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民訴法百選

★民訴法(第5版)
     
◆58
東京高裁
H21.5.28  
◆58:損害賠償額の算定
規定 民訴法 第248条(損害額の認定)
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
原審 個別談合のに基づく不法行為を認定し、損害賠償を命じた。
損害額については、民訴法248条を適用して合理的な根拠をもって実際に生じた損害額に最も近いと推測できる額を認定すべき⇒各工事の予定価格の8ないし10%と算定。 
判断  
解説  ●民訴法248条の趣旨 
判例:
損害賠償請求訴訟において、原告は、損害発生の事実だけでなく、損害の数額(損害額)も立証すべきであり(大判明治37.1.28)、損害額が証明されないときは、その請求を棄却すべきである(最高裁昭和28.11.20)。
but
損害の発生は認められるが、損害額を算定する根拠につき個別的・具体的な立証が困難であるため、損害額の立証が客観的に極めて困難である場合に、損害額につき厳格な立証を要求すると、原告に不当に不利益。
⇒民訴法248条
●損害額算定のスタンス 
A:控え目な金額を相当するのもやむを得ない
B:合理的な根拠をもって実際に生じた損害額に最も近いと推測できる金額を相当とすべきであるとする合理的算定説(加藤新太郎)
C:いずれとも言及しないもの
●法的性質 
A:証明度軽減説
B:裁量評価説
C:折衷説
●民訴法248条にいう「損害」 
財産的損害ばかりでなく、精神的損害(慰謝料)も含む。
←248条の制定をみた以上、適用を否定することに合理性はない。
●審理・判断 
民訴法248条を適用する場合には、裁判官は、訴訟資料・証拠資料、弁論の全趣旨、経験則、論理的整合性、当事者間の公平、一般常識などに照らして、相当かつ合理的な損害額を算定することが要請されるが、
合理的な根拠のある実際に生じた損害額に最も近いと推測できる金額を相当な損害額とすべき。
◆59
最高裁昭和39.7.28   
  ◆59:過失の概括的認定
判断 原判決は、前記注射に際し注射器具、施術者の手指あるいは患者の注射部位の消毒が不完全(消毒後の汚染を含めて)であり、このような不完全な状態で、具体的にそのいずれについて消毒が不完全であったかを明示していないことは、所論の通りである。
しかし、
@これらの消毒の不完全は、いずれも、診断行為である麻酔注射にさいしての過失とするに足るものであり、かつ
A医師の診療行為としての特殊性
⇒具体的にそのいずれの消毒が不完全であったかを確定しなくても、過失の認定事実として不完全とはいえないと解すべきではない。
解説 ●本判決の意義 
●過失の概括的・選択的認定の意義、その許容性と根拠について 
過失の概括的認定の中心に位置づけられる過失の「選択的認定」:
裁判所が、甲事実又は乙事実のいずれかが存在した又は双方の事実友存在したという心証を抱きながら、そのいずれの事実が存在したか又は双方の事実友存在したかということを確定しないまま、甲事実又は乙事実が存在したとするという方式で行われる事実認定。
このような事実認定の一般的許容性について疑問視。
←選択的に掲げられている各事実について裁判官が十分な心証を形成したとの保障は必ずしもなく、あいまいな事実認定を容認する可能性が否定できない。
but
学説は、本判決について肯定的に評価し、概括的・選択的認定を用いている裁判例を散見。
医師の麻酔注射によって注射部位にブドウ状球菌が侵入し、患者が脊髄硬膜外膿症に罹患したという本件の具体的な事実経過の下では、特段の事情がない限り、麻酔注射をする医師としてなすべき注意義務を怠っていたからである、という高度な蓋然性を備えた経験則
⇒規範的要件である過失についてそれが存在するとの法的評価。
⇒医師に過失があったという点をめぐって、@注射器具、A施術者の手指あるいはB患者の注射部位、のいずれかについて消毒不完全があったという概括的な認定をすることで足りるという結論。
〜医師の診療行為が専門的・技術的なものであり、原告の立証上の負担の軽減を図る必要性が高い、という実際的な要請からも支持されている。
上記のような高度な蓋然性が認められる経験則(定形的事象経過)の存在に基づいて過失を肯定する場合
A:過失の一応の推定と解する説
B:過失(を構成する具体的事実)の不存在の証明責任を相手方に転換するものと解する説
←過失が存在するとの法的評価を妨げる事実の証明は、反対事実の証明(本証)であると解し、これは、実質的に証明責任の転換と変わりない。
過失という評価の対象となる具体的事実(=注射器の消毒不完全であれ、注射液の不良であれ、注射行為に際して細菌などを体内に侵入させたこと)を主要事実ととらえれば、あえて一応の推定の法理を援用しなくとも、その結論を支持することができる(伊藤眞)。
●選択的認定の許容範囲の画定 
概括的認定の許容範囲について次の指摘。
@事実認定の正確性の確保
A法適用の正当性の確保
B当事者双方の攻撃防御の適正迅速の確保
C当事者および第三者の納得
など。
認定の対象となっている要件事実の内容の具体性が、概括的認定の可否を決する主要な要素となる。
本件に即していえば、
手術の際の過失の態様について、「ある手術をするための麻酔注射に際しての医師の過失」という概念によって括られる範囲(概括の範囲)をもって最大限とすべきであり、これよりも広範な、「ある手術に際しての医師の過失」といった概括の範囲を許容することは、否定。
●概括的・選択的な主張と弁論主義との関係 
主要事実は、
@裁判所が審理する上で手続の目標として明確かつ具体的な事実でなければならず、
A相手方にとっては防御の指標として十分なものであり、不意打ちのおそれを生じさせない具体的なものでなければならない。

