シンプラル法律事務所
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離婚に伴う財産分与

★第1章 財産分与請求権の意味・内容  
  ◆1 
  ◆2 
     
     
     
★第2章 財産分与請求の手続  
     
     
     
★第3章 清算的財産分与  
  ◆1 清算的財産分与の根拠 
  ◇(1) 夫婦別産制 
    民法は、夫婦別産制⇒
@夫婦の一方が婚姻前から有する財産
A婚姻中自己の名で得た財産
は、その特有財産(民762@)
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産⇒その共有に属するものと推定(民762A)
不動産が特有財産か否かは、登記名義だけでは決することはできない(最高裁)。
    夫婦の財産:
(1)特有財産
(2)共有財産
(3)実質的共有財産
    (1)特有財産:
@財産取得について他方の協力がなかった名実共に夫婦各自の財産、また
A夫婦各自の専用品と目されるような、財産の性質により各自に帰属する財産
特有財産といえるためには、その対価なども実質的に自己のものであることが立証される必要。
立証なし⇒共有の推定が働く。
    (2)共有財産:
共同生活に必要な家財・家具、夫婦の協力で取得したもので双方の名義になっている財産のように、名実共に共有財産となるもの。
    (3)実質的共有財産:
名義は一方に属するが、実質的には共有になる財差。
婚姻中、夫婦の協力により取得されたが、名義は夫婦の一方になっている財産。
    財産分与においては、(1)以外のものが対象。
  ◇(2) 清算的財産分与の根拠 
  ■ア 実質的共有説 
    最高裁:
「離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配」するもの。
    多数説:
第三者との関係では実質的共有を主張できない
共有分割請求も否定
この共有関係は、原則として、離婚の際に、財産分与によって最終的な帰属が決せられる。
  ■イ 組合的共有とする説 
   
夫婦が共同で取得した財産は、実態的な共有
  ■ウ 夫婦の役割分担により生じる不利益を填補する制度とする説 
  ■エ 婚姻共同生活における法的評価の平等の実現を保障する制度とする説 
     
  ◇(3) 共有持分による請求 
  ■ア 実質的共有関係を物権上の共有としない説 
   
共有持分に基づく、その確認、持分移転、登記手続請求、共有物分割請求などは認められない。
  ■イ 実質的共有関係を物権上の共有とする説 
  ■ウ 実務(p53) 
  □(ア)  
    財産分与によって処理できない例外的な場合には、
共有に基づく請求を考慮するという枠組みがあるとの見方が可能。
  □(イ)  
    婚姻中に共有権確認を求めたり、更正登記手続や持分移転登記を求めることができるか?
実質的共有説⇒財産分与に委ねるべき。
  □(ウ) 
    夫婦が婚姻中に取得した財産における一方の持分が潜在的なものではなく、物権上の共有関係にあるとき:
時期を問わず、その持分権を主張することが可能。
but
このような共有関係にあるかどうか:
原則的には、物権変動の規律に従って、名義で決まる。
but
名義を仮装したり、登記名義については便宜的な場合もある
⇒取得の経緯や購入代金を誰が支払った等の具体的な事情も考慮して判断。
    この持分について、登記が更正等されたとしても、それによって直ちにその持分が特有財産となるわけではない。
婚姻中に取得した財産⇒その後の財産分与における対象となる。

このように考えないと、無形の寄与を持分に反映する機会を失うことになる。
  □(エ) 
    夫婦が婚姻中に協力して取得した財産の清算は財産分与においてなすべき。
原則ととして、共有持分に基づく請求は許されない。

単なる共有持分に基づく請求では、無形の寄与を考慮できない。
but
財産分与請求が不可能な場合、共有持分に基づく請求を許す。

そうでないと、持分を有する者が、これを主張する機会を失う。
  □(オ) 
    財産分与請求権が、申立期間の経過等の事情によってできなくなった⇒物権上の持分に基づく請求を認めることは可能。
    裁判例:

・婚姻中に取得した不動産がいわゆるオーバーローンであり、財産価値はゼロとして財産分与の対象とならないとされた場合に、財産分与の裁判とは別に当該不動産の共有関係について審理判断がされるべきとした裁判例。

・内縁配偶者が死亡した場合に、財産分与請求権はないが、内縁中に事実上の夫婦が共同で形成した財産について、生存配偶者の実質的持分の確認をした裁判例
   
  ◆2 清算的財産分与の方法 
  ◇(1) 清算的財産分与の考え方
  ◇(2) 清算の基準時 
  ■ア 分与対象財産確定の基準時 
    分与対象財産を確定するための基準時は、原則として、別居時。

清算は、夫婦が婚姻中にその強力により取得した財産について行うものであるところ、別居時には、その協力関係が終了する。
   
   
   
  ■オ 評価の基準時(p64) 
    清算の基準時:原則として別居時
対象財産の評価:分割時(裁判時)
    基準時に存在したがその後滅失:
滅失の理由に双方とも責任なし⇒財産分与の対象財産から逸出
一方に責任⇒そのまま存在として扱う
     
  ◇(3) 清算の割合 
  ■ア 清算の割合についての考え方 
  □(ア) 寄与度説 
  □(イ) 平等説
  □(ウ) 平等推定説
  ■イ 実務 
    特段の事情がない限り平等を原則
寄与度の差が大きく、これを考慮しないと実質的に公平といえない場合を例外とする。 

一般的な夫婦がその収入に見合った程度の財産形成をしている場合は、その寄与度は平等と扱われている。
  □(ア) 共働き型 
    共働きの場合、原則として平等であり、夫婦の収入に多少の差はあっても、特段の考慮はしない。
業態の収入の格差が大きい場合は、その収入の比を考慮する場合もあり得る。
but
家事労働を主としてどちらがしていたかは、考慮しなければならない。
  □(イ) 専業主婦型 
    @稼働する夫婦の一方が収入を得られるのは、他方の家事労働や育児に支えられているから
A夫婦の一方の名で取得された収入も、夫婦の生計の資とすべきもの

原則として、寄与度割合は平等。
  □(ウ) 家業従事型 
     
  ■ウ 寄与度に差が認められる類型(p71) 
  □(ア) 特別な資格や能力による格差 
     
  □(イ) 就労の態様による格差 
     
  □(ウ) 就労の程度による格差 
    疾病で就労できない場合は、他方に生活保持義務がある⇒就労しなかったことを理由に寄与割合を低くすることはできない。
     
  □(エ) 一方のみがする家事労働の評価 
     
  □(オ) 負の貢献 
    夫婦の一方が財産を浪費⇒これを寄与度に反映させる場合がある。
    浪費として寄与割合に影響を及ばすかどうかは、その支出の目的が個人的なもので、かつ資産及び収入状況に比して常軌を逸したものであるかどうかに、その消費以外の寄与度を考慮。
    配偶者の一方が病弱であって入院がちのため、医療費等が嵩んだ場合:
他方には、配偶者としての扶助義務がある⇒これを負の貢献とすることはできない。
     
  □(カ)特有財産の支出 
    婚姻前の預貯金などから財産を形成⇒寄与割合において考慮される。
    この場合は、個別の財産ごとに寄与度を検討。
     
  ◆3 清算的財産分与の対象財産(p80) 
  ◇(1) 夫婦が婚姻中にその強力によって取得した財産 
  ■ア 婚姻中に取得した財産の意味 
  ■イ 基準時において存在する財産 
  ■ウ 別居の際に持ち出された財産 
     
  ◇(2) 特有財産(p84) 
  ■ア 特有財産の意味 
  □(ア)  
    特有財産:夫婦の一方が名実ともに単独で有する財産
〜財産分与の対象とはならない。
←夫婦が協力して取得したものではない。
    @夫婦の一方が、婚姻前から有していた財産
A婚姻後であってもその親族からの贈与、相続などによって取得した財産
B夫婦の合意によって特有財産とした専有財産
    夫婦の一方が、婚姻前に取得した財産:
そのローンを婚姻後に支払ってきたとしても、本来的には、特有財産。
but
婚姻後の支払が、夫婦の収入でされた⇒その不動産全部が、夫婦の協力によって維持された特有財産となり、夫婦の婚姻後の支払によって取得した割合は、実質的共有財産と扱う。
    障害年金:特有財産ということはできない。

