シンプラル法律事務所
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刑法総論TU 平野龍一 | ||
★第1編 刑法の基礎理論 | ||
☆第1章 刑法理論の系譜 | ||
◇ | ◇1 刑法理論 | |
旧派: 自由意思、行為主義、道義的責任、応報刑、一般予防 |
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新派: 決定論、行為者主義、社会的責任、改善刑、特別予防 |
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◇ | ◇2 (前期)旧派の確率 | |
◇ | ◇3 新派の発生 | |
◇ | ◇4 (後期)旧派の対抗 | |
◇ | ◇5 両派の誇張 | |
◇ | ◇6 わが国における対立 | |
◇ | ◇7 刑法改正と刑法理論 | |
☆第2章 刑罰理論 | ||
◆ | ◆第1節 刑罰の内容と正当根拠 | |
◇ | ◇1 刑罰の内容と正当根拠 | |
応報刑論:犯罪が行われたから刑罰を科する | ||
目的刑論:犯罪が行われないように刑罰を科する | ||
◇ | ◇2 応報刑と抑止刑 | |
◇ | ◇3 犯罪者の社会復帰 | |
◇ | ◇4 刑の量定の基準 | |
◆ | ◆第2節 刑事政策上の諸問題 | |
◇ | ◇1 刑法改正と刑事政策 | |
◇ | ◇2 自由刑の種類と内容 | |
◇ | ◇3 刑の猶予と保護観察 | |
◇ | ◇4 不定期刑と改善保安処分 | |
☆第3章 犯罪理論 | ||
☆第4章 犯罪論の体系 | ||
★第2編 犯罪総論 | ||
☆第1章 犯罪成立の一般的要件(犯罪類型) | ||
◆ | ◆第3節 因果関係 | |
◇ | ◇1 条件説と相当因果関係説 | |
◇ | ◇2 条件関係 | |
条件関係: 「PがなかったならばQはなかったであろう」という関係 ex. Aが自動車を運転中、酔っ払って車道に寝ていたBを轢き、Bが死亡 |
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■ | ■(1) 行為=実行行為 | |
■ | ■(2) 結果=「その時点において現に発生した」結果 | |
ex.Bがその前にCに轢かれて重傷を負っており、まもなく死ぬであろう場合 but AがさらにBを轢いて即死⇒Aの行為は、Bが「その時点」で死んだこと、すなわちBの死を早めたことについて因果関係がある。 |
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■ | ■(3) Aの行為を「除いて」判断するだけで、他の行為を仮定的に「つけ加えて」判断しない。 | |
仮定的な事情は、過失の有無の判断にあたって問題になるにすぎない。 | ||
■ | ■(4) 因果関係の存否と証明は、違った問題。 | |
■ | ■(5) 条件関係が断絶する場合 | |
中断:条件関係が存在するにもかかわらず法律上因果関係がないとされる場合 断絶:条件関係そのものがない場合 |
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◇ | ◇3 条件説の難点 | |
A:条件説:刑罰の目的が犯罪の防止にある⇒結果と条件関係にある行為を防止すれば、犯罪は防止されるであろうとう考慮。 〜条件説それ自体が、刑法的な因果関係論。 ← 因果関係があればただちに犯罪が成立するわけではなく、そのほかに故意・過失などの他の要件も必要であり、これらの要件で犯罪の成立は限定をうけるから、結局においては不当な結論は生じない。 vs. (1)故意・過失によって犯罪成立の範囲を限定しようというのは、一種の主観主義 ⇒主観主義論者が条件説をとるのは一貫しているかもしれないが、そうでなければ一貫しないものがある。 (2)実際上も故意・過失では限定できない場合もある。 @故意・過失が要求されない結果的加重犯の場合 A行為者の故意の内容どおりに進行したが、なお結果について責任を問い難い場合 ex.森に行けば雷に当たって死ぬだろうと思って森に行けといったところ、ほんとうに雷に当たって死んだというような場合 B死の結果についての故意はあったが、因果関係の経路が異常であった場合。 |
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◇ | ◇4 相当因果関係説 | |
刑法における因果関係とは、自然科学的な原因・結果という関係の存否の問題ではなく、その結果についての行為者を既遂として処罰することが妥当か、という問題。 どういう場合に、既遂として処罰するかは法が決めうること。 |
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刑法は、条件説論者が考えるように、犯罪の条件のすべてを防圧しなければならないものであろうか。そのなかで、結果を発生させることが相当なものだけを処罰すればいいのではないか。 そこに刑罰の限界、刑法の謙抑性があるのではないか。 〜 相当因果関係説の実質的な論理。 |
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何を資料として相当性の判断をするか? A:主観説 〇B:客観説 C:折衷説: @一般人が認識しえたであろう事実、およびA行為者が現に認識していた事実 を資料として相当性を判断。 ← 結果的加重犯について不当な結論を避ける必要。 vs. 因果関係が行為と結果との間の「帰責関係」であるとしても、それは客観的帰責であって主観的帰責ではないはず。 因果関係が人によってあったりなかったりするのは奇妙。 ⇒ 相当因果関係説をとるとしても、「客観的相当因果関係説」でなければならない。 結果的加重犯は、過失を要件とすることによって解決すべきであって、因果関係で解決しようとすること自体が無理。 |
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条件説のABの例の事例は(客観的に)相当因果関係がないとして、排除すべき。 but この場合の「相当でない」とは極めて偶然的なものを除くという趣旨であり、その過程を行為者が認識していたとしても、なお結果を行為者が帰責することが妥当でない場合だけを除けば足りる。 |
