シンプラル法律事務所
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著作権判例

百選
T 著作物
       
       
  最高裁H9.7.17   ◆W−27 二次的著作物の範囲(ポパイネクタイ事件:上告審)
  事案 Y1は、1982年5月から「POPEYE」「ポパイ」なる文字を周囲に配した人物像の図柄を配したネクタイを販売。
⇒漫画の著作権をもっているX1が、著作権に基づき、Y1に対し、本件図柄を付したネクタイの販売の差し止め、同人が所有するネクタイアkらの本件図柄の抹消等を求めて、本訴に及ぶ。
Y1は、1929年1月17日の創作時から数えると、日本での保護期間は1930年1月1日を起算日として公表後50年に3794日の戦時加算を加えた1990年5月21日をもって満了したと主張。
  原審 X1の請求を認容。 
  判断 保護期間に関し、期間満了による消滅を認め、差止め、抹消請求に関し、原判決を破棄し、X1の請求を棄却。 
一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。

一話完結形式の連載漫画においては、・・・著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない。
「このような連載漫画については、後続の漫画は、・・・・先行する漫画を原著作物とする二次的著作物と解される。そして、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解する」。「そうすると、・・・後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画に登場する人物と同一と認められる限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるべき」である。
具体的な当てはめとしても、本件図柄は、1990年5月21日に保護期間を満了した第1回作品において表現されているポパイの絵の特徴以外の創作的表現を有しないと認定して、後続作品の著作権を侵害するものとはいえない。
     
       
       
U 著作権の主体   
       
       
       
       
       
       
       
  東京地裁昭和51.5.26    ◆V−60 本質的特徴(1)・・・サザエさん事件 
  事案 Xは、Y(旅客自動車運送業)の行為は、本件漫画から、その登場人物の東部に表現されたキャラクターを再製し、これにより当該漫画の複製権を侵害
⇒損害賠償3,672万円を求めた。
  規定 著作権法 第10条(著作物の例示) 
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
 
  判断 漫画「サザエさん」は・・各登場人物自体の性格が一貫した恒久的なものとして表現されており、さらに特定の日の新聞に掲載された特定の4コマの漫画「サザエさん」はそれ自体として著作権を発生せしめる著作物とみられ得る。 
・・・本件においては、Yの本件行為は、Xが著作権を有する漫画「サザエさん」が長年月にわたって新聞紙上に掲載されて構成された漫画サザエさんの全説明のキャラクターを利用するものであって、結局のところXの著作権を侵害するものというばべき。
漫画その他のキャラクターを商品に使用することを許諾する契約において、その使用料はキャラクターが使用される商品の販売価格の少なくとも3パーセントを下らない額で定められているのが業界の慣行。
Yの本件行為の場合は観光バスによる通行収入が右商品の販売価格に相当するものと解されているから、右認定の事実に基づき、本件頭部画が描かれた観光バスによる通行収入の3パーセントに当たる額を、本件頭部画についての通常受けるべき金銭の額であると認めるのが相当。
  解説  キャラクターの商品化を
@著作物の複製とみるのか、A意匠の実施、さらにはB不正競争該当行為とみるのかによって、法的保護の理論構成が異なる。
アメリカの判例は、以前から著作権法によってこれを保護してきている。
   ● 漫画は絵画に属する⇒美術の著作物とされている(法10条1項4号)。 
キャラクターは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現ではない⇒思想または感情を創作的に表現したものとはいえないのであり、キャラクターそのものの著作物性は否定すべき。
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本判決はこの点について、著作物であるか否かについては言及せず、端的に漫画のキャラクターを利用するYの行為は、Xの著作権を侵害すると判示。
  複製は原著作物の全部の複製を必要とせず本質的部分の再製で足りると考えられる⇒本件サザエさん等の頭部画は原著作物の複製だえるといえる。 
著作物の複製とは既存の著作物に依拠しその内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することで十分であると解すべき(最高裁昭和53.9.7)。
⇒原著作物の特定の画面を特定する必要はない。
but
著作権の侵害があるというためには、連載漫画のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならないという判断もある(最高裁H9.7.17)。
サザエさん等の登場人物を人形などのかたちで立体的に描き出した場合に原著作物の複製になるか?
著作権法2条1項15号にいう「その他の方法により有形的に再製すること」にあたり複製になると考えられる。