その給付額には配偶者の生計維持を考慮した加給がされる場合もあり、配偶者を含めた家族の生活費等として使われることが予定されたもの。
    特有財産か否か争いあり⇒特有財産と主張する者が、これを立証。
立証できない場合は、共有財産として分与対象財産として扱う。
     
  ■イ 夫婦の協力によって維持された特有財産 
    夫婦の一方の特有財産でも、
夫婦の協力があったことにより、喪失せずに維持されてきたもの

財産分与の対象tとなる。
ex.
夫婦の一方が婚姻前に取得した不動産のローンを婚姻後の収入(夫婦の共同財産)で支払った場合。
     
  ■ウ 特有財産の代償財産 
    特有財産の代償財産は、特有財産。
特有財産によって取得した財産も特有財産。
特有財産を売却してその代金で取得した財産も特有財産と同視できる。
特有財産である預貯金(持参金)が、預け替えられて現存するときは特有財産で良い。
     
  ■エ 特有財産の果実 
    特有財産の果実は、原則として特有財産。
ex.
預貯金の利息金
有価証券の配当金
     
  ■オ 特有財産を運用して得た財産 
  □(ア) 婚姻後に特有財産を運用して利益を得た 
    運用という活動に夫婦の協力⇒その利益には、夫婦双方の寄与が肯定 
  □(イ) 運用が生計の手段
    運用による利益は特有財産ではない。
    ex.大地主が賃料収入を得ている場合、その収入は、不動産賃貸業による利益ということができ、単なる果実ではなく、これによる収入は、妻が専業主婦であっても、夫婦が婚姻中にその協力によって取得した財産。
←夫が、その業務を行うこと自体に妻の貢献がある。
  □(ウ)無職で相続した配当金のみで夫婦が生活 
    配当金は職業による収入ではない。
but
夫婦間に、この中からその収入額や地位等を考慮して合理的といえる一定額を生計に充てるという合意があるものと認めることがえきる⇒その一定額から形成されたもの、例えば、夫婦の住居として購入された不動産は、財産分与の対象となる。
  □(エ) 夫婦の一方の特有財産た他方の寄与によって増加 
    ex.夫が妻の持参金を運用して、その額が増加
〜その増加部分は、夫婦が婚姻中に取得した財産として、財産分与対象財産ということができる。
but
妻が、第三者に依頼して運用して増加
〜財産分与対象財産ではなく、第三者への委託に夫が関与しても、それだけではその運用に対する寄与を肯定できず、財産分与対象財産とはならない。
     
  □(オ) 夫が相続した小規模の会社(非上場、全株式を夫が所有)を夫婦で協力して大きくした 
    株式の価値は、夫婦の婚姻時より大きく増加
but
原則として、株式を財産分与の対象財産とすべきではない。

@会社の業績や規模の拡大は、経営者の会社に対する貢献によるものであり、妻の寄与は、内助的なものであれば、夫個人の貢献であって、その寄与は、夫の収入(報酬)に反映するだけで、会社の収入に対するものではない。
A会社そのものに対する寄与があるのであれば、それは会社から報酬を受けるべきで、財産分与として夫が支払うという関係ではない。
but
会社の規模等によっては、個人営業の場合と比較して、不公平な結果となる場合⇒一切の事情として考慮。
夫婦で形成した財産が、一方の特有財産である会社の資金等につぎ込まれた場合や会社への貢献に対し会社からそれに見合う報酬の支払がされていない場合:
債権としての形をとっている⇒その債権を財産分与の対象とできる
そうでない場合:
会社が個人会社⇒その寄与によって、特有財産が失われずに、あるいは減少せずに維持されてきた(夫婦の協力によって維持された特有財産)と評価することが可能。
特有財産を運用して得た財産として、寄与により増加ないし維持された部分を財産分与の対象とする余地はある。
     