過失があるとの概括的な主張では足りず、少なくとも先に述べた程度には具体化されていなければならない。
他方で、あまりに詳細すぎる事実の主張⇒審理の煩雑化を招くだけでなく、主張事実と証拠による認定時事との間に乖離を生じてしまし、例えば本件では過失といった規範的要件の法的評価を導くために必要な具体的な証拠の提出を困難ならしめるおそれ。
@争点に即した相手方の防御権の保障と、Aこうした危険性を防ぐという双方の緊張関係の中で、本件の争点である医師の過失をめぐる主張も具体化する必要があり、こうした観点からみて、「注射器具、施術者の手指、患者の注射部位等の消毒不完全」という概括的な主張とこれに基づく裁判所の認定によって過失を肯定した判断は妥当。
◆60
最高裁昭和43.12.24  
  ◆60:過失の一応の推定
判断   
解説   
     
◆62
最高裁H4.10.29   
  ◆62:相手方の主張立証の必要
判断 原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてなされた観点から行われるべき。 
@現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準にう不合理な点があり、あるいは
A当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審議会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、
B被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、
被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべき。
原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有する⇒被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきもの。
当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持しているなどの点⇒被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることを事実上推認される。
解説 ●本判決の意義および問題点
@そもそもこの主の訴訟で審理の対象となる事実はどのようなものであり、その主張・証明責任の分配はどのようなものか
A判決のいう行政庁側の主張・立証の必要は何を意味するか
Bそれは、民事訴訟法の一般理論との関係では、どのように位置づけられるものか
●審理の対象となる事実と主張・証明責任の分配 
処分取消しの判断基準:
@行政庁における審査基準に不合理な点がないか、
A審査審議および判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないか。

いずれも具体的事実に対する評価の問題。
主要事実は、そうした評価を基礎付ける具体的事実。
原子炉設置許可処分は裁量処分の一種
⇒処分の違法性を基礎付ける事実については、違法性を主張する原告の側に主張・証明責任があるというのが、裁量処分の無効確認訴訟に関する最高裁の立場。
本判決が「判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきもの」とするのも、この立場を踏襲。
●被告行政庁側の主張・立証の必要の意味 
一般には、主張・証明責任を負わない当事者の側に立証の必要が生じるのは、主張・証明責任を負う当事者が十分な事実を主張し、そのっ実について証明度を超える心証形成を可能とする証拠を提出した場合に限られる。
@本判決は、行政庁側の主張・立証の必要を導く根拠として、「原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持している」ことを挙げている。
A行政庁が自己の保持する資料を提出しないからといって、その判断に不合理な点があるとの心証形成が常に可能であるとはいえない。

