シンプラル法律事務所
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真の再生のために(個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP−トップ |
論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
意味 | |||
●連結子会社: 親会社の連結財務諸表に全部連結の形で載る子会社。 子会社のうち、以下のものが連結子会社から除外される。 1.支配が一時的であると認められる企業 2.上記1以外の企業であって、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある企業 以外のすべての子会社は、親会社の連結子会社となる。 重要性の原則が適用され、小規模子会社は連結子会社としないことができる(子会社であって、その資産、売上高等を考慮して、連結の範囲から除いても企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しいものは、連結の範囲に含めないことができる)。 |
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●持分法適用会社: 連結財務諸表上、持分法の適用対象となる関連会社のことを持分法適用会社という。原則として、議決権所有比率が20%以上50%以下の非連結子会社・関連会社をさすが、重要性の乏しいものについては、持分法適用会社としないことも認められている。 連結財務諸表の処理では持分法適用会社は、連結子会社とは異なり財務諸表を合算することはなく、議決権所有企業の持ち株比率に応じて「投資有価証券」の勘定項目に被所有会社の損益等を反映させるように数値を修正するだけである。連結の「完全連結」に対して持分法が「一行連結」と言われる所以である。ただし、連結と持分法が、連結財務諸表上の当期損益および純資産に与える影響は同じである。 |
コーポレート・ガバナンス(企業統治)の視点 | ||||
バフェットの視点 (p74) | @ | @経営権を握る株主が存在しない場合(大部分の企業) | ||
経営陣は、不在しにしている株主が1人いて、彼の長期利益をさらに高めていくことに最善を尽くすつもりで経営に当たるべき。 | ||||
取締役は、経営者が無能又は株主の財産をかすめとうろとする場合、経営者のクビをすげ替え、その手を叩くべき。 but多くの取締役は、批判的な行動をとるような気質を持ち合わせていない。 |
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取締役会を比較的少ない人数で構成し、かつそのメンバーのほとんどを社外取締役とすべき。 社外取締役は、CEOの業績に対する基準を制定すべきであり、またCEOのいない状況で定期的に集まって、彼の業績をそうした基準に照らして評価すべき。 |
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取締役会のメンバーとしての必須条件は、@事業に精通し、A自分の職務に関心を持ち、B株主本位に行動すること。 ×有名であるとか、毛色の違う人間を加えるため。 |
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取締役の選任を誤ることは極めて深刻な問題。 (←愛想の良い魂の抜けた取締役達が職を失う心配はない。) |
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A | A経営権を握る株主がCEOを兼ねている場合 | |||
取締役会が株主と経営者の間に立つ役割を担うことはなく、また、本人を説得する場合を除き、経営者を後退させる影響力がない。 | ||||
状況に変化がなく、問題がいやというほど深刻である場合、社外取締役は辞任すべき。 (経営者に対する疑念を他に知らしめ、社外取締役すら大株主たる経営者の能力欠如をただすことができないという事実を際立たせることになる。) |
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B | B経営権を握る大株主が存在しても経営に参加しない場合 | |||
社外取締役は、経営者の能力や誠実さに疑問を抱いた場合に、自分たちの不満をオーナーに直訴する。(オーナーはその話に納得すれば、即座に状況を変革することができる人物) | ||||
重要な問題に関して納得できない状況が続けば、辞職以外に道はない。 |
法人格否認の法理 | ||||
◆ | ◆(1) 意義 | |||
■ | ■機能 | |||
1人会社のように株主と会社との関係が密接なケースでは、両者の法人格の独立性を形式的に貫くことが、場合により正義・衡平に反することがある。 ⇒特定の事案につき会社の法人格の独立性を否定し、会社とその背後の株主とを同一視して事業の衡平な解決をはかる法理。 |
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典型的には @小規模な株式会社が倒産した際その実質的1人株主の個人責任を追及するために援用(=有限責任の排除) 中小企業に関するそれ以外の問題解決にも適用(ex.株主が自己の名で締結した和解契約の効果が会社に及ぶとされた例、会社代表者でない株主がした会社資産の譲渡が有効とされた例等) A親子会社間の法人格の異別性を否認する形 B外国に設立された子会社の債権者が親会社に対し債務の弁済を請求する等、国際的局面でも主張 |
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■ | ■概念 | |||
● | ●一般 | |||
法人格否認の法理は、法人格の独立性(法人の「分離原則」)、すなわち、@会社の対外的活動から生じた権利・義務は会社に帰属し、かつ、A会社に対し効果を生ずる財産法上の行為は会社の機関が行う(株主は、直接それを行う権限を有しない)との原則を、当該事案限りで否認する法理。 | ||||
● | ●実定法上の根拠 | |||
会社の法人性の規定(会社3条)の解釈に求める。 会社法3条の適用を制限するところの、民法1条3項を初めとする何らかの規定という以上には特定できない。 |
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会社法 第3条(法人格) 会社は、法人とする。 |
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● | ●主張できる者 | |||
◆ | ◆(2) 要件 | |||
判例によれば、@「法人格が濫用される場合」または「法人格が形骸化している場合」に、法人格否認の法理は適用される。 | ||||
■ | ■法人格の濫用 | |||
● | ●意義 | |||
「法人格の濫用」とは、@法人格が株主により意のままに道具として支配されている(支配の要件)ことに加え、A支配者に「違法または不当の目的」(目的の要件)がある場合をいう。 | ||||
● | ●具体例 | |||
@競業避止義務等の不作為義務を負担する者が会社を利用して義務の潜脱を試みる場合に、株主・会社の法人格の異別性を否定し義務の負担者を拡張 A倒産の危機にある会社が強制執行免脱・財産隠匿等のために新会社を設立し業務を継続する場合に、両会社の法人格の異別性を否定し旧会社債権者の新会社に対する支払請求を認める B親会社が不当労働行為の意思に基づき子会社を解散する場合に、子会社の法人格を否認し子会社従業員と親会社との間に雇用関係を認める。 |
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不作為義務の潜脱: @法令・契約上本来の義務負担者である株主が会社に競業をさせる場合に当該株主に対し差止・損害賠償請求をするには、契約・法令の解釈上株主が義務に違反したか否かを判断すれば足り、法人格否認の法理の援用は不要。 A本来の義務負担者でない会社に対する差止めを認めるには、法人格否認の法理の適用が必要。 |
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■ | ■法人格の形骸化 | |||
● | ●意義 | |||
「法人格の形骸化」: 法人とは名ばかりであって、会社が実質的には株主の個人営業である状態、または、子会社が親会社の営業の一部門に過ぎない状態をいう。 |
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単に株主・親会社が会社・子会社を完全に支配しているだけでは法人格の形骸化とはいえず、 @株主総会・取締役会の不開催、株券の違法な不発行等 A業務の混同(会社の存在が外見上認識困難である、または、株主と会社が同種事業を遂行する等) B財産の混同(株主・会社による営業所の共同利用、または、両社の会計区分の欠如等) など、法人形式無視の諸徴表が積み重なって初めて、法人格の形骸化といえる。 |
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◆ | ◆(3) 効果 |
総論 | ||||
事業と法形態 | 出資者が1人⇒個人事業 出資者が複数⇒共同事業 会社は共同事業形態の典型。 |
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@法人格を有するか A出資者の責任は出資額を限度とする(出資者の有限責任)か B出資者と業務執行者を別の者とすることを原則とする(所有と経営の制度上の分離)か C出資者の持分の譲渡または投下資本回収をどのように規制するか において相違 |
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■組合 | ||||
■組合 | 規定 | 第667条(組合契約) 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。 2 出資は、労務をその目的とすることができる。 |
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第676条(組合員の持分の処分及び組合財産の分割) 2 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。 |
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第674条(組合員の損益分配の割合) 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。 2 利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。 第675条(組合員に対する組合の債権者の権利の行使) 組合の債権者は、その債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる。 |
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第670条(業務の執行の方法) 組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。 2 前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(次項において「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。 3 組合の常務は、前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。. |
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第672条(業務執行組合員の辞任及び解任) 組合契約で一人又は数人の組合員に業務の執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。 2 前項の組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる。 |
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説明 | 2人以上の者(法人でもよい)が出資をして共同事業をすることを合意⇒民法上の組合契約(民法667@) 出資は、金銭その他の財産のほか、労務(組合事業のために働くこと)や信用(名前を連ねること等)でもいい(同A) |
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組合には法人格は認められない。 組合委員の出資により組合財産が形成されるが、これは共同事業を行うためのものであるから、組合の存続中は分割することはできない(法676A) |
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組合の債務については、各組合員が責任を負う(無限責任)、各組合員の損失負担の割合は組合契約で定めることができる。(法674、675) 債権者は組合財産から先に執行する必要はなく、いきなり組合員に対して債務の履行を請求できる。 |
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組合の業務執行は、組合員の多数決(1人1票)で行うのが原則であるが、業務執行者を選ぶこともできる。(法670@A) 日常業務(常務)は、各組合員又は各業務執行者が単独でできる(同B) 業務執行者を選任した場合には、正当な事由がないかぎり辞任・解任はできない(法672)。 |
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各組合員はその持分を譲渡しても組合および組合を取引をした第三者に対抗できない(法676@)。組合員は、脱退により持分の払戻しを受けるが(法678以下、681)、組合員の脱退による組合は当然には解散しない。 | ||||
■匿名組合 | ||||
■匿名組合 | 規定 | 第535条(匿名組合契約) 匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。 |
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第536条(匿名組合員の出資及び権利義務) 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。 2 匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。 3 匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。 4 匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。. |
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第538条(利益の配当の制限) 出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。 |
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第541条(匿名組合契約の終了事由) 前条の場合のほか、匿名組合契約は、次に掲げる事由によって終了する。 一 匿名組合の目的である事業の成功又はその成功の不能 二 営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと。 三 営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと。 |
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説明 | 事業を行う者(営業者)と名前を出さないで出資(金銭その他の財産に限られる)をする者(匿名組合員)(法人でもよい)との間で出資と利益分配の契約をすると匿名組合が成立。(商法535条) | |||
ex.航空機リースや不動産の証券化等に利用 | ||||
契約であり、匿名組合に法人格は認められないが、民法上の組合と異なり、出資者相互間に契約はなく、組合財産も形成されない(匿名組合員が複数の場合、匿名組合契約が複数あることになる)。 | ||||
匿名組合員は、営業車の債権者とは直接の法律関係に立たない⇒債権者に対して責任は負わず、営業車に対して約束した出資さえすれば、それ以上の責任はない(有限責任)。(法536C) | ||||
事業者営業者のものであり、出資した財産も営業者のものになるが(法536@)、実質的には、「匿名組合員=出資者」と「営業車=業務執行者」とを分離した制度。 業務は営業者が行い(法536B)、事業の利益は契約に基づき匿名組合員に分配。 |
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匿名組合員が匿名組合上の地位を譲渡することは可能。 匿名組合契約が解除等により終了⇒出資は匿名組合員に返還されるが、損失が生じればお匿名組合員が負担。 |
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■信託 | ||||
■信託 | 規定 | 第3条(信託の方法) 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。 一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法 二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法 三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法 |
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第4条(信託の効力の発生) 前条第一号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。 2 前条第二号に掲げる方法によってされる信託は、当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。 3 前条第三号に掲げる方法によってされる信託は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。 一 公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成 二 公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては、その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知 4 前三項の規定にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。 |
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説明 | 信託法は平成18年に全面改正 | |||
委託者が受託者との間で、 @受託者に対し財産の譲渡・担保権の設定その他の財産の処分をする旨および A受託者が一定の目的(信託目的)に従い財産の管理または処分とその他の信託目的達成のために必要な行為をすべき旨の契約(信託契約)を締結するなどの方法で、信託関係が成立。 |
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複数の者が委託者兼受益者となって受託者と信託契約を締結⇒共同事業の形態として利用できる。 | ||||
信託に法人格は認められず、信託財産は受託者の所有となる。 受益者は原則として「有限責任」である。 業務執行は受託者が行う(出資者と業務執行者の分離) 受益権の譲渡は原則として可能。 |
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■会社 | ||||
■会社 | (1)株式会社 (2)持分会社 @合名会社、A合資会社、合同会社 |
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会社の概念 | ■法人性 | 規定 | 第3条(法人格) 会社は、法人とする。 |
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民法 第34条(法人の能力) 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。 |
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説明 | 法人格⇒団体自身の名において権利を有し義務を負う⇒権利関係の処理が感銘 | |||
能力の制限: @性質による制限 A法令による制限 B目的による制限 実務では、定款の目的条項を広く記載⇒今日、ある行為がこの面で会社の能力外であるとされる可能性はまずない。 |
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■営利法人性 | 民法 第33条(法人の成立等) 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。 2 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。 |
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商法 第4条(定義) この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。 |
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営利法人概念としての営利性: 対外的活動によって得た利益を構成員に分配するという意味。 商人概念(商法4@参照)の構成要素として営利性: 通常は利益を得ることを目的として対外的活動をするという意味。 |