  ■カ 特有財産と婚姻中に取得した財産が混在する場合
  □(ア) 婚姻前から有する預貯金に婚姻中に取得した収入が混じりあっている場合(p90)
    A1:基準時における額から、婚姻時又は内縁開始時における額を控除したものが対象財産
    A2:控除する額は婚姻中の残額の最低額

預貯金残額が婚姻時の残額から増減を繰り返し、最低額が婚姻時の残額を少なくなった後に、最終的に基準時には婚姻時の残額より多額となった場合、特有財産は基準時に存在していなければならないとの原則。
vs.
特有財産が婚姻中に払い戻されていたとしても、これが存在しなくなった否かは、取引履歴等を詳細に検討しなければ結論がでないし、これを調べることは訴訟不経済といえる。

明確に存在しなくなったといえない限りは、基準時の時から婚姻時の額を控除した額とするのが実務。
    B:特有財産である預貯金と婚姻中に取得した収入が混じり合った場合、その時点で特有財産は存在しなくなった、あるいは夫婦財産形成のために全額が費消された。

婚姻時の特有財産の額を、寄与で考慮。
     
  □(イ) 婚姻中の収入による預貯金に、特有財産の果実や実家からの贈与金が混入している場合 
    A:特有財産からの入金額の合計を特有財産と扱ってその額を控除したものを財産分与対象財産とする扱い
B:全額を対象財産として特有財産からの入金額を寄与で考慮する扱い
     
  ■キ 特有財産と婚姻中の収入とを併せて不動産を取得した場合
  □(ア)特有財産と婚姻中の収入とを併せて不動産を取得した場合 
    A:特有財産によって取得した財産(代償財産)は特有財産
⇒特有財産を原資とする部分を出捐者の共有持分とする
vs.
@特有財産である持分を財産分与の対象とできない⇒これについて名義を変更できない。
A特有財産からの出捐額が明確でない場合は共有持分が判断できない。
不動産の場合、特有財産を頭金にして、ローン部分を夫婦の収入で支払う場合も多いが、特有財産部分は購入価格に対する割合として考慮する。
仲介手数料、登記費用のための費用等の出捐は、特有財産と実質共有部分の割合を決定する場合には、考慮しないのが通常。
    B:実質的な共有部分は、特有財産からの出捐部分(特有財産割合という)を除く部分であるが、不動産全体を財産分与の対象とする。
⇒特有財産により取得した部分についての名義を財産分与を理由に変更できる。
    C:財産全体を財産分与の対象とし、特有財産からの出捐は寄与割合で考慮する。。
   
  ◆4 問題となる対象財産 
  ◇(1) 第三者名義の財産 
  ■ア 法人名義の財産
  ■イ 家族名義の財産(p100) 
  □(ア) 子名義の財産 
    実質的に子に帰属⇒当然財産分与の対象とはならない。
子への贈与の意思が明確⇒子の財産
不明確⇒実質的に夫婦に帰属するかどうかは、その形成の趣旨・目的、管理状況等に照らして判断。
子の将来の進学に備えてした預貯金⇒実質的に夫婦の共有財産。
  □(イ) 夫婦の協力により取得された財産が、夫婦でなく、その父などの名義の財産とされている場合 
     
  ◇(2) 専用財産 
  ◇(3) 交通事故の賠償金等 
  ◇(4) 偶然の利益 
     
◇    ◇(5) 将来給付される退職金等 
  ■ア 将来給付される退職金が財産分与の対象財産となる理由 
    将来給付される退職金が済さん分与の対象財産となる

退職金が労働の事後的対価、賃金の後払いであるという点。
  ■イ 財産分与の対象となる退職金 
  □(ア) どのような退職金が財産分与の対象となるか 
    支給の蓋然性が高い場合に、財産分与の対象となる。
  □(イ) 退職が10年以上先でも、その退職金は財産分与の対象となるか 
    勤務期間に応じてその額が累積⇒対象財産とする。
  □(ウ)  
     
