シンプラル法律事務所
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論点整理(家事関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

忌避  
  規定 家事事件手続法 第11条(裁判官の忌避)
裁判官について裁判又は調停の公正を妨げる事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。
2 当事者は、裁判官の面前において事件について陳述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
家事事件手続法 第12条(除斥又は忌避の裁判及び手続の停止)
合議体の構成員である裁判官及び家庭裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、受託裁判官として職務を行う簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、裁判をする。
2 家庭裁判所及び地方裁判所における前項の裁判は、合議体でする。
3 裁判官は、その除斥又は忌避についての裁判に関与することができない。
4 除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで家事事件の手続を停止しなければならない。ただし、急速を要する行為については、この限りでない。
5 次に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判をするときは、第三項の規定は、適用しない。
一 家事事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき。
二 前条第二項の規定に違反するとき。
三 最高裁判所規則で定める手続に違反するとき。
6 前項の裁判は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、忌避された受命裁判官等(受命裁判官、受託裁判官、調停委員会を組織する裁判官又は家事事件を取り扱う家庭裁判所の一人の裁判官をいう。次条第三項ただし書において同じ。)がすることができる。
7 第五項の裁判をした場合には、第四項本文の規定にかかわらず、家事事件の手続は停止しない。
8 除斥又は忌避を理由があるとする裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
9 除斥又は忌避の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる
     

即時抗告
即時抗告 規定 家事事件手続法 第86条(即時抗告期間)
審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、二週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
2 即時抗告の期間は、特別の定めがある場合を除き、即時抗告をする者が、審判の告知を受ける者である場合にあってはその者が審判の告知を受けた日から、審判の告知を受ける者でない場合にあっては申立人が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。
家事事件手続法 第87条(即時抗告の提起の方式等)
即時抗告は、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
2 抗告状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 原審判の表示及びその審判に対して即時抗告をする旨
3 即時抗告が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、原裁判所は、これを却下しなければならない。
4 前項の規定による審判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、一週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
6 第四十九条第四項及び第五項の規定は、抗告状が第二項の規定に違反する場合及び民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い即時抗告の提起の手数料を納付しない場合について準用する。
家事事件手続規則 第55条(原審判の取消事由等を記載した書面)
審判に対する即時抗告をする場合において、抗告状に原審判の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、抗告人は、即時抗告の提起後十四日以内に、これらを記載した書面を原裁判所に提出しなければならない。
2 前条の規定は、前項の書面について準用する。
特別抗告  
特別抗告     規定 家事事件手続法 第94条(特別抗告をすることができる裁判等)
家庭裁判所の審判で不服を申し立てることができないもの及び高等裁判所の家事審判事件についての決定に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2 前項の抗告(以下「特別抗告」という。)が係属する抗告裁判所は、抗告状又は抗告理由書に記載された特別抗告の理由についてのみ調査をする。
説明 高等裁判所の家事審判事件についての決定に憲法上の解釈の誤りがある場合、その他憲法の違反がある場合、特別抗告をすることができる(法94条)。 
申立手続 原決定の告知日から5日以内に、抗告裁判所(=最高裁判所)宛の特別抗告状を、原裁判所(=原決定をした高等裁判所)に提出する。 
必要的記載事項は、@当事者及び法定代理人、A原決定の表示及びその決定に対して特別抗告をする旨。
副本は、相手方の数に応じた通数が必要。
これを裁判所が、相手方に送付する。
手数料 即時抗告と同額。 
別表第1審判に係る特別抗告⇒1200円。
別表第2審判に係る特別抗告⇒1800円
その余の審判に係る特別抗告⇒1000円。
仮差押え、仮処分その他の処分を命ずる保全処分の場合は抗告提起手数料は1500円(マニュアル5−5p55)
同一の即時抗告決定に対する同一人による特別抗告と許可抗告は、その一方について納めた手数料が他方についても納めたものとみなされる(民訴費3B)。
尚、予納郵券。
手続 特別抗告⇒原裁判所は、抗告提起通知書を、抗告人には送達し、相手方(及び利害関係参加人)には送付。 
特別抗告状に特別抗告の理由の記載がない場合、
抗告人は、抗告提起通知書の送達を受けた日から14日以内に、
特別抗告の抗告理由書を原裁判所に提出。
(副本は、相手方の数+6)
決定 抗告裁判所は、憲法の解釈の誤りその他憲法違反があれば、決定により、原決定を破棄し、原裁判所に差し戻す。 
抗告許可の申立  
許可抗告   規定 家事事件手続法 第97条(許可抗告をすることができる裁判等)
高等裁判所の家事審判事件についての決定(次項の申立てについての決定を除く。)に対しては、第九十四条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その決定が家庭裁判所の審判であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る。
2 前項の高等裁判所は、同項の決定について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、抗告を許可しなければならない。
説明 高等裁判所の家事審判事件についての決定に対し、当該決定をした高等裁判所(=原裁判所)が許可した場合に限り、最高裁判所(=抗告裁判所)に抗告をすることができる(法97@)。 
上記許可がされるのは、原決定に、最高裁判所の判例(これがない場合は、大審院(又は上告・抗告裁判所である高等裁判所)の判例)と相反する判断があるなど、法令の解釈に関する重要な事項を含むと原裁判所が認めた場合(法97A)。
申立手続 原決定の告知日から5日以内に、・・・原裁判所(=原決定をした高等裁判所)に提出する。 
必要的記載事項は、@当事者及び法定代理人、A原決定の表示及びその決定に対して抗告許可の申立をする旨。
副本は、相手方の数に応じた通数が必要。
これを裁判所が、相手方に送付する。
手続 抗告許可の申立て⇒原裁判所は、抗告提起通知書を、抗告人には送達し、相手方(及び利害関係参加人)には送付。 
抗告許可申立書に抗告許可申立ての理由の記載がない場合、
抗告人は、抗告許可申立て通知書の送達を受けた日から14日以内に、
抗告許可申立理由書を原裁判所に提出。
(副本は、相手方の数+6)
期間不遵守⇒広告不許可
判断 原裁判所が抗告を許可するのは、原決定に、
最高裁判所の判例(これがない場合は、大審院(又は上告・抗告裁判所))と相反する判断があるなど、法令の解釈に関する重要な事項を含むと原裁判所が認めた場合。