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◇ | ◇5 判例の検討 | |
大審院・最高裁は、従来、条件説をとっていた。 「被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を証全閉めたときは、その行為と結果との間に因果関係を認めることができる」⇒少なくとも被告人の主観的な事情を考慮するこは排斥。 |
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● | 因果関係が問題になる事例 | |
◎ | ◎行為当時、すでに被害者に異常な状態があった場合 | |
・被害者の左眼を蹴り、傷自体は10日くらいでなおるbut被害者は脳梅毒におかされていて、死亡。 ・被害者を突き飛ばし道路上に仰向けに転倒but被害者は心臓肥大でかつ心冠上動脈に高度の異常⇒心筋梗塞をおこして死亡(△)。 〜 いずれも因果関係を肯定。 |
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◎ | ◎因果関係の進行の過程でたの事実が介入した場合 | |
〇 | 〇被害者の行為が介入 | |
・傷を負った被害者が天理教信者⇒医者にかからず、傷口に神水を塗った⇒丹毒症で傷が悪化(△) ・火傷を負わされた被害者が、苦痛のあまり水に飛び込み心臓麻痺を起こして死亡 〜 いずれも因果関係を肯定。 |
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・AはB女を強姦しようとして果たさなかったbutB女はこれを恥じて後に自殺 〜 強姦致死罪としては起訴されていない(=致死という点についての因果関係を認めなかった)。 |
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〇 | 〇第三者の行為が介入 | |
・被害者は頭に全治2か月くらいの傷を負わされたbut医者が大信で治療方法が悪く、脳にうみがたまって死亡(△) ・被告人がAを殺そうと毒を入れた酒を送った⇒Aは毒が入っているとは知らず放置し、約半年後にAの妻がCに送り、Cが飲んで死亡 |
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〇 | 〇被告人自身の行為が介入 | |
・被告人は、Aを殺そうと思って縄で首を絞めてAは意識を失った⇒死んだと思い海岸の砂の上にはこんで放置⇒Aは息をふきかえしたが、砂を吸い込んで窒息死 ・被告人はBを殺そうと崖の上から突き落とした⇒Bは崖の途中で気にひっかかり人事不省におちいった⇒被告人は、これを助けるようよそおって手をかけたが、Bの重みで自分も落ちそうになり、手を離し、Bは崖下に堕ちて死亡 〜 被告人には2つの行為があった⇒常に殺人未遂と過失致死の2つの犯罪が成立するのでは? vs. 後の行為の介入によってはじめの行為の死の結果に対する因果関係がなくなるかという問題 肯定⇒殺人の既遂(および過失致死、これは殺人に吸収される) 否定⇒殺人未遂と過失致死 |
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自動車で人を轢いた後、道路わきに行きして死亡 〜過失致傷と遺棄致死と認めた判決(東京高裁) 〜致傷と死の間の因果関係を否定したもの。 |
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〇 | 被告人Aは、自動車を運転中、過失によりBをはね飛ばし、BはAの自動車の屋根の上にはねあげられ意識を失ったbutAはこれに気付かず自動車を走らせ、10キロほど行ったとき、同乗していたCがこれに気付き、Bをひきずり降ろした⇒Bは自動車および道路面との衝突で死亡。 最高裁:同乗者が進行中の自動車の屋根の上から被害者をさかさまにひきずりおろし、アスファルト舗装道路上に転落させるというがごときことは、経験上、普通、予想しえられるところではない⇒被告人に過失致死の罪責を肯定した原判決は誤りとした。 〜 「行為者の知っていた事情」には言及していない⇒客観的な相当因果関係説をとったもの。 vs. 具体的事案としては、Bは自動車の屋根の上にはねあげられた後、Cにひきずりおそされなくても、落ちて頭を打って死ぬ可能性はかなりあったといえる(相当性の判断の場合は仮定的判断も許されて然るべき) ⇒Bの死と言う結果は、必ずしも予想されなかったことではなく、むしろ因果関係は肯定すべき。 |
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その後の判決を見ても、最高裁は、少なくとも因果関係を大幅に制限するつもりはない。 強盗が被害者である63歳の老婆に対し、頚部をしめつけ、布団で鼻口部を圧するなどの暴行⇒老婆が急性心臓死 東京高裁:因果関係を否定 最高裁:「被告人が致死の結果を予見することができなかったとしても暴行が特殊事情とあいまって致死の結果を生ぜしめたものと認められるときは」因果関係がある⇒原判決を破棄。 |
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☆第2章 犯罪の成立を阻却する事由 | ||
☆第3章 犯罪の成立を拡張する事由 | ||
◆ | ◆第1節 未遂犯 | |
◆ | ◆第2節 共犯 | |
◇ | ◇13 片面的共犯 | |
判例: 片面的幇助は認めるが 片面的共同正犯は認めない |
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△A:片面的共同正犯を肯定(牧野) ← @共同正犯も、各自が自己の行為およびその結果について責任を問われるのであって、他人の行為について責任を問われるのではない A相手方Bが知っていたかどうかは相手方の事情であって、それによって本人の罪責が左右されるはずがない vs. @相手方が認知しているということは、その心理を通じてその行為に影響を及ぼしたという意味で、本人の責任に影響を及ぼす A問題は、相手方の審理を通じてその行為に影響を及ぼした場合だけが共犯なのか、それとも物理的に相手方の行為又は結果に影響を及ぼした場合も共犯になるのか。 |
