シンプラル法律事務所
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真の再生のために(個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP−トップ |
論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
中国現地法人「撤退」の法務 | ||
状況 | ● | ●厳しい操業環境 |
最低賃金の上昇 必要な労働者を確保するための賃金引上げ |
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2011年からは外国jン従業員の社会保険の加入の義務付け ⇒日本からの出向者の人件費の増大 |
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2008年の「企業所得税法」の施行後も残されていた用法下の生産性外商投資企業に対するいわゆる2免3減の税務上の優遇措置も、2012年をもって基本的に終了。 | ||
半日デモによる襲撃や焼き討ちや騒動に便乗する賃上げストライキ等、中国の政治的リスクの認識。 | ||
● | ●市場としての重要性は変わらない | |
● | 外国向け製品の製造を行う企業では、チャイナリスクを避けるべく、またはより低い人件費を求めて生産拠点を中国からインドや東南アジア諸国へ移転。 中国現地法人を縮小、撤退の動き。 |
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撤退方法 | @日本企業が有する現地法人の持分の譲渡 A現地法人の解散・清算による方法 |
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■持分譲渡 | ■持分の譲渡による撤退 | |
● | メリット: @従業員の削減、解雇や資産、負債の整理を当然に伴わない。 ⇒撤退の手段としては原則としてリスクが小さい。 A持分譲渡契約の締結にさえ至ってしまえば、その後の手続の不確定要素は小さい |
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デメリット: @合弁相手に譲渡する場合はまだしも、独資の企業の持分の譲渡には相手が不可欠。 A撤退時の契約条件は譲渡人側に不利であることが多い。 |
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実情: 持分譲渡を選択する企業は多い。 |
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■解散・清算 | ■解散・清算による撤退 | |
● | ●特徴 | |
解散・清算: 現地法人のすべての資産、負債や契約関係を処理し、現地法人の法人格自体を消滅させる手続。 |
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手続終了までの見通しが立てにくい ← @解雇する従業員や顧客など交渉相手や、必要な手続は持分譲渡による撤退の場合と比べて多い。 A税務調査を受けることも多い。 |
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現地政府の抵抗を受ける可能性 ←地元経済に対する影響も小さくない |
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従業員に対する経済補償金の支払や、それまで潜在的であった未払の社会保障料等の債務も遡及的な支払が必要⇒多額の資金が必要となることがある。 | ||
現地法人の業務を他の会社に移管する場合、移管先との協力も必要となる。 | ||
■ | ■撤退・事業縮小に伴う法的な諸問題 |
中国での労働関係 | ||
トピック | 2010年には、広東省仏山市におけるホンダ系列の自動車部品工場でのストライキ報道に端を発し、広東省を中心に、中国全土で日系企業に対するストライキが広がる。 | |
労働関係法 | @労働法:1995年1月1日施行 A労働契約法:2008年1月1日施行 |
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立法法83条: 特別規定、新たな規定を適用 →矛盾点については、労働契約法が優先。 |
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@契約方法 | 書面により労働契約を締結することが義務づけられる。(労働法19条、労働契約法10条) | |
1年経っても書面による契約を締結できない ⇒ 1か月を超えた日から2倍の賃金を支払った上で、1年を経過した日をもって、期間の定めのない契約となる。(労働契約法実施条例7条) |
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集団契約を締結して、全従業員に効力を及ぼすことができる(労働法33条)。 ただし、個別の労働契約は集団契約の内容を下まわっていはならない。 (労働法35条、契約法55条) |
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A試用期間 | 労働契約期間と試用期間(労働契約法19条): 3か月未満→なし 3か月〜1年未満→1か月未満 1年〜3年未満→2か月未満 3年以上→6か月未満 |
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試用期間中の賃金は、約定賃金の80%以上で、かつ企業所在地の最低賃金基準以上(労働契約法20条) | ||
B労働契約の期間 | 労働契約の期間: @期間の定めがあるもの(労働契約法13条) A期間の定めがないもの(労働契約法14条) B一定の事業完了を期限とするもの(労働契約法15条) |
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期間の定めのない契約の締結義務(労働契約法14条2項) @同一の使用者の下で10年以上継続勤務した場合 A連続2回期間の定めのある契約を締結した場合 @又はAの場合で、労働者がが労働契約の更新、契約を申し出たとき、またはこれらに同意したときは、労働者が期間の定めのある労働け約の締結を申し出た場合を除き、期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。 |
