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勉強会(判例時報2023前半)

判例時報の勉強会用の資料です(随時更新)

       
       
       
2536   
  特報p44
最高裁R4.5.25    
   
  事案 在外国民であるX3は、Y(国)に対し、
主位的に、次回の国民審査において審査権を行使することができる地位にあることの確認を求め、
予備的に、YがX3に対して国外に住所を有することをもって次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項、3項等に違反して違法であることの確認を求めた。 
X1~X5は、Yに対し、国会において在外国民に審査権の行使を認める制度(「在外審査制度」)を総説する立法措置がとられなかったことにより、同日に施行された国民審査において審査権を行使することができず精神的苦痛を被った⇒国賠法1条1項に基づく損害賠償を求めた。
  規定 憲法 第一五条[公務員の選定罷免権、公務員の性質、普通選挙・秘密投票の保障]
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
憲法 第七九条[最高裁判所の構成等]
②最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
③前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
④審査に関する事項は、法律でこれを定める。
  判断  裁判官審査法が在外国民に国民審査に係る審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反する。 
国が在外国民に対して国外に住所を有することをもって次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項、3項等に違反して違法であることの確認を求める訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法。
国会において在外審査制度を創設する立法措置がとられなかったことは、次のア~ウなど判示の事情の下では、平成29年国民審査の当時において、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受ける。
ア:国会においては、平成10年、在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度を創設する法律案に関連して、在外審査制度についての質疑がされた。
イ:平成17年、最高裁大法廷判決により在外国民に対する選挙権の制約に係る憲法適合性について判断が示され、これを受けて、同18年の法改正により在外国民に国勢選挙の選挙権の行使を認める制度の対象が広げられ、同19年、在外国民に憲法改正についての国民の承認に係る投票の投票権の行使を認める法律も制定された。
ウ:在外審査制度の創設に当たり検討すべき課題があったものの、その課題は運用上の技術的な困難にとどまり、これを解決することが事実上不可能ないし著しく困難であったとまでは考え難い。
   
原判決中Xらの損害賠償請求を全部棄却すべきものとした部分を破棄し、
第1審判決中当該請求に係る部分についてのYの控訴を棄却するとともに、Xらのその余の上告、Yの上告及びX3の附帯上告を棄却。
  争点  ①裁判官審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことの憲法適合性
②本件違法確認の訴えの適法性
③本件立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるか
  解説   ●  ●争点① 
最高裁H17.9.14:
憲法は、国民主権の原理に基づき、両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており、その趣旨を確たるものとするため、国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解するのが相当

選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない。

選挙権又はその行使の保障に重要な意義があることに鑑み、その制限については、厳格な基準による合憲性の審査がされるべき。
本判決:
国民審査に関わる憲法の規定等を掲げ、
再構成の地位と権能につき、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所であること(憲法81条)等を指摘し、
これらを踏まえて、
憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。

国民の審査権又はその行使を制限することは原則として許されず、これらを制限するためには、やむを得ないと認められる事由がなければならない。

選挙権と同様、審査権又はその行使の保障に重要な意義があることに鑑み、その制限について、厳格な基準による合憲性の審査がされるべきものと判断。
裁判官審査法が定める投票用紙の調整や投票の方式に関する取扱い等を前提
⇒在外審査制度を創設することについては、在外国民による国民審査のための期間を十分に確保し難いといった運用上の技術的な困難があることを否定することができない。
but
現在の取扱いとは異なる投票用紙の調製や投票の方式等を採用する余地がないとは断じ得ない。

在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置が何らとられていないことについて、やむを得ない自由があるとは到底いうことができない。

裁判官審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反。
  ●争点② 
本件違法確認の訴え:公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴え(行訴法4条後段)と解され、その適法性については両様の考えがあり得る。
行訴法 第四条(当事者訴訟)
この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
憲法 第八一条[法令等の合憲性審査権]
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
憲法 第九九条[憲法尊重擁護義務]
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
本判決:
憲法79条2項、3項により、国民に保障された審査権の基本的な内容等が憲法上一義的に定められている⇒在外国民につき、具体的な国民審査の機会に審査権を行使することができないという事態が生じる場合には、そのことをもって、個々の在外国民が有する憲法上の権利に係る法的地位に現実の危険が生じている。
侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができないという審査権の性質
②仮に本件違憲確認の訴えにつき違法を確認する判決が確定したときには、国会において裁判所がした判断が尊重されるものと解される(憲法81条、99条参照)

