シンプラル法律事務所
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論点整理(監査役監査基準(H27.7))

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

監査役監査基準・内部統制監査役監査基準の平成27年度改定
◆    

◆監査役監査基準の改定について 公益社団法人日本監査役協会  平成27年7月23

T 経緯

監査役監査基準は、昭和50年3月に制定されて以来改定を重ね、平成16年2月の改定において、法的要請への対応に留まらない「内外から評価される監査実務のあり方」、「責任の取れる監査のあり方」を目指し、「企業不祥事の防止」及び「健全で持続的な成長を確保・担保すること」が監査役の基本責務であること、「良質な企業統治体制の確立と運用」が監査役の基本的な監査視点であることを明示した。その後、平成18年5月の会社法及び会社法施行規則等の施行及び平成22年4月の「有識者懇談会の答申に対する最終報告書」の公表等を受け、監査役監査基準は数度改定されてきているが、この平成16年改定の基本的な考え方は、堅持されてきた。

その後、平成27年5月に改正会社法及び改正会社法施行規則等が施行され、同年6月にはコーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という。)が適用開始された。そこでは、取締役会の監督機能の向上及び監査の実効性確保が図られているほか、監査役の「守りの機能」だけではない能動的・積極的な行動が求められており、これはまさしく、平成16年2月の改定において明示した、監査役の基本責務及び基本的な監査視点に適合するものである。

当協会は、こうした平成23年3月以降の監査役を取り巻く様々な環境変化に対応するべく、監査役監査基準の改定を行うこととした。

なお、今回の改定で反映された、会社法の大幅改正及びコードの導入等には、監査役の実務に大きな影響を及ぼすと考えられるものが数多くあり、今後の実務の動向によっては見直しが必要となる規定も数多くあることから、適宜監査役監査基準の見直しを検討していくこととしている。

U 改定の趣旨
1.監査役監査基準は、会社法の規定等を受けた法的義務を伴う規範企業統治の観点から望ましい規範が混在しており、後者については各社が自社の監査役監査基準を策定するに際して、自社の置かれている環境を勘案して適切な調整が必要となる。この点を踏まえて、利用者の利便性をより一層向上させるべく、形式面では、各条項のレベル分け及び補足の追記を行った。

(1)各条項の行動規範としての意味合いを分類し、各条項についてレベル分けを行うとともにその意味合いに応じた語尾にできるだけ統一した。各レベルの意味合いは、冒頭に記載するとともに、各条項のレベルを各条項の末尾に記載している。なお、各条項のレベル分けは、あくまで当協会としての見解であり、公的機関の確認を得たものではないことにご留意いただき、各社で自社の置かれている環境を勘案して自社の監査役監査基準の制定若しくは見直しを行う際にご活用いただきたい。

(2)新たに追記した補足では今回の改定に関連する改正会社法の該当条文を示すとともにコードの取扱いについても解説を行っている。特にコードは、会社法等の法令とは異なりそれ自体が法的拘束力を有する規範ではなく、原則の趣旨を理解したうえで、各社の置かれた環境に応じて実効的なコーポレートガバナンスの実現に取り組むことが期待(「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義))されているものであり、各社の事情により補充原則を含む個々の原則を実施しないと判断しても、その事情と対応策を説明(「コンプライ・オア・エクスプレイン」)することにより最終的な評価は市場に委ねる、との手法を採用している。したがって、補充原則を含めた各原則を、会社法等法令の定めのように、行動規範として一律に遵守すべきものとすることは適切ではなく、監査役監査基準の規定本文でその趣旨を十分に説明できないものもあることから、新たに追記した補足において説明を加えている。また、コード原則を直接的に反映した規定については、上述のコードの性格から、上記(1)のレベル分けに当たり、原則として「レベル4」と位置付けた。規定によっては各社の実情にそぐわないものがあり得ることは認識しており、(実施しないことも含め)取扱いに幅をもたせることで、各社の事情や環境に応じた活用ができるようにした。
2.内容面では、会社法及び会社法施行規則等の改正の内容及びコードの各原則を反映した。コードの原則の中には「監査役に直接求められる原則」がある。また「経営陣や取締役会に向けた原則」も多く、監査役が監査を行う際には経営陣や取締役会がこれらの原則をどのように扱っているかを監視・検証することが必要となる。この点については、一般論としてコードの原則を尊重することを定めた規定を設けるだけでなく、特に勘案することが望ましいと考えられる原則については、対応する規定を置いた。
●  3.主な改定内容は、下記のとおりである。