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■社団性 | 社団: 組合に対する概念で、法的形式として、出資者である団体の構成員が相互に契約関係で結合する団体を組合、 構成員が団体との間の社員関係により団体を通じて間接に結合する団体が社団。 |
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組合⇒各構成員の権利義務は他の全構成員に対する権利義務の形をとり、各構成員は団体の財産上に合有権者として物権的持分を有する。 社団⇒各構成員の権利義務は社員という団体に対する権利関係の内容となり、団体の財産は団体自身に帰属し、構成員は観念的な持分を有するにすぎない。 |
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会社の類型と種類 | (1)株式会社 (2)持分会社 @合名会社、A合資会社、合同会社 |
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■株式会社 | ||||
■株式会社 | @有限責任 Aガバナンス規制 B資本の回収は、持分(株式)の譲渡による |
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特例有限会社: 会社法の施行時(平成18年5月1日)に既に設立されている有限会社は、定款変更や登記申請等の特段の手続をせずに、会社法施行後は会社法上の株式会社として存続(整備法2@)。 商号中に「有限会社」の文字⇒「特例有限会社」。 いつでも、定款を変更して株式会社に商号変更すれば(登記もする)、特例から脱却できる。 |
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■合名会社 | ||||
■合名会社 | 規定 | 会社法 第576条(定款の記載又は記録事項) 2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。 |
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会社法 第580条(社員の責任) 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。 一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合 会社法 第605条(加入した社員の責任) 持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負う。 |
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会社法 第590条(業務の執行) 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。 会社法 第599条(持分会社の代表) 業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。 |
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会社法 第585条(持分の譲渡) 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。 4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。 |
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会社法 第576条(定款の記載又は記録事項) 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準 |
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会社法 第637条(定款の変更) 持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。 |
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会社法 第624条 社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(以下この編において「出資の払戻し」という。)を請求することができる。この場合において、当該金銭等が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げない。 2 持分会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる。 3 社員の持分の差押えは、出資の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。 |
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第606条(任意退社) 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。 2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。 3 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。 第607条(法定退社) 社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。 一 定款で定めた事由の発生 二 総社員の同意 三 死亡 四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。) 五 破産手続開始の決定 六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。) 七 後見開始の審判を受けたこと。 八 除名 2 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。 第609条(持分の差押債権者による退社) 社員の持分を差し押さえた債権者は、事業年度の終了時において当該社員を退社させることができる。この場合においては、当該債権者は、六箇月前までに持分会社及び当該社員にその予告をしなければならない。 2 前項後段の予告は、同項の社員が、同項の債権者に対し、弁済し、又は相当の担保を提供したときは、その効力を失う。 3 第一項後段の予告をした同項の債権者は、裁判所に対し、持分の払戻しの請求権の保全に関し必要な処分をすることを申し立てることができる。. |
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第611条(退社に伴う持分の払戻し) 退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる。ただし、第六百八条第一項及び第二項の規定により当該社員の一般承継人が社員となった場合は、この限りでない。 2 退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。 3 退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。 4 退社の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。 5 社員が除名により退社した場合における第二項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「退社の時」とあるのは、「除名の訴えを提起した時」とする。 6 前項に規定する場合には、持分会社は、除名の訴えを提起した日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。 7 社員の持分の差押えは、持分の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。 |
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説明 | 社員の全員が会社の債権者に対して無限の人的責任を負うが、債権者に会社資産からまず弁済を受けるよう求めることができる。(580@・605) | |||
全社員がそれぞれ業務を執行し会社を代表するが、定款等で別段の定めをすることもできる(590@・599@)。 | ||||
持分の譲渡も可能だが、全社員の同意が必要(585@C)。 | ||||
社員の氏名や出資の目的(労務や信用でも可(法576@(6)参照))は定款記載事項であり、その変更にも(定款に別段の定めがある場合を除き)全社員の同意が必要(637)。 | ||||
投下資本回収方法としては、持分譲渡のほかに、各社員は出資の払戻しを請求できる(624)。 | ||||
各社員は全社員の同意等により退社する。(606・607・609) 退社した社員は原則として持分の払戻しを受ける(611)。 |
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■合資会社 | ||||
■合資会社 | 規定 | 第576条(定款の記載又は記録事項) 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 社員の氏名又は名称及び住所 五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別 六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準 2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。 3 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。 |
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第580条(社員の責任) 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。 一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合 二 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。) 2 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。 |
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第585条(持分の譲渡) 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。 2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。 4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。 |
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説明 | 無限責任社員と有限責任社員があり、前者は合名社員と同じ責任を負い、後者は定款記載の出資の額までしか責任を負わない(有限責任)。(会社法580A) (未履行の出資額については会社債権者に対して直接責任を負う) |
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各社員が無限責任社員か有限責任社員かは定款記載事項(576@(5))。 有限責任社員の出資の目的・価額または評価の基準も定款記載事項(576@(6))。 有限責任社員の出資は金銭その他の財産に限られる(576@(6))。 |
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業務執行と会社代表は、合名会社の場合と同様。 | ||||
持分の譲渡には、全社員の同意を必要とするのが原則(585@)。 業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡は、業務を執行する社員全員の同意があればできる(585A尚C(定款で別段の定め可))。 |
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出資の払戻し、退社および退社による持分の払戻は、合名会社と同様。 | ||||
■合同会社 | ||||
■合同会社 | 規定 | 第576条(定款の記載又は記録事項) 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 社員の氏名又は名称及び住所 五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別 六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準 4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。 |
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第580条(社員の責任) 2 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。 |
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第578条(合同会社の設立時の出資の履行) 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、合同会社の成立後にすることを妨げない。 |
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説明 | 会社法で創設された新しい種類の会社(576C)。 | |||
すべての社員が有限責任社員であり、定款記載の出資の額までしか責任を負わない(有限責任)(580A)。 ⇒株式会社の場合と同様、法は全額出資規制を採用するほか(578)、様々な会社債権者保護規制を設けている(626以下)。 |
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業務執行と会社代表は、合名会社・合資会社の場合と同様。 | ||||
持分の譲渡、出資の払戻し、退社および退社による持分の払戻しは、合名会社の有限責任社員と同様であるが、特則がある(632-636)。 |
株式会社の種類 | ||
公開会社 | その発行する株式の種類の全部又は一部が、譲渡自由である場合。(2条5号) | |
大会社 | @最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上 A最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上 のいずれかに該当する株式会社。(2条6号) |
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種類株式発行会社 | 108条1項各号に掲げる事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社(2条13号) 「発行する」とは2以上の種類の株式について定款に定めていること。 |
支配人 | ||
規定 | 第10条(支配人) 会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。 |
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会社法 第11条(支配人の代理権) 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。 2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。 3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 |
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会社法 第12条(支配人の競業の禁止) 支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。 一 自ら営業を行うこと。 二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。 三 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。 四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。 2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。 |
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会社法 第13条(表見支配人) 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。 |
商号 | ||
不正目的での商号の禁止 | 何人も、不正の目的をもって、他の会社(外国会社を含む)であると誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならない。(法8@) | |
同一商号・同一住所の会社の登記はできない。(商登27) | ||
違反する名称または商号の使用がなされた場合には、それによって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができる。(法8A) | ||
「不正の目的」は、他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など、特定の目的のみに限定されるものではないが、不正な活動を行う積極的な意思を有することを要するものと解するのが相当である。(知財高裁H19.6.13判決) | ||
自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任 | 自己の商号を使用して事業または営業を行うことを他人に許諾した会社(外国会社を含む)は、その会社がその事業を行うものと誤認してその他人と取引をした者に対し、その他人と連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。(法9) | |
商号の使用を許諾した場合だけでなく、商標等の使用を許諾した場合にも類推適用されると解される。 | ||
判例 | @誤認が過失による場合でも、名義貸与者は責任を免れることはできないが、重大な過失があるときは、名義貸与者は責任を免れる。(最高裁昭41.1.27) | |
A他人に自己の商号を使用して営業をすることを許諾した場合、許諾者が同条の責任を負うためには、特段の事情のない限り、許諾を受けた者の営業が許諾者の営業と同種の営業であることが必要。(最高裁昭43.6.13) | ||
B類推適用:一般の買物客がスーパーマーケット内のペットショップAの営業主体はスーパーマーケットの経営会社Bであると誤認するのもやむを得ない外観があり、BはAの店舗の外部にBの商標を表示し、Aとの間で出店及び店舗使用に関する契約を締結し、そのような外観を作出し、またはその作出に関与していた場合には、Bは改正前商法23条の類推適用により名板貸人と同様の責任を負う。(最高裁H7.11.30) | ||
C「取引によって生じた債務」: 第三者が外観を信じて取引関係に入ったため、名義貸与を受けた者がその取引により負担することとなった債務。 名義貸与を受けた者が取引行為の外形をもつ不法行為によって生じた損害賠償債務も含まれる。(詐欺による売買の事例)(最高裁昭58.1.25) |
株式 | ||||
株式の評価 | ■ | ■評価の必要性(田中p93) | ||
最高裁H23.4.19: 市場株価がある場合は原則としてそれによって評価売すrことが合理的であるとするが、 市場株価が企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情がある場合は、例外。 |
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■ | ■DCF法 | |||
株式が価値を持つ理由: 株式会社が事業活動を通じてお金を稼ぎ、そして株主が、剰余金の配当等を通じてその分配に与れるから。 ⇒ 会社が将来どれだけのお金を稼ぐか(=将来のフリー・キャッシュ・フロー(FCF)。おおむね、会社の現金収入から賃金や投資など事業に必要な現金支出を差し引いた額)を予測し、その金額を、投資のリスクを加味した適切な割引率で割り引くことにより、当該会社の現在価値(企業価値)を求め、そこから会社の負債の額を差し引いて株主価値を決める。 〜 ディスカウント・キャッシュ・フロー法 |
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■ | ■DFC法以外の株式評価手法 | |||
@配当還元方式:株主に対して将来支払われる配当の額を予測し、これを株式投資のリスクを反映した割引率で割り引いて、1株当たりの株式の価値を算定。 | ||||
A収益還元方式 | ||||
B類似会社批准方式 | ||||
C純資産額方式 | ||||
株券 | |||
株券の発行 | 原則として株券を発行しない。 株券の発行を定款で定めた場合に限って株券を発行。(法214条) |
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異なる種類の株式を発行している場合、すべての種類の株式について株券発行の定めをすることしかできない。 | |||
株券不所持制度 | 株券の紛失などをおそれてその所持を望まない株主のために株券不所持制度。(法217条) | ||
株券失効制度 | 公示催告・除権判決制度を廃止⇒新しい株券失効制度 | ||
