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東京証券取引所関係

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)


 コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について
2015年2月24日 株式会社東京証券取引所
■T.趣旨
昨年6月にとりまとめられた政府の成長戦略「『日本再興戦略』改訂2014」を受けて、コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」といいます。)が策定され、本年6月より適用される予定です。同戦略では、コードについて、上場規則により、上場企業に対して“Comply or Explain”(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)を求めるものとされており、これを実行に移すために、所要の制度整備を行います。
また、独立社外取締役の円滑な選任に資するため、独立性に関する情報開示について見直しを行います。
■U.概要
●1.コードの策定に伴う制度整備
◎(1)コードを実施しない場合の理由の説明
・市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQの上場会社は、コードを実施しない場合には、その理由を説明するものとします。
・企業行動規範の「遵守すべき事項」として規定します。
・外国会社は除きます。
・マザーズ・JASDAQについては、新興企業向け市場を巡る国際的な動向及び我が国の新規産業育成の観点から、コードのうち、「基本原則」部分を実施しない場合に、その理由を説明するものとします。
◎(2)コードを実施しない場合の理由の説明の媒体
・「コードを実施しない場合の理由の説明」は、コーポレート・ガバナンス報告書に欄を新設して記載するものとします。
・上場会社のコーポレート・ガバナンスの状況を網羅的に記載している同報告書に情報を集約することで、株主・投資家の利便を図ろうとするものです。

・このほか、「コードを実施するために行う開示」(別紙1.参照)についても、同様の趣旨からコーポレート・ガバナンス報告書に別途、欄を新設して記載するものとします。この場合には、他の開示・公表書類における記載場所を明示することで、記載に代えることができるものとします。

・上場会社は、定時株主総会後、遅滞なくコーポレート・ガバナンス報告書を提出するものとします。ただし、2015年6月以後最初に開催する定時株主総会については、準備ができ次第速やかに提出することとし、遅くともその6か月後までに、提出するものとします(別紙2.参照)。
◎(3)コードの尊重
・「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」の尊重規定は、コードの趣旨・精神の尊重規定に置き換えます。
・いずれも「OECDコーポレート・ガバナンス原則」が源流であり、コードは「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を包含している関係にあるためです。
●2.独立役員の独立性に関する情報開示の見直し
・上場会社が独立役員を指定する場合には、当該独立役員と上場会社との間の特定の関係の有無及びその概要を開示するものとします。
・これまで、主要な取引先の元業務執行者など過去において上場会社と特定の関係を有していた独立役員については、それでもなお独立性ありと判断した理由の説明を求めてきたことを改め、すべての独立役員について等しく情報の開示を求めることにより、上場会社が独立性を判断する際における過度に保守的な運用を是正しようとするものです(別紙3.参照)。
■V.実施時期(予定)
・2015年6月1日を目途に実施します。
★別紙 
■1.コーポレート・ガバナンス報告書等での「開示」を求める諸原則 一覧
  原則1−4
場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。
(略)上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである。
  原則1−7
上場会社がその役員や主要株主等との取引(関連当事者間の取引)を行う場合には、そうした取引が会社及び株主共同の利益を害することのないよう、また、そうした懸念を惹起することのないよう、取締役会は、あらかじめ、取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその枠組みを開示するとともに、その手続を踏まえた監視(取引の承認を含む)を行うべきである。
  原則3−1
上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から、(本コード(原案)の各原則において開示を求めている事項のほか、)以下の事項について開示・公表し、主体的な情報発信を行うべきである。
(@)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(A)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
(B)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(C)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(D)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の個々の選任・指名についての説明
  補充原則4−1@
取締役会は、取締役会自身として何を判断・決定し、何を経営陣に委ねるのかに関連して、経営陣に対する委任の範囲を明確に定め、これを開示すべきである。
  原則4−8
(略)また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである。
  原則4−9
取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・公表すべきである。(略)
  補充原則4−11@
取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。
  補充原則4−11A
社外取締役・社外監査役をはじめ、取締役・監査役は、その役割・責務を適切に果たすために必要となる時間・労力を取締役・監査役の業務に振り向けるべきである。こうした観点から、例えば、取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべきであり、上場会社は、その兼任状況を毎年開示すべきである。
  補充原則4−11B
取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。
  補充原則4−14A
上場会社は、取締役・監査役に対するトレーニングの方針について開示を行うべきである。
  原則5−1
場会社は、株主からの対話(面談)の申込みに対しては、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で前向きに対応すべきである。取締役会は、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針を検討・承認し、公表すべきである。
  ※以上は、2014年12月17日公表の「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)」に準拠したものであり、コードの確定にあたって変更となる可能性があります。
■2.コーポレート・ガバナンス報告書の提出スケジュール イメージ
  (3月期決算会社の場合)
2015年6月 株主総会
準備でき次第、速やかに提出(12月末まで)
2016年6月
株主総会後、遅滞なく提出
■ 3.独立性に関する情報開示の見直し イメージ
  上場会社・子会社の業務執行者:
×過去10年以内
〇過去10年以前
  親会社・兄弟会社、主要な取引先、多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント等の業務執行者、近親者:
×現在
〇過去
  主要株主の業務執行者:〇
  主要でない取引先、相互就任先、寄付先の業務執行者:〇
  左記に該当しない者:〇
   ※図中で「要説明」の類型(いわゆる開示加重要件)を廃止し、「要開示」の類型(いわゆる属性情報)に統一するものです。


