シンプラル法律事務所
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論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
会社分割と事業全部(重要な一部)譲渡 | |||
会社分割(757条) | 事業の全部(重要な一部)譲渡(476@(1)(2)) | ||
対象 | 「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」 | 「事業の全部」 「事業の重要な一部」 |
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権利義務の承継態様 | 包括的 | 個別的 | |
個別の承継手続の要否(各債権者の承諾の要否) | 不要 but債権者保護手続あり |
必要 | |
承継会社・新設会社から分割会社への譲渡対価の支払の要否 | 不要 | 必要 | |
効力発生日に分割会社が承継会社・新設会社との関係で取得する権利等 | 承継会社が株式会社の場合、分割会社は、効力発生日に株主となる(759C(1)、764C) | 特になし |
吸収型再編 | 新設型再編 | ||
種類 | 吸収合併、吸収分割、株式交換 | 新設合併、新設分割、(協同)株式移転 | |
法人格の創設 | 既存の会社間の行為であり、新たな法人格の創設(会社の設立)を伴わない。 | 新たな法人格の創設を伴う。 | |
再編の対価 | 種類に制限なし | 設立会社の株式が必ず交付 | |
効力発生日 | 当事会社間で締結される契約の中で定めた日 | 設立会社の設立の登記をした日 |
会社分割 | ||||
◆定義 | 1つの会社を2つ以上の会社に分けること。 | |||
◆活用方法 | 多角経営化した企業がその事業部門を独立させて経営効率化の向上を図る。 不採算部門・新製品開発部門などを独立させる。 他の会社の同じ部門と合弁企業を作る場合の手段。 事業の売却(買収)や企業の提携の手段。 |
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◆種類 | ■ | ■@吸収とA新設 | ||
@吸収分割: 「事業に関して有する権利義務の全部または一部」を既存の会社(承継会社)に承継させる。 分割とともに吸収合併の面を有する。 |
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A新設分割: 分割会社はその「事業に関して有する権利義務の全部または一部」を新しく会社を設立してそこ(新設会社)に承継させる。 |
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■ | ■@物的とA人的 | |||
@物的分割: 会社分割の対価となる株式等が分割会社に交付される場合 |
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A人的分割: 会社分割の対価となる株式等が分割会社の株主に交付される場合 but 会社法は、対価をいったん分割会社に交付され、それが分割会社からその株主に剰余金の配当(金銭以外の場合は現物配当)されると構成⇒会社分割=物的分割 |
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◆効果 | 吸収分割の場合は、承継会社の新株その他の財産が分割会社に交付される。 新設分割の場合は、新会社が設立し、分割会社は承継会社の株主(承継会社株式の交付を受けた場合)または新設会社の株主となる。 |
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◆手続 | ◆手続 | |||
■ | ■分割契約(吸収分割の場合)の締結または分割計画(新設分割の場合)の作成 | |||
● | ●吸収分割契約の法定決定事項(法758) | |||
@分割会社及び承継会社の商号及び住所 | ||||
A承継会社が分割により分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務(分割会社及び承継会社の株式ならびに分割会社の新株予約権に係る義務を除く)に関する事項 | ||||
B吸収分割により分割会社または承継会社の株式を承継会社に承継させるときは、当該株式に関する事項 | ||||
C承継会社が吸収分割に際して分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部または一部に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次の事項 イ 当該金銭等が承継会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)またはその数の算定方法ならびに当該承継会社の資本金及び準備金の額に関する事項 ロ 当該金銭等が承継会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額またはその算定方法 ハ 当該金銭等が承継会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く)であるときは、当該予約権の内容及び数またはその算定方法 ニ 当該金銭等が承継会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロの事項および当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハの事項 ホ 当該金銭等が承継会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額またはこれらの算定方法 |
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D承継会社が吸収分割に際して分割会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該承継会社の新株予約権を交付するときは、当該品k部予約権についての次の事項 | ||||
EDの場合には、吸収分割契約新株予約権の新株予約権者に対するDの承継会社の新株予約権の割当てに関する事項 | ||||
F吸収分割がその効力をしょうずる日(効力発生日) | ||||
G分割会社が効力発生日に次に掲げる行為をするときはその旨 イ 全部取得条項付種類株式(171@)の取得(取得対価が承継会社の株式(分割会社が吸収分割をする前から有するものを除き、承継会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもの(規則178)を含む。ロにおいて同じ。)のみであるものに限る) ロ 剰余金の配当(配当財源が承継会社の株式のみであるものに限る) |
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● | ●新設分割の分割計画(法763) | |||
@新設会社の目的、商号、本店の所在地および発行可能株式総数 | ||||
A@のほか、新設会社の定款で定める事項 | ||||
B新設会社の設立時取締役の氏名 | ||||