@株券を喪失した者は、会社(株主名簿管理人・名義書換代理人)に対して株券喪失登録簿への記載・記録を請求。(法221〜223) 会社は喪失登録をして一般に閲覧させるとともに、株主名簿上の株主と登録質権者に通知。(法224@、231) |
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A喪失登録されている株券の株式については、名義書換及び議決権行使等はできない。 (株主名簿上の株主が喪失登録をしている場合は議決権行使可) |
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B当該株券を有する者は喪失登録に対して登録の抹消の申請ができ、これがなされると、会社は喪失登録者に通知し、2週間後に喪失登録を抹消する。(法225) | |||
C喪失登録がされた株券は、登録された日の翌日から1年後に失効し(無効となる)、登録者は会社から株券の再発行が受けられる。(法228条) | |||
振替決裁制度 | 必要性 | 株式の譲渡が多数かつ頻繁に行われるような場合には、そのつど株券の引渡しを行うことは煩雑。⇒株券保管振替制度が立法化。(昭和59年) | |
保管振替制度 | 一般の株主(保管振替法では顧客)は、証券会社等(保管振替法での参加者)を通じて株券を保管振替機関に集中預託し、株主名簿上はこの機関の名義とし、参加者は保管振替機関に口座を持ち、顧客は参加者に口座を持つ。 預託株券の譲渡は口座間の振替基調によって行われる。 |
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@保管振替法は、有価証券法理を存続させることとし、口座の記載に適法な権利者の推定力を与え、また口座の振替をもって株券の交付があったものとみなして、有価証券法理を適用することとした。(保管振替27) | |||
A会社に対する権利行使については、預託株式については株主名簿上は保管振替機関の名義となるが、このほかに、会社は顧客の氏名を記載した実質株主名簿の作成を義務づけられ、顧客の会社に対する権利行使や会社の顧客への通知等はこの実質株主名簿に基づいて行われる。(保管振替29以下) | |||
新しい振替制度 | 「社債、株式等の振替に関する法律」 | ||
株券不発行会社(株式譲渡制限会社を除く)で振替制度利用に同意した会社の株式(特定の種類の株式でも可)が「振替株式」となる。 (振替制度利用会社の新しい振替制度への移行は施行日である平成21年1月5日に一斉に行なわれ、対象となる株式についての株券提供手続を経ないで株券は無効となる。) |
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@譲渡・質入れは、譲受人・質権者がその口座における保有欄・質権欄に譲渡・質入れ株式数の増加の記載または記録を受けることで、その効力が生じ対抗要件が具備される。(振替140・141) (株主名簿の記載または記録を第三者対抗要件とした株式譲渡の対抗要件・名義書換えの要件・質権の対抗要件等の会社法の規定は適用されない。) |
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A善意取得も認められるが、その場合には、すべての株主の有する振替株式の総数が振替株式の発行総額を超えることとなる可能性を認め、そうなった場合には、発行会社との関係では株主は按分比例で株主権を有することとする一方で、一定の口座管理機関と振替期間が超過株式の消却義務を負うほか、損害賠償責任で処理する。(振替144〜148条) | |||
B会社と株主との間の処理について、多数の特例 (i)振替機関は基準日等における自己および下位口座管理機関の振替口座簿の内容を発行会社に通知しなければならず、発行会社はその通知を受けたときは株主名簿に通知事項等を記載しなければならず(電磁的方法も可)、それにより名義書換がされたものと取り扱う(振替151,152) (ii)発行会社は、正当な理由があるときは、振替機関に対し、一定の費用を支払って、一定の日の株主についての通知事項を通知することを請求することができる(振替151G、277) (iii)超過記録に関する義務の不履行により加入者(株主)が会社に対抗できる保有株式が単位未満になった場合には、1議決権未満の議決権を有する(振替153) (iv)振替株式についての少数株主権等の行使については、株主名簿に記載(記録)がなくても一定期間会社に対抗することができる(振替154)等 |
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超過記録 |
振替機関Pの下に口座管理機関Qがあり、Qが加入者Aの口座に100株と記録すべきであるのに、間違って1000株と記録。この場合、株式の譲渡および振替を受けた加入者Bは、超過分である900株を善意取得しうる。 ⇒振替株式の総数が発行済株式総数を超えるという事態が生じる。(超過記録) この場合、超過記録をした振替機関または口座管理機関(Q)は、超過記録分(900株)の振替株式をどのかから取得したうえで、会社に対してその振替株式について権利を放棄する旨の意思表示をする義務を負う。(この意思表示によりその振替株式は消滅し口座簿の記録は消滅する。)(法145、146)(消却義務・無過失責任) この義務を負うのは、事故の加入者の口座に過誤の記録をした振替機関又は口座管理機関(Q)だけ。(法145@、146@) |
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振替機関等が消却義務を履行するまでの間は、当該振替機関等またはその下位口座管理機関の加入者は、超過数のうちで自らの株式数に対応する分だけ株主権を会社に対抗できない。(振替147@、148@、151D(株主総会通知の通知事項)。例外として振替147B、148B。なお振替147A、148A(少数株主等の持株数要件)) 消却義務の不履行により株主に損害が生じた場合には、消却義務を負う振替機関等は株主に対して損害賠償責任を負う。(振替147A、148A)(無過失責任) 振替機関等が無資力の場合に備えて加入者保護信託制度が設けられている。(振替51以下) |
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口座管理機関Qに加入者CDだけが口座を有しており、C100株、D300株と口座に記録すべきなのに、Qが誤って100株の超過記録をし、それがQ以外の口座管理機関の加入者によって善意取得された場合、Qはその100株について消却義務を負うが、それが履行されない場合、会社との関係では、超過分の100株については株主権を対抗できない。(議決権の特例として153)Qより下位にある振替株式の合計が400株だとすると、超過分の100株について、Cは25株、Dは75株についてそれぞれ発行会社に対抗できない。 発行会社以外との関係では、CDはそれぞれ100株、300株を保有しているので、Cは100株を他に譲渡して振替の申請をすることができる。 Cが100株をQ以外の口座管理機関の加入者に譲渡し、振替がなされたとすると、その後DがQ以外の口座管理機関の加入者に譲渡して振替の申請ができるのは200株までというjことになる。なぜなら、上位機関であるPが管理するQの顧客口座には当初400株と記録されていたはずであるが超過記録分の譲渡によりそれ300株になっていたはずであり、さらにCの譲渡により200株になったはずであり、その数までしかDの振替申請を受けることはできないからである。(Qが消却義務を履行した場合には、Pが管理するQの自己口座を100株減らし、顧客口座を100株増やすので顧客口座は(CやDによる譲渡がないとすると)400株に戻る(振替146D)。) |
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株券電子化の影響 | 少数株主権の行使 | 証券会社等(口座管理機関)を通じて証券保管振替機構に個別株主通知を申出を行った後、機構が発行会社(株主名簿管理人)に対して個別株主通知を行った後2週間以内に、発行会社に対して行使しなければならない。(振替154条) | |
発行会社の株式取扱規則により、権利行使に際しては、署名または記名押印した書面により、個別株主通知の申出の取次請求に際して証券会社等から交付される受付票に添付して行う。 | |||
本人確認資料の提出 | |||
株主名簿確定手続 | 機構が発行会社(株主名簿管理人)に対して行う総株主通知によって確定。 | ||
総株主通知は、株主確定日の翌営業日から起算して3営業日目になされる。 | |||
機構が銘柄横断的に株主の情報を管理して名寄せを行い、名寄せ後の株主の情報が総株主通知として通知される。⇒株主名簿が確定するまでの日程は短縮される。 |
★株式の流通 | ||||
■ | ■株式の譲渡 | |||
● | ●株券発行会社の場合 | |||
規定 | 会社法 第128条(株券発行会社の株式の譲渡) 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。 2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。 |
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会社法 第131条(権利の推定等) 株券の占有者は、当該株券に係る株式についての権利を適法に有するものと推定する。 2 株券の交付を受けた者は、当該株券に係る株式についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。 |
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説明 | 株式の条とは、株券を譲受人に交付することにより行う(法128@)。 株券の引渡しは権利移転の要件であり、単なる対抗要件ではない。 |
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株券の占有者は適法の所持人と推定される(法131@)。 その占有者から株券の交付を受けた者は、悪意または重過失がないかぎり善意取得する(法131A)。 |
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株券喪失⇒株券執行手続により喪失株券を無効として株券の再発行を請求。 | ||||
株券発行会社で株券未発行または株券不所持の場合: 譲渡しようとする株主は、株券の発行を受けたうえで、その交付によって譲渡すべき。 |
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● | ●株券不発行会社の場合 | |||
規定 | 会社法 第130条(株式の譲渡の対抗要件) 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。 2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。 |
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会社法 第122条(株主名簿記載事項を記載した書面の交付等) 前条第一号の株主は、株式会社に対し、当該株主についての株主名簿に記載され、若しくは記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。 2 前項の書面には、株式会社の代表取締役(委員会設置会社にあっては、代表執行役。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。 3 第一項の電磁的記録には、株式会社の代表取締役が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 4 前三項の規定は、株券発行会社については、適用しない。 |
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説明 | 株券不発行会社(株券を発行する旨の定款の定めがない会社)の株式の譲渡: @振替株式には特別の規定が適用される Aそれ以外の場合の一般ルールとしては、譲受人(取得者)の氏名または名称と住所を株主名簿に記載しなければ、会社その他の第三者に対抗することができない(電磁的方法も可)(法130@)。 |
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株券不発行会社の株主は、会社に対して自分いついての株主名簿に記載された事項を記載した書面の交付を請求できる(法122@)。 | ||||
譲渡当事者間では、株式の譲渡は意思表示で効力が生じる。 | ||||
■ | ■株式譲渡の自由 | |||
会社法 第127条(株式の譲渡) 株主は、その有する株式を譲渡することができる。 「模範六法 2013」 (C)2013 Sanseido Co.,Ltd. |
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■ | ■法律による株式譲渡の制限 | |||
● | ●時期による制限 | |||
● | ●子会社による親会社株式の取得の制限 | |||
■ | ■定款による株式譲渡の制限 | |||
● | ●趣旨 | |||
規定 | 会社法 第107条(株式の内容についての特別の定め) 2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。 一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項 イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨 ロ 一定の場合においては株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合 |
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会社法 第108条(異なる種類の株式) 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。 四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。 3 前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。 |
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会社法 第136条(株主からの承認の請求) 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。 |
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会社法 第137条(株式取得者からの承認の請求) 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。 |
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説明 | 会社法のもとでは、このような譲渡制限性は株式の内容の1つと整理された。 | |||
(1)すべての株式を譲渡制限株式とする場合: @株式の譲渡(法文上「譲渡による取得」)について会社の承認を要する旨 A一定の場合に会社が承認をしたとみなすときは、その旨および当該一定の場合 を定款で規定 |
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(2)一部の種類株式について譲渡制限を設ける場合: その発行可能種類株式総数を上記@Aを定款で定める(法108A(4))。 |
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● | ●相続等による移転 | |||
規定 | 会社法 第134条 前条の規定は、株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。 一 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得することについて第百三十六条の承認を受けていること。 二 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得したことについて第百三十七条第一項の承認を受けていること。 三 当該株式取得者が第百四十条第四項に規定する指定買取人であること。 四 当該株式取得者が相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者であること。 |
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説明 | 譲渡制限株式の相続その他の一般承継による株式の移転には、会社の承認は不要(法134(4))。 | |||
会社は、相続その他の一般小計により譲渡制限株式を取得した者に対して当該株式を会社に売り渡すことを請求できる(法174〜177)。 この場合、会社は、そのような売渡請求ができる旨を定款で定めておく必要(法174)。 |
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● | ●譲渡制限の態様 | |||
規定 | 会社法 第139条(譲渡等の承認の決定等) 株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。 2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。 |
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説明 | (1)取締役会設置会社⇒株式の譲渡につき取締役会の承認を必要とするという形 (2)非取締役役会設置会社⇒株主総会の承認を必要とするという形 定款で別段の定めも可(法139@) ⇒ 承認権者を代表取締役等の機関と定めることも可。 |
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譲渡制限の定め⇒その旨を登記し(法911B(7)、商登62)、株券に記載(法216B) これを怠ると、善意の第三者に対抗できない。 |
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● | ●株主の投下資本の回収 | |||
〇 | 会社法は株式の譲渡を希望する株主に投下資本の回収を保証(法136以下)。 | |||
株主Aがその持株をBに譲渡したいと希望するときは、 @会社に対してその譲渡の承認を求め(法136) A会社が譲渡を承認しない場合にはその株式の会社による買取り、または指定買取人による買取りを求めることができる(法138@)。 |
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譲渡承認等請求者は、会社または指定買取人による買取りの譲渡承認請求者への通知を受けた後は、会社または指定買取人の承諾がないと譲渡等の請求を撤回できない(法143条)。 会社は所定の期間内に上記の通知をしないと、別段の定めがないかぎり、譲渡等を承認する決定をしたものとみなされる(法145条)。 |
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〇 | 会社が譲渡を承認せず、Cを買取人と指定した場合、CがAに対してその株式の買取りを通知すると、AC間で売買契約が成立する(Cが通知するまでの間は、Aは会社に対する譲渡承認・買取請求を撤回できる)。 | |||
売買価格についてAC間で合意できない⇒当事者または会社の申立てにより裁判所が価格を決定(法144条以下)。 | ||||
裁判所は譲渡承認請求時の会社の資産状態そのた一切の事情を考慮して売買価格を定める(法144BC)が、株式の評価をどのような基準で行うべきかについていろいろ議論がある。 | ||||
裁判所がCにとって予想外の高額を定めた場合もあり、その時点でCが売買の撤回を希望する事態も生じたが、いったんは成立した売買契約その後一方的に撤回ないし解除することは認められない(法143A)。 | ||||
以上は、会社自身が買い取る場合もほぼ同様。 | ||||
● | ●譲渡制限株式の譲渡の効力 | |||
■ | ■契約による株式譲渡の制限 | |||
■ | ■株式の担保差入れ |
株主の監督是正権・・単独株主権と少数株主権 | |||
議決権数・株式数の要件 | 保有期間の要件 | ||
単独株主権 | 要件なし | 設立無効等の訴権(法828A(1)等) 累積投票請求権(法342) 募集株式発行差止権等(法210等) |
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行使前6か月 | 代表訴訟提起権(法847等) 取締役・執行役の違法行為差止権(法360・422) |
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少数株主権 | 総株主の議決権の1%以上 又は300個以上 |
行使前6か月 | 提案権(法303・305) |
総株主の議決権の1%以上 | 行使前6か月 | 総会検査役選任請求権(法306) | |
総株主の議決権の3%以上 又は 発行済株式総数の3%以上 |
要件なし | 帳簿閲覧権(法433) 検査役選任請求権(法358) |
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発行済株式総数の3%以上 | 要件なし | 取締役等の責任軽減への異議権(法426D) | |
総株主の議決権の3%以上 又は 発行済株式総数の3%以上 |
行使前6か月 | 取締役等の解任請求権(法854・479) | |
総株主の議決権の3%以上 | 行使前6か月 | 総会招集権(法297) | |
総株主の議決権の10%以上 又は 発行済株式総数の10%以上 |
要件なし | 解散判決請求権(法833) | |
法務省令(規則197等) | 要件なし | 簡易合併等の反対権(法796C等) | |
