シンプラル法律事務所
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勉強会(提携契約・・資本提携)


★資本提携(合弁会社)
★資本提携
事例
A社:全国的な販売網を有する大手メーカー。売上高1000億円、従業員数5000人。
B社:ある分野に特化した技術を持つ中小メーカー。株券発行会社かつ非公開会社(株主1人)。売上高50億円。従業員100人。
A社:B社の技術を利用し、商品Xの製造・販売を続けるとともに、新商品Yの開発・製造・販売を共同して行いたい。
B社:A社からの豊富な資金や設備の提供を受けて、自社の商品Xに関連する技術を活かして更なる新商品を開発・製造・販売したい。
B社は、ライセンス契約に基づき、自社の目玉商品(「商品X」)の日本における製造販売をA社に許諾し、その対価としてA社より毎月一定額のロイヤルティの支払を受けている。
Xはヒット商品になったが、B社のビジネスは不況の影響で資金繰りが厳しくなった。
⇒両社は、相互により提携関係を深め商品Xおよびその関連技術を活かした新商品(「新商品Y」)に関する合弁事業を開始し、競争力を高めたいを考えている。
出資比率はA社が7割、B社が3割。
■1 事業体の選択
■1 事業体の選択 株式会社 メリット @権利義務関係の処理の簡明化・法的安定性。
A間接有限責任。
B社会的認知度が高く、ガバナンス面での信用度が高い。
C1人で設立可能。
デメリット @法人課税方式(ただし、受取配当の益金不算入制度)
A設立費用が他の事業体より高い。
B機関設計上の制約(費用負担増)。
C決算公告が義務付け。
合同会社 メリット @権利義務関係の処理の簡明化・法的安定性。
A間接有限責任。
B設立費用が安い。
C柔軟な機関設計が可能。
D1人で設立可能。
E組織変更(株式会社化)が可能。
デメリット @社会的認知度が低く、ガバナンス面の信用度が高くない。
A原則として社員全員が業務執行者として第三者に対して無限責任を負う。
有限責任事業組合 メリット @間接有限責任
A実質的に組合財産の登記が可能
B法人課税の対象とならず、原則構成員課税(パス・スルー課税)。
⇒構成員の他の損益との通算が可能。

C設立費用が安い。
D柔軟な機関設計が可能。
デメリット @権利義務は各組合員に帰属⇒権利義務関係が複雑化
A組合契約⇒2人以上の組合員が必要となる(組合員が1人となることが解散事由)
B原則として組合員全員が業務執行者として第三者に対して無限責任を負う。
C組織変更(株式会社化)ができない。
設立費用 株式会社 約25万円
@登録免許税=資本金の額×7/1000(15万円に満たないときは15万円)
A定款費用(収入印紙代4万円+認証費用5万円)
合同会社 約10万円
@登録免許税=資本金の額×7/1000(6万円に満たないときは6万円)
A定款費用(収入印紙代4万円(認証不要))
組合 6万円(登録免許税6万円)
■2 既存の会社か、新規設立か
■2

既存の会社か、新規設立か
事案 A社とB社は、JVとして株式会社を利用。
A社は複数の子会社を保有しており、そのうち完全子会社のC社は休眠会社。

A社は、A社とB社のC社への出資比率が7対3となるような形で、A社が保有するC社の株式をB社に譲渡
その後、A社とB社がC社の増資を引き受ける形で利用。
vs.合弁事業とは関係のない資産・負債を抱えている可能性があり、合弁事業開始後、偶発債務などが顕在化することを懸念。
条項 1-1
(A)
既存
(1) A社は、平成●年●月●日に、B社に対し、自己の保有するC社の株式●株を譲渡し、B社はこれを譲り受ける。
(2) 前項におけるC社の株式の譲渡代金は、1株当たり金●円、総額金●円とする。
1-3
(B)
既存
(1) A社は、本契約締結日において、B社に対し、以下の事項が真実かつ正確であることを表明し、かつ保証する。
 @ C社の●年●月●日付現在の貸借対照表に記載されていない偶発債務、簿外債務等は一切存在しないこと。
 A ・・・
(2) 前項に基づきA社が行った表明および保証が、正確でなかったこと、または真実でなかったことによりB社に損害が生じた場合、A社はこれを補償する。
1-2
(B)
設立
(1) A社およびB社は、各自が出資することにより株式会社の形態でJVを設立する。
(2) A社およびB社は、前項のJVを設立するに際して、以下のとおり、株式を引き受けるものとする。
@ 引受株式数: A社 700株 B社 300株
A 払込金額: A社 ●円(1株あたり●円) B社●円(1株当たり●円)
1-4
設立
1-2に追加
(3) 本契約に基づき発生するJV設立に関する費用(会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)5条各号に定める費用を含むが、これらに限定されない)は、A社およびB社が各出資比率に従って分担するものとする。
規定 会社法施行規則

第5条(設立費用)
法第二十八条第四号に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 定款に係る印紙税
二 設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払うべき手数料及び報酬
三 法第三十三条第三項の規定により決定された検査役の報酬
四 株式会社の設立の登記の登録免許税.
合弁事業と企業結合規制 独禁法:
株式の保有や役員の兼任などの企業結合が一定の取引分野における「競争を実質的に制限すること」(以下「競争制限」という)となる場合、当該企業結合を行うことを禁止しており、企業がこれに違反した場合、排除措置命令を受ける可能性がある。
公正取引委員会の「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(企業結合ガイドライン)
■3 出資比率
■3 出資比率 少数株主としては、自らの合弁事業における役割(機密情報を提供する立場なのか、JVの債務を最終的に負担するかなど)を考慮したうえで、必ず確保すべき拒否権の対象事項JV株式の処理方法を念頭に置いて交渉すべき。
多数株主としても、自らの合弁事業における役割(多額の出資をしているなど)や合弁事業で想定している計画(全国展開を速やかに行い自らが展開している他の事業とのシナジーを図りたいなど)を考慮のうえ、B社に対して最終的には譲歩してもよい部分がどこなのかを念頭において交渉すべき。
■4 機関設計
■4 機関設計 会社法の施行⇒譲渡制限会社の機関設計の自由度が非常に高くなり、JVにおいても、さまざまな機関設計が考えられる。
取締役会を設置するかどうか。
取締役会を設置しない⇒株主総会がJVに関するあらゆる事項について決議⇒合弁契約の規定に基づき合弁当事者間の合意で多くの事項を決定することが規定されている合弁事業の実態に沿う。
but
あらゆる事項を株主総会で決議⇒A社の意思決定を待たなければならない⇒A社の企業規模からすると迅速な意思決定は期待できない。

