論点整理（事業承継関係）

シンプラル法律事務所
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事業承継の手段としての種類株式（ジュリスト１３７７）
★		★Ⅰ　事業承継と会社法
	■	■１　事業承継対策の必要性
	●	●事例１
	◎	甲社：雑貨店経営株主：社長X（６７％）とその友人の専務Y（３３％）全株式譲渡制限 Xには、妻P（経営無関与）との間に２人の子供Q（経営無関与）、R（仕入担当営業部長）。 Xは、社長をRに任せ、Yに後見役を依頼するつもりであったが、Xが死亡。
	◎	遺産分割がされるまで、Xが保有していた株式は、PQRの共有。（民法898条）権利行使をするには、原則として、１名の権利行使者を定め、会社に通知。（会社法106条）
	◎	持分の準共有者間において権利行使者を定めるのは、持分の価格に従いその過半数で決することができる。（最高裁H9.1.28）
	●	●事例２
	◎	遺産の分割協議を経て、Rが51%、Pが15%、Qが1%の甲社株式を取得することで合意。 ⇒ RとYで甲社株式の84%を確保して、係属して甲社の経営に当たる。 PQは経営に関与しない。
	◎	PQが本株を第三者に譲渡するには、譲渡承認手続を経る必要（会社法136条以下）。
	◎	PQから請求があれば、会社又はは指定買取人（法140④）が持株を買い取ることになる。買取価格をめぐって争いが生じた場合、裁判所が買取価格を決定する。（法144②）
	■	■２　相続人等に対する売渡しの請求
	●	あらかじめ定款に定めておくことで、会社が、相続などの一般承継によって取得された譲渡制限株式を、相続人から強制的に買い取ることが認められる。（法174）その場合、①定款の定め＋②株主総会の特別決議が必要。（法175①、309②(3)）会社が相続などの一般承継の事実を知った日から１年以内に行われなければならない。（法176①但書）分配可能額を超えての売渡し請求はできない。（法461①(5)、462、465①(7)）買取価格について合意に至らない⇒裁判所が買取価格（法177）。
	●	～相続によって会社の閉鎖性が害されることを防止することができる。
	●	●問題点
	◎	Rも相続によって譲渡制限株式を取得した者⇒売渡しの請求の対象となる。 Yは、Xの死亡を契機として、PQRの全員に対して持株の売渡し請求を行うことができる。 PQRは、売渡しの請求を行う旨を決定する株主総会で議決権を行使することはできない（法175②）。 ⇒ 分配可能額という制限はあるが、理論上、YがPQRの持株を強制的に買い取ることが可能。
	◎	遺産分割後は相続人の一部に対してのみ売渡し請求は可能。ｂｕｔ遺産分割前は、株式は相続人により共有で、共有持分は売渡しの請求の対象とならない。（法175①(2)）⇒相続人全員を対象としてしか売渡しの請求はできない。
	◎	遺産分割がなされた時からではなく、相続があったことを知った時から１年以内しか、売渡しの請求ができない⇒選択的に売渡しの請求を行うことができないこともある。
	■	■３　種類株式を利用した事業承継とその問題
	●	●種類株式を利用した事業承継対策：事例３
	◎	①甲社は、議決権制限株式を株主に対する無償割当てによって発行。 ②Ｘは、Ｙの同意を得て、保有する議決権付株式のうち発行済株式の５１％をＲに生前贈与し、Ｒを甲社の代表取締役として経営に従事させた。 ③Ｘは残りの議決権付株式をＲに、議決権制限株式をＰとＱに相続させる旨の遺言状を作成。
	◎	Ｘ死亡⇒ 議決権付株式：６７％をＲ、３３％をＹが保有。議決権制限株式については、６７％をＰとＱが、３３％をＹが保有。 ⇒ Ｘの意向に従い、Ｒが甲社の後継者となる。
	◎	全株式譲渡制限会社⇒公開会社と異なり、議決権制限株式の発行限度規制は適用されない（会社法１１５条）。全株式譲渡制限会社では、株主の権利に関する属人的定め（会社法１０９条２項）を行うことも許容される⇒内容に関する制約も多くはない。
	◎	ｂｕｔ問題点：
	〇	①定款変更が必要（会社法１０８条２項）で、そのためには株主総会の特別決議（会社法３０９条２項１１号、４６６条）が必要。
	〇	②議決権制限株式の株主であるＰＱも、種類株主総会において議決権を行使したり、組織再編行為などの際に株式買取請求権を行使することは可能（会社法１１６条、３２２条１項、７８５条）。
	〇	事前に定款で定めることで、種類株主総会決議が必要となる局面を限定できる（会社法３２２条２項３項）。ｂｕｔ株式の種類を追加する場合など、種類株主総会決議を不要とすることが認められない場合もある（会社法３２２条３項ただし書）。
	〇	③ＰＱが議決権制限株式を第三者に譲渡し、現金化したいと考える可能性。 ⇒譲渡承認手続の中で買取価格が争われ、合意に至らない場合には、裁判所が買取価格を決定（会社法１４４条）。
		ＰＱが取得する株式を、取得請求権付株式（２錠１８号）又は取得条件付株式（２条１９号）とすることによって、紛争を事前に予防することも可能。
		取得請求権付株式⇒ＰＱは、会社に請求することで、あらかじめ定められた対価で持株を買い取ってもらうことができる（１６６条１項）。
	●	種類株式を利用することで、事業承継に関する紛争の多くを、事前に予防することができる。ｂｕｔ紛争を予防するには、ＰＱなど後継者以外の相続人が取得する株式の権利を大幅に制限する必要がある。 ⇒ 遺留分制度の特例を受けるための条件である相続人全員の同意（中小承継４条）を得ることが困難になる。
	●	～相続人全員の同意を得るという事業承継以前の段階でも、事業承継後の紛争解決の段階でも、種類株式の価値という問題が当事者間の交渉に影響を与える。
★		★Ⅱ　株式の評価をめぐる問題
	■	■１　株式の評価が問題となる場合
	●	中小企業の株式は、取引相場が存在しない⇒株式の評価が問題。
	●	遺産の分割協議、課税の場面でも評価が問題。
	●	●課税行政上の株式の評価
		財産評価基本通達で規定。
		取引相場のない株式（基通１６８(3)）の価額の算定方法は、①発行会社の規模と、②「同族株主以外の株主等が取得した株式」であるか否かによって決まる（基通１７８条）。
