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著作権法(中山信弘)

著作権法(中山)
★第1章 著作物(著作権の主体)  
   
     
  ◆第7節 特殊な問題 
  ■(1) 概念
□  キャラクター:小説や漫画等に登場する架空の人物や動物等の姿態、容姿、名称、役柄等の総体を指し、小説や漫画等の具体的表現から昇華した抽象的なイメージ。
キャラクターそのものはアイデアレベルの存在であり、具体的な表現を保護する著作権法では保護されない。
キャラクターを商品に使用する権利は一般に「商品化権」とも呼ばれているが、法律上、商品化権という物的な権利は規定されておらず、物権法定主義から、解釈でそのような権利を認めることもできない。
「商品化権」とは、具体的には、著作権法、商標法、不正競争防止法等で保護されているものの総称。
著作権法における保護⇒保護されるのは具体的な表現であり、小説の主人公のキャラクターのように抽象的なものが問題となることは少ない。
他人の小説の続編を無断で執筆⇒当然に主人公等の氏名、性格、役柄等を使用することになり、小説のキャラクターの典型的な使用例といえる。
but
原作小説の具体的表現を模倣していない限り著作権侵害とはならない。
  ■(2)キャラクター保護の意味
漫画やアニメ等に登場する人物については、それをキャラクターと呼ぶか否かは別として、漫画として著作権が発生。
  ■(3) 著作権によるキャラクター保護
キャラクターであるからという理由で翻案以上の保護を与える理由はない。
サザエさん判決については、漫画サザエさんにアクセスして同一あるいは類似の絵をバスに描いたものであることが明らかであるならば、膨大な量の漫画のどのコマに依拠したかという立証までは必要がないと述べたものと理解すべき。
最近の判例では、キャラクターを正確に定義し、著作権法で保護できる限界を明らかにした上で議論が進められており、このことはポパイネクタイ上告審においても確認されている。
     
     
     
     
★第2章 著作権の主体(p191)  
  ◆第1節 総説 
  ◆第2説 著作者=創作者 
  ◇1.著作者の認定 
    著作権法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者をいう。
    著作物とは、思想または感情の創作的な表現(2条1項1号)
⇒創作者とは創作的な表現の創出に実質的に関与した者。
  ◇2.共同著作者 
    著作権法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
  ◇3.著作者の推定(14条) 
    著作権法 第14条(著作者の推定) 
著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。
  ◇4.例外(特別な考慮を必要とするもの) 
  ■(1) 総説
  ■(2) 職務著作(15条) 
    著作権法 第15条(職務上作成する著作物の著作者)
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
  □(ア) 旧法 
  □(イ) 職務著作制度の意義 
    特許法における発明:
全て作業者に原始的に帰属し、使用者は一定の条件の下に従業員の権利を承継取得するという構成(特許法35条)
but
著作権法は一定の要件の下に法人等の使用者を著作者としており(15条)、著作者人格権を含めてすべての権利が原始的に使用者に帰属し、補償もない。

@今日の著作物の創作の実態からすれば、法人等の活動として著作行為がなされるものと解することを適当する事例も多いと認められ・・一定の要件の下に創作された著作物に限定して法人等を著作者とする他は、特に法で規定せずに契約に委ねることにした。
A特許権は登録主義⇒発明者・権利者は登録から判明but
著作権の場合は創作主義⇒著作物を利用しようとする第三者にとって権利の発生やその淵源の探索が非常に困難⇒外部から見て誰が創作者であるのかが判りやすい制度が好ましい。
B15条は、著作物の利用・流通に力点を置いた規定。
C著作物の財としての性格⇒著作物に関する権利の集中化のシステムが必要。
D15条は、契約で処理することが困難な著作者人格権を使用者に帰属させる、少なくとも従業者には行使させないという点に意味。
  □(ウ) 要件
  ●総説
    @使用者の発意
A使用者の業務に従事する者
B職務上作成されたもの
C使用者の名義
D契約、勤務規則その他に別段の定めがない

使用者を著作者とする職務著作の成立を認めている。
  ●使用者の発意
    創作することについての意思決定が直接または間接に法人等の判断により行われる
  ●使用者の業務に従事する者 
  ●職務上作成されたもの 
  ●使用者の名義
    使用者の名義の下に「公表するもの」
未公表のものでも、公表するとすれば使用者の名義で「公表するであろうもの」も含まれる。
     
     
     
