シンプラル法律事務所
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行政法概説T(宇賀克也) | ||
★第1部 行政法の基礎理論 | ||
序章 行政法の特色 | ||
★第1章 行政法の法源 | ||
★第2章 行政法の効力 | ||
★第3章 法律による行政の原理 (p30) | ||
◆ | ◆1 法治主義と法律による行政の原理 | |
国民の権利利益の保護のため、行政の主要な部分が国民代表からなる議会の制定した法律によって行われ、行政機関の行為の適法性を審査する独立の裁判所によって行政の司法統制が行われる(「近代行政救済法の原理」といわれることがある)のが、法治主義の要請。 | ||
◆ | ◆2 法律による行政の原理の内容 | |
◇ | ◇(1) 「法律優位」の原則 | |
◇ | ◇(2) 「法律の留保」の原則 | |
■ | ■1) 意義 | |
「法律の留保」の原則は、ある種の行政活動を行う場合に、事前に法律でその根拠が規定されていなければならないとするもの。 | ||
〜 国会を国の唯一の立法機関を定めた日本国憲法41条の趣旨を具体化したもの(租税法律主義を定める憲法30条・84条は、「法律の留保」の原則を具体的に規定したもの)とみることができ、国会のみが規律することのできる事項を画定し、国会と行政府との機能分担を明確にしようとするもので、権力分立の原則を基礎としている。 |
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第四一条[国会の地位、立法権] 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 |
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他方で、「法律の留保」の原則は、一定の行政活動について、国民代表からなる国会の事前承認を義務付けることによって、国民の権利自由を保護するという自由主義の思想に基づいている。 | ||
■ | ■2) 「法律の留保」にいう法律の意味 | |
□ | □ 法律の主要3類型 | |
組織規範: | ||
根拠規範:組織規範が定める所掌事務の範囲内において、行政機関の具体的な活動を議会が事前承認し、その実体的要件・効果を定めたもの | ||
規制規範:行政作用のあり方を規制する規範。 | ||
たとえば総務大臣が免許申請を処理する場合、行政手続法2章の「申請に対する処分」の規定の適用を受けるため、総務大臣は、免許の審査基準を作成して公にしたり(5条)、拒否処分をする場合には理由を提示したりす(8条)手続的義務を負うことになるが、この行政手続き法は、具体的な行政活動を行う権限を付与するものではなく、行政活動を行う権限があることを前提として、その権限を行使する場合の手続を定めたもので、手続規範としての性格を持つ。 | ||
・・・ | ||
根拠規範と規制規範は、行政主体と国民の関係を規律するもの⇒外部法。 | ||
□ | □ 「法律の留保」と根拠規定 | |
「法律の留保」の原則のもとで要求されるのは、以上のうち根拠規範。 | ||
■ | ■3) 「法律の留保」の及ぶ範囲 | |
□ | □立法事実説 | |
□ | □侵害留保説(立法実務を支配) | |
国民に義務を課したり、国民の権利を制限する侵害的な行政作用については、法律の根拠が必要であるが、そうでないものは法律の根拠を要しない。 | ||
vs. 法律で租税を課すこととされている場合にその例外を定める租税優遇措置を設ける場合には法律の根拠が必要となるのに対して、それと同じ経済効果を持つ補助金の支給が、侵害留保説のもとでは法律の根拠を要しないことになること等に疑問が提起されている。 |
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□ | □全部留保説 | |
日本国憲法の民主主義の理念⇒すべての行政活動には、国民代表機関である国会の事前承認が必要。 | ||
□ | □社会留保説 | |
給付行政にも「法律の留保」を拡張すべき | ||
□ | □権力留保説 | |
権力的な行政活動、すなわち、国民の同意の有無にかかわらず行政庁が一方的に国民の権利義務を変動させる活動には「法律の留保」が及ぶべき。 | ||
vs. 国民の同意の有無にかかわる行政庁が一方的に国民の権利義務を変動させるという意味での「権力」は、法律以前に存在し得ない⇒循環論法にならないか? 権力的行為形式を用いるか否かは、根拠規範に限られず規制規範についても存在する問題⇒権力留保説は、ある活動を行いうるかという問題の回答にならないのではないか。 |
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□ | □重要事項留保説(本質性理論) | |
自由主義の観点⇒ 侵害留保説を拡張し、制裁的氏名公表のように、権利を制限したり義務を課したりするわけではないが国民に重大な不利益を及ぼしうるものについても法律の根拠を要請 |