  ■ウ 対象となる退職金の額の算定(p110)
  □(ア) 退職金給付額算定の型 
    A:退職時における額が、あらかじめ確定している確定給付型
@基本給連動型
A定額方式
Bポイント方式
C基本給連動型
D定額方式
E資格等級若しくは役職別定額方式
    B:企業が拠出する額のみ確定していて、退職時に支払われる額は、運用実績に従うものとされ、確定していない確定拠出型:
拠出型に運用率を乗じて算出
  □(イ) 算定の時点 
    基準時
    基準時における退職金の額のうち、その婚姻期間(又は同居期間)に対応する額が財産分与の対象となる部分。
←財産分与の対象となるのは、基準時までに累積された退職金。
    具体的な算定方式:
基準時に自己都合で退職したと仮定した場合の退職金の額から婚姻時までに蓄積された額(婚姻時に退職したと仮定した場合の退職金の額)を控除した額。
勤務年数によって退職金の算定の率が変わらない場合⇒基準時までの在職期間による婚姻期間の割合。
     
  ■エ 分与の時期 
    原則としては、離婚に当たっての清算⇒即時に支払うべき。
     
  ◇(6) 保険金 
    生命保険については、基準時における解約返戻金の額を対象財産とする。
婚姻前の保険料の支払⇒婚姻時の解約返戻金の額を控除。
それが不明の場合は、契約期間の内の同居期間で按分する。 
学資保険についても、基準時における解約返戻金の額を対象財産とする。
  ◇(7) 年金 
  ◇(8) 資格・地位 
     
  ◆5 対象財産の評価 
  ◇(1) 評価の基準時 
    原則としては、分割時。
裁判によるときは分割に最も近い時期である裁判時(口頭弁論終結時又は審判時)
  ◇(2) 評価の方法 
     
  ◆6 財産分与における債務の扱い 
  ◇(1) 債務の財産分与対象性 
  ■ア 財産分与の対象性 
    A:消極説:清算的財産分与は、離婚時ないし婚姻関係破綻時に存在する財産を清算する制度⇒債務を財産分与の対象とするものではない(多数説、実務の大勢)。
B:積極説:債務も財産分与の対象とすべき。
消極説:
債務を独立して財産分与の対象としないというだけで、債務を全く考慮しないということではない
  ■イ 積極財産が皆無である場合 
    積極財産と消極財産がある場合は、全体としてマイナスであっても、積極財産は、その帰属を決める必要がある場合など財産分与の対象とすることができる場合がある⇒その場合、分与の過程で消極財産を考慮することとなる。
  ■ウ 固有債務の弁済に対する貢献 
     
  ◇(2) 財産分与において債務を考慮すべき場合 
  ■ア 資産形成のために生じた債務 
    考慮される債務:
積極財産を形成するために負担した債務
ex.
居住用不動産を取得するについて負担した住宅ローン
増改築費用として負担した債務
積極財産が家業によって形成された事例では、その家業のために負担した債務
投資用財産など何らかの財産を取得するために融資を受けたような場合:
その財産を対象とする⇒そのために負った債務も考慮
投資に失敗して債務のみ⇒考慮できない
  ■イ 家計維持のための債務 
    @家計を維持するために負担した債務は夫婦が共同で負担したもの
A家計の維持は資産形成に優先すべきもの
⇒考慮
ex.
医療費などの不時の出費のためにした借金
生活費が不足したことによってした借金
子の教育資金を捻出するために借りた教育ローン
ギャンブルによる借金
趣味のために生じた借金
身内や友人に融資するための借金
相続債務など
個人的な債務は考慮されない。
  ■ウ 預金を担保とする債務 
     
  ◇(3) 債務の負担割合(p131)
  ■ア 夫婦の一方の債務を他方が負担する根拠
    債務は財産分与の対象とならないという立場⇒清算を理由に、一方の債務を他方に負担させる理由はない。
but
現実には、公平な結論を導くあtめには、債務の帰属や負担割合を考慮せざるを得ない場合がある。

