シンプラル法律事務所
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論点整理(家事事件(新法)関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

家事調停と証拠 
規定 法 第258条(家事審判の手続の規定の準用等)
第四十一条から第四十三条までの規定は家事調停の手続における参加及び排除について、
第四十四条の規定は家事調停の手続における受継について、
第五十一条から第五十五条までの規定は家事調停の手続の期日について、
第五十六条から第六十二条まで及び第六十四条の規定は家事調停の手続における事実の調査及び証拠調べについて
第六十五条の規定は家事調停の手続における子の意思の把握等について、
第七十三条、第七十四条、第七十六条(第一項ただし書を除く。)、第七十七条及び第七十九条の規定は家事調停に関する審判について、
第八十一条の規定は家事調停に関する審判以外の裁判について準用する。
2 前項において準用する第六十一条第一項の規定により家事調停の手続における事実の調査の嘱託を受けた裁判所は、相当と認めるときは、裁判所書記官に当該嘱託に係る事実の調査をさせることができる。ただし、嘱託を受けた家庭裁判所が家庭裁判所調査官に当該嘱託に係る事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。
法 第62条(調査の嘱託等)
家庭裁判所は、必要な調査を官庁、公署その他適当と認める者に嘱託し、又は銀行、信託会社、関係人の使用者その他の者に対し関係人の預金、信託財産、収入その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。

第63条(事実の調査の通知)
家庭裁判所は、事実の調査をした場合において、その結果が当事者による家事審判の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない。

第64条(証拠調べ)
家事審判の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定(同法第百七十九条、第百八十二条、第百八十七条から第百八十九条まで、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条(同法第二百二十九条第二項及び第二百三十二条第一項において準用する場合を含む。)及び第二百二十九条第四項の規定を除く。)を準用する。
2 前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。
3 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、二十万円以下の過料に処する。
一 第一項において準用する民事訴訟法第二百二十三条第一項(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定による提出の命令に従わないとき、又は正当な理由なく第一項において準用する同法第二百三十二条第一項において準用する同法第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないとき。
二 書証を妨げる目的で第一項において準用する民事訴訟法第二百二十条(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定により提出の義務がある文書(同法第二百三十一条に規定する文書に準ずる物件を含む。)を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき、又は検証を妨げる目的で検証の目的を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
4 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、十万円以下の過料に処する。
一 正当な理由なく第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第二項(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)において準用する同法第二百二十三条第一項の規定による提出の命令に従わないとき。
二 対照の用に供することを妨げる目的で対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
三 第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第三項(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定による決定に正当な理由なく従わないとき、又は当該決定に係る対照の用に供すべき文字を書体を変えて筆記したとき。
5 家庭裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、家事審判の手続の期日に出頭することを命ずることができる。
6 民事訴訟法第百九十二条から第百九十四条までの規定は前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について、同法第二百九条第一項及び第二項の規定は出頭した当事者が正当な理由なく宣誓又は陳述を拒んだ場合について準用する。