  ■(3) 映画の著作物 
    著作権法 第16条(映画の著作物の著作者)
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。
     
     
     
     
     
★第3章 著作権の内容(p239)  
     
  ◆第1節 保護範囲の一般論
    所有物の対象である物(民法85条)の利用形態は比較的単純⇒所有権の内容としては、その所有物を自由に使用・収益・処分できると規定しておけばほぼ十分。
but
著作権の対象である情報は、その利用形態が多様であるため外延が不明確⇒権利行使できる範囲は必ずしも一義的には決まらない。
    特許権の場合は1つの権利として構成され、その内容は特許発明を業として実施する権利の専有とされており、実施については別途定義。
but
著作権については、1つの権利ではなく、著作物の利用形態に応じて、複製をはじめとした支分権の束として規定。
  21条〜26条の3:著作物をそのままの形で利用する権利
27条:著作物の利用形態とは関係なく、著作物について改変(翻訳・翻案)する権利
その改変された著作物を利用するときは28条の問題。
28条:できあがった二次的著作物について原著作物の著作者が有する権利についての規定。
113条で侵害とみなす行為が規定されており、権利行使し得る範囲は支分権より拡張されている。
     
   ◆第2説 著作権と所有権
     
  ◆第3節 支分権
  ◇1 複製権(21条)
  ◇2 上演権・演奏兼(22条)
  ◇3 上映権(22条の2)
  ◇4 公衆送信権(23条1項)・公衆伝達権(23条2項)
  ◇5 口述権(24条)
  ◇6 展示権(25条) 
  ◇7 頒布権(26条)
  ◇8 譲渡権(26条の2) 
  ◇9 貸与権(26条の3) 
  ◇10 翻訳権・翻案権(27条)
    著作権法 第二七条(翻訳権、翻案権等)
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
    21条より26条の3:著作物をそのままの形で「利用する権利」を規定
27条:著作物を改変して新たな著作物を「創作する権利」についての規定。
    27条:著作者は二次的著作物を捜査すする権利を専有
28条:その改変されたものについてのその利用について規定
     
  ◇11 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)
    著作権法 第二八条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
     
  ◆第4節 著作権の制限
     
★第4章 取引の対象としての著作権  
  ◆第1節 権利の移転(61条) 
  ◇1.総説
     
  ◇2.一部譲渡(61条1項)
     第61条(著作権の譲渡) 
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
  ◇3.翻案権等が特掲されていない場合(61条2項)
     
  ◇4.予想できない新たな利用方法 
     
     
     
     
★第5章 著作権の発生・消滅と保護期間  
  ◆第1節 保護期間の考え方 
     
  ◆第2節 保護期間(51条以下) 
    著作権の保護期間:
創作の時に始まり(51条1項)、原則として創作者の死後50年経過するまで存続(51条2項)。
共同著作物:
共同著作者の最後に死亡した著作者の死後50年で消滅(51条2項)。 
     
     
     
     
★第6章 著作者人格権(p467)
  ◆第1節 著作者人格権総論
  ◇1.総説 
    著作者が自己の著作物につき有している人格的利益を対象とした権利。
@公表権(18条)
A氏名表示権(19条)
B同一性保持権(20条)
C名誉・声望を害する方法での著作物の利用されない権利(113条6項)
  ◇2.著作者人格権の放棄(p472)
  ■(1) 放棄の経済的意味 
  ■(2) 放棄の態様に応じた考察
  □公表権と氏名表示権 
    事前の契約で処理することは可能。
  □同一性保持権 
    我が国著作権法の同一性保持権が名誉・声望を超えた部分を(著作権法が特に認めた人格権)まで包含⇒その超えた部分については放棄を認めるべき。
    名誉・声望を害するような態様での著作者人格権(特に同一性保持権)については、原則として「事前」の放棄を認めるべきではない。
  ◇3.法人の人格権 
     
  ◇4.私的領域と著作者人格権 
     
     
     
     
     
  ◆第2節 公表権(18条)
     
  ◆第3節 氏名表示権(19条) 
     
  ◆第4節 同一性保持権(20条) 
     
  ◆第5節 その他の著作者人格権
     
  ◆第6節 共同著作の場合の著作者人格権(64条、117条) 
     