		大会社⇒①類似業種比準法と②純資産価額法の中で納税者が選択した方法中会社と小会社⇒①類似業種比準法と純資産価額法の併用と②純資産価額法の中で納税者が選択した方法。
		会社の規模を問わず、「同族株主以外の株主等が取得した株式」は、配当還元法によって評価される（基通１８８－２）。
	●	基通にするされた方法以外にも裁判実務で利用された方法： ①類似会社比準法 ②取引先事例法 ③収益還元法 ④収益還元法の中で、将来の予想税引後利益ではなく、キャッシュ・フローを資本還元する算定方法が、ＤＣＦ法。
	■	■２　学説・裁判実務の現状
	■	■３　種類株式の評価

非上場会社の株式評価と納税資金対策（税経通信２０１２年１月号）
★事業承継における自社株の取扱い	★事業承継における自社株の取扱い
	事業承継				事業承継：主として中小零細の非上場会社等が、会社の経営を後継者に引き継がせること。
					①親族内承継 ②役員・従業員への承継 ③M&A等による外部への承継
					①が圧倒的に多い。
					事業承継 ①経営そのものの承継 ②自社株式を中心とする事業用資産の承継
	事業承継の問題点				①後継者に会社の支配権を確保させるため、株式を集中させる必要。 ②非上場株式に換金性がないが、評価が高くなる。 ③後継者には十分な金融資産を相続させられない⇒納税資金が不足。 ④納税資金を後継者に⇒他の相続人に不満⇒相続争い。
					非上場株式の株主が「株主として」期待できるキャッシュ・フロー： ①将来の配当 ②解散したときの残余財産だけ。ｂｕｔ税制上不利⇒配当することがほとんどない。解散も考えられない。
					「取締役として」期待できるキャッシュフロー： ①役員報酬・福利厚生・交際費としての収入
					損金算入できない配当でキャッシュ・フローを会社から個人に配分するよりは、原則として損金算入できる役員報酬で分配する方が、給与所得控除等の存在により、全体として節税ができて有利。
					取締役としての地位を確保するために、株式を取得する必要。
	相続税等改正				相続税改正案： ①基礎控除を現行の６割にまで縮小して広く相続税を課税 ②税率の上限をあげ、再富裕層の課税強化 ③生命保険金の優遇措置を縮小
					贈与税改正案： ①相続税の課税強化に合わせて一般的な暦年贈与は強化 ②２０歳以上の子や孫への暦年課税を緩和し、若年世代への贈与を促進 ③相続時精算課税贈与についても適用対象者を拡大し、若年世代への贈与を促進
					⇒ 国策としての、相続税強化・贈与税優遇（死亡時まで財産を保有すしたままだと相続税課税を強化するが、生前に若年世代に財産を贈与により移転すれば優遇）
					基礎控除の縮小＋２２年度の税制改正で「小規模宅地の評価減の特例」の適用範囲が縮小 ⇒第２次相続の税額が相当増額。 ⇒１次２次通算の相続税負担を考慮する必要
					１次相続では配偶者の特別控除でしのいだとしても、第２次相続では、株式の承継者にかなりの税負担がのしかかる。
	事業承継実務の進め方				①会社の経営権を後継者に確実に承継させる ②争いのない相続ができるようにする ③納税資金に困らない承継とする ④できるだけ納税額を少なくする
		●			●現状分析
					現状の把握と分析
		●自社株対策の実行			●自社株対策の実行
					相続税は、課税遺産総額を基礎とする⇒節税するためには、課税遺産総額を減少させる。自社株式の相続税評価額＝「自社株式の１株当たりの評価」×「自社株式の数量」 ⇒①自社株式の評価減対策と②自社株式の数量減少対策
			◎		◎自社株式の評価減対策（いわゆる株価対策）
					自社株式の評価方法は、相続税の財産評価基本通達に詳細に規定 ⇒評価基本通達にしたがって自社株式を評価し、どのような要素がどう取り込まれてひょ価額が算定されているか分析 ⇒高い評価が算定された場合、その原因を調べて、各種の対策を行う。
			◎		◎自社株式の数量減少対策
					株式を多くの人に分散して経営者の保有する株式を減らすと、遺産総額が減少⇒相続税は減少。 ex. 評基通上有利な評価方法である「特例的評価方法（＝配当還元方式）」による低い評価額がですべての株式を同族株主以外の第三者に贈与⇒自社株式に係る相続税はゼロに。ｖｓ．会社の経営権を手放すことになる。 ⇒集中が重要
				○	○分散株式再集中対策
					(a)他の株主からの買取りｖｓ．多額の資金が必要
					(b)経営者への新株発行会社が現経営者に対して新株発行増資（会社法199条）を行い、相対的に他の株主の持株比率を薄める。ｖｓ．株主総会の３分の２以上の特別決議多額の増資資金の手当てが必要
					(c)金庫株による買取り発行会社が他の株主から株式を買い取る（＝金庫株）ｖｓ． ①特別決議 ②会社法上の取得財源規制 ③売却する株主へのみなし配当課税等
					(d)取得条件付株式（会社法107①(3)、108①(6)）ｖｓ．発行済普通株式に取得条項をつけるには株主全員の同意が必要
					（ｅ）全部取得条項付種類株式（会社法108①(7)）
				○	○株式移転対策（分散を減らす）
					株式の再集中化が不要な場合、現経営者が保有する株式を減らす手法を検討。
					①（推定）相続人である後継者及びその子孫のみに対して株式を移転する場合 ②節税を優先させて一定の場合の株式数だけは他の協力的な親族や外部の者に株を移す場合
					誰がどういう属性の人に株式を移転するのかによって、所得税法・法人税法・相続税法上の時価が異なり、「みなし譲渡」や「みなし贈与」などそれぞれの課税関係が生ずるので注意が必要。
					評価が下がるタイミングで自社株式の譲渡や贈与を行うことが通常⇒自社株式の評価減対策を意識することが大切。
					(a)遺留分の事前放棄（民法1043条）生前贈与や遺言・遺産分割により後継者に株式を集中させようとする場合にネックになるのが遺留分。
