シンプラル法律事務所
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★★上 | ||
★第1編 刑事総論関係 | ||
◆ | ◆1 制定の経緯 | |
◆ | ◆2 制定後の法改正の経緯と概要 | |
★第2編 刑事各論関係(上) | ||
★第2編 刑事各論関係(下) | ||
★第3編 刑事訴訟法総合認定関係 | ||
☆70 犯人の自白・・・「遺体なき殺人」 | ||
◆ | ◆事案の概要 | |
B:被害者 被告人(女性):Bの最終接触者 嫁ぎ先の納屋の中からBの遺骨が発見。 |
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被告人は、完全黙秘。 | ||
◆ | ◆判旨 | |
Bを何らかの行為により死亡させた旨認定。 but 殺意を認定できない⇒無罪。 |
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◇ | ◇1 Bが行方不明になったこと及び被告人がBの最終接触者であること | |
Bが被告人方を訪れ、その後行方不明。 被告人はBの最終接触者。 |
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◇ | ◇2 被告人の嫁ぎ先から発見された人骨片とBとの同一性 | |
@上記人骨の由来する者とBの身体的特徴を比較⇒同一人としても矛盾がない A・・・鑑定結果⇒上記人骨等の由来する者がBと考えても矛盾しない B捜査報告書⇒警察が把握していた当時の行方不明者のうち、上記人骨から推定される年齢に該当する者はB以外にいなかった C被告人は、Bの最終接触者であるところ・・・段ボール箱にBの死体が入っていたとしても矛盾はない D ⇒ 被告人が上記人骨をビニール袋に入れてG方納屋に隠し置いていたと推認することができる。 ⇒ 上記人骨はBのものであると推認することができる。 |
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◇ | ◇3 被告人がBを死亡させたこと | |
被告人がBの死亡につながる行為に及んだものと合理的に推認することができる。 | ||
◇ | ◇4 被告人が殺意をもってBを死亡させたか否か | |
◇ | ◇5 結論 | |
◆ | ◆検討 | |
◇ | ||
控訴審:被告人の殺意を認定することはできない⇒控訴棄却。 | ||
◇ | ◇2 | |
@青森事件 A東京事件 B C京都事件 |
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◇ | ◇3 | |
◇ | ◇4 | |
遺体無き殺人事件 ⇒ @被害者が犯罪行為により死亡したか A被告人の犯人性 B被告人の殺意の有無 |
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◇ | ◇5 被害者が犯罪行為により死亡したこと | |
■ | ■(1) 総説 | |
被害者が犯罪行為により死亡したことを推認させる事情 @突然行方不明 A行方不明となった際の異常な状況 B自殺や失踪動機や事故死をうかがわせる痕跡の不存在 C生存をうかがわせる事情なし D遺留品の存在 E預金引き出し等 |
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■ | ■(2) 各事件に即した説明 | |
札幌事件: | ||
京都事件: | ||
東京事件: | ||
青森事件: | ||
■ | ■(3) 弁護人からの反証 | |
検察官の立証に対し、弁護側から被害者が死亡したことの推認を妨げる事実について主張立証がなされることがある。 | ||
◇ | ◇6 被告人の犯人性(p459) | |
■ | ■(1) 総説 | |
被告人の犯人性を推認させる事情 @被告人が被害者を死亡させる動機を有していた A被告人が被害者の最終接触者であること B被告人以外の者が被害者を死亡させるのは困難 C被告人が被害者を死亡させたことあるいは被害者の死亡を知っていることを前提としなければ理解できないような不審な行動をとっていること D被告人が被害者の捜索願と提出すべきであったのにしなかったり、事情を知らない被害者の親族に被害者が行方不明になった旨の連絡をしなかったこと E被告人の着衣等に被害者のものと考えても矛盾しない血痕が付着していること |
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■ | ■(2) 各事件に即した説明 | |
東京事件: @被害者と犯行場所である店舗内で2人きりになる機会が最も多かったのは被告人であり、被告人以外の者が被告人に知られずに被害者を殺害sるうことは極めて困難 ・・・・6年以上被害者と行動を共にしてきた被告人に犯人の心当たりがないというのは不可解。 A被告人は、経済的に逼迫し困窮していたところ、被害者が行方不明になった後、・・・多額の金銭を支出しており、かかる行為は店の後継者となる希望を持ち主人の帰りを待つ従業員として到底なし得るものではない B被告人は・・・・これらの行動は被害者が被害者が永久に帰宅しないことを知っていたと考えなければ理解しがたい C・・・被告人が同業者や顧客らに対し、被害者の死亡をにおわせるような説明をしている D・・・被害者の家出人捜索願を・・・1か月経ってから提出したり、被害者の親族にも被害者が行方不明になったことを知らせず、かえって、被害者名義で親族にメロンを送るなど・・・ ⇒ 捜査段階の自白は信用でこいるとして犯人性が肯定。 |
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札幌事件: @被告人が被害者を電話で呼び出した、 A被告人が被害者の最終接触者であること、 B被告人が被害者の死体を持ち続け、嫁ぎ先で燃やしたこと、 C被告人が被害者の訪れた時間帯に救急車の手配をするなどしたような状況はうかがわれず、被害者が病死、事故死あるいは被告人の過失行為により死亡したとは考え難い ⇒被告人の犯人性を肯定。 |
