シンプラル法律事務所
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論点整理((家事審判法⇒)家事事件手続法関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)


新法下での管轄
規定 法 第4条(管轄が住所地により定まる場合の管轄権を有する家庭裁判所)
家事事件は、管轄が人の住所地により定まる場合において、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときはその居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属し、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときはその最後の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
法 第5条(優先管轄)
この法律の他の規定により二以上の家庭裁判所が管轄権を有するときは、家事事件は、先に申立てを受け、又は職権で手続を開始した家庭裁判所が管轄する。
法 第8条(管轄の標準時)
裁判所の管轄は、家事審判若しくは家事調停の申立てがあった時又は裁判所が職権で家事事件の手続を開始した時を標準として定める。
法 第245条(管轄等)
家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
法 第66条(合意管轄)
別表第二に掲げる事項についての審判事件は、この法律の他の規定により定める家庭裁判所のほか、当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
注意 離婚等の人事訴訟では合意管轄は認められていない。
各論  ■成年後見に関する審判事件(117条)
後見開始の審判事件:成年後見人となるべき者の住所地
成年後見に関する審判事件:後見開始の審判をした家庭裁判所
⇒成年後見に関する審判事件の管轄を集中させ、一元的に同一の家庭裁判所が扱うことができるようになる。
補佐(128条)、補助(136条)も同様。
■婚姻等に関する審判事件(法150条)
夫婦間の協力扶助に関する処分の審判事件:夫又は妻の住所地
夫婦財産契約による財産管理者の変更等の審判事件:夫又は妻の住所地
婚姻費用の分担に関する処分の審判事件:夫又は妻の住所地
財産分与に関する処分の審判事件:夫又は妻であった者の住所地

当事者間の公平や事案に応じた適正かつ迅速な紛争解決等の点から、相手方の住所地だけでなく新たに申立人の住所地を完kじゃ津数r家庭裁判所にも管轄が認められることになった。
子の監護に関する処分の審判事件:
子(父又は母を同じくする数人の子についての申立てに係るものにあっては、そのうちの1人)の住所地
離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者指定の審判事件:
所有者の住所地
■親権に関する審判事件(法167条)
子(父又は母を同じくする数人の子についての申立てに係るものにあっては、そのうちの1人)の住所地。
■扶養に関する審判事件(法182条)
扶養義務設定の審判事件:扶養義務者となるべき者の住所地
扶養義務設定の取消しの審判事件:扶養義務設定の審判をした過程裁判所
■遺産分割に関する審判事件(191条)
相続開始地。
遺産分割審判事件が継続している場合における寄与分を定める処分の審判事件は当該遺産分割審判事件が継続している裁判所。
■家事調停に関する手続(法245条)
相手方の住所地又は当事者が合意で定める家庭裁判所

家事事件手続法 
★家事事件手続の流れ 
規定 家事審判手続法 第244条(調停事項等)
家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。
■別表第二事件(家事審判の手続で完結する事件) 
審判申立⇒審判(73条)
調停はできない(244条)
■別表第二事件(家事調停が不成立になった場合には、家事審判に移行する事件)
調停申立⇒
A:調停成立(268条)
B:調停不成立⇒
b1:調停に代わる審判(284条)⇒
b11:異議なし⇒確定(287条)
b12:異議あり⇒
却下⇒確定(287条)
移行(286条7項)⇒審判
b2:審判へ移行(272条4項)
審判申立(付調停274条)⇒審判(73条)