審判手続:財産分与は裁判所がこれを裁量によって決定し得る制度

債務の性質によって、財産分与において考慮する必要がある債務については、公平の見地から裁量によって負担者及び負担割合を決めることができる。
  ■イ 負担割合 
  □(ア) 
    清算という視点⇒基本的には、寄与度(責任度)によって決める。
but
@債務自体は財産分与の対象としない
A財産分与に当たって、公平の見地から考慮

負担割合は、債務の性質を考慮した上での債務負担の原因、経緯等をも考慮して決めるべき。
    ×負担割合は、財産形成に対する寄与の場合と同様、特段の事情がない限り平等とすべき
vs.
夫婦別産制の下では、原則は、あくまで債務の名義人以外は責任を負わない
  □(イ)家計維持のための債務(p132) 
    その内容は婚姻費用というべきものがほとんど。
⇒婚姻費用の清算という意味で双方が分担。

収入ないし、必要経費ということができる公租公課や職業費等を控除した基礎収入の比が具体的基準。
債務は弁済が予定されており、その弁済は収入による⇒収入を規準とすることは不合理とは言えない。
but
資産、収入、その債務が生じた原因等も考慮して負担割合を決める。
(妻が夫に無断でサラ金からした借金について、妻の責任が大きいとした例)
  □(ウ)資産形成のために生じた債務 
    日常家事債務ではない⇒その責任を負う者は、債務の名義人だけ。
but
その債務が資産形成の対価⇒資産と共に考慮すべき。
    ex.
不動産の価額から住宅ローンを控除したものを財産分与の対象に。

@債務を控除したものを当該不動産の評価とする考え方⇒当然に控除
A(実務):
物件と債務は別に扱い、その上で、売買物件の対価は取得者(買主)が支払うのが当然。
当該財産を夫婦の実質的共有とする⇒その対価であるローンは夫婦の共同負担となるという意味で控除。

オーバーローン⇒後記(4)
  □(エ)夫が自営業を営み、妻が主として専業主婦であった場合 
    その形成財産には、その額がそれほど多額でなければ、積極財産から債務を控除した残額に2分の1ルールが適用。
but
事業が振るわず、マイナス
〜そのマイナス部分の負担割合は必ずしも折半ではない。

@積極財産に2分の1ルールが認められるのは、専業主婦であっても家事労働等を含む有形無形の貢献があったことによる
A債務のみが残っている場合には、その債務が生じたことに専業主婦であった妻の責任があったとは必ずしもいえない。 
  □(オ)調停による合意の場合 
    家計維持のための債務⇒婚姻費用の清算という意味で、その資産、収入その他一切の事情を考慮して(民法760条)負担。
収入の比が具体的な基準となろう。
資産形成のための債務⇒その不動産を取得する者が全額を負担。
処分した場合は、原則として名義人が負担する。
 
  ■ウ 債務の考慮の仕方 
    債務の負担割合が積極財産の寄与割合と必ずしも同じではない⇒これを考慮して、それぞれが財産分与によって取得すべき額を算出。 
  □(ア) 積極財産に対する寄与割合と考慮すべき債務の負担割合が同じ場合 
  □(イ) 積極財産に対する寄与割合と考慮すべき債務の負担割合が異なる場合
  □(ウ) 財産や債務が複数であって、財産や債務ごとに寄与割合、負担割合が異なるとき 
     
  □(エ) 債務が分割債務であって、基準時(原則別居時)後も弁済が続けられて、債務残額が減少している場合(p136)
    考慮する債務:積極財産と同様に基準時における債務
    基準時後の支払=特有財産からの弁済:
当該不動産を取得する者が支払う場合⇒特に考慮する必要は生じない

支払った者以外の者が当該不動産を取得⇒基準時後の支払額を清算●●
×基準時後の弁済により取得した部分を特有財産として処理
vs.
不動産価額が取得時より低くなっているのが通常⇒清算される額が実際の支払額より低くなる。
   