JVに取締役会を設置して、できるだけ取締役会で意思決定できる仕組みを構築することが望ましい。
B社は、JVの年度事業計画の策定など、会社法上は株主総会の決議事項とされていない事項についても、合弁契約または定款で、B社の同意事項となるようA社と交渉。
いわゆる運営委員会の設置の検討:
@JVの事業運営に関する重要な意思決定を行うために設置されるもの
AJVの事業運営に関する意思決定は行わず、単に現場担当者同士で意見のすり合わせ等を行うために設置されるもの
15
■5 取締役の選解任権
■5 取締役の選解任権 交渉 会社法の原則:
JVの株主総会の議決権の過半数を保有するA社が、取締役全員を自社の指名する者とし、かつ自ら単独で取締役を解任することが可能。
vs.
B社にも取締役選解任権が付与されるべき。
条項 2-1
(B)
第●条(取締役の選任および解任)
(1) JVには取締役会を設置することとし、JVの取締役は、A社が指名する者●名、B社が指名する者●名の計●名とする。
(2) A社およびB社は、前項に基づき、相手方が指名した者が取締役に選任されるよう、JVの株主総会において、その議決権を行使するものとする。
(3) A社が指名した取締役についてはA社のみが、B社が指名した取締役についてはB社のみが、当該取締役の解任に関する決定を行うことができるものとする。
2-2
(B)
種類株式
第●条(発行可能株式総数)
JVの発行可能株式数は●株とし、普通株式、A種類株式およびB種類株式の各発行可能種類株式総数は、それぞれ●株、●株および●株とする。
第●条(取締役の選任)
(1) A種類株式の株主を構成員とする種類株主総会において、取締役●名を選任することができる。
(2) B種類株式の株主を構成員とする種類株主総会において、取締役●名を選任することができる。
2-3
(B)
第●条(取締役の選解任)
取締役を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の4分の3を超える多数をもって行わなければならない。
2-4 2-1の後に
(4) A社およびB社は、本条2項に違反した場合、相手方に対して違約金として金●円を支払わなければならない。
議決権拘束条項違反の場合 多数説:
議決権拘束契約違反は明文上株主総会の取消事由(会社法831条1項)に該当しないことを理由として、取り消すことはできない。

少数株主が自らの権利を必ず保持したいのであれば、
@種類株主総会を必要とする2-2や
A取締役の選解任に係る決議要件を加重する2-3や
B議決権拘束契約違反の場合の違約金を定める2-4
をとるべき。
尚、14参照。
会社法 第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)
次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
議決権行使禁止の仮処分 事前にA社が議決権拘束条項に違反して議決権を行使することが予想される場合、B社としては、A社の義務(議決権を行使しないという不作為義務)違反行為の差止請求権を秘保全権利として、裁判所に対して議決権行使禁止の仮処分を求めることができるか?
@株主全員が当事者である議決権拘束契約であること、
A契約内容が明確に議決権行使の禁止を求めるものであること
を要件に、例外的に、上記差止請求が認められる余地がある旨を判示した裁判例がある。
■6 代表役員の選解任権
■6 代表役員の選解任権 説明 代表取締役は株式会社を代表し、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為を行う広範な業務施行権限。
⇒B社としては、代表取締役の選解任についても一定の権限を取得したい。

@合弁契約にB社に代表取締役の選解任権を認める旨規定する方法
A代表取締役の選解任を種類株主総会の決議事項とする旨、JVの定款に定める方法
B代表取締役の選解任を株主総会決議事項とし、その決議要件を加重する旨JVの定款に定める方法
A社がB社とJVを設立することを決めた理由の1つは、B社の代表取締役が有する業界での人脈や経験を利用したい。
⇒B社の代表取締役の甲をJVの代表取締役として就任してもらいたい。
A社としては、甲をJVの代表取締役として就任させることを受け入れる一方で、甲の辞任を制限する旨を合弁契約に規定。
条項 3-1
(A)
(1) B社は、A社の求めがある場合、甲をして、JVの代表取締役に就任させるものとする。
3-2
(A)
(2) B社は、甲をして、A社の事前の書面による同意を得ない限り、JVの代表取締役および取締役を辞任させないものとする。
3-3
(A)
(3) B社は、甲をして、A社の事前の書面による同意を得ない限り、JVの代表取締役および取締役を辞任しない旨JVと合意させるものとする。
3-4
(A)
(4) B社が前項の規定に違反したばあい、A社にたいして違約金として金●円を支払わなければならない。
会社との辞任制限特約 効力 無効説(会社との辞任制限特約は無効)

@取締役と会社との関係が委任契約であって本来辞任は自由。
A取締役が会社に対して重い責任を負い、また利益相反取引や競業取引が制限されている。
有効説(契約の合理的解釈や信頼関係破壊法理などにより特約の効力を制限的に解釈すれば足りる。)
←辞任の自由も放棄可能。
裁判例:
取締役全員により構成される取締役会の承認がなければ取締役を辞任できない旨を就任時に合意した場合に、当該合意を無効とする裁判例
意義 事実上の代表取締役の抑止力⇒意義がある。
合意が無効でも、甲がJVに不利な時期にJVの代表取締役および取締役を辞任した場合、当該代表取締役は、辞任により生じたJVの損害を賠償する義務を負う。(民法651条2項)
民法 第651条(委任の解除)
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
■7 従業員の確保・費用負担
■7 従業員の確保・費用負担 条項 第●条 (従業員の確保・費用負担)
(1) A社およびB社は、JVに対して、設立日から●年間、A社およびB社が協議のうえ策定した事業計画に基づく員数の従業員を出向させる。
(2) JVにおける出向者の労働条件および勤務条件等は、A社およびB社の水準を基礎にA社およびB社が協議のうえ定めるものとし、JVは当該協議に基づく労働条件および勤務条件等に従って出向者の人件費その他の費用を負担する。
(3) 本条に定めるほか、出向者の処遇に関する詳細は、A社またはB社とJVとの間の出向契約に定める。
(4) A社およびB社は、本契約の有効期間中であると有効期間終了後であるとを問わず、相手方から出向しているJVの従業員について、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、自己および自己の関係会社への引き抜き、他の企業への推薦・紹介・斡旋その他これらに類する行為を一切行ってはならない。
従業員の引抜き 従業員の引抜き行為については、契約上で手当てしていなくても一定の場合は不法行為となりうるが、当該従業員の職業選択の自由に深く関係。
⇒引抜き行為が不法行為となるのは、「単なる勧誘の域を超え、社会的相当性を逸脱した場合に限られる」とするのが裁判例。
⇒契約で手当てする必要性が高い。
相手方出向社員の退職制限 方法 相手方に対し、特定の従業員を退職させないようにする義務を負わせる方法のほか、相手方に対して、「退職には会社の承諾を必要とする」旨の誓約書を従業員から徴求することを義務づける規定を合弁契約に入れる方法。
効果 but
JVが当該従業員に対して、当該誓約書に違反して退職したことを理由に損害賠償請求をすることはできない。
←労働者の解約の自由を保障しようとする憲法や労働関係法の精神。
誓約書の存在にかかわらず、民法627条が適用され、当該従業員による退職願提出の日から2週間(月給制従業員等の場合は同条2項、3項の定める期間)の経過により雇用契約が終了。
規定 民法 第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
■8 重要事項に関する拒否権
■8 重要事項に関する拒否権 説明 JVの議決権の70%を保有し、かつ、取締役の過半数を指名する権利を有するA社としては、会社法の原則に従えば、株主総会特別決議事項もその他の通常の業務執行に関してもすべて単独で意思決定することが可能。
JVの株主総会における議決権の30%しか保有せず、かつ、取締役の半数未満の選解任権しか有しないB社
⇒会社法の原則の下、A社に株主総会特別決議事項も、その他の通常の業務執行に関してもすべて単独で意思決定されてしまい、JVの意思決定に一切関与できなくなってしまう可能性がある。
⇒B社としては、JVの重要事項に関しては自らの意思も反映させたいため、一定の重要事項に関しては自らが拒否権を持つことを求める。
@合弁契約において一定の重要事項の決定についてはB社の承認を必要とする旨の規定を設けること。(5-^1)
AJVを種類株式発行会社とし、合弁契約およびJVの定款において一定の重要事項について種類株主総会の決議があることを必要とする旨の規定を設けること。(5-2)
B合弁契約およびJVの定款において一定の重要事項について株主総会の決議要件を加重すること。(5-3)
@については、A社が合弁契約の規定に違反した場合に会社法上の救済手段を講じられない可能性がある。
Aは手続きが煩雑。
BはJVの事業運営上に関するA社の権限が弱くなる。
条項 5-1
(B)
第●条 (重要事項の決定)
JVにおける以下の各号に定める事項の決定については、B社の事前の承認を必要とする。
@年度事業計画の策定
A他社への出資およびその出資持分の処分
B●円を超える金線の借入れまたは貸付け
C合併、株式交換、株式移転、会社分割に関する事項
D事業譲渡、事業譲受けに関する事項
E新規事業の開始、既存事業の撤退
F・・・
5-2
(B)
第●条(発効可能株式総数)
当会社の発効可能株式総数は●株とし、普通株式、A種種類株式およびB種種類株式の各発効可能種類株式総数は、それぞれ●株、●株および●株とする。