欠席判決の不存在
欠席  規定 人事訴訟法 第19条(民事訴訟法の規定の適用除外)
人事訴訟の訴訟手続においては、民事訴訟法第百五十七条、第百五十七条の二、第百五十九条第一項、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条、第二百二十九条第四項及び第二百四十四条の規定並びに同法第百七十九条の規定中裁判所において当事者が自白した事実に関する部分は、適用しない
2 人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条及び第二百六十七条の規定は、適用しない。
民事訴訟法 第159条(自白の擬制)
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2 相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3 第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
説明 民事訴訟〜被告が、原告の主張を争う内容の書面を提出せずに第1回口頭弁論期日を欠席⇒原告の主張する請求原因事実をすべて自白したとみなされ、原告勝訴の判決が言い渡される。
but
人事訴訟については、その制度はない。
⇒提出した証拠に基づいて判決がなされる。



■家事審判手続の特質(旧法)
■(1) 法的性質(概論)
  ●(a)後見的性格・非訟性 
民事訴訟:
対象たる事件は権利義務の存否や法律関係の有無
処分権主義・弁論主義という当事者主義が妥当し、公開法廷での対審構造のもと厳格な手続により、裁判所が公正・中立の第三者として判断を下す
家事審判手続:
対象事件(親族法・相続法に関する事件)の特殊性を加味
非訟性・職権主義・非公開性・裁量性
◎  民事訴訟:
実体法に定められている要件(主要事実)の存在を当事者が主張し、その有無について当事者の陳述が一致しない場合には、裁判所が審理・判断を下す。
家事審判手続:
裁判所は要件の存否に関する審理・判断に止まらず、一層、後見的立場に立つことが必要。
不在者の財産管理
誰を後見人に選任するか
親族間の扶養義務者が具体的にいかなる内容の扶養義務を負担するか
相続財産を具体的にどのように相続人に分割するか

裁判所が後見的立場から状況に応じて適切な判断を下すことが期待されている。
民事訴訟の原初形態は確認訴訟であり、家事事件の原初形態は形成訴訟である 
●(b)広範な裁量判断
当事者の主張に拘束されず裁判所が適切な判断をすることが求められており、その意味で家事審判は裁判所の裁量の余地が広い(職権主義・裁量性)。
  ●(c)職権に基づく科学的調査 
裁判所が職権により調査を行う(職権調査主義)。
調査の際には、必ずしも方式にとらわれず、社会学・心理学・精神医学等の専門科学を活用し(科学的調査)、事件の関係人や社会福祉機関などとの連携を図ることが期待されている。
  ●  ●(d)非公開性 
  家族法は、個人の尊厳やプライバシーに深く関わる⇒家事審判手続においては、プライバシーの保護や子の福祉に対する配慮が不可欠。
審判・調査の手続が公開されない。
場合によっては調査結果を当事者に対しても明らかにせず判断のための資料とすることがあり得る。
but
民訴手続では、訴訟資料を当事者に秘匿したまま判決を下すことは許されない。
  ■「審判物」概念 
    家事審判手続きは非訟手続であり、「訴訟物」と同じような意味での「審判物」概念が成立しないのは当然。

@職権によりまたは家事調停手続から移行して審判手続が開始されうる⇒「申立てにより審判物を特定する」ことができない。
A非訟的審判事項である甲類審判事項はもとより、争訟的審判事項である乙類審判事項でも、家庭裁判所の「後見的な判断」が期待されている。
but
「枠組み」としての「審判物」概念は存在。
  ■審判の効力 
  ●形式的確定力 
民事訴訟においては、終局判決が上訴によって取り消される余地がなくなると、判決は確定し、訴訟は終了する(=形式的確定力)。
甲類で即時抗告が認められない審判⇒その審判をなした家庭裁判所が、これを不当だと認めるときは、取消し・変更をすることができる⇒形式的確定力が生じない。
即時抗告が許される審判⇒即時抗告期間の経過、即時抗告権者全員の放棄、即時抗告期間経過後の即時抗告の取下げ、抗告審の裁判の確定⇒形式的効力が生じ、この手続内で取消し変更ができなくなる。
  ●形成力 
  ●執行力 
  ■既判力(実質的確定力) 
  既判力:
原則として判決主文の判断(訴訟物)に対して生じ、
実質的機能としては、後訴が提起されたときに作用。 
当事者は既判力の生じた判断に反する主張や証拠の申し出をすることはできず、裁判所は既判力の生じた判断を前提として判決しなければならない。
  「既判力」は形式的確定力を前提とする概念。⇒いつでも取消し・変更のできる家事審判(=即時抗告のできない甲類審判) については、既判力を検討する前提が存在しない。
問題は、即時抗告のできる甲類審判および乙類審判が確定した場合。
  ●即時抗告のできる甲類審判 
後見開始の審判や失踪を宣告する審判が出され確定⇒審判が取り消されるまで何人もこれを争うことができない(対世的効力。)。
but
これは、既判力の作用ではなく、裁判所が重要な身分行為の許可・認証をし、または権利義務関係の「基盤」を整備するという国家の後見的な役割を担った形式的審判に伴う効果。
  ●乙類審判: 
@遺産分割の審判確定⇒紛争を蒸し返すことはできない
A養育料支払の審判⇒審判確定後でも事情変更により審判の取消し、変更がなされうる(民法880条)