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● | 心理的にも物理的にも影響がない場合は、問題の外におかれなければならない。 ex.AがXを殺そうとしてピストルで狙っているのを見たBが、Aの目的を達成させようと思って自分をピストルでXを撃ったが、Aの弾丸だけがあたった場合。 |
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● | 物理的な影響 @結果の発生にだけ影響を及ぼす場合 A相手方の行動に影響を及ぼす場合 |
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◇ | ◇16 共謀共同正犯(p397) | |
■ | ■(1) | |
■ | ■(2) | |
屋外の見張りの場合: 形式的な観点⇒屋外の見張りは、およそ共同正犯とはなりえない 実質的に見る⇒見張りが、犯罪の遂行にとって、目的達成のための「役割の分担」であり、しかも屋内にはいった者と違いのない、あるいは一段と重要な役割であることもある。 ⇒実質的に考えれば見張りも共同正犯と認めべき場合もある。 |
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■ | ■(3) 現場にいない者であっても、なお共同正犯となりうるか? 他の正犯者の心裡を通じて間接に犯罪の遂行に大きな実質的役割を果たした者もまた共同正犯といいうるか? |
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最高裁 「およそ共同正犯者が共同正犯者として処罰される所以のものは、共犯者が、共同意思の下に一体となって、互に他人の行為を利用して自己の意思を実行に移す点にある」 |
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練馬事件(最高裁) 「共謀共同正犯が成立するには、2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した」ことを要し、共謀に参加した者は、 「直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない」 |
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判例が共謀共同正犯を認めるようになった理由: ← @背後にいて計画をたて実行を指示した者は、犯罪の遂行にとって、自ら実行にあたった者に比べて実質的に必ずしも軽い役割とはいえず、むしろ重要な役割である場合もあるが、これを教唆・幇助とすると、実効正犯者と同じ、あるいはこれより重い刑を科するのが困難 A実行、教唆、幇助という類型が、現実の犯意形成の過程と必ずしも合致しない 〜現実には、話し合いの過程で、お互いに影響しあって次第に犯意が形成されてゆくということが多い。すなわち、いわば相互教唆・相互精神的幇助の複合した形態をとることが多い ⇒この実態を捉えるためには「共謀」という概念がより適している。 |
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■ | ■(4) 理論的基礎づけ | |
A:共同意思主体説 | ||
B:間接正犯の一種またはこれに類似のものとして基礎づけようとする見解 | ||
■ | ■(5) 現行法の解釈として認めうるか? | |
「共同して実行した」とき(65条) | ||
実質的な観点も蒸すすることはできない。 たとえば未遂犯の場合のようにおよそ可罰的でるかどうかの問題である場合には、客観的な見地が重要であるが、可罰的な行為の範囲内でどの行為を重く処罰するかという問題の場合に、主観的なものの実質的影響力を重視するのは、これと若干意味を異にする。 |
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■ | ■(6) 共謀共同正犯の内容をどのようにして明確にし、限定するか | |
必ずしも容易ではない ← 共謀共同正犯にも種々の態様があり、しかも主観的要素と客観的要素とがからみあっているので、他の場合のようにそのおのおのについて、要件を明らかにしにくい。 |
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□ | □(イ) まず、共謀があることが必要 | |
共謀=意思の疎通 | ||
AがBと、BがCと謀議する(順次共謀)というやり方でもいい。 | ||
共謀共同正犯は、単に意思を疎通させただけでなく、実行行為が「共同の意思にもとづく」ものといえるような「意思方向」を持つ者に限られるべき。 この「意思方向」は単に主観的なものであるだけでなく、犯罪の遂行に客観的に重要な影響力を持つものでなければならない。 |
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□ | □(ロ) このような共謀者のうちの少なくとも1人が実行行為をしたことが必要。 | |
〜 共同正犯の(実行)従属性。 その他の共謀者も、正犯者となるための行為(正犯行為)は必要。 共謀共同正犯では、正犯行為と実行行為は分離。 |
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□ | □(ハ) | |
厳格には、教唆とも幇助ともいいにくい、「共謀」という事態が存在するところに、共謀共同正犯論が発生した理由の1つがある。 ⇒ 共謀共同正犯は処罰の限界を拡大することにもなる。 ⇒「共謀」の意味内容は何かは、極めて重要な意味を持ってくる。 |
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☆第4章 罪数 | ||
☆第5章 国際刑法 | ||