第●条(重要事項の決定)
JVにおける以下の各号に定める事項の決定について、株主総会決議のほか、B種種類株主を構成員とするB種種類株主総会の決議があることを必要とする。
@〜F
5-3
(B)
第●条(重要事項の決定)
JVにおける以下の各号に定める事項の決定は株主総会の決議によらなければならない。当該決議は、会社法309条1項および2項の規定にかかわらず、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の4分の3を超える多数をもって行わなければならない。
@〜F
規定 会社法 第309条(株主総会の決議)
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会社法
二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会社法
四 第百八十条第二項の株主総会社法
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号及び第二百四条第二項の株主総会社法
六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号及び第二百四十三条第二項の株主総会社法
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)
八 第四百二十五条第一項の株主総会社法
九 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
十 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会社法
十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会社法
5-4
(A)
第●条(株主総会の決議方法)
(1) 株主総会の決議は、法令または定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
(2) 会社法309条2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもって行う。
第●条(取締役会の決議方法)
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。
5-5 5-1の規定の後に、2項として以下を追加。・
(2) 前項各号に定める事項がB社の事前の承認なしに決定された場合、A社はB社に対して違約金として金●円を支払わなければならない。
取締役会の決議要件の加重 重要事項に関してB社に拒否権を与える方法として、株主総会の決議事項とするほかに、取締役会の決議要件を加重する旨を合弁契約およびJVの定款に定める方法。
⇒取締役会においてB社の指定した取締役の賛成票がなければ重要事項が決定されない仕組み。
尚、特別取締役制度
取締役6名以上で、かつ社外取締役1名以上の要件を満たす取締役会設置会社において、
@重要な財産の処分および譲受けならびに
A多額の借財
の2つの事項については、あらかじめ取締役の中から選定した3人以上の特別取締役の決議によって行うこととするものであり、定款にその旨を定めることもできる。

合弁事業の当事者が3者以上いるような場合に、そのうち2者の意向で上記@Aの事項について決定したいような場合に有効な制度。
規定 5-6 取締役会の決議方法・・・定款にも同様に規定
(1) 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。
(2) 前項の定めにかかわらず、以下の各号記載の事項を決定する取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その4分の3を超える多数をもって行う。
@〜F
■9 追加の資金提供義務と出資比率の維持との関係
■9 追加の資金提供義務と出資比率の維持との関係 説明 JV設立時に合弁当事者が出資をすることで資金調達を行うのが通常。
but事業を行っている以上、追加的な資金調達の必要が生じることが当然想定される。

A社とB社が追加の資金提供義務を負うか否か、資金提供義務を負うとしてどのような方法とするか、その義務を履行しない当事者に制裁を課すか否かなどを協議。
JVが新株発行⇒引き受ける資金がなければ、出資比率が維持できないおそれがある。
条項 6-1
(B)
(1) JVの経営上、資金を調達する必要がある場合には、原則としてJVにて当該資金を金融機関より独力で調達するものとする。
(2) 各当事者はJVに対して出資、立替え、保証またはその他の方法により追加資金を提供する義務を負わないものとする。
6-2
(A)
(1) JVの経営上、資金を調達する必要がある場合で、かつ、A社がその必要性を合理的と判断した場合には、A社は出資、貸付け等の方法により、JVに追加資金を提供するものとする。
(2) 前項に基づくA社の追加の資金提供の総額が●円を上回った場合には、第●条に基づくB社の拒否権は消滅するものとする。
6-3 (1) JVの経営上、資金を調達する必要がある場合で、かつ、その必要性が客観的に合理的である場合には、A社およびB社は、JVが新たに発行する株式を引き受けることで、JVに資金提供することができる。
(2) 前項の場合、A社およびB社は、当該時点におけるJVにおける出資割合に応じて、新株を引き受ける権利を有する。
(3) A社が、本条に基づく株式の引受けの一部または全部を行わなかった場合で、かつ、A社の出資割合が過半数を下回った場合には、本契約は終了し、A社およびB社は、それぞれの出資割合を考慮して、新しい合弁契約の締結を協議するものとする。
(4) B社が、本条に基づく株式の引受けの一部または全部を行わなかった場合で、かつ、B社の出資割合が20%を下回った場合には、第●条に基づくB社の拒否権は消滅するものとする。
■10 剰余金の配当等
■10 剰余金の配当等 説明 JVの事業活動の結果、具体的にいかなる方法で自社の利益につなげるか:
@JVから剰余金の配当を受ける方法
AJVの好業績を合弁当事者の業績につなげる方法。
資金が潤沢でないB社は配当収益を得たい。
A社:商品Xが再度ヒットし、また新商品Yが記録的なヒット商品となることで、これらの商品の販路をもつ自社の直接的な売上につなげたい。
特に追加的資金調達の必要が生じた場合、A社がより多くの資金援助を行うことになる。
利益を内部留保したい。
剰余金についてはJVの経営状況や財産状況、将来の営業方針などを総合的に勘案しなければ具体的な内容を決することができない⇒合弁契約の段階では協議事項にとどめておくことで合意することも考えられる。
条項 7-1
(B)
A社およびB社は、JVの剰余金につき、少なくとも年1回、JVの各事業年度の終了後3か月以内に金銭で配当を受け、その配当額は、A社およびB社の各JV株式の保有割合にかかわらず同額とすることを相互に確認する。
7-2
(A)
A社およびB社は、JVについて剰余金の配当を行わないことを相互に確認する。
7-3 (1) A社およびB社は、JVの剰余金につき、JVの各事業年度の終了後3か月以内に金銭で配当を受け、その配当額は、A社およびB社の各JV株式の保有割合にかかわらず同額とすることを相互に確認する。
(2) 前項にかかわらず、JVの剰余金配当は、JV設立後●年間は行わないものとする。
■11 知的財産権の処理
■11 知的財産権の処理 説明 A社とB社は、JVを通じて商品Xを製造・販売するとともに、新商品YについてもJVを通じて開発・製造・販売
A社としては、今後JVが商品Xおよび新商品Yを自由かつ独占的に製造・販売し、また、第三者に製造・販売を許諾できるよう希望。

