の共同相続人との公平を失するとの考慮
(=共同相続人間での財貨帰属割当てにおける公平の確保)
  当事者の主張(申立て)を持って、その存否および額が判断される。
家庭裁判所が、清野次期、方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、裁量的に定める。 
  寄与分は遺言事項ではない⇒被相続人が相続人の寄与分を指定していた(寄与分なしとの指定も含む)としても、無意味。
but
「寄与分」と記載された遺言書の文言の意味が相続分指定や割合的包括遺贈の意味で、また、金額で示されているときには特定遺贈の意味で捉えられる可能性は否定できない。 
  客観的にみたときに被相続人の財産の維持・増加への貢献をした共同相続人が複数いる場合、
その相続人の中に寄与分を定める旨の申立てをした者としない者とがいるとき、
寄与分を定める旨の申立てをした相続人に限って、被相続人の財産の維持・増加への貢献を捉え、
それが通常期待される程度を超える「特別の寄与」であると評価⇒申立てをした相続人の寄与分を考慮すべき。 
  実務では、療養観護型や扶養型の寄与が問題とされた事案で、家庭裁判所における調停・審判において、寄与分を認めることに対して非常に厳しい態度がとられている。 
  ■2 寄与分と遺贈 
  ■3 寄与分と相続債務 
    寄与分:遺産分割の前提として具体的相続分を算定する際に考慮されるもの
相続債務:遺産分割の対象とならず、寄与分は相続債務の分担とは関係がない。
⇒相続債務の承継割合にとって、寄与分は意味をもたない。
but
寄与分を算定する際に、家庭裁判所が904条の2第2項に言う「一切の事情」の中で、相続債務の額を考慮することが否定されるわけではない。
ex.
相続債務負担額を視野の外に置いて積極財産レベルのみで寄与の程度を考慮して算出された具体的相続分率に従ったならば、寄与者以外の相続分が取得する積極財産よりもこの者が負担する相続債務の額のほうが多くなる場合
  ■4 具体的相続分の確定における寄与分考慮の方法
    寄与分は、「みなし相続財産」を確定するにあたり、相続時に現存する相続財産の価額からこれを控除することによって算定・考慮される。
    CASE226:
A死亡
相続人:妻W、子X・Y・Z
Aの遺産総額2億3000万円
Xは、Aの生前に500万円(相続開始時の価額換算で3000万円)の贈与を受けている。
Aは、遺言で2000万円をYに遺贈。
妻Wには2000万円の寄与分。
贈与を持戻し、寄与分を控除したみなし相続財産⇒2億4000万円。
(遺贈された2000万円は遺産2億3000万円中に含まれている)
・・・・
     
  ◇Ⅱ 寄与の態様
  ■1 特別の寄与 
  寄与分として考慮されるには、その寄与が「特別の寄与」であると評価されるものでなければならない。
     
  療養監護型や扶養型の寄与が問題となる場面で、療養監護・扶養に貢献した者としなかった者との間に著しい不均衡
前者の貢献が「通常の療養看護・扶養」の規範内のものとされて、寄与分としては評価されない結果、遺産相続をめぐる不均衡が生じる⇒これへの対応を求める声が高まっている。
これに対しては、
公平型寄与分(相対的な寄与分)への発想の転換によって対処する前に、
まずは、被相続人の置かれた要扶養・介護状態に対する評価を寄与分制度との関係で緩和する方向で見直すとともに、
「通常の寄与」の見直し、すなわち、配偶者間・親族間での療養看護・扶養を極度に義務化しない考え方を基礎に据えた見直しを図ることによって試みられるべき。
  ■2 寄与の無償性・・・対価・生前贈与との関係
  ●  「特別の寄与」と言えるためには、寄与行為に対する対価や補償を受けていないことを要する(無償性)。
  寄与行為をした者が寄与行為に対する対価の趣旨で被相続人から生前贈与を受けている。

当該寄与行為は、生前贈与により得た利益に対応する寄与行為の範囲に属する限りで、「寄与分」としての評価からはずれる。
これによる不都合は、生前贈与につき特別受益の持戻しの免除を認めることで対応できる。
(被相続人からの生前贈与により得た利益を超える特別の寄与があったとは言えないとした上で、あわせて、生前某よにつき持戻しの免除を認めた事例。)