本件違憲確認の訴えが、国と個々の在外国民との間の法律関係の存否(次回の国民審査の機会に審査権の行使をさせないことが違法であるか否か)に関する争いを解決するために有効適切な手段。

①法律上の争訟性
②確認の利益
を肯定。
宇賀補足意見:
当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決できるもの⇒法律上の争訟の要件を満たす。
次回の国民審査の前に、審査権を行使することができる地位を有することを確認することは有効⇒確認の利益も認められる。

予備的請求つぃて提起された本件違法確認の訴え:
抽象的に法令の違憲審査を求めるものではなく、次回の国民審査において、自らの審査権を行使することができないことの違法の確認を求めるもの⇒法律上の争訟といえる⇒憲法32条により、実効的な裁判を受ける権利が保障されていなければならず、それは、立憲主義の要請。

平成17年判決の趣旨:
違法確認の訴えも法律上の争訟⇒他のより適切な訴えによってその目的を達成することができない場合には、確認の利益が認められるが、当該事件では、地位確認の訴えの方がより適切な訴えであるので、確認の利益が否定されるという趣旨。

地位確認の訴えに係る請求を認容するこたできず、他に適切な救済方法がない本件において、違法確認の訴えに係る確認の利益を認めるという解釈は、平成17年大法廷判決の趣旨に適合。
憲法 第三二条[裁判を受ける権利]
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
  ●争点③ 
国会議員の立法行為又は立法不作為を理由とする国賠請求の可否について、
仮に立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、直ちに国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
but
例外的に同項の適用上違法の評価を受けることがあり、その判断に当たっては、
①法律の規定の違憲性が明白でああるか否か、
②国会がこれを正当な理由なく長期にわたって放置しているか否か
という観点からの検討が求められる。
国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、
それが明白であるにもかかわらず
国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る
ときは、前記の例外的な場合に当たる。
当てはめにつき、
①平成10年法律第47号による公職選挙法改正の際に、国会において在外審査制度についての質疑が行われたことや
②平成17年大法廷判決及びそれ以後の立法の動向等の事情を指摘

遅くとも平成29年国民審査の当時においては、在外審査制度を創設する立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠ったものといえる。
  民事p59
広島高裁R4.3.25  
   
  事案 遺産分割事件において、被相続人を保険契約者兼被保険者とし、共同相続人の1人を死亡保険金の受取人とする定期保険特約付終身保険及びがん保険に係る各保険契約に基づく死亡保険金請求権について、民法903条の類推適用により特別受益に準じて持ち戻す(当該死亡保険金の額を被相続人が相続開始の時において有した財産の額に加える)べきか否かが争われた事案。
抗告人:被相続人の母
相手方:被相続人の妻
  争点 被相続人が自らを被保険者として、保険金受取人を共同相続人の1人である相手方として締結していた定期保険特約付終身保険及びがん保険に係る各保険契約に基づく死亡保険金合計2100万円を民法903条の類推適用により特別受えっきに準じて持ち戻しの対象とすべきか。
  事案 遺産部活の対象となった財産:預貯金等合計459万665円
それ以外の相続開始時に存在した遺産(預貯金等合計313万3034円)については、預金が引き出されるなどして現存しておらず、当事者間においてその使途等について争いがある。
抗告人:C国籍
被相続人は日本国籍
⇒本件の準拠法は日本法(法適用通則法36条)
本件死亡保険金に係る保険:
①保険料払済みとなるまでに被相続人(被保険者)が死亡した場合に定期保険に係る死亡保険金が支払われる定期保険特約付終身保険(被相続人が相手方と婚姻した後に変更された後の保険料月額1万2000縁、死亡保険金額2000万円)
②がんを原因とする死亡について死亡保険金が支払われるなどするいわゆるがん保険(保険料月額約2000円、死亡保険金100万円)
  原審 本件死亡保険金の遺産総額に対する割合は非常に大きい
but
①被相続人と相手方の婚姻期間及び同居期間並びに被相続人と相手方の生計の状況など