@は遺産をどのように分割するかという過去の事象への対応であるのに対し、
Aは刻々と変化を受ける現在および将来の問題
民法880条は、民事訴訟における「基準時後の事情は、判決確定後も主張することができる」ことと同様の考え方に基づくもの。
民法 第880条(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
遺産分割の審判確定後、知られざる相続人が出現し(ex.被相続人の死後、被相続人を父とする認知請求訴訟が認容されたケース等)、または相続財産の範囲が変更(ex.相続財産の一部であるとされた物につき、第三者から自己の所有に属するものであるとの訴訟が提起され、請求が認容された場合)など前提事実に変更
⇒少なくともその限りで、審判の効力は失われる。
「蒸し返し禁止」の効果は、系勢力の効果として説明し得る。
多数説は、家事審判は非訟事件の裁判として、裁判所が後見的立場から合目的的に判断を下すことを根拠として、家事審判の既判力を消極に解している。


■家事事件手続法(新法)
施行 平成23年5月19日に成立、同年5月25日に公布
平成25年1月1日施行
経緯 家庭裁判所における家事審判及び家事調停の手続を定める法律。
家庭裁判所における家事審判及び家事調停は非訟事件家事事件に特有の手続以外について、非訟事件手続法の規定を広く準用。
社会の変化に伴い、家庭をめぐる紛争が複雑化・多様化した⇒家事審判法及び家事審判規則等の規定では、こうしは社会状況に適合又は対応できない部分が生じるに至った
非訟事件手続法の改正等に伴い、家事審判を法を見直すに当たっては、社会状況の変化等に対応するために、改めて手続法として備えるべき基本的な事項等を整備することで、
@家事事件の手続をより明確で利用しやすいものとするとともに(手続の透明性)
A当事者等が主体的に主張や資料の提出をすることができるようにして(当事者権の保障)
B裁判所における審判や調停の適正さを担保し、それとともに当事者等の納得を得られるようにすることが要請。
家庭をめぐる紛争を扱う手続のうち、訴訟手続については、平成15年に人事訴訟法が制定され、現代化。


■調停調書の更正決定の申立
規定 家事事件手続法269条(調停調書の更正決定)
調停調書に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。

2更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。
3更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4第一項の申立てを不適法として却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
平成25年1月1日より前は、民訴法の類推
民訴法 第257条(更正決定)
判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2 更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
解説 明白な誤り:
調停調書自体の記載内容や文言の前後から判断して、あるいは調停事件記録を検討することによって、調書の表現に誤りがあることが誰の目から見ても疑問の余地がないという程度に客観的に明白であること。 
(判例タイムズ1100号)
@裁判所に顕著な場合
A経験則に照らして推認できる場合
B当事者の過失により生じた過誤による場合
C合意した内容、真意を的確に反映していない場合

家事調停(新法:家事事件手続法)
分類   ■別表第2調停(家事事件手続法別表第2に掲げる事項についての調停)
養育費調停、遺産分割調停など、多くの調停。
審判と調停のいずれも申し立てることができるもの(家手39,244)。
but
審判が申立てられた場合、調停による解決が望ましいとして、当事者の意見を聞いた上で(家手271T)、家事調停に付されることが多い(運用上の調停前置)。
調停不成立で終了⇒審判に移行(272W)
■特殊調停
離縁・離婚を除く人事訴訟事項に関する調停事件。
まず調停申立て(調停前置、257T)、成立に至らず終了⇒人事訴訟を提起できる。
(審判に移行しないし、審判申立ては不可)
ex.認知調停、親子関係不存在調停など
当事者が任意に処分することができない事項⇒合意が整っても調停を成立させることができず(268W)、合意に相当する審判(277T)がされる。
■一般調停
上記以外の「家庭に関する事件」(244)に係る調停。
審判の申立てはできない。
ex.離婚調停、離縁調停、遺留分減殺調停など
一般調停事件:親族又はこれに準ずる者の間の紛争で、人間関係調整の余地があるもの(通説)。
その外延は明確ではなく、親族間の貸金など、民事調停と競合的に管轄を有する事件もある。
およそ家事事件といえない場合⇒職権で、管轄権のある地方裁判所に移送(246T)。
民事調停と競合的に管轄を有する場合、職権で、地方裁判所等に移送することができる(246UV)。
まず調停申立て(調停前置、257T)、成立に至らず終了⇒人事訴訟(離縁・離婚の場合)又は民事訴訟を提起できる。
(審判に移行しないし、審判申立ては不可)
申立て   ■書面による申立て 
家事事件手続法 第255条(家事調停の申立て)
家事調停の申立ては、申立書(次項及び次条において「家事調停の申立書」という。)を家庭裁判所に提出してしなければならない。
  ■申立書の記載事項 
規定 第255条(家事調停の申立て)
2 家事調停の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 申立ての趣旨及び理由