推定相続人の1人に対して、その者の「特別の寄与」(療養看護など)に報いるために被相続人が贈与をしていた場合には、対価的均衡がとれている範囲において、この贈与につき持戻しの免除がされていると評価することとの引換えで、寄与分を認めないとすべき。
  寄与行為をした相続人自身に対して贈与がされているのではなく、この者の配偶者や子に対して贈与がされている場合:
贈与の経緯や贈与された物の価値・性質、当該贈与により寄与行為をした相続人が受けている利益等を考慮したときに、この贈与が実質的にみて寄与行為者に対するものと異ならないと判断
⇒寄与行為者が寄与行為に対する対価の趣旨で被相続人から贈与を受けている場合を同視し、生前贈与により得た利益に対応する寄与行為の範囲に属する限りで、「寄与分」としての評価からはずれると解すべき。
     
  ■3 「被相続人の財産の維持・増加」への寄与 
    寄与分として考慮されるためには、「被相続人の財産の維持又は増加」についての寄与でなければならない。
    「特別の寄与」があたっとしても、それは、被相続人の財産の維持・増加と因果関係があるものでなければならない。

遺産分割は、被相続人の財産をどのように分配するかを定めるものであり、財産的な貢献とは無関係に相続人の取得額を増減させるのは相当でない。
     
  ■4 夫婦間での寄与と相続財産性
     
  ◇Ⅲ 寄与行為の始期と終期
    寄与行為の始期:制限がない
終期:相続開始時
     
  ◇Ⅳ 相続人の寄与(p227)
  ■1 「相続人」の寄与
  ■2 代襲相続の場合 
     
  ■3 「相続開始時点での相続人」の寄与 
     
  ◇Ⅴ 寄与分の決定・・・審判事項(p229) 
  寄与分の額は、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を斟酌して決定される。 
  共同相続人の協議⇒協議が整わない時は家事調停⇒調停不成立で家庭裁判所審判 
   
   
     
  ◇Ⅵ 遺産分割手続における寄与分と遺留分の関係 
    遺留分に基づく権利主張は訴訟事項であり、家事審判事項ではない
⇒遺産分割手続の中で必ず遺留分を確保しなければならないわけではない。
but
遺留分制度を設けた趣旨⇒ある共同相続人の寄与の程度が大きいからといって、その寄与分が他の共同相続人の遺留分まで侵食することは回避すべき。

寄与分を共同相続人間での財貨の帰属割当てにおける公平の確保の観点から捉えたときは、「財産の維持・増加に寄与した相続人には、これに相応する財産的価値を与えるべきである」との寄与分制度の基礎に据えた要請」<「共同相続人の各自に与えられた遺留分は、相続財産から与えられる最低限の保障として、この者から・・・その意に反して・・・奪われてはいけない」との遺留分制度の基礎にある要請。

「ある相続人が遺留分を有していること」も、寄与分の考慮要素である「一切の事情」の中で、他の事情とともに一事情として斟酌される。

遺留分侵害額請求訴訟において遺留分に基づく権利主張が問題となる場面では、相手方の寄与分は考慮されるべきでない。
     
  ◇Ⅶ 寄与分の制度と他の制度との競合・・・制度間競合
    寄与分が問題となる場面:
別の実体法上の制度により、被相続人と特別の寄与をした相続人との間の調整を図ることができる場合もある。
ex.
労務提供型・財産出資型の寄与⇒組合契約に基づく利益分配請求権や雇用契約に基づく報酬請求権が成立する可能性。
療養看護型・扶養型の寄与⇒委任契約または事務管理に基づく費用償還請求権や報酬請求権(委任の場合)が成立する可能性。
消費貸借契約に基づく貸金返還請求権が成立する可能性。
     
  ☆第4節 相続分の譲渡ほか 
     
★第9章 遺産分割  
     
     
     
     
     
     
  ☆第2節 遺産分割の対象 
  ◆第1項 遺産分割時の相続財産 
    「遺産分割時に存在している相続財産」を対象として、●●
「相続開始時を基準にして算定された具体的相続分(率)」を参考に、
個別財産を分配。
分割すべき遺産の評価も、遺産分割時を基準とすべき。
     
  ◆第2項 処分財産の相続財産性・・・遺産分割時に遺産として存在しているものとみなされる財産
  ◇Ⅰ 制度の意義 
     
     
  ◇Ⅱ 制度の特徴
     
  ◇Ⅲ 分割時に遺産として存在しているものとみなされる財産であるための要件
     
  ◇Ⅳ 同意要件 
     
  ◇Ⅴ 遺産として存在しているものとみなされる財産
     
     
     
     
  ◆第3項 代償財産 
  ◇Ⅰ 問題の所在 
    相続開始時に存在していた被相続人の財産(固有財産)が、その後に生じた出来事の結果として相続財産から逸出し、これに代わる財産的利益(代償財産)を共同相続人側が取得⇒代償財産も遺産分割の対象となるか?
問題となる事例:
①共同相続人が遺産に属していた財産を処分
②遺産に属していた財産が滅失・損傷⇒損害保険金請求権が発生
③第三者の不法行為により遺産に属していた財産が滅失・損傷⇒損賠賠償請求権が発生
①については、代償財産に着目しないで、遺産分割を遂行する方法もある。
 