					(b)経営承継円滑化法における民法特例～経営者から後継者に生前贈与された自社株式について ①遺留分算定基礎財産から除外すること（除外合意） ②基礎財産に算入する際の額を固定すること（固定合意）ができる。適用要件は、 ①後継者を含む現経営者の推定相続人全員の合意 ②経済産業大臣の確認 ③家庭裁判所の許可等
					(c)株式譲渡制限会社
					(d)相続人等に対する売渡請求～譲渡制限規定は相続や合併という一般承継による取得には適用されない。 ⇒ 株主の相続発生などによる分散を防ぐ必要がある場合は、定款を変更して、会社がその売渡しを請求できるようにしておく制度。一定の要件を満たせば、みなし配当課税が行われず、通常の譲渡所得課税が課される ⇒請求を受けた相続人にとっては有利な課税関係。経営者が死亡して自社株式を後継者が相続した場合にも妥当⇒少数株主のみが請求の対象となる旨の定めを導入。
					(e)種類株式の活用 ①議決権制限株式 ②拒否権付種類株式（黄金株）
					（ｆ）信託の利用自社株式を信託し、受託者に対する議決権行使の指図権を後継者に付与。非公開会社の場合、この付与は他の相続人の信託受益権の割合（＝株式の割合）に左右されることなく、任意の割合でも良い ⇒議決権だけを後継者に集中することができる。
					（ｆ）従業員持株会・公益法人・投資育成会社の活用
		●納税資金対策			●納税資金対策
					一般的な納税資金対策： ①生命保険の活用 ②役員退職金制度の活用 ③不動産の売却
			○		○譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例
					個人が株式をその発行会社に譲渡した場合、原則としては、みなし配当課税が課される。
					相続により取得した株式を申告期限から３年以内に金庫株として発行会社に譲渡した場合には、みなし配当課税は行われず、自社ｋら受取る売却代金金額が株式の譲渡所得に係る収入金額とされ、通常の譲渡所得課税がなされる有利な取扱い。
			○		○相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
					上記の場合、非上場株式の譲渡所得の計算においては、非上場株式に係る評価額に対応する相続税額の金額を取得費に加算して収入金額から控除することができる。 ⇒株式売却時の譲渡所得が圧縮されて節税になり、資金効率を上げることが可能になる。
			○		○延納と物納
					相続税は、金銭で一時に納付することが原則。 but 納付資金が不足している場合で一定の要件を満たすときには、延納や物納が認められる。
					延納：相続税額が１０万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、納付者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができる制度。物納：延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、納付者の申請により、その納付を困難とする金銭を限度として一定の相続財産による納付ができる制度。
					平成１８年度の税制改正⇒非上場株式の物納の可能性が広がった。物納後、自社株式を会社が財務省から買い取ることもできる。
					ｂｕｔ昨今、金銭納付困難理由の吟味が厳しくなっており、また、自社株式が物納適格となる要件が詳細に定められている ⇒その要件を満たす対策が必要になる等、事前準備が必要。
		●経営承継円滑化法による納税猶予制度適用の検討			●経営承継円滑化法による納税猶予制度適用の検討
				○	○非上場株式に係る相続税の８０％納税有穂制度～一定の要件を満たす場合、相続等により後継者が取得した非上場株式の課税価格の８０％に対応する相続税の納税が猶予されるもの。
				○	○非上場株式に係る贈与税の納税猶予制度～一定の要件を満たす場合、贈与により後継者が取得した非上場株式に対応する贈与税の納税が猶予されるもの。
					これらの特例の適用が可能であれば、事業承継のほとんどの問題点が解決される⇒検討すべき。
	まとめ				税制改正の方向が ①「相続税課税強化」に対して②「贈与税課税優遇」 ①「個人課税強化」に対して「法人課税優遇」の動向。 ⇒ 個人が法人を利用した節税により利益を留保する傾向が強まると同時に、次世代の後継者に贈与により株式を移転させる傾向が加速。
					①現状分析が重要。１次相続だけでなく２次相続まで相続税を試算して納税資金が確保されているかを常に意識。株価が低い場合でも、会社に対して多額の貸付債権を有しているケースも多々見られるので、要注意。
					②節税対策を優先して将来の紛争発生の可能性を高める対策を行わない。株式の分散を避けできるだけ後継者に集中させる対策を実行。
					③長期間にわたる贈与の有効性に着目し早期の実行を検討。具体的には、株式評価減対策を計画し株価の将来推移を予想しながら、有利なタイミングで暦年贈与や相続時精算課税贈与などを検討。
					④納税猶予制度んどの事業承継税制の適用が可能であれば相当有利な節税となる。 ⇒主な選択肢の１つとして検討。
★株式の分散防止を目的とした譲渡・贈与	★株式の分散防止を目的とした譲渡・贈与
	■株式の分散				中小企業の現経営者の自社株式の所有割合の平均は６６．４％ ⇒平均３０％程度の自社株式が現経営者以外により所有されている。
					譲渡制限がない会社が２８％ ←定款による株式の譲渡制限制度が導入された昭和４１年商法改正以前に設立された会社のうち、株式の譲渡制限についての定款変更を行っていない会社が相当数あるためと思われる。
	■株式の分散を防止するための制度		●譲渡制限株式		会社法第２条（定義）この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。十七　譲渡制限株式　株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいう
					相続・合併といった一般承継については、株式に譲渡制限がついていても、会社の承認なくして承継人に移動していしまう。