■  ■人事訴訟法2条に規定する人事訴訟(離婚及び離縁の訴えを除く)をすることのできる事項についての事件 
■  ■離婚・離縁及び民事訴訟を提起することができる家庭に関する事件 
■その他の家庭に関する事件 
調停申立(244条)⇒成立(268条)か不成立
★家事調停手続 
■申立て ■申立て
家事調停の申立ては,書面によらなければならない(255 条1 項)。 
身体上の障害等により書面を作成することが困難な申立人については,裁判所職員が代筆し,申立人の署名押印を求める方法で申立書を作成する方法(準口頭申立て)が可能。
家事調停の申立書には,
@当事者及び法定代理人,
A申立ての趣旨及び理由(申立てを特定するのに必要な事実),
B「事件の実情」
を記載しなければならない(255 条2 項, 規則127 条・37 条1 項。なお規則1条参照)。
東京家庭裁判所のホームページには,既に新法に対応した申立書の定型書式及び事情説明書等(ワード・エクセルファイル)が掲載。
申立書の定型書式の当事者欄には手続代理人の記載欄は存在しないが,
申立書の「申立人(又は法定代理人など)の記名押印」欄に手続代理人の氏名を記名押印し,法律事務所の住所,電話番号,ファクシミリ番号や,複数の手続代理人が選任されており上記の欄に記載できない手続代理人の氏名や担当者の明示を「全ての申立てに共通の書式」中にある「申立人手続代理人等目録」に記載して,申立書に添付。
家事調停の申立てには,審判申立ての規定が準用される(255 条4 項)。

2 つ以上の事項についての調停を申し立てる場合に,これらの事項の手続が同種であり,これらの事項が同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは,一つの申立てで数個の調停を求めることが可能である(申立ての併合。49 条3 項)。
この場合,1 通の申立書で行うこともできる。
ただし,いずれの申立てについても当該裁判所に管轄があることが必要である。
申立ての基礎に変更がない限り,申立ての趣旨又は理由を変更することもできる(申立ての変更。50条)
■申立書の写しの送付 ■申立書の写しの送付
家事調停の申立書の写しは,原則として相手方に送付される(256 条1 項)

相手方に申立ての内容を了知させた上で手続を進めることが,相手方の適切な手続活動の現実と早期の紛争の解決という観点からは相当。
家事調停の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは,例外的に申立てがあったことを通知することで足りる(256 条1項ただし書)。
裁判所の定型書式は,手続代理人を選任しない本人でも,簡便に申立書を作成できることを前提として,裁判所及び相手方に必要な情報を簡潔に伝え,かつ,相手方が反論すべき事項を限定して,期日への出頭意欲を削がないよう慎重な配慮のもとに作成。

弁護士としても,第1 回調停期日を充実させ,手続を円滑に進行させるという観点から,基本的には定型書式を利用することが望まれる。
申立書を提出する際には,相手方人数分の写しを一緒に提出する必要がある(規則127 条・37条3 項・47 条参照)。
■申立書以外の提出書類     ■申立書以外の提出書類 
●その他の定型書式による書類の提出
東京家庭裁判所においては,申立書のほかに,次の書類の提出が求められている。これらの書面は,他方当事者には送付されないが,閲覧・謄写の対象となるものもある(閲覧・謄写の対象になるものとして@,A及びCがあげられる。
@「事情説明書」:申立人が申立書の内容に関連する事情を記載する書面。
夫婦関係調整,内縁関係調整を申し立てる場合に,夫婦間に未成年の子がいるときは,「子に関する事情説明書」も併せて提出する。
A「答弁書」:申立書に対する相手方の意見を記載する書面。
B「進行に関する照会回答書」:申立人・相手方が調停手続の進行に関する事情を記載する書面。
遺産分割調停に利用する書式と,その他の共通の書式がある。
C「連絡先等の届出書」:裁判所が申立人・相手方に書類を送付したり,連絡をする際の「書類の送付場所」や「平日昼間の連絡先」を記載する書面。
手続代理人が選任されている場合には,同代理人の法律事務所の住所や固定電話の番号を記載することになる。
D「非開示の希望に関する申出書」:裁判所に提出する資料等の中に秘匿を希望する事項があり,マスキング等では対応できない場合に,所定の必要事項を記載し,その申出書の下に当該書面をステープラーなどで付けて一体として提出する