商品Xに関する知的財産権その他一切の権利をJVに帰属させたい。
B社:
ライセンス収入も得たい。
新商品Yが商品Xに関連する技術を生かした派生商品となることが予定されている⇒新規知的財産権についても、B社に帰属すべき。
その上で、JVに商品Xおよび新商品Yの開発・製造・販売を非独占的に許諾するという形式。
条項 8-1
(A)
(1) B社は、商品Xに関する知的財産権その他一切の権利(以下「既存知的財産権」という)をJVに譲渡する。
(2) 既存知的財産権の対価は金●円とする。
(3) JVが新商品Yを開発等した場合、新商品Yに関する知的財産権その他一切の権利(以下「新規知的財産権」という」)はJVに帰属するものとする。
8-2
(B)
(1) B社は、JVに対し、商品Xに関する知的財産権その他一切の権利を実施、使用または利用し、日本国内において商品Xを非独占的に開発、製造および販売することを許諾する。許諾条件については、別紙●記載のとおりとする。
(2) JVが既存知的財産権を利用して新商品Yを開発等した場合、新商品Yに関する知的財産権その他一切の権利(以下「新規知的財産権」という)はB社に帰属するものとし、B社はJVに対して、新規知的財産権を実施、使用または利用し、日本国内において新商品Yを非独占的に開発、製造および販売することを認諾する。なお、許諾条件については、A社およびB社が別途協議のうえ決定するものとする。
8-3 (1) B社は、JVに対し、商品Xに関する知的財産権その他一切の権利を実施、使用または利用し、日本国内において商品Xを独占的に開発、製造および販売することを許諾する。なお、許諾条件については、A社およびB社は別途協議のうえ決定するものとする。
(2) JVが新商品Yを開発等した場合、新商品Yに関する知的財産権その他一切の権利(以下「新規知的財産権」という)は、JVに帰属するものとする。
(3) A社は、JVが終了した場合には、前項に基づきJVに帰属した新規知的財産権をB社がJVから買い取ることに合意するものとする。なお、買取価格をはじめとする買取条件については、A社およびB社が別途協議のうえ決定するものとする。
■12 競業避止義務
■12 競業避止義務 説明 A 商品Xおよび新商品Yのヒットを目的にJVに多額の資金を投入
⇒A社としては、B社が商品Xや新商品Yを(JVではなく)自社販売することは、JVの売上を下げることにつながるため、禁止したい。
B B社も、A社による競合商品の製造・販売を禁止したい。
JV自体が事業を拡大し、商品Xや新商品Yと競合するような商品まで取り扱うようになると、商品Xや新商品Yの売上が下がる⇒禁止希望。
JV解散後でも、JVへ提供した商品Xや新商品Yの機密情報などがA社を通じて他社に流出するリスク⇒一定期間はA社による競業行為を禁止したい。
条項 9-1
(A)
B社は、本契約の期間中、自らまたは第三者を介して、商品Xおよび新商品Yの販売を行ってはならない。
9-2
(B)
A社およびB社は、本契約の有効期間中(およびJV解散後●年間は)、事情のいかんにかかわらず、次の行為を行ってはならない。
@ 自らまたは第三者を介して、JVが行っている事業と競合する事業(以下「JV競合事業」という)を行うこと。
A JV競合事業を営む事業者(以下「JV競合企業」という)に出資または経営に参加すること。
B 自らまたは自らのグループ会社の役員または従業員(ただし、退任または退社した者は除く)をJV競合企業の役員または従業員とすること。
9-3
(B)
A社は、JVをして、本契約の有効期間中(およびJV解散後●年間は)、事情のいかんにかかわらず、次の行為を行わせてはならない。
@ 自らまたは第三者を介して、商品Xおよび新商品Yならびにこれらから派生する製品と競合する商品を製造、開発すること。
A JV競合企業に出資すること。
9-4 (1) A社は、JVの解散後●年間、B社がJVに提供した商品Xや新商品Yの開発・製造のための機密技術やノウハウその他の機密情報を第三者に開示または漏洩してはならない。ただし、B社の事前の承諾がある場合はこの限りではない。
(2) B社は、JVの解散後●年間、商品Xおよび新商品Yに係るA社の販路を自己または第三者のために利用してはならない。
(3) 本合弁契約の終了にかかわらず、前2項の規定については、引き続き効力を有する。
■13 株式の譲渡制限
■13 株式の譲渡制限 説明 それぞれ自らの保有するJV株式を相手方または第三者に譲渡することで提携関係を解消することが可能。
会社法上、株式は自由に譲渡できるのが原則(会社法127条)。
資金難の状態であるB社に比べ、結果的により多い資金提供を行わざるをえないことが想定。⇒JVの事業に収益性が望めなくなった場合には、追加的な資金提供による損失拡大を防ぐために、いつでも自ら保有するJV株式を譲渡して投下資本を回収したい。
B社も株式譲渡できるが、その場合、B社が離脱するJV株式を取得する者が現れる可能性は非常に低い。
商品Xに関する事業以外で収益を上げていない⇒商品Xに関する事業から撤退することは想定していない⇒譲渡制限を提案。
butA社が取締役の過半数の選解任権を有している⇒事実上A社は自由に自らの株式を譲渡できる。