   
   
  ◇判例法理 
    判例:
共同相続人の全員の合意によって遺産に属する個別財産が処分⇒処分財産は「遺産分割の対象たる相続財産から逸出する」とし、代償財産については、各相続人は「相続財産」としてではなく、「固有の権利」として取得する。
but
たとえば共同相続人が代償財産を遺産分割の対象に含める合意をするなど、「特別の事情」のある場合は別。
     
  ◆第4項 相続財産から生じた果実・・・特に不動産の賃料 
  ◇Ⅰ 問題の所在 
  ◇Ⅱ 不動産賃料債権の遺産帰属性・・・否定説
    判例:
遺産である賃貸不動産から生じる果実としての賃料債権は遺産に属さない(最高裁H17.9.8)

遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものこの間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産
  ◇Ⅲ 共同相続人間での賃料債権の帰属の態様・・・分割単独債権
    果実は遺産に属さない⇒遺産に属さない賃料債権は共同相続人間にどのように帰属するのか?
    判例:
相続開始時から遺産分割までの間、遺産は共同相続人の共有に属するところ、
この間に遺産である賃貸不動産を使用収益した結果として生じる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得。(最高裁H17.9.8)
遺産分割には遡及効があるが、各共同相続人がそのその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した賃料債権の帰属は、その後にされた遺産分割の影響を受けない

このことを前提に、相続開始時から遺産分割までの間に生じた賃料の清算(=訴訟事項)が、共同相続人間でされるべき。
判例は、以下の見解を否定。
A:遺産とは別個の財産として共同相続人間に共有的に帰属し(準共有)、共有財産として共有物分割手続によるべき
B:賃料不動産の所有権が帰属する者に、その法定果実である賃料を取得する権利が帰属するところ(89条2項)、遺産分割には遡及効がある(909条本文)ことから、遺産分割の結果としてその賃貸不動産の所有権を取得した者に、相続開始以降の賃貸不動産から生実賃料債権が帰属する
C:賃料は遺産に属さないが、遺産緒分割は遺産を総合的・合目的的に分配する手続⇒本来は遺産に属さない果実をも包括して遺産の分割手続で分配するのが、909条が基礎とする遺産の分割の制度趣旨に適う。
    潮見:
賃料は遺産に属さないが、遺産の分割は遺産を総合的・合目的的に分配する手続⇒本来は遺産に属さない果実をも包括して遺産の分割手続で分配するのが、909条が基礎とする遺産分割の制度趣旨に適うという見解。
かつ
共同相続された賃料債権は共同相続人による準共有債権(または、連帯債権に関する民法の規律を適用するほうが妥当な効果を導くようであれば、連帯債権)になると解するのが妥当。
  ◇Ⅳ 賃料債権を遺産分割の対象とする旨の共同相続人間の合意
    判例法理と採用する場合に、
実務における通説:
共同相続人の全員が果実を遺産分割の対象に含めることに合意した場合には、遺産分割の対象とすることを認めるべきとする。
vs.
遺産でない果実を合意により遺産分割の対象に含めることができるとする通説の考え方は、代償財産における以上に、実体法的には無理がある。

通説の考え方の合理性:
通説の企図した処理が紛争の一回的解決をめざした当事者の期待を保護するという手続費用の低減という観点からの説明。
     
  ◇Ⅴ 相続預金口座に振り込まれた賃料の帰趨 
    法定果実である賃料が、被相続人本人が開設した普通預金口座に振り込まれた場合。
    普通預金債権が共同相続⇒この預金債権はその残高が増減し、変動する1個の債権であるところ、被相続人(預金者)が死亡した後に、なんらかの事情で当該普通預金口座の凍結が遅れ、その間に賃料が同口座に振り込まれた場合、その入金額が組み込まれた1個の債権として、普通預金債権が捉えられる。
A:遺産分割の対象となる普通預金債権の額は相続開始時点の残高に固定さえれるとする立場⇒大きな問題は生じない。
B:その残高が増減し変動する1個の債権としての預金債権が遺産を構成するものと捉えて、相続開始後の入金額も遺産分割の対象となるとする立場

相続開始後に入金された賃料については、
(a)「法定果実」として捉えて、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得
(b)1個の普通預金債権を構成するものとして、準共有債権とみるのか(潮見)
という厄介な問題。
 
   
     
     
     
★第10章 配偶者の居住の権利(配偶者短期居住権・配偶者居住権)  
     