(1)会社法及び会社法施行規則等の改正を踏まえ、会計監査人の選解任等議案の内容の決定について規定した(第34条)。また、監査の実効性を確保するための体制に関する事項をはじめとする業務の適正を確保するための体制に関する事項を追加した(第17条〜第20条、第24条)。その他、親会社等との利益相反取引に関する監査報告への意見記載、支配権の異動を伴う第三者割当等に関する意見表明及びいわゆる多重代表訴訟に関する規定を追加した(第26条、第49条、第55条)。

(2)コード基本原則2、基本原則4等を踏まえ、監査役の職責と心構えの内容を拡充したほか、監督機能の一翼を担う監査役の役割やコードを踏まえた対応について規定した(第2条、第3条、第13条)。ここでいう監督機能とは、会社法により規定されている取締役会による「取締役の職務の執行の監督」より広義の概念であり、監査役(会)と取締役会とが協働することによる包括的な監督機能を指し、監査役(会)による監査は、この広義の監督の一部であると考えている。コード基本原則4に監督機能として3つの役割・責務が示されており、当該役割・責務の一部は監査役(会)も担うこととされている(基本原則4参照)。これらの監督機能に対する監査役の関与のあり方としては、取締役会がこれらの監督職務を適切に果たしているのかを監査すること(会社法第381条第1項参照)のほか、例えば、適切なリスクテイクの礎となる内部統制システムについて構築の段階から積極的に意見を表明することが挙げられる。また、各社の置かれている環境によっては、リスク管理の観点や経営判断の合理性の観点等から、個別案件だけではなく、中期経営計画策定に係る議論において積極的に発言することも考えられる。ただし、これらの関与の度合いは各社の事情により異なるべきものであり、この点はレベル分けにおいても勘案されている。広義の監督機能の概念については、当協会「監査役等の英文呼称について」(平成24年8月29日)において提示していたものであるが、本基準においても同様の概念を踏まえて改定するものである。

また、第13条第3項では任意の諮問委員会等への参加について規定が設けられている。これは監査役本来の職務とは別のものであり、積極的に参加することを推奨しているわけではないが、監査役としての職務に差し支えのない範囲で行うことは問題ないと考えられる。

(3)その他、コード基本原則等を踏まえ、監査役の研修、監査役候補者の選定方針への関与、株主等との対話、社外取締役等との連携、監査役会の監査実績の評価等について規定した(第3条、第9条、第14条、第16条、第36条)。

(4)「連携」の用語について、これまで本基準では、「連係」を用いていたところである。これは、監査役の職務は、会計監査人あるいは内部監査部門等が行っている監査が妥当であるか、相当であるかを、独立した立場で監査するという職務であることから、会計監査人や内部監査部門等と一緒に手を携えて監査するのではなく、これらと係わり合って監査するといった趣旨を踏まえたものである。従来の「連係」については、このように熟慮のうえで用いられたものであり、その趣旨は尊重すべきものであるが、その一方で、例えば日本公認会計士協会との「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」では監査役監査基準において「連係」が使用されている個所も「連携」が使用されている等、混乱を招いている面がある。統一しても前後の脈絡から用語の意味するところは十分に理解できることから、使い分けることの実益と混乱を考え、今回「連携」の用語に統一することとした。
V 本基準の対象会社について

本基準の対象会社については、従前の監査役監査基準と同じく会社法上の大会社を対象とし、主として上場会社を念頭において作成されたものであることに変わりはない。大会社でない会社の場合には、各社の監査環境等に留意し、本基準を参考にすることが望まれる。
監査役監査基準
◆   ◆レベルと語尾
1 法定事項
原則「ねばならない」、「できない」に統一する。ただし、法令の文言を勘案する場合もある。

2 不遵守があった場合に、善管注意義務違反となる蓋然性が相当程度ある事項
原則「ねばならない」に統一する。

3 不遵守が直ちに善管注意義務違反となるわけではないが、不遵守の態様によっては善管注意義務違反を問われることがあり得る事項
原則「する」に統一する(「行う」等を含む。)。