@定款に10-2を規定し、取締役会の決議要件を加重(出席取締役の4分の3以上の賛成を要求)
A合弁契約の10-3を規定し、相手方に無断でJV株式を第三者に譲渡できないようにする。
株式譲渡の承認機関を、定款で株主総会と定めることも可能。

@JVの定款に株式譲渡の承認機関を株主総会とする旨の規定を設け、かつ、その決議要件を加重(4分の3)する案
AJVを種類株式発行会社とし、合弁契約およびJV定款において各種類株主総会の承認決議を必要とする旨の規定を設ける。
but
手続きの煩雑性より、A社は当該提案に応じることは通常考えられない。
規定 会社法 第127条(株式の譲渡)
株主は、その有する株式を譲渡することができる。
第139条(譲渡等の承認の決定等)
株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
条項 10-1
(A)
A社およびB社は、いつでも、その保有するJV株式を第三者に譲渡することができるものとし、A社およびB社は、かかる株式の譲渡につき、それぞれが選任した取締役をして取締役会において賛成の票を投じさせるものとする。
10-2 定款に規定:
A社およびB社がJV株式を譲渡するためには、JVの取締役会の承認を要する。
10-3 A社およびB社は、相手方による事前の書面による同意がない限り、JV株式を第三者に譲渡してはならない。
10-4
(A)
A社およびB社は、JVの設立後●年間、その保有するJV株式を第三者に譲渡してはならない。ただし、相手方に以下の各号に規定するいずれかの事由が生じた場合にはこの限りではない。
@〜C
10-5
(A)
10-4の後に
(2) A社およびB社は、前項の期間経過後は、自らの裁量でいつでも自由に自らが保有するJV株式を譲渡することができる。
10-6
(B)
先買権
10-4の2項ないし4項として

(2) A社またはB社(以下「譲渡希望当事者」という)が自己の保有するJV株式を第三者に譲渡しようとする場合には、相手方に対し、譲渡価格、譲渡株式数、譲渡予定者その他当該株式譲渡に係る重要な条件を書面にて通知するものとし(以下「譲渡通知」という)、相手方は譲渡通知に記載された条件と同一の条件をもって、譲渡希望当事者が譲渡を予定している株式の全部または一部を、自らが指定した第三者をして買い取る権利(以下「先買権」という)を有するものとする。
(3) A社およびB社は、先買権を行使する場合には、譲渡通知の受領後●日以内(以下「購入通知期日」という)に譲渡希望者に対して、先買権を行使する旨および先買権の行使により取得する株式の数を書面にて通知(以下「購入通知」という)するものとし、購入通知が譲渡希望当事者に到達した時点をもって、譲渡通知に記載の条件にて、購入通知に記載された株式数に係る株式譲渡契約が成立したものとみなされる。
(4) 譲渡通知を受領した当事者が購入通知期日までに購入通知を行わない場合には、譲渡希望当事者は、購入通知期日より●日以内に限り、譲渡通知に記載された条件より譲渡予定社に有利にならない内容で、当該株式を譲渡することができるものとする。
10-7
(B)
10-6の後に以下の規定を追加。(共同売付請求権またはtag along right)の確保。

(1) A社およびB社は、譲渡希望当事者から譲渡通知を受領した場合、譲渡通知に記載された条件と同一の条件で、自己の保有するJV株式のうち、譲渡予定者が譲受けを希望する株式数に、譲渡通知受領時におけるJVの発行済株式総数に占める自らの株式の持株比率に応じて算出される数のJV株式を譲渡予定者に譲渡する権利(以下「共同売付請求権」という)を有するものとする。
(2) A社またはB社が、共同売付請求権を行使する場合には、譲渡通知を受領後●日以内に、譲渡希望当事者に対して共同売付請求権を行使する旨を書面で通知しなければならないものとする。かかる通知がなされた場合、譲渡希望当事者は、共同売付請求権を行使した当事者(以下「共同売付請求権行使当事者」という)と譲渡予定者との間で、株式譲渡契約の締結が行われるよう必要な一切の措置をとるものとし、譲渡予定者が購入する株式の数を増加することに同意しない限り、自らが譲渡予定者に対して条とする株式数だけ減少することにつき、何らの意義も述べないものとする。
10-6
(交渉後)
(1) A社およびB社は、JVの設立後●年間、その保有するJV株式を第三者に譲渡してはならない。ただし、相手方に以下の各号に規定するいずれかの事由が生じた場合にはこの限りではない。
@〜C
(2) A社またはB社(以下「譲渡希望当事者」という)が自己の保有するJV株式を第三者に譲渡しようとする場合には、相手方に対し、譲渡価格、譲渡株式数、譲渡予定者その他当該株式譲渡に係る重要な条件を書面にて通知するものとし(以下「譲渡通知」という)、相手方は譲渡通知に記載された条件と同一の条件をもって、譲渡希望当事者が譲渡を予定している株式の全部または一部を、自らが指定した第三者をして買い取る権利(以下「先買権」という)を有するものとする。
(3) A社およびB社は、先買権を行使する場合には、譲渡通知の受領後●日以内(以下「購入通知期日」という)に譲渡希望者に対して、先買権を行使する旨および先買権の行使により取得する株式の数を書面にて通知(以下「購入通知」という)するものとし、購入通知が譲渡希望当事者に到達した時点をもって、譲渡通知に記載の条件にて、購入通知に記載された株式数に係る株式譲渡契約が成立したものとみなされる。
(4) 譲渡通知を受領した当事者が購入通知期日までに購入通知を行わない場合には、譲渡希望当事者は、購入通知期日より●日以内に限り、譲渡通知に記載された条件より譲渡予定社に有利にならない内容で、当該株式を譲渡することができるものとする。
株式譲渡の承認機関 会社法は株式譲渡の承認機関について定款自治を認めている(会社法139条1項ただし書)⇒定款に定めれば代表取締役を株式譲渡の承認機関とすることもできる。
株式譲渡を制限する趣旨は、会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぐ点にあり、その意味で本来的には株主総会にて譲渡承認決議を行うべき

会社法は原則として承認機関を株主総会としつつ、取締役会設置会社については時間的制約を考慮して取締役会をを承認機関としている。
会社法139条1項ただし書は、株式会社としての決定をどの機関において行うこととするかについて定款自治を認めたもの。
⇒そもそも株式会社としての決定といえないような決め方をすることはできないと解されている。
×監査役や監査役会
×会社の機関以外(外部委員会など)
登記実務上も「株式の譲渡制限に関する規定」としてこれらを承認機関として登記することは認められていない。
一括売渡請求権 説明 共同売付請求権と対比される権利として、合弁契約の当事者が第三者にJV株式を売却する場合において他の当事者の株式も強制的に当該第三者に売却してしまう権利(一括売渡請求権またはdrag along right)が規定されることもある。