「非開示の希望に関する申出書」は,秘匿を希望する書面を明確にするため申出書と一体として提出することが求められており,ファクシミリによる提出は,その一体性が確保できないため,非開示の希望があった書面として扱われないので注意する。
●  ●証拠書類等
申立ての理由及び事件の実情についての証拠書類があるときは,その写しを申立書に添付しなければならない(規則127 条・37 条2 項)。  
証拠書類(いわゆる「主張」を記載したものを除く。)については,調停においても調停委員が理解しやすいように,通常の民事訴訟と同様に,甲(申立人)・乙(相手方)などの符号,番号を付し,あわせて,証拠の標目や証明すべき内容等を記載した資料説明書を提出すべきである。  
また,東京家庭裁判所においては,当事者が提出する証拠書類等(資料説明書及び「主張」を記載した書面を含む。)のうち,養育費,婚姻費用,財産分与,遺産分割等のいわゆる経済事件及び合意に相当する審判事件は,事件の性質上,他方当事者にも,同じ証拠書類等を交付する取扱いをしている。
その他の事件においても他方当事者への交付を希望する証拠書類については,相手方用の写しを提出することになっている。
証拠資料等は,原則として,第1回調停期日前に,申立書の写しとともに相手方に送付することは予定されていないが,同期日の充実や早期の紛争解決等の観点から,できる限り申立書とともに提出することが望ましい。
準備が間に合わない場合には同期日に持参することでも足りよう。
●委任状(規則18条1項) 
従来から,家事調停(家事審判)において,「訴訟委任状」として,訴訟と同じものが提出されていることが少なくないようである。
形式的なことではあるが,調停・審判の手続は訴訟手続ではない。  
新法においては,家事事件(家事調停・審判)における手続上の行為を手続行為といい,本人に代わって手続行為を行うことが手続代理であり,手続代理人には委任に基づく代理人が含まれ,民事訴訟法の訴訟代理人に対応する。
手続代理人の代理権の範囲については,法24 条に規定されている。
同条2 項には,申立ての取下げなど特別の委任事項が定められており,これらの特別の委任事項は,あらかじめ委任状に記載しておくことが望ましい。  
 なお,委任状は,家事事件記録の一部として,閲覧・謄写の対象になる書類であり,他方当事者に依頼者の住所等を知らせたくない場合には,知られてもよい住所(申立書記載の住所)を記載する必要がある。
■家事事件記録の閲覧・謄写   ■家事事件記録の閲覧・謄写 
当事者又は利害関係を疎明した第三者は,家庭裁判所の許可を得て,家事調停事件の記録の閲覧・謄写を請求することができ(254 条1項),家庭裁判所は「相当と認めるとき」に許可することができるとされている(254条3項。ただし,合意に相当する審判事項についての調停事件を除く。)。
家事審判事件の当事者については,原則として記録の閲覧等を許可するものとしつつ,関係人のプライバシー等にも配慮した例外規定を設けている(47条3項・4項)。

別表第二に掲げる事項については,調停が不成立となり審判に移行し,調停で提出した資料が事実の調査の対象となった場合には,閲覧・謄写が原則として許可されることになることを念頭において調停段階における資料の提出を検討する必要がある。
許可・不許可の判断は,最終的には,個々の事案における裁判官の判断となる。
東京家庭裁判所では,提出書面のうち,他方当事者等による閲覧・謄写に差し支えがある書面(秘匿を希望する書面)については,あらかじめ書面を提出する際に前述の「非開示の希望に関する申出書」を一体として添付して提出することを求めている。
⇒その後,他方当事者等から閲覧・謄写許可申請があった際には,改めて提出者に開示の可否に関する意向聴取は行わない取扱いとなる。
手続代理人としては,書面の提出に当たって,この申出書を提出していなければ,閲覧等が許可される可能性が相当程度高いものと考え,真に秘匿しなければならない情報が記載されているか否かを検討した上で,そのような書面については,適時・適切に,「非開示の希望に関する申出書」を忘れずに提出しておく必要がある。
なお,非開示の希望に関する申出書を提出している書面について,閲覧等の申請を許可する場合には,不意打ち防止のため当該書面の提出者に対し,予め家庭裁判所からその旨の連絡がされる予定である。
■調停期日の運営     ■調停期日の運営
双方当事者本人立会いのもとでの手続説明