4 努力義務事項、望ましい事項、行動規範ではあるが上記1〜3に該当しない事項(検討・考慮すべきものの具体的な行動指針は示されていない事項等)
状況に応じて文言を選択する。なお、努力義務事項については、「努める」に統一するほか、行動規範ではあるが上記1〜3に該当しない事項は、原則「〜ものとする」に統一する。
5 権利の確認等上記1〜4に当てはまらない事項
状況に応じて文言を選択する。
  ◆規定 
第1章 本基準の目的
 

(目的)第1条

1.本基準は、監査役の職責とそれを果たすうえでの心構えを明らかにし、併せて、その職責を遂行するための監査体制のあり方と、監査に当たっての基準及び行動の指針を定めるものである。Lv.5

2.監査役は、企業規模、業種、経営上のリスクその他会社固有の監査環境にも配慮して本基準に則して行動するものとし、監査の実効性の確保に努める。Lv.4

 ■第2章 監査役の職責と心構え
 

(監査役の職責)第2条

1.監査役は、取締役会と協働して会社の監督機能の一翼を担い、株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査することにより、企業及び企業集団が様々なステークホルダーの利害に配慮するとともに、これらステークホルダーとの協働に努め、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する責務を負っている。Lv.3

2.前項の責務を通じ、監査役は、会社の透明・公正な意思決定を担保するとともに、会社の迅速・果断な意思決定が可能となる環境整備に努め、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることなく、取締役又は使用人に対し能動的・積極的な意見の表明に努める。Lv.4

3.監査役は、取締役会その他重要な会議への出席、取締役、使用人及び会計監査人等から受領した報告内容の検証、会社の業務及び財産の状況に関する調査等を行い、取締役又は使用人に対する助言又は勧告等の意見の表明、取締役の行為の差止めなど、必要な措置を適時に講じなければならない。Lv.2

【第1項補足】本基準における「監督」の概念は、会社法第362条第2項第2号に規定する「取締役の職務の執行の監督」に留まらず、より広い企業統治における監督機能全般を意味する。広義の監督機能は、取締役会と監査役(会)が協働して担うものであり、「監査」もその一部と考えている(広義の監督機能の概念については、当協会「監査役等の英文呼称について」(平成 24 年 8月 29 日)において提示していたものであるが、本基準においても同様の概念を踏まえて改定するものである。)。

また、コーポレートガバナンス・コード(以下、補足において「GC」という。)において求められている各種ステークホルダーとの協働は、取締役会及び経営陣が主導的に行うべきものであるが、監査役も企業統治体制の確立の観点から、取締役会及び経営陣を後押しすることが求められていることから今回の改定を行った。

【参考】GC基本原則2及び基本原則4

【第2項補足】 GC原則4-4のとおり、監査役が、いわゆる「守りの機能」を含めその役割・責務を十分果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切ではない。既に多くの実務においては、監査役は、取締役会又は経営会議等重要な会議のほか、様々な場面で多岐にわたる事項について、法令や定款違反の可能性の観点だけではなく、リスク管理の観点や経営判断の合理性の観点等からも意見を述べている(具体例については、日本監査役協会「第77回監査役全国会議に係る事前アンケート 集計結果」(201310月8日)を参照。)。ただし、これらの対応は各社の置かれている状況を勘案して行われるべきもので、各企業一律に求められるものではないことに留意する必要がある。
 

(監査役の心構え)第3条

1.監査役は、独立の立場の保持に努めるとともに、常に公正不偏の態度を保持し、自らの信念に基づき行動しなければならない。Lv.2

2.監査役は、監督機能の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、常に監査品質の向上等に向けた自己研鑽に努め、就任後においても、これらを継続的に更新する機会を得るよう努める。Lv.4

3.監査役は、適正な監査視点の形成のため、会社の事業・財務・組織等に関する必要な知識を取得し、監査役に求められる役割と責務を十分に理解する機会を得るよう努めるほか、経営全般の見地から経営課題についての認識を深め、経営状況の推移と企業をめぐる環境の変化を把握し、能動的・積極的に意見を表明するよう努める。Lv.4

4.監査役は、平素より会社及び子会社の取締役及び使用人等との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努める。Lv.4