C次の事項 イ 新設会社が会計参与設置会社である場合:新設会社の設立時会計参与の氏名または名称 ロ 新設会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款がある株式会社を含む)である場合:新設会社の設立時監査役の氏名 ハ 新設会社が会計っ監査人設置会社である場合:新設会社の設立時会計監査人の氏名または名称 |
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D 新設会社が新設分割により分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務(分割会社の株式及び新株予約権に係る義務を除く)に関する事項 | ||||
E 新設会社が新設分割に際して分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部または一部に代わる当該新設会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類および種類ごとの数) | ||||
F2以上の株式会社または合同会社が共同して新設分割するときは、分割会社に対するEの株式の割当てに関する事項 | ||||
G新設会社が新設分割に際して分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部または一部に代わる当該新設会社の社債等を交付するときは、当該社債等について次の事項 イ 当該社債等が新設会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く)であるときは、当該社債の種類および種類ごとの各社債金額の合計額またはその算定方法 ロ 当該社債等が新設会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く)であるときは、当該新株予約権の内容および数またはその算定方法 ハ 当該社債等が新設会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイの事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてロの事項 |
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H Gの場合において、2以上の株式会社または合同会社が共同して新設分割をするときは、分割会社に対するGの社債等の割当てに関する事項 | ||||
I 新設会社が新設分割に際して分割会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に変わる当該新設会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権についての次の事項 イ 当該新設会社の新株予約権の交付を受ける分割会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権(新設分割計画新株予約権)の内容 ロ 新設分割契約新株予約権の新株予約権者に対して交付する新設会社の新株予約権の内容および数またはその算定方法 ハ 新設分割計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、新設会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨ならびにその承継にかかる社債の種類および種類ごとの各社債の金額の合計額またはその算定方法 |
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J Iの場合には、新設分割計画新株予約権の新株予約権者に対するIの新設会社の新株予約権の割当てに関する事項 | ||||
K 分割会社が新設会社の成立の日に次に掲げる行為をするときは、その旨 イ 全部取得条項付種類株式(法171@)の取得(取得対価が新設会社の株式(これに準ずるものとして法務省令で定めるもの(規則179)を含む。ロにおいて同じ)のみであるものに限る) ロ 剰余金の配当(配当財産が新設会社の株式のみであるものに限る) |
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■事前の開示 | ||||
■会社債権者異義手続 | ●対象 | @分割会社の債権者のうち会社分割後に分割会社に対し債務の履行を請求することができない債権者 | ||
A分割会社が分割対価を株主に分配する場合における分割会社のすべての債権者 | ||||
B承継会社のすべての債権者 | ||||
分割会社のすべての債権者は対象となっていない ←分割会社は承継会社から承継した財産に見合う対価を取得するので、資産に変動がない |
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●手続 | 分割会社・承継会社・新設会社は、債権者に対して、 @分割する旨、A他の当事会社(新設分割の場合は新設会社も)の商号と住所、B全当事会社の計算書類等、C異義のある債権者は一定の期間(1ヵ月以上)内に述べる旨を官報に公告し、かつ、「知れたる債権者」には各別に催告する。 |
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官報公告に加えて日刊新聞紙による公告または電子公告をも行った場合には、知れている債権者に対する個別催告は不要(分割会社の不法行為債権者を除く)。 | ||||
期限内に異義を述べなかった債権者は分割を承認したものとみなされる。 異義を述べた債権者には、弁済・担保提供・弁済用財産の信託のいずれかをしなければならないが、会社を分割してもその債権者を害するおそれがない場合は、そのような対応は不要。 |
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各別の催告が必要な場合に個別催告を受けなかった債権者に対しては、分割契約または分割計画において債務者としなかった会社も、分割会社については分割の効力発生日の財産額、承継会社または新設会社は承継した財産額を限度として、弁済の責任を負う。(法759AB、764AB) その限度で重畳的債務引受となる。 ex. 分割会社A社が100億円の財産を有し、そのうち80億円分の財産を剰余金配当を伴う分割により承継会社又は新設会社Bに移転した場合、個別催告を受けなかった債権者Cがあれば、分割契約または分割計画においてCに対する債務をA社が負担する旨の定めをしてもB社も80億円の限度で、Cに対する債務をB社が負担する旨の定めをしてもA社も20億円の限度で、責任を負う。 |
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●労働契約の特例 | 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律: 承継対象の事業に主として従事している労働者の労働契約が分割契約または計画に記載されていない場合には、その労働者は異義を述べることができ、異義を述べたときはその労働契約は承継される(同法4)。 承継対象の事業に主として従事している労働者以外の労働者の労働契約が分割契約または計画に記載された場合には、その労働者は異義を述べることができ、異義を述べたときはその労働契約者承継されない。 |
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● | ●企業担保権 | |||