注: 発行済株式総数は自己株式を除く 非公開会社では、6か月要件はない 少数株主権については、すべての会社において、定款で要件の緩和ないし単独株主権化が可。 |
株式 | |||||
★総説 | |||||
★総説 | ■株式の意義 | ||||
■株式の意義 | 仕組 | 株式:株式会社における出資者である社員すなわち株主の地位を細分化して割合的地位の形にしたもの ←個性のない多数の者が株式会社に参加できるようにするための法的技術。 |
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均一性と不可分性 | 株式は均一⇒株式数だけ株主の地位を有する 株式を1株未満に細分化することは不可(株式の不可分性) |
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資本金との関係 | 原則:実際の払込み・給付額の全額を資本金の額とする。(法445@) ただし、株式発行の際に、払こみ・給付額の2分の1までの額を資本金に組み入れないこととし、資本準備金とすることが認められる(法445AB)。 資本金の額の増減も認められる(法447・450)。 |
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以上以外は、株式と資本金の関係はなし。 | |||||
債権との差異 | 株主としての地位に基づく諸権利のうち個々の権利についてそれを別個独立に処分することはできない。 | ||||
株主総会決議等によって配当金支払請求権が確定した時には、それにより具体的に発生した配当金支払請求権は通常の再建であり、別個独立に処分でき、消滅時効にもかかる。 | |||||
株式の共有 | 共有は認められる。 | ||||
共有者は、共有株式についての権利を行使する者1人を定めて会社にその者の氏名または名称を通知しなければ、共有株式人ついての権利を行使することはできない。(法106) | |||||
会社から株主への通知・催告については、共有者は、会社から通知・催告を受ける者1人を定めて会社にその者の氏名または名称を通知し(法126B)、通知・催告はその者に対してなされる。 代表者を定めない⇒会社は共有者の1人に対して通知・催告をすればよい(法126C)。 |
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3つの次元 | @共有者間での意思決定(民法251・252) A会社との関係その1 B会社との関係その2(名義書換) |
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権利行使者は共有株主が持分の価格に従いその過半数で決める。(最高裁H9.1.28) | |||||
権利行使者を定めない場合⇒株主としての権利を行使できない。 | |||||
会社側から権利の共同行使を認めることは差し支えない(法106ただし書) ←権利行使者を定めることを法が要求するのは会社の事務処理上の便宜のため。 |
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■株主の会社に対する義務・権利など | |||||
■株主の義務・権利 | 株主の義務 | 株式の引受価額を限度とする責任を負うだけ(法104) (株主有限責任) |
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株主の権利 | 自益権と共益権 | 自益権:会社から直接経済的な利益を受けることを目的とする権利 @剰余金配当請求権(法105@(1)) A残余財産分配請求権(法105@(2)) B株式買取請求権など |
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共益権:会社の経営に参与することを目的とする権利 @株主総会における議決権(法105@(3)) A株主総会決議取消訴権や取締役等の違法行為の差止請求権などのように株主総会の決議や取締役の業務執行等の会社の運営を監督是正する権利 |
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単独・少数 | 上の一覧表参照 | ||||
■株主平等原則 | |||||
■株主平等原則 | 説明 | 各株式の内容が同一であるかぎり同一の取扱いがなされるべきであるということ(法109@)。 | |||
法が例外を認める場合を除いて(法109AB)、この意味での株主平等の原則に反する定款の定め、株主総会の決議、取締役会の決議、取締役の業務執行等は、会社の善意・悪意にかかわらず、無効とされる。 but 個々の取扱いについて不利益を受ける株主がそれを承認したときは、株主平等の原則と異なる取扱いをすることも許される。 |
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判例 | ● | 配当可能利益(=会社法では「分配可能額」(法461A)の計上ができなくなった会社が、大株主との間で、無配直前の配当に見合う金額をベースに報酬として月8万円、中元・歳暮として各5万円ずつ支払う契約をしたところ、無効とされた。 (最高裁昭和45.11.24)) |
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● | 会社法 第277条(新株予約権無償割当て) 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。 |
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第278条(新株予約権無償割当てに関する事項の決定) 株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法 二 前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法 三 当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日 四 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当てを受ける株主の有する株式の種類 2 前項第一号及び第二号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の新株予約権及び同項第二号の社債を割り当てることを内容とするものでなければならない。 |
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買収対抗策としてんされた新株予約権の無償割当て(法277)について、「新株予約権無償割当てが新株予約権者の差別的安取扱いを内容とするものであっても、それ株式の内容等に直接関係するものではないから、直ちに株主平等の原則に反するということはできない。しかし、株主は、株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ、法278条2項は、株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは、株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど、株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解されるのであって、法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は、新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである」と判示。(最高裁H19.8.7) (結論として株主平等原則の趣旨に反しないとした。) |
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〜 差別的な行使条件等を付した新株予約権無償割当ても109条1項に定める平等原則には反しないが、平等原則の背後にある衡平の理念にかんがみてその合理性が問題となるというべきであり、その合理性は実質的に判断されるべき。 尚、法278条2項が株主の数に応じて新株予約権を割り当てるべきことを定めているのは無償割当てを定義することにほかならず(そういうものが無償割当てになる)、109条1項の平等原則(狭義の平等原則)とは関係がない。 |
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規定 | 第109条(株主の平等) 株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。 2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。 3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。 |
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■株主の権利行使に関する利益供与の禁止 | |||||
■利益供与の禁止 | 規定 | 第120条(株主の権利の行使に関する利益の供与) 株式会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社又はその子会社の計算においてするものに限る。以下この条において同じ。)をしてはならない。 2 株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定する。株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社又はその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様とする。 3 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与を受けた者は、これを当該株式会社又はその子会社に返還しなければならない。この場合において、当該利益の供与を受けた者は、当該株式会社又はその子会社に対して当該利益と引換えに給付をしたものがあるときは、その返還を受けることができる。 4 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役(委員会設置会社にあっては、執行役を含む。以下この項において同じ。)として法務省令で定める者は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。 5 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。 |
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説明 | 会社は、誰に対しても、株主の権利の行使に関し、自己(その会社)またはその子会社の計算で財産上の利益を供与してはならない(法120@)。 ← 企業経営の健全性を確保するとともに、会社財産の浪費を防止。 |
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平成9年改正は、商法497条を改正し、従来からの利益供与罪および利益受供与罪の罰則を引き上げるとともに、新たに、利益供与要求罪を新設し、威迫を伴う利益受供与罪・利益供与要求罪を加重犯類型とし、利益受供与罪、利益供与要求罪、威迫を伴う利益受供与罪・利益供与要求罪につき懲役刑と罰金刑の併科を可能とした。 平成12年改正は、子会社の計算で(子会社に資金を拠出させて)する利益供与も禁止することを明定した。 |
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株主総会における有効な議決権行使を条件として株主1名につきQuoカード1枚(500円分)を交付した事例について、会社提案と株主提案が対立していた状況のもとで会社提案に賛成する議決権行使の獲得を目的としたものであり、違法な利益供与に該当するとされた。(東京地裁H19.12.6) | |||||
★株式の内容と種類 | |||||
★株式の内容と種類 | 株式の多様化 | 株式の多様化 | 説明 | 各株式の権利の内容は同一であることを原則としつつ、その例外として、一定の範囲と条件のもとで、 @すべての株式の内容として特別なものを定めることと(107条)、 A権利の内容の異なる複数の種類の株式を発行することを認めている(種類株式制度)(108条) ← 一定の範囲と条件のもとで株式の多様化を認めることにより、 @株式による資金調達の多様化と A支配関係の多様化の機会を株式会社に与えるため。 |
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規定 | 会社法 第107条(株式の内容についての特別の定め) 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。 一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。 二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。 三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。 2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。 ・・・・ |
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第108条(異なる種類の株式) 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。 一 剰余金の配当 二 残余財産の分配 三 株主総会において議決権を行使することができる事項 四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。 五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。 六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。 七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。 八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第六項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。 ・・・・ |
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●全ての株式の内容として特別の定め | ●全ての株式の内容として特別の定めを認める場合 | ||||
@譲渡制限(譲渡(による取得)について会社の承認を要すること)(譲渡制限株式)(2(17)) | |||||
A株主から会社への取得請求権(株主が会社に対してその取得を請求することができること)(取得請求権付株式)(2(18)) | |||||
B会社による強制取得(会社が一定の事由が生じたことを条件として取得することができること)(取得条項付株式)(2(19)) | |||||
●内容の異なる「種類」の株式 | ●内容の異なる「種類」の株式として認めるもの。(108@) 次の9つの事項についてに限定される。 |
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@剰余金の配当 | |||||
A残余財産の分配 | |||||
B株主総会において議決権を行使できる事項(議決権制限種類株式) | |||||
C譲渡制限(譲渡制限種類株式) | |||||
D株主から会社への取得請求権(取得請求権付種類株式) | |||||
E会社による強制取得(取得条項付種類株式) | |||||
F総会決議に基づく全部強制取得(全部取得条項付種類株式) | |||||
G(定款に基づく)種類株主総会の承認(いわゆる拒否権付き種類株式) | |||||
H種類株主総会での取締役・監査役の選任(選解任種類株式) これは、委員会設置会社と公開会社には認められない。 |
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I非公開会社(全株式譲渡制限会社)は、剰余金配当・残余財産分配・議決権について株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができ(特殊決議(309C))、その場合は、その定めるによる株式は、株式会社と組織変更等に関する規定との関係では「内容の異なる種類」の株式とみなされる。(109AB)(属人的みなし種類株式) | |||||
普通株式 | 会社が107条や108条に基づく定款の定めを何も置かないような場合に、会社法がその内容を自動的に定めてくれるもの。 | ||||
日本の上場会社の多くは、普通株式だけを発行する会社。 その内容はすべて同一であって、法が例外を認める場合を除いて、定款などによりその内容に差を設けることは許されない。 |
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@株式の内容について何も定款で定めなければ、すべての株式は普通株式となり、その内容は会社法で定まる。 Aたとえば、優先株式を定款で定めると、その会社は普通株式と優先株式の2種類の株式を発行することになる。(普通株式の内容は定款で定める必要はない。(法が定めている。)) B2種類以上の株式を発行する会社を「種類株式発行会社」という(2(13))が、実際にまだ種類株式を発行していなくても、会社法上は「種類株式発行会社」である。 |
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会社法 | ・株式譲渡制限制度を株式の内容についての特別の定めとし、一部の種類の株式だけを譲渡制限株式とする道を認めた。 ・改正前の償還(消却)株式は取得対価を金銭等とする取得請求権付株式(株主が会社に対して取得を求める請求権を有する)および取得条項付株式(会社が取得権を有数する)と整理。 ・改正前の転換株式(転換予約権付株式(株主が転換請求権を有する)と強制転換条項付株式(会社が転換権を有する))は、取得対価を株式とする取得請求権付種類株式及び取得条項付種類株式と整理。 |
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定款自治 | 株式の内容や株主間の関係については、法の定めと異なる定めは、一定の場合に限り、かつ定款で定めた場合にだけ、その効力を認める。 株主間契約で定めても会社法上の効力はない。 |
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発行手続 | すべての株式について特別な内容を定める: 定款で法の規定する事項を定める(法107A)。 (譲渡制限株式の場合は株券にも記載(法216B)) |
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内容の異なる種類の株式を発行: 各種類の株式の発行可能種類株式総数と内容について法の規定する事項を定款で定める(法108A)。 例外として、配当優先株式の場合の優先配当金額など、法務省令で定める事項(規則20条)(広く認められている)については、定款で「内容の要綱」だけを定め、具体的な内容の株式を株主総会または取締役会の決議等に委ねることが認められる(委ねる旨は定款で定める)。(法108B) |
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特別な内容の株式や種類の株式を発行する場合、一定事項を株主名簿(法121(2))、株券(法216(3)(4))などに記載し、かつ登記(法911B(7))(属人的みなし種類株式を除く)しなければならない。 | |||||
権利調整・・種類株主総会制度 | 異なる種類の株主間で各種の権利の調整が必要となる⇒種類株主総会制度(法321〜325) | ||||
?法定種類株主総会(会社が一定の行為をする場合) | (a)原則: 種類株式発行会社が次の行為をする場合に、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その行為をするためには、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(その種類株主に関する株式の種類が2つ以上ある場合には、2つ以上の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議が必要。(法322@本文) ただし、その種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主がいない場合は決議は不要。(法322@但書) @次の定款変更(111の場合(取得条項・全部取得条項・譲渡制限)を除く) ?株式の種類の追加、?株式の内容の変更、?発行可能株式総数または発行可能種類株式総数の増加 A株式の併合または株式の分割 B法185条の株式無償割当て C株式を引き受ける者の募集(法202@の事項を定めるものに限る) D新株予約権を引き受ける者の募集(法202@の事項を定めるものに限る) E法277条の新株予約権無償割当て F合併 G吸収分割 H吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継 I新設分割 J株式交換 K株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得 L株式移転 |
