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新注釈民法6

新注釈民法6
★第2編 物権
 
第7章 留置権 
     
295条 留置権の内容(p44)  
    民法 第二九五条(留置権の内容)
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
  ◆T 本条の趣旨 
  ◆U 成立要件 
     
     
     
     
  ◇(5) 占有 
  ◇(6) 不法行為によらない占有 
    本条2項は、留置権が成立しない要件として「占有が不法行為によって始まった場合」と規定

不法行為によって占有を取得した者も留置権によって保護すべき必要はなく、この場合に留置権の成立を認めるのは公平に反する。
  ■(ア) 占有開始時における「不法行為」の意義
    占有の開始にあたって不法行為が用いられた場合に留置権が成立しないことは明らか。
    占有権原がない場合に、本条2項によって留置権は成立しないことになるのか?
占有取得行為以外についても本条2項は拡張されるのか?
A:本条2項における「不法行為」を709条に規定する不法行為概念と同じものとする見解
⇒無権限である場合に、そのことについて善意無過失であるときは、むしろ留置権の成立を認めて保護を与えるべき。
B:本条2項の「不法行為」は無権限であることを知りながら占有を開始した場合にも適用がある。

295条2項の解釈において、709条における不法行為の概念に引きずられるべきではなく、占有の形態を問題にすべきであって、196条の趣旨をも考慮すべき⇒善意占有と悪意占有を区別しようとする。
民法 民法 第一九六条(占有者による費用の償還請求)
占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
C:占有開始時における権原の有無に加えて、必要費や有益費を念頭にその出費時点での権原の有無と占有の態様とを組み合わせて、検討を加え、占有開始時点で権原がなく、かつ、出費時点で無権限であることに悪意であった場合にのみ、295条2項の適用があるとする立場。
D:占有の態様によって保護の程度が変わるべきであるとの見解。
E:故意不法行為に限定する剣かい
←占有が単なる過失不法行為によって開始された場合に、留置権の成立を認めないのは妥当性に欠ける。
   
  ■(イ) 権原喪失型への本条2項の類推適用 
    当初の占有開始の時点では、占有権原を占有者が有していたが、後になって、占有権原を失った場合、留置権は成立するか?
196条は、必要費については善意悪意を問わずにその償還請求を承認しており、また悪意の場合であっても償還が認められないわけではなく、債務者である占有の回復を求める者からの請求により裁判所による期限の許与が与えられることになっているにすぎない。
⇒295条2項をこの場合に類推適用することは、留置権による保護をまったく与えないことを意味するので、両社の間に体型的な矛盾が生じる。
A:権原喪失型について、196条を適用し、295条2項の適用を排除する見解。

本条2項の「不法行為」概念を709条のそれから切り離した上で、196条の趣旨を考慮して、善意占有と悪意占有を区別し、
権原喪失の場合で、悪意になったときは、期限許与により留置権を失うが、善意のときは、過失がある場合も含めて、留置権が行使できる。
B:196条は、留置権の成立とは無関係に、悪意占有の場合に期限許与を裁判所が決定することを定めた規定であって、留置権の成否については295条2項が類推適用されるとの見解。
C:賃借人の債務不履行による契約解除などの不信行為がある場合にのみ類推適用を限定する見解。
D:権原喪失型の場合でも、占有が故意の不法行為で開始された場合に匹敵する不法性がある場合に295条2項が類推適用されるとする見解。
     
  ■(ウ) 裁判例の状況
  「占有取得時における不法行為」
  「権原喪失型」 
建物賃貸借において、蹴薬解除後に賃借人が支出した建物修繕費用を被担保債権とする留置権の主張に対して、権限のないことを知りながらされた他人の物の占有を不法な占有として、本条2項の類推適用により、留置権の成立を否定(大判大10.12.23)
売買契約の合意解除の場合における買主の費用支出に関して、同様に、「権原のないことを知りながら不法にこれを占有中に支出した」⇒本条2項の類推適用によって留置権の主張が否定。(最高裁昭和41.3.3)
解除後の有益費の支出についても、「権原のないことを知りながらこれを不法に占有」していた場合に本条2項が類推適用。(最高裁昭和46.7.16)
権原のないことを知っている場合に該当しない事件:
最高裁昭和51.6.17:
自作農創設特別措置法による買収が、その根拠である買収計画の取消しによって遡及的に無効とされた場合において、買主が有益費を支出した当時、買収・売渡しが無効に帰す可能性を疑わなかったことに過失あり⇒本条2項が類推適用される

本条2項の類推適用を拡大したもの。
     
  ■(エ) 不法行為の相手方 
  ■(オ) 証明責任 
    本条2項による不法行為による占有でないことの証明責任:
@占有についての推定規定(186条1項)の存在
A本条2項が本条1項の例外規定

物の返還を請求する側にある。
   
  ◇(8) 具体的な問題