本件死亡保険金は、被相続人の死後、妻である相手方の生活を保障する趣旨のものであり、このことに加えて、
②本件死亡保険金の額が夫婦間の一般的な生命保険金額と比べてさほど高額なものとはいえないことや、
③抗告人と被相続人との関係などの事情

相手方と抗告人との間に不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存するとは認められない
⇒民法903条の類推適用による特別受益に準じた持戻しを否定
  判断 原審判で指摘された事情

相手方が、子がなく借家住まいで、その年齢にも照らし本件死亡保険金により生活を保障すべき期間が相当長期間にわたることが見込まれる一方、
抗告人が、被相続人の父(抗告人の夫)の遺産であった不動産に長女及び二女と共に暮らしていることなどの事情

前記の特段の事情が存するとは認められない。
⇒原審判と同結果。 
  解説   平成16年最高裁判決:
被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき本件金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらない
but
保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。

死亡保険金請求権が特別受益として持戻しの対象となるのか否かについて原則否定説を採った上で、例外的な処理をすべき場合も判断要素を明らかにしたもの。
基本的には、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率の客観的な事情により、著しい不平等が生じないかを判断。
さらに、身分関係や生活実態等その他の事情からそれが公平を損なうといえないかどうかを判断。
  裁判例アイウ
肯定例:
相続開始時の相続財産の総額に対する死亡保険金の総額の割合:
ア約99%(1億129万円/1億134万円)
イ約61%(5154万円/8423万円)
否定例:
ウ:6.1%(428万円/6993万円)
平成16年最判:9.6%(574万円/5958万円)
本判決:
本件死亡保険金の総額2100万円が被相続人の相続開始時の遺産総額(772万3699円)の約272%(約2.7倍)
本件で遺産分割の対象となった財産の評価額(459万665円)の約457%(約4.6倍)
but
本件死亡保険金の額及び趣旨、各当事者の被相続人との関係(同居の有無、生計同一の有無等を含む。)や現在の生活実態等の諸事情を総合考慮して、民法903条の類推適用を否定。

本件に係る保険金額が被相続人の生前の生活実態に照らして課題であるといえない⇒民法903条の類推適用が認められる特段の事情の有無を検討するに当たり、保険金の額やこの額の遺産総額に対する比率等の客観的な事情により著しい不平等が生じないかを判断することを基本に据えるという考え方から逸脱するものとはいえない。
  保険金額が遺産総額の少なくとも3分の1を超える状況にある事案においては特段の事情を肯定する方向で検討をする必要が生じる(遺産分割の理論と審理)。 
  民事p66
福岡高裁那覇支部R3.1.21  
   
  事案 ドキュメンタリー映画製作のため、沖縄県議会本会議の撮影許可を申請⇒不許可処分(本件処分)

①本会議の撮影行為の許可制を定める同県議会傍聴規則15条は、地自法115条に反し、また、Xの報道・取材の自由を侵害するものとして憲法21条に反する
②本件規則が合憲・適法であるとしても、本件処分は、憲法14条1項、21条1項に反し、裁量権を逸脱・濫用するものとして違法
③沖縄県議会事務局が、Xに撮影許可を得るために必要な資料等の教示をしなかったことは不法行為に当たる
⇒Y(沖縄県)(被控訴人)に対し、国賠法1条1項又は民法709条に基づき、慰謝料等の支払を求めた。
  争点 ①Xが報道・取材の自由を有するか
②本件規則の地自法115条1項本文適合性
③本件規則の憲法21条1項適合性
④本件処分の憲法14条、21条1項適合性、裁量権の逸脱・濫用の違法の有無
⑤県議会事務局の対応による不法行為の成否
  原判決 争点①:
ドキュメンタリーも事実に基づく表現であり、報道の要素を含む等⇒Xにも憲法21条により報道の自由が認められ、取材の自由が尊重される。
  本判決   ●争点②: 
憲法は、住民自治を機能させる不可欠の前提として、会議の公開を制度として保障しており、地自法115条1項本文はこの憲法の要請を明記したもの。
but
同項にいう「公開」とは、その文言や憲法上の要請に照らし、会議の傍聴、会議録の閲覧および会議内容の発信・報道を自由に行うことができるようにすることであり、会議の撮影はこれらのための不可欠な行為ともいえない
⇒本件規則が、同項本文に反するということはできない。
  ●争点③: 
報道の自由は憲法21条の保障のもとにあり、報道のための取材活動としての撮影行為の自由についても、同条の精神に照らし、十分尊重に値する。
but
このような撮影行為の自由も、他の憲法上の要請等から必要かつ合理的な制限を受けることはあり、同制限が許容されるかは、制限の目的、その目的のために制限が必要とされる程度、制限される自由の内容・性質、具体的な制限の態様・程度を衡量して決せられる。
本件規制の目的は、撮影行為によって、会議の秩序が乱され、公正かつ円滑な議事の運営が訴外されることを防止される点にあり、憲法上重要な意義がある。