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■ | ■(3) 複数事実の積み重ねと犯罪性の推認 | |
必ずしも被告人が犯人といえないとの説明が可能なものが多いが、複数の事実が積み重なることによって、被告人の犯人性が推認される場合。 | ||
京都事件: @ A B C D E もはやこれらの間接事実が単なる偶然に過ぎないということはできない。 |
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青森事件: | ||
■ | ■(4) 最高裁判例の視点からの検討 | |
最高裁H22.4.27: 「情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するものというべき」 〜 被告人の有罪方向を示す多数の情況証拠がある場合に、「被告人が犯人であるとすればこれらの情況証拠が合理的に説明できる」ということのみで有罪の心証を固めてしまうおそれがあることに対し、別の観点から警鐘を鳴らそうとしたもの。 |
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◇ | ◇7 殺意の存在 | |
信用性を肯定できる被告人の自白がある⇒犯行態様を確定することができ、殺意の認定も比較的容易にできる。 | ||
東京事件: ⇒ 犯行の客観的状況を含む大部分については信用性が高く、情況証拠と総合して被告人が被害者を殺害したと認定することができる。 |
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京都事件: @ A B ⇒ 被害者の沿い坊は他人手によるものとしか考えることができず、しかも、これらの領得行為や罪証隠滅行為が手際よく遂行されている⇒利欲的目的から被害者を死亡させたと考えるのが合理的⇒犯人は殺害の故意を有していたと強く推認することができる。 |
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札幌事件: 被告人が身代金目的で被害者を呼び出したとは認められず、 被告人が偶発的ないし衝動的に被害者を殺害したとも、個人的な怨恨、犯跡隠蔽行為等を含む動機に基づき被害者を殺害したとも認められず、殺意をもって被害者を死亡させたと認定するには合理的な疑いが残る。 |
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京都事件及び札幌事件はいずれも被告人の自白が存在せず、その余の証拠からも犯行態様や被害者の死因を特定することはできない。 but 京都事件においては、被害者が行方不明となった直後に被害者の現預金が引き出されたりひきだされようとしている⇒金銭目的の犯行が推認⇒犯人が殺意を有していたことが合理的に推認。 この推認を妨げる具体的な事実(ex.被害者が病気、自殺、事故等殺害されたこと以外の原因による死亡)等がうかがわれない限り殺意が認定。 札幌事件: 犯人が殺意を有していたことを合理的に推認させる事実自体が立証されなかった⇒殺意が認定されなかった。 |
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◇ | ◇8 被告人が黙秘していることについて(p464) | |
検察官:・・・・一切説明も弁明もしなかったのは、殺意をもって被害者を死亡させたため、説明や弁明をするとその中に虚偽が混入せざるを得ず、その矛盾を突かれて真相が露見する危険を回避する必要があったため⇒被告人が黙秘し供述を拒否したことは被告人が殺意をもって被害者を死亡させたことを推認させるもの。 | ||
1審判決:検察官や裁判官の質問に対して何らの弁解や供述をしなくても、被告人としての権利の行使にすぎず、被告人が何らの弁解を供述をしなかったことをもって犯罪事実の認定に不利益の考慮することは許されない。 | ||
控訴審:被告人の黙秘・供述拒否の態度を1個の状況証拠として扱うことは、被告人に黙秘権・供述拒否権が与えられている趣旨を実質的に没却することになり、到底受け入れることができない。 | ||
京都事件のように、検察官の立証により要証事実が推認される場合に、被告人が黙秘したためにこの推認を妨げることができず、黙秘したことが被告人に事実上不利益に働いてしまうことはあり得る。 but 札幌事件のように、そもそも検察官の立証が不十分な場合に、被告人が黙秘したり供述を拒否したりしたからといって、合わせ技一本のような形で要証事実が立証されたことにならないのは、被告人に黙秘権・供述拒否権が保障されている以上、当然。 |
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◇ | ◇9 訴因の特定について | |
「不詳の方法により被害者を殺害した」 | ||
刑訴法256条3項:訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法をもって罪となるべき事実を特定してしなければならない but 検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定すれば足りる |
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@被害者の死体が発見されず、殺阿木方法が不明 A被害者の死亡という事実は1回しか起こりえない B殺害の日時及び場所は特定されている ⇒上記のような公訴事実の記載でもやむを得ない。 |
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