			●「相続人等への売渡請求権」の定款への付与	○	株式の譲渡制限は、一般承継（相続、合併）には妥当しない。 ⇒ 定款に相続に等への売渡請求権を付与すれば、会社は相続人等から強制的に自社株式式を買い取ることができることとした。
					会社法　第174条（相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め）株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式（譲渡制限株式に限る。）を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。
				○	○請求期限：相続等の一般承継があったことを知った日から１年以内に、株主総会の特別決議（総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ、その議決権の３分の２以上の賛成）を経てい請求する必要。（会社法１７５条、１７６条）
				○	○売買価格：原則として当事者間の協議による。協議が調わない場合、裁判所に価格決定の申立てができる。売渡請求の日から２０日以内に行わなければならない。裁判所は、会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。（会社法１７７条） ⇒協議が整わない場合、１株当たりの純資産を基準とした高めの価格に決定される可能性。
				○	○財源規制：剰余金分配可能価額を超える買取りはできない。（会社法461①(5)）
				○	○相続クーデターの発生：相続人等への売渡請求⇒少数株主による経営者の相続が発生した際、少数株主（議決権割合３％以上）が臨時株主総会を招集し、相続人に対して株式の売渡請求をする場合、相続人は特別利害関係人として議決権を行使できない。 ⇒少数株主のみで株主総会は決議されることになり、相続する予定の自社株式は強制的に会社に買い取られることになる。
					相続クーデターを防ぎつつ、相続人等への売渡請求権を定款に付与して自社株の分散を防止する方法：
					①新会社を設立して、経営者所有株式をその会社に譲渡して間接保有とする。（新会社による買取りの資金の確保、及びその借入金の返済や現経営者が負担する税金等、シミュレーションを適切に行う必要）
					②生前に現経営陣が保有する株式のすべてを後継者に贈与する。（経営承継円滑化法による非上場株式の贈与税の納付猶予制度の活用も併せて検討すべき）
					③「相続人等への売渡請求権」の定款への付与を、少数株主の相続時に付与し、買取り後に定款から外す、ということを繰り返す。（売渡請求に係る定款の定めを設定する時期については法律上制限がない）
			●その他		上記の他、少数株主から自社株式の買取方法については、 ①譲渡人を指定せずに会社が自社株式を取得する方法（ミニ公開買付け（ＴＯＢ））（会社法１５６条～１５９条） ②種類株式（議決権制限株式、全部取得条項付種類株式等）を活用する方法 ③合併等の組織再編を活用した少数株式の締め出しんアドがあるが、実務上中小企業では活用が少ない。
	■会社による自社株式の買取り（金庫株）				分散してしまった自社株式の買い取り先として、現経営者、後継者、会社が考えられるが、経営者、後継者には資金的に厳しい場合が多い。
					自社株式の取得の規制が緩和（平成１３年商法改正）⇒会社による買取りができるようになった。
			●		非上場の会社が株主から自社株式を買い取る際のそれぞれの立場における留意点。
				会社	①自己株式の取得は自由だが、財源規制（分配可能額の範囲内）がある（会社法４６１条）。
					②買取った自己株式については、議決権なし。⇒後継者を含めた既存株主の議決権比率が上昇する。
					③特定の者から自社株式を取得する場合、株主総会の特別決議が必要であり、その総会に先立って、他の株主に売主追加請求権が発生する。売主希望者の買取価額の合計が買受価額の総額を超えた場合、各株主に比例按分することとなり、必ずしも特定の株主から買い取れなくなることがある（会社法１６０条、１５９条）。
					④定款に「相続に等の売渡請求」の規定を付与することにより、株主に相続が発生した際にその株主の相続人に対して株主総会の特別決議によって売渡を請求することができ、強制的に買い取ることができる。（相続クーデターに注意）
					⑤自己株式の取得は資本等取引となり、みなし配当課税がなされる：平成１８年度税制改正により、自己株式の取得は資本取引となり、取得価額と１株当たりの資本金等の額のうち、いずれか小さい金額を資本金等の額から減少させ、取得価額が１株当たりの資本金等の額を超えるｊ場合には、その超過部分を利益準備金から減額する。この減額した利益積立金部分が譲渡した株主においてみなし配当となり、会社側では源泉徴収が必要となる（法法24①。
				売主株主	①個人株主から会社が自社株式を買い取る場合、みなし譲渡課税がなされる場合がある。「みなし譲渡課税」：個人から法人に対して著しく低い価額（適正な時価の２分の１未満）による譲渡が行われた場合には、「時価」によって譲渡したものとみなされ課税される（所法５９、所令１６９）。
					②自己株式の取得は資本等取引となり、みなし配当課税がなされる。売却株主が個人の場合：配当課税（総合課税）の上、配当控除が適用される。売却株主が法人の場合：受取配当金の益金不算入の規定が適用。みなし配当は総合課税となり、最高税率が４３．６％（総合課税の最高税率５０％－配当控除（所得税５％＋住民税１．４４％））と高くなるため、手取りが少なくなる。
					③相続により自社株式を取得した株主が会社に買い取ってもらう場合は、税務上優遇されている。納税資金の確保。相続税の申告期限から３年以内に、相続人が相続株式を自社に譲渡した場合、通常のみなし配当としての配当所得（総合課税）課税（最高税率４３．６％）ではなく譲渡所得（分離課税）課税（税率１５％（＋住民税５％））となる。さらに、相続税額を相続株式取得にかかった取得費として加算する特例⇒譲渡所得を圧縮できる。