自由な撮影を許容した場合には、撮影した映像の切取り・編集等により不正確かつ公平・公正を欠く発信や、議員、参考人、傍聴人のプライバシーに関わる事項などについての撮影・発信がされる可能性があり、その心理的圧迫から議員らの活動に萎縮効果を与えたり、市民に会議の傍聴を差し控えたりするおそれがある。
このような弊害等は、文書名地によって不適切な発言がされる場合と比べて格段に大きく、その事後的な払拭が困難⇒撮影の許可制を定める必要性は肯定できる。
他方、
本件規則は傍聴人による発信や発信内容自体、撮影以外の取材行為を制限せず、これにより会議の内容についての発信等が不可能又は困難になるものとはいえない。

地方議会の自律的な権能が尊重されるべきもの

本件規則は、前記目的達成のために必要かつ合理的な範囲のものであり、憲法21条1項に反しない。
  ●争点④: 
①報道機関による会議の撮影に公益上の必要性があること、
②会議の内容を正確かつ公平に報道することができる能力・資質を有する報道機関であれば、撮影による弊害が生じるおそれが乏しいこと
③他方で議長が常にこの点につき個別的判断をすることは困難

このような能力・資質を備える報道機関であることが制度的に担保される基準を設定し、これを充たす傍聴人に包括的な撮影許可を与える取扱いには合理性はある。

県政記者クラブ等の加入要件等⇒その会員又は準会員について、前記能力・資質を備えている報道機関であることが制度的に担保されているとみることに相応の合理性はある。

地方議会の自律性の陽性から本件規則に基づく会議の撮影の許否の判断が議長の広汎な裁量に委ねられている。

前記先例に従った取扱いは、合理的根拠を有し、憲法14条1項に反しない。
①Xが典型的なマスメディアではなく、類似の前例もなく、
②Xの情報が乏しく、申請が本件会議の4日前にされたものであって、撮影による弊害のおそれが乏しいと判断するのが困難な状況にあり、
③本件会議で採決が予定されていた議案等に関しては、政治的意見の対立があったなどの事情

本件処分に係る判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、裁量権の逸脱・濫用の違法があったとはいえない。
  解説 表現の自由の制約の合憲性判定基準については、学説上、LRA等の厳格な審査基準によるべきとの見解
but
近年の最高裁判例は、
①一定の利益を確保しようとする目的のために制限が必要とされる程度と、
②制限される自由の内容及び性質、
③これに加えられる具体的制限の態様及び程度等
を具体的に比較衡量するという利益衡量の判断手法をとり、
その過程で、
規制される人権の性質、規制措置の内容・態様等に応じて、その処理に必要な一定の厳格な基準ないしはその精神を併せて考慮して適用するという態度。 
最高裁H1.3.8:
法廷における筆記行為の自由について、表現の自由そのものとは異なるとして、その制限に関して厳格な基準が要求されない。
本判決:
本件規則の憲法21条1項適合性につき利益衡量の判断手法を採った上で、撮影行為による弊害や取材の自由の制限の態様・程度等を衡量してその合憲性を導いている。
その際、制限の態様が必要最小限度のものであることまでは要求していない。
←撮影行為の自由が表現の自由そのものではないことや地方議会の自律性といった点を考慮。
憲法14条1項適合性:
判例は、法的取扱いの区別が「事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくもの」といえるかによって判断。
法律による区別に関する多くの判例は、立法府に合理的な範囲の裁量が認められることを前提として、その広狭に応じ、立法目的の合理性、目的達成のための手段・方法の合理性を具体的に検討して判断するという基本的枠組み。 
本件の先例に従った取扱いは、法律による区別ではない
but
本判決:
撮影の許可の判断が議長の広汎な裁量に委ねられているとした上で、前記判断手法に従い、県政記者クラブ等に所属する報道機関に限って包括的な許可を与えることの合理性を具体的に検討し、合憲性を導く。
  民事p73
福岡地裁R3.11.25  
   
