シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室TEL(06)6363-1860
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真の再生のために(個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP−トップ |
論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
手続(大阪地裁(本庁)) | ||||||
@申立 | 地裁⇒第1民事部(労働事件⇒第5民事部、商事事件⇒第4民事部、知財事件⇒第21民事部) 受付へ申立書、郵券提出 (支払保証委託契約による立担保の許可申請書) (債権仮差押えの場合の賃族催告申立書) |
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簡裁⇒保全係 | ||||||
A裁判所から連絡 | 面接時間打合せ・・・裁判所から連絡あり(面接ない場合あり) | |||||
B面接 | 裁判官室で面接 書証の原本提示、担保の額と担保提供期間決定 | |||||
C書記官室 | 担保決定の請書(記録表紙の裏)に署名押印。 書記官に立担保(供託又は支払保証委託契約) のできる日を次げる。(決定書作成準備の都合上) 支払保証委託契約による立担保の許可書受領 |
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D供託等 | 供託 | 大阪法務局(大阪第二法務合同庁舎・中央区谷町二丁目京阪、地下鉄天満橋駅南スグ)供託課で供託。 供託書受領。 |
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支払保証委託 | 支払保証委託契約 支払保証委託契約締結 支払保証委託契約締結証明書受領 |
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E書記官室 | 供託⇒供託書正本を提出 | |||||
支払保証委託⇒支払保証契約締結証明書提出 | ||||||
F登記嘱託 | 不動産の仮差押え処分禁止の仮所分等の登記が執行方法であるときは裁判所が職権で嘱託 | |||||
登録免許税を収入印紙で納付 | ||||||
G | 決定正本受領、送達報告書に署名・押印 |
疎明資料等 | ||||||
● | ●登記事項証明書(不動産登記簿謄本) 原本提出(1か月以内) |
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● | ●固定資産評価証明書 | |||||
● | ●登記事項証明書(法人登記簿謄本) 供託用とあわせて2通用意 |
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● | ●委任状 供託用に1通余分に(計2部) |
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● | ●目録 | |||||
● | ●契約関係資料 極力原本を用意 |
チェック事項 | ||||||
申立 | ● | ●保全部の場所 | ||||
● | ●受付時間 | |||||
当日面接 | ||||||
翌日及び翌々日の予約面接 | ||||||
● | ●対象事件 | |||||
商事・労働・知財⇒担当部 その他⇒保全部 |
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● | ●管轄 | |||||
事物管轄違背は大丈夫? | ||||||
本案提起前の保全事件には、併合請求における管轄(民訴法7条)や応訴管轄(民訴法12条)はない。 | ||||||
● | ●申立書の記載事項の漏れやミス | |||||
〇 | 被保全権利の特定 | |||||
〇 | 数種の事件(不動産仮差押えと債権差押え)の一括申立ては不可 当事者が複数の同種の保全事件についても、複数当事者の関係等によっては、一括しての申立てが認められない場合あり |
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〇 | 記載漏れ: 送達場所 債権者代理人の電話番号及びFAX番号 |
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〇 | 記載ミス: 〇債権者代理人弁護士 ×債権者訴訟代理人弁護士 〇送達先 ×送達場所 |
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● | ●添付書類の不足や記載ミス | |||||
〇 | 委任状での特別授権事項 (取下げ・和解) |
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〇 | 添付が求められる書類 | |||||
給与、預貯金等の仮差押え⇒ 債務者の自宅の土地建物の登記簿謄本 ブルーマップ(住居表示と地番が異なる場合) 固定資産評価証明書(余剰価値のないことを示す資料として必要) |
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● | ●申立て後の追完書類や供託書の提出先 | |||||
面接 | ● | ●全件面接審理 | ||||
● | ●当日面接が原則 | |||||
原則⇒申立当日(記録検討等のため、申立て受理から1時間以上経過後) | ||||||
● | ●当日面接できなかった場合 | |||||
予約可 | ||||||
● | ●原本と職印の持参 | |||||
原本の提示なし⇒再面接の例あり | ||||||
発令 | ● | ●発令に際して提出・納付が必要なもの | ||||
担保提供を証する書面(供託書、支払保証委託契約書)と各種の目録の提出 | ||||||
供託書は、原本を呈示し、写しを提出 | ||||||
保全執行として登記又は登記を嘱託する場合、登記(登録)権利者・義務者目録の提出や、登録免許税の納付(請求債権額の0.4%)が必要となる場合あり | ||||||
登記権利者・義務者目録に法人を記載するときは、代表者を表示しない | ||||||
● | ●発令後 | |||||
速やかに保全命令正本の送達を受ける | ||||||
事件番号、債権者名および債務者名を明示した受書の準備が必要 | ||||||
発令裁判所がそのまま執行裁判所として所要の措置を採る場合、その他一定の場合を除いて、その送達を受けてから2週間以内に(民保法43条2項)、執行官に対する保全執行の申立て等を行う |
サンプル | ||||||
請求債権目録 | ■ | ■不法行為に基づく損害賠償請求権 | ||||
● | ●詐欺 | |||||
金〇〇〇〇万円 ただし、債権者が債務者に対して有する下記不法行為に基づく損害賠償請求権の内金の合計額 記 (1)〇〇市〇〇区〇町〇番地所在の宅地〇〇平方メートルについて、債務者が債権者のために買い受ける手続をするかのように欺き、債権者から平成〇年〇月〇日手付金名下で金〇〇〇万円、同年〇月〇日中間金名下で金〇〇〇万円及び平成〇年〇月〇日土地残代金名下で金〇〇〇万円をそれぞれ詐取したことによる損害賠償金〇〇〇〇万円の内金〇〇〇万円 (2)東京都〇〇区〇町〇番所在の宅地〇〇平方メートル並びに同所所在家屋番号〇〇番居宅木造瓦葺1階建の建物について、債務者が債権者のために買い受ける手続をするかのように欺き、債権者から平成〇年〇月〇日中古住宅及びその敷地の手付金名下で金〇〇〇万円並びに同年〇月〇日中間金名下で金〇〇〇万円をそれぞれ詐取したことによる損害賠償金〇〇〇〇万円の内金〇〇〇万円。 (3)前記(1)(2)の債務者の不法行為に基づき税務上の資産買い替えの特例を受けられなくなり、〇〇税務署から所得税につき、〇〇区から地方税につき各更正決定を受け税金を支払わなければならなくなった損害賠償金〇〇〇〇万円の内金〇〇〇万円。 |
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金〇〇〇万〇〇円 ただし、債権者が債務者に対し、平成○年〇月〇日頃から平成〇年〇月〇日頃までの間に、約〇〇〇回にわたり顧客の名を冒用して顧客を接待したと偽り、接待の報告書等を作成し、かねて保有していた領収書を経理係に提出して金員を詐取したことによる、債権者の債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権 |
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● | ●横領 | |||||
金〇〇〇万〇〇円 ただし、債務者の下記不法行為により、債権者が債務者に対して有する損害賠償請求権 記 債務者は、平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日まで債権者の従業員として債権者の仕入先その他に対する仕入代金などの支払手続に従事していたものであるが、別紙横領行為一覧表記載のとおり、平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日までの間、合計〇〇回にわたり債権者の銀行預金口座から払戻しを受けた合計金〇〇万〇〇円を自己の用途に供するため着服して横領し、よって債権者に同額の損害を与えた。 別紙 |
保全処分(事例) | |||||
債権仮差押の効力 | 不動産、動産等については、本執行での差押えと、保全執行としての仮差押えとの間に特に区別を設けていない。 | ||||
債権の仮差押えの場合、仮差押命令と差押命令との間で、命令の内容そのものを変えている。 @債権差押命令⇒債務者に対し債権の取立その他の処分を禁止し、第三債務者に対しては債務者への弁済の禁止を命じている(民失145条1項)。 A仮差押命令⇒第三債務者に対し弁済を禁止するが、債務者に対する処分禁止を命ずることを条文上要求されていない(民保50条1項)。 but 債権に対する仮差押えの執行においても、債務者としては仮差押命令正本の送達を受ければ処分を禁止されるのは当然⇒仮差押え後の債務者の処分行為は、仮差押えがその効力を失わない限り手続上無視される(手続相対効)ことは、不動産執行の場合と同様(民執87条2項、91条1項6号参照)。 |
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規定 | 民執法 第145条(差押命令) 執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。 |