@本判決にいう主張・立証の必要とは、裁判所の具体的な心証に依存した事実上の必要ではなく、むしろ、規範的な要求としての主張・立証の義務を意味すると解される。
A本判決が行政庁側の主張・立証の懈怠の効果として述べる事実上の推認の意味についても、経験則に従った裁判所の心証形成という本来の意味にではなく、義務違反の効果として一種の擬制を意味するものと解すべき。
B合理性の有無は具体的事実に対する評価の問題⇒事実よりもむしろ法的評価そのものを擬制したものと解される。
(伊藤眞は、証明妨害や証明への非協力が事実上の推定の根拠となることを判示するものする。)
●本判決の理論的位置づけ 
理論構成
A:事案解明義務の理論
B:信義則に基づく具体的事実陳述=証拠提出義務論
C:当事者間の実体法律関係に基づく情報提供義務
●本判決の限界 
◆63
最高裁昭和35.2.2    
    ◆63:証明責任の分配(1)
判断  本件不動産は、もと訴外Aの所有であったところ、売買を原因としてY1に所有権移転登記がなされ、さらに、Y2のため抵当権設定登記がなされたこと、A、Y1間の売買は、両名が通謀していた虚偽の意思表示であることは、いずれも原審の確定したところである。したがって、Y2が民法94条2項の保護をうけるためには、同人において、自分が善意であったこと主張、立証しなければならない。
しかるに、Y2は、原審において、前記売買が虚偽表示によることを否認しているだけで、善意の主張をしていないにもかかわらず、原審はY2は右所有権移転行為が通謀虚偽表示であることを知らなかったのであり、これを知っていたと認むべき証拠はない旨判示し、Xの請求を排斥。
⇒原判決は、主張責任ある当事者によって主張されていない事実につき判断をした違法がある。
解説 ●証明責任の分配 
●虚偽表示における第三者の善意の証明責任 
●おわりに 
◆64
最高裁昭和41.1.27  
    ◆64:証明責任の分配(2)
判断  土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなくその賃借地を他に転貸した場合においても、賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項による解除権を行使し得ない。
しかしながら、かかる特段の事情の存在は土地の賃借人において主張、立証すべきものと解するを相当する⇒本件において土地の賃借人たるYが右事情について何等の主張、立証をなしたことが認められない以上、原審がこの点について釈明権を行使しなかったとしても、原判決に所論の違法は認められない。
解説 ●証明責任 
●判例の流れ 
●抽象的要件要素と証明責任 
民法587条の「返還約束」や「金銭その他の物の授受」といった具体的要件要素についても、当事者が主張する具体的な事実がその要件要素に該当するかどうかについての裁判所による法的評価が必要。
but
「背信行為と認めるに足りない特段の事情」といった抽象的要件要素(規範的要件要素)については、その法的評価の重要性が格段に高い。
当事者が主張立証すべき主要事実となるのは、要件要素に該当すると評価される具体的事実(=評価根拠事実)。
評価根拠事実も主要事実⇒口頭弁論において主張されることが必要であり、当事者によって主張され、裁判所によって認定された一切の事実が評価根拠事実となりうる。
当事者が主張していないが証拠調べの結果明らかになった事実
⇒証拠調べの結果を考慮して行われる主張の整理の段階で、主張の追加がなされるべきであり、裁判所は必要に応じて釈明権を行使すべき。
●証明責任の分配
A(本判決):@賃貸人の承諾を得ることなく賃借権を譲渡・転貸をしたことが解除権の発生事実であり、A背信行為と認めるに足りない特段の事情があることはその障害事由
     
◆65
最高裁昭和32.2.8  
  ◆65:反対尋問の保障
判断 第1審におけるY1に対する臨床尋問が途中で、立会の医師の勧告によって打ち切られ、X側に反対尋問 の機会が与えられなかった・・・。
・・・・このように、やむを得ない事由によって反対尋問ができなかった場合には、単に反対尋問の期間がなかったというだけの理由で、右本人尋問の結果を事実認定の資料とすることができないと解すべきではなく、結局、合理的な自由心証によりその証拠力を決し得ると解するのが相当である(なお、Xが第1、2審において異議を述べ、またはY1本人の再尋問を申請したような事実は記録上認められない)
●小谷少数意見 
 
規定 民訴法 第一八一条(証拠調べを要しない場合)
裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは、取り調べることを要しない。
2証拠調ベについて不定期間の障害があるときは、裁判所は、証拠調べをしないことができる。
解説  大陸法系の民事訴訟制度:
人証の証拠価値に対する不信感および書証の証拠価値の優越
⇒裁判官による人者の原則、証人との事前面接に対する倫理的非難等が通底。 
英米型の民事訴訟制度:
陪審裁判の歴史を背景に、
「人証、特に公判における反対人者を経た証拠を最も重要かつ信用し得る事実認定の資料」とみなすのが一般的。