当事者本人(関係人)は,調停期日に出頭しなければならず,やむを得ない事由があるときは代理人を出頭させることができる(本人出頭主義。258条1項・51条2 項)
この取組みは,当事者の手続保障及び合意による紛争解決の実現のために,
@当事者が手続の透明性を実感することを通じて家庭裁判所への信頼を持つこと,
A当事者が,手続の内容,進行予定,他方当事者の主張や争点を的確に理解して,これを当事者双方及び裁判所の三者が共有すること等が不可欠であるとの考えに基づくもの。
そして,当事者本人による主体的な合意の形成を目的とする手続であることに照らし,手続代理人が選任されている場合であっても,代理人だけでなく双方本人の立会いが必要。
ただし,暴言を含むDV の被害を受けていたり,精神科や心療内科等に通院中であるなど,顔を合わせることについて具体的な支障が存する事案には,実施しない方針とする。
以上の東京家庭裁判所の取組みを踏まえ,手続代理人としては,この取組みの目的や趣旨を理解し,今後は,具体的な支障がない場合には,各期日の最初と最後には顔を合わせる機会もあることを前提として,法律相談の際や事件受任後の依頼者への説明には注意する必要がある。
他方,双方立会いについて具体的な支障があると判断した場合には,「進行に関する照会回答書」にその事情を記載して裁判所への注意喚起を促すことが必要である。
電話会議システム・テレビ会議システムによる手続への参加
当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは,家事調停の手続の期日を電話会議システム又はテレビ会議システムを利用してすることができる(258 条1 項・54 条)。いずれかの当事者が期日に出頭していることは必要ではない。
証拠調べについては,民事訴訟法204 条・210 条及び215 条の3 の規定による場合にのみ,テレビ会議システムに限り利用することができる(258 条1項・64 条1項)
「相当と認めるとき」には,利害関係参加人,代理人又は第三者が遠隔の地に居住している場合,身体上の障害,病気療養中等により調停を行う裁判所への出頭が困難な場合が考えられる。
電話会議システムの利用は,手続代理人がついている場合には,本人に弁護士事務所に来てもらって手続を進めることが予定されている。
本人が身体上の障害や病気療養中で法律事務所への出頭が困難な場合には,代理人が同席の上で,本人のいる施設で電話を受けることも一定の条件のもとに認められるべきものと考えられるので,家庭裁判所と協議する必要がある。
なお,民事訴訟では,携帯電話を利用しての電話会議が認められることもあるが,家事事件では手続の性質上望ましくないと考えられる。
テレビ会議システムについては,遠方当事者が最寄りのシステムを備えた裁判所に出頭して行うことが予定されている。  
一度電話会議システムの利用が認められた場合でも,当該期日に予定される手続行為(審理)の内容などによっては,続行期日における利用が認められないこともあるので,依頼者への説明には留意されたい。
●調停手続の進め方
家事事件手続法は,調停手続の運営について特別な規定は設けていない。
調停委員会が行う家事調停の手続は,調停委員会を組織する裁判官が指揮する(259 条)との従前と同様の規定が存するのみである。このことから新法施行後も調停手続の運営が変わることはないとの見解も聞かれる。しかし,新法の理念は,従来の家事調停のあり方についての反省と再検討を促す契機となるものであり,むしろ運用改善の機運は高いといえる。
■調停の成立・不成立     ■調停の成立・不成立
●調停の成立
調停において当事者間に合意が成立し,これを調書に記載したときは,調停が成立する(268 条1 項)。
調停を成立させる場面においても電話会議システム又はテレビ会議システムを利用することができる。ただし,離婚及び離縁の調停事件においては,認められない(268 条3 項)
調停条項案の書面による受諾( 270条)
当事者の一部の者が,調停の内容には納得しながら,遠隔地に居住しているなどの理由から裁判所に出頭することができず,調停の成立が遅れたり,調停を成立させることができない事態になることを避けるために,現に出頭することのできない当事者が調停条項案を受諾する旨の書面を提出することにより,調停を成立させることができる(270 条1項)。
ただし,離婚又は離縁の調停事件については,調停条項案の書面による受諾の方法により調停を成立させることはできない(270 条2 項)。