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民事保全法 第50条(債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行) 民事執行法第百四十三条に規定する債権に対する仮差押えの執行は、保全執行裁判所が第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う。 |
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事例 | @債権者Aは、債務者甲に対する100万円の売掛代金債権をもって、甲の乙(第三債務者)に対する貸金100万円の債権に対して仮差押えの執行 A甲は丙に上記貸金債権を譲渡し、その旨の通知 B債権者Bは、甲に対する貸金債権50万円をもって、甲の乙に対する上記貸金債権100万円のうち50万円を差押さえ C債権者Cは、甲に対する貸金債権50万円をもって上記B事件に配当要求 D債権者Aは債務名義を得たので、上記甲の100万円の再建に対し差押命令を申し立て、差押命令が発せられた E第三債務者は被差押債権100万円を供託し執行裁判所に事情届出 |
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Aの譲渡行為は仮差押債権者Aとの関係では無効。 Bの債権者Bは譲渡後の差押え⇒認められない。 Cの債権者Cの配当要求の申立てはB事件に対してのもの⇒B事件が無効である以上、Cの配当要求も許されない。(A事件が仮差押中にCはB事件に配当要求⇒A事件に対する配当要求としては認められない。) 結局、供託金100万円はAに交付。 |
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債権執行における請求債権が仮差押えられた場合、それによって執行債権が執行力を失うものではない ⇒差押命令の取消しは認められない。 執行債権者の取立権は認めることができない⇒執行裁判所は、執行停止文書が提出された場合に準じた措置(民執法規則136条2項)を講じるべき。 |
民事保全関係 | |||||
★管轄裁判所 | 原則 | 「本案の管轄裁判所」または「仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所」(法12@) | |||
国際裁判管轄 | 保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき又は仮差押えの目的物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができる(改正後の民事保全法11条)。 | ||||
人事訴訟 | 「本案の管轄裁判所」または「仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する家庭裁判所」 (人事訴訟法30@) | ||||
専属管轄 | すべて専属管轄(法6) ⇒保全命令申立に関しての、これ以外の合意管轄(民訴法11条)、応訴管轄(同12条) および併合管轄(同7条)は生じない(法7条、民訴法13条)。 |
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本案訴訟に関して、合意管轄、応訴管轄および併合管轄が生じていれば、本案管轄裁判所としての管轄が認められる。 | |||||
★仮差押えの申立て | ★仮差押えの申立て | ||||
■請求債権の特定 | 規定 | 法 第20条(仮差押命令の必要性) 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。 2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。 |
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規則 第13条(申立書の記載事項) 保全命令の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一 当事者の氏名又は名称及び住所(債務者を特定することができない場合にあっては、その旨)並びに代理人の氏名及び住所 二 申立ての趣旨及び理由 2 保全命令の申立ての理由においては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに証拠を記載しなければならない。 |
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意義 | 仮差押命令の被保全権利は、他の請求権と識別し得る程度の発生原因等を明らかにして、その内容、数額を特定する必要。 ← @二重申立ての該当性、A本執行移行、B起訴命令及び担保取消しの際において、本案訴訟との同一性の有無等を判断するために必要。 |
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特定に必要な事項 | 説明 | 債権者と債務者との間に存在する他の債権と識別することができる程度に特定する必要。 〜 被保全権利の発生原因となる要件事実を特定して請求債権目録に記載。 |
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● | ●不法行為に基づく損害賠償請求権: | ||||
不法行為を構成する具体的事実を明示。 ←不法行為の態様により特定される。 |
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特定のため留意すべき事項 | ● | ●債権額の一部を請求債権に | |||
債権額の一部を請求債権として仮差押命令を申し立てることは可能(最高裁昭和35.7.27)。 | |||||
その旨とその範囲を記載(民事執行規則21C参照)。 | |||||
金○○万円の内金というように、債権全体の額を記載すべき。 | |||||
● | ●債務者複数(ex.主債務者と連帯保証人) ⇒各債権者ごとに請求債権額を特定(請求債権の目録を個別にする)。 |
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● | ●請求債権が複数 | ||||
⇒各債権について個別に請求金額を定める。 (債権Aについて金○○万円、債権Bについて金○○万円、合計金○○万円) |
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2つ以上の請求債権について内金請求 ⇒各債権について、その数額を表示。 |
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■ | ■建物の仮差押えの敷地利用権に対する効力 | ||||
共有地上の建物の仮差押え | ● | ●共有地上の建物 | |||
債務者と第三者が共有する土地上に債務者所有の建物が存在し、建物のみの仮差押えがされ、本執行に移行して強制競売 ⇒法定地上権を否定 (←第三者の持分権を不当に害することはできない) |
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土地に対する債務者の持分と建物の双方について仮差押が行われ、その後一括して売却 ⇒買受人は、債務者の利用状態をそのまま引き継ぐことになるから、直ちに建物を収去すべきことにはならない。 |
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■ | ■同一の被保全債権に基づく追加仮差押え | ||||
追加差押が認められる場合 | ● | ●同一の被保全債権に基づく追加仮差押えが認められる場合 | |||
最高裁H15.1.31: 特定の目的物について既に仮差押命令を得た債権者は、これと異なる目的物について更に仮差押えをしなければ、金銭債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又はその強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときには、既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき、異なる目的物に対し、更に仮差押命令の申立てをすることができる。」 |
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■ | ■仮差押えの必要性(1)(連帯保証人に対する仮差押えの場合) | ||||
連帯保証人のみが相手 | 主たる債務者の無資力を疎明する必要 ← @連帯保証人はあくまで保証人 A主たる債務者に資力があるある場合、あえて連帯保証人の財産を仮差押えするまでの必要はない B社会通念上は、主たる債務者が支払をしない、あるいはできいない場合に初めて連帯保証人に請求がなされる C比較的安易に締結される |
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主たる債務者の住所地又は本店所在地(事案により更に支店所在地)の土地、建物の登記簿謄本及びこれらについての固定資産評価証明書等を提出してもらい、主たる債務者がそれを所有しているか否か、所有している場合にはその土地、建物について保全余力がないことについて審査。 | |||||
主債務者と連帯保証人の両方を相手にする場合 | 仮に差し押さえる主たる債務者の財産と連帯保証人の財産の合計額が主たる債務者に対する債権の額を超過しないようにする必要。 | ||||
両者に対する申立てを別個にする必要はないが、申立書では、債務者ごとに請求債権と仮差押えの目的物とを特定して、申立ての趣旨を記載することが必要。 ex. 「債権者の債務者らに対する蔑視請求債権目録(主たる債務者Aに対する貸金債権と、連帯保証人Bに対する連帯保証債務履行請求権を別個に記載する。)記載の債権の執行を保全するため、債務者ら所有の別紙物権目録(1 土地・建物(A所有)、2 土地・建物(B所有)記載の不動産は仮に差し押さえる。)」 |
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仮差押解放金については、債務者ごとに定める。 ⇒債務者のうち1人が解放金を供託しても、他の債務者は当然には仮差押えの執行から解放されない。 |
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■仮差押の必要性(2) | ■仮差押の必要性(2) | ||||
規定 | 法 第20条(仮差押命令の必要性) 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。 |
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保全の必要性 | 現時点で仮差押えをしておかなければ、執行力のある債務名義を取得した時点で当該目的物が散逸しているおそれがあること。 | ||||
