シンプラル法律事務所
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コンメンタール(民事訴訟法)

★Ⅰ  
     
     
     
     
     
☆2条  
  規定  第二条(裁判所及び当事者の責務)
 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
  ◆(1) 本条の趣旨 
     
  ◆(2) 立法の経緯 
     
  ◆(3) 構成迅速訴訟進行努力債務および信義誠実訴訟追行債務の内容と相互関係
     
  ◆(4) 民事訴訟における信義誠実の原則(p39)
  ◇(1) 民事訴訟における信義則の存在意義 
     
  ◇(2) 信義則と権利濫用
     
  ◇(3) 信義則はいかなる場合にその適用が問題となるか
  ■(ア) 訴訟状態の不当形成の排除 
     
  ■(イ) 訴訟上の禁反言(先行行為に矛盾する挙動の禁止) 
     
  ■(ウ) 訴訟上の権能の失効 
     
  ■(エ) 訴訟上の権能の濫用の禁止(p47)
     
     
  訴えの提起との関係
農地を買収された者が、農地の売渡しを受けた者に対する買戻しを理由とする所有権移転登記請求訴訟に敗訴⇒買収処分の無効を理由として、同様な訴えを提起。
前訴でも買収処分の無効が主張され、実質的に前訴の蒸し返し⇒控訴の提起を許されない。
 
損害賠償請求の訴えについて、提訴者が実体的権利の実現ないし紛争解決を真摯に目的とするのではなく、相手方当事者を被告の立場に立たせ、それにより訴訟上または訴訟外において有形・無形の不利益・負担を与えるなど不当な目的を有し、提訴者の主張する権利または法律関係が事実的・法律的根拠を欠き、権利保護の必要性が乏しいなど、民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き、信義に反すると認められる場合は、訴権を濫用するものとして訴えを却下すべき。(東京地裁H12.5.30、判例時報1917号)
     
     
     
     
     
   
☆17条 
  規定 第17条(遅滞を避ける等のための移送)
第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
  ◆1 本条の趣旨 
     
  ◆2 移送の要件 
    ①訴訟の著しい遅滞を避けるため必要があること、
②当事者間の衡平を図るために必要があること
のいずれかの要件を満たす必要。
     
    ②は、現行法で新たに加えられた要件で、旧法では「著しき損害」を避けるため必要があることが要件とされていた(旧31条)のを緩和・修正したもの。
特に、一般市民が企業と契約をするなど当事者間の実質的な対等関係が他のされていない場面で、合意管轄条項や義務履行地の裁判籍によって、一般市民が自己の住所から遠隔地にある企業の本店所在地等の裁判所に訴えられると、応訴について経済的・時間的に困難を生じる。
but
従来は、その困難が「著しき損害」といえる程度のものでない限り、移送による救済はできなかった。

現行法は、個々の事案ごとに当事者双方の事情は訴訟経済等を総合考慮して、「当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは」移送ができることとした。
    著しい遅滞といっても、当事者間の衡平といっても、その要件は抽象的なものであるので、結局は当事者双方の事情、訴訟経済その他の公益上の理由を総合的に比較衡量して判断すべき。
    当事者及び尋問を受けるべき証人の住所
使用すべき検証物の所在地
その他の事情
「その他の事情」として、
当事者の具体的事情、
訴訟代理人の有無およびその事務所の所在地、
当事者双方の経済力、
請求の趣旨・内容等
さらに交通の・通信の便、
関連請求の継続など併合審理の便なども考慮されよう。
    いずれにせよ、平成8年の改正は、当事者の利益を十分に考慮して移送をしやすくする趣旨を含む。 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
☆38条(p381) 
  ◆(1) 本条の趣旨 
  ◆(2) 共同訴訟人として訴えまたは訴えられることができることの意義 
  ◆(3) 訴訟の目的である権利義務が数人について共通であるとき
     
  ◆(4) 訴訟の目的である権利義務が同一の事実上および法律上の原因に基づくとき 
    共同訴訟人と相手方との間の各請求を理由づける原因事実が、その主要部分において同一であるのみならず、その法的根拠も基本的に同一である場合。
    ex.
同一の不法行為の複数の被害者が加害者に対して損害賠償を求める訴え
     