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民主主義や国会審議の公開性の観点⇒ 行政組織の基本的枠組みや、基本的な政策・計画、重要な補助金等について法律の留保が必要 |
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■ | ■4)「法律の留保」の規律密度 | |
「法理の留保」が行政活動について国民に予測可能性与えるとともに、国民代表議会の統制により国民の権利利益を保護する機能を果たすことを意図 ⇒その目的を達するのに必要な詳細さ(規律密度)で規律することが求められる。 |
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〇 | 旭川地裁H10.4.21(判時1641): 旭川市国民健康保険条例が、賦課総額の確定を賦課権利者に委ねた点において、賦課要件条例主義・賦課要件明確主義に違反し、憲法92条・84条、国民健康保険法81条(「この章に規定するもののほか、賦課額、料率、納期、減額賦課その他保険料の賦課及び徴収等に関する事項は、政令で定める基準に従って条例又は規約で定める」)に違反。 |
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〇 | 控訴審(札幌高裁:判時1723): 国民健康保険料については租税法律(条例)主義は直接には適用されず、その趣旨を踏まえる必要があるにとどまる⇒第一審判決を取り消し。 |
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〇 | 上告審(最高裁H18.3.1): 市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するもの。 ⇒憲法84条の趣旨が及ぶと解すべき。 but 保険料の使途は、国民健康保険事業に要する費用に限定されているのであって、国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは、賦課徴収の強制の度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要がある。 |
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本件条例は、保険料算定の基礎となる賦課総額の算定基準を明確に規定したうえで、その算定に必要な費用および収入の各見込額ならびに予定収納率の推計に関する専門的および技術的な細目にかかわる事項を、市長の合理的な選択にゆだねたものであり、 上記見込額等の推計については、国民健康保険事業特別会計の予算および決算の審議を通じて議会による民主的統制が及ぶと認定。 ⇒ 本件条例が、市長に対し、条例が定める賦課総額の算定基準に基づいて保険料率を決定し、決定した保険料率を告示の方式により公示することを委任したことをもって、国民健康保険法81条に違反するということはできず、また、憲法84条の趣旨に反するということもできない。 |
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〇 | 憲法 第八四条[課税の要件] あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 |
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〇 | 地方公共団体が行う事務(とりわけ自治事務)については、法律の規律密度を高めることは、地方分権との関係で問題が生じうるために、国の法令等による規律密度を低下させる動きがあることにも留意する必要がある。 | |
■ | ■5)義務履行確保の段階における「法律の留保」 | |
■ | ■6)「法律の留保」の例外 | |
□ | □部分社会論 | |
一般市民とは異なる特殊な部分社会においては、その自律性を尊重し、根拠規範なしに当該社会の秩序を維持し、運営するための包括的権能を承認し、かつ、部分社会内部の紛争については、それが一般市民法秩序と直接に関係しない限り、その自律的解決に委ね、司法審査も及ばないとするもので、(自律的)部分社会論と呼ばれる。 | ||
大学 | ||
地方議会議員 | ||
部分社会論の適用が認められる領域においても法律で規定することができないわけではなく、法律の規定がある場合には、法律の優位の原則が妥当する。 | ||
□ | □緊急措置 | |
□ | □行政裁量 | |
■ | ■7)組織規範、規制規範による行政統制 | |
★第4章 行政法の一般原則 | ||
★第5章 行政法と民事法 | ||
★第6章 行政過程における私人 | ||
★第2部 行政活動における法的仕組み | ||
☆第7章 行政活動の類型 | ||
◆ | ◆規制行政・給付行政・行政資源取得行政(調達行政) | |
規制行政: 土地利用規制、営業規制のように、私人の権利自由に対して制限を加える行政活動であり、それ自体が直接に公益の実現に寄与するもの。 その中には、 権利を制限したり義務を課したりする法的行為もあれば、 身体の自由を制限したり財産を破壊したりする事実行為もある。 |