必要性についての判断 | ● | @目的物選択の相当性: 債務者において発令により被るおそれのある損害がより少ないと思われる目的物が選択されているか。 A債務名義を取得した時点で当該目的物が散逸しているおそれがあるか否か |
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当該事案において疎明によって認められた事実を経験則に照らして判断。 | |||||
債権者として通常なし得る程度の調査から得られた具体的な事実、すなわち客観的に把握し得る資産状況(不動産登記事項証明書等)、債務者が会社等であれば営業状況、負債状況(請求に対する債務者の回答や支払拒絶の理由等)等を示す具体的事実に経験則を当てはめて推認。 | |||||
● | ●東京地裁の場合 | ||||
債権仮差押えの申立てに当たっては、原則として債務者の本店所在地又は住所地の土地、建物の不動産登記事項証明書を提出してもらい、債務者の資産状態、保全余力についての審査をしている。 | |||||
当該不動産の住居表示と登記簿上の地番が異なる場合には株式会社ゼンリン発行のブルーマップ(住居表示地番対象住宅地図)、又は住宅地図及び構図の写しを、債務者所有の不動産がある場合にはその評価証明書を併せて提出することが必要。 | |||||
目的物選択の相当性 | ● | 不動産>>債権や動産 ⇒保全余力がある不動産がある場合には、動産、債権を目的物とする仮差押は原則として必要性を欠く。 |
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but 債務者の業種や状況によっては、動産や債権の種類によっては、不動産を目的物とするよりも債務者の被る損害が小さいと解されるケースもあり得る。 ⇒ケースバイケース |
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必要性の判断において留意すべきいくつかの事項 | ● | 目的物の価額>>請求債権の超過仮差押の場合、 当該目的物の価額が請求債権額に比して非常に大きく、当面散逸する危険なし ⇒必要性なし。 ⇒危険性について高度な疎明を要求することになる。 |
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複数の第三債務者にたしうる債権の仮差押えの場合には、超過仮差押えが許されない。 ⇒請求債権額を第三債務者ごとに割り振る必要。 |
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● | 第三者が申し立てている競売において配当を受けることができる地位を確保するために仮差押命令の申し立てをする場合、配当を受ける際に債権額が高額であることが有利であるとして、目的物の価額と大きく離れた債権額をもって仮差押えを申し立てるケースがある。 but これは、発令された仮差押えの失効の効力の問題であり、仮差押命令を発令する段階での保全の必要性の問題ではない。 |
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● | 給料や賃料といった継続的に発生する将来債権が目的物である場合、必要性の判断はあくまで現時点におけるものでしかない。 ⇒本案の第一審判決までに要する期間を見込んで、期間を限定する扱いがさrふぇている。 実務では1年とされることが多い。 |
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■ | ■仮差押解放金の算定基準 | ||||
まとめ | 仮差押解放金は、仮差押えの失効の停止又は取消しを得るために債務者が供託すべき金銭であり、仮差押の目的物に変わって金銭債権の失効を執行を保全するためのもの。 | ||||
仮差押解放金の額は、一般に、目的物の価額又は請求債権額のいずれか低いほうを基準に定められている。 | |||||
★立担保 | ★立担保 | ||||
規定 | 民事保全法 第4条(担保の提供) この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。 2 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。. |
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民事保全法 第14条(保全命令の担保) 保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。 |
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目的 | 違法・不当な保全処分の執行によって債務者が被るであろう損害を担保するもの。 | ||||
● | ●違法・不当な保全処分の執行: 「被保全権利」や「保全の必要性」がなかったとに保全命令が発令・執行された場合のほか、「執行手続に違法」があった場合を含む。 |
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●債務者の損害 | ●債務者の損害: | ||||
保全命令の執行により債務者の権利行使や管理処分が妨げられたことにより生ずる損害のほか、債務者が違法・不当な保全処分を避けるために仮差押解放金を供託したり、保全異議・取消し等の手続きをとったために生ずる費用も含む。 | |||||
違法・不当な保全処分が発令されたことにより債務者がその信用を毀損されたり、精神的苦痛を受けたことによる損害も含まれる。 | |||||
● | 濫用的な保全命令の申立てを抑止したり、債務者無審尋での迅速な発令を正当化する機能。 | ||||
担保額算定の基準 | 一般 | 裁判所の裁量により決定(法14@)。 | |||
@保全命令の種類、A保全目的物の種類・価額、B被保全権利の種類・価額、C債務者の職業・財産・信用状態その他の具体的事情に即した予想損害、D被保全権利や保全の必要性の疎明の程度等が総合的に考慮される。 | |||||
保全命令の種類 | 仮の地位を定める仮処分等>仮差押え、処分禁止仮処分 ← 現状変更を生ずる仮の地位を定める仮処分等のほうが違法・不当な民事保全により債務者が被る損害額が大きくなる。 |
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but 賃金仮払いの仮処分や交通事故による治療費や休業損害等の仮払いの仮処分については、無担保又は僅かな担保額で発令 |
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目的物の種類・価額 | ●目的物が不動産等 〜債務者は任意処分を禁止されその転売利益(目的物価額の2割前後)を喪失 ⇒担保額は、目的物価額の2割前後を中心としつつ他の諸要素により増減 (請求権が手形債権の場合は1割5分) |
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●営業用動産、給与債権、取引上の債権、銀行預金債権 〜保全命令によって債務者の信用が大きく毀損され、解雇や取引中止、期限の利益喪失など深刻な不利益 ⇒「被保全権利」や「保全の必要性」が慎重に検討されるほか、担保額も高額に。 |
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不動産の価格の算定方法 | 不動産の仮差押えによって禁止されるのは、不動産の任意の処分。 ⇒不動産の価額は任意処分時の価額による。 |
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不動産の時価は、固定資産税課税標準価額、公示価格、路線価等を参考にすることが多い(時価算出のために適切な指数をかけることがある。)。 | |||||
土地利用権の価額は、地上建物に加算し、土地からは控除。 | |||||
不動産に抵当権等が設定されている場合は、その負担額を控除。 その負担額を控除した余剰価値を正確に算出することが困難な事案については、目的物価額(剰余価値)についての債権額の見積額を記載した上申書の提出を債権者に求め、上申された金額を基準にして担保額を定めている(なお、仮差押解放金の額もこれを基準に算定する)。 |
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具体的には、 @不動産の価額を証する書面(規則20@ハ)として通常用いられている固定資産評価証明書記載の固定資産評価額を上限とし、 A固定資産評価額から登記に記載された抵当権の被担保債権額(根抵当権については極度額)全額を控除した金額が下限となり、 B上申書記載の金額がこの範囲に収まらない場合には、その金額の裏付けとなる資料の提出を求める。 |
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仮処分においては解放金を定めることができないため、上申書に記載された金額が自ずから合理的な範囲に収まるとの前提が成り立たない ⇒ 目的物の価額(剰余額)を算出。 |
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担保の提供期間 | 規定 | 民事保全法 第14条(保全命令の担保) 保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。 |
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民事保全法 第43条(保全執行の要件) 保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。 2 保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から二週間を経過したときは、これをしてはならない。 3 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。 |
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民事保全法 第7条(民事訴訟法の準用) 特別の定めがある場合を除き、民事保全の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。 |
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民事訴訟法 第95条(期間の計算) 期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。 3 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。 |