     
  ◆(5) 訴訟の目的たる権利義務が同種で事実上および法律上同種の原因に基づく場合 
     
     
     
     
     
     
     
★Ⅱ  
     
     
     
     
     
☆92条
  規定 民訴法 第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。
一 訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。
二 訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法第二条第六項に規定する営業秘密をいう。第百三十二条の二第一項第三号及び第二項において同じ。)が記載され、又は記録されていること。
2 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、第三者は、秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができない。
3 秘密記載部分の閲覧等の請求をしようとする第三者は、訴訟記録の存する裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の決定の取消しの申立てをすることができる。
4 第一項の申立てを却下した裁判及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第一項の決定を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。
民訴規則 第34条(閲覧等の制限の申立ての方式等・法第九十二条)
秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができる者を当事者に限る決定を求める旨の申立ては、書面で、かつ、訴訟記録中の秘密記載部分を特定してしなければならない。
2 前項の決定においては、訴訟記録中の秘密記載部分を特定しなければならない。
  ◆1 本条の趣旨 
  ◆2 保護される秘密 
  ◇1 総説
  ◇2 秘密としてのプライバシー 
    プライバシーのうち
①「当事者の私生活についての重大な秘密」であり、かつ、
②「第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある」ものであることが必要。
    一般に、民事訴訟においては個人のプライバシーが問題となることが少なくないが、訴訟記録の閲覧等の制限は例外

①秘密の重大性
②秘密の開示に伴い影響の顕著性
が要件とされる。
    〇性的被害(例えば、強姦)を受けた被害者の氏名等を特定する事実など、秘密の公開によってその人の社会生活が破壊され、立ち直れなくなるようなもの。
    セクハラ被害を請求原因となる慰謝料請求訴訟において、被害女性(原告)が求めた訴訟記録の第三者に対する閲覧等の請求の制限の申立てに対し、
これを第三者に閲覧ささえると、被害を受けた女性にとって重大な秘密が明らかにされることになり、社会生活を送るうえで重大な障害になることは容易に推認できる

全記録中の被害女性の住所・氏名・生年月日・愛称部分を全面的に、一部記録部分につき第三者に対する閲覧を禁止したケース。
   
  ◇3 営業秘密
     
  ◆3 閲覧等の制限の方法 
  ◇1 当事者の申立て 
     
  ◇2 閲覧等制限決定 
     
  ◇3 閲覧等制限申立ての効果 
     
  ◆4 訴訟記録の閲覧等の制限手続 
  ◇1 手続の概要 
     
  ◇2 閲覧等制限決定の取消しの申立ておよび不服申立て 
  ■ア 閲覧等制限決定の取消しの申立て 
  ■イ 即時抗告 
     
  ◆5 相手方当事者および弁護士の秘密保持義務 
  ◇1 相手方当事者の秘密保持義務
     
  ◇2 訴訟代理人である弁護士の秘密保持義務
     
第5節 裁判  
  ★ 前注 
  ◆1 裁判の意義 
  ◆2 裁判の種類 
  ◆3 本節に規定してあること 
  ◆4 確定判決の効力 
     
  ◇(2) 確定は寝k都賀有する効力 
  ■(ア) 既判力 
    既判力:終局判決において判断された事項についての裁判所および当事者に対する拘束力
     
     
☆114 既判力の範囲 
  ◆(1) 本条の趣旨 
     
  ◆(2) 確定判決 
     
  ◆(3) 既判力の意義および作用 
     
     
     
     
     
     
     
     
★Ⅲ  
     
     
     
☆137条 
    第137条(裁判長の訴状審査権)
訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
3 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
  ◆(1) 本条の趣旨 
  ◆(2) 訴状の受付
  ◆(3) 訴状の必要的記載事項の不記載
  ◆(4) 手数料の不納付 
  ◆(5) 補正命令 
  ◇(1) 補正命令の主体・意義
    裁判長の補正命令に対しては、即時抗告または通常抗告の提起ができない。
補正命令に対して不服のある原告は、これに従わずに、その後にされる訴状却下命令に対して即時抗告を提起し、そのなかで補正命令の当否を争うことができる。 
     