   
  ■家事調停事項 
規定 家事事件手続法 第244条(調停事項等)
家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。
人事訴訟法 第2条(定義)
この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に係る訴訟をいう。
一 婚姻の無効及び取消しの訴え、離婚の訴え、協議上の離婚の無効及び取消しの訴え並びに婚姻関係の存否の確認の訴え
二 嫡出否認の訴え、認知の訴え、認知の無効及び取消しの訴え、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴え並びに実親子関係の存否の確認の訴え
三 養子縁組の無効及び取消しの訴え、離縁の訴え、協議上の離縁の無効及び取消しの訴え並びに養親子関係の存否の確認の訴え
●家事調停の対象となる事項:
「人事に関する訴訟事件その他過程に関する事件」のうち家事事件手続法別表第1に掲げる事項についての事件を除いたもの。 
    ●人事に関する訴訟事件(=人事訴訟の対象となる事件)
〇人事訴訟法2条1号 
@婚姻の無効および取消しの訴え
A離婚の訴え
B協議上の離婚の無効および取消しの訴え
C婚姻関係の存否の確認の訴え
〇人事訴訟法2条2号 
@嫡出否認の訴え
A認知の訴え
B認知の無効および取消しの訴え
C父を定めることを目的とする訴え
D実親子関係の存否の確認の訴え
〇人事訴訟法2条3号 
@養子縁組の無効および取消しの訴え
A離縁の訴え
B協議上の離縁の無効および取消しの訴え
C養親子関係の存否の訴え
〇人事訴訟法2条柱書き 
その他の身分関係の形成または存否の確認を目的とする訴え
ex.
@姻族関係存否確認の訴え
A親権者指定協議無効確認の訴え
離婚事件⇒協議離婚が認められている⇒当事者の自主的任意処分を許す⇒家事調停の対象となる。
本来当事者の協議で自由に処分できる性質を有していない親子関係不存在確認事件〜通常の調停手続ではなく、合意に相当する審判(法277条)の手続で処理。
●    ●その他家庭に関する事件
「家庭に関する事件」(家事手続224)については、その範囲が必ずしもはっきりとしない。 
「家庭に関する事件」に該当するには
@親族またはこれに準ずる者の間という一定の身分関係を持つ者の間の紛争であること
A紛争の存在
という2つの要件は不可欠。
さらに
B人間関係調整の余地があること
も要件とする見解がある。
〇家事事件手続法別表第2に掲げる事項
@夫婦関係の協力扶助に関する処分
A婚姻費用の分担に関する処分
B子の監護に関する処分(監護者の指定、養育費、面会交流、子の引渡しなど)
C財産の分与に関する処分
D離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
E離縁等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
F養子の離縁後に親権者となるべき者の指定
G親権者の指定または変更
H扶養の順位の決定およびその決定およびその決定の変更または取消し
I不要の程度または方法についての決定およびその決定の変更または取消し
J相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
K遺産の分割
L遺産の分割の禁止
M寄与分を定める処分
N請求すべき按分割合に関する処分
O扶養義務者の負担すべき費用額の確定
〇「家庭に関する」通常の民事訴訟事件
@離婚に基づく慰謝料請求
A婚姻不履行や内縁の不当は気による慰謝料請求
B不貞行為の相手方への慰謝料請求
C親族間の金銭・建物等の賃貸借関係
D親族間の共有物分割請求
E相続回復請求
F遺産の範囲確認
G遺言無効確認
H遺留分減殺請求など
〇訴訟・審判の対象にならない事件 
@具体的権利義務の形成・変更を目的としていない夫婦間等の円満調整等だけを目的とする事件
A婚姻予約の履行請求等当事者の任意履行を期待するほかない事項を目的とする事件など
家事審判法で乙類事件と呼ばれていた事件は、家事事件手続法においては、そのほとんどが別表第2の事件として家事調停の対象となる(法244条)。 
家事審判法において乙類事件とされていたが、家事事件手続法では、別表第1事件とされたもの(=調停の対象とならないもの):
@夫婦財産契約による財産の監理者の変更等(別表第1の58項)
A扶養義務の設定及びその取消し(別表第1の84項、85項)
B推定相続人の廃除及びその取消し(別表第1の86項、87項)
   ■調停前置主義 
規定 家事事件手続法 第257条(調停前置主義)
第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
2 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない
3 裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。
●  原則1:調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない 
原則2:「原則1」をすることなく訴えを提起⇒裁判所は調停に付す(法257A)
例外:裁判所が事件を調停に付することができないと認めるときは、この限りではない(法257A但書)
  ■管轄 
規定 家事事件手続法 第245条(管轄等)
家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
2 民事訴訟法第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。
3 第百九十一条第二項及び第百九十二条の規定は、遺産の分割の調停事件(別表第二の十二の項の事項についての調停事件をいう。)及び寄与分を定める処分の調停事件(同表の十四の項の事項についての調停事件をいう。)について準用する。この場合において、第百九十一条第二項中「前項」とあるのは、「第二百四十五条第一項」と読み替えるものとする。
家事事件手続法 第191条(管轄)
遺産の分割に関する審判事件(別表第二の十二の項から十四の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
2 前項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判事件(別表第二の十二の項の事項についての審判事件をいう。以下同じ。)が係属している場合における寄与分を定める処分の審判事件(同表の十四の項の事項についての審判事件をいう。次条において同じ。)は、当該遺産の分割の審判事件が係属している裁判所の管轄に属する。
民訴法 第11条(管轄の合意)
2 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
●原則 家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
●合意管轄 合意管轄:
家事調停事件の管轄を当事者が合意で定める家庭裁判所(法245@)に定めること。
一定の法律関係に基づく申立てに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない(家事手続245A、民訴11AB)
●特則  遺産の分割の調停事件(家事手続別表2K)が係属している場合に、寄与分を定める処分の調停事件(家事手続別表2M)が係属し、または申し立てられた場合には、その遺産の分割の調停事件が係属している裁判所に管轄が認められる(家事手続245B、191A)。
■      ■合意に相当等する審判
規定 家事事件手続法 第277条(合意に相当する審判の対象及び要件)
人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。
一 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。
二 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。
2 前項第一号の合意は、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項及び第二百七十条第一項に規定する方法によっては、成立させることができない。
3 第一項の家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
4 第二百七十二条第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一項第一号の規定による合意を正当と認めない場合について準用する。
意義 人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、当事者間に申立の趣旨どおりの審判を受けることについて合意が成立し、当事者双方が申立てに係る無効もしくは取消しの原因又は身分関係の形成もしくは原因について争わない場合には、裁判所は必要な事実を調査したうえ、その合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判をすることができる(法277条)。

@婚姻の無効又は取消し等の特定の身分に関する事項は、本来任意処分を許さず、本来人事訴訟の手続によって解決されるべきであるが、当事者間において原因事実について争いがなく、合意が成立している紛争性のない事件についてまで訴訟で争わなければならないとすることは望ましいことではない。
Aそこで、事実関係に争いがなく、合意に相当する審判を受けることについて合意がある場合には、家庭裁判所の非訟手続によって簡易迅速に処理することを認めた。 
人事に関する訴えを提起することができる事項は、本来人事訴訟法により処理されるべきものであるが、訴訟経済及び当事者の負担軽減のために、一定の要件のもとで、人事訴訟手続の代用ないし簡易手続による処理を認めた。
対象 人事訴訟法2条に定める人事に関する訴え(ただし、離婚の訴え及び離縁の訴えを除く。)に係る事件(法277条1項)。