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(b)例外 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、(a)の種類株主総会の決議を不要とする旨を定款で定めることができる(法322A)。 その場合、(a)の各行為について種類株主総会は不要(法322B本文)。 ただし、定款変更をする場合には、常に種類株主総会が必要。(法322B但書)(単元株式数についての定款変更は種類株主総会を不要にできる) 尚、ある種類の株式を発行した後に定款を変更してその種類の株式についてそのような種類株主総会不要の定款の定めを設けようとするときは、その種類の種類株主全員の同意が必要。(法322C) |
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定款で種類株主総会制度を排除した場合(法322A)、当該行為について種類株主に株式買取請求権が与えられ(法116@(3)、785A(1)ロ、797A(1)ロ、806A(2))、種類株主の保護はこれによる。 | |||||
?法定種類株主総会・・その他 | ?の場合以外に、会社法が種類株主総会決議を要求する場合(損害を及ぼすおそれは不要。BCを除いて、定款で不要とはできない。) @その種類の株式に譲渡制限を新設する定款変更(法111A) Aその種類の株式を全部取得条項付き種類株式とする定款変更(法111A) B譲渡制限種類株式の追加発行またはその委任(法199C、200C) C譲渡制限種類株式を新株予約権の目的とする新株予約権の発行またはその委任(法238C、239C) D選解任種類株式(法347@A) E譲渡制限種類株式を発行している消滅会社等における吸収合併等の承認(法795C) F譲渡制限種類株式を発行している消滅会社等における譲渡制限株式等を対価とする吸収合併等の承認(法783B)・譲渡制限種類株式を発行している消滅会社等における譲渡制限株式等を対価とする新設合併等の承認(法804B) |
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?定款による種類株主総会 | 拒否権付種類株式を発行した場合、その定款記載の内容に従って、問題となる事項については、株主総会等の決議に加えて、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(その種類株主に関する株式の種類が2つ以上ある場合は、2つ以上の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議が必要となる。(法84本文、323本文) ただし、その種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主がいない場合は決議は不要。(法84但書、323但書)) |
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当該種類株式の株主に拒否権を認めるための制度⇒定款で導入するこのような種類株主総会については、定款で定めれば、決議要件を加重したり、その種類株主総会に条件をつけたりすること(たとえば、種類株主総会が必要な期間を一定期間に限定するなど)も可能。 | |||||
?種類の意味 | 種類の株式は実質的に判断。 参加型・非累積的配当優先株式と非参加的・累積的配当優先株式との2つのタイプの優先株式が発行される場合には、それぞれが別個の種類の株式となる。 |
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各種の株式 | 譲渡制限株式 | 同族会社の用に株主の個性が問題となる会社のニーズにこたえて、会社法は、定款で定めることを条件として、すべての株式または一部の種類の株式について、その譲渡に会社の承認を必要とするという形で株式の譲渡を制限することを認めた。(法2(17)、107@(1)、108@(4))(会社法のもとでは、譲渡制限性は株式の内容または種類の1つとして位置づけられた。)) | |||
?全ての株式を譲渡制限株式とする場合、@株式の譲渡について会社の承認を要する旨、A一定の場合に会社が承認をしたとみなすときは、その旨及び当該一定の場合(法137@参照)を定款で定め(法107A(1))、 ?一部の種類株式について譲渡制限を設ける場合は、その発行可能種類株式総数と上記@Aを定款で定める(法108A(4)、ただし、B規則20(4)参照) |
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設立時の原始定款によるほか会社成立後に定款を変更して(法466)譲渡制限の定めを置くこともできるが、そのような定款変更のための株主総会の決議要件は厳格(特殊決議)(法309B(1)(なおAB)、111A,324B) | |||||
取得請求権付株式 | 株主がその株式について会社に取得(買取り)を請求できるような株式。(2(18)、107@(2)、108@(5)) | ||||
平成17年改正前: 数種の株式が発行される場合において、株主がその有する種類の株式から他の種類の株式への転換を請求できる権利(転換予約権)が付与された株式を転換予約権付株式。 ex. |
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全部取得条項付種類株式 | 別項目へ |
全部取得条項付種類株式 | |||
意義 | 株主総会の特別決議により会社がその全部を取得することができるような種類株式(法108@(7)) | ||
私的整理等において100%減資を可能とするために会社法によって新たに導入。 | |||
100%減資への利用 | 経済的意義 | 「従来の用語での100%減資」とは、株主の総入れ替えをすること。 業績が悪化した会社では、その株主にとって価値はゼロ⇒いったん既存の株式をすべて消して、資本金もゼロとして、そのうえで、同時に、新株を発行して資金を入れ、会社の再生を図る。 (いったんゼロとすることで既存の株式を消し、新たに資金を投入してくれる者(金融機関や再生ファンド)に資金投入のインセンティブを付与。) |
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改正趣旨 | 平成17年改正前商法のもとでは、直接の明文規定がなかった⇒倒産処理手続の中で裁判所の許可を得て行う場合は別として、私的整理等のなかで行う場合には、株主全員の同意がないとできないとされていた。⇒改正により多数決でこれを行うことを可能とした。 | ||
手続 | 普通株式だけを発行する会社が行う場合、 @まず株主総会決議により定款変更をして全部取得条項を付し、 A次に株主総会決議でその株式を取得し、新たに新株式を発行。 |
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MBOへの利用 | MBOとは | 上場会社において、経営者等がプライベート・エクイティ・ファンド等や金融機関から資金をえて、その会社の支配権を取得してその会社を非上場化し、数年かけて企業価値を高めて再上場を図る(投資ファンド等はこれにより資金回収をする)という手法。 | |
手続 | 第1段階として、ファンド等から資金をえた受皿会社が公開買付け(金商27条の2以下)の方法で対象会社の株式の取得を試み、 これで取得できなかった残りの株式を、第二段階として、全部取得条項付種類株式制度を利用していわば強制的に取得する。 |
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@公開買付⇒ A定款を変更してすべての普通株式を全部取得条項付種類株式とする⇒ B会社が新規に発行する普通株式を対価として全部取得条項付種類株式を取得するが、一般株主には端数株が対価として交付されるように設計しそれを現金化して交付する(234条)。 |
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端数株の処理: 第234条(一に満たない端数の処理) 次の各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の株式を交付する場合において、その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。 二 第百七十三条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主 2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。 3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については、同項中「競売により」とあるのは、「売却により」とする。 4 株式会社は、第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数) 二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額 5 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。 6 第一項から第四項までの規定は、第一項各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の社債又は新株予約権を交付するときについて準用する。 |
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手続 | 定款 | 定款で、発行可能種類株式総数と取得対価の決定方法・条件を定める(法108A(7)、但しB・規則20@(7)) | |
取得手段 | 取締役が取得を必要とする理由を説明したうえで(法171B)、 株主総会の特別決議により(法309A(3))、 取得対価(株式・新株予約権・社債・新株予約権付社債・現金等(株式等以外の財産))・その割当てに関する事項・取得日を定める。 |
||
反対株主には裁判所への取得価格決定申立権が認められる(法172条)。 〜株式買取請求権と同じ機能を果たす。 |
|||
「取得価格の決定申立制度において裁判所が決定すべき取得価格とは、取得日における公正な価格をいい、裁判所は、取得日における当該株式の客観的時価に加えて、強制的取得により失われる今後の株価上昇に対する期待を評価した価額をも考慮するのが相当であり、取得価格の決定は、記録に表れた諸般の事情を考慮した裁判所の合理的な裁量に委ねられる」(東京高裁H20.9.12、最高裁H21.5.29により抗告棄却) | |||
取得は取得日に効力を生じ(法173@)、対価が株式等の場合には、全部取得条項付種類株式の株主は、取得日に当然に対価の株式等の株主等になる(法173A)。 |
自己株式の取得 | |||
取得できる場合(155) | @取得条項付株式の取得(107A(3)イの事由が生じた場合) | ||
A譲渡制限株式の取得(138(1)ハ又は(2)ハの請求がある場合) | |||
B株主総会決議に基づく取得 | |||
C取得請求権付株式の取得 | |||
D全部取得条項付種類株式の取得 | |||
E株式相続人等への売渡請求に基づく取得 | |||
F単位未満株式の買取り | |||
G所在不明株主の株式の買取り | |||
H端数処理手続における買取り | |||
I他の会社の事業の全部を譲受ける場合にその会社が有する株式の取得 | |||
J合併後消滅する会社からの株式の承継 | |||
K吸収分割する会社からの株式の承継 | |||
L以上のほか、法務省令で定める場合 | |||
取得方法に応じた取得手続の規制 | ■ | ■(a)全ての株主(種類株式の場合は当該種類株式すべての種類株式)に申込み機会を与えて行う取得 | |
第1に、株主総会決議で、 @取得する株式の数(種類株隙の場合は取得の対象となる株式の種類および種類ごとの数)、 A取得と引換えに交付する金銭等(=金銭その他の財産(法151))の内容およびその総額、 B取得することができる期間(最長1年間まで)を定めて、取締役会(取締役会設置会社の場合)等に「買受け」(=株主の合意による自己株式の取得)を授権する(法156@)。 ただし、定款により剰余金分配を取締役会の権限とした会社(法495@(1)A)では、以上は、取締役会の決議で決めることができる(次の(b)は総会の特別決議が必要) |
|||
第2に、会社は(取締役会設置会社では取締役会決議で(法157A))、そのつど、 @取得する株式の数(種類株式の場合は種類および数)、 A株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容および数・額またはこれらの算定方法、 B株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の数学、 C株式の譲渡の申込みの期日を定めて(法157@)、株主に通知するが(後悔会社では公告でも可)(法158)、取得の要件は均等でなければならない(法157B)。 |
|||
第3に、会社は、株主からの申込みに応じてその株主の株式を取得するが、申込総数が取得総数を超えたときは按分で取得する(法159)。 | |||
■ | ■(b)特定の株主からの取得 | ||
株主総会特別決議で特定の株主からの取得を決議(特別決議(309A(2))) その株主に通知する。(160@D) 株主間の公平を害するおそれ→厳格な規制。 |
|||
@株主総会の特別決議では取得の相手方となる株主の議決権行使は排除される。(160C) | |||
A他の株主(または種類株主)は、その総会決議の前で法務省令で定める時(規則28,29)までに自己を売主に追加するよう請求できる(160AB) | |||
Bただし、Aの例外として、市場価格のある株式で一定の要件を満たした場合(法161、規則30)および株主相続人等から取得する場合で一定の場合(162)には、Aの売主追加請求権はない。 売主追加請求権をあらかじめ定款で排除することが認められる。(法164@A) |
|||
■ | ■(c)子会社からの取得 | ||
(b)の例外として、取締役会設置会社では取締役会決議で(a)@〜Bの事項を定めるだけで取得できる。(法163) | |||
■ | ■(d)市場取引等による取得 | ||
市場取引または公開買付け(金商27の2E)により自己株式を取得する場合には、 @(a)の総会決議だけで取得することができ(法165@)(定款により剰余金分配を取締役会の権限とした会社では、取締役会の決議で可)、または、 Aあらかじめ定款に「取締役会決議により自己株式を取得する」ことを定めておいて取得することができるが(取締役会設置会社)、Aの場合、取締役会決議で(a)@〜Bの事項を定める(法165AB)。 |
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財源規制 | 剰余金の分配可能額規制(461-464) | ||
業務執行者の期末の欠損てん補義務(465) | |||
規制違反の効果 | 上記の手続・方法の規制に違反して自己株式の取得がなされた場合、従来はその取得は無効とされてきたが、無効の主張は会社側だけができると解されてきた。 | ||
違法な自己株式の取得により会社に損害が生じれば取締役の対会社せきにんが生じるが(423)、会社の損害をいくらと考えるべきかは難問。 |
新株の発行 | |||
資金調達手段 | 内部資金 | 利益の内部留保 | |
減価償却費 | |||
外部資金 | 株式発行 | ||
社債発行 | |||
借入れ | |||
企業間信用 | |||
規制の必要性 | A:株式や社債の有価証券化。 | ||
B:資金提供者間の利害を合理的に調整するルールを定める。 @株式や社債を通じて株式会社に資金を供給する者を保護する必要があり、 Aそのような資金供給者は複数(多数)いるので、それらの者の間の利害を調整する必要があり、 Bそれらの者以外の利害関係者(銀行等の貸付債権者や取引債権者)との間の利害を調整する必要があり、 C株式や社債発行時においては、既存の株主や社債権者と新たに株主や社債権者となる者となる者との利害を調整する必要がある。 |
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株式発行規制の必要性 | @株式会社ではその財産のみが会社債権者に対する責任の引当てになるので、株式発行に際して、出資である金銭等が確実に会社に引き渡されることが必要。 | ||
A成立後の会社が新株を発行して資金調達を行う場合について、既存株主と新たに株式を取得して株主となる者との利害の調整が必要。 | |||
B以上の点が確保できれば、個々の新株発行は取締役会等の判断で機動的に行うことができるようにすることが、資金調達の便宜の見地から望ましい。 | |||
授権株式制度 | 会社が将来発行する予定の株式数(「発行可能株式総数」)を定款で定めておき(法37@A)、その「授権」の範囲内で会社が取締役会決議等により適宜株式を発行することを認める制度。 ← @取締役会等に無限の数の株式発行権限を認めるのは濫用のおそれがある A授権株式制度は授権後に登場する将来の株主の意思を反映していない B新株発行により既存の株主が被る持分比率の低下の限界を画する |
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設立時には授権株式数(発行可能株式総数)の少なくとも4分の1は株式を発行しなければならず(法37B)、また、定款の変更により既存の授権株式数を増加する場合にも、発行済株式総数の4倍までしか増加できない。(法113B) (非公開会社=全株式譲渡制限会社ではこのような制約はない。(法37B但書、法113B但書)) |
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新株予約権との関係での授権株式数につき法113C、種類株式の場合につき法114、公開会社の議決権制限株式の場合につき法115 | |||
定款変更により授権株式数を増加する場合、授権株式数が発行済株式総数の4倍までという意味は、授権株式数増加についての株主総会の決議当時の発行済株式総数ではなく、授権株式増加の時の発行済株式総数を基準とする。 ⇒授権株式数の増加を定める株主総会の決議の効力に発行済株式総数が現実に発行済となったときには発生するという条件をつけることは認められる。(最高裁昭和37.3.8) |
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発行の制約 | @新株発行によって既存株主に経済的な不利益が生じる場合には、取締役会等かぎりで新株発行を決めることはできない。(法199B、200@,201@) | ||
A仮に払込金額が公正であっても、既存株主の被る持分比率の低下という不利益に対処するため、会社法は、非公開会社については、株主割当て以外の発行に株主総会の特別決議を要求し(法199A、200@、202D) | |||
B「著しく不公正な方法」による新株発行は差止め事由とする(法210(2)) | |||
規定 | 第210条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第百九十九条第一項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。 一 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合 二 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合 |
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第199条(募集事項の決定) 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。 ・・・ |
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設立時の株式発行と成立後の新株発行 | @簡易迅速な事務処理が必要: 失権催告手続(法36)や創立総会(法65以下)にあたるものがない。 |
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Aすでに会社の株主として存在する者がいるため、それについての配慮が必要: 有利発行・譲渡制限株式の場合の株主の割当てを受ける権利、株主の不公正発行差止等が問題になる。 |
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既存株主と新たに株主となる者との利害調整 | 既存株主の利益:@持ち分比率、A経済的損失 | ||
T:既存株主の利益を完璧に保護するには新株は必ず既存株主に対してその持株割合に応じて発行することだけを認める | |||
U:既存株主への持株割合に応じた割当て以外の方法で新株を発行する場合には、既存株主に経済的損失与えないような払込金額(=時価)で新株発行を行わなければならないとするルール。 既存株主は持ち分比率の低下という不利益を被ることとなる。 |
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V:既存株主の利益を害するような新株発行は、既存株主自身がそれを行うべきかを決定することとするルール。 (不利益が生じるとしても、調達資金で行う事業が成功して、それを上回る利益を期待するかもしれない。) |
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日本の会社法の規整 | 非公開会社(全株式譲渡制限会社)については、規整Tを原則としつつ規整Vを併用。 既存株主は新株の割当てを受ける権利を有するのが原則であり、新株発行の際に株主総会の特別決議でこれを排除することができる。 |
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非公開会社で既存株主の割当てを受ける権利を排除した場合と公開会社の場合、経済的損失の面につき、規整Uと規整Vを組み合わせる規整を採用。 既存株主への持株割合に応じた割当て以外の方法による新株発行は「公正な払込金額」で行わなければならないが、株式引受者に「特に有利な」払込金額での新株発行(有利発行)も株主総会の特別決議を経れば行うことができる(法199AB・200@〜B・201@・309A(5)) |
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新株発行の種類 | 通常の新株発行 | ||