5.監査役は、監査意見を形成するに当たり、よく事実を確かめ、必要があると認めたときは、弁護士等外部専門家の意見を徴し、判断の合理的根拠を求め、その適正化に努める。Lv.4

6.監査役は、その職務の遂行上知り得た情報の秘密保持に十分注意しなければならない。Lv.2

7.監査役は、企業及び企業集団の健全で持続的な成長を確保し社会的信頼に応える良質な企業統治体制の確立と運用のために、監査役監査の環境整備が重要かつ必須であることを、代表取締役を含む取締役に理解し認識させるよう努める。Lv.4
【第2項参考】GC基本原則4、原則4−4及び補充原則4−14@
【第3項補足】「能動的・積極的に意見を表明」とは、専ら経営に関する事項として、発言を控える、若しくは意見を求められるまで待つことをせずに、企業にとり有益と自ら判断した場合は躊躇することなくリスク管理の観点や経営判断の合理性の観点等からも意見を述べることを期待したものである。
■第3章 監査役及び監査役会
  (常勤監査役)第4条

1.監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない。Lv.1

2.常勤監査役は、常勤者としての特性を踏まえ、監査の環境の整備及び社内の情報の収集に積極的に努めLv.4、かつ、内部統制システムの構築・運用の状況を日常的に監視し検証する。Lv.3

3.常勤監査役は、その職務の遂行上知り得た情報を、他の監査役と共有するよう努める。Lv.4
 

(社外監査役及び独立役員)第5条

1.社外監査役は、監査体制の独立性及び中立性を一層高めるために法令上その選任が義務付けられていることを自覚し、積極的に監査に必要な情報の入手に心掛け、得られた情報を他の監査役と共有することに努めるとともに、他の監査役と協力して監査の環境の整備に努める。Lv.4また、他の監査役と協力して第37条第1項に定める内部監査部門等及び会計監査人との情報の共有に努める。Lv.4

2.社外監査役は、その独立性、選任された理由等を踏まえ、中立の立場から客観的に監査意見を表明することが特に期待されていることを認識し、代表取締役及び取締役会に対して忌憚のない質問をし又は意見を述べる。Lv.3

3.社外監査役は、法令で定める一定の活動状況が事業報告における開示対象となることにも留意し、その職務を適切に遂行しなければならない。Lv.2

4.独立役員に指定された社外監査役は、一般株主の利益ひいては会社の利益(本条において「一般株主の利益」という。)を踏まえた公平で公正な経営の意思決定のために行動することが特に期待されていることを認識し、他の監査役と意見交換を行うとともに他の監査役と協働して一般株主との意見交換等を所管する部署と情報の交換を図り、必要があると認めたときは、一般株主の利益への配慮の観点から代表取締役及び取締役会に対して意見を述べる。Lv.3

  (監査役会の機能)第6条

1.監査役会は、すべての監査役で組織する。Lv.1

2.各監査役は、監査役会が監査に関する意見を形成するための唯一の協議機関かつ決議機関であることに鑑み、職務の遂行の状況を監査役会に報告する。Lv.3また、各監査役は、監査役会を活用して監査の実効性の確保に努める。Lv.4ただし、監査役会の決議が各監査役の権限の行使を妨げることはできない。Lv.1

3.監査役会は、必要に応じて取締役又は取締役会に対し監査役会の意見を表明しなければならない。Lv.2

4.監査役会は、法令に定める事項のほか、取締役及び使用人が監査役会に報告すべき事項を取締役と協議して定め、その報告を受ける。Lv.3
  (監査役会の職務)第7条

監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第3号の決定は、各監査役の権限の行使を妨げることはできない。Lv.1

一 監査報告の作成

二 常勤の監査役の選定及び解職

三 監査の方針、業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
  (監査役会の運営)第8条

1.監査役会は、定期的に開催し、取締役会の開催日時、各監査役の出席可能性等にも配慮し、あらかじめ年間の開催日時を定めておくことが望ましい。Lv.4ただし、必要があると認めたときは随時開催する。Lv.3

2.監査役会は、その決議によって監査役の中から議長を定めるものとする。Lv.4監査役会の議長は、監査役会を招集し運営するほか、監査役会の委嘱を受けた職務を遂行する。Lv.3ただし、各監査役の権限の行使を妨げることはできない。Lv.1