4 第四十九条第三項から第六項まで及び第五十条(第一項ただし書を除く。)の規定は、家事調停の申立てについて準用する。この場合において、第四十九条第四項中「第二項」とあるのは、「第二百五十五条第二項」と読み替えるものとする。
第49条(申立ての方式等)
3 申立人は、二以上の事項について審判を求める場合において、これらの事項についての家事審判の手続が同種であり、これらの事項が同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、一の申立てにより求めることができる
4 家事審判の申立書が第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い家事審判の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。
5 前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、家事審判の申立書を却下しなければならない。
6 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
第50条(申立ての変更)
申立人は、申立ての基礎に変更がない限り申立ての趣旨又は理由を変更することができる。ただし、第七十一条(第百八十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定により審理を終結した後は、この限りでない。
2 申立ての趣旨又は理由の変更は、家事審判の手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない
3 家庭裁判所は、申立ての趣旨又は理由の変更が不適法であるときは、その変更を許さない旨の裁判をしなければならない。
4 申立ての趣旨又は理由の変更により家事審判の手続が著しく遅滞することとなるときは、家庭裁判所は、その変更を許さない旨の裁判をすることができる。
@当事者及び法定代理人
A申立ての趣旨及び理由
を記載する必要。
「申立ての趣旨」と「申立ての理由」が必ずしも明確に区別されていないとしても、両社が相まって調停を求める事項が特定されていれば、申立書に不備はない。
■    ■管轄・移送 
●基礎知識
@相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
A当事者が合意で定める家庭裁判所
(245T)
  ●管轄違いの場合 
説明 原則:申立て又は職権で、管轄裁判所に移送(9T)
事件処理のため特に必要あり⇒当事者及び利害関係人の意見を聞いた上で(規8TU)、自庁処理をしたり、管轄のない裁判所に移送できる(9V)。
移送の裁判(又は移送申立てを却下する裁判)に対する不服申立ては、1週間以内の即時抗告(9V)であり、これにより、移送の裁判は執行が停止(9W)。
規定 法 第9条(移送等)
裁判所は、家事事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。
規則 第8条(移送等における取扱い・法第九条)
家庭裁判所は、法第九条第一項ただし書の規定による裁判(移送の裁判を除く。)をするときは、当事者及び利害関係参加人の意見を聴かなければならない
2 家庭裁判所は、法第九条第一項ただし書又は第二項の規定による移送の裁判をするときは、当事者及び利害関係参加人の意見を聴くことができる。
  ●裁量移送 
説明 手続の遅滞を避けるため必要があるときその他相当の認めるとき、職権で、管轄のある別の家庭裁判所に移送できる(9V@)。
事件処理のため特に必要がある⇒管轄のない裁判所に移送できる(9UA)。
移送の裁判(又は移送申立てを却下する裁判)に対する不服申立ては、1週間以内の即時抗告(9V)であり、これにより、移送の裁判は執行が停止(9W)。
規定 法 第9条(移送等)
2 家庭裁判所は、家事事件がその管轄に属する場合においても、次の各号に掲げる事由があるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を当該各号に定める家庭裁判所に移送することができる。
一 家事事件の手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるとき 第五条の規定により管轄権を有しないこととされた家庭裁判所
二 事件を処理するために特に必要があると認めるとき 前号の家庭裁判所以外の家庭裁判所
■  ■申立ての併合 
2つ以上の時効について調停を申し立てる場合に、これらの事項の手続が同種であり、これらの時効が同一の事実上及び法律上の原因の基づくときは、1つの申立てで数個の調停を申し立てることが可能(申立ての併合)。(法255条4項、49条3項)

数個の関連する事件を同一の手続で進めることにより手続の重複等を避けることができ、手続経済にも資すると考えられる。
but
いずれの申立てについて当該裁判所に管轄がある必要。
(併合管轄は認められていない)
  ■申立ての変更 
●  申立ての基礎に変更がない限り、申立の趣旨又は理由を変更することもできる(法255条4項、50条)。 
申立ての基礎に変更がない:
調停を求める事項に係る権利関係の基礎となる事実が共通し、変更後もそれまでの資料を調停の手続に利用することができる場合。
申立ての変更に規律を儲ける趣旨:
家事調停の対象を明確にすることにより、審判に移行した場合にその対象が不明確になり、混乱することを防ぎ、また、除斥期間・時効期間のある事件について申立ての時期を明らかにしておくこと。
●  家事事件の申立てには、厳密な意味での拘束力があるわけではなく、申立の趣旨については、その幅が比較的にゆるく、広いものと解されている。
申立ての範囲内で申立ての趣旨や理由を変更する場合には、申立ての変更の必要はない。
ex.養育費の請求において、申立の趣旨に金額を明示していた場合、その金額を超えたからといって申立ての趣旨の変更が必要となるものでhなあい。
   