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労働契約法14条2項 使用者と労働者との合意を経て、期間を定めない労働契約を締結することができる。 次の各号に掲げるいずれかの状況に該当し、かつ労働者が労働契約の更新、締結を申し出、または同意した場合は、労働者が期間の定めのある労働契約の締結を申し出た場合を除き、期間を定めない労働契約を締結しなければならない。 (1)労働者が当該使用者の下において、勤続10年以上である場合 (3)期間の定めのある労働契約を、連続して2回締結し、かつ労働者が本法第39条(使用者による労働契約の解除)及び第40条(使用者による労働契約の予告解除)第1号、第2号に定める事由に該当せずに労働契約を更新する場合。 |
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上海市高級人民法院の「「労働契約法」適用の若干の問題に関する意見」4条 (4)使用者が労働者と連続して数回期間の定めのある労働契約を締結した後、労働契約を更新するときは期間の定めのない労働契約を締結しなければならないことについて 「労働契約法」第14条第2項第(3)の規定は、労働者がすでに使用者と連続2回期間の定めのある労働契約を締結した後、(使用者が)労働者と第3回の契約を更新する時、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申し出た場合を指す。 |
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C賃金 | 同一労働・同一賃金の原則(労働法46条) 従業員などは、この条文を根拠に、外国人との賃金格差を指摘 |
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企業の賃金自主決定権(同法47条) | ||
最低賃金保証(同法48条) | ||
通貨払・直接払・全額払・毎月1回以上の一定期払の原則(同50条) | ||
休暇期間の賃金の支払(同51条) | ||
D労働時間と休暇 | 労働時間: 1日8時間(労働法36条) 1週間の平均40時間 「従業員の労働時間に関する国務院の規定3条」、裁量労働時間制、変形労働時間制の採用可能 |
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残業時間: 原則1日1時間 特別の理由がある場合、1日3時間 1か月36時間まで(労働法41条) 賃金は、通常の1.5倍(労働法44条) |
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休日出勤: 振替休日を与えるか、又は賃金2倍。 法定休暇日の場合は、賃金3倍。(労働法44条) |
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年次有給休暇: 1年以上10年未満→5日 10年以上20年未満→10日 20年以上→15日 |
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E契約の終了 | 当事者の合意による解除(労働契約法36条) | |
企業による無催告解除(同法39条) @労働者が試用期間において採用条件に適合しないことが証明された場合 A企業の規則・制度に重大な違反があった場合 B重大な職務怠慢、私利のために不正行為があり、企業に重大な損害をもたらした場合 C労働者が同時に他の使用者と労働関係を確立し、当該企業の職務上の任務の完了に重大な影響をもたらし、または企業による申入れを経たのに是正を拒絶した場合 D第26条1項1号所定の事由(詐欺・脅迫等)に起因して労働け約が無効となった場合 E法により刑事責任を追及された場合 |
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企業による催告解除(同法40条) @労働者が病気にかかり、または業務がい出負傷した場合において、所定の医療機関の満了後に元の業務に従事することができず、かつ企業が別途手配した業務に従事することができない場合 A労働者が業務に堪えることができず、養成・訓練または業務職位の調整を経て、なお業務に堪えることができない場合 B労働契約締結の際に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じたことにより労働契約を履行するすべがなくなり、企業と労働者との協議を経ても、労働契約の内容の変更につき合意を達成することができなかった場合 |
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企業による整理解雇(同法41条) 以下の場合、一定の手続きを経て、整理解雇できる。 @企業破産法の規定により更生をするとき A生産・経営に重大な困難が生じたとき B企業の生産転換、重大な技術革新または経営方針の調整により、労働契約の変更を経た後に、なお人員を削減する必要があるとき C労働契約締結の際に根拠としたその他の客観的経済状況に重大な変化が生じた場合 |
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解除以外の終了事由(労働契約法44条) @契約期間の満了したとき A労働者が法に従い基本年金保険の待遇を受け始めているとき B労働者が死亡ししたかまたは人民法院から死亡宣告または失踪宣告をだされたとき C使用者が法に従い破産宣告を受けたとき D使用者が営業許可証を取り消され、または廃業若しくは取消しを命じられ、もしくは使用者が解散を決定したとき E法律・行政法規に規定するその他の状況が生じたとき |
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F経済補償金 | 経済補償金の支払いが必要な場合(労働契約法46条) @従業員の都合によって契約を解除する場合と A従業員の重過失によって契約を解除する場合以外で、 労働契約が終了するときは、原則として経済補償金の支払いがある。 |