  ◆第7節 著作者が存しなくなった後の人格的利益の保護 
     
     
★第7章 著作隣接権  
  ◆第1節 序説(@537)
  ◇1 総説 
  規定 著作権法 第89条(著作隣接権)
実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
2 レコード製作者は、第九十六条、第九十六条の二、第九十七条の二第一項及び第九十七条の三第一項に規定する権利並びに第九十七条第一項に規定する二次使用料及び第九十七条の三第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。
3 放送事業者は、第九十八条から第百条までに規定する権利を享有する。
4 有線放送事業者は、第百条の二から第百条の五までに規定する権利を享有する。
5 前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
6 第一項から第四項までの権利(実演家人格権並びに第一項及び第二項の報酬及び二次使用料を受ける権利を除く。)は、著作隣接権という。
著作権法 第90条(著作者の権利と著作隣接権との関係)
この章の規定は、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならない。
   
  ◇2 歴史的経緯 
     
  ◇3 著作隣接権保護の根拠 
    情報の伝達者の中で、保護をしないと業として成立が危ぶまれるものにつき特別な権利を与え、インセンティブを与えている。
     
  ◇4 著作隣接権の発生と保護期間 
    著作権と同様、著作隣接権・二次使用料請求権・報酬請求権は無方式主義が採用。
実演・発行・放送と同時に発生する。(89条5項)
保護期間:
平成3年改正で50年に。
     
  ◆第2節 実演家の権利 
  ◇1 総説 
  ■(1) 実演の意味
   
  ■(2) 実演を保護する理由 
A:機械的(技術的)失業対策
←レコード産業や

〇B:放送やレコードでの実演の利用により生じた利益の一部を実演家・レコード製作者との間で分配するところに意味がある。
  ■(3) ワンチャンス主義 
    原則として、実演の足書の利用許諾の際に一括してそれ以降の利用の対価を回収し、その後の利用の利益の分配に関しては、最初の契約で処理させ、かつ複数の種類の著作隣接権者が存在する場合には、1人に権利の管理を集中させ、その他の者はその管理者との契約を通して利益を確保するような制度設計となっている。

権利関係が錯綜し、利用・流通の訴外要因となることを防止するため。

可能な限り契約で処理し、その契約で最初に居隠した目的外での利用を防ぐ制度であるという考え方で整理されており、この考え方をワンチャンス主義という。
but
多くの例外もあり、2度目以降の利用であっても、その利用から得られる利益の配分が妥当と考えられる場合には対価徴収権とされているものもあり、全体として複雑な規定。
    著作隣接権は契約で対処できない利用形態を規制すれば足りるという理念でできている。
⇒実演家が生演奏で公衆に実演を伝達する点については規定がない。

生演奏に際し、実演者は興行者との契約によりその利益を確保することができ、それで十分であり、敢て生演奏を著作隣接権として規定する必要はない。
but
実演を録音・録画し、それを放送することやレコードを製作することについては、実演家に著作隣接権を与えて保護している。
  ◇2.保護を受ける実演(7条) 
  ◇3.実演家の権利の内容 
  ■(1) 録音権・録画権(91条) 
  □(ア) 録音・録画権の内容
    著作権法 第91条(録音権及び録画権)
実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。
第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
    〜実演を固定した物(フィルムやCD)や放送から録音・録画する行為も本条にいう録音・録画に含まれる。
    私的使用目的のための複製⇒著作権の場合の規定(30条)が準用(102条1項)
実演家にもデジタル録音・録画の補償金請求権が認められている。(104条の2第1項)
  □(イ) 映画実演(91条2項) 
  □(ウ) 放送実演 
実演家が放送に出捐することを許諾しただけでは、別段の定めがない限り、録音・録画の許諾まで含むものではない。(103条で63条4項を準用)
実演の放送について許諾を得た放送事業者はその実演の放送のための録音・録画はできるが、異なる内容の番組に使用する目的で録音・録画はできない。(93条1項)
合法に録音・録画したものを目的外使用・提供⇒録音・録画権侵害となる。(93条2項)
  ■(2) 放送権・有線放送権(92条) 
    著作権法 第92条(放送権及び有線放送権)
実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。
    but
放送事業者・有線放送事業者・レコード製作者との間の調整の必要上、例外が多く定められており、
実際に実演家の放送権・有線放送権が働くのは、
@生実演の放送と
A実演の無許諾録音・録音物の放送・有線放送、及び
Bそれらを受信して行う再放送・最有線放送等にに限られる。