調停に代わる審判(284 条)
家庭裁判所は,調停が成立しない場合において相当と認めるときは,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を考慮して,職権で,事件の解決のため必要な審判をすることができる。
主として,頑迷な一方の当事者の意向により,又はわずかな意見の相違により,調停が成立しないような場合や,一方当事者が手続追行の意欲を失っているような場合に,当事者に異議申立ての機会を保障しつつ(286 条5 項),裁判所がそれまでに収集された資料に基づき,合理的かつ具体的な解決案を示すというものである。
民事調停における「調停に代わる決定」(いわゆる17 条決定)に相当する(民事調停法17 条)。
 当事者によっては,相手方と積極的に合意することまでは望まないものの,裁判所の判断には最終的にはあえて異議を述べない者も少なくない。
前述の調停に代わる決定については,その積極的な活用が検討されているところであり,調停に代わる審判でも同様の場合は少なくなく, 新法のもとで,その適用範囲が広がった(従前は一般調停のみであったが,新法では別表第二に掲げる事項についても調停に代わる審判ができることになった。)ことをも踏まえて,調停に代わる審判を積極的に活用することが望ましいとの意見もある。
手続代理人としても,事件解決の一つの手段として調停に代わる審判を活用することを検討し,場合によっては当事者本人の微妙な真意を調停委員会に伝えつつ,調停に代わる審判を促すことも必要になるものと思われる。
●調停の不成立 
当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は調停委員会が成立した合意が相当でないと認める場合には,調停は不成立となり,家事調停事件は終了する(272条1項)。
■審判前の保全処分 ■審判前の保全処分 
従前,審判前の保全処分の申立てをするには,本案の審判が係属していなければならないとされていたことから,保全処分の申立てが問題となる事案においては,調停の申立てではなく,審判を申し立てることが行われていた。
この点,新法においては,次の事項に関する家事調停の申立てがあったときにも審判前の保全処分の申立てをすることができることになった(105条1項)。
@夫婦間の協力扶助に関する処分(157条1項1号),
A婚姻費用の分担に関する処分(同項2号),
B子の監護に関する処分(同項3号),
C財産分与に関する処分(同項4号),
D親権者の指定又は変更(175条1項),
E扶養の順位の決定及びその決定の変更又は取消し(187条1号),
F扶養の程度又は方法についての決定及びその決定の変更又は取消し(同条2号),
G遺産の分割(200条2項)である。 
★家事審判手続 
■申立て    ■申立て 
別表第二事件についての審判事件では,合意管轄が認められる(66 条)。 
別表第二事件についての家事審判の申立書(49 条1項)の写しは,原則として相手方に送付される(67条1 項)。
送付されることを前提とした申立書の内容(記載事項は49 条2 項,規則37 条・1 条1 項)については,家事調停の申立書について述べたところと同様である。
■手続    ■手続 
●陳述聴取・審問
家庭裁判所は,別表第二事件の手続においては,原則として当事者の陳述を聴かなければならず,また,この陳述聴取は,当事者の申出があるときは,審問の期日において行わなければならない(68 条)。
ただし,年金分割事件では,当事者の審問の申出は認められていない(233 条3 項)。
この場合は書面照会による陳述聴取をすることになる。
調停手続が先行した場合に,調停が不成立となった後の審判手続では,具体的な事案に応じて,次の方法が採られるものと考えられる。
@ 改めて審判期日を指定し,審判期日において,審問して陳述を聴取する。
A 審判期日は開かずに,当事者双方に陳述聴取書を送付し,これに回答して返送してもらうことで陳述を聴取する。
B 当事者双方が出席している調停期日において,調停不成立後,直ちに審判期日を開いて,審問して陳述を聴取する。
裁判所が審問期日を開いて当事者の陳述を聴くという方法で事実の調査をするときは,他の当事者は,事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときを除き,当該期日に立ち会うことができる(69 条。審問の期日は原則として,当事者及び利害関係人に通知される(規則48 条)。)。