  ◇(4) いわゆるオーバーローンの財産の財産分与
  ■ア 財産分与申立ての可否 
    夫婦が形成した財産は皆無⇒金員の支払を求める財産分与の申立ては認められない。
but
不動産が共有名義である場合などに、財産分与として、登記を一方の単独名義に移転するなど、積極財産の帰属を求める場合は、必ずしも不適法となるわけではない。
(債務は例外的に考慮⇒積極財産がある場合にこの部分を財産分与の対象とすることは、清算的財産分与としても可能)
  ■イ 不動産の名義変更・引渡しを求める場合 
    オーバーローンの不動産を一方に帰属させる場合、そのオーバーローンの処理が問題:
A:オーバーした部分は、夫婦双方が負担。

@清算という側面から、夫婦は、積極財産も消極財産も同じ割合で取得ないし負担しているものとして、差し引きして積極財産が残ればこれを分与割合で分割することになり、債務が残ればこれも同じ分与割合で負担。
A不動産全部を夫婦の実質的共有財産と扱う場合は、全部の対価を夫婦の資金で支払ったと扱うべきで、それは、残債務を夫婦共同の債務とすることとなる。
vs.
@不動産を取得しない者に不動産代金の一部を負担させることになって公平でない結果を招くことになる。
Aオーバーローンの場合は、資産ゼロであって、これを財産分与の対象としないのが原則であり、この場合は、代金を夫婦が共同で支払うものと扱う必要はなく、残代金債務は、その名義人が負担することになる。
B不動産が買主名義(登記名義)と債務の名義が異なる場合、代金を支払う者が実質的に所有権を取得するというべき⇒事案により、どちらかを最終的な取得者として、その者に債務を負担させることになる。
C
D
E
B:債務の全額を当該財産を取得する者が負担。
     
  ■ウ オーバーローンの不動産の処分清算 
    オーバーローンの不動産を処分した場合、処分者(所有名義人)を取得者として債務全部を負担させることが考えられる。
vs.
@処分清算の場合、取得者には取得による現実の利益があるなどの取得者が代金全額を支払うべきであるとする結論の妥当性がやは薄くなる。
A住宅ローンには、住居確保の支出という側面がある⇒処分して残った債務については、家族の生活のために生じた債務という側面を肯定できる。

家計維持のための債務と同様に、収入を基準とした分担が導かれる。
  ◇(5) オーバーローン不動産以外の財産分与対象財産がある場合の通算の可否 
  ■ア 他の財産との通算の可否 
    A:対象財産の合計価額を算出する際に、債務の全額を積極財産の価額から控除する
当該物件のほかに相当の財産が形成されているような場合、債務を早期に弁済することが可能であったはずで、このような場合には通算するのが公平

B:オーバーローンの財産は財産価値ゼロとし、他の財産のみを分割する
←その物件の取得者がその形成のために負担した債務の全額を負担する
    通算する方法:
積極財産及び消極財産(ただし、財産分与として考慮可能なものに限られる)を財産一覧表に記載して、積極財産から消極財産を控除した額を寄与割合で分割
  ■イ 通算すべきでない場合 
    @
A当該物件が収益のために使用されている場合
B他の財産が、そのオーバーローンの返済に利用されることが想定されていない場合。
(他の財産が、将来の退職金のみで、借入金の担保となっていない場合などに、通算して分与対象財産がない結果となることは、公平な結果とはいえない)
C当該不動産が代金の一部を特有財産から出捐したもので、これを除く夫婦の実質的共有部分はオーパーローンであるが、不動産全体をみれば、オーパーローンではない場合
  ■ウ 通算すべき場合 
    @オーバーローンの不動産以外の財産がオーパーローンの額を相当超えて存在する場合

基準時までに債務の完済が可能であり、これが期待できる場合には、債務を通算しても不公平とはいえない。

A
B
  ■エ 通算説の修正 
    通算⇒一方が債務のみを負担するという計算になる場合がある。
その場合の修正。
  ◇(6) 特有財産を加えて取得した財産の債務の清算 
  ■ア 債務が未だ残っている場合 
  ■イ 基準時後に残債務が支払われた場合 
     