				既存株主	①会社が自社株式を買い取る場合、みなし贈与課税がかかる可能性がある。会社が時価よりも著しく低い価額による自社株式を取得⇒その株式を譲渡した者からその他の株主に株式の価値が増加した部分の金額の贈与があったものとみなす（相法９、相基通９－２）。
					税務調査上、問題となりやすいのは、みなし譲渡、みなし贈与。株主と会社とで納得した譲渡価額でも、税務上の時価（適正な価額）との差額があれば、課税関係が生じる。 ⇒それを回避するには、税務上の時価と比較して著しく低い価額を譲渡価額といしないこと。
	■税務上の時価				税務上の時価は、取引当事者の立場によって異なり、法人税法上の時価、所得税法上の時価、相続税法上の時価は、それぞれ法人税基本通達、所得税基本通達、財産評価基本通達に記載があり、理解を困難に。
			●		●個人株主（売主）⇒会社（買主）の場合
					売主である個人株主：所得税法上の時価（所基通２３～２５共－９、５９－６）買主である会社：法人税法上の時価（法基通9-1-13、9-1-14）を判断基準に。所得税基本通達59-6は、個人から法人に対する「みなし譲渡課税」制度で適用される時価の考え方を示したもの⇒所得税法上の時価と法人税法上の時価は同一と考えるべき。法人税基本通達9-1-14では同族会社の判定時期の記載がないのに対して、所得税基本通達59-6(一)では、譲渡直前の議決権の数によることとされている点が相違点。
			●		●法人株主（売主）⇒会社（買主）の場合
					売主・買主どちらも法人税法上の時価（法基通9-1-13、9-1-14）を判断基準に。
	■事例				Ｘ社の発行済み株式総数は100,000株Ａ（代取）：67,000株Ｂ（Ａの長男）：０株Ｃ（Ａの弟）：10,000株Ｄ（番頭格）：10,000株 E：7,000株 F：6,000株 Fは最近退職し、会社へ株を売却する予定。
					相続人等に対する売渡請求の定款規定 ⇒Aに相続が発生した場合、全株主が100分の３以上の議決権を持つため、臨時株主総会の招集を請求できる（会社法297条）。非同族のDEFが結託した場合、当該株主総会において株主の議決権の３分の２以上を確保できる。（相続人Bには議決権なし）⇒相続人であるBの相続株主67,000株は会社に強制的に買い取られることになり、後継者Bに自社株式は移転しないことになる。
					会社法　第297条（株主による招集の請求）総株主の議決権の百分の三（これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合）以上の議決権を六箇月（これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間）前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項（当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。）及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。 2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月（これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間）前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。.
					元役員Fから会社で時価の２分の１未満で購入した場合：取得価額：５００円／株１株当たりの資本金等の額：３５０円１株当たりの時価：１３００円１株当たりの対価：６００円（他の株主について）１株当たりの純資産＝時価１３００円とすると（１３００円×１００，０００株－６００円×6,000株）／（100,000株－6,000株）－１，３００円＝４５円自社株式を取得したことにより、１株当たり４５円だけ価値が増加⇒この増加分についてみなし贈与税が課税される可能性がある。
★自社株式の評価引き下げ対策	★自社株式の評価引き下げ対策
	はじめに				経済合理性を逸脱して行き過ぎた税金対策が行われる場合には、租税回避であるとして否認されるリスク。「同族会社の行為計算の否認規定（相法64条）」「この痛たtのの定めにより難い場合の評価（財基通６）」の条文に抵触しないよう、熟考して、実行に移す必要。
	■１．類似業種比準価額対策・・大会社への区分変更				非上場株式の評価において原則的評価方法： ①「類似業種比準価額」と②「純資産価額」を基に算定。
					①の「類似業種比準価額」は、自社の利益や配当金額等を基礎に株価を算定 ⇒「純資産価額」と比較すると、株価が低く算定されるケースが多い。
					大会社は「類似業種価額」のみで評価できる⇒「類似業種比準価額」が「純資産価額」より大幅に低いような場合は、株価が大きく下がる。
					「大会社」は、総資産価額・従業員数・取引金額を基準に判定
					ｅｘ． (1)Ａ社（サービス業）会社規模（中の大）：「類似業種比準価額」×0.9＋「純資産価額」×0.1 ↓設備投資により総資産１０億円以上に増加 (2)会社規模大となり、「類似業種比準価額」で評価
					類似業種比準価額：10,000円純資産価額：50,000円 (1)の相続税評価額：14,000円 (2)の相続税評価額：10,000円
					総資産（相続税評価額ベース）に占める株式等や土地等の割合によっては、株式評価上、「株式保有特定会社」や「土地保有特定会社」に該当する可能性があり（財基通１８９）、該当する場合、原則として純資産額で評価（財基通189-3、189-4）。
	■２．類似業種比準価額対策・・組織再編・含み損の活用			●	●組織再編・・・債務超過会社との合併
					グループ会社に債務超過会社があれば、それらを合併させることにより、株価を引き下げることができる場合がある。（会社法795②）株価引き下げのみを目的とした経済合理性のない合併の場等の組織再編行為は、税法上否認されるリスクがあるので注意（法法132の2）。