特別の新株発行 | 通常の新株発行以外で発行済株式総数が増加する場合の総称。 | ||
取得請求権付き種類株式・取得条件付種類株式等の取得で新株を対価とする場合、株式分割、株式無償割当て、新株予約権の行使、吸収合併、吸収分割、株式交換等の場合における新株発行等 (株式分割は、会社法のもとでは株式の「数の増加」であって株式の「発行ではないと整理されているが、その経済的実質にかんがみると特殊の新株発行の一場合とみるのが有益。) |
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新たに株主を募集し出資を履行させるということはない⇒そのための手続的規定は不要。 | |||
多くの場合(吸収合併、吸収分割、株式交換の場合を除く)、新株発行は既存の株主(新株予約権の場合には新株予約権者)に対して行われるので、新株発行の自邸では既存株主の保護といった問題は生じないし、その面では払込金額をkっていする意味はない(ただし、資本金額が変動する場合には、その額を決定する必要がある。)。 | |||
条文での概念 | 「株式の発行」:会社設立時の発行と会社成立後の発行とがある。 「新株の発行」:会社設立後における株式の発行。 会社設立の際の株式発行は「設立時株式」の発行。 設立に際して発行される株式は「設立時発行株式」 「株式の発行」と「自己株式の処分」を含めた上位概念は「株式の交付」 「募集株式」は新株と自己株式の双方を含む。(「募集株式の発行」は自己株式の処分を含まない。) |
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株式会社の財務構造の変化 | 資本金・準備金の増減 | 資本金・準備金の額の減少 ⇒剰余金分配規制の基準等会社財産を確保する基準となる額が減少 ⇒会社債権者の保護が必要。(会社) |
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発行済み株式総数の増減 | 発行済株式総数の増加(新株発行等の場合)⇒既存株主と新たに株主となる者との利害調整(既存株主の利益保護)が必要。 | ||
発行済株式総数の減少⇒株主間の利害調整が必要。 | |||
授権株式数は定款記載事項であり、これを変更するためには定款変更の株主総会決議が必要。(既存株主間の利害調整) | |||
通常の新株発行 | 公開会社の場合 | 募集事項の 決定 |
公開会社では、取締役会決議で、次の「募集事項」を決定する。(法199、201) |
@募集株式の数(種類株式の場合はその種類および数)(法199@(1)) | |||
A募集株式の払込金額(募集株式1株と引換えに払い込む金銭または給付する現物出資財産の額)またはその算定方法(法199@(2)): 既存の株主の利益を害しないため、決定する払込金額は公正でなければならず、株式の時価を基準とする価額でなければならない。 市場価格のある株式を公正な価額で発行する場合は、「公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法」でよい。(法201A) 株主割当て以外の方法で募集株式を「特に有利な払込金額」で発行する場合(有利発行)、株主総会の特別決議が必要。 発行方法が著しく不公正ならば、発行差止めの問題を生じ(法210(2))、また、払込金額が著しく不公正な場合は通謀した引受人の責任を生じる(法212(1)、213) |
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B現物出資の場合は、その旨を出資する財産の内容および価額(法199@(3)) | |||
C募集株式と引換えにする金銭の払込又は財産の給付の期日又はその期間(払込期日又は払込期間)(法199@(4)) | |||
D増加する資本金および資本準備金に関する事項(法199@j(5))(自己株式処分の場合は不要) 払込または給付がなされた額の全額を増加する資本金の額とするのが原則であるが、その2分の1までの額は、資本金としないで資本準備金とすることが認められる。(法445@〜B、計算規則37) |
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公示 | 既存株主に差止めの機会を与えるため、払込期日はまたは払込期間初日の2週間前までに募集事項の公告または株主に通知しなければならない。(法201BC) | ||
金融商品取引法に基づく届出をしている場合(その他法令で定める場合=規則40)は、この通知・公告は不要。 | |||
非公開会社の場合 | 株主割当ての方法で既存株主に平等に割り当てるのが原則(法202@) 特定の第三者に発行するなど、既存株主への持株割合に応じた発行以外の方法で発行する場合には、既存株主の利益の保護のため、募集事項の決定には株主総会の特別決議が必要。(法199A、200@B、309A(5)) |
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株主総会の特別決議を経なかった場合に新株発行無効事由となるか: 有利発行の場合には、法律関係の安定のために無効事由とはならない(最高裁) 非公開会社では持分比率は既存株主にとって重要な利益⇒既存株主の割当てを受ける権利を無視して行われた新株発行は無効事由となると解すべき。 |
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株主割当の場合 | 概念 | 募集株式を募集する場合、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができ、この場合を株主割当てという。(法202@) | |
募集事項の決定 | 法199@の募集事項に加え、次の事項も決定する。 @株主に対し、申込みをすることにより募集株式の割当てを受ける権利を与える旨 A募集株式の引受けの申込みの期日 |
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@の株主は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有するが、1株に満たない端数が生じるときは、これを切り捨てる。(法202A) | |||
その決定は、公開会社は取締役会決議、非公開会社では株主総会によるのが原則であるが、定款で取締役会決議(非取締役会設置会社では取締役)と定めることができ(法202B)、それ以外の規制は受けない(法202D)。 | |||
有利発行 | 既存の株主の利益保護のため、株主割当以外の方法で新株を「特に有利な払込金額」で発行する場合は、株主総会の特別決議が必要となる。 | ||
公開会社の場合は、通常は取締役会で払込金額を決めるので、その額が募集株式を引き受ける者に「特に有利な」金額である場合に、株主総会の特別決議が必要となる。(法199A、201@、309A(5)) |
新株予約権の発行 | |||
新株予約権 | それを有する者(新株予約権者)が会社に対してそれを行使したときに、会社から株式の交付を受ける権利。 (行使されると、会社は新株予約権者に対して、新株を発行し、または、会社の有する自己株式を交付する義務を負う。) |
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発行 | その価格に対応した対価で(有償で)行われるのが通常であるが、無償で(対価の払込みを求めないで)発行する場合もある。 | ||
@インセンティブ報酬として取締役や従業員に付与。 A資金調達のために発行(新株予約権付社債が多い)。 B株式優待策として、株主に発行する。 C買収防衛策として発行する。 |
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発行手続 | 内容 | 新株予約権の内容を定めることが必要。(法236条1項) | |
@当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
A当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法 B金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額 C当該新株予約権を行使することができる期間(行使期間) D当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項 E譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨 F当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、法の定める一定の事項 G発行会社が当該会社が消滅する合併・吸収分割・新設分割・株式交換・株式移転をする場合において、新株予約権の新株予約権者に存続会社・新設会社等の新株予約権を交付することとするときは、その旨およびその条件(新株予約権の承継) H新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数がある場合において、これを切り捨てるものとするときは、その旨 I当該新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)に係る新株予約権証券を発行することとするときは、その旨 JIの場合で、新株予約権者が記名式証券・無記名式証券間の転換請求(法290参照)の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨 |
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新株予約権付社債に付された新株予約権の数は、その新株予約権付社債についての社債の金額ごとに、均等に定めなければならない(法236A) | |||
行使条件: 法236条1項各号に規定された事項以外でも、当該新株予約権の権利内容として重要な事項は定める必要がある。(要登記法911条3項12号ハ参照) 例えば、従業員であることを条件に行使できるとか、「20パーセントを超える株式保有割合を有する株主以外の株主が行使できる」等 |
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発行手続 | 募集新株予約権の発行は、募集株式の発行の場合に準じて(自己新株予約権は募集新株予約権に含まれない)、取締役会等で募集事項を定めて行う(法238〜240、なお248条) 募集株式の発行の場合と同様、募集事項は募集ごとに均等でなければならず、また、公開会社が取締役会会議で募集する場合は原則として2週間前までに募集事項の公告または通知をしなければならない。(法240A〜C) 株主割当ては、募集株式の場合と同様。(法241条) |
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募集事項(法238条1項): @募集新株予約権の内容および数 A募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする(=無償で発行する)場合には、その旨 B募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額)またはその算定方法(Aの場合を除く) C募集新株予約権を割り当てる日(割当日) D募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日 EF(新株予約権付社債の場合) |
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募集といっても、新株予約権の場合は、払込みをさせないで(無償で)発行することも認められる。 | |||
募集新株予約権の申込み、割当て(法242,243,244条)、新株予約権者となる日(法245条) | |||
募集株式の場合と異なる払込み: 全額払込みが原則ではあるが(法246条1項)、払込がなくても新株予約権を取得はする。(法245条) しかし、払込をしないと新株予約権は行使できない。(法246条3項) 払込みについては、会社が承諾すれば相殺もできる(法246条2項) 金銭以外(現物)を対価として給付するような形での新株予約権の発行は、条文上一般的な規定はないが、禁止する趣旨ではない。 |
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有利発行 | 手続 | 次の2つの場合が「有利発行」となり、株主総会の特別決議が必要となる。(法238A、239@、240@、309A(6)) @無償(払込みを要しないという意味)で発行し、それが新株予約権を引き受ける者に「特に有利な条件」である場合 A払込金額が新株予約権を引き受ける者に「特に有利な金額」である場合 |
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募集株式の場合と同様に、株主総会では取締役は理由を説明する(法238B、239A) | |||
株主総会決議で無償と定めまたは有償の場合の払込金額の下限を定めて募集事項の決定を取締役会等に委任した場合の有効期間は1年間。(法239B) | |||
特に有利な条件・金額: 新株予約権自体の価値を測定して、それを基準としてとくに有利かどうかを判断することになる。 |
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インセンティブ報酬としてのストック・オプション | 平成9年改正による制度導入以来、取締役や従業員にインセンティブ報酬として付与されてきたいわゆるストック・オプションは、平成13年11月改正後は、新株予約権の無償発行として、有利発行手続によることと解されてきた。 but 会社法のもとでは原則として有利発行にはならない。 |
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会計基準の改正により、インセンティブ報酬としてのストック・オプションの付与について費用計上が義務付けられることとなった。(企業会計基準第8号「ストックオプション等に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」) ⇒ ストック・オプションの付与は有利発行とはいえなくなり、取締役に対するストック・オプションの付与は、会社法361条1項にいう報酬等に該当する。(定款の定めまたは株主総会決議(普通決議)が必要) |
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ストック・オプションの付与について費用計上を義務透ける会計基準が制定された以上、その費用がオプションの公正価値に対応する額として算定されるものである場合には、取締役へのストック・オプションの付与は、新株予約権発行手続との関係では公正な払込金額による発行であると解するのが妥当(そして公正価値に対応する額の報酬債権を有し、それにより新株予約権の発行対価の払込みにあてる(相殺)(法246A)) そして、法361条の報酬規制に服する。 |
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未公開企業などの場合には、簡便法により、新株予約権行使時の株式時価を基準とする費用算定が認められており、そうなると、行使価格が新株予約権発行時の株式時価と等しければオプションの費用はゼロということになる。 会社法の考え方としては、そのような場合には、たとえば事情説明をして有利発行手続をふめば、ストック・オプションの付与ができると解してよい。 |
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その他 | ルールの整備 | @新株予約権原簿(法249〜253・272の2) | |
A新株予約権の譲渡(法254〜261)と譲渡制限(法262〜266) 譲渡制限の場合、株式と異なり投下資本回収方法は定められていないが、新株予約権者には一定の場合には買取請求権が認められる。 |
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B質入れ(法267〜272) | |||
C会社による自己新株予約権の取得 取得条項付新株予約権の場合について規定が置かれているが(法273〜276)、それ以外の場合でも取得は可能。 処分について自己株式のような規制はない。 |
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D無償割当て(法277〜279) | |||
E新株予約権の行使(法280〜284) 現物出資を含むが、金銭の場合必ず1円は払い込まなければならないように条文は読める。(尚、授権株式数の留保についてkl、282、113C、114A(3)) |
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F著しく不公正な払込金額等の場合の新株予約権者等の差額支払義務(法285・286) 無償発行が著しく不公正な条件である場合を含む点に注意。 |
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G新株予約権証券(法288〜294条) | |||
H登記(法911B(12)) なお、新株予約権の行使ができないことが確定したときは、新株予約権は消滅する。(法287条) |
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I買取請求権 組織変更や合併等の組織再編のうち一定の場合に、新株予約権者には新株予約権の買取請求権が認められている。(法777条、787条) |
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新株引受権の発行の瑕疵 | 差止め | 法令・定款違反または著しく不公正な方法により行われる新株予約権の発行は、それによって株主が不利益を受けるおそれがあるときは、差止め事由となるが(法247条)、募集株式発行の場合と異なり、新株予約権の発行に資金長たちの必要性は要求されない。 | |
会社法 第247条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第二百三十八条第一項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。 一 当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合 二 当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合 |
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支配権の争いがあるような場合になされる新株予約権の特定の者への発行が不公正発行にあたるか否かは具体的事例ごとに判断するしかない。 | |||
無効の訴え | 新株発行無効の訴えと同様の制度として、新株予約権発行無効の訴えの制度整備(新株予約権付社債を含む)(法828@(4)、A(4) 無効判決の効力として法842) | ||
新株予約権無償割当の方法 | 278@各号に掲げる事項を定める必要。 | ||
原則として株主総会の決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって決定。 定款に別段の定めがある場合には、業務執行者が決定することや、取締役会設置会社において株主総会の決議により決定することも可能。(273B) |
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ライツ・オファリング | 意義 | @公募増資、A第三者割当増資と並んで、企業の増資手法の1つ。 | |
株主全員に新株予約権を無償で割り当てることによる増資方法。 | |||
株主は割り当てられた新株予約権を行使して金銭を払い込み、株式を取得することができるが、新株予約権を行使せずに市場で売却することも可能。 ⇒ 持株比率の低下を嫌う株主は新株予約権の行使によりそれを回避でき、 追加出資を嫌う株主は新株予約権の売却により追加負担を回避できる。 |
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コミットメント型ライツ・オファリング | 意義 | 権利行使がされなかった新株予約権について、発行会社が取得条項に基づき取得した上で証券会社で売却し、当該証券会社が権利行使をして取得した株式を市場等で売却するというスキーム。 〜 証券会社の権利行使により最終的にはすべての新株予約権の行使が担保されている⇒発行会社にとてあらかじめ調達額を確定できる。 |
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取引 | @増資を行おうとする発行会社は、会社法277条に基づく新株予約権無償割当を実施。 A株主は、新株予約権を行使して金銭を払い込み、株式を取得する。 追加出資を嫌う株主は、新株予約権を市場売却する。 B発行会社は、一定期間内に行使されなかった新株予約権を取得条項により取得する。 C発行会社は、取得した新株予約権を証券会社に売却する。 D証券会社は、新株予約権を行使して金銭を払い込み、株式を取得する。 E証券会社は、取得した株式を市場等へ売却する。 |
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実績 | 日本での実績はほとんどない。 ←手続的負担が重く、資金調達までに要する期間が長期間となる。 |
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開示制度の見直し | 「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第49号) | ||
@ライツ・オファリングにおいて目論見書の作成・株主全員に対する交付を不要とするための目論見書の交付方法の弾力化 | |||
Aコミットメント型ライツ・オファリングにおける証券会社による未行使分の新株予約権の取得・行使を「有価証券の引受け」と位置付けるための「有価証券の引受け」の範囲の見直し。 | |||