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民法 第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。 |
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説明 | 担保提供期間(法14@)は、保全処分の執行期間が債権者への保全命令送達日から2週間とされている趣旨(法43A) ⇒裁判所の裁量により3日ないし7日と定められることが多い。 (大型連休や年末年始にかかる場合でも、民事保全の迅速性の観点から最長2週間) |
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担保額の告知を受けた日(初日)は不算入であり、期間の末日が土曜・日曜日等である場合には、その翌日が期間満了日となる(法7、民訴95@B、民法140)。 | |||||
当事者複数の場合 | 債権者ごと又は債務者ごとに担保が定められるのが原則であるが、例外的にいわゆる共同担保の方法による場合もある。 | ||||
規定 | 民訴法 第77条(担保物に対する被告の権利) 被告は、訴訟費用に関し、前条の規定により供託した金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。 |
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担保の意義 | 民事保全では緊急性の要請から立証は証明ではなく疎明で足り、証拠方法にも疎明の即時性に基づく制限がある等の審理上の制約がある上、密行性の要請から仮の地位を定める仮処分を除いては債務者に反論の機会も与えないで発令 ⇒担保によって、債務者の被る損害の賠償に充てさせようとの趣旨。 |
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担保権利者は、担保権を実行するに当たっては、供託物払渡請求書に被担保債権の存在を認める確定判決又はこれと同一の効力を有する和解調書等、あるいは担保提供者の同意書を添付して還付請求の手続を行うこととなる。 | |||||
共同担保と個別担保 | 共同担保:債権者全員が一括共同して、又は債務者全員のために一括して全体として1個の担保を供する場合。 個別担保:各債権者がそれぞれ各債務者のために各別の複数の担保を供すること。 |
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債務者複数の場合: 「債権者は、担保として、債務者全員のため、金○○円を○日以内に供託しなければならない。」 債権者複数の場合: 「債権者らは、債務者のため、共同の担保として、金○○円を○日以内に供託しなければならない。」 |
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債権者としては、複数の供託書を作成する煩わしさがない。 | |||||
● | 複数の債権者について共同担保の方法⇒ 債務者は、一部の債権者に対する損害賠償請求権であっても、共同担保物全部の上に担保権を取得する(法4A、民訴77)。 ⇒ 債務者としては、債権者全員に対する損害賠償請求権を確定させて権利行使する必要はなく、債務者にとっては有利な面がある。 |
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債権者の立場に立つと、債務者が担保物全体について担保権を取得 ⇒各債権者は、自己のみならず、他の債権者の債務者に対する担保取消決定がいずれも確定しなければ、担保を取り戻すことができないという不利益を被ることになる。 |
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共同担保の方法による立担保が許容される場合 | ● | 債務者複数の場合の共同担保については、債務者の担保権行使に特別な不利益を与えないか否かを考慮し、発令される保全命令の内容又は目的物が実質的にみて1個又は共通する場合に限り、共同担保を相当とすべき。 | |||
数人の連帯債務者、主債務者と保証人等のように、共同の権利関係がある場合でも、目的財産が異なるような場合には、共同担保は相当ではない。 | |||||
東京地裁の保全部で債務者のために共同担保を命じた事例は、最近ではみられない。 | |||||
● | 共同担保の利害を了解した弁護士たる債権者ら代理人が承諾する限り債権者らの共同担保はかまわないというのが東京地裁の現在の取扱い。 ← @債権者らによる担保取消し(供託金の回収)が個別に行えなくなるだけであり、 A債務者の権利行使にとっては、むしろ便宜である上、 B債権者複数の申立てが許される場合には債権者間の人的つながりも強い場合が多い |
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方法 | 金銭・有価証券の供託 | 金銭または裁判所が相当と認める有価証券を、担保提供を命じた裁判所または保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託。(法4@) 尚、管外供託(法14A) |
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@金銭⇒法務局(供託所)に供託⇒供託書正本(またはみなし供託書正本)と写しを発令裁判所に提出。 | |||||
支払保証委託契約 | A支払保証委託⇒銀行等と支払保証委託契約を締結⇒契約書(実務では、締結証明書または保証証券謄本)を発令裁判所に提供。 | ||||
現金の供託⇒担保義務者は現実に現金を出捐 支払保証委託契約⇒担保義務者は、既に銀行等に担保金額以上の預金を有する場合は、銀行等に若干の保証料又は保険料を支払うほかは現金等を出捐する必要がない。 |
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銀行等に定期預金等がない場合、銀行等は担保義務者に担保金額と同額の定期預金等をさせることが多い。 | |||||
高額の担保を立てる場合には、現金を供託所に運搬するリスクを回避できる⇒支払保証委託契約による立担保は少なくない。 | |||||
担保権利者の権利行使 | 法的性質 | 債務者は、違法不当な保全命令の執行等による損害賠償請求権の担保として供託された金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する(法4A、民訴77)。 | |||
請求方法 | 供託者が、債務者の損害賠償請求権の発生と、その金額及び供託物の還付を受けることについて同意⇒債務者は、供託物払渡請求書に上記同意を証する書面を添付し、供託書に直接供託物の還付を請求し、その還付を受ける(供則24)。 | ||||
供託者の同意なし⇒債務者は、債権者に対し、損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴の確定判決又はこれと同一の効力を有数r和解調書、認諾調書、調停調書、確定した仮執行宣言付支払督促等の書面を得て、これらを供託物払渡請求書に添付し、損害賠償請求権の存在を証明して供託物の還付請求の手続をとる。 | |||||
供託物が金銭⇒供託物の還付と同時に一部又は全部の弁済の効果を生じる。 供託物が有価証券⇒還付を受けた有価証券につき民執法による換価手続をとり(民執192、134)、その換価代金から優先弁済を受けることになる。 |
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担保の取消し、取戻し | 担保取消し | 規定 | 民事保全法 第4条(担保の提供) この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。 2 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。 |
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民訴法 第79条(担保の取消し) 担保を立てた者が担保の事由が消滅したことを証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない。 2 担保を立てた者が担保の取消しについて担保権利者の同意を得たことを証明したときも、前項と同様とする。 3 訴訟の完結後、裁判所が、担保を立てた者の申立てにより、担保権利者に対し、一定の期間内にその権利を行使すべき旨を催告し、担保権利者がその行使をしないときは、担保の取消しについて担保権利者の同意があったものとみなす。 4 第一項及び第二項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。 |
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担保を立てた者が、 @「担保の事由が消滅したことを証明した」場合、 A担保の取消しについて担保権利者の同意を得たことを証明した場合、 B訴訟の完結後、裁判所が、担保権利者に対して一定の期間内にその権利を行使すべき旨を催告し、その期間内に権利行使がなく担保権利者の同意が擬制される場合 に認められる。 |
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@「担保の事由が消滅したことを証明した」場合 | 「担保の事由が消滅したことを証明した」場合: 被担保債権である相手方の損害賠償請求権の不存在が確定し、担保を提供しておく必要性が消滅したこと。 ex. @債権者が本案訴訟で全面勝訴してその判決が確定 A債務者が本案訴訟で請求を認諾 B債権者が本案訴訟で勝訴的和解 C債務者からする損害賠償請求(担保の被担保債権)訴訟の敗訴判決が確定 |
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取消事由を証する書面: @債権者の本案全部勝訴の判決の正本の写し(正本照合の手続をする。)又は当本及び判決確定証明書 A請求の認諾、全面的に勝訴したと同じ内容の和解又は調停の各長所の正本の写し(正本照合の手続をする。)又は当本。 |
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A担保権利者の同意を得たことを証明した場合 | 同意:担保権利者がその担保に対する権利を放棄する意思表示。 ⇒担保消滅事由の存在に関係なく、本案提起前でも本案終了前でも担保取消しの決定ができる。 |