     
     
☆143条(訴えの変更) (2版p187)
    第一四三条(訴えの変更)
原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
2請求の変更は、書面でしなければならない。
3前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
4裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。
  ◆(1) 本条の趣旨 
     
  ◆(2) 訴えの変更の意義
    訴えの変更:
裁判所と当事者の同一を前提として、審判の対象としての請求の変更を指すもの。
訴状における請求の趣旨と原因の記載によって特定される請求を変更することを一般。
     
  ◆(3) 訴えの変更の効果(p197)
     
  ◆(4) 訴えの変更の要件 
     
  ◆(5) 請求の基礎の同一性 
  ◇(1) 
    学説:
訴えによって主張する利益、訴訟物である権利の発生事実、権利の発生する前提である社会現象または生活関係等と説明
A:訴えは当事者の利益主張のための手段⇒「請求の利益」の同一性は訴えによって主張する「利益」が同一であることを意味し、「請求の利益」の同一性は経時的概念であるから、裁判所は四囲の状況をしん酌して決定すべきであるという利益説。
B:訴訟物である権利の発生事実またはその一部が請求の基礎であるという発生事実説
C:旧請求の当否の判断に必要な主要事実と新請求の当否の判断に必要な主要事実とがその根幹において共通する現象
D:新旧両請求につき権利主張の根底をなす事実が根幹において共通性があること
E:訴えの目的物である権利または法律関係の発生を来たした根本の社会現象である事実とする事実関係説
F:請求を特定の権利主張として更正するための請求原因を拾い出した地盤となる状態に還元して拡大して観察した前法律的な同一生活関係または同一経済的利益についての紛争関係とする紛争関係説
    具体的考察においては、このような実体的側面だけでなきう、新訴と旧訴の事実資料の間に審理の継続的施行を正当化する程度の一体性と密着性があること
両請求の主要な争点が共通であって、旧請求についての訴訟資料や証拠資料を新請求の審理に利用できることを期待できる関係にあり、かつ各請求の利益主張が社会生活上は同一または一連の紛争に関するものとみられること
というような手続的なしてんをもあわせて考察することが必要。
判例の中には、
・新訴に対する被告の防御が旧訴に対する防御を著しく改める必要のない場合(大判)
・各請求原因によって生じた事実関係ないし法律関係の数個の主要部分の少なくとも一部が共通の場合、または一の請求の原因によって生じた法律関係が他の請求の原因である場合(大判)
・両請求とも社会的経済的にみて同一ともいうべき取引関係を基礎とするものであるうえ、その審理のための証拠資料はほぼ共通と認められる⇒両請求は、その請求の基礎を同一にするものと認められる(東京高裁)。