立会いを認めないためには,客観的に見て「事実の調査に支障を生ずるおそれがある」といえなければならない。
●調停事件記録についての事実の調査
家事事件手続法においては,調停事件記録が当然に審判の資料にならない。
⇒調停事件記録のうち,審判に必要な資料については,裁判所が事実の調査(56条1項)をすることにより審判事件の資料となる。  
当事者に事実の調査の結果(規則44条2項)について記録の閲覧・謄写をする機会を保障し,当該結果に適切な対応をとることができるように,家庭裁判所は,事実の調査をしたときは,特に必要がないと認める場合を除き,その旨を当事者に通知しなければならない(70 条)。
当事者は,この通知を受けて,適宜記録を閲覧・謄写して,必要な主張・反論を行う。
必ずしも,閲覧・謄写申請によらず,当事者間で必要な書面を交換することで足りる場合も多いであろう。 
●証拠調べ
証拠調べについては,当事者に申立権が認められる(56 条1 項(258 条1 項))。
そして,当事者も事実の調査及び証拠調べに協力するものとされる(56 条2項)。  
家事事件の手続における証拠調べ手続の規律は,基本的には,民事訴訟法の定める方法による(64条1項)。
ただし,公益性・後見性を実現するための職権探知主義,密行性等の家事事件手続の特質から,次のような特徴を有する。
@ 証拠調べ手続は,非公開で行われる(33条)。
A 職権証拠調べ(56 条1項(258 条1項))。
B 次の規定は準用されない
証明することを要しない事実についての民事訴訟法179 条,
集中証拠調べについての同法182 条,
参考人等の審尋に関する同法187 条,
証人尋問を当事者本人尋問に先行させることとする同法207 条2 項,
真実擬制について定める同法208 条・224 条(229条2項及び232条1項において準用する場合を含む)及び229 条4 項。
なお,真実擬制の代替措置として当事者が正当な理由なく出頭しないとき等には,過料の制裁を科すことができる(64条3 項・4 項・6 項,258 条1項)。
■審判  ■審判
家庭裁判所は,別表第二事件の審判手続においては,原則として,相当の猶予期間をおいて,審理を終結する日を定めなければならない(71条)。
また,家庭裁判所は,審理を終結したときは,審判をする日を定めなければならない(72 条)。「審判をする日」とは,当事者等に家庭裁判所が相当と認める方法で審判の告知をすることができるようになる日を指す。
■即時抗告 ■即時抗告
審判に対しては,特別の定めがある場合に限り,即時抗告をすることができる(85条1項)。
新法では,原審における当事者及び利害関係参加人(抗告人を除く)に対して原則として抗告状の写しが送付されることになった(88条)。
また,原審における当事者及び審判を受ける者(抗告人を除く)の陳述を聴かなければ原裁判所の審判を取り消すことができず,別表第二事件の審判については,原審判を取り消すか否かを問わず,原則として原審における当事者(抗告人を除く)の陳述を聴かなければならないものとして(89条),抗告人以外の当事者等に反論等の機会を保障している。
★その他実務上注意を要する改正事項等 
■      ■申立の取下げ
●家事調停
家事調停の申立ては,原則として調停事件が終了するまで,その全部又は一部を取り下げることができる(273 条1 項)。
例外として,合意に相当する審判がされた後の家事調停の申立ての取下げ(相手方の同意を要する。278 条)と,調停に代わる審判がされた後の家事調停の申立ての取下げ(取下げは認められない。285条1項)がある。  
なお,家事調停については,申立人が不熱心で話し合いが進まない場合などについては,調停をしないこととするか(271 条),不成立とすることになる(272条)。
●家事審判
家事審判の申立ては,審判があった後は,取り下げることができない(82条1項)。
以下の例外がある。
後見開始等の申立て(121条・133 条・142 条・180 条・221 条),並びに
遺言の確認の申立て及び遺言書の検認の申立て(212 条)
については,家庭裁判所の許可を得なければ,取り下げることができない。
財産の分与に関する処分の申立て及び遺産の分割の申立てについては,相手方が本案について書面を出し,又は家事審判の手続の期日において陳述をした後は,相手方の同意を得なければ,取下げの効力を生じない(153条・199 条)。  