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取消事由を証する書面: 担保権利者本人又はその代理人が書面によって行うことが必要。 @担保権利者の同意⇒堂医者の神聖な成立を証するため、同意書とともに、同意書に押印した印鑑の印鑑証明書の提出。 A代理人による同意⇒担保取消しについての同意及び即時抗告権の放棄が担保権利者に不利益案行為⇒民訴法55条1項の委任外の行為と解すべき⇒特別委任を要する。 委任状には、@担保取消しの同意及びA即時抗告権(民訴法332)の放棄を委任する旨の記載と、担保権利者の住所・氏名及び押印が必要。 |
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担保取戻し | 規定 | 規則 第17条(担保の取戻し) 保全執行としてする登記若しくは登録又は第三債務者に対する保全命令の送達ができなかった場合その他保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかである場合において、法第四十三条第二項の期間が経過し、又は保全命令の申立てが取り下げられたときは、債権者は、保全命令を発した裁判所の許可を得て、法第十四条第一項の規定により立てた担保を取り戻すことができる。 2 前項の許可を求める申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。 一 保全命令事件の表示 二 当事者の氏名又は名称及び住所(債務者を特定することができない場合にあっては、その旨)並びに代理人の氏名及び住所 三 申立ての趣旨及び理由 四 保全命令の正本が担保権利者である債務者以外の債務者に対する保全執行のため執行機関に提出されているときは、その旨 3 前項に規定する申立書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。 一 保全命令の正本。ただし、前項第四号に規定する場合における当該正本を除く。 二 前項第四号に規定する場合にあっては、その旨を証する書面 三 事件の記録上明らかである場合を除き、保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかであることを証する書面 4 債務者は、第一項の担保に関する債権者の権利を承継したときは、保全命令を発した裁判所の許可を得て、その担保を取り戻すことができる。 5 前項の許可を求める申立ては、第二項第一号から第三号までに掲げる事項を記載した書面でしなければならない。この書面には、債務者が第一項の担保に関する債権者の権利を承継したことを証する書面を添付しなければならない。 |
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1項の要件 | 規則17条1項の要件: @保全執行としてする登記若しくは登録ができなかった場合 A第三債務者に対する保全命令の送達ができなかった場合 Bその他保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかである場合 において、2週間の執行期間が経過し、又は保全命令の申立てが取り下げられたこと。 |
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「保全命令により債務者に損害が生じないことが明らかである場合」とは、保全執行に着手する前に保全命令の申立てを取り下げ、又は執行期間が経過したため、保全執行を行う余地がないことが発令裁判所に明らかになった場合。 | |||||
「執行の着手」とは広義の思考の着手をいい作為又は不作為を命ずる仮処分(当事者恒定を目的とした処分禁止・占有移転禁止仮処分を除く)の正本が債務者に送達された場合にも、担保の取戻しの関係では、執行の着手があったものとして扱われる。 ← このような仮処分命令が債務者に送達されたときは、債務者は命令に従う義務を負い、命令に違反するときは、間接強制や代替執行等の協議の保全執行が行われ得る。 |
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担保権実行禁止(競売手続禁止)、水道工事等の仮の承諾等を命ずる仮処分のように、仮の地位を創設する仮処分で、間接強制、代替執行又は執行官による執行を予定しないものについては、担保権実行禁止の仮処分命令正本を執行裁判所へ提出する等の当該仮処分効力実行手段の着手も、担保の取戻しとの関係では、執行の着手に当たるものと解される。 ←これらの措置は、狭義の保全執行には当たらないが、当該仮処分命令の内容の実現のための手段として予定されたもの。 |
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上記の「執行の着手」の中には、執行期間の遵守の規定(法43条2項)との関係では執行の着手に当たるが、債務者には損害が生じないことが明らかで執行の着手がなかったものとみなし得る場合を含まない。 〜 保全執行してする登記又は登録の嘱託が却下された場合や債権仮差押命令が第三債務者に送達できなかった場合には、執行期間の遵守の規定との関係では執行の着手と解されるが、担保取戻しとの関係では、執行の着手がなかったものとされる。 |
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4項 | 債務者が、保全命令の担保に関する債権者の権利を承継したこと。 | ||||
事例@ | 動産仮差抑えの執行のため債務者方に立ち入ったが、差押えの対象となり得るような動産を発見できなかった場合 | ||||
担保取戻しの手続きは不可 ←動産を捜索する段階に至れば、既に執行の着手があり、債務者に損害が発生する可能性がある。 |
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事例A | 銀行預金債権に対する仮差押えにおいて、民執法147条の催告を受けた銀行が、裁判所に対し、対象となる債権が不存在である旨の陳述書を提出した場合 | ||||
担保取戻し手続きは不可 ← @仮に仮差押債権が不存在で、仮差押えはいわゆる空振りであったとしても、債務者の信用が毀損される可能性があることは否定できない。 A銀行取引約定書によると、期限の利益喪失事由とされる。 |
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事例@及びAのいずれの場合にも、債権者は、担保権利者の同意又は権利行使催告による担保取消しの手続をとらなければならない(法4A、民訴79AB)。 | |||||
★仮差押解放金 | ★仮差押解放金 | ||||
意義等 | 規定 | 民事保全法 第22条(仮差押解放金) 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。 2 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。 |
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民事保全法 第51条(仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し) 債務者が第二十二条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮差押えの執行を取り消さなければならない。 2 前項の規定による決定は、第四十六条において準用する民事執行法第十二条第二項の規定にかかわらず、即時にその効力を生ずる。 |
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意義・性質 | 仮差押解放金: 仮差押えの執行の停止又は取消しを得るために債務者が供託すべき金銭。 裁判所が仮差押命令において職権でその額を定めるもの(法22@)。 |
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一定額の金銭を仮差押えの目的物に代わるものとして取り扱うことによって、債権者債務者間の利害の均衡を図る制度。 | |||||
@当初の仮差押えの目的物を執行から解放して債務者にその自由な処分を認め、 A仮差押解法金に仮差押えの効力を及ぼすことによって、金銭債権の執行の保全という債権者の目的を損なわないようにする。 |
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仮差押解放金は債権者に優先弁済権を与えるものではなく、債権者は、供託金取戻請求権に対して仮差押えの効力を主張できるにすぎず、債務者に対する他の一般債権者も上記供託金取戻請求権に対して、差押え、仮差押え、配当要求の手続をとることができる。 | |||||
仮差押執行の停止又は取消しの手続 | 仮差押解法金として定められた金額を供託したことを証明 ⇒仮差押え執行の停止又は取消しの決定を得ることができる(法51@)。 |
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この決定を保全執行機関に提出して、仮差押えの施行の停止又は既にした執行の取消しを得ることができる(法46、民執39@、40@)。 | |||||
仮差押解法金の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならなず(法22@)、いわゆる管外供託は認められていない。 | |||||
権利行使 | 民事保全法 第50条(債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行) 3 第三債務者が仮差押えの執行がされた金銭の支払を目的とする債権の額に相当する金銭を供託した場合には、債務者が第二十二条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したものとみなす。ただし、その金銭の額を超える部分については、この限りでない。 |
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権利行使方法 | 仮差押債権者は、供託金に対し直接権利を有するものではなく、仮差押債権者の国に対する供託金取戻請求権の上に仮差押えの効力を主張し得るにすぎない。 ⇒ 仮差押債権者は債務名義を得て、その取戻請求権を差し押さえ、転付命令を求めるべき。 |
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本案勝訴の確定判決等を債務名義として、仮差押債務者の有する供託金取戻請求権(法22条)、供託金還付請求権(法50Bのみなし解放金)に対し、供託所を第三債務者とする債権執行の手続によらなければ権利行使ができない。 | |||||