     
★第11章 相続人以外の者による貢献の考慮  
     
     
★第12章 遺言  
     
     
★第13章 遺贈  
     
     
★第14章 遺留分  
  ☆第1節 遺留分の概要 
  ◇Ⅰ 遺留分と自由分
  ◇Ⅱ 遺留分制度の系譜 
  ■1 ローマ・ドイツ的「義務分」の制度 
    被相続人が遺言で遺産を自由に処分できる。
but
これによって近親者が経済的に困窮する事態が生じることがある

近親者の実質的救済を図る(生活保障する)ため、一定程度の相続財産(義務分。近親に遺留すべき財産)が与えられなかったか、またはわずかしか与えられなかった一定範囲の近親者に、義務分に不足する額の支払を内容とする金銭的請求権(債権的請求権)を与えた。
  ■2 ゲルマン・フランス的「遺留分」の制度 
    家族共同体の財産は家族に承継させる(家産の維持)との観点から、
①遺言による処分の自由を否定し、
②相続財産中の一定部分について相続人の「相続権」を保障する(不可侵的財産権)

被相続人は、相続権に対応する遺留分を除いた部分(自由分)についてのみ、遺言により自由に処分することができる。
  ◇Ⅲ 遺留分制度の目的 
   
     
   
  ◇Ⅳ わが国の遺留分制度 
  ■1 2018(平成30)年民法改正前の規律・・・遺留分減殺請求権、現物返還原則 
    遺贈・贈与を対象とする遺留分減殺の意思表示⇒現在に服する範囲で遺贈・贈与は失効し(遺留分減殺請求=形成権)、遺留分権利者が減殺対象となった財産に対する物権的支配権原を回復する(物権的効果)
そのうえで、減殺の対象となった財産の現物返還が原則とされ、例外的に減殺相手方からの価額弁償の抗弁を認める。
    vs.
①事業者が事業承継をする者に対して不動産・株式ほかの財産の譲渡をしたときに、遺留分減殺の結果、これらの財産について事業承継者と他の相続人とに共有状態が生じ、事業承継に支障が生じる
②一般的にみても、遺贈・贈与の目的物について共有状態⇒受遺者・受贈者の持分処分に支障をきたす
     
     
  ◇Ⅴ 遺留分の放棄 
  ■1 相続開始前の遺留分の放棄と家庭裁判所の許可 
  ■2 相続開始後の遺留分の放棄 
  ■3 遺留分放棄の効果 
     
  ◇Ⅵ 中小企業の事業承継のための遺留分制度の特例・・・遺留分の算定に係る合意についての許可の審判 
  ◇Ⅶ 遺留分の侵害が問題となる場面 
     
  ☆第2節 遺留分権利者 
  ◇Ⅰ 共同姉妹以外の相続人 
  ◇Ⅱ 相続欠格者・日廃除者・相続放棄者に遺留分なし 
 
 
    
     
     
  ☆第3節 遺留分の割合・・・2つの意味の遺留分(率)
  ◇Ⅰ 相対的遺留分・・・1042条1項の「遺留分」 
  ■1 相対的遺留分 
  ■2 直系尊属のみが相続人である場合 
  ■3 直系尊属以外の者が相談人に含まれる場合 
  ■4 共同相続人間での一優分侵害・・・遺留分権利者であるということと、遺留分を侵害しているということ
     
     
  ☆第4節 遺留分算定の基礎財産(p528)
  ◆第1項 基礎財産の確定に臨む態度 
    基礎財産:遺留分率をもとに相続人各自の遺留分を算定するときの基礎となる財産(価額)
  ◆第2項 基礎財産の確定 
  ◇Ⅰ 基本的算定式 
    基礎財産=
被相続人が相続開始時点で有していた財産(遺贈財産を含む)

贈与財産

③相続債務の全額
遺産共有の場合における「みなし相続財産」および「具体的相続分」の算定の場合(903条、904条、904条の2)と異なる点:
①「寄与分」(特別の寄与)が考慮されない
②「相続債務」が控除される
③組み込まれる贈与財産に違いがある
④対象となる受贈者は、共同相続人に限られない
  ◇Ⅱ 被相続人が相続開始時点で有していた財産の加算 
  ■1 相続開始時点で有していた財産 
    「被相続人が相続開始時点で有していた財産」:
相続人が承継した積極財産
(祭祀財産(=相続の対象から除外(897条1項本文))は含まれない) 
  ■2 条件付権利や存続期間が不確定な権利の処理 
     