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給付行政 | ||
行政資源取得行政(調達行政) | ||
☆第8章 規制行政における主要な法的仕組み | ||
◆ | ◆1 許可制 | |
◆ | ◆2 認可制 | |
◆ | ◆3 許認可等に共通する事項 | |
◆ | ◆4 届出制 | |
◆ | ◆5 下命制・禁止制 | |
◆ | ◆6 行政機関による法令適用事前確認手続 ・・・日本版ノーアクションレター制度 |
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◆ | ◆7 グレーゾーン解消制度 | |
◆ | ◆8 即時強制 | |
◇ | ◇意義と沿革 | |
義務を命ずる暇のない緊急事態や、反則調査や泥酔者保護のように義務を命ずることによっては目的を達成し難い場合に、相手方の義務の存在を前提とせずに、行政機関が直接に身体または財産に実力を行使して行政上望ましい状態を実現する作用。 | ||
事実行為であるが、私人の権利自由に対して制限を加える行政活動という規制の定義に該当。 | ||
戦後、行政執行法が廃止された際、即時強制は大幅に制限された形で、警察官職務執行法等に継承。 | ||
行政執行法における保護検束(泥酔者の保護)および予防検束(公安を害するおそれのある者の検束)のうち、特に濫用された予防検束は廃止され、保護検束については、検束という用語は用いず、要件を厳格化した(警察官職務執行法3条)。 | ||
警察官職務執行法の保護(3条)、避難等の措置(4条)、犯罪の予防および制止(5条)、立入(6条1項)、武器の使用(7条)は、即時強制の性格を持つ。 海上保安官(補)の武器の使用(海上保安庁法20条1項)、自衛官の武器の使用等(・・・)について、警察官職務執行法の規定が準用されている。 |
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◇ | ◇即時強制を認めたものか明確位でない例 | |
鉄道営業法42条1項3号は、鉄道地内にみだりに立ち入る罪を犯した者に対して、鉄道係員が旅客および公衆を車外または鉄道地外に退去させることができると規定。 最高裁S48.4.25:即時時強制を認めたものであることを肯定。but6名の裁判官が反対意見。 最高裁昭和50.11.21も参照。 |
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◇ | ◇根拠規定 | |
◇ | ◇手続的保障(p120) | |
即時強制は、事実上の行為⇒行手法2条4号イにより、行手法の不利益処分の定義に該当しないことになり、同法3章の不利益処分の手続が適用されない。 but 個別の法律で手続保障が十分でないものが稀でない。 実際には、即時強制という名称にもかかわらず、事前手続も全くとれないほど緊急の場合にのみこの制度が用いられているわけではない。 |
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即時強制は、行政機関が義務を課す行為が前置されていない⇒手続的保障という面で大きな問題。 | ||
児童福祉法において、 児童相談所長は、必要があると認めるときは、児童の一時保護を行うことができ(同法33条1項)、 都道府県知事は、必要があると認めるときは、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせることができる(同条2項)。 but 引き続き一時保護を行なうことが当該児童の親権を行う者または未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長または都道府県知事が引き続き一時保護を行なおうとするとき、および引き続き一時保護を行なった後2か月を超えて引き続き一時保護を行なうとするときごとに、 児童相談所長または都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない(同条5項本文)。 〜 即時強制における手続的配慮の例。 |
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◆ | ◆9 私人の防御的地位 | |
◆ | ◆10 規制請求権 | |
☆第9章 給付行政における主要な法的仕組み | ||
★第3部 行政情報の収集・管理・利用 | ||
★第4部 行政上の義務の実効性確保 | ||
★第5部 行政の行為形式 | ||
★第6部 行政手続 | ||
☆第22章 行政手続法 | ||
◆ | ◆1 行政手続法の制定 | |
◇ | ◇(1) 行政手続の意味 | |
行政手続き:通常、行政機関が行政作用を行うときの事前手続 | ||
◇ | ◇(2) 事前手続の必要性 | |
戦前:違法または不当な行政作用が行われた場合の私人の救済は、事後的になされれば足りる but |
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● | ●事後的救済のみでは限界: | |