法50条3項のみなし解放金 | 金銭債権に対して仮差押えの執行がされ、第三債務者が仮差押えに係る債権について金銭を供託した場合には、仮差押解放金と同額については、債務者が仮差押解放金を供託したものとみなされる(法50B)。 〜 みなし解放金 |
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★保全執行 | ★保全執行 | ||||
保全執行機関 | 保全命令を発した裁判所が執行機関: 仮差押の登記をする方法による不動産仮差押えの執行 不動産に対する処分禁止の仮処分の執行等 |
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執行官が執行機関: 動産に対する仮差押えの失効や占有移転禁止の仮処分にの失効等 |
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一般的要件 | @執行文付与は原則不要(法43@) ←保全命令の発令とその執行が接着した一連の手続きとして行われることが予定。 保全執行の発令から執行までの間に債権者又は債務者に承継があったときは、執行当事者を債務名義上公証すうるために、例外的に承継執行文の付与を受ける必要がある。(法43@但書) |
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A執行前に保全命令を送達することも要しない(法43B)。 ←民事保全手続の緊急性、密行性の要請から設けられた特則。 but 保全命令の送達を全く不要とするものではない(法17)。 ⇒執行後相当の期間を経過しても送達がなされない場合は、債務者は執行異議(法46により民執法11の準用)の申立てにより執行の取消しを求めることができる。 |
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B担保を立てることが保全執行の条件とされる場合は、担保の提供が要件。 | |||||
C執行期間に制限(法43A)。 保全執行期間」(2週間)は、債権者に対し保全命令が送達された日から進行。 保全執行期間内に保全執行に着手することを要するが、執行を完了することまでは要しない。 |
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★不服申立 | ★不服申立 | ||||
即時抗告 | 規定 | 民事保全法 第19条(却下の裁判に対する即時抗告) 保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。 2 前項の即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができない。 3 第十六条本文の規定は、第一項の即時抗告についての決定について準用する。 |
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民事保全法 第7条(民事訴訟法の準用) 特別の定めがある場合を除き、民事保全の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。 |
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民訴法 第331条(控訴又は上告の規定の準用) 抗告及び抗告裁判所の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第一章の規定を準用する。ただし、前条の抗告及びこれに関する訴訟手続には、前章の規定中第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。 |
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民訴法 第305条(第一審判決が不当な場合の取消し) 控訴裁判所は、第一審判決を不当とするときは、これを取り消さなければならない。 |
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民事保全法 第23条(仮処分命令の必要性等) 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。 2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。 3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。 4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。 |
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説明 | 抗告期間 | 民訴法では即時抗告期間は1週間とされている(民訴332条)が、保全命令の申立てについては、複雑な事案では準備に時間がかかる⇒抗告期間は2週間。 | |||
手続 | 抗告審の訴訟手続については、特段の規定がない限り第一審の手続によることになる(法7、民訴331,297)。 | ||||
必要的債務者審尋事件(法23C)について、原審で債務者審尋が行われている場合には、抗告審裁判所は、債務者審尋を経ないで仮処分命令を発することができる。 | |||||
裁判 | 申立てに理由あり⇒決定で原決定を取消し、更に、保全命令を発し、又は原裁判所に差し戻し、あるいは管轄裁判所に移送する旨の決定(法7、民訴331,305ないし309)。 申立てが不適法ないし理由なし⇒決定でこれを却下。 (実務上、理由がない場合には「棄却」の語が用いられることもある) |
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許可抗告・特別抗告 | 即時抗告審における即時抗告を却下する裁判に対しては、債権者はさらに抗告はできない。 要件を満たせば、許可抗告・特別抗告は可 |
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規定 | 民事保全法 第7条(民事訴訟法の準用) 特別の定めがある場合を除き、民事保全の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。 |
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民訴法 第336条(特別抗告) 地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。 2 前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。 3 第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。 |
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民訴法 第337条(許可抗告) 高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。 2 前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。 3 前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。 4 第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。 5 最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。 6 第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。 |
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民訴法 第330条(再抗告) 抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告をすることができる。 |
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民訴法 第96条(期間の伸縮及び付加期間) 裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。ただし、不変期間については、この限りでない。 2 不変期間については、裁判所は、遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができる。 |
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特別抗告 | 地方裁判所および簡易裁判所の決定等で不服申立てができないもの、ならびに高等裁判所の決定等に対して、憲法違反を理由として最高裁判所に対してなされるもの(民訴法336@)。 | ||||
裁判の告知を受けた日から5日以内の不変期間内に限って許される(民訴法336A)。 | |||||
不変期間:裁判所が伸長できない期間(民訴法96@)。 | |||||
特別上告の規定が準用される(民訴法336B)⇒本来の上訴とはいえない。 | |||||
許可抗告 | 制度趣旨 | @特別抗告だけでは、決定・命令等にかかわる法令解釈の争いについては、最高裁判所による法令解釈の統一の機会が保障されていなかった。 A特に、民事執行法や民事保全法上の裁判について抗告審たる高等裁判所の判断が分かれた問題、たとえば、売却のための保全処分の相手方(民執55条)や担保権の存在を証明する文書の意義(民執193)などについては、法令解釈の統一の必要性が指摘。 ⇒ 立法者がこの必要をっ三田氏、かつ、最高裁判所の負担増を避ける制度として採用したのが、許可抗告。 |
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説明 | ● | 判例違反等法令会社の違反を理由とする最高裁判所への抗告は、原審である高等裁判所が自らの決定または命令について抗告を許可した場合に限って許される⇒「許可抗告」 | |||
最高裁は、原裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるときには、原裁判を破棄することができる(民訴337D)。 | |||||
● | 高等裁判所の決定および命令のうち、再抗告裁判所としての裁判は、すれに3審級の利益が保障されている⇒許可抗告の対象とならない(民訴法337@本文括弧書)。 | ||||
許可抗告申立てについての裁判も、手続の遷延を避けるなどの理由から許可抗告の対象とならない(民訴法337@本文括弧書)。 | |||||