3.監査役会は、各監査役の報告に基づき審議をし、監査意見を形成しなければならない。Lv.2

4.監査役会の決議を要する事項については、十分な資料に基づき審議しなければならない。Lv.2

5.監査役は、監査役会議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめ、出席した監査役は、これに署名又は記名押印しなければならない。Lv.1
 

(監査役選任手続等への関与及び同意手続)第9条

1.監査役会は、取締役が株主総会に提出する監査役の選任議案について、同意の当否を審議しなければならない。Lv.1同意の判断に当たっては、第10に定める選定基準等を考慮する。Lv.3

2.監査役会は、監査役の候補者、監査役候補者の選定方針の内容、監査役選任議案を決定する手続、補欠監査役の選任の要否等について、取締役との間であらかじめ協議の機会をもつことが望ましい。Lv.4

3.監査役会は、必要があると認めたときは、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすることを請求し、又は株主総会に提出する監査役の候補者を提案する。Lv.3

4.監査役は、監査役の選任若しくは解任又は辞任について意見をもつに至ったときは、株主総会において意見を表明しなければならない。Lv.2

5.補欠監査役の選任等についても、本条に定める手続に従う。Lv.3

6.監査役及び監査役会は、社外監査役選任議案において開示される不正な業務執行の発生の予防及び発生後の対応に関する事項について、適切に記載されているかにつき検討する。Lv.3

【第2項補足】監査役候補の指名の方針等を会社が定める場合に、取締役会だけで定めるのではなく監査役会が関与することについて言及している。
【第2項参考】GC原則3-(iv)(v)
  (監査役候補者の選定基準等)10

1.監査役会は、監査役の常勤・非常勤又は社内・社外の別及びその員数、現任監査役の任期、専門知識を有する者の有無、欠員が生じた場合の対応等を考慮し、監査役選任議案への同意等を行うに当たっての一定の方針を定めるものとする。Lv.4

2.監査役候補者の選定への同意及び監査役候補者の選定方針への関与に当たっては、監査役会は、任期を全うすることが可能か、業務執行者からの独立性が確保できるか、公正不偏の態度を保持できるか等を勘案して、監査役としての適格性を慎重に検討する。Lv.3なお、監査役のうち最低1名は、財務及び会計に関して相当程度の知見を有する者であることが望ましい。Lv.4

3.社外監査役候補者の選定に際しては、監査役会は、会社及び親会社との関係、代表取締役その他の取締役及び主要な使用人との関係等を勘案して独立性に問題がないことを確認するとともに、取締役会及び監査役会等への出席可能性等を検討するものとする。Lv.4

4.監査役会は、独立役員の指定に関する考え方を取締役等から聴取し、必要に応じて協議する。Lv.3

5.監査役候補者及び社外監査役候補者の選定に際しては、監査役会は、前3項に定める事項のほか、法令の規定により監査役の選任議案に関して株主総会参考書類に記載すべきとされている事項についても、検討する。Lv.3
  (監査役の報酬等)11

1.各監査役が受けるべき報酬等の額について定款の定め又は株主総会の決議がない場合には、監査役は、常勤・非常勤の別、監査業務の分担の状況、取締役の報酬等の内容及び水準等を考慮し、監査役の協議をもって各監査役が受ける報酬等の額を定めなければならない。Lv.1

2.監査役は、監査役の報酬等について意見をもつに至ったときは、必要に応じて取締役会又は株主総会において意見を述べる。Lv.3
   (監査費用)12

1.監査役は、その職務の執行について生ずる費用について、会社から前払又は償還を受けることができる。Lv.5

2.監査役会は、第17条第2項第6号の方針に基づき、職務の執行について生ずる費用について、あらかじめ予算を計上しておくことが望ましい。Lv.4ただし、緊急又は臨時に支出した費用についても、会社に償還を請求する権利を有する。Lv.5

3.監査役は、必要に応じて外部の専門家の助言を受けた場合、当該費用を会社に請求する権利を有する。Lv.5

4.監査役は、その役割・責務に対する理解を深めるため必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に適合した研修等を受ける場合、当該費用を会社に請求する権利を有する。Lv.5