					事例：承継財産としてＡ社（会社価値１０億円）とＢ社（債務超過△５億円）を合併（Ｂ者を消滅会社として吸収合併） ⇒会社価値は５億円となり、相続財産も５億円。債務超過会社の相続税評価額は△５億円とならずに０円となる⇒相続財産は、ＡＢで１０億円となる。合併⇒Ａ社株式の評価額は５億円に下がり、相続財産が圧縮
				●	●含み損の活用
					「純資産価額」は、土地建物などの不動産や有価証券などを時価で評価（財基通１８５） ⇒含み損を抱えたままでも株価は変わらない。「類事業種比準価額」は、配当・利益・純資産の３要素で算定（財基通１８０）⇒資産の譲渡などにより含み損を実現することで株価が引きさがる。減益や赤字決算は対外部株主、銀行、取引先という観点からは好ましいとは言えないが、自社株式の評価の引下げの観点からは検討すべき事項。
					Ａ社の事例： ①含み損益実現前B/S 資産：３０億円、　負債：２０億円　資本金：１億円　利益剰余金：９億円 ②売却前：課税所得：５０００万円　配当金：１０００万円　純資産：１０億円株価：類似　２３１円配当金額：類似：　４円　A社：５円利益金額：類似：２６円　A社：２５円純資産価額：類似：２６１円　A社：５００円株価：２３１円×（5/4＋25/26×３＋500/261）/５×0.7＝１９４円含み損のある土地を売却⇒無配 ③売却後：課税所得：△５０００万円、配当金：なし　純資産：９億円株価：類似　２３１円配当金額：類似：　４円　A社：２．５円利益金額：類似：２６円　A社：０円純資産価額：類似：２６１円　A社：４５０円株価：２３１円×（2.5/4＋0/26×３＋450/261）/５×0.7＝７４円
	j■３．役員退職金の支給			●	●生前退職金の場合
					オーナーに対する退職金は多額になる⇒支給期の利益は大幅に減額⇒自社株式の評価額が大きく引き下げる。
					役員退職区金の額が社外に流出⇒資産減少⇒純資産価額が低くなる。類似業種比準価額の計算においても、計算の３要素である配当・利益・純資産のうち利益と純資産が下がる⇒類似業種比準価額も低くなる。
					生前にオーナーが受け取る退職金は、退職所得として所得税の課税対象となり（所法30①）、退職所得は ①勤務年数に応じて退職所得控除がある、 ②所得金額は所得控除後の２分の１の金額、 ③他の所得と分離して課税される。
					退職所得：退職所得の金額＝（収入金額ー退職所得控除額）×１／２退職所得控除額：勤続年数≦２０年：４０万円×勤続年数（８０万円未満は８０万円）勤続年数＞２０年：８００万円＋７０万円×（勤続年数ー２０年）
				●	●死亡退職金・弔慰金の場合
					類似業種比準価額は直前期末の比準数値を用いて計算⇒相続時点での株価には影響しない。ｂｕｔ純資産価額の計算においては、相続開始後に支払われる死亡退職金を負債に計上することができる⇒株価を引き下げることができる。
					オーナーの死亡後に相続人等が受け取る退職金は、死亡後３年以内に支給が確定したものである場合には所得税は会税されず（所基通9-17）、相続人等が相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象とされる（相法３①二）。退職金を取得した者が相続人である場合、被相続人の死後における生活の安定等を考慮して、法定相続人の数に５００万円を乗じた金額まで非課税とされている（相法１２①六）。
					非課税金額： ①Ａ＜Ｂである場合非課税金額＝Ｃ ②Ａ＞Ｂである場合非課税金額＝Ｂ×Ｃ/ＡＡ：全ての相続人が取得した退職手当金等の合計額Ｂ：５００万円×被相続人の法定相続人の額Ｃ：その相続人の取得した退職手当金等の額
					弔慰金については明らかに退職手当金等に該当するものでなければ、 ①業務上の死亡の場合は通常給与の３年分、 ②業務上の死亡以外の場合は普通給与の半年分は相続税の課税対象とならない。

	■４．賃貸用不動産の購入				過去の内部蓄積（剰余金等）が大きい場合や、有価証券や土地等の含み益が大きくなっているケースは、純資産価額が高くなる傾向 ⇒純資産（資産ー負債）の価額を下げる方法の１つに、オーナーの資産管理会社が借入金で賃貸用不動産を購入する方法。
					土地：貸家建付地とのしての評価減建物：貸家としての評価減 ⇒株価の引下げ効果。
					この評価減の適用は、賃貸ビルの募集が行われ、貸室の大部分が入居してから ⇒賃貸料の空室リスクなどの採算性と資金繰り等を十分検討する必要。
					会社が課税時期前３年以内に取得した土地等及び建物等の価額は、路線価や固定資産税評価額ではなく、通常の取引価額（＝時価）で評価される ⇒短期的な対策ではない。
					賃貸用不動産を購入する場合、時の経過とともに土地評価額の上昇が見込まれる際には、建物のウエイトの高い賃貸物件を購入した方が３年経過後の不動産評価額全体が下がる可能性がある。

事業承継総論
事業承継の方法	①親族内承継	意義	オーナー経営者の子息子女に承継。
		メリット	関係者に受け入れられやすい。後継者を早期に決定し、時間をかけて準備できる場合が多い。
		デメリット	親族内に、経営の能力と意欲がある者がいるとは限らない。相続人が複数いる場合、後継者の決定や経営権の集中が困難となる。
		ポイント	後継者への経営権・事業用資産の集中。後継者以外の相続人への配慮（遺留分）。
	②親族外承継	意義	親族でない従業員や役員、外部から招聘した者に承継。
		メリット	候補者を広く求めることができる。従業員に承継する場合には、経営の一体性を保ちやすい。
		デメリット	後継者に株式取得等のための資金力がない場合がある。会社の負債や個人保証をどう処理するかが問題となる場合がある。
		ポイント	後継者への経営権・事業用資産の集中。後継者でない相続人への配慮。
	③Ｍ＆Ａ	意義	第三者への事業売却等による承継。
		メリット	候補者を広く外部に求めることができる。現オーナー経営者が事業売却による利益を獲得できる。
		ポイント	どれだけ高く売却できるかが重要⇒企業価値向上の努力が重要。