⇒ 許可の対象となりうる裁判には、高等裁判所が自ら第一審として行った決定および命令と、抗告審として行った決定が含まれるが、 前者については、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限られる(民訴法337@)。 ← 忌避申立てを許容する決定に対しては、抗告が許されないが、その決定が高等裁判所によってなされたからといって許可抗告を認める理由はない。 |
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保全異議の申立 | 保全命令の当否について再審理を求めるもの。 | ||||
規定 | 民事保全法 第26条(保全異議の申立て) 保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。 |
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管轄 | 「保全命令を発した裁判所」(法26条)で、専属管轄(法6条)。 | ||||
保全取消の申立 | 保全命令の当否ではなく、保全命令の存続の当否について審理を求めるもの。 | ||||
管轄 | 本案の訴えの不提起等による保全取消しの場合:「保全命令を発した裁判所」。専属管轄(法6条)。 | ||||
@事情の変更による保全取消しおよび特別の事情による保全取消しの場合:「保全(仮処分)命令を発した裁判所又は本案の裁判所」)。専属管轄(法6条)。 | |||||
本案の訴えの不提起等による保全取消し | 民事保全法 第37条(本案の訴えの不提起等による保全取消し) 保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。 2 前項の期間は、二週間以上でなければならない。 3 債権者が第一項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。 4 第一項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなす。 5 第一項及び第三項の規定の適用については、本案が家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第十八条第一項に規定する事件であるときは家庭裁判所に対する調停の申立てを、本案が労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第一条に規定する事件であるときは地方裁判所に対する労働審判手続の申立てを、本案に関し仲裁合意があるときは仲裁手続の開始の手続を、本案が公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)第二条に規定する公害に係る被害についての損害賠償の請求に関する事件であるときは同法第四十二条の十二第一項に規定する損害賠償の責任に関する裁定(次項において「責任裁定」という。)の申請を本案の訴えの提起とみなす。 6 前項の調停の事件、同項の労働審判手続、同項の仲裁手続又は同項の責任裁定の手続が調停の成立、労働審判(労働審判法第二十九条において準用する民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十六条の規定による調停の成立及び労働審判法第二十四条第一項の規定による労働審判事件の終了を含む。)、仲裁判断又は責任裁定(公害紛争処理法第四十二条の二十四第二項の当事者間の合意の成立を含む。)によらないで終了したときは、債権者は、その終了の日から第一項の規定により定められた期間と同一の期間内に本案の訴えを提起しなければならない。 7 第三項の規定は債権者が前項の規定による本案の訴えの提起をしなかった場合について、第四項の規定は前項の本案の訴えが提起され、又は労働審判法第二十二条第一項(同法第二十三条第二項及び第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされた後にその訴えが取り下げられ、又は却下された場合について準用する。 8 第十六条本文及び第十七条の規定は、第三項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定について準用する。 |
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事情の変更による保全取消し | 民事保全法 第38条(事情の変更による保全取消し) 保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。 2 前項の事情の変更は、疎明しなければならない。 3 第十六条本文、第十七条並びに第三十二条第二項及び第三項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。 |
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「事情の変更」: 被保全権利が弁済、相殺などで消滅した場合、 債権者が本案訴訟で敗訴し、その判決が確定した場合、 保全の必要性が消滅した場合等。 |
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特別の事情による保全取消し | 民事保全法 第39条(特別の事情による保全取消し) 仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。 2 前項の特別の事情は、疎明しなければならない。 3 第十六条本文及び第十七条の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。 |
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★保全執行の効力 | ★保全執行の効力 | ||||
■処分禁止仮処分の効力 | ●処分禁止仮処分の意義 | ●処分禁止仮処分の意義 | |||
占有移転禁止の仮処分とともに係争物に関する仮処分に分類。 | |||||
債務者に対し、当該係争物について譲渡、抵当権等の担保権や賃借権等の用益権の設定その他一切の処分を禁止する仮処分で、これにより当該係争物に関する法律関係を固定し(当事者恒定効)、民訴法が採用している訴訟承継主義から仮処分債権者の不利益の回避を図る制度。 | |||||
●処分禁止の登記と相対的無効 | 規定 | 民事保全法 第53条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行) 不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。 |
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民事保全法 第58条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。 | |||||
説明 | 法58条1項は、仮処分債務者が第三者との間で処分禁止の登記後に仮処分の目的不動産についてなした処分行為も、仮処分債務者と第三者との「間では処分行為それ自体に瑕疵が存しない限りは有効。 but 仮処分債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合は、当該処分行為が有効であることを主張できない。 (相対的無効) |
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仮処分の被保全権利と本案の権利との同一性が認められる限り、処分禁止の登記に抵触する処分行為は仮処分債権者に対抗することができない ⇒仮処分債権者は抵触する第三者の登記を単独で末梢することができる。 |
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●債権者の権利との間に抵触を生じる物権変動 | 抵触 | 第三者の権利の取得又は処分の制限は、債権者の登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度で債権者に対抗できない(法58@)。 ⇒抵触の有無の解釈が問題。 |
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第三者の権利の取得又は処分の制限と、債権者の登記にかかる権利の取得又は消滅とが抵触するか否かは、実体法の解釈による。 | |||||
所有権移転登記請求権を被保全権利とする処分禁止の登記がされた後、所有権移転登記、当該所有権対する処分制限の登記(差押え、仮差押え、仮処分の登記等)、新たな他物権の保存・設定の登記がされた ⇒これらの登記に係る権利の取得等は仮処分債権者の所有権取得に抵触。 |
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破産等 | 規定 | 破産法 第42条(他の手続の失効等) 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行又は企業担保権の実行で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。 2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。 |
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民事再生法 第39条(他の手続の中止等) 再生手続開始の決定があったときは、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等又は再生債権に基づく財産開示手続の申立てはすることができず、破産手続、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続及び再生債権に基づく財産開示手続は中止し、特別清算手続はその効力を失う。 |
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説明 | 債務者に対し、破産手続開始、民事再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行手続の開始の各登記がされた場合には、破産手続開始等の決定により他の処分の制限は効力を失う⇒抵触しない。 | ||||
破産手続開始前の保全処分(破産法28)、再生手続開始前の保全処分(民再30)、更生手続開始前の保全処分(会更28)んちうちえあ、他の処分の制限を失効させない⇒抵触する。 破産・民事再生又は会社更生で他の手続の中止命令が発せられた(破産法24条、民再26条、会更24条)⇒抵触しない。 |
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●仮処分に後れる登記の抹消 | ●仮処分に送れる登記の抹消 | ||||