上記を除く別表第二事件については,審判が確定するまでは取り下げることができる(審判後は相手方の同意が必要。82条2 項)。
手続の追行に不熱心な申立人への対策として,取下げの擬制の制度が定められている(83条)。
■当事者参加・利害関係参加 ■当事者参加・利害関係参加
新法では,「当事者となる資格を有する者」が,当事者として参加することができる当事者参加の制度(41条・258条1項)と,
裁判の結果により影響を受ける者等が参加することができる利害関係参加の制度(42条・258条1項)
を区別して設け,参加することができる者の範囲,参加した者の権限等を規定している。 
当事者参加については,遺産分割事件において,申立人又は相手方が相続人の地位を第三者に譲渡した場合などに活用することが考えられる。
利害関係人参加について詳細は,未成年の子に関連して,別途論じられる。
■高等裁判所における調停 ■高等裁判所における調停
家事調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している高等裁判所は,事件を調停に付した上で,その家事調停事件を自ら処理することができる(274 条1項及び3 項)
■専門委員の制度 ■専門委員の制度
 新しい非訟事件手続法においては,専門委員の制度が設けられているが(非訟事件手続法33 条),家事事件には設けられていない。
これは,家庭裁判所調査官制度を活用できることから必要性がないと考えたとされる。
これに対しては,遺産分割事件で,株価決定のために専門委員の意見を聞くことが有益な事案があるとの指摘もある。
 この点,調停委員会は,当該調停委員会を組織していない家事調停委員の専門的な知識経験に基づく意見を聴取することができるとされており(264 条・267 条2 項),限られた場合ではあるが,この制度を活用することも考えられよう。
もっとも,この制度は,旧法でも認められていたものであるが(家事審判規則136 条の2),実際に活用された例はあまり聞かれない。
★子どもの手続保障と子どもの手続代理人制度 
■子どもの手続保障    ■子どもの手続保障 
家事事件手続法(以下,「新法」という。)では,当事者の手続保障と併せて,子どもの手続保障という面でも重要な改正がなされている。 
第1 に,子どもの意思の把握に関する総則的規定が創設された(65 条・258 条1 項)。
家事審判規則では15 歳以上の子の陳述聴取の規定がいくつかの審判事件について個別的に置かれていたにすぎなかったが,新法では,子どもの意見表明権(子どもの権利条約第12 条)を踏まえ,家事審判・調停手続における子どもの意思の把握について総則的な規定が置かれた。また,裁判所は,そうして把握した子どもの意思を年齢及び発達の程度に応じて考慮する義務があるものとされた。なお,一定の事件については,15 歳以上の子どもの陳述聴取が義務づけられている(152 条2 項・169 条など)。 
第2 に,子どもは,受動的にその意思を聴取されるに止まらず,一定の事件においては,自ら家事事件の手続を行うことができることが定められた。
従来から,未成年者であっても,解釈上一定の身分行為に関する手続については自ら行うことができるものとされていたが,新法では,原則として子どもの手続行為能力を否定しつつも(17 条,民訴31 条)一定の事件について個別的な規定を設ける形で,これを正面から認めることとされた(なお,法文上は明記されていないが,意思能力が必要とされるのは当然の前提である。意思能力の有無は個別的に判断されるが,下限は小学校高学年程度ではないかと言われている)。
これにより,当該事件においては,子どもは,事件の申立て(但し,実体法上申立権限が付与されたもの),当事者参加(41 条),利害関係参加(42 条)を通じて,手続に関与することができる。
なお,利害関係参加には,子ども自身が任意に参加する場合(任意参加・42 条1 項,2項)と裁判所が職権で参加させる場合(職権参加・42 条3 項)がある。
第3 に,子どもの手続代理人制度の実現である。
意思能力のある子どもが一定の事件で手続上の行為を行う場合,裁判所は必要があるときは弁護士を子どもの手続代理人に選任することができるようになった(国選・23 条)。また,子ども自身が弁護士を手続代理人に選任することもできる(私選)。
子どもの手続代理人の第一義的役割は,子どもの意見表明を援助することであるが,それを通じた子どもの最善の利益の実現のための調整活動も期待されている。