英米型の民事訴訟においては、反対尋問を経ない証拠は原則として証拠としての価値を持たない、あるいは証拠力を持たないとする原則が承認。
日本法は、大陸法系の民事訴訟制度をベースにするが、交互尋問制度が導入。 
@本来の交互尋問制度は、当事者がディスカバリー(開示)手続を通じ事実資料を事前に収集し、尋問に臨むことを前提とするが、日本法は交互尋問方式のみを採用し、ディスカバリー手続きを導入しなかったため、効果的な反対尋問をすることができないこと、
A(味方)証人の事前面接が行われることにより証人に対する暗示・歪曲の可能性等が存在
⇒交互尋問方式の導入は必ずしも成功したとはいい難いとの指摘。
実務における書証の重視、陳述書の盛行、党派的・説明的な観点からの物語的な供述等
⇒人証が裁判官の心証形成に占める重要性は、それほど高くない。
but
現行民訴法は、一方で証拠収集手続の拡充を図り、他方、裁判長が適当と認めるときは、当事者の意見を聞いて、尋問の順序を変更することを認める(民訴法202条2項)等の改正
⇒現在においても交互尋問制は、その骨格において維持されていると考えられる。
反対尋問権は、交互尋問制の下においては、保障されるべき重要な要素であることは日本においても変わらない。
本判決:
反対尋問権の保障がない場合に、無条件に証拠能力を肯定するのではなく、「やむを得ない事由」による場合に限って、証拠能力を肯定し、証拠力を裁判官の自由心証により判断できるとする。 
伝聞証拠:証言する者自身が認識したことを供述するのではなく、他人から伝聞したことを供述すること。
最高裁昭和32.3.26:
「民事訴訟においてぇあ、伝聞証言の証拠能力は当然に制限されるものではなく、その採否は、裁判官の自由な心証による判断に委されていると解すべき」であるとし、通説も賛同。
⇒むしろ反対尋問の機会を欠く証言についても一般的に証拠能力を肯定するのが整合的であるとの指摘。
●反対尋問権を違法にはく奪・制限する裁判所の措置に違法があった場合?
反対尋問権が違法にはく奪・制限された場合、尋問手続は違法であり、責問権の放棄・喪失がない限り尋問の結果は原則として証拠資料となしえないとされる。
but
民訴規則114条、115条のような法律上の制限を受ける場合に加えて、相手方当時者が適法な呼出しを受けていながら理由なく期日に欠席して反対尋問権を行使しない場合、証人の病状・死亡等が原因で反対尋問権の行使が客観的にみて不可能である場合、その反対尋問権の不行使は適法。(逆に証人ないし主尋問当事者の意識的妨害により反対尋問が不可能となった場合は違法であり、証拠能力を欠くとされる。)
第1審:Y1の証言内容を措信せず、XおよびAの証言から賃貸借契約の合意解除を認定
原審:逆にY1の証言を採用し、XおよびAの証言を措信し難いものとしている。
このように、第1・2審により同一証拠に関する評価が変更された場合、本来裁判所が釈明権を行使して、証拠評価の変更を指摘し、X側に新たな対応(再尋問の申請等)をする機会を与えるべきであった。
◆66
神戸地裁昭和59.5.18  
  ◆66:窃取された文書の証拠能力
判断 民事訴訟においては、例えば、一方当事者かが自ら若しくは第三者と共謀ないし第三者を教唆して他方当事者の所持する文書を窃取するなど、信義則上これを証拠とすることが許されないとするに足りる特段の事情がない限り、民事訴訟における真実発見の要請その他の諸原則に照らし、文書には原則として証拠能力を認めるのが相当であり、単に第三者の窃取にかかる文書であるという事由のみでは、なおその文書の証拠能力を否定するには足りないものと解すべきである。 
   
     
◆70
最高裁昭和39.5.12   
  ◆70:文書成立の真正の推定
判断 @民訴326条(現228条4項)に「本人又はその代理人の署名又は押印があるとき」というのは、該署名または押印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、
A文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当。

当該文書は、「本人又はその代理人の署名又は押印があるとき」の要件を充たす。
規定 民訴法 第228条(文書の成立)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
解説 ●本判決の意義・・「2段の推定」 
@私文書に存在する作成名義人の印影が同人の印章がによって顕出⇒反証がない限り、その印影は作成名義人の意思に基づいて成立したものと推定。
Aその結果として、民訴法228条4項により文書全体が真正に成立したものと推定される。
●民訴法228条4項の推定 
A:一種の法定証拠法則を定めたもの
B:法律上の事実推定
●第1段目の推定の意義 
●第1段目の推定の性質・・・事実上の推定 
●実践的事実認定論における2段の推定 
◆71
大阪地裁昭和61.5.28    
  ◆71:「証明すべき事実」の特定性・・模索的証明 
事案  所得税更正処分等取消訴訟の原告(X) による文書提出命令事件。
Xは、相手方Y(被告・・税務署長)がXの所得の推計のtまえに利用した同業者6名の作成した青色申告決算書の提出を求め、「証すべき事実」を「右各事業者がXに対する推計課税の基礎となしうる程度の同業者性を有しないこと」と表示した。
Yは、Xの申立ては「文書の趣旨」「証すべき事実」を明らかにしておらず不適法と主張。
判断  Yに、固有名詞を削除した上で、同業者のうち2名の青色申告決算書の写しを提出するよう命じた。 
規定 民訴法 第180条(証拠の申出)
証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
民訴法 第221条(文書提出命令の申立て)
文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 文書の表示
二 文書の趣旨
三 文書の所持者
四 証明すべき事実
五 文書の提出義務の原因
解説 ●模索的証明の概念・・・ドイツの議論 
●文書提出命令と模索的証明 
●模索的証明の許容要件 
 
●模索的な文書提出命令違反の効果 
●文書の特定