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計算方法(労働契約法47条) 経済補償金=(契約解除前12か月における平均月給額)×勤続年数 従業員の平均月給額が、その市の前年度の従業員平均月給額の3倍を超える場合は、3倍に相当する金額を基礎とし、勤続年数は最大12年となる。 勤続年数6か月未満の場合は、0.5年として計算し、6か月以上1年未満の場合は、1年として計算する。 |
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G紛争発生時 | 労働争議が発生 ⇒ 労働者の協議、調停、労働仲裁、労働訴訟。 いきなり調停や労働仲裁を申立はできるが、いきなり訴訟を提起することはできない(労働仲裁前置主義)。 |
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Hストライキ | 実態 | 2010年には、広東省仏山市におけるホンダ系列の自動車部品工場でのストライキ報道に端を発し、広東省を中心に、中国全土で日系企業に対するストライキが広がる。 |
2010年ストライキの特徴: @長期化 A周辺会社へ伝染(メール、MMSなどの発達) B首謀者不明 C大規模化 D警察や労働局は、労働者を逮捕したり取り締まったりせず、むしそ企業に妥協を要求。 |
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権利性 | 1982年憲法で削除⇒憲法上の権利ではなくなった。 (ケ小平の掲げる改革開放の経済政策のもと、外国企業にとって不安材料であったストライキが削除された。) |
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中国は2001年に「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」に批准し、同盟罷業権を定めた第8条を留保していない。⇒権利性あり。 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約 第8条〔団結権及び同盟罷業権〕 1この規約の締約国は、次の権利を確保することを約束する。 (d) 同盟罷業をする権利。ただし、この権利は、各国の法律に従つて行使されることを条件とする。 |
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法律上の規定: 工会法(組合法)27条に「ストライキ(停工)」という文言がでてくる。 工会法27条 会社で、ストライキ(停工)またはサボタージュ(怠工)事件が発生した場合、工会は労働者を代表して、会社または関係分野と協議し、労働者の意見及び要求を反映し、かつ解決意見を提出しなければならない。労働者の合理的要求に対しては、会社は、これを解決しなければならない。工会は、会社が任務を遂行し、速やかに生産・業務秩序を回復させることに協力しなければならない。 |
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法整備 | 集団交渉についての法整備 @広東省企業民主管理条例 A深セン市賃金集団協議条例 〜 これらの条例では、集団協議が正常に行われている限り、ストライキやサボタージュなどの方法で、賃上げを要求してはならないことにあんっている。 これらの条例には、企業側に厳しい条件が課されており、台湾企業や香港企業から施行反対の意見が多い⇒制定に時間がかかっている。 |
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予防対処方法 | 予防: @日頃から意思疎通は図り、風通しをよくし、従業員の不満がたまらないようにする。 A合理的な昇進・昇給制度を導入する。 B中国人幹部を登用する。 C就業規則で、ストライキの首謀者、参加者の処遇を決めておく。 (ストライキ参加だけで解雇は困難。) |
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対処: @すぐに労働局と公安に連絡して相談する。 A参加者と非参加者を分けて、参加者を増やさないようにする。 B現場の証拠を残す(ビデオ・写真・証人の証言など) Cストライキが行った場合の対処マニュアルや連絡先名簿などを作成。 |
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思考 | @合理性のある処遇にする。 A理解を求める。 Bストライキ⇒給与なし。 C首謀者⇒解雇。 |
中国華南地区の加工貿易・香港 | |||
華南地区 | 広東省、広西チワン族自治区、海南省、福建省。 香港、マカオを含む。 |
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広東省のGDPは中国の全土の約11% | |||
加工貿易とは | 中国国内の企業が、海外から保税(関税や増値税が賦課が保留されること)扱いで輸入した部材(原材料・補助材料・部品・備品・半製品・包装材料など)を用いて、加工または組立てを行い、完成品を再輸出する貿易形態。 | ||
来料加工 | 輸入材料を外国企業(加工受託者)が無償で提供し、また、加工費をもって償還する必要もなく、完成品は外国企業(加工委託者)が販売し、経営企業(中国企業)が加工費を受け取る加工貿易の方式(加工貿易審批管理暫行弁法2条2項) | ||
@原材料費:無償提供 A原材料の増値税:輸入時に保税、輸出時に免除 B原材料の国内調達:原則不可 C国内販売:原則不可(100%輸出が原則) D輸入先と輸出先の同一性:原則として同一 |
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進料加工 | 輸入材料は、経営企業(中国企業)が代金を支払って輸入し、完成品は、経営企業(中国企業)が輸出販売する加工貿易の方式(加工貿易審批管理暫行弁法2条3項) | ||
@原材料費:有償提供 A原材料の増値税:輸入時に保税、輸出時に免除・控除・還付の方式により計算 B原材料の国内調達:可 C国内販売:可 D輸入先と輸出先の同一性:異なる場合あり |