  ■3 遺贈の処理 
  債権的効力しかないもの:
「相続財産が承継した積極財産」から遺贈債務が履行されるべき
基礎財産を考える際に特別扱いをする必要がない
     
  物権的効力をもつとわれている遺贈:
特定物の遺贈

相続開始時点で既に「相続人が承継した積極財産」から離脱
but
この場合にも遺贈の目的物である特定物を基礎財産に含める「結論」、すなわち、「被相続人が相続開始時点で有していた財産」に遺贈財産を含める処理を肯定。 
     
  ■4 生命保険金の処理 
  被相続人Aが自己を受取人と指定⇒相続財産を構成し、基礎財産に含まれる。
  but
第三者を保険金受取人に指定⇒「贈与」または「遺贈」に準じるものとすることはできない

①死亡保険金請求権は保険金受取人固有の権利であり、保険契約者または被保険者である被相続人から承継取得するものではない
②死亡保険金請求権は被保険者の死亡時にはじめて発生⇒保険契約者が払い込んだ保険料と等価関係に立つものではない
③死亡保険金請求権は被保険者の稼働能力に代わる給付ではない⇒死亡保険金請求権が実質的に保険契約者または被保険者の財産に属していたものとみることはできない。
  but
①保険金受取人として指定された者が共同相続人の1人であった場合で、
②保険金受取人である相続人と他の相続人との不公平が到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情
1044条2項により、死亡保険金請求権がその受取人である相続人の得た「特別受益」(904条参照)と評価され、基礎財産に算入される余地はある。 
     
  ■5 死亡退職金の処理 
    死亡退職金は、遺留分と同様に、遺族の生活保障を目的としたものであるところ、
遺留分制度を前提としたうえでなお、死亡退職金の受給権者への交付が承認されている

死亡退職金の受給制度に対して遺留分制度による介入を認めるべきではない
⇒死亡退職金を遺留分算定の基礎財産に含めるべきではない。
     
  ◇Ⅲ 贈与財産の加算 (p532)
  ■1 1044条に言う「贈与」の意義
  すべての無償処分を指す。
ex.
一般財団法人への拠出
信託の設定
無償での債務免除
無償での担保供与
  遺留分算定の基礎財産に算入される贈与は、「みなし相続財産」の場合(903条参照)と異なり、相続人への贈与に限られない
  死因贈与(554条)は贈与契約の一種であるが、通説は「遺贈」として取り扱うべきとする。
⇒基礎財産への参入に際しても、死因贈与は1044条によって処理されるのではなく、1043条1項にいう「被相続人が相続開始の時において有した財産」に含まれることになる。 
   
   
  ■2 原則・・・加算される贈与 
  □2-1 相続開始前1年間になされた贈与 
    遺留分算定の基礎財産に算入される贈与を、時期的に限定
←過去に無条件にさかのぼって贈与を基礎財産に算入することによって生じる取引の安全を害する危険を回避。
   
  ■3 例外(その1)・・・遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与の加算 
    当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は、相続の1年前の日よりも前にされたものであっても、遺留分算定の基礎財産に算入される。
    判例:「損害を加えることを知って」とは、損害を加えることの認識、すなわち、遺留分権利者に損害を加えるべき事実を知っていること。
    判例:損害を加えることをを知ってしたというためには、贈与当時に贈与財産の価額が残存財産の価額を超えることを知っていただけでは足りず、将来において相続開始までに自己の財産が増加しないことの予見のもとで当該贈与がされたことを必要とする(予見必要説)。
     
  ■4 例外(その2)・・・相続人に対する特別受益としての贈与の加算 
    共同相続人の1人に対してされた贈与は、
①それが特別受益(904条参照)に該当し、かつ、
相続開始前の10年間にされたもの

特別受益と評価される価額に限り、遺留分算定の基礎財産に算入される

共同相続人の1人に対してされた贈与は実質的に相続財産の前渡しであるという点に着目し、共同相続人相互の公平を維持するための処理。
相続開始よりもかなり前に贈与を受けた受贈者の地位の安定性を確保する必要から、基礎財産に組み入れることのできる贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限られる。 
    代襲相続が生じた場合における被代襲者への贈与および代襲者への遺贈:
通説:
①被代襲者(Y)への贈与⇒相続開始前の10年間にされたものであれば、当然に、遺留分算定の基礎財産に算入される。
②代襲者(K)への贈与⇒実質的に被代襲者への遺産の前渡しと評価できる特段の事情がなければ、遺留分算定の基礎財産には参入されない。
    相続開始の10年前より前にされた贈与