支所に権利行使する際に契約で処理をし、その後の利用には権利は及ばないというワンチャンス主義に基づく制約。
  □放送権・有線放送権を持たない場合
  ●(i) 放送される実演を有線放送する場合 
  ●  ●(ii)@録音・録画兼を有する者の許諾を得て録音・録画されている実演を放送・有線放送する場合(92条2項2号イ) 
  ●  ●(ii)A録音・録画権を有する者の許諾を得て映画に録音・録画されている実演で、サントラ盤レコード等以外の物に録音・録画されているものを放送・有線放送する場合(92条2項2号ロ) 
  ●(iii) 実演について権利を有する者がその放送につき許諾したときは、放送事業者はその実演を放送のために録音・録画することができる(93条1項)
  ●  ●(iv) 放送のための固定物等による放送(94条) 
   
  ■(3) 送信可能化権(92条の2) 
    著作権法 第92条の2(送信可能化権)
実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。
    実演家の放送可能化権:送信行為そのものではなく、その前段階である送信可能化につき与えられる許諾権 
  □例外規定(92条の2第2項)
←一度権利を行使すれば、その後の利用には権利は及ばないというワンチャンス主義に基づく制限
  ●(i) 録画権を有する者の許諾を得て録画されている実演(92条の2第2項1号)
  ●  ●(ii) 映画の著作物に収録されている実演で、91条2項の録音物(サントラ盤レコード等)以外の物に録音・録画されているもの(92条の2第2項2号) 
     
  ■(4) 譲渡権(95条の2)
    著作権法 第95条の2(譲渡権)
実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
     
  ■(5) 貸与権等(95条の3) 
    著作権法 第95条の3(貸与権等)
実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。
    実演家は、その実演が録音されている商業用レコードの貸与による公衆に提供する権利を専有するが、営利を目的とせず、かつ料金を受けない場合には、自由に貸与できる(102条1項で38条4項が準用されている)。
    著作権者の貸与権は全ての著作物に及ぶのに対し、
実演家の貸与権の範囲は商業用レコード(2条1項7号)だけであり、映画(ビデオ)やブロマイド等には及ばない。

映画の著作物に録音・録画された実演は原則として実演家の権利が及ばないこと(91条2項)と平仄を合わせた。
     
  ■(6) 商業用レコードの二次使用
     
     
  ■(7) 裁定制度 
     
  ◇4.実演家の人格権 
  ■(1) 総説 
  ■(2) 実演家の人格権の内容
  □(ア) 氏名表示権(90条の2) 
    著作権法 第90条の2(氏名表示権)
実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有する。
2 実演を利用する者は、その実演家の別段の意思表示がない限り、その実演につき既に実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示することができる。
    グループ名は、「その他氏名に代えて用いられるもの」には該当しない。

@実演家人格権には職務著作類似の規定(15条)はなく
A実演家人格権の主体は自然人に限定されており
Bグループ(団体)は人格権の主体たり得ない
    著作権の氏名表示権:
@創作者であることを主張する利益を害するおそれがなく、かつ
A公正な慣行に反しない限り
という厳格な要件の下に例外的に氏名表示の省略ができる。(19条3項)
実演家の場合:
実演の円滑な利用のため、
@「実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき」(ex.バックグランド・ミュージックとして利用)、または
A「公正な慣行に反しないと認められるとき」(ex.映画のエキストラ名の省略)
(90条の2第3項)

著作者と比較すると実演家の場合には、現実問題として氏名表示を省略せざるを得ない場合が多い。
    提供:有形的な伝達(ex.書籍・CDの販売)
提示:著作物の無形的な伝達(ex.放送)
  □(イ) 同一性保持権j(90条の3) 
    著作権法 第90条の3(同一性保持権)
実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2 前項の規定は、実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は公正な慣行に反しないと認められる改変については、適用しない。
    著作者の同一性保持権:
「意に反する」改変を禁じ、例外として「やむを得ない改変」が規定される。
実演家の同一性保持権:
@「名誉又は声望を害する」改変を禁じ、
A例外として「実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は公正な慣行に反しないと認められる改変」が規定されている。

     
  □(ウ) 実演家の死後の人格権(101条の3) 
     
     
     
     
     
     
     
     
   
  ◆第3節 レコード制作者の権利
     
  ◆第4節 放送事業者・有線放送事業者の権利
     
  ◆第5節 取引の対象としての隣接著作権
     
     
★第8章 侵害と救済