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華南地区における来料加工 | 外国企業(主に香港企業)が、政府系の内資企業と契約を締結し、内資企業の名義を借りたうえで、実質的には工場(来料加工廠)の運営管理を行い、来料加工形態の加工貿易を行う。 | ||
香港・マカオ・台湾企業は、外国企業と同様に扱われる。(外資企業法実施細則82条等) | |||
華南地区 | @実質的な運営主体: 外国企業(主に香港企業) |
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A中国国内の工場の法人格: 実質的にはない。 機械・設備等は外国企業の資産。 |
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B登録資本金: 会社設立の必要がなし⇒適用されない。 |
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C企業所得税:みなし課税 企業所得税金額=納税所得額罰適用税率25% 納税所得額=コスト費用支出額/(1−課税所得率7%)×課税所得率7% |
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D外貨振込時の手数料: 加工賃の振込金額の5%から30%の費用を鎮政府などが徴収 |
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E移転価格税制: 法人格なし⇒適用されにくい。 |
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F中国での会計監査: 必要なし。 |
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他の地域 | @実質的な運営主体:外資企業・内資企業 | ||
A中国国内の工場の法人格の有無:あり | |||
B登録資本金:会社法上3万元(外資企業の場合地域により異なる) | |||
C企業所得税 企業所得税額=納税所得額×適用税率25% 納税所得額=収入総額ー(不徴税収入+免税収入+各経費項目控除+損失補填許容額) |
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D外貨の振込時の手数料:徴収費用なし | |||
E移転価格税制:適用される | |||
E中国での会計監査:必要 | |||
来料加工廠が生まれた背景 | @華南地区では、外資企業の来料加工の許可の取得が困難であった(原則、外資企業=進料加工)。 A企業所得税などが安く、増値税(消費税のようなもの)、関税がかからない上に、移転価格税制が適用されないため、不必要に多額の資金を中国に残す必要がない⇒外国企業にとってメリットが大きい。 B鎮や村などの地方政府には、外国企業から来料加工廠に振り込まれる加工賃から、20%前後の換金手数料が入る⇒地方政府にとってもメリットが大きかった。 |
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来料加工廠の問題点 | @工場建物・機械の所有権などの法律関係が不明確。 A中央政府に入る企業所得税などが少ない。 B中国企業が成長している現在において、簡単な組み立てのみを行う外資企業は不要。 C「世界の工場」から「世界の市場」を目指すとともに、貿易黒字の解消を考える中国において、加工貿易しかできない来料加工廠は時代にそぐわない。 D来料加工廠の会計内容が不明確。 E一部の資金を香港から違法にハンドキャリーしている実情。 F沿岸部と内陸部の賃金格差が大きいため、工場を内陸部に移転し、格差解消を目指す上で、沿岸部には来料加工廠は不要。 ⇒ 来料加工廠を規制し、三資企業(独資・合弁・合作企業)の設立を奨励 |
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企業再編 | 来料加工廠の三資企業転換 | ||
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今後の華南地区 | ●加工貿易の減少 ← @加工貿易に対する既成の強化(制限類や禁止類の増大) A政府の来料加工廠から三資企業(独資企業)への転換政策 B華南地区の労働賃金の上昇 |
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●世界の工場から世界の市場へ(第2次産業から第3次産業へ産業モデルの転換) →工場は内陸部や海外に移転
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香港企業 | 設立の背景 | @ | 華南地区における来料加工廠運営のため |
A税制面 | 低い企業所得税(現在16.5%) | ||
子会社の配当課税に対する源泉徴収課税なし 〜 外国子会社配当益金不算入制度(日本国内企業が、その発行済株式等の25%以上の株式等を、会社の配当等の支払義務が確定する日以前に6か月以上引き続き直接有している外国子会社から受ける配当等について、その額の95%に相当する金額を、その国内法人の各事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されない制度)が導入されたことも影響。 |
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B | Nominee株主・役員が合法 | ||
株主や取締役の名義貸し制度。 通常、真の株主などに対して、日付なしの辞表と全権委任状を発行することで、会社コントロールの保全が図られる。 |
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C | 設立が容易 | ||
最低資本金1万香港ドル、払込資本金1香港ドルでよい。 設立期間1〜3週間程度。 |
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D | 資産隠し | ||
注意点 | @ | 移転価格税制 | |
A | タックスヘイブン対策税制 | ||
所得税20%以下の国が対象 日本の居住者が50%超の株式を有するタックスヘイブン法人が原則対象となる。 |