5.監査費用の支出に当たっては、監査役は、その効率性及び適正性に留意するものとする。Lv.4
【第3項、第4項補足】費用負担についても明確にしている。
【第4項参考】GC補充原則4−13A、原則4−14
第4章 コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応
  (コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応)13

1.コーポレートガバナンス・コードの適用を受ける会社の監査役は、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を十分に理解したうえで、自らの職務の遂行に当たるものとする。Lv.4

2.監査役及び監査役会は、取締役会が担う以下の監督機能が会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促しかつ収益力・資本効率等の改善を図るべく適切に発揮されているのかを監視するとともに、自らの職責の範囲内でこれらの監督機能の一部を担うものとする。Lv.4

一 企業戦略等の大きな方向性を示すこと
二 代表取締役その他の業務執行取締役による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
三 独立した客観的な立場から、代表取締役その他の取締役等に対する実効性の高い監督を行うこと

. 監査役が指名・報酬などに係る任意の諮問委員会等に参加する場合には、会社に対して負っている善管注意義務を前提に、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために適正に判断を行う。Lv.3
【第1項補足】GCは会社の持続的成長と中長期的企業価値向上に資する内容であることから、第13条第1項は、GCの適用を直接受けていない会社であってもGCの趣旨を取り込むことを否定するものではない。

【第2項補足】監査役及び監査役会は、第2条第1項に規定されているとおり、取締役会と協働して会社の広義の監督機能の一翼を担う機関であるが、当該監督機能の例として、GC基本原則4に3つの役割・責務が提示されており、当該役割・責務の一部は監査役・監査役会も担うことになる(GC基本原則4参照)。これら広義の監督機能に対する監査役の関与のあり方としては、取締役会がこれらの監督職務を適切に果たしているのかを監査すること(会社法第381条第1項参照)のほか、例えば、適切なリスクテイクの礎となる内部統制システムのあり方について構築の段階から積極的に意見を表明することが挙げられる。また、各社の置かれている環境によっては、リスク管理の観点や経営判断の合理性の観点等から、個別案件だけではなく、中期経営計画策定に係る議論においても積極的に発言することも考えられる。ただし、これらの関与の度合いは各社の事情により異なるべきものであり、第2項がレベル4となっているのもこの点を勘案したものである。なお、監査役が行うべき対応は、第2条に掲げる監査役の職責を踏まえて行われることになる。

【第3項補足】諮問委員会の設置や当該委員会に監査役が参加するかどうかは各社の状況に応じて任意に対応する事項である。
【第3項参考】GC原則4−10
  (株主との建設的な対話)14

1.監査役は、中長期目線の株主等と対話を行う場合には、関連部署と連携して、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的範囲内で適切に対応するものとする。Lv.4

. 前項の対話において把握された株主の意見・懸念は、代表取締役その他の業務執行取締役、取締役会及び監査役会に対して適切かつ効果的に伝えるものとする。Lv.4
【補足】本条は、監査役と株主等との対話について、監査役が株主等と対話を行っている実例があり、今後非業務執行役員としての監査役に対する期待が高まると考えられることから規定している。「中長期目線の株主」とは、いわゆるショートターミズムの株主ではなく、例えばスチュワードシップ・コードを採択し、顧客・受益者への長期的なリターンを確保するよう投資対象企業の中長期的な企業価値の向上への深い理解と関心をもっている機関投資家等が典型で、こうした株主は「会社のガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる」(GC「経緯及び背景」第8項参照)者でもある。なお、監査役が実際に対話を行うに当たっては、IR部門等の関連部署と十分な連携を図り、株主等にとって判りやすい説明となるよう、会社全体としてできるだけ一貫性のある説明を確保する必要があることから「関連部署と連携して」と規定している。
【参考】GC基本原則5
  第5章 監査役監査の環境整備
  (代表取締役との定期的会合)15

監査役は、代表取締役と定期的に会合をもち、代表取締役の経営方針を確かめるとともに、会社が対処すべき課題、会社を取り巻くリスクのほか、監査役の職務を補助すべき使用人(本基準において「補助使用人」という。)の確保及び監査役への報告体制その他の監査役監査の環境整備の状況、監査上の重要課題等について意見を交換し、代表取締役との相互認識と信頼関係を深めるよう努める。Lv.4
  (社外取締役等との連携)16