Bライツ・オファリングが行われた場合の株券等所有割合の特性を踏まえた規制適用を行うための公開買付規制の適用範囲の見直し | |||
C新株予約権無償割当てをインサイダー取引の重要事項として明記 |
社外性 | |||
社外役員 | 社外取締役 | 株式会社の取締役であって、 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、 過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。(法2条15号) |
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@特別取締役制度の導入、 A委員会の設置、 B責任限定契約に関する定款の定め という社外取締役の存在が法律上の要件とされている制度を採用する場合にだけ、社外取締役である旨の登記が義務付けられる。 |
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社外監査役 | 株式会社の監査役であって、 過去に当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。 |
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監査役は3人以上で、かつ、その半数以上は「社外監査役」でなければならない。 | |||
独立役員 | 東京証券取引所は、上場会社のコーポレート・ガバナンスの向上に向けた環境整備の一環として、 @上場会社は、一般株主保護のため、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役をいう)を1名以上確保することを、同取締役が上場会社に対して定める「企業行動規範」の「遵守すべき事項」として規定し、かつ、独立役員に関して記載した「独立役員届出書」を同取引所へ提出することを求め(東京証券取引所有価証券上場規程436の2)、また A上場会社が自らのコーポレート・ガバナンス体制を選択する理由と独立役員の確保の状況(独立役員として一定の利害関係者に該当する場合は、それを踏まえてもなお独立役員として指定する理由を含む)を、コーポレート・ガバナンス報告書において開示することを求めており(東京証券取引所有価証券上場規程施行規則211E(2)(5))、226E(2)(5)、他の取引所も同様の規定を設けている。) |
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独立性判定基準 | a.当該会社の親会社又は兄弟会社の業務執行者 | ||
b.当該会社を主要な取引先とする者若しくはその業務執行者又は当該会社の主要な取引先若しくはその業務執行者 | |||
c.当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。) | |||
d.最近においてa〜cまでに該当していた者 | |||
e.次の(a)から(c)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く。)の近親者 (a)aからdまでに掲げる者 (b)当該会社又はその子会社の業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役又は会計参与(当該会計参与が法人である場合は、その職務を行うべき社員を含む。以下同じ。)を含む。) (c)最近において前(b)に該当していた者 |
役員および会計監査人の選任と解任 | |||||
通則 | 選任権限 | 会社法 第329条(選任) 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。 2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。 |
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役員(取締役・会計参与・監査役)および会計監査人は、株主総会の決議で選任(法329@)。 選任決議の際に、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合または会社法・定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任できる(法329A、規則96)。 |
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☆会社法 第三四四条(会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定) 監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。 2監査役が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監査役が」とあるのは、「監査役の過半数をもって」とする。 3監査役会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。 |
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選任と終任 | ■選任 | 役員(取締役・会計参与・監査役)および会計監査人の選任は、株主総会の普通決議で行う(設立時取締役は発起人または創立総会)(法329@、38@、88)。 | |||
☆監査役設置会社では、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が(監査役が2人以上ある場合はその過半数で(監査役会設置会社では監査役会が))決定する(法344条) ←会計監査人の独立性確保 |
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■終任 | ■終任 | ||||
●終任事由 | ●終任事由 | ||||
役員および会計監査人と会社との関係は委任の規定に従う(法330条)。 ⇒ 役員と会計監査人はいつでも辞任することができる(民法651条)。 辞任の意思表示は必要(東京高裁昭和59.11.13)。 その者の死亡・破産・成年被後見(民法653)も終任事由となる。 任期の満了・解任・資格の喪失・会社の解散によっても地位を失う。 |
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地位を失ったときは、登記する。 | |||||
●会社の破産 | ●会社の破産 | ||||
会社につき破産手続開始の決定がされても直ちには会社と取締役・監査役との委任関係は終了するものではなく、破産手続開始時の取締役・監査役は破産手続開始によりその地位を当然には失わず、会社組織に関する行為等については取締役・監査役としての権限を行使できる。 ⇒ 会社の取締役・監査役の選任・解任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に会社が破産手続開始の決定を受けても、同訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない(最高裁H21.4.17)。 |
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●解任 | ●解任 | ||||
規定 | 会社法 第339条(解任) 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。 2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。 |
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会社法 第341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議) 第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。 |
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会社法 第343条(監査役の選任に関する監査役の同意等) 4 第三百四十一条の規定は、監査役の解任の決議については、適用しない。 |
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会社法 第309条(株主総会の決議) 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。 七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。) |
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会社法 第854条(株式会社の役員の解任の訴え) 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。 一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。) イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主 ロ 当該請求に係る役員である株主 二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。) イ 当該株式会社である株主 ロ 当該請求に係る役員である株主 2 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。 3 第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。 4 第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。 |
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○ | 株主総会は、その普通決議で、いつでも、理由をとわず、役員および会計監査人を解任することができる(法339@)。 「正当な理由」なく解任した場合は、会社は損害賠償をしなければならない(法339A)。 任期の定めのない取締役(特例有限会社)に339Aの適用はない。 |
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取締役の解任:普通決議(定足数規制は選任の場合と同じ)(法341) 監査役の解任:特別決議事項(法309A(7)、343C) 累積投票で選任された取締役の解任も同じ(法309A(7))。 |
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解任決議不成立⇒ その役員が不正の行為(会社財産を指摘に使用するなど)をしたとき、または法令・定款に違反する重大な事実があったときは、少数株主は、30日以内にその役員の解任の訴えを提起することができる(会社法854条)。 |
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監査役(または監査役会・監査委員会)には、一定の場合に、会計監査人の解任権が認められる(法340条)。 | |||||
●欠員の場合の処置 | ●欠員の場合の処置 | ||||
任期満了または辞任により退任した役員は、後任者が就任するまで引き続き役員として権利義務を有する(法346@)。 その間、退任の登記はできない。 |
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それが不適当な場合とその他の事由(解任等)による場合、裁判所に請求して一時役員として職務を行う者を選任してもらうことができる(法346AB)。 | |||||
■株主総会での意見陳述等 | ■株主総会での意見陳述等 | ||||
@会計参与・監査役・会計監査人: それぞれ、会計参与・監査役・会計監査人の専任・解任・辞任(会計監査人の場合は不再任も含む)について、株主総会に出席して意見を述べることができる(法345@CD)。 |
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A会計参与・監査役・会計監査人を辞任した者、会計監査人を解任された者: 辞任後または解任後最初に召集される株主総会に出席して、辞任した旨およびその理由または解任についての意見を述べることができる(法345ACD)。 |
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B取締役は、Aの者に対し、Aの株主総会を招集する旨と招集事項(法298@(1))を通知しなければならない(法345B)。 | |||||
■職務執行停止・職務代行者 | ■職務執行停止・職務代行者 | ||||
民事保全法上の仮処分の制度に基づき、訴えの提起後または訴えの提起前でも急迫な事情がある場合には、裁判所は、当事者の申立てにより、取締役等の職務執行を停止し、さらに職務代行者の選任もできる(民事保全法23A、24)。 | |||||
代表取締役等についても職務執行停止・職務代行者選任が認められる。 | |||||
会社法は、これら取締役等の仮処分の登記と取締役および代表取締役の職務代行者の権限について規定を置いている。 | |||||
■選解任種類株式がある場合の特例 | ■選解任種類株式がある場合の特例 | ||||
取締役・監査役の選任について内容の異なる株式がある場合には(法108@(9))、以上の原則は適用されず、そのような種類株式の定款の定めに従って取締役・監査役の選解任などが行われる(法347)。 |
取締役 | ||
社外取締役 | 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。(法2条15号) | |
「業務を執行した」 | 「職務の執行」とは異なる概念。 会社の目的である具体的事業活動に関与すること。 |
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社外取締役が要件となる規定 | 1.委員会の設置・特別取締役の選定 @委員会設置会社では、各委員会の委員の過半数を社外取締役にしなければならない。(400B) A特別取締役を選任する前提として、取締役のうち1人以上社外取締役がいる必要。(373)特別取締役のうち1人が社外取締役であることは必要でない。 2.責任の一部免除 @社外取締役について、会社に対する損害賠償額のうち年収の2年分を超える部分について、株主総会または取締役会の決議等により免除することができる。(425、426) A社外取締役は、会社との間で責任限定契約(427)を締結できる。 3.社外役員の事業報告における活動状況等の記載 公開会社にあっては、社外取締役のうち社外役員(施2条3項5号)に該当する者について、事業報告にその活動状況等を記載しなければならない。(施124) |
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任期 | 原則は2年(選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで)(定款または株主総会決議で短縮可。) | |
@非公開会社(委員会設置会社を除く)⇒定款により任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長可能。 | ||
A委員会設置会社の取締役は1年。 会計監査人設置会社で定款により剰余金配当等の権限を取締役会に与えた場合も1年。 |
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取締役の解任 | 341の決議(特則普通決議)により解任(339@) | |
総議決権または発行済み株式総数の3%以上を保有する株主等854@に規定する株主は、取締役解任の訴えを提起できる。(854) | ||
取締役の報酬規制 | 規定(法361条) | 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。 一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額 二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法 三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容 |
2 前項第二号又は第三号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。 | ||
ストックオプションと報酬決議 | 取締役の職務執行の対価として、財産上の価値を有する新株引受権を交付⇒「報酬等」 に該当し、361の承認対象となる。 実際に新株予約権を発行する場合は、新株予約権の発行手続が必要。 |
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使用人兼務取締役の使用人部分の報酬決議 | 使用人としての職務の対価であって、取締役の職務との対価性がないものである限り、その支給は、361条の承認の対象とはならない。 |
取締役会 | |||
権限 | 全ての取締役で組織し(362@)、次の職務を行う(362A)。 @業務執行の決定 A取締役の職務の執行の監督 B代表取締役の選定および解職 |
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業務執行に関する意思決定(362A(1)) 必ず取締役会で決定すべきで、代表取締役に委ねられない事項(362C) @重要な財産の処分および譲受け A多額の借財 B支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 C支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 D社債の募集 E取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制(規則100)の整備 F定款規定に基づく取締役等の責任の一部免除 G重要な業務執行の決定 法定事項以外の事項についても取締役会で決定することができるが、一般に、日常的事項の決定は代表取締役に委譲されていると考えられる。 |
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業務執行:(363@) @代表取締役 A代表取締役以外の取締役で取締役会決議により取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定された者(選定業務執行取締役) 3か月に1度以上、職務執行の状況を取締役会に報告する義務。 |
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監督(362A(2)) 取締役会の決定に反するものであってはならない⇒代表取締役等の業務執行を監督する権限。 |
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招集 | 招集権者が個々の取締役・監査役に通知して招集(368@) 全員が同意すれば招集手続不要(368A)⇒あらかじめ取締役・監査役全員の同意で定めた定例日に開催する場合は、招集手続は不要。 |
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決議 | 「議決に加わることができる取締役」の過半数が出席し、その出席取締役の過半数で決定。(369@) 定款により要件を加重できるが軽減はできない。(369@) |
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決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない。(369A) ← 取締役が会社のために忠実に職務を執行する義務を負っていること(会社法355条)の表れ。 |
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特別利害関係人の例 | @譲渡制限株式の譲渡承認 | ||
A競業取引・利益相反取引の承認(法365条1項) | |||
B会社に対する責任の一部免除(法426条1項) | |||
C監査役設置会社以外の会社における会社・取締役間の訴えの会社代表者の選任(法364条) | |||
D代表取締役の解職決議(最高裁昭和44.3.28) | |||
代表取締役の選定につき候補者自身が議決権を行使することは、業務執行への決定への参加に他ならず、特別利害関係人には当たらないと一般に解されている。(江頭p380) | |||
定款で定めれば書面による決議も可能。(監査役が異議を述べた場合は不可)(370) | |||
書面決議 | 規定 | 会社法 第370条(取締役会の決議の省略) 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。 |
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会社法 第26条(定款の作成) 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。 2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 |
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会社法施行規則 第224条(電磁的記録) 法第二十六条第二項に規定する法務省令で定めるものは、磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。 第225条(電子署名) 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。 一 法第二十六条第二項 二 法第百二十二条第三項 三 法第百四十九条第三項 四 法第二百五十条第三項 五 法第二百七十条第三項 六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。) 七 法第三百九十三条第三項 八 法第四百十二条第四項 九 法第五百七十五条第二項 十 法第六百八十二条第三項 十一 法第六百九十五条第三項 2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。 |