行政上の不服申立ては、一般的にし、処分庁もしくは不作為庁またはその上級行政庁による審査請求⇒裁判所のような中立性を期待することは困難。 (もっとも、2014(平成26)年の行政不服審査法改正では、原処分に関与していない審理員による審査手続、行政不服審査会等への諮問制度により、行政不服審査制度の中立性の向上は図られている)。 行政上の不服申立ては、訴訟と比較すれば簡易迅速であるとはいえ、一般の私人にとっては、なお相当にフォーマルな手続であり、気楽に利用できるものとは必ずしもいえない。 よりインフォーマルな苦情処理制度も存在するが、法的拘束力を伴わない点に限界がある。 訴訟は、通常、弁護士に依頼せざるを得ず、相当の費用がかかるし、また、一般的に相当の時間がかかる。 訴訟においては違法か否かの問題に審査が限定され、裁量権の行使が違法ではなくても不当かという問題は審査の対象とはならない。 |
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行政処分が行われても、行政訴訟によって争われうる、または現実的争われている間は、当該行政処分の効力が発生しないという仕組みが採用されているのであれば、行政上の不服申立や行政訴訟の制度による救済の実行力は高まり、それだけ事前手続整備の必要性も減少。 but 我が国では、個別の法律に特段の定めがない限り、行政処分は相手方に到達したときに効力が生ずるという原則。 ⇒不服申立期間(行政不服審査法18条、54条、62条)や出訴期間(行政事件訴訟法14条)を経過しなくても、当該処分は発効し、それが不利益処分であれば、直ちに権利制限や義務賦課の効果が発生(行政処分即時発効原則)。 |
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行政処分の不服申立てや取消訴訟が提起された場合に、仮の救済としての執行停止制度が存在(行政不服審査法25条・61条・66条、行政事件訴訟法25条) but 執行不停止原則(行政不服審査法25条1項、行政事件訴訟法25条1項)⇒執行停止の要件はかなり厳格。 実際にも、執行停止の申立てが認容されることは多くない。 執行停止が認められない⇒当該処分が違法であっても、当該訴訟で最終的な判断がされるまでに期間の経過による訴えの利益が失われたり、既成事実の進行により取消しが公共の福祉に適合しないとして請求を棄却する事情裁決(行政不服審査法45条3項)や事情判決(行政事件訴訟法31条)がなされたりする可能性が生ずるし、本案で勝訴してとしても、それまで不利益な状態が継続 〜 行政処分即時発効原則と執行不停止原則⇒行政訴訟の実効性を減少させている。 ⇒ 事前手続を整備することによって、そもそも違法または不当な行政処分がなされることを防止する必要性が高い。 |
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・・・・・ | ||
◆ | ◆2 行政手続法の内容 | |
◇ | ◇(4) 申請に対する処分(p453) | |
■ | ■4) 理由の提示(p460) | |
□ | □意義 | |
□ | □理由の提示の程度と機能 | |
行手法8条の理由の提示 ← 拒否事由の有無についての行政庁の判断の慎重と公正・妥当を担保して恣意を抑制するとともに、 許否理由を申請者に明らかにすることによって透明性の向上を図り不服申立てに便宜を与える趣旨にでたもの。 |
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拒否処分が書面でなされる場合には、いかなる根拠に基づいていかなる法規を適用して許否処分がなされたかを申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならない。 いかなる事実関係についていかなる審査基準を適用したかも、申請者がその記載自体から了知しうる程度に記載すべき。 |
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個別の事情を考慮して例外的に審査基準ンを適用しない場合もありうるが、かかる場合には、その理由を提示することが必要。 理由の提示に不備⇒当該処分は取り消されるべき。 |
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◇ | ◇(5) 届出(p465) | |
◇ | ◇(6) 不利益処分(p467) | |
■ | ||
■ | ■2) 意見陳述の機会の保障 | |
□ | □憲法上の適正手続きの要請(p468) | |
不利益処分を行なうに際しての通知と意見陳述の機会の保障が憲法上要請される。 | ||
根拠規定: A:憲法31条説 B:憲法13条説 C:憲法31条・13条併用説 D:手続的法治国説:行政活動の実体法的な拘束である「法律による行政の原理」が日本国憲法が採用する法治国原理の現れと理解されているように、日本国憲法の法治国原理の手続的理解による適正手続の要請を導く説(塩野等) |