一括譲渡により多数株主が譲渡先である第三者との交渉を有利に進める目的。
(多数株主(A社)に有利な規定であり、少数株主(B社)保護を目的とする共同売付請求権(10-7)と対比される。)
but
JVが主力商品である商品に関してB社からライセンスを受けている状況において、B社がJVから離脱することはJVの事業の継続が困難になることを意味する。
⇒A社の譲渡予定者からしても、そのような形でJV株式を希望しない⇒本件事例では問題とならない。
条項 A社またはB社(以下「譲渡希望当事者」という)が[第●条に定める事由が生じたことを理由として]自己の保有するJV株式を第三者に譲渡する場合、譲渡希望当事者は、相手方に対し、その選択により相手方が保有するJV株式もあわせて当該第三者に売り渡すよう請求できるものとする。
先買権等の規定の必要性 B社がA社による株式譲渡に対し、10-3の同意をしない場合、結局株式譲渡は承認されなかったことになる。
会社法の定めにより、JVがA社の株式を自己株買いするか、JV指定の買受人へ譲渡されることになる。
⇒定款に特別の定めがない限り、A社が取締役会の承認決議により買受人を指定すれば、取締役会の多数を占めるA社としては自己の望む者にその保有するJV株式を譲渡できてしまう。(株式譲渡の承認につきB社の同意が必要だとしても、A社が取締役会の多数派を占めている以上、会社の行為としてA社の望む者にJV株式は譲渡されてしまう。)
B社としては、株式譲渡につき同意権(10-3)を有しているだけでは、自己の望まない者にJV株式が譲渡されないようにするうえで不十分。
先買権などの規定(10-6)も同時に規定する必要がある。
■14 相手方が合弁契約に違反した場合等の措置
■14 相手方が合弁契約に違反した場合等の措置 説明 合弁契約違反があった場合は相手方の信用不安などの問題が生じたことで、合弁事業を行ううえで相手方と良好な提携関係が望めない場合、10-4所定の期間内であっても自社の保有するJV株式を売却し、または相手方の保有するJV株式を買い取ることで、提携関係を解消できるようにしておきたい。
⇒提携関係の解消方法について協議。
資金繰りに苦しんでいる⇒A社が保有する株式の買取りを義務づけられることは避けたい。
自らに合弁契約違反等の問題が生じた場合、A社に対して自らの保有するJV株式の買取請求権を付与したとしても、商品Xの知的財産権は自らに帰属しており、かつ、新商品Yの知的財産権も自らがJVから買い取ることができるよう合弁契約上で手当て(8-3)。
⇒買取請求権は大きなリスクにならない。
A社としては、コール・オプションの行使によりJV株式のすべてを保有できたとしても、JVが商品Xおよび新商品Yの知的財産権を引き続き保有できなければ、B社保有のJV株式を取得する意味はない。
⇒プットオプション規定(12-2)を提案。
最終的には12-1と12-2を設け、双方がコール・オプションおよびプット・オプションを保有することに合意。
条項 12-1
(B)
●コールオプション
相手方(以下「違反当事者」といい、もう一方の当事者を「請求当事者」という)に以下の各号に規定する事由が発生した場合、請求当事者は、違反当事者の保有するJV株式の一部または全部を買い取ることを請求することができるものとし、違反当事者は、当該請求に基づいて自己の保有するJV株式を請求当事者に売却するものとする。
@ 本契約のいずれかの条項に違反し、請求当事者が当該違反の是正を書面により求めたにもかかわらず、当該書面到達後●日以内にかかる違反が是正されない場合。
A 支払停止もしくは支払不能の状態に陥った場合または銀行取引停止処分を受けた場合。
B解散もしくは破産手続き開始、会社更生手続開始、民事再生手続開始、特別清算開始もしくはその他の倒産手続開始の申立てがあった場合、または経営が事実上破綻したものと請求当事者が合理的根拠に基づき判断した場合
C・・・・
12-2
(A)
●プットオプション
相手方(以下「違反当事者」といい、もう一方の当事者を「請求当事者」という)に以下の各号に規定する事由が発生した場合、請求当事者は自己の保有するJV株式の一部または全部を違反当事者が買い取ることを請求することができるものとし、違反当事者は、当該請求に基づいて請求当事者が保有するJV株式を買い取るものとする。
@〜C略
オプションの行使価格 非上場会社の株式については、客観的な価格を設定することは難しい。
譲渡制限株式の価格の算定方法は、純資産方式、DCF方式、配当還元方式などがあり、どの算定方式を用いるべきかについて一般的な基準はない。
⇒あらかじめ合弁契約において規定することが望ましい。
資金繰りに苦しむ⇒プット・オプションの行使時の譲渡価格をできだけ安くしたい。
譲渡価格を高くしたい。
12-3Bについては、算定に相当な費用がかかり、既に契約違反状態なのでなるべくシンプルに解決する方法が望ましい。⇒削除を提案。
条項 12-3
(B)
A社またはB社が前二条に規定される権利を行使した場合の1株当たりの譲渡価格は、いずれの権利についても、以下の各号の金額のうち最も安い金額とする。
@JVの直近の監査済貸借対照表に基づくJV株式1株当たりの純資産額
AJV設立時のJV株式の1株当たりの払込金額
BA社およびB社が合意した第三者算定機関が算定したJV株式1株当たりの公正な価格。
12-4
(A)
12-2の後に、2項として、以下の規定を追加

(2) 前項の規定に従って違反当事者が請求当事者の保有するJV株式を買い取る場合の1株当たりの取得価格は、以下の各号のいずれかの金額のうち最も高い金額の120%に相当する価格とする。
@A 略
12-5 コール・オプション(請求当事者が購入)の場合:
12-1の後に、2項として以下の規定を追加。