請求の基礎の内容を明示したもの。
    but現在では、請求の基礎に関する判例および下級審裁判例が相当数累積
⇒この点に関する判例の考え方の基礎を理解するために、これを、請求の基礎に変更なしとするものと、変更ありとするものとに分けて具体的に考察することが適当。
    肯定例:
1:貸金請求⇒手形金債権と併合
2:準消費貸借契約に基づく請求⇒代金残額そのものの請求
3:売買代金残額の請求⇒代金債権を引き受けたことによる請求
4:委託販売契約解除による損害賠償請求⇒委託販売契約に基づく請求と不当利得の請求
5:貸金の担保として振り出された約束手形に基づく請求⇒貸金債権の請求
6:売買前渡金返還請求⇒売買代金を騙取されたとする不法行為に基づく損害賠償請求を予備的に追加
7:割引を受けた金員を費消した等の理由の不当利得の返還請求⇒手形割引契約違反に基づく損害賠償請求
8:建物の売買契約に基づく所有権移転登記請求⇒請負契約に基づいて同建物所有権確認と所有権保存登記の抹消登記請求権を第1次請求俊、移転登記請求を第2次請求とした
9:雇用契約存在確認請求⇒違法解雇を理由とする損害賠償請求
10:第三社異議の訴えの係属中に執行の目的物が競売⇒損害賠償の請求に変えた
11:債権者代位権に基づいて土地明渡請求⇒土地取得⇒所有権に基づく土地明渡しの請求
12:建物の一部の使用貸借の終了を原因とする明渡請求⇒所有権に基づき建物全部の明渡請求に変更
13:建物退去土地明渡し⇒建物収去土地明渡しを予備的請求に加え、
建物収去土地明渡し⇒これに建物退去土地明渡しを予備的請求として加えた
14:売買契約の目的土地に入っていないとして、A地の所有権移転登記の抹消登記請求⇒B地の所有権移転登記の抹消登記請求に変更
15:占有回収の訴え⇒占有侵奪字に暴行による傷害に起因する損害賠償請求を追加
16:虚偽の譲渡を原因とする所有権移転登記の抹消登記請求⇒譲渡行為を詐害行為として取り消して抹消登記請求に変更
17:手形金の支払請求⇒偽造による損害賠償請求
18:第1次的に所有権、第2次的に賃貸借終了を原因とする建物明渡し⇒賃貸借契約の解除に基づく明渡請求に
19:登記原因の無効を理由とする所有権移転登記の抹消登記請求⇒仮登記担保権の実行に伴う清算期の支払請求に交換的に変更
20:土地しょゆ権移転登記手続を求める旧訴⇒供託金還付請求権確認の新訴への交換的訴えの変更
21:引渡命令の発せられた物件の自己に対する引渡しの請求⇒執行吏(執行官)への引渡しの請求
22:国家賠償請求訴訟において、憲法29条3項の規定に基づく損失補償請求を予備的・追加的に併合
but控訴審における変更は、行政事件手続法条の関連請求において相手方の同意が必要とされる

全体として、比較的穏やかに認めているといえるば、訴え提起後原告が当初の請求では提訴の目的を達成できないことに気が付いた場合において、審理の比較的早期に変更が求められた場合においては、緩やかに認めても弊害がないことを考え合わせれば理解可能な傾向といえよう。
    否定例:









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14
新訴と旧訴の事実資料の間に審理における継続的利用を正当化する程度の一体性と密着性があるか否かを基準に判断するとすれば、必然的に、具体的事案に即しs手検討されなければず、似たような訴訟物間の事案であっても、事件によって評価を異にする場合もありえよう。
     
     
     
     
     
     
     
☆152条
  規定 第152条(口頭弁論の併合等)
裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
2 裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
   
   
  3 弁論の分離 
    弁論の分離は、併合訴訟において、
①当事者や請求が多いため訴訟が複雑になり、審理が遅滞し、事案の解明の進まない
②当事者によって争点が異なり、それが訴訟の円滑な進行の妨げになる
③審理が進むにしたがって、当事者間で訴訟対応が異なってきた

訴訟(事件)を別個の手続に分離することによって審理を単純化し、迅速で円滑な審理を図るために行われる。
     
     
     
     
     
★Ⅳ  
     
     
     
     
     
☆202条
  規定 第202条(尋問の順序)
証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
2 裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
3 当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
     
     
  ◆9 質問の制限 
  ◇(1) 総説 
  ◇(2) 証人を侮辱し、または困惑させる質問
  ◇(3) 誘導質問 
  ◇(4) すでにした質問と重複する質問 
  ◇(5) 争点に関係のない質問
  ◇(6) 意見の陳述を求める質問
  ◇(7) 証人が直接経験しなかった事実について陳述を求める質問 
  ◇(8) 当事者の申立て等による質問の制限 
     
     
☆220条(文書提出義務) 
   
     
     
     
     
  ◆(13) 自己利用文書(4号ニ) 
    ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
     
    カッコ書き

公務員が組織的に用いるものとして保有している文書は本来行政情報公開法による開示の対象となる文書であり(行政情報公開2条2項参照)、自己利用のみを根拠に開示の拒絶を認めることは相当ではない。
     