視点	経営権と財産権		後継者には、経営権（議決権ある株式、事業用資産）を残す。後継者以外の相続人には、財産権（非事業用資産）を残す。 ⇒遺留分対策。議決権制限株式の活用。
	株式の価格（事業価値）		親族内承継⇒相続税の関係で、株式の価値を抑えるのが有利Ｍ＆Ａ⇒売却利益を獲得するため、株式の価値を高めるのが有利～方向性の決定が必要。
	債務の処理		事業利益があがらない⇒清算やむなし事業利益があがる⇒事業を第三者に承継し、からになった会社を清算。
会社法	持株比率の集中		議決権の過半数ないし３分の２以上を確保する必要。
		?自己株式の取得	会社に資金がある場合は手っ取り早い。（オーナー経営者以外の株主から、会社が任意に株式を取得する。）規制： ①取得の機会を平等に保証するための規制。 ②財源規制。
			Ａ：株主全員から譲渡の勧誘をして取得する場合： ①株主総会の普通決議（法156①） ②株式を取得することができる期間は最長１年
			Ｂ：特定の株主から取得する方法 ①株主総会の特別決議が必要（法160①） ②他の株主には売主追加の議案変更請求権が保証される。（法160②③） ③売主追加の議題変更請求権を定款で排除するには、株主全員の同意が必要。
			Ｃ：譲渡承認請求権を活用する方法譲渡制限株式については、譲渡を希望する特定の株主から譲渡承認請求をしてもらえれば、他の株主に取得の機会を与えなくても、会社が当該特定の株主から株式を取得することができる（法136,138(1)ハ、140①）取得には株主総会の特別決議が必要。
			財源規制：自己株式を取得するのに引き換えに交付する金銭等の総額は、その取得が効力を生じる日における配分可能額を超えてはならない。（法461①(2)(3)）
		?後継者による取得	?後継者による株式の任意取得
		?後継者による取得	最も簡便な方法。資金が必要時価より著しく安価で取得すると、贈与税が課されるおそれがある⇒株式の評価に注意を払う必要がある。（税理士と相談する必要）
		?売渡請求	?会社による相続人等に対する売渡請求（強制取得）
			譲渡制限株式が相続その他の一般承継によって移転した場合には、株式を取得した者に対し、当該株式を会社に売り渡すことを請求できる旨を定款で定めることができる。（法１７４条）（←全く知らない第三者が経営に入ってくることを排除。）
			売渡請求をするには株主総会の特別決議が必要であるが（法175①）、当該決議に相続人は加わることはできない。（法175②）（→オーナー株主が亡くなった場合等その株式が買い占められてしまうリスクあり）
		?株主割当による発行	?株主割当による募集株式の発行
			全株式譲渡制限会社の場合、募集株式の発行は株主総会の特別決議を必要とするのが原則。株主割当（全ての株主に平等に割り当てる）による方式であれば、あらかじめ定款で定めておくことにより、取締役会の決議によって、募集株式を発行できる。（法202①）
			株主割当であっても、期日内に払込をしなければ、割当てを受けた株主は失権する。 ⇒払込をした株主の持株比率が上昇。
			税務上の注意点：特定の株主の持株比率が上昇して、実質的な株式の価値が上昇すると、株主間で価値の異同があったのではないかと考える。⇒株式を発行した後の１株当たりの価値が払込金額を上回る場合、上回った分について贈与性が課せられる。（税理士に要相談）
		?	?オーナー経営者本人または後継者を引受人とする募集株式の発行
		?	シンプルな方法。全株式譲渡制限会社においては、株主総会の特別決議が必要。資金が必要。
		?株式の併合	資金が不要。株式併合により１株未満の端数が生じる⇒議決権が発生しない⇒結果的に大株主の持株比率が上昇する。株主総会の特別決議が必要。
		?単元株の導入	資金が不要。単元未満株式には議決権は認められな⇒結果的に大株主の持株比率が上昇する。株主総会の特別決議が必要。。
		?全部取得条項付種類株式	会社法により、3分の2以上の議決権があれば、100%減資と同じ効果を生む全部取得条項付種類株式を発行して、株式を全部取得するという方法が可能になった。
			１回の株主総会の特別決議において、すべての普通株式を取得して、新しい株式を発行するという形で、少数株主にはその対価を支払うという形で出ていってもらう方法が可能。
			(1)株主総会特別決議により、定款を変更し、既発行株式と異なる種類の株式を発行できる旨を規定（法108②） (2)当該普通株式に全部取得条項を付する定款の変更の株主総会特別決議（法108②(7)） (3)全部取得条項付種類株式の取得および対価の決定のための株主総会特別決議（法171、法309②(3)） ⇒これにより全株主から株式を取得し、対価を支払う。 (4)募集株式発行のための株主総会特別決議（法199②、法309②(5)） ⇒オーナー経営者又は後継者のみに株式を割り当てる。以上の株主総会特別決議は、１回の決議でまとめて行うことができる。
			資産超過である場合、支払うべき対価が大きくなる。
		まとめ	株主総会の特別決議が必要なケースが多い⇒3分の2以上の議決権を事実上確保できるか、もしくは3分の2以下でも、実際に総会を開けば3分の2以上は確保できる状況でないと難しい。上の条件を満たさない⇒譲渡承認請求を利用して会社が株式を買い取る（?）、後継者が株式を買い取る（?）、株主割当による新株発行（?）等を地道に行う。（時間がかかる⇒早めに対策をする必要。） 3分の2以上の特別決議がとれ、資金を使わない方法は、株式の併合や単元株の導入。ドラスティックにするのであれば、全部取得条項付種類株式。
	議決権制限株式の活用	有用性	後継者の相続人に議決権の株式を相続させる。非後継者の相続人に議決権のない株式を相続させる。 ⇒非後継者の相続人の遺留分に配慮
		発行方法	議決権制限株式を定める定款変更には、株主総会の特別決議を要する。
			議決権制限株式の新規発行： ①株主総会の特別決議により、議決権制限株式を新規に発行し、すべてをオーナー経営者に割り当てる。 ②オーナー経営者に資金が必要となる。
			オーナー経営者が保有する株式の一部を議決権制限株式に変更： ①株主全員の同意が必要であると考えられている。 ②外に株主がいる場合、オーナー経営者の議決権比率が相対的に低下する。