審判前の保全処分(新法:家事事件手続法)
審判前の保全処分  制度  規定 家事事件手続法 第105条(審判前の保全処分)
本案の家事審判事件(家事審判事件に係る事項について家事調停の申立てがあった場合にあっては、その家事調停事件)が係属する家庭裁判所は、この法律の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずる審判をすることができる。
2 本案の家事審判事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所が、前項の審判に代わる裁判をする。
本案の家事審判事件(家事審判事件に係る事項について家事調停の申立てがあった場合にあっては、その家事調停事件)が係属する家庭裁判所は、この法律の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の監理者の選任その他の必要な保全処分を命ずる審判(審判前の保全処分)をすることができる(法105条1項)。
本案の家事審判事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所(同条2項)。
民事事件の保全処分において必要となる被保全権利の存在の蓋然性は、家事事件の保全処分においては、権利義務形成の蓋然性がこれに当たる。
家事事件手続法:家事審判事件に係る事項について家事調停の申立てがあった場合にも、保全処分を命ずることができる。

@家事事件手続法の別表第2事件の調停の申立てがなされた場合、調停が不成立になれば当然に審判に移行。
A調停手続と審判手続は密接に関連し、かつ、連続している。
疎明  規定 家事事件手続法  第106条(審判前の保全処分の申立て等)
審判前の保全処分(前条第一項の審判及び同条第二項の審判に代わる裁判をいう。以下同じ。)の申立ては、その趣旨及び保全処分を求める事由を明らかにしてしなければならない。
2 審判前の保全処分の申立人は、保全処分を求める事由を疎明しなければならない。
3 家庭裁判所(前条第二項の場合にあっては、高等裁判所)は、審判前の保全処分の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、事実の調査及び証拠調べをすることができる。
4 審判前の保全処分の申立ては、審判前の保全処分があった後であっても、その全部又は一部を取り下げることができる。
その趣旨及び保全処分を求める事由を明らかにする必要。(法106条1項) 
疎明で足りる。(法106条2項)
←本案の審判がされるまでの暫定的なもの。
必要があると認めるときは、職権で、事実の調査及び証拠調べをすることができる。(法106条3項)
     
陳述の聴取  
記録の閲覧等  
審判  
即時抗告 規定 家事審判法 第110条(即時抗告)
審判前の保全処分(第百五条第二項の審判に代わる裁判を除く。次項において同じ。)の申立人は、申立てを却下する審判に対し、即時抗告をすることができる。ただし、次に掲げる保全処分の申立てを却下する審判については、この限りでない。
一 第百二十六条第一項(第百三十四条第一項及び第百四十三条第一項において準用する場合を含む。)、第百五十八条第一項(第二百四十二条第三項において準用する場合を含む。)及び第二百条第一項の規定による財産の管理者の選任又は財産の管理等に関する指示の保全処分
二 第百二十七条第一項(第百三十五条、第百四十四条、第百八十一条及び第二百二十五条第一項において準用する場合を含む。)、第百六十六条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)、第百七十四条第一項(第二百四十二条第三項において準用する場合を含む。)、第百七十五条第三項及び第二百十五条第一項の規定による職務代行者の選任の保全処分
2 本案の家事審判の申立てについての審判(申立てを却下する審判を除く。)に対し即時抗告をすることができる者は、審判前の保全処分(前項各号に掲げる保全処分を命ずる審判を除く。)に対し、即時抗告をすることができる。
  審判前の保全処分は、第39条(審判事項)に定める審判⇒審判前の保全処分に対する不服申立ては、基本的に、審判に対する不服申立ての規律に従う⇒特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる(85条1項)。
本条は、85条1項の「特別の定め」となる。
即時抗告(家事手続法110条)(マニュアル5(4版)p42、p46)
却下に対して申立人
認容に対し、本案審判の即時抗告権者
審判前の保全処分は、第39条に定める審判。
抗告期間:2週間(p49)
即時抗告に伴う執行停止  
民事保全法の準用 規定 家事事件手続法 第115条(民事保全法の準用)
民事保全法第四条の規定は審判前の保全処分に関する手続における担保について、同法第十四条、第十五条及び第二十条から第二十四条まで(同法第二十三条第四項を除く。)の規定は審判前の保全処分について、同法第三十三条の規定は審判前の保全処分の取消しの裁判について、同法第三十四条の規定は第百十二条第一項の審判前の保全処分の取消しの審判について準用する。
民事保全法 第23条(仮処分命令の必要性等) 
係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
調書の作成  
婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分 
規定 家事事件手続法 第157条(婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分)
家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。以下この条及び次条において同じ。)は、次に掲げる事項についての審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、当該事項についての審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分
二 婚姻費用の分担に関する処分
三 子の監護に関する処分
四 財産の分与に関する処分
2 家庭裁判所は、前項第三号に掲げる事項について仮の地位を定める仮処分(子の監護に要する費用の分担に関する仮処分を除く。)を命ずる場合には、第百七条の規定により審判を受ける者となるべき者の陳述を聴くほか、子(十五歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。ただし、子の陳述を聴く手続を経ることにより保全処分の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
   