1.監査役会は、会社に社外取締役が選任されている場合、社外取締役との情報交換及び連携に関する事項について検討し、監査の実効性の確保に努める。Lv.4監査役及び監査役会は、社外取締役がその独立性に影響を受けることなく情報収集力の強化を図ることができるよう、社外取締役との連携の確保に努める。Lv.4

2.筆頭独立社外取締役が選定されている場合、当該筆頭独立社外取締役との連携の確保に努める。Lv.4

3.前2項のほか、監査役は、社外取締役を含めた非業務執行役員と定期的に会合をもつなど、会社が対処すべき課題、会社を取り巻くリスクのほか、監査上の重要課題等について意見を交換し、非業務執行役員間での情報交換と認識共有を図り、信頼関係を深めるよう努める。Lv.4
【第1項参考】GC補充原則4−4@
【第2項参考】GC補充原則4−8A
【第3項参考】GC補充原則4−8@
  (監査役監査の実効性を確保するための体制)17

1.監査役は、監査の実効性を高め、かつ、監査職務を円滑に執行するための体制の確保に努める。Lv.4

2.前項の体制確保のため、監査役は、次に掲げる体制の内容について決定し、当該体制を整備するよう取締役又は取締役会に対して要請する。Lv.3

一 補助使用人の設置及び当該補助使用人に関する事項

二 補助使用人の取締役からの独立性に関する事項

三 補助使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

四 次に掲げる体制その他の監査役への報告に関する体制
イ 取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制
ロ 子会社の取締役、監査役及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が監査役に報告をするための体制

五 前号の報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制

六 監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項

七 その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
【第2項参考】会社法施行規則第100条第3項を踏まえた改定である。
  (補助使用人)18

1.監査役は、企業規模、業種、経営上のリスクその他会社固有の事情を考慮し、監査の実効性の確保の観点から、補助使用人の体制の強化に努める。Lv.4

2.監査役及び監査役会の事務局は、専任の補助使用人が当たることが望ましい。なお、専任者の設置が困難な場合は、少なくとも兼任者を1名以上設置するよう取締役又は取締役会に対して要請するものとする。Lv.4
【第2項補足】補助使用人について、少なくとも兼任者を1名設置することを明確にしている。
  (補助使用人の独立性及び指示の実効性の確保)19

1.監査役は、補助使用人の業務執行者からの独立性の確保に努める。Lv.4

2.監査役は、以下の事項の明確化など、補助使用人の独立性及び補助使用人に対する指示の実効性の確保に必要な事項を検討する。Lv.3

一 補助使用人の権限(調査権限・情報収集権限のほか、必要に応じて監査役の指示に基づき会議へ出席する権限等を含む。)

二 補助使用人の属する組織

三 監査役の補助使用人に対する指揮命令権

四 補助使用人の人事異動、人事評価、懲戒処分等に対する監査役の同意権

五 必要な知識・能力を備えた専任又は兼任の補助使用人の適切な員数の確保、兼任の補助使用人の監査役の補助業務への従事体制

六 補助使用人の活動に関する費用の確保

七 内部監査部門等の補助使用人に対する協力体制
【第2項参考】会社法施行規則第100条第3項第3号を踏まえた改定である。
  (監査役への報告に関する体制等)20

1.監査役は、取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制(子会社の取締役、監査役及び使用人が監査役に直接又は間接に報告をするための体制を含む。)など監査役への報告に関する体制の強化に努める。Lv.4

2.監査役は、取締役が会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、これを直ちに監査役会に報告することが自らの義務であることを強く認識するよう、取締役に対して求める。Lv.3

3.前項に定める事項のほか、監査役は、取締役との間で、監査役又は監査役会に対して定期的に報告を行う事項及び報告を行う者を、協議して決定するものとする。臨時的に報告を行うべき事項についても同様とする。Lv.4

4.あらかじめ取締役と協議して定めた監査役又は監査役会に対する報告事項について実効的かつ機動的な報告がなされるよう、監査役は、社内規則の制定その他の社内体制の整備を代表取締役に求める。Lv.3

5.会社に内部通報システムがおかれているときには、監査役は、重要な情報が監査役にも提供されているか及び通報を行った者が通報を行ったことを理由として不利な取扱いを受けないことが確保されているかを確認し、その内部通報システムが企業集団を含め有効に機能しているかを監視し検証しなければならない。Lv.2また、監査役は、内部通報システムから提供される情報を監査職務に活用するよう努める。Lv.4