規定 | 民事保全法 第58条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力) 第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。 2 前項の場合においては、第五十三条第一項の仮処分の債権者(同条第二項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第一項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。 |
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説明 | 原則型処分禁止の仮処分にいては、保全すべき登記請求権に係る登記をする場合に、処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる(法58A)。 〜 債権者が登記を抹消される第三者に対する債務名義を取得する必要がないことを前提にしており、これにより、この仮処分の目的である当事者恒定効が認められることになる。 この効力が認められるためには、被保全権利と本案の訴訟物との間に同一性がなければならないが、請求の基礎が同一であれば足りる。 |
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「処分禁止の登記に後れる登記」: 保全すべき登記請求権に抵触し、仮処分債権者に対抗できあに登記をいい、単に処分禁止の登記の後にされた登記という意味ではない。 |
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本案訴訟との関係 | 債権者が処分禁止仮処分の執行後に本案訴訟を提起した場合に、仮に債務者が目的不動産を第三者に譲渡しても、債務者は債権者の登記請求権が消滅したことを主張できない(当事者恒定効)。 | ||||
この場合、目的不動産の譲渡を受けた第三者に訴訟承継させることも妨げないし、仮処分の効力は債務者の承継人である第三者に及び、第三者は処分禁止の拘束を受ける。 | |||||
仮処分の執行と強制執行 | 事例 | 不動産に対する処分禁止仮処分の執行がされた後、債務者の一般債権者がその不動産について強制競売の申立てをし、その開始決定がされた。 その場合の法律関係。 |
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法律関係 | 処分禁止仮処分の被保全権利が所有権に基づく移転又は末梢登記請求権の場合: @その登記が最先順位にある⇒売却によって効力を失わず、買受人が引き受けることとなる(現況調査まで行った段階で競売手続を事実上停止する。)。 A最先順位にない⇒売却により消滅する。 |
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★相続財産を保全するための処分禁止の仮処分 | Q57(p260) | ★相続財産を保全するための処分禁止の仮処分 | |||
要点 | 1.共同相続人の1人が勝手に単独相続登記をした場合、他の共同相続人は、不動産の全部について処分禁止の仮処分を求めることができず、所有権の一部について処分禁止の仮処分を求めることができるにとどまる。 | ||||
2.遺産分割の家事審判を本案として、処分禁止の仮処分をを申し立てることはできない。 | |||||
3.遺産分割前には、共有物分割の訴えを本案として、処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。 | |||||
事例 | Cが2人の子A,Bを残して死亡した。Bは、相続財産である不動産について、Aに無断で勝手に単独名義に所有権移転登記をした。 | ||||
■ | ■不動産の持分権に基づく所有権移転登記の抹消(更正)登記手続請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分 | ||||
規定 | 民法 第898条(共同相続の効力) 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。 |
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説明 | 相続財産の共有(民法898条)についえては、民法249条以下に規定する「共有」と性質を異にするものではない(最高裁昭和50.5.31)。 ⇒ Aは本件不動産について2分の1の共有持分権を有していることになる。 ⇒ Aの共有持分権に基づく上記所有権移転登記の抹消(更正)登記手続請求権を保全するため、AはBを債務者として本件不動産の全部について処分禁止の仮処分を申し立てることができるか? |
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Bの単独所有権取得の登記は、その共有持分2分の1に関する限り実体関係に符合しており、また、Aは自己の持分にのみ妨害排除の請求権を有するにすぎない。 ⇒ Aがその共有持ち分権に対する妨害排除として登記を実体関係に合致させるためBに請求できるのは、本件不動産の所有権移転登記の全部抹消登記手続ではなく、自己の持分権についての一部抹消登記手続(最高裁昭和38.2.22)。 ⇒ Aは、自己の持分についてのみ処分禁止の仮処分を求めることができる。 |
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実務では、所有権の一部についての処分禁止の仮処分を認めており、その申立ての趣旨及び主文は、 「債務者は、別紙物件目録記載の不動産の所有権の一部2分の1について、譲渡並びに質権、抵当権及び賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない。」 |
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登記簿には「所有権の一部2分の1処分禁止仮処分」という表示がされるが、持分の登記はされない。 登録免許税は、不動産全体の価格に処分禁止の対象となる所有権の割合を乗じた額の1000分の4(登税9別表第1の1の(5))。 |
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■ | ■遺産分割の家事審判を本案とする処分禁止の仮処分を申し立てることの可否 | ||||
規定 | 民事保全法 第1条(趣旨) 民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。 |
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民法 第907条(遺産の分割の協議又は審判等) 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。 2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。 |
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家事審判法 第9条〔審判事項〕 家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。 乙類 十 民法第九百七条第二項及び第三項の規定による遺産の分割に関する処分 |
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家事審判法 第7条〔非訟事件手続法の準用〕 特別の定めがある場合を除いて、審判及び調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第一編の規定を準用する。ただし、同法第十五条の規定は、この限りでない。 |
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家事審判法 第15条の3〔審判前の保全処分〕 第九条の審判の申立てがあつた場合においては、家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずることができる。 |
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説明 | @民事保全の範囲については、法1条が「民事訴訟の本案の権利の実現を保全するため」「民事訴訟の本案の権利関係につき」と規定し、その範囲を民事訴訟の本案の権利を保全するものに限定。 A遺産分割は、民訴法による訴えを提起することはできず、その手続についても非訟事件手続法が準用。 ⇒ 遺産分割の家事審判を本案として、民事保全法上の仮処分を申し立てることはできない。 |
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家庭裁判所は、遺産分割の家事審判申立てがあった場合においては、審判前の保全処分が可能(家事審判法15の3)。 | |||||
■ | ■遺産分割前に共有物分割の訴えを本案とする処分禁止の仮処分を申し立てることの可否 | ||||
● | ●共有物分割の訴えを本案として不動産全体について処分禁止の仮処分を申し立てることができるか。 | ||||
A否定説: このような類型の仮処分は、本案訴訟の当事者恒定をまさに目的とするもので訴訟承継制度と衝突し、仮処分制度のもつ執行保全の目的を逸脱するもので許されない。 |
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B:肯定説: 共有物を分割する結果、他の共有者の共有持分が自己に帰属する可能性があり、この場合においても当事者を恒定する必要性があるときもあるので、その部分についての所有権移転登記請求権を被保全権利として相手方の持分全部について処分禁止の仮処分を行うことができる。 |
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● | ●相続の場合 | ||||
遺産相続により相続人の共有になった財産の分割について、共同相続人間に協議が整わないとき、又はきょうぎをすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきであり、通常裁判所が共有物分割訴訟の判決手続でこれを判定すべきでない(最高裁昭和50.11.7)。 ⇒ 仮に共有物分割の訴えを本案として不動産全体について処分禁止の仮処分を発令し得る見解に立脚しても、Aは、遺産分割の家事審判を本案とする処分禁止の仮処分が認められないのと同様、遺産分割前に共有物分割の訴えを本案として処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。 |