■     ■子どもの手続代理人制度について
●  ●子の監護に関する処分(面会交流)の調停
○  【ケース1】
 父母が調停離婚し,A 男(小6・12 歳)の親権者は母と定められた。その後しばらくはA 男と父との面会が実施されていたが,次第にA 男が拒否するようになり,ここ3 か月は面会が実施されていない。そこで,父が母に対し,面会交流の調停を申し立てた。調停では,母は,A 男が父を嫌っているとして面会を拒絶し,父は,それは母がA 男を洗脳しているからだと反論し,激しく争っている。
○就任の契機
弁護士は,どのような経緯でA 男の手続代理人に就任するか。たとえば,以下のような場合が想定できる。
@ A 男は,調査官による意向調査において利害関係参加の説明を受け,自ら利害関係参加の申立てを行う。
裁判所はA 男の利害関係参加を認め(42 条2 項), 弁護士会の推薦した甲弁護士を職権でA 男の手続代理人に選任する(23 条2 項)。
A A 男が「子どもの人権110 番」に相談し,担当の甲弁護士から利害関係参加の説明を受け,甲弁護士の援助を得て,利害関係参加の申立て及び甲弁護士を手続代理人の候補者とする手続代理人選任の申立てを行う。裁判所はA 男の利害関係参加を認め(42 条2 項),甲弁護士をA 男の手続代理人に選任する(23条1 項)。
B 父がA 男の真意を聞きたいとして,裁判所に対し,A 男を職権で利害関係参加させ,手続代理人を選任するよう職権発動を促す。裁判所はA 男を職権で利害関係参加させ(42 条3
項),弁護士会の推薦した甲弁護士を職権でA男の手続代理人に選任する(23 条2 項)。
C 母がA 男自身に自ら真意を語ってもらいたいと思い,法定代理人としてA 男について利害関係参加の申立て及び手続代理人選任の申立てをする。裁判所はA 男の利害関係参加を認め(42 条2 項),弁護士会の推薦した甲弁護士を職権でA 男の手続代理人に選任する(23 条2項)。
○具体的活動
A 男の手続代理人に選任された甲弁護士は,A男と面談して,その意向を正確に把握し,調停期日に出頭してA 男の意向を手続に顕出させる(意思形成の援助も含む)。
これと並行して,記録の閲覧,調停委員会・調査官・父母(代理人があれば代理人)との積極的な意見交換や情報共有を通じて,A 男が置かれた具体的状況を理解した上,A 男の意向を適切に評価し, その最善の利益の実現のための具体的方策を検討する。
また,A 男の最善の利益に焦点を当てることにより父母に対し紛争解決に向けた自覚を促し,面会交流を含む監護のあり方についての調停条項案を提案するなどの調整活動を行う。
活動全体を通じて,A 男の手続代理人は,A男と必要に応じて双方向かつ頻度の高いコミュ
ニケーションを取ることが望まれる。
たとえば,A 男からの随時の相談を受けること, 毎回の期日報告を行うことなど,いずれも通常の依頼者に対しても行っていることではあるが,子どもの場合には,それらをより丁寧に行いたい。また,事件の終盤においては,A 男に対して, 面会が認められそうだ,認められるとして頻度は何回程度になりそうだ等,事件の具体的見通しについて丁寧に説明し,それを踏まえた具体的アドバイスをすることも望ましい。
こうした活動は,調停委員会・調査官の活動を補完する意味でも重要である。
●    ●親権停止の審判
【ケース2】
 B 子(18 歳)は,単独親権者である母の虐待から逃れるため,社会福祉法人カリヨン子どもセンターの運営する子どものためのシェルターに入所し,自立を目指している。しかし,母は,B 子のアパートの賃貸借契約や就労に対する同意を合理的理由なく拒否するなどして,B 子の自立を妨げている。そこで,B 子は,母に対し,親権停止の審判を申し立てることを検討している。
○就任の契機
@ B 子は,シェルターの子ども担当弁護士(子どものためのシェルターでは子ども一人一人に担当の弁護士が就くこととされるのが一般で,社会福祉法人カリヨン子どもセンターにおいては「子ども担当弁護士」と呼称されている)である甲弁護士に自ら依頼して(私選),甲弁護士を手続代理人として,裁判所に対し親権停止の審判を申し立てる。
○具体的活動
甲弁護士は,申立代理人である以上,申立てを認める審判を得るべく主張立証活動を行う。親との調整活動が不調に終わった結果としての審判申立てと思われるので,調整活動の役割は後退するであろうが,B 子の自立援助が目的である以上,必要に応じて母との調整活動を行うこともあり得えよう。