 平成26年会社法改正に伴う上場制度の整備について
2 0 1 5 年1 月3 0 日 株式会社東京証券取引所
■T.趣旨
「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号。以下「会社法改正法」といいます。)において、特別支配株主の株式等売渡請求制度が導入されるほか、社外取締役や社外監査役の社外性要件の一部緩和が行われることなどを踏まえ、適時開示事由の見直しを行うなど所要の制度整備を行います。
■U.概要
●1.特別支配株主の株式等売渡請求制度の新設に伴う制度整備
◎(1)適時開示事由の追加
・特別支配株主の株式等売渡請求に関し、以下の場合に適時開示を求めます。
@ 上場会社の業務執行を決定する機関が株式等売渡請求の承認を行うことについて決定(承認しない決定を含む。)した場合
A 特別支配株主が上場会社に係る株式等売渡請求を行うことについての決定をした事実又は当該特別支配株主が当該決定に係る株式等売渡請求を行わないことを決定した事実が発生した場合
◎(2)上場廃止基準の追加
・特別支配株主が株式の全部を取得する場合には、当該上場株券等の上場を廃止するものとします。
・全部取得条項付種類株式を利用した少数株主のキャッシュアウトの場合と同様、取得日の3日前(休業日を除く。)の日を上場廃止日とします。
● 2.独立役員の独立性に関する開示の見直し
・10年以上前に上場会社又はその子会社の業務執行者であった者について、独立役員に指定できることとし、指定する場合には、その旨及びその概要の開示を求めます。
・会社法改正法によって社外性が認められることとなった類型に属する者を独立役員として指定する場合の取扱いを定めるものです。

・10年間が経過すれば会社との関係が希薄となり社外役員の機能を実効的に果たすことが期待できるとして社外性を認めることとした会社法改正法を踏まえ、そうした者の独立性も認めることとしま
す。この場合、過去に上場会社又はその子会社の業務執行者であった者については、状況によっては投資家がその独立性を懸念する場合もあり得ることから、投資家の判断に資するよう、10年間が経過した後もその旨と概要の開示を求めることとします。

・当取引所及び金融庁が共同事務局を務める「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」が2014年12月17日付で公表した「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)」では、金融商品取引所が定める独立性基準やこれに関する開示基準について、今後の状況の進展等を踏まえつつ、金融商品取引所において、必要に応じ、適切な検討が行われることを期待する旨の提言がなされています。かかる提言を踏まえた見直しの検討は、別途行います。
●3.その他
・その他所要の改正を行います。
・上場会社が置くべき機関として、既存の監査役会又は指名委員会等に加え、監査等委員会を追加する等の改正を行います。
■V.実施時期(予定)
・会社法改正法の施行の日から実施します。