会社の総財産が企業担保権の目的となっているときは、その会社は企業担保権が担保する債務を分割により承継させることができない。(企業担保法8の2) | ||||
● | ●元本確定前の根抵当権 | |||
根抵当権者または債務者の分割があった場合に、それが担保する範囲などが明文で定められている。(民法398の10) | ||||
■労働者の異議申出手続 | ●趣旨 | 債権者と並んで労働者の保護が重視されている。 ← 労働者にとっては誰が使用者であるかは重要な事項であるにもかかわらず、会社分割の手続を利用することにより、吸収分割契約・新設分割計画の定めに従って個々の労働者の承諾なしに労働契約が吸収分割承継会社、新設分割設立会社に承継されてしまう。 |
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個別の転籍の同意を取得したり、分割会社からの在籍出向の形で対処する場合であっても、承継事業に主として従事する労働者が存在する限り労働契約承継法の適用はある。 | ||||
● | ●労働契約承継法が定める手続 | |||
@ | @労働者の理解と協力を得るための手続 | |||
すべての事業場において当該事業場の労働者の過半数を代表する労働組合等との協議その他これに準ずる方法によって労働者の理解と協力を得るように努める(7条)。 〜労働者全体の理解と協力を得るための手続 |
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吸収分割契約・新設分割計画を本店に備置する日前に承継される事業に従事している労働者と協議する義務を負う(平成12年商法改正附則5条1項)。 〜個別の労働者の保護のための手続 |
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A | A労働者への事前通知 | |||
吸収分割契約・新設分割計画を承認する総会の日の2週間前の日の前日(総会を要しない場合には、吸収分割契約締結又は新設分割計画作成の日から2週間を経過する日)までに、次の労働者に対して法的事項を書面により通知(法2条1項)。 (i)分割会社が雇用する労働者で、承継会社・設立会社に承継される事業に主として従事するもの (ii)((i)以外の労働者で)分割会社が雇用する労働者で吸収分割契約・新設分割計画にその者との労働契約を承継会社・設立会社が承継する旨の定めがあるもの |
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従業員全員を出向扱いとする場合であっても承継事業に主として従事する者に対して通知することを要する。 「主として従事する」〜時間、業務量等で判断して、その事業にもっとも従事しているかで判断。 |
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B | B労働組合への事前通知等 | |||
分割会社が労働組合との間で労働契約を締結 ⇒Aとお暗示期間までに、当該労働組合に対し法定記載事項を書面により通知(法2条 2項)。 |
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労働協約のうち規範的効力を有する部分〜組合員の労働契約が承継⇒承継会社又は新設会社と労働組合の間で同内容の労働協約が締結されたものとみなされる。 債権的効力を有する部分(組合への便宜供与など)〜分割契約・計画に記載しない限り承継されない。 |
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C | C労働者の異議申出手続 | |||
A(i)に該当する労働者で吸収分割契約・新設分割契約に労働契約を承継する旨の記載なし⇒所定の期間内に、分割会社に対して異議を申し出ることができる(法4条1項)⇒分割効力発生日に承継される。 | ||||
A(ii)に該当する労働者は、所定の期間内に、分割会社に対して異議を申し出ることができる(法5条1項)⇒承継会社・設立会社に承継されない(法5条3項)。 | ||||
■ | ■新株予約証券の提出手続(会社法293条) | |||
分割会社の新株予約権を承継会社・設立会社に承継させる場合で当該新株予約権に係る新株予約権証券が発行⇒会社分割の効力発生日までに分割会社に対し新株予約権証券を提出させるため、1か月前までに公告し、かつ、新株予約権者及び登録新株予約権質権者に対し各別に通知。 | ||||
■ | ■新株・新株予約権買取請求手続 | |||
● | ●株式 | |||
吸収分割・新設分割に反対する株主は、自己の株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。 簡易手続を行う分割会社以外はすべて買取請求手続を要する(会785条1項2号、806条1項1号)。 |
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● | ●新株予約権 | |||
■ | ■吸収分割・新設分割承認総会 | |||
● | ●分割承認総会 | |||
吸収分割契約について効力発生日の前日までに、新設分割計画については新設分割の登記前に株主総会の承認を得ることを要する。 ⇒ 株主総会の翌日を、吸収分割における効力発生日又は新設分割における設立会社の成立の日とするスケジューリングが可能。 |
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債権者保護手続を株主総会の日の1か月前の応当日の前日に開始すればよい。 買取請求手続きについても同様。 〜総会の前から株主や新株予約権者による買取請求が可能。 |
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● | ●決議要件 | |||
吸収分割の場合:吸収分割会社及び吸収分割承継会社 新設分割の場合:新設分割会社 のいずれにおいても特別決議。 |
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● | ●招集通知 | |||
● | ●総会での説明 | |||
■ | ■分割総会を要しない場合 | |||
● | ●略式分割 | |||
吸収分割において吸収分割承継会社が吸収分割会社の議決権の90%以上を直接又は間接に保有する場合(法784条1項)。 | ||||
少数株主の権利保護を図るため、特別の差止め制度が設けられている | ||||
● | ●簡易分割 | |||
当該会社分割の規模からして、その会社の株主に与える影響が小さいと認められるような場合。 | ||||
◎ | ◎@吸収分割における吸収分割会社、新設分割における新設分割会社 | |||
承継させる資産の帳簿価額の吸収分割会社の総資産額に対する割合が5分の1を超えない場合。 | ||||
◎ | ◎A吸収分割における吸収分割承継会社 | |||
分割対価の帳簿価額の合計額の承継会社の純資産額に対する割合が5分の1を超えない場合 | ||||
■登記 | 吸収分割は、分割契約で定めた効力発生日に効力が発生(法759@) 新設分割は、新設会社の成立の日(設立登記の日)に効力発生(法764@) |
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■事後の開示 | 効力発生日から6か月間 |