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最高裁H4.7.1(成田新法事件): 憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にと判断することは相当ではない。 |
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不利益処分ではなく、申請に対する処分についても、最高裁H4.10.29。 最高裁H5.3.16は、憲法31条説に立っていると思われる。 最高裁H15.11.27は、、最高裁H4.7.1の憲法31条に関する法理は、行政処分による権利利益の制御の場合に限られるものではなく、広く行政手続における憲法31条の保障に関するものであると判示。 |
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最高裁H4.7.1は、いかなる行政手続に憲法31条の定める法定手続の保障が及ぶかについては、「行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべき」 〜立法に際しての指針としては機能しない抽象的な表現にとどまっていた。 また、憲法31条により事前に意見陳述の機会を付与する場合に、いかなる態様で意見を聴取すべきか、すなわち、書面で意見を陳述させればいいのか、口頭で意見陳述をする機会を与えなければならないのか、口頭で意見を述べさせる場合、公開の場で意見を述べさせなければならないのか等の点についても判示していない。 ⇒ 最高裁H4.7.1を契機として判例法上、意見陳述の機会の保障に関する法理が発展していることはあまり期待できないにように思われた⇒学会を中心として行政手続法の制定が強く求められた一因。 |
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※ | ※コラム:医療観察法に基づく医療審判手続(p470) | |
2003(平成15)年に制定された「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者の医療及び観察等に関する法律」(「医療観察法」)は、 心身喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者に対し、その適切な処置を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療ならびにその確保のために必要な観察および指導を行うことによって、その病状の改善およびjこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする(1条1項)。 |
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最高裁H29.12.18: この目的な正当なものであり、医療観察法は、対象者について、「対象行為を行なった際の精神障害を改善し、これを伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合」には、入院をさせる旨の決定か、または入院によらない医療を受けさせる旨の決定(42条1項1号・2号)をしなければならない等と規定しているところ、このような処遇は上記目的を達成するため必要かつ合理的なものであり、その要件も上記目的に即した合理的で相当なものと認められる。 〜 医療観察法に基づく医療審判を非刑事手続と把握。 行政手続とは明言されていないが、一種の行政手続といえよう。 「裁判所・・・・により・・・される処分」(行政手続法3条1項2号)として行政手続法3章(不利益処分)の手続の適用を除外されるが、人権侵害のおそれのある手続⇒憲法31条の規定により、適正手続が要請される。 |
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医療観察法の審判手続: 裁判所が職権探知を行う手続が採用(24条) 審判期日における審判は非公開(31条3項) 原則として、1人の裁判官および1人の精神保健審判員の合議体で処遇事件を取り扱う(11条1項) 弁護士による付添人の制度(30条) 付添人に意見陳述権や資料提出権(25条2項)、審判期日への出席権(31条6項) 記録または証拠物の閲覧権(32条2項)等。 検察官による申立てにかかる処遇事件の審判においては、付添人を付さなければならず(35条)、審判期日の開催は原則として必要(39条1項)。 審判期日では、対象者に対し、供述を強いられることはないことを説明するなどしたうえで、対象者および付添人から意見を聴かなければならない(同条3項) 対象者および付添人等に抗告権(64条2項)、退院の許可または医療の終了の申立権(50条、55条)が認められている。 |