  事案 X1及びX2の子であるCは、平成29年4月自殺を図り、心肺停止状態で搬送されたものの、同日死亡。 
本件学校は、Cと中が良かったDEFGを含む生徒等から聞き取りyたアンケート等を実施、平成29年7月には本件自殺の調査を行う目的で第三者委員会を設置。
・・・いじめ防止対策推進法上のいじめに該当すると認めらるが、本件自殺との間には因果関係がないとの調査報告
福岡県知事は、再調査を決定し、再調査委員会を設置。
・・・いじめ防止対策推進法上のいじめに該当すると認めらるが、本件自殺については友人関係のトラブル以外に家庭問題や部活動における悩み等の複合的な要因が考えられ、いじめが本件自殺の主原因とは断定できない。
本件学校は、独立行政法人日本スポーツ振興センター法に基づき設立されたYに対し、災害共済給付金(死亡見舞金)の請求を行った。
⇒Yは、本件自殺が災害共済給付金支払事由である「学校の管理下において発生した事件に起因する死亡」に該当するとは認められない等として、災害給付金の不支給決定。
⇒X1及びX2が同不支給決定に対して不服審査請求を申立てた⇒不支給決定を変更しない旨の決定。

X1及びX2が、本件自殺が「学校の管理下において発生した事件に起因する死亡」に当たると主張して、Yに対し、センター法が規定する災害共済給付金及び遅延損害金の支払を求めた。
  争点 ①本件自殺が「学校の管理下において発生した事件に起因する死亡」に該当するか
②災害共済給付金支給請求権の発生時期及び遅延損害金の起算点 
  判断 ●争点① 
Dらの一連の行為は通常の対人関係における不和にとどまらないいじめとして、学校の管理下において発生した事件に当たる。
Cと仲が良かった女子グループの関係性やいじめが行われた時期、Cが自殺直前にEに送信した重要なメッセージ(本件自殺に責任がある者としてDFEを名指しするもの)等

Cはいじめにより孤立感等を高めるとともに精神的に不安定になっていた中で、Eとの不和が決定的になったことを機に学校生活について絶望感を募らせ、人間関係から逃避し、いじめに対する抗議等の意を示すために自殺を図った。
報告書②が指摘する両親の離婚問題や部活動における問題が本件自殺の原因となったとは考えられない

本件自殺は専らいじめが主たる原因となって生じた「学校の管理下において発生した事件に起因する死亡」に該当。
●争点② 
センター法に基づく災害共済給付金の支払請求権は、Yの支払決定によって生じるものではなく、当該事件がセンター法及びその関係法令等が定める要件を客観的に充足する場合に当然に発生。
センター法施行令の規定⇒その履行期は、給付金の支払請求を受けてから、当該請求内容が適正であるか否かを審査するための相当の期間を経過した日であると解するのが相当。
本件訴訟においては、Xらによる書証提出やX2の本人尋問等が実施されており、Yは、遅くとも本件口頭弁論終結時にはXらによる給付金支払請求の適否を審査するために必要となる情報を全て入手していたと認められる