共同相続人に対するものであったとの理由のみをもってしては、基礎財産に算入することができない。
この場合には、その贈与を基礎財産に算入しようとするのであれば、1044条1項後段(遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与)によるしかない。
    共同相続人に対して相続開始前の10年間にされたものであっても、
それが904条の「特別受益」にあたるもの、すなわち、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与」でなければ、1044条2項、3項の特則は適用されない。
「特別受益」にあたるときでも、基礎財産に算入されるのは、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額」に相当する額に限られる。
    「共同相続人に対する」贈与であることが必要⇒受贈者Xが相続放棄をしてしまえば、この者は最初から相続人にならなかったものとみなされる⇒たとえ相続開始前の10年間にされたものであっても、1044条2項、3項によって基礎財産に算入することができない。
この場合に、その贈与を基礎財産に算入しようとするのであれば、同条1項後段(遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与)によるしかない。
     
■5 負担付贈与の扱い
    贈与財産の価額から負担の価額を控除した額を、遺留分を算定するための基礎財産に算入。 
   
  ■6 不相当な対価でされた有償行為の扱い 
    不相当な対価でされた有償行為:
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、
「当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす」
⇒対象財産の価額から対価を控除した額を、遺留分算定の基礎財産に算入。
     
  ◇Ⅳ 遺産債務の控除 
    遺留分算定の基礎財産を確定する際には、「みなし相続財産」の確定の場合と異なり、遺産債務の全額を相続財産から控除。

遺留分制度が「相続人が現実に取得する(または取得すべき)価額」を基礎として遺留分権利者に一定割合を留保する制度⇒積極財産から消極財産を控除するのが当然
    私法上の債務のみならず、所得税支払債務や罰金支払債務など公法上の債務も含まれる。
    保証債務:
主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その支出額を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような特段の事情が存在する場合であない限り、1043条1項所定の「債務」に含まれない。
     
  ◆第3項 基礎財産の評価の基準時と評価方法 
  ◇Ⅰ 評価の基準時・・・相続開始時
    遺留分算定の基礎財産は、相続開始時を基準に算定すべき

①遺留分権が具体的に発生するのは、相続開始時点
➁算定の基礎となる財産の有無と所在をもっともよく知ることができるのは相続開始時
③相続開始時点を基準にすることにより、権利関係が早期に安定する
     
  ◇Ⅱ 評価の方法
    基準時点である相続開始時点の客観的価額に基づいて、その価額を評価。
  ■(1) 
    目的物の価値が相続開始後に増減⇒相続開始時の「原状」で評価
     
  ■(2)  
    贈与財産⇒相続開始時点を基準にその価額を評価する。
     
  ■(3) 
    債権:名目額(額面額)によらず、債務者の資力や担保の有無考慮してその取引価額を算定すべき。
     
  ◇Ⅲ 債務超過となった場合の処理 
  CASE611:
Aが死亡。
Aの遺産の内訳:
積極財産が1000万円、
Aば死亡する6か月前にされた生前贈与の相続時評価が500万円、
遺産債務が1800万円。 
    A:
B:
  ☆第5節 遺留分侵害請求と金銭給付請求権 
  ◆第1項 基本的な枠組み
  ◇Ⅰ 2018(平成30)年民法改正前の枠組み・・・・遺留分減殺請求権 
  ■1 遺贈・贈与等の「減殺」 
    遺留分権利者による遺留分減殺請求権の行使を待ってはじめて、遺贈・贈与等の対象となった財産の取戻し(=遺贈・贈与等の「減殺」)がされることとなる。
     
  ■2 遺留分減殺請求・・・・形成権=物権説 
    A:形成権=物件説(通説・判例):
遺留分減殺請求権行使の効果は形性的であり、かつ、物権的である。

遺留分減殺請求権が行使⇒その形性的作用の結果として遺留分減殺請求権に服する範囲で遺贈・贈与が失効。
それは、単に減殺対象たる遺贈・贈与を執行させて財貨移転を法律上の原因のないものにする(=債権的返還請求権を発生させる)というだけにともまらず、目的財産上の権利の相手方への帰属を正当化しないという意味において物権レベルでの効果を伴い(=物件的支配権原の回復)、遺留分権利者に帰属するとの考え方。