			株式無償割当て： ①全ての株主に持株比率に応じて平等に割り当てられる。　手続自体は取締役会で足りる。 ②新たな資金を必要としない。 ③比較的利用しやすい。
			全部取得条項付種類株式の活用 ①既存普通株式を全部取得条項付種類株式へ内容変更　新たな普通株式を発行し、従前の株主に持株比率に応じて割り当てる全部取得条項付種類株式の取得　議決権制限株式の交付 ②相対的に少ない資金で済むが、反対株主は株式買取請求権が保障されているので、買取資金が必要となる。
		遺言	公正証書遺言で「オーナー経営者の持っている議決権のない株式は後継しない相続人に相続させる。もともと持っている自分の議決権ある株式は後継者に相続させる。」という形で書いておく必要。
	拒否権付種類株式（法108②(9)）		①その定款記載の内容に従って、問題となる事項については、株主総会等の決議に加えて、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会（その種類株主に関する株式の種類が２つ以上ある場合は、２つ以上の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会）の決議が必要となる。 ②拒否権付き株式自体を譲渡制限付きにすることが可能となっている。 ③定款で定めることが必要（株主総会の特別決議）
	拒否権付種類株式（法108②(9)）		?オーナー経営者が拒否権付株式を自分で確保しておき、これを後継者に承継させる。 ?オーナー経営者が拒否権付株式を持ち、にらみをきかせておく。
	役員選任権付種類株式（法108②(9)）		①取締役・監査役について、全体の株主総会ではなく、この種類株主総会で選任することができることが定められた種類株式。 ②定款で定めることが必要（株主総会の特別決議）
	属人的種類株式（法109②）		①議決権等について、株主ごとに異なる取り扱いをすることができる。　「Ａは１株あたり10この議決権を有する」　「Ａは所有株式数に加えて100個の議決権を有する」　「代表取締役である株主は全ての決定権を有する」 ②全株式譲渡制限会社のみ認められる。 ③特殊決議の要件（総株主の半数以上で、総株主の議決権の４分の３以上。法309④）

事業承継関係法令（総論）
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律	施行	平成２０年５月１６日公布、同年１０月１日施行予定。
	趣旨	中小企業における経営の承継の円滑化を図り、中小企業の事業活動の継続に資することを目的とする。（法1条）
	特例	推定相続人（遺留分を有する者に限定）は、次に掲げる内容の定めをすることができる。一　当該後継者が取得した当該特例中小企業者の株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと。二　前号に規定する株式等の全部又は一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意の時における価額とすること。（法4条）後継者が取得した株式等以外の財産の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができる。（法5条）
	合意の効力の消滅	次の事由が生じたときには、効力を失う。（法10条） ①経済産業大臣の確認（法7①）が取り消される。 ②旧代表者の生存中に後継者が死亡し、又は後見開始若しくは保佐開始の審判を受けたこと。 ③当該合意の当事者以外の者が新たに旧代表者の推定相続人となったこと。 ④当該合意の当事者の代襲者が旧代表者の養子となったこと。
	要件	①一定期間以上継続して事業を行う中小企業であること。（法3①） ②旧代表者がその推定相続人の少なくとも１人に当該会社の株式等を贈与したこと。（法3②） ③旧代表者又は同人から贈与を受けた推定相続人から贈与等により当該株式等を取得した者が、議決権の過半数を有し、かつ当該会社の代表者であること。（法3③） ④(i)当該後継者が合意の対象とした株式等を処分する行為をした場合、(ii)旧代表者の生存中に当該後継者が当該特例中小企業者の代表者として経営に従事しなくなった場合にとることができる措置に関する定めをすること。（法4③）
	手続	①推定相続人全員の合意で書面による。（法4①） ②後継者は経済産業大臣の確認を受ける。（法7条） ③経済産業大臣の確認を受けた者が、当該確認を受けた日から１月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受ける。⇒効力が生じる。（法8条）
	その他	推定相続人間の衡平を図る措置に関する規定を定める場合には、書面でする必要。（法6条）
事業承継における相続税の納税猶予制度の創設	適用	中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の施行の日（平成２０年１０月予定）以降の相続に遡って適用。
	特例	後継者が相続又は遺贈により取得した自社株式の８０％に対応する相続税の納税を猶予。
	特例	死亡の時まで保有し続けた場合など一定の場合に、猶予納税額の納付を免除
	要件	被相続人： ①会社の代表者であったこと。 ②被相続人と同族関係者で発行済株式総数の５０％超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主であった場合。相続人（後継者）： ①会社の代表者であること ②相続人と同族関係者で発行済株式総数の５０％超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となる場合。会社：中小企業基本法の中小企業であるこｔ。製造業その他：資本金３億円以下　又は　従業員３００人以下卸売業：資本金１億円以下　又は　従業員１００人以下小売業：資本金５千万円以下　又は　従業員５０人以下サービス業：資本金５千万円以下　又は　従業員１００人以下５年間の事業継続・代表者であること・雇用の８割以上を維持・相続した対象株式の継続保有