  ◇(1) 基本的準則 
     
    最高裁H11.11.12:
①ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、
②開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、
特段の事情がない限り
自己利用文書に当たる。
    ①内部文書性
②不利益性(看過し難い不利益の存在)
③特段の事情の不存在
    ①について:
作成目的という主観的要素だけではなく、
記載内容や所持の経緯など客観的な事情も勘案して判断。
②について:
一種の法創造に近い作用。
開示の範囲について評価的な判断をすることを可能にした。
③について:
一般要件を満たした場合にも、なお個別の事情によよって(提出)義務を肯定できる余地を残した。
   
     
  ◇(2) 内部文書性 
    内部文書かどうかを判断する基準は、物理的な文書それ自体ではなく、その文書の中身である情報。

物理的文書それ自体ではなくその記載内容を証拠資料とする所掌の本質に整合的な理解。
    法令上の作成義務がある場合およびそれに準じる場合⇒原則として内部文書性は否定される。
←法令上の義務や根拠があるような場合には、客観的にみて、内部のみで文書の利用が完結することが想定されていない。
but
法令上の作成義務や根拠がない場合であっても、それだけで内部文書性が肯定されるわけではなく、肯定の判断に傾く1要素となるにとどまる。
    文書作成目的の公益性⇒内部文書性を否定するファクターとして機能。
最高裁H16.11.26:
法律上の根拠の存在に加え、
保険管理人および本件調査委員会は保険契約等の保護という公益のために調査を行うものというこができる
⇒4号ニ該当性を否定。
    開示の相手方が守秘義務を負っていても、それは内部文書性の否定には影響しない
開示を受ける者が守秘義務を負っていても(=それ以上に文書が開示されないことが前提とされるとしても)、純粋の内部利用ではなく外部に開示される点にかわりはないという考え。

一般義務化の趣旨に適合し、法の文言に鑑みても相当な判断。
    たまたま外務調査等の資料となることがありうるとしても、それが直接の作成目的にはなっていない⇒内部文書性は肯定。
外部での利用が作成目的に含まれている⇒主観的に内部理由を目的としていても、内部文書性は否定。
but
微妙な判断
●内部文書性肯定例
最高裁H11.11.12:
稟議書について、担当官の守秘義務を根拠にそれを排斥することは相当ではなく、
そのような検査の資料としての利用が予定されているものではない⇒内部文書性を肯定。
最高裁H17.11.10:
地方議会の議員が政務調査費によって行なった調査研究に係る報告書等に関する事案。
本件各文書は、本件要綱に基づいて作成され、各会派に提出された調査研究報告書及びその添付書類⇒専ら、所持者であるYら各自の内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であると認められる。

ここで根拠とされる条例・要綱の趣旨は、
政務調査費の交付を受けた会派が議長に提出すべき文書は収支状況報告書・執行状況報告書であり、調査研究報告書自体はあくまでも会派内部にとどめて利用すべき文書とされ、それが証拠書類等の資料とされているとしても、それは例外的に議長に対してのみ提示提示されるにすぎない。
証拠資料等とされることの例外性、すなわちそれが直接の作成目的ではない点が重視。
最高裁H22.4.12:
同様の文書が問題となった事案。
政務調査費の適正な使用についての各会派の自律を促すとともに、各会派の代表者らが議長等による事情聴取に対し確実な証拠に基づいてその説明責任を果たすことができるようにその基礎資料を整えておくことを求めたものであり、議長等の会派外部の者による調査等の際にこれらの書類を提出させることを予定したものではない。
⇒内部文書性を肯定。
 
●内部文書性否定例
最高裁H19.11.30:
銀行の資産査定の前提として債務者区分を行なうために作成・保全している資料に関して、

債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行なうために作成し、事後的検証に備える目的もあって保存した資料であり、このことからすろと、本件文書は、前記資産査定のために必要な資料であり、監督官庁による資産査定に関する前記検査において、資産査定の正確性を裏付ける資料として必要とされているものということができる。
⇒Y自身による利用にとどまらず、Y以外の者による利用が予定されているものということができる。