既履行の給付は返還請求の対象となり(物権的請求権または不当利得返還請求権)、
未履行の給付については、相手方からの履行請求に対して履行拒絶の抗弁が認められる。
     
  ■3 「減殺」により取り戻された財産の帰属先
    形成権=物権説
⇒「個別的遺留分に相当する財産権が当然に遺留分権利者に帰属していたものとしての扱いを受ける」の意味:
A:遺留分減殺減殺請求の結果として減殺財産が相続財産に復帰し、その上に遺留分権利者が持分を取得
B:遺留分減殺請求の結果として、減殺の意思表示をした遺留分権利者が相手方に対して減殺財産に対する直接の権利関係を取得するのか
    判例・通説:
贈与・特定遺贈・「特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言」・全部包括遺贈について、
遺留分減殺請求の結果として取り戻された財産は減殺請求権者の固有財産としなり、相続財産には復帰しない⇒共同相続の場合であっても遺産分割の対象とならない。
この場合、
①遺留分減殺請求権を行使した者は、訴訟手続において、遺留分の減殺請求権行使により自己に帰属した持分の確認や、この持分に基づく自己への所有権移転登記手続などを求めることができ(訴訟事項)、
②取り戻したのが個別財産上の持分である場合には、その物の分割手続は、物権法上の共有物分割手続によることになる。
but
通説と実務:
①割合的包括遺贈と②相続分指定の場合には、
取戻財産が相続財産に復帰し、(共同相続の場合にあっては)遺産分割の対象(審判事項)となる。
     
  ■4 価格弁償の抗弁 
    2018(平成30)年改正前の民法:
遺留分減殺請求を行使され目的物の返還請求を受けた受贈者・受遺者は、目的物の価額を弁償することによって目的物返還義務を免れることができるとしていた(当時の1041条。価額弁償の抗弁)

遺留分権利者から目的物返還請求がされたときに、現物が受贈者・受遺者のもとに存在するにもかかわらず、「目的物を返還するか、それとも価額を弁償するか」を、返還義務者である受贈者・受遺者の選択・決定に委ねた。
    改正前民法:
遺留分減殺請求の前に受贈者・受遺者がその目的物を既に第三者に譲渡してしまっていたケースに対応するため、
①遺留分減殺請求の前に受贈者・受遺者が目的物を既に第三者に譲渡してしまっていた場合⇒遺留分権利者は、譲受人に対してその財産の返還を求めることができず、受贈者・受遺者に対して価額弁償を請求することができるにとどまる(当時の1040条1項本文)としたうえで、
②譲受人が状との当時遺留分権利者に損害を加えることを知っていた(悪意)場合には、遺留分権利者は、譲受人に対して目的物の返還を求めることができる(同項ただし書)。
     
  ◇2018(平成30)年の民法改正後の枠組み・・・・金銭債権化と期限の猶予 
    遺留分制度は、改正で大きく変更された:
①遺留分侵害請求権の行使(遺留分侵害請求の意思表示(形成権である))によって、遺留分侵害額に相当する金銭債権(金銭給付請求権)が生じる。
改正前民法におけるの異なり、遺贈・贈与が失効するのではない。
②遺留分侵害を理由とする金銭給付請求権(金銭債権)は、遺留分を侵害された者が相手方に対して有している固有の権利(債権)であり、その権利を行使して得た金銭を、遺留分権利者が自己固有の財産として保持することになる(給付された金銭が遺産(相続財産)に復帰するのではない)。
③金銭給付請求を受けた受遺者または受贈者が直ちに金銭を準備できない場合もあるところ、請求を受けた受遺者または受贈者は、裁判所に対して相当の期限の許与を請求することができる(裁判所により許与された期限が経過するまでの間は、受遺者または受贈者は履行遅滞に陥らない)。
     
  ◆第2項 遺留分侵害請求権の行使
     
  ◆第3項 遺留分侵害請求において考慮に入れられる遺贈・贈与の範囲 
  ◇Ⅰ 贈与 
    「遺留分を算定するための財産の価額に算入される」贈与
①相続開始前の1年間にされた贈与(1044条1項前段)
②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与⇒相続の1年前の日よりも前にされたものも参入。
③共同相続人の1人に対してされた贈与⇒
相続開始前の10年間にされたものであれば、それた特別受益にあたるものである場合(903条)に限り、。その価額を遺留分算定の基礎財産に算入。
この場合の受贈者は、特別受益の価額を限度として、遺留分侵害請求の相手方となりうる。
④負担付贈与
⑤不相当な対価でされた有償行為
  ◇Ⅱ 共同相続人に対する遺贈・贈与に関する特則
     
     
  ◆第4項 遺留分侵害額 
  ◇Ⅰ 遺留分侵害額の算定式 
    遺留分権利者が侵害された遺留分の額=
遺留分権利者の具体的遺留分(1042条の規定による遺留分)の額ー
(遺留分権利者が受けた遺贈および特別受益である贈与の価額+900~902条、903条、904条の規定により算定した相続分に応じて、遺留分権利者が取得すべき遺産の価額)+
相続債務のうち、遺留分権利者が負担する債務(遺留分権利者承継債務)の額