(2) 前項の規定にしたがって請求当事者が違反当事者の保有するJV株式を買い取る場合の1株当たりの買取価格は、以下の各号のいずれかの金額のうち最も安い金額の80%に相当する価格となる。
@A 略
22-4 プット・オプションの場合(違反当事者が購入):
12-2の後に、2項として12-4を規定。
■15 合弁事業に重大な障害が発生した場合
■15 合弁事業に重大な障害が発生した場合 想定される重大な障害 @JVがもはや回復不可能であることが客観的に明らかなほどの損失を計上した場合(ex.単年度で一定額以上の当期純損失を計上した場合や、純損失が一定額以上となった場合等)
AB社に拒否権が与えられた事項(5-1)についてB社が承認をせず、かつ、A社が承認を求めた日から一定期間を経過しても、A社とB社の協議が成立しない場合(デッドロック)
B第三社がA社またはB社の株式の一定割合を取得することにより、A社またはB社の支配株主に変動があった場合(Change of Control)
CJVの事業に関する法制度の変更など、双方の責めに帰すことのできない客観的要因により、JVの事業の正常な継続が見込めなくなった場合。
A社とB社としては、これらの事項をどのように設定するかということよりも、@〜Cの事態が生じた場合に、どのような措置を講じるかということにより強い関心を寄せることになる。
Aのデッドロックについては、双方の利害が対立する場面において問題となることが多く、合弁契約においてあらかじめその対処法を明記しておくことが望ましい。
B A社からの資金提供により商品X(およびその派生商品である新商品Y)の開発費などを捻出したい⇒デッドロックが生じた場合でも合弁契約をできるだけ存続させたい。
JVにおける重要事項についてB社との協議が整わないような事態が1度でも生じた場合には、その後円滑な事業運営ができなくなる。
JV運営委員が適切な判断を下せるのか疑問。
条項 13-1
(B)
(1) 「デッドロック」とは、第●条各号に規定する事項のいずれかについて、A社がB社に対して承認をしたにもかかわらず当該事項をB社が承認せず、かつ、A社が当該承認を求めた日から●日間を経過しても、B社が当該承認をしない場合をいう。
(2) A社およびB社は、相互の合意に基づき、JVの設立後、速やかに、デッドロックが生じた場合にデッドロックの発生原因となった重要事項について検討するための委員会(「JV委員会」)を1名指名するものとする。なお、JV運営委員はA社またはB社(両者の子会社を含む。以下本項におおいて同じ)の役員または使用人ではなく、過去にA社またあB社の役員または使用人となったことがない者でなければならない。
(3) デッドロックが生じたためにJVの運営が著しく困難であると認められるときは、A社およびB社は、速やかにデッドロックの発生原因となった事項につきJV運営委員にこれを報告し、その決定を求めるものとし、B社は当該決議に従い重要事項について承認または不承認をするものとする。
13-2 13-1の(1)の後に、以下の規定を追加:

(2) デッドロックが生じたためにJVの運営が著しく困難であると認められるときは、A社およびB社の各代表取締役(または各代表取締役が指名する者)が協議し、かかる状態を解決できるよう最善の努力を尽くすものとする。
株式処分に関するその他の方法 合弁解消時の株式処分に関連する方法
●ロシアンルーレット
保有するJV株式の譲渡(処分)を希望するXが、Yに対し一定の条件でJV株式の買取りを申し込み、Yがこれに応じない場合、Xが逆にY保有のJV株式を同じ条件で買い取ることを請求できるXの権利を定めるもの。
@X:X保有のJV株式の買取り申込み(条件提示)
AY:承諾or拒絶
BX:Y拒絶の場合、Y保有のJV株式の買取り請求可(@と同条件)
●バイ・セル
Y保有のJV株式の取得を希望するXが、Yに対し一定の条件でY保有のJV株式の売渡しを申し込み、Yがこれに応じない場合、逆にYに対してX保有のJV株式を同じ条件で取得するよう請求できるXの権利を定めるもの。
@X:Y保有のJV株式の売渡し申込み(条件提示)
AY:承諾or拒絶
BX:Y拒絶の場合、X保有のJV株式の取得請求可(@と同条件)
●セール・シュートアウト
保有するJV株式の譲渡(処分)を希望するXが、Yに対し一定の条件でX保有のJV株式の買取りを申し込み、Yがこれに応じない場合、YにXの提示価格から一定以上の割合で減額した価格を提示してY保有のJV株式を買い取るようXに提案させ(Xがこれに応じない場合)次にXがさらに減額した価格を提示してX保有のJV株式を買い取るようYに提案させるもの。
互いに価格を下げあう仕組み⇒どこかの段階で相手方保有のJV株式を取得したほうがよいというインセンティブが働く。
@X:X保有のJV株式の買取り申込み(条件提示)
AY:承諾or拒絶
BY:Aで拒絶の場合、Y保有のJV株式の買取り提案(@より減額した価格提示)
CX:承諾or拒絶
DX:Cで拒絶の場合、X保有のJV株式の買取り提案(Bより減額した価格提示)
●テキサス・シュートアウト
Yが保有するJV株式の取得を希望するXが、Yに対して買収提案(売渡し申込み)を行った後、Yがこれに応じない場合には高価入札方法に移行し、お互いに譲渡価額を提示し合うもの。
セール・シュートアウトとは逆に、どこかの段階で自己が保有するJV株式を処分したほうがよいというインセンティブが働く。
@X:Y保有のJV株式の売渡し申込み(条件提示)
AY:承諾or拒絶
BYが拒絶の場合、X保有のJV株式につき効果入札方式へ移行(⇒お互いに譲渡価額を提示し合う)
運営委員会への権限移譲の可否 運営委員会がJVの事業運営に関する意思決定を行う場合、JV当事者が当該運営委員会の意思決定に拘束される旨の合弁契約の条項は有効
運営委員会の決定があればJV取締役会の決議を要しないとして取締役会の権限の一部を運営委員会に委譲することが認められるか?会社法362条4項との関係で争い。

有力説:
株主全員が当該権限委譲を認めているのであれば、株主の利益保護に欠けるところはなく有効。

取締役会設置会社においては株主総会の決議事項も法令または定款に規定された事項に限定されている。(会社法295条2項)
⇒多数決にも限界がある。
but
株主全員の同意があるという前提であれば、上記有力説のように考える余地はある。

尚、
株主全員の同意により権限委譲⇒委譲された事項につういてJVの取締役はJVに対し責任を負わない(善管注意義務を免れる)という考えに合理性がある。
会社法 第362条(取締役会の権限等) 

4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除.

会社法 第295条(株主総会の権限) 
株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
■16 契約の終了原因・終了の方法
■16 契約の終了原因・終了の方法 説明 合弁契約終了の方法:
@一方当事者がJVから撤退する方法
AJVを解散する方法
合弁契約が終了した場合には従前どおりB社からライセンスを受ける形で商品Xおよび派生商品の製造・販売を営むことでかまわない。
⇒合弁契約の終了にあたりJVの財産を引き継ぐつもりはない。
合弁契約の終了にあたって自ら保有するJV株式を譲渡して投下資本を可能な限り回収したい。
⇒合弁契約の終了の方法として、@一方当事者の撤退を選択したうえで、合弁契約の終了原因が発生した場合、A社が保有するJV株式の全部をB社に売却できるプット・オプションを設けることを提案。
JVが債務超過状態にある場合、自らの子会社が債務を完済しなかったというレピュテーションリスク(取引先の信用を失うなど)を回避したい。
資金繰りに苦しむB⇒自らがA社の保有するJV株式を買い取ることが強制されるような条項を設けることは避けたい。
本件JVでは、商品Xに対する知的財産権はB社に留保されることとされ、また、JVにおいて開発した新商品Yに関する知財についても合弁終了後はB社が買い取ることができるとされている。