夫婦の氏 夫婦同氏の原則 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。(民法750条
夫婦一方の死亡の場合 生存配偶者の氏に影響はしないが、婚姻前の氏に復することもできる。(民法751条1項) 
離婚の場合 配偶者の氏を称していた方は元の氏に戻る。(767@)
離婚の日から3か月以内に届け出ることにより、婚姻中の氏を称することができる。 (767A)
子の氏 親子同氏の原則 嫡出子は父母の氏を称する(790@)
但し、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際の父母の氏を称する。(790@但書)
非嫡出子は母の氏を称する。(790A) 
養子は養親の氏を称する。(810)
但し、婚姻の際に氏を定めた者(750)については、その氏を称すべき間は、810条は適用されない。(810但書)
子の氏の変更 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て変更できる。(791@)
<子と親の氏が異なる場面>
・父母の離婚による復氏(767@)
・父母の一方の死亡による生存配偶者の復氏(751@)
・父又は母の再婚(750)
・父母の養子縁組(810)
・父による認知(779)
など
父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異人する場合には、父母の婚姻中に限り、家庭裁判所の許可を得ずに子の氏を変更できる。(791A)
氏名の変更  氏の変更 「やむを得ない事由」による氏の変更が、家庭裁判所の許可により可能。 (戸籍法107@)
「やむを得ない事由」 珍奇・難解・難読な氏(狼→坂田、赤鬼→赤木、井戸端→古屋など)
元暴力団員として氏が広く知られている者につき、本人の更生に必要と認められる事情があるとして氏の変更を許可した例(宮崎家審H8.8.5)
名の変更 「正当な事由」があれば家庭裁判所の許可を得て変更できる。(戸籍法107の2)
「正当な事由」 珍奇・難解・難読。 (ウン子→多喜子、めんた→ミチ子、メシ→光子、ウシ→松枝など)
混同の恐れや「営業上の目的」等からなされる「襲名」

墓地・埋葬関係
(墓地、埋葬等に関する法律)
埋葬・火葬の許可制度 火葬 死体を火葬する場合、死亡届を受理した市町村長の許可を受ける。(法5)
市町村長は火葬を許可した場合には、火葬許可証を交付しなければならない。(法8)
遺骨の埋蔵・収蔵 火葬された遺骨を墓地に埋蔵させたり納骨堂に収蔵する場合には、墓地、納骨堂管理者が火葬許可証を受理することによって行う。
改葬 他の墓地に埋蔵されたり、他の納骨堂に収蔵されている遺骨を他の墓地や納骨堂に移す場合には、その遺骨が存在する地の市町村長の許可を受けなければならず(法5)、許可された場合には改葬許可証が交付される。(法8)
分骨 遺骨の帰属  @慣習法上定まった喪主たるものが原始的に取得する。
A民法897条の祭具に準ずるものとして、祭祀主催者が遺骨の所有権を承継取得する。 
分骨の手続 他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵または収蔵する場合には、墓地等の管理者から埋蔵または収蔵の事実を証する書面の交付を受け、他の墓地等に埋蔵または収蔵するときに、墓地等の管理者にその書面を提出する。(規則5条) 
火葬場で分骨する場合も、火葬場の管理者から火葬の事実を証する書面の交付を受け、墓地等に埋蔵または収蔵するときに、墓地等の管理者にその書面を提出する。
散骨・自然葬  自然葬とは  火葬したあとの遺骨を海や山などに戻して、遺骨を自然に帰す(還る)、葬送の一方法。 
方法 火葬した遺骨を更にミリ単位に細かく砕き、粉末状にしたうえで、海では10キロ以上岸からはなれた海域に船からまたは飛行機から、山では持ち主の許可のある山の目印のある大木などの下に、散骨する方法で行われる。 
行政の見解 厚生省「散骨は墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)の予想した葬法ではない。」
法務省「節度をもって行われれば刑法の遺骨遺棄罪には当たらない。」 

手続関係 
人事訴訟の意味 規定 人事訴訟法 第2条(定義)
この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に係る訴訟をいう。
一 婚姻の無効及び取消しの訴え、離婚の訴え、協議上の離婚の無効及び取消しの訴え並びに婚姻関係の存否の確認の訴え
二 嫡出否認の訴え、認知の訴え、認知の無効及び取消しの訴え、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴え並びに実親子関係の存否の確認の訴え
三 養子縁組の無効及び取消しの訴え、離縁の訴え、協議上の離縁の無効及び取消しの訴え並びに養親子関係の存否の確認の訴え
解釈 「その他の身分関係」の例:
民法 第728条(離婚等による姻族関係の終了)
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