災害共済給付金の支払請求を認容するとともに、口頭弁論終結時の翌日からの限度で遅延損害金請求を認容。
  労働p83
福岡高裁R3.12.9  
   
  事案 地方公共団体であるYとの間に雇用契約を締結し、Yが設置・運営する図書館において館長としt4え勤務していたXが、Yに対して未払の法内残業代金、法定時間外割増賃金を請求する権利を有する旨主張⇒雇用契約に基づく賃金(未払残業代等)請求権に基づき、未払残業代等及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、
労基法114条に基づく付加金支払請求権に基づき、Yに対し、付加金及びこれに対する遅延損害金の各支払を求めた。 
  判断 労基法41条2号の趣旨、行政実務や裁判例の大勢に沿って、公立図書館の館長として期間付きで雇用された労働者につき、
①図書館の館務を掌握し、職員を監督するという図書館法13条2項等で規定されている公立図書館の館長の職務の特殊性や権限の内容
②労働時間に関して当該労働者が有していた裁量の程度や労働時間管理の実態、
③他の一般職員及び管理監督者との給料面での待遇の比較等の視点から具体的な検討
⇒管理監督者該当性を肯定し、Xの控訴を棄却。
  解説 労基法41条は、労働時間、休憩及び休日に関する規制の除外を定めている。
その代表的な労働者が、管理監督者(2号)。
その趣旨:
①管理監督者の場合、職務及び責任の重要性に照らし、企業経営上の必要から、労基法所定の労働時間等を超えて事業活動をすることが求められ、勤務実態等に照らし、労働時間等による規制になじまない(企業経営上の必要性)
②管理監督者の場合、職務の内容、権限及び勤務実態等に照らし、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、労働時間を自由裁量によって定めることができる⇒労基法1条の基本理念、労基法37条の趣旨に反するような事態(過重な長時間労働等)が避けられ、労働者保護に欠けることにならないであろう(労働者保護の要請との関係)
職制や地位の名称に捉われず、実態に即して判断されるべき。
①職務の内容、権限及び責任の程度、
②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無及び労働時間管理の程度、
③賃金(基本給、手当、賞与)等の待遇の内容及び程度
を管理監督者該当性の主な判断要素とした。
より具体的な視点で判断
ex.
職務内容が少なくともある部門全体の統括的な立場にあるか
部下に対する労務管理上の決定権限等につき一定の裁量権を有し、人事考課・機密事項に接しているか
管理職手当などで時間外手当が支給されないことを十分に補っているか
自己の出退勤を自ら決定する権限があるか
  刑事p97
名古屋地裁R3.9.21  
   
  事案 死刑確定者として名古屋拘置所に収容されているXが、名古屋拘置所長が、Xの信書の発受を許さなかったことが違法⇒Y(国)に対し、国賠法1条1項に基づく損害賠償を求めた。 
  判断  処分の内容が告知されてから3年が経過していたものについては、消滅時効を肯定。
  ●本件各発受不許可処分の違法性 
刑事収用法139条の趣旨⇒同条1項3号にいう「死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書」とは、死刑確定者が、来るべき死刑の執行による自己の死を待つことによる精神的な苦悩や同様を克服し、あるいはコントロールできる状態になることに直接に又は間接に資する内容のものをいう。
but
発受の相手方との交流自体が心情の安定に意味を有することが少なくない
⇒同号所定の信書に該当するか否かの判断に当たっては、厳格に信書の内容だけから判断するものではなく、発受の相手方との交友関係を十分考慮すべき。

刑事収用法139条2項は、同項所定の要件に該当するかの判断について、刑事施設内の実情に通暁し、刑事施設の規律及び秩序の維持その他適正な管理運営の責務を負う刑事施設の長の合理的裁量に委ねたものと解される一方、
この要件に該当する以上、刑事施設の長は当該信書の発受を許さなければならない。
一定期間以上外部交通をすることで交友関係を形成していた者からのXを気遣い、その誕生日を祝う旨の信書等、信仰上の交友関係を形成していた者からの祈りの言葉等を記載した信書や、これらの者に対する年賀状等は、Xが精神的な苦悩や動揺を克服し、あるいはコントロールできる状態になることに資するものであって、刑事収用法139条1項3号の信書に該当

このような信書の発受を許さなかった名古屋拘置所長の措置は、国賠法1条1項の適用上違法。
  ●  以上のほか、Xに対して差し入れられた物品について差入人に引取りを求めるなどしたことや書籍等の一部を抹消した上でXに閲覧させるなどしたことについても一部違法

Xの請求を合計20万5000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容。 
  解説 ●消滅時効
  最高裁H23.4.22:
被害者における加害行為の違法性の認識については、一般人であれば当該加害行為が違法であると判断するに足りる事実を被害者において認識すれば足りる
死刑確定者が信書の受信を許可されない場合、当該信書の発信者を知ることになる⇒当該発信者との関係等からして刑事収用法139条1項各号のいずれかに該当する(したがって、信書の受信を許可されるべきである)ことを認識することができる。
逐条解説刑事収容施設法(有斐閣) 
  刑事p125
千葉家裁R4.3.29