  ◆7 一切の事情の考慮 
  ◇(1) 一切の事情を考慮する方法 
  ◇(2) 一切の事情が考慮される場面 
  ■ア 当事者が財産分与の対象財産の開示に協力的でない場合 
  ■イ 財産分与対象財産に不確定要素が大きい場合 
  ■ウ 
  ■エ
  ■オ 
  ■カ
  ◆8 過去の婚姻費用等の清算 
  ◇(1) 過去の婚姻費用の清算の必要性 
    最高裁:
裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについては当事者双方の一切の事情を考慮すべきもの⇒過去の未払の婚姻費用についても、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる。
  ◇(2) 対象となる過去の婚姻費用 
  ■ア 原則として別居後のもの 
  ■イ 未確定のもの
  ◇(3) 考慮の方法 
  ◇(4) 別居後の住宅ローン返済の考慮 
    住宅ローンの支払:
婚姻費用との関係では、財産形成の費用とみて、その算定では原則として考慮されず、
その清算は、離婚に伴う財産分与の際に行うべき。
    別居の住宅ローンの支払によって取得された持分は、支払った者の特有財産による取得部分として清算。
but
当該住宅に居住している者にとっては、住宅確保の費用という側面
⇒婚姻費用の算出において考慮される場合もある。
  ■ア 権利者居住住宅の住宅ローンを義務者が支払った場合 
  ■イ 居住者が、その住宅ローンを支払た場合
  ◇(5) 婚姻中の夫婦間の債務の清算 
★第4章 扶養的財産分与  
  ◆1 扶養的財産分与の性質 
  ◇(1) 扶養的財産分与の性質 
  ◇(2) 扶養的財産分与の内容 
  ■ア 扶養的財産分与算定の基準 
    離婚後は、元夫婦の各自が経済的に自立して生活すべき⇒扶養的財産分与は、これが困難な場合に補充的に認められる。 
     
     
★第5章 具体的分与方法  
  ◆1 分与の方法 
    財産分与対象財産の評価⇒分与額を算出⇒具体的な分与を行う。
    原則は、金銭の給付による分与。
but
家事事件手続法は、金銭の支払のほかに、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができるとしている。
     
  ◆2 金銭による分与 
  ◇(1) 支払方法 
  ◇(2) 支払の確保の手段 
  ■ア 抵当権設定 
  ■イ 同時履行 
     
  ◆3 現物による分与 
  ◇(1) 不動産を夫婦の一方に帰属させる場合 
  ■ア 住宅ローンのない不動産 
     
  ■イ 住宅ローンのある不動産 
  □(ア) 
    債務者の名義はそのままとして、現実の支払担当者を決める。
    債務者でない者に債務を負担させる場合:
法的な支払義務を負担させるためには、重畳的債務引受又は履行引受をさせ、元の債務者との関係では、その内部分担をゼロとすることが考えられる。
履行引受⇒引受人は、債権者に対して第三者として弁済。
将来求償の問題が生じた際の解決基準を示しておくことが全く無意味とはいえない。
    審判:
附随処分の範囲を超えている
⇒審判前に、手続外で当事者が重畳的債務引受や履行引受の意思表示をし、これによる実体法上の効果を前提に審判をするのが妥当。
    調停:
その相手方に所有名義があり、相手方が債務の名義人でもある不動産を申立人に分与

@申立人が履行引受をした上で当該不動産については財産分与を原因として申立人に移転登記をし、相手方が支払をした場合には求償できる旨を定める場合
A申立人が住宅ローンの弁済を約束し、完済時に移転登記をするという方法
     
     
     
  ◇(2) 退去・明渡し 
    夫婦の一方が占有する不動産を他方に分与させる場合、
その退去・明渡しは、分与を受けた者に完全な所有権を取得されるもの
⇒分与に伴う附随処分として許される。
     
  ■4 利用権の設定 
     
  ■5 その他の財産権の移転 
     
★第6章 財産分与審判の主文  
     
     
★第7章 財産分与と詐害行為等  
     
     
★第8章 財産分与に伴う税金  
     
     
     
★付録 条項集