夫婦、親子、養親子関係以外の身分関係
夫婦、親子、養親子関係以外の身分関係の確認訴訟(ex.兄弟関係、叔父甥関係の確認訴訟)も人事訴訟に含まれる。(判例の多数)
人事訴訟の管轄 人事に関する訴え 人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。(法4)
調停相手方の住所地に申立て訴訟原告の住所地に提起するということで、調停の裁判所と訴訟の裁判所が異なる家庭裁判所になる場合が生じる。
but
人事訴訟の管轄裁判所を調停と同一のものとする必要性は絶対的なものではないし、調停・訴訟それぞれの自庁処理の規定の柔軟な運用で解決される問題。
人事訴訟に関する損害賠償場法請求事件 人事訴訟一般について「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害」の賠償請求訴訟については、人事訴訟と併合されることを要件として、家庭裁判所の事物管轄を認めた。
当初からの併合提起は法17@、人事訴訟が先行して係属している家庭裁判所に損害賠償請求訴訟を追加的に提起する場合は法17A。
損害賠償請求訴訟が潜行して地方裁判所に提起された(事物管轄は地裁のみ)後に、人事訴訟(事物管轄は家裁のみ)が提起された場合、人事訴訟の係属裁判所への移送と併合を認める(法8)。
人事訴訟に関する保全命令事件 人事訴訟の附帯事項については、家裁の専属管轄(法30@)
「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害」の賠償請求については、家裁についても併合管轄を認める。(法30A)
人事訴訟法 第30条(保全命令事件の管轄の特例)
人事訴訟を本案とする保全命令事件は、民事保全法(平成元年法律第九十一号)第十二条第一項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する家庭裁判所が管轄する。
2 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とを一の訴えですることができる場合には、当該損害の賠償に関する請求に係る保全命令の申立ては、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する家庭裁判所にもすることができる。
併合請求の管轄 民訴法38条前段に定める共同訴訟の要件を満たす場合に限り、数人からの又は数人に対する1つの人事に関する訴えで数個の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする数個の請求をする場合には、そのうちの1つの請求について管轄権を有する家庭裁判所に訴訟を提起できる。(法5条)
民訴法 第38条(共同訴訟の要件) 
訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。
調停が係属していた家庭裁判所の自庁処理 人事訴訟の全部または一部が管轄に属さない場合においても、その事件について調停がその家庭裁判所に係属していたときであって、調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、申立て又は職権で自ら審理・裁判ができる。(法6条)
自庁処理の申立ては、申立ての理由を明らかにし(規則3A)、期日においてする場合を除き、書面でしなければならない(規則3@)。
自庁処理の決定をするときは、家庭裁判所は、当事者の意見を聴かなくてはならない。(規則4)
遅滞を避けるための移送 その管轄に属する訴訟について、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立て又は職権で訴訟の全部または一部を他の管轄裁判所に移送することができる。(法7)
移送の申立てがあったときは、家庭裁判所は相手方の意見を聴いて決定し(規則5@)、職権で移送の決定をするときは当事者の意見を聴くことができる。(規則5A)
婚姻関係訴訟の特例 婚姻の取消又は離婚の訴えの当事者間に未成年の子がある場合には、上記の自庁処理の規定及び遅滞を避けるための移送の規定の適用にあたって子の住所又は居所を考慮しなければならない。(法3@)
家事事件の類型 審判事件(家審9@) 家事審判の対象となる事項は、家事審判法その他の法律によって、制限的に列挙され、国家に対して権利の形成保護を求めるものであり、主として人の身分関係の創設、変更、消滅事項がこれに当たる。
←個人に自由処分にゆだねると法律秩序が乱れる。
甲類事件 審判手続のみによって審理される事件類型。
子の氏変更、相続放棄、保護者選任・順位変更、特別代理人選任、名の変更など
乙類事件 元来争訟的色彩を有するが、当事者の合意を基礎として処理できる事項。
通常まず調停が行われ、調停が成立しないときに、審判手続が開始される事件類型
子の監護に関する処分(養育費・面接交渉など)、親権者指定変更、遺産分割、婚姻費用分担、扶養など
家事調停事件 説明 調停事件は、
@家事事件手続法別表第2に掲げる事項に関する調停(別表第2調停)
A特殊調停
B一般調停
とに分かれている。
@別表第2調停には、親権者の変更、養育料の請求、婚姻費用の分担、遺産分割などがある。

これらの事件は当事者間に争いのある事件であることから、第一次的には当事者間の話合いによる自主的な解決が期待され、主に調停によって扱われるが、審判として扱うこともできる。