本件文書は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であるということはできない。
     
  ◇(3) 不利益性(p414)
  第1:その中核的なものは、法人内部の自由な意思形成の阻害、個人のプライバシーの侵害、営業秘密の侵害。
     
  当該文書の開示によって爾後の調査の目的達成が阻害されることなども不利益性として考慮。 
    最高裁H17.11.10:
地方議会の議員が政務調査費によって行った調査研究に係る報告書等に関する事案において
「前記のとおり、本件各文書には調査研究に協力するなどした第三者の氏名、意見等が記載されている蓋然性があるというのであるから、これが開示されると、調査研究への協力が得られにくくなって以後の調査研究に支障が生ずるばかりか、その第三者のプライバシーが侵害されるなどのおそれもあるものというべきである。」

本件文書の開示によってYら各自の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある。
     
  第2:不利益の判断方法として、文書の種類に応じた類型的な判断が基本とされている。
    最高裁H11.11.12:
「文書の性質」を重視し、具体的な対象文書の記載内容に論及しない
⇒文書の種類に応じた類型的な判断を基本とする判例の姿勢を示したのの。
     
    but
例外的な取扱いも認められ、そのような文書の種類による類型的判断が困難と考えられる場合には、個々の記載内容を問題にすることはでき、その場合にはイン・カメラ審理もあり得るものとされている。
    最高裁H12.3.10:
電話装置の機器の回路図等に関する事案

個別性の強い文書については、イン・カメラ審理を含めて個別的な判断を要する。
最高裁H18.2.17:
社内通達文書に関し、類型的判断を前提としながらも、
営業秘密の記載などがあると想定される場合に、それが看過し難い不利益をもたらすか否かは個別的な判断となり得、場合によってはイン・カメラ審理を前提とすべき。
     
     
  ◇(4) 特段の事情 
    最高裁H12.12.14:
信用金庫の会員代表訴訟において信用金庫の所持する貸出稟議書の提出義務に関する事案で、
「特段の事情とは、文書提出命令の申立人がその対象である貸出稟議書の利用関係において所持者である信用金庫と同一視することができる立場に立つ場合をいう」
but
会員代表訴訟を提起した会員は、信用金庫が所持する文書の利用関係において信用金庫と同一視することができる立場に立つものではない⇒特段の事情なし。

特段の事情は、内部文書性・不利益性の要件を例外的に阻害する事情として捉えられ、
本件では内部文書性を例外的に阻害する事情として、申立人と所持者の実質的同一性が問題となりうる点に鑑み、上記のような判断をした。
    最高裁H13.12.7:


文書提出により自由な意見の表明に支障を来し自由な意思形成が阻害されるおそれはない⇒「特段の事情があることを肯定すべきである」とした。
(現に営業活動を行っている金融機関が経営破綻後の文書開示の可能性を危惧して自由な意思形成が阻害されるおそれがあるといった影響は、上記結論を左右するに足りるほどのものとは考えられないと判示。)

文書所持者の特殊性、文書作成者の現状の特殊性、所持者交替事由の特殊性などが勘案され、結果として、不利益性を否定する趣旨の特段の事情が例外的に認められたもの。
    結局、文書の類型的性質から内部文書性要件および不利益性要件に該当する場合であっても、個々的事件においてそれらを阻害する特別の事情がある場合に、提出義務を例外的に肯定する要件とされているものと解される。
ex.
内部文書性要件との関係:申立人と文書所持者を同一視できるような例外的事情
不利益性要件との関係:文書を開示しても例外的に法人の意思形成の自由やプライバシーを害さない事由がある場合
において、特段の事情によって提出義務が認められる場面を肯定。
     
     
     
     
     
★Ⅴ  
     
     
     
     
     
☆247条(自由心証主義) 
    第二四七条(自由心証主義)
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
  ◆1 本条の趣旨 
     
  ◆2 自由心証主義の制度目的とその基盤 
     
     
  ◆3 自由心証主義の内容(p64) 
  ◇(1) 総説 
     
  ◇(2) 事実認定の基本型 
     
    第1:直接証拠
第2:反証
第3:間接事実
第4:間接推認の反証
    ①証拠価値の有無・大小の判断⇒裁判官のフリーハンド
②間接事実から直接事実を推認する経験則および推認を阻害する経験則の取捨選択⇒裁判官の自由な判断
③裁判かの自由な判断・フリーハンドといっても、恣意的な判断が許されるわけではなく、合理的かつ論理的な推論が要請される(自由心証主義の内在的制約)。
     
