シンプラル法律事務所
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債権各論T(潮見)

  
     
     
     
     
     
     
第16章 委任  
  ◆16.1 委任契約の意義と特徴 
  ◇16.1.1 「法律行為」の委任と準委任 
    民法 第643条(委任) 
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
    委任契約:
ある者(受任者)が他の者(委任者)から委託されて「法律行為」をすることを目的とする契約(民法643)
「法律行為」以外の事実行為の委託を内容とする場合⇒準委任とし、委任の規定を準用(民法656)。
  ※雇用・請負との違い 
役務契約を目的とした契約(役務提供契約)という点で雇用契約や請負契約と共通。
but
次のような違い。
委任と雇用:
役務提供の結果がどのようになるかということの保証(結果保証)を契約内容としない点で共通。
but
雇用:労働者の行なう役務提供が従属的で裁量性がなく、使用者の指図・命令に従い役務提供をすることが内容とされている。
委任:受任者の行う役務提供が独立的で裁量性を有する。
委任と請負:
受任者・請負人の行う役務提供が独立的・裁量的である点で共通。
but
請負:役務提供の結果がどのようになるかについての保証(結果保証)が契約内容となっている
委任:役務提供の結果についての保証は契約内容になっていない。
雇用と請負:有償契約。
委任:無償であることが原則。
but重要な委任契約は、たいてい有償契約。
  ※信託と委任
英米法のトラストの制度に由来する信託。
信託:委託者が受託者に財産権を帰属させつつ、同時にその財産権を一定の目的に従い管理・処分すべき拘束を受託者に加えるもの。
英米法:信託は、契約とは別の法体系(コモン・ロー)の体系に対する衡平法(エクイティ)の体系に基づくもの。
日本:委託者と受託者の合意により成立する契約。
信託契約としての成立が認められるためには、次の要件を含んでいなければならない。(信託法2条1項、3条1号)
@財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分があること。
A財産の処分を受けた者が、一定の目的(自己の利益を図るものを除く)のために、当該財産の管理または処分その他の当該目的の達成に必要な行為をすること。
信託について、
@財産権が受託者に帰属するという特徴
A管理処分面で受託者に課されるこう拘束の特殊性
B信託財産の管理・処分の物権的効果面にかかわる制度やルールの存在
⇒信託は委任契約とは異なるタイプのものであるとする理解が、有力に唱えられている。
but
わが国の委任類型は、委託された事務の処理に関する委任者・受任者間の規範的な拘束という点で、信託と共通の観点に出たもの

むしろ、信託契約も委任契約の一種(下位類型)と捉えたうえで、@Aの要素に由来する特殊性を考慮した特別の法理・ルールが信託契約において展開されているとみればいい。
逆に、これまで信託の法理・ルールとして展開されてきたもののなかにも、委任契約一般に妥当すべき性質のものがあるのではないかという点を考える必要。
 
  ◇16.1.2 
  ◇16.1.3 
  ◆16.2 受任者による事務処理(p258) 
  ◇16.2.1 事務処理義務・・・「委任の本旨」と「善良な管理者の注意」 
  ◇16.2.2 忠実義務 
    忠実義務:委任者と受任者との信任関係に基づき、受任者はもっぱら委任者の利益のために行動しなければならないという義務。

@受任者は委任者の利益と自己の利益とが衝突するような地位に身を置いてはならず、
A事務処理にあたっては自己または第三者の利益を図ることなく、もっぱら委任者の利益を図らなければならない
との原則に基礎を置く。
     
  ※忠実義務と善管注意義務との関係 
    民法644条の起草趣旨を踏まえれば、忠実義務とされる義務は、同条にいう善管注意義務に含めることができる。

「委任の本旨に従い」というのは、「受任者は、委任者の信任に応えて、誠心誠意、忠実に、委任者のために委任事務を処理すべきであって、委任の目的に反する行動をしてはならない」との意味を含む広範なもの。