これらの事件が、最初に調停として申し立てられ、話合いがつかずに調停が成立しなかった場合には、審判手続に移り、審判によって結論が示されることになる。
また、当事者が審判を申し立てても、裁判官がまず話合いによって解決を図る方がよいと判断した場合には、調停による解決を試みることもできることになっています。
A特殊調停には、協議離婚の無効確認、親子関係の不存在確認、嫡出否認、認知などがある。
これらは、本来人事訴訟で解決すべき事項とされていますが、当事者間に争いがない場合には、当事者が合意した内容について、調停の成立に代えて、合意に相当する審判が行われます。
B一般調停とは,家庭に関する紛争等の事件のうち前記(1)と(2)を除いた事件をいう。
離婚や夫婦関係の円満調整などが代表的な例としてあげられる。
一般調停事件 民事訴訟で処理されるべき事件
少なくとも家庭に関する身分上、財産上の事件はすべてこの対象となる。
内容が訴訟事項であるから、成立した調停は確定判決と同一の効力を有する。(法21@)
調停不成立の場合に家裁がする調停に代わる審判(法24)に対しては、当事者、利害関係人から異議の申立てをsるうことによって審判の効力は失効する。
異議の申立てがなく、あるいは異議の申立てが却下された場合は、この審判は、確定判決と同一の効力を有する。(法25B)
乙類調停事件 乙類審判事件を調停手続によって処理するもの。(法11条)
調停成立⇒当初の審判事件は当然に終了する。
調停不成立⇒調停申立てのときに審判の申立てがあったものとみなされる。(法26@)
成立した調停は確定判決とどういつの効力を有する。
特殊調停事件 本来人事訴訟事件となるもののうち、個人の自由処分を許さない事件(婚姻の無効・取消し、協議離婚無効、養子縁組無効、親子関係不存在確認、嫡出否認など)を対象とし、調停手続を利用することによって処理する特殊な制度。
申立てに対応する審判を受けることの合意(いわゆる人訴権の放棄)があり、その基礎事実関係の有無について争いのないときは、家裁が必要な調査をしたうえ、家事調停委員の意見を聴いて正当と認める場合に、初めて合意に相当する審判をすることができる。(法23)
人訴事項であるから、上記審判に対しては一般調停事件の審判(法24)におけると同様に、利害関係人から異議の申立てが認められており(法25、規則139,140)、異議の申立てがないか、又は異議申立てが却下されたとき、その審判は確定判決とどういつの効力を有する。(法25B)
家事調停(家事審判法) 規定 第17条〔調停事件の範囲〕
家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。但し、第九条第一項甲類に規定する審判事件については、この限りでない。
第18条〔調停前置主義〕
前条の規定により調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をしなければならない。
A前項の事件について調停の申立をすることなく訴を提起した場合には、裁判所は、その事件を家庭裁判所の調停に付しなければならない。但し、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
民事調停との比較 家事調停  民事調停 
調停の対象となる身分関係はそれ自体非合理的な人間関係であるため、紛争の原因も一様ではなく、それを法規によって画一的に規律し処理することはできない→裁量による具体的、妥当な解決を図ることになる。 その対象である財産関係が健全なる経済生活を維持するためにあるから、それを規律する法規は細部にわたって厳格に規定され、画一的な解決がなされる。
対象 家庭に関するあらゆる事件(法17条) 
調停前置主義 家庭で発生するあらゆる事件を取り扱うから、訴訟で解決すべき事件でも家庭に原因する紛争であれば、身分上、財産上を問わずすべての紛争について、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない。(法18@)
管轄 相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所(家審規則129@)
←相手方の出廷を確保するという要請。
種類 @一般調停事件:家庭に関する身分上、財産上の事件はすべてこの対象となり、親子、兄弟、親族間の紛争や、夫婦の離婚、養親子の離縁、その他家庭に関する紛争を民事訴訟手続きや人事訴訟手続によらないで平和裡に妥当な解決を図ろうとするもの。
A乙類調停事件:乙類審判事件を調停手続によって処理しているもの。(法11条)
B特殊調整事件:本来人事訴訟事件となるもののうち、個人の自由処分を許さない事件(婚姻の無効・取消、協議離婚無効、養子縁組無効、親子関係不存在確認、嫡出子否認など)を対象とし、調停手続を利用することによって処理する特殊な制度。

執行関係 
定期金債権の差押の特例 期限到来前の差押えの許容 「債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、・・・当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。」(民執151の2)

特例となる請求債権
@夫婦間の協力扶助義務(民法752)
A婚姻費用分担義務(民法760)
Bこの監護費用分担義務(民法766等)
C扶養義務(民法877〜880)
差押禁止債権の範囲の特例 養育費等金銭債権を請求する場合、給料債権などについて差押えが禁止される範囲を、その支払期に受けるべき給付の「4分の3」に相当する部分から「2分の1」に相当する部分に縮減。(民執152B)
請求異議の訴え 規定 民事執行法 第35条(請求異議の訴え)
債務名義(第二十二条第二号、第三号の二又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3 第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。
概要 判決その他の債務名義において確定した請求権が、債務名義の成立後において、弁済や期限の猶予をうるとかの事由により、債務名義の表示と実体関係が一致しないことを理由として、債務名義の執行力を排除し、執行を阻止する訴え。
管轄 債務名義が調停調書の場合、当該調停をした家庭裁判所。
審判の場合、第一審裁判所。
審理 原則として、一般の財産上の訴え及び判決手続の例による。
請求意義の訴えがあっても、強制執行は続行を妨げられない。

債務者保護の見地から、裁判所は請求異議の訴え後に申立てにより、強制執行の停止について仮の処分を命じることができる。
異議の認容⇒当該債務名義に基づく執行を許さない旨の判決⇒債務名義の執行力を失わせる。
仮執行の宣言をしなければならない。(民執37@)
これに対しては不服の申立ては許されない。(民執37A)
強制執行の停止の申立て 規定 民執法 第36条(執行文付与に対する異議の訴え等に係る執行停止の裁判)
執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立てにより、終局判決において次条第一項の裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てさせて強制執行の続行を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
2 前項の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
3 第一項に規定する事由がある場合において、急迫の事情があるときは、執行裁判所は、申立てにより、同項の規定による裁判の正本を提出すべき期間を定めて、同項に規定する処分を命ずることができる。この裁判は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起前においても、することができる。
4 前項の規定により定められた期間を経過したとき、又はその期間内に第一項の規定による裁判が執行裁判所若しくは執行官に提出されたときは、前項の裁判は、その効力を失う。
5 第一項又は第三項の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
概要 請求意義等強制執行に対する異議の訴えを提起しただけでは、債務者は、強制執行の進行を妨げない。but
債務者の異議に法律上理由があり、主張事実について疎明があったときは、裁判所は、申立てに基づき終局判決に至るまでの間、強制執行についての仮の処分をすることができる。
管轄 受訴裁判所(急迫の場合は執行裁判所にも申し立てられる。)
審理 次のいずれかの仮の処分を命じることができる。(民執36@)
@担保を立てさせ、又は立てさせないで執行の一時停止を命ずる。
A債権者に担保を立てさせて、強制執行の続行を命ずる。
B債務者に担保を立てさせて、既になした執行処分の取消しを命ずる。
終了後の手続き 執行機関は、債務者から強制執行停止決定の正本が提出されたときは、強制執行を停止する。(民執39条)