B社としては、A社保有株式を買い取る特段のメリットがない限り、新商品Yに関する知財をJVから買い取ったうえで、JVを解散させることを望む。
条項 14-1
(A)
(1) 以下の各号の事由が生じた場合には、A社はB社に対して、A社が保有するJV株式の一部または全部をB社が買い取ることを請求することができるものとし、B社は、当該請求に基づいてA社が保有するJV株式を買い取るものとする。
@ JVの純損失が●円以上となった場合
A 第●条の規定に従い、A社およびB社の代表取締役がデッドロック状態の解決に努力したにもかかわらず、デッドロック状態が解決されなかった場合
B・・・
(2) 前項の規定にB社がA社が保ゆするJV株式を買い取る場合の1株当たりの買取価格は、以下の各号のいずれかの安い金額とする。
@ JVの直近の監査貸借対照表に基づくJV株式1株当たりの純資産額
A A社およびB社が合意した第三者算定期間が算定したJV株式1株当たりの公正な価格
14-2
(B)
JVは、以下の事由が発生した場合には、解散するものとする。
@存続期間の満了
A破産手続による解散
B解散を命ずる判決
C株主総会における解散決議
DJVの純損失が●円以上となった場合
E第●条の規定に従い、A社およびB社の代表取締役がデッドロック状態の解決に努力したにもかかわらず、デッドロック状態が解決されなかった場合
F・・・
14-3 条項14-2の後に、2項として以下の規定を追加:

JVが解散し、債務超過状態である場合、A社およびB社は、JVの債務超過部分の債務をJV解散時における各々の持株比率に応じて負担するものとする。
■17 合弁契約解消時の処理
■17 合弁契約解消時の処理 処理方法についての規定の仕方 JVの設備や在庫(残余財産)従業員知的財産権、JVと第三者との契約関係の処理等、解決すべき問題が多い。
これらの問題の処理について、少なくとも指針となるべき規定を置いておくことが望ましい。
コール・オプション、プット・オプションによる株式譲渡による解消
⇒資産・負債を考慮して権利行使することとなり、他方当事者の選択により、JVに帰属する資産・負債などの処理も決定。
JVの解散による解消⇒JVに帰属する資産・負債などの処理が問題。
残余財産(設備・在庫等)や損失の分配・負担 会社法 第666条(残余財産の分配の割合)
残余財産の分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。.
残余財産分配割合について定款の定めがない限り出資の価額に応じてこれを定める(会社法666条)。
合弁会社が終了⇒従前通りA社はB社からライセンスを受ける形で商品Xおよび派生商品の製造・販売を営むことでかまわない。
⇒「合弁契約終了後JVの設備・在庫はB社に帰属する。」旨を定める。
株主有限責任⇒株主は出資以外の責任を負わないのが原則。
but
A社としては、レピュテーションリスク(取引先の信用を失うなど)を考慮し、債権放棄等を含め、損失を各株主で負担することとしたい。
⇒14-3のような条項。
従業員の取扱い @A社およびB社からの出向社員
A転籍社員
BJVが新規雇用した従業員
@の場合:
依然として出向元であるA社またはB社が雇用主⇒出向者を出向元に復帰させる。
Aの場合:
A社またはB社との雇用関係は転籍に伴うJVとの雇用契約締結により終了
⇒特段の事情のない限り、A社またはB社と転籍者との間には何らの関係も生じない。
Bの場合、結論はAと同様。
条項 @の場合:
「合弁契約解消後も一定期間出向者をJVに残す」
Aの場合
「JVが●年経過前に解消された場合には、A社およびB社は、JVに転籍させた従業員からの希望があれば、自社の従業員として再雇用する」
「A社およびB社は、JV解消時には、JVに在籍する従業員の処遇につき真摯に協議、協力する」
知財の処理 本件では、商品Xに関する知財はB社に留保。
JVにおいて開発した新商品Yに関する知財についても、JVの終了後はB社が買い取ることができる。
B社の買取価額をいくらにするかについて、A社、B社間の見解の対立が生じることが予想される⇒価格の決定方法や評価する場合の方法などを概略だけでも合意しておくことが望ましい。
条項3-11
秘密情報・競業避止義務 解散後
@A社もB社も競業避止義務は負わず、
AA社は秘密保持義務のみを負い、
BB社はA社の販売網を利用することを禁止。
条項9-4
第三者との権利関係 JV解散に伴い、JVと第三者とで生じていた債権債務関係(リース契約や金銭消費貸借契約など)について、A社またはB社で引き継ぐのか、すべて解除するのかなど、その処理内容をあらかじめ合弁契約で定めておくことが望ましい。
B社は、JVが終了した場合には、新規知的財産権を使用して更なる派生商品の開発および販売事業を展開していきたい⇒基本的には自らがJVと第三者との債権債務関係を引き継ぐことを提案。A社も異存なし。

その旨合弁契約に定め、合弁契約終了に伴い、B社への債権債務関係の承継処理を行うことになる。
付随契約 ex.合弁当事者の一方とJV間の、特許実施や商標使用などに関するライセンス契約、継続的売買契約、販売代理店契約など
〜合弁契約書の別紙として、その契約書フォームを添付し、そのとおりの内容でJVと付随契約を締結する旨合弁当事者間で合意するのが通常。
合弁契約解消時にこれらの付随契約をどのように処理するかについても、あらかじめ合弁契約で定めておくことが望ましい。
基本的には、B社とJVとの間のライセンス契約や継続的売買契約などはB社とA社との間に引き継がれる旨の承継処理等を行うことで合意。
■18 紛争処理条項
■18 紛争処理条項 説明 @裁判により解決する方法
A仲裁により解決する方法
日本企業同士の合弁契約⇒@を選択。
15-1 本契約ならびに本契約に基づきまたはこれに関連して生じる本契約当事者の一切の権利および義務に関する訴訟は、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
外国企業との合弁事業 外国判決の承認・執行要件との関係で、A仲裁による処理のほうが適切といえるケースがある。
合弁契約に関する紛争は、JVの設立準拠法が関係する場合が多い⇒通常はJVの設立準拠法を合弁契約の準拠法とし、管轄地をその準拠法の国とするのが合理的。
■19 チェックリスト
■19 チェックリスト □ 事業体の選択
□ 既存の会社か、新設会社か
□ 出資比率
□ 機関設計
□ 取締役の選解任権
□ その他役員の選解任権、代表役員の選定権
□ 従業員の確保・費用負担
□ 重要事項に関する拒否権
□ 追加の資本提供義務と出資比率の維持との関係
□ 剰余金の配当等
□ 知的財産権の処理
□ 競業避止義務
□ デッドロック時の処理
□ 株式譲渡の方法
□ 合弁契約締結時の処理
□ 紛争処理条項
その他一般条項を除く