  ◇(3) 証拠法則からの解放の意義 
     
  ◇(4) 事実認定に必要な心証の程度(証明度) 
  ■(ア) 総説 
     
  ■(イ) 証明と証明度 
  □(a) 
  □(b)
     
  ■(ウ) 証明度と解析度・信頼度 
     
  ■(エ) 証明度の変容 
     
  ■(オ) 証明度の軽減
     
  ◇(5) 
  ◇(6) 
     
  ◆4 自由心証主義の内在的制約(p78) 
  ◇(1) 総説 
    自由心証主義は、裁判官の恣意的な事実認定を許容するものではなく、次のような内在的制約がある。
第1:
裁判官が事実認定にあたり証拠原因とすることができるものは、
訴訟手続の中で適法に提出された資料(=証拠調べの結果)および訴訟手続においてあらわれた状況(=弁論の全趣旨)
に限られる。
適法に実施された証拠調べの結果および弁論の全趣旨は、心証形成に際し、証拠原因とすることができるものかどうか証拠価値が検討されなければならない。
第2:
裁判官は事実認定にあたり、論理法則および経験則に従わなければならない。
論理法則・経験法則にしたがう⇒その事実認定が客観的かつ合理的で追認可能なものとなる。
論理法則:一般に承認・支持されている概念構成・判断・推論などをするにあたっての思考の原則。
   
     
  ◇(2) 経験則 
  ■(ア) 意義 
    経験則:個別的経験から帰納的に得られた事物の概念や事実関係についての法則的命題
     
  ■(イ) 経験則の証明 
     
  ■(ウ) 経験則の機能 
     
  ◇(3) 判決書の記載内容による担保 
     
  ◆5 自由心証主義の適用範囲 
     
  ◆6 弁論の全趣旨 
     
  ◆7 証拠調べの結果 
     
  ◆8 自由心証主義と事実認定の違法 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★Ⅵ  
     
     
     
     
     
☆312条(上告の理由) 
    第三一二条(上告の理由)
上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。

2上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の二 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。

3高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。
   
     
     
  ◆10 判決に理由を付せず、または理由に食い違いがある法令違反(本条2条6号)
     
     
     
     
     
     
     
  ◆11 高等裁判所に対する上告(本条3項) 
  ◇(1) 趣旨 
     
  ◇(2) 法令の意味 
   
  (イ) 
    ①上告裁判所が原審のした事実認定に立ち入って再審査をすることになれば、法が事実認定を辞意jつ審の裁判官の自由心証に任せていること(247条)に違背し
➁法律審としての権限を不当に拡張する結果に出する

正常な裁判官の正常な判断であることを疑わしめるような、常識に反し、論理の辻つまが合わない事実認定についてのみ、経験則を法令と開始その違反を上告理由とする権限にとどめるべき。
    通説および判例:
原審の事実認定が経験則に違反するときは法令違反に該当し上告理由となる。
経験則は法規そのものではない
but
①正当な事実認定は経験則によらなければなしえない
➁経験則違反の事実認定は立証責任の原則に違反してなされた事実認定と同じように、適法に確定された事実(321条1項)とはいえない

経験則違反もここにいう法令違反であって、高等裁判所に対する上告の上告理由となる。
     
     
     
☆318条(上告受理の申立て)
    第三一八条(上告受理の申立て)
 上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。
2前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由を理由とすることができない。
3第一項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。
4第一項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。この場合においては、第三百二十条の規定の適用については、上告受理の申立ての理由中前項の規定により排除されたもの以外のものを上告の理由とみなす。
5第三百十三条から第三百十五条まで及び第三百十六条第一項の規定は、上告受理の申立てについて準用する。
     
  ◆1 本条の趣旨 
     
  ◆2 上告受理 
  ◇(1) 上告受理申立ての効果等 
     
  ◇(2) 判例違反と法令の解釈に関する重要な事項
     
  ◇(3) 重要な法令解釈事項を含む事件の内容 
     
  ◇(4) 上告受理申立ての理由