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最高裁は、これらの手続について、対象者に必要な医療を迅速に実施するとともに、対象者のプライバシーを確保し、円滑な社会復帰を図るため、適正かつ合理的なものと評価。 憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、当該手続が刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではなく、その保障のあり方については、刑事手続との差異を考慮し、当該手続の性質等に応じて個別に考えるべきであるところ、上記のとおり、医療観察法においては、その性質等に応じた手続保障が十分なされているものと認められる。・ ⇒ その必要性、合理性、相当性、手続保障の内容等に鑑みれば、医療観察法による処遇制度は、憲法14条、22条1項に違反するものではなく、憲法31条の法意に反するものということもできない。 |
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□ | □「聴聞」と「弁明の機会の付与」 | |
※ | ※コラム:金融商品取引法に基づく外務員登録取消処分 | |
金商法64条の5第1項の規定に基づき外務員登録の取消しがされる場合には、外務員個人ではなく、外務員を雇用する金融商品取引業者等が名あて人となり、聴聞(同条2項)も金融商品取引業者等も当事者として行われる。 東京地裁H25.2.19、東京高裁H25.9.12は、登録取消しの対象となる外務員に対する実質的な聴聞の機会が全く保障されなかった事案において、聴聞手続の当事者が外務員個人ではなく、外務員を雇用する金融商品取引業者等であることから、手続的瑕疵はないとする。 vs. 金融商品取引業者等は、外務員の登録を登録を受けた者以外の者に外務員職務を行わせてはならず(同法64条2項)、外務員の登録を取り消された者でその取消しの日から5年を経過しない者については外務員登録を拒否しなければならない(同法64条の2第1項1号)⇒当該外務員にとっては、当該金融商品取引業者等から実質的に解雇され、また、5年間は他の金融商品取引業者等においても外務員として活動できないことを意味する。 ⇒ 聴聞手続の実質的名あて人は、登録取消しの対象となる外務員とみるべき。 形式的には行政手続ほう13条1項1号ハの文言には該当しないものの、この規定および同法28条の規定を類推適用して、金融商品取引業者等に対する聴聞手続を、当該外務員に対する聴聞手続の場としても機能させる必要がある。 |
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□ | □緊急の場合の適用除外と仮の行政処分 | |
■ | ■3) 聴聞 | |
■ | ■4) 弁明の機会の付与 | |
■ | ■5) 理由の提示(p478) | |
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に当該不利益処分の理由を示さなければならない(14条1項本文)。 but 理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、不利益処分と同時に理由を示す必要はない(同項ただし書)。 この場合においても・・・処分後相当の期間内に理由を示さなければならない(同条2項)。 |
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判例:不利益処分であっても、法律に理由提示を義務づける規定がなければ、憲法上の理由提示義務を否定(最高裁昭和42.9.12、最高裁昭和43.9.17) ⇒行政手続法が一般的に不利益処分の理由提示義務を定めたことの意義は大きい。 |
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不利益処分の理由の提示の意義とその程度⇒(4)4) 処分基準が公にされている場合には、いかなる処分基準を適用して当該処分を行なったかを処分の名あて人においてその記載から了知しうる程度に記載することを要すると解すべき。 |
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最高裁H23.6.7: 当該事案においては、不利益処分の理由として処分基準との関係も示すべきとし、それが示されなかったことは理由提示の瑕疵に当たるとして、処分を取り消している(処分基準との関係でも理由が示されているので理由提示の瑕疵はないとしたものとして、東京地裁H25.4.19) |
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聴聞手続を経ているからといって処分理由の提示の程度が軽減されるものではなく、むしろ聴聞手続における当事者の反論、反証を踏まえた理由提示をすることこそが、行手法14条1項本文の趣旨に適う(名古屋高裁H25.4.26)。 | ||
■ | ■6) 処分等の求め | |
行手法36条の3の処分等の求めにかかる規定は、第三者に対する不利益処分を求める場合において利用できる。 ex. 工場周辺の住民が、当該工場からの排水が水質汚濁防止法違反と思料するときに、水質汚濁防止法13条1項の規定に基づく改善命令を出すことを求めるような場合。 |
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■ | ■7) 意見公募手続 | |
☆第23条 行政手続に関するその他の問題 | ||