このうち、「遺留分権利者の具体的遺留分額」の算定に関しては、次の算定式で計算される(1042条)。

遺留分算定の基礎財産×総体的遺留分率×遺留分権利者の法廷相続分
     
  ◆第5項 遺留分侵害請求の相手方 
  ◇Ⅰ 基本となる枠組み 
    遺留分を侵害された者は、遺留分を侵害する遺贈または贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下同じ)を受けた者に対して、遺留分侵害額請求をすることができる。(1046条1項)
    受遺者または受贈者が複数⇒誰が金銭給付請求の相手方となり、遺留分侵害額を負担するのか?
①受遺者と受贈者⇒受遺者が先に負担
②受遺者が複数、または受贈者が複数ある場合でその贈与が同時
⇒受遺者または受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担
③受贈者が複数(贈与が同時にされた場合を除く)⇒後の贈与に係る受贈者から、順次、前の贈与に係る受贈者が負担。
  ◇Ⅱ 贈与と遺贈がある場合・・・受遺者と受贈者の間の順位づけ 
  ■1 まず受遺者、次に受贈者
    遺留分侵害額は、まずは受遺者が負担し、それでも足りないときにはじめて受贈者が負担。

贈与契約の効力として贈与財産が相続開始前に既に相続財産から逸出している。
    CASE621:
Aが死亡。
相続人:妻Wと子X・Y
Aは死亡する5年前、Yが婚姻した際に、居住建物購入資金としてYに3000万円を贈与。
公正証書以後で「甲土地を弟Dに譲る」と記載。甲土地の評価は1000万円。
甲土地を除くAの遺産総額は2000万円。
遺贈された甲土地を除く相続財産2000万円に対する各相続人の具体的相続分:
Wが1334万円、Xが666万円、Yがゼロ。
(W:X:Y=30:15:0)(Yは超過特別利益を受けている)
各共同相続人の個別遺留分:
W:1500万円
X:750万円
Y:750万円
(基礎財産は6000万円)
Yは3000万円の生前贈与で、みずからの個別的遺留分を満たしている⇒遺留分を侵害されていない。
Wは166万円
Xは84万円
それぞれ個別的遺留分をしg内されている。

このときの金銭給付請求の相手方は、まず、受遺者D。
Dは1000万円の価額である甲土地の遺贈を受けている⇒Dに対する請求権が成立すれば、WとXの遺留分侵害額がカバーされるため、受贈者Yへの請求は問題とならない。 
  ■2 死因贈与の扱い 
CASE622:
Aが死亡。
相続人:妻Wと子X・Y・Z
A:
死亡する5年前にYが婚姻した際に、居住建物購入資金としてYに1500万円を贈与。
Zとの間では、A死亡の3年前に「Aの死亡を条件として、2000万円をZに贈与する」との契約(死因贈与)が締結。
公正証書遺言で「甲土地を弟Dに譲る」と記載。(甲土地の評価額は1000万円。)
甲土地を除くAの遺産総額は3000万円。 
死因贈与は「贈与」であるとはいえ、その効力は贈与者の死亡時に生じる(死後処分性。554条)
1047条1項1号の基礎に、遺贈・贈与の対象となった財産がどの時点で相続財産から逸出したのかに着目して遺留分侵害額の負担者を決める⇒死因贈与の場合には、贈与の効力は死亡時に生じ、この時点であ相続財産から逸出する点で遺贈と共通⇒遺贈に準じるものとして処理すべき(遺贈説)。
遺留分侵害額の負担者は、まず、受遺者Dと死因贈与の受贈者としてのZ⇒
相手方の順位は①D・Z、②Y。
  死因贈与も、生前贈与と同じく契約締結によって成立し、既に権利義務関係が生じている点では、贈与としての性質を有している(死因贈与の契約性)⇒死因贈与は贈与として取り扱うのが相当。
but
通常の生前贈与と異なり、その効力が遺言者の死亡によって生じる⇒遺贈に近い贈与として捉え、死因贈与の受贈者は、受遺者に次いで、生前贈与の受贈者よりも先に相手方とすべき(最終贈与説)。

相手方の順位は①D、②Z、③Yとなる。 
     
  ■3 同順位者・先順位者無資力のリスク・・・遺留分権利者の負担 
    同順位者の1人または先順位者が無資力であった場合のリスクは遺留分権利者が負担すべきであり、次順位において負担すべき受贈者にそのリスクを転嫁することができない。

本来ならば金銭給付請求を受けず、遺留分侵害額の負担を課されないはずの者が他の同順位者または先順位者の無資力のリスクを負担するのは相当ではない。
     
     
  ◇Ⅲ 複数の遺贈がある場合および同時の贈与がある場合 
  ■1 総論 
     
   
  ◆第6項 相手方の利益の保護 
     
  ◆第7項 遺留分侵害請求権の消滅時効・除斥期間
     
★第15章 相続回復請求権