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会社法 第369条(取締役会の決議) 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。 2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。 3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。 4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。 |
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会社法 第371条(議事録等) 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。 |
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趣旨 | 取締役が取締役会の決議の目的である事項につき提案をした場合において、取締役(当該事項につき議決に加わることができるものに限る)の全員が書面(電磁的記録)により同意の意思表示をしたとき (監査役設置会社(法2条9号)において、監査役が当該提案につき異議を述べた場合を除く)は、当該提案を可決する旨の取締役会があったものとみなす旨を定款で定めることができる(法370条)。 | ||
各取締役が同意の意思表示をした書面(電磁的記録)は、当該決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置き、株主・会社債権者・親会社社員の閲覧に供さなければならない(法371条、976条8号、商業登記法46条3項、19条の2)。 | |||
議事録 | 規定 | 会社法施行規則 第101条(取締役会の議事録) 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。 2 取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。 3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。 一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。) 二 取締役会が法第三百七十三条第二項の取締役会であるときは、その旨 三 取締役会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨 イ 法第三百六十六条第二項の規定による取締役の請求を受けて招集されたもの ロ 法第三百六十六条第三項の規定により取締役が招集したもの ハ 法第三百六十七条第一項の規定による株主の請求を受けて招集されたもの ニ 法第三百六十七条第三項において準用する法第三百六十六条第三項の規定により株主が招集したもの ホ 法第三百八十三条第二項の規定による監査役の請求を受けて招集されたもの ヘ 法第三百八十三条第三項の規定により監査役が招集したもの ト 法第四百十七条第一項の規定により委員の中から選定された者が招集したもの チ 法第四百十七条第二項前段の規定による執行役の請求を受けて招集されたもの リ 法第四百十七条第二項後段の規定により執行役が招集したもの 四 取締役会の議事の経過の要領及びその結果 五 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名 六 次に掲げる規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要 イ 法第三百六十五条第二項(法第四百十九条第二項において準用する場合を含む。) ロ 法第三百六十七条第四項 ハ 法第三百七十六条第一項 ニ 法第三百八十二条 ホ 法第三百八十三条第一項 ヘ 法第四百六条 七 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称 八 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名 4 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。 一 法第三百七十条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項 イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容 ロ イの事項の提案をした取締役の氏名 ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日 ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 二 法第三百七十二条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項 イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容 ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日 ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 |
委員会設置会社 | ||
概要 | 取締役会と会計監査人を置く会社は、定款により委員会設置会社となることを選択することができる。 | |
@取締役会の役割は、基本事項の決定と委員会のメンバーおよび執行役の選任等の監督機能が中心となり、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会(社外取締役がメンバーの過半数)が監査・監督というガバナンスの重要な位置を占める(監査役はなく監査委員がその役割を果たす) | ||
A監督と執行が制度的に分離され、業務執行は執行役が担当し(取締役は原則として業務執行できない)、会社を代表する者も代表執行役となるほか、業務の意思決定も大幅に執行役にゆだねられる(ただし、取締役が執行役を兼ねることは可)(取締役の任期は常に1年となり、執行役の任期も1年) |
役員等の責任→「役員等の責任関係」ファイルへ |
監査役・会計監査人・監査関係→監査役・監査関係ファイルへ |
内部統制関係→内部統制ファイルへ |
計算書類関係 | |||
会計処理 | 規定 | 会社法 第431条 株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。 |
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複数の会計処理 | 一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行と認められるものは、会社の規模、業種、株主構成などによって複数存在し得る。 | ||
事業報告の内容 | 非公開会社: @当該株式会社の状況に関する重要な事項 A内部統制システムの整備に係る決定または決議の内容の概要 公開会社: @A(施119) B株式会社の現況に関する事項(施120) C株式会社の会社役員(直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していたものであって、当該事業年度の末日までに退任したものを含む)に関する事項(施121) D株式会社の株式に関する事項(施123) E株式会社の新株予約権に関する事項(施123) |
資本金と準備金 | |||
概要 | 株主有限責任⇒会社財産のほかに財産的基礎がない⇒資本金という一定額を基準として、それに準備金という制度を設け、原則としてこれらの数字の合計額を超える額を「分配可能額」として算出し、その額を限度として株主への配当等による会社財産の払戻しを認める。 | ||
資本金や準備金の増加・減少といっても、貸借対照表上の資本金の額または準備金の額という数字(計数)が増加または減少することを意味するので、これによって現実の会社財産の増減を意味するわけではない。 | |||
資本金 | 資本金の額は、会社法の規定により算出。 | ||
原則:株式の実際の払込額(現物出資の場合は給付額)の総額(445@)。 株式発行の際にその2分の1までの額(払込剰余金)は、資本金としないことが認められ(445A)、その場合には、それは資本準備金としなければならない(445B)。 |
|||
第445条(資本金の額及び準備金の額) 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。 2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。 3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。 |
|||
準備金 | @資本準備金とA利益準備金とがある。 | ||
剰余金を配当する場合、法務省令で定めるところにより、準備金の合計額が資本金の額の4分の1に達するまで、配当により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立てなければならない(445C、計算規則22)。 | |||
第445条(資本金の額及び準備金の額) 4 剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。 |
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合併等の場合 | 組織変更や合併・吸収分割・新設分割・株式交換または株式移転に際して資本金または準備金として計上すべき額は法務省令で定められる。 | ||
公示 | 資本金・準備金の額は、定款には記載しないが、登記と貸借対照表により公示・公開される(911B(5))。(準備金の額は登記は不要で、貸借対照表により公示される。) | ||
剰余金 | 貸借対表上の純資産額(貸借対照表の総資産から総負債を差し引いた残額)から資本金と準備金の額を差し引いた額。 剰余金配当規制との関係で分配可能額規制では、決算日後の剰余金の変動も考慮に入れる⇒会社法は、剰余金を定義。 |
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剰余金とは、次の@ABCを加算し、DEFを減算した合計多額(446): <加算> @最終事業年度の末日におけるイおよびロの合計額からハからホまでの合計額を減じて得た額: (加算) イ:資産の額 ロ:自己株式の帳簿価額の合計額 (減算) ハ:負債の額 ニ:資本金および準備金の合計額 ホ:法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額(計算規則149) A最終事業年の末日後に自己株式を処分した場合における自己株式の対価の額から自己株式の帳簿価額を控除して得た額 B最終事業年度の末日後に資本金の額を減少した場合における減少額(準備金組み入れ額(447@(2))を除く) C最終事業年度の末日後に準備金の額を減少した場合における減少額(資本金組入額(448A)を除く) <減算> D最終事業年度の末日後に自己株式の消却をした場合(178@)における自己株式の帳簿価額 E最終事業年度の末日に剰余金の配当をした場合における次の合計額 イ:454条1項1号(剰余金配当)の配当財産の帳簿価額の総額(454C(1)(現物配当の場合)に規定する金銭分配請求権を行使した株主に割り当てた当該配当財産の帳簿価額を除く) ロ:454条4項1号(現物配当の場合)に規定する金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額 ハ:456条(現物配当の場合)に規定する基準未満株式の株主に支払った金銭の額の合計額 F法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額(計算規則150) |
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任意積立金 | 会社が定款または株主総会決議で自発的に積み立てるものでい、利益その他の中から積み立てられる。 | ||
@目的が特定されたものとA特定されないものがある。 その使用もそれぞれ定款または株主総会により自発的に行うことができる。 |
剰余金の分配 | |||
剰余金分配規制 | 分配可能額規制 | (ア)分配可能額の内容 | (イ)の行為により株主に交付する金銭等(当該会社の株式を除く)の帳簿価額の総額は、その行為の効力発生日における分配可能額(ウ)を超えることはできない。(法461@) |
(イ)規制の対象となる剰余金分配 | @譲渡制限株式の買取り A子会社からの自己株式の取得及び市場取引・公開買付けによる自己株式の取得 B株式との合意による自己株式の取得 C全部取得条項付種類株式の取得 D相続人等への売渡請求に基づく自己株式の買取り E所在不明株式の株式の買取り F端数処理手続における自己株式の買取り G剰余金の配当 |
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(ウ)分配可能額(461A) | @Aを加算し、BCDEを減算した合計額。 原則は、その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額。 @剰余金の額(446) A臨時計算書類につき株主総会等の承認(441C但書の場合は、441Bの承認)を受けた場合におけるイ その期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額(計算規則184)およびロ その期間内に自己株式を処分した場合における対価の額。 B自己株式の帳簿価額。 C最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における対価の額 DAの場合におけるその期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額(計算規則185) E法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額(計算規則186) |
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剰余金の配当の決定機関 | 原則として、株主総会の普通決議(309@、454) @委員会設置会社またはA監査役会および会計監査人を設置する会社であって、取締役が毎事業年度、改選されるものについては、取締役会の決議により剰余金の配当をすることができる旨を定款で定めることができる。(459@) |
解散・清算 | ||||
意義 | 解散 | 会社の法人格の消滅をもたらす原因となる事実。 | ||
清算 | 解散に続いて法律関係の後始末をする手続。 | |||
その目的は、会社のすべての権利義務を処理して残余財産を株主に分配すること。 ⇒会社は事業を継続することはできず、事業を前提とする諸制度や諸規定は適用されない。 |
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会社法は、 通常清算手続においける裁判所の監督を廃止し、その他の規制を緩和。 特別清算については、裁判所の関与を強化し、債権者の多数決で決められる「協定」に基づく弁済を可能にする等の改正を行った。 |
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会社の法人格は、合併の場合を除いて、解散によって直ちに消滅はせず、会社は清算手続に入り、その完了(会社法では「「決了」)によって消滅。 | ||||
解散 | 解散事由 (471) |
@定款で定めた存続期間の満了 A定款で定めた解散事由 B株主総会決議 C合併(消滅会社) D破産手続開始の決定 E解散命令(824@)・解散判決(833@) F休眠会社のみなし解散制度(472@) G業種によっては、事業の免許取消しが会社の解散事由となる。(銀行法40、保険業法152B(2)) |
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解散の効果 | 合併と破産手続開始決定(破産手続の中で生産が行われる)の場合を除いて、清算手続に入る。(法475@) | |||
一旦解散しても一定の場合には、株主総会決議により、再び解散前の状態に復帰sることができる。(会社の継続)(法473) | ||||
解散決議 | 株主総会特別決議で、会社の解散を決定できる(法471(3)、309A(11))。 | |||
事業の全部を譲渡しても会社は当然には解散せず、解散するためには解散の総会決議が必要。 | ||||
解散命令 | 会社(持分会社を含む)の存在が公益上許されない場合、裁判所が解散命令を命じる(824@)。 | |||
この制度はほとんど利用されず、実際には存在していないような会社が登記簿上存在する事例が多く生じた⇒休眠会社の整理の制度が導入。 | ||||
解散判決 | 解散に必要な株主総会の特別決議は成立させることができないが、株主の正当な利益を保護するためには会社を解散するしかないような場合に、少数株主が解散の訴えを提起することを認めたもの。 | |||
休眠会社のみなし解散 | 12年間1度も登記をしていない会社は、法務大臣が事業を廃止していないことの届出をするように官報で公告し、登記所から会社に通知する。 | |||
事業を廃止していないことの届出(規則139)か何らかの登記を公告の被から2か月以内にすればいいが、どちらもせずに放置すると、2か月が経過した日にその会社は解散したものとみなされる(法472@)。 | ||||
解散したものとみなされた会社も、3年間は会社継続の決議をすることができる(法473)。 | ||||
清算 | 清算会社 | 清算段階に入ると、取締役は地位を失い、清算人がとって代わる。 | ||
株主総会や監査役は継続する。 | ||||
株式は解散後も自由に譲渡できる。 | ||||
清算人 | ||||
清算の種類 | @裁判所の監督に服さない通常清算(475〜509) A裁判所の監督のある特別清算(510〜574) Aは倒産処理手続きの1つ。 |
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通常清算 | @解散の時点で継続中の事務を完結し、取引関係も完結する(現務の結了)。 | |||
A弁済期の来た債権を取り立て、金銭以外の財産は換価する。 | ||||
B会社の債務を弁済する。 2か月以上の一定の期間内に債権の申出をするように催告し(清算開始後遅滞なく官報で公告する)、この期間経過後に、申し出た債権者と知れたる債権さの全員に弁済する(499-501)(弁済期未到来の債務・条件付債務・期間不確定の債務も弁済する。) それ以外の債権者は除斥される(503)。 |
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C残った財産(残余財産)があれば、株主に原則として持株数に比例して分配する(504-506)。 債務の弁済をしないで株主に分配してはならないが、争いがある分については弁済に必要な財産を留保して残余財産を分配してもよい(502)。 |
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特別清算 | 開始 | 債務超過(清算会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態)の疑い⇒清算人は裁判所に特別清算の申立てをしなければならない(511A)。 | ||
債務超過の疑いの有無にかかわらず、債権者・清算人・監査役・株主は、この申立てをすることができる(511@)。 | ||||
これに基づき、裁判所は、 @清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合、または A債務超過の疑いがある場合には、 特別清算の開始を命じる。 |
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手続き | 裁判所の監督のもとで行われる⇒清算人の権限は制約され、一定額以上の財産の処分行為等には裁判所の許可が必要(535,536、なお896)。 (その代わり、事業譲渡にも株主総会の特別決議は不要(536B)) |
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債務の弁済は原則として比例按分とし、債権者間の実質的平等を重視する(537,565)。 その内容は債権者集会の多数決で定める「協定」で定めるが、裁判所の許可が必要(563-572)。 |
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倒産処理 | 特別清算手続に入ると、個別の強制執行の停止など、倒産処理手続に共通の問題が生じる。 ⇒必要な規定が設けられている。 |
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@協定が成立する見込みがない場合、 A協定は成立したが実行の見込みがない場合、 B特別清算によることが債権者の一般の利益に反する場合 裁判所は、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、職権で破産手続の開始を決定する(574@)。 (協定が否決された場合および協定の不許可の決定が確定した場合も同じ(574A)) |
組織変更 | |||
債務超過会社の組織変更 | 可能(禁じる理由も、規定もなし) |
事業譲渡・組織再編行為⇒組織再編ファイルへ |