6.監査役は、第37条に定める内部監査部門等との連携体制が実効的に構築・運用されるよう、取締役又は取締役会に対して体制の整備を要請するものとする。Lv.4
【第1項参考】会社法施行規則第100条第3項第4号ロを踏まえた改定である。
【第1項補足】子会社からの報告が常に親会社監査役に対して行われるとは限らないことも考慮して「間接に」を加えている。
【第5項参考】会社法施行規則第100条第3項第5号及びGC補充原則2−5@を踏まえた改定である。
  第6章 業務監査
  (取締役の職務の執行の監査)21

1.監査役は、取締役の職務の執行を監査する。Lv.1

2.前項の職責を果たすため、監査役は、次の職務を行わなければならない。

一 監査役は、取締役会決議その他における取締役の意思決定の状況及び取締役会の監督義務の履行状況を監視し検証しなければならない。Lv.2

二 監査役は、取締役が、内部統制システムを適切に構築・運用しているかを監視し検証しなければならない。Lv.2

三 監査役は、取締役が会社の目的外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はするおそれがあると認めたとき、会社に著しい損害又は重大な事故等を招くおそれがある事実を認めたとき、会社の業務に著しく不当な事実を認めたときは、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、必要な措置を講じなければならない。Lv.2

四 監査役又は監査役会は、取締役から会社に著しい損害が発生するおそれがある旨の報告を受けた場合には、必要な調査を行い、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、状況に応じ適切な措置を講じなければならない。Lv.2

3.監査役は、前項に定める事項に関し、必要があると認めたときは、取締役会の招集又は取締役の行為の差止めを求める。Lv.3

4.監査役は、取締役の職務の執行に関して不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があると認めたときは、その事実を監査報告に記載しなければならない。Lv.1その他、株主に対する説明責任を果たす観点から適切と考えられる事項があれば監査報告に記載する。Lv.3

5.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき審議を行い、監査役会としての監査意見を形成し監査役会監査報告に記載しなければならない。Lv.1
  (取締役会等の意思決定の監査)22

1.監査役は、取締役会決議その他において行われる取締役の意思決定に関して、善管注意義務、忠実義務等の法的義務の履行状況を、以下の観点から監視し検証しなければならない。Lv.2

一 事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと

二 意思決定過程が合理的であること

三 意思決定内容が法令又は定款に違反していないこと

四 意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと

五 意思決定が取締役の利益又は第三者の利益でなく会社の利益を第一に考えてなされていること

2.前項に関して必要があると認めたときは、監査役は、取締役に対し助言若しくは勧告をし、又は差止めの請求を行う。Lv.3
  (取締役会の監督義務の履行状況の監査)23

監査役は、代表取締役その他の業務執行取締役がその職務の執行状況を適時かつ適切に取締役会に報告しているかを確認するとともに、取締役会が監督義務を適切に履行しているかを監視し検証しなければならない。Lv.2
  (内部統制システムに係る監査)24

1.監査役は、会社の取締役会決議に基づいて整備される次の体制(本基準において「内部統制システム」という。)に関して、当該取締役会決議の内容及び取締役が行う内部統制システムの構築・運用の状況を監視し検証しなければならない。Lv.1

一 取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

二 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制

三 損失の危険の管理に関する規程その他の体制

四 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

五 次に掲げる体制その他の会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
イ 子会社の取締役の職務の執行に係る事項の会社への報告に関する体制
ロ 子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制
ハ 子会社の取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
ニ 子会社の取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

六 第17条第2項に定める監査役監査の実効性を確保するための体制

2.監査役は、内部統制システムの構築・運用の状況についての報告を取締役に対し定期的に求めるほか、内部監査部門等との連携及び会計監査人からの報告等を通じて、内部統制システムの状況を監視し検証しなければならない。Lv.2

3.監査役は、内部統制システムに関する監査の結果について、取締役又は取締役会に報告し、必要があると認めたときは、取締役又は取締役会に対し内部統制システムの改善を助言又は勧告する。Lv.3

4.監査役は、監査役監査の実効性を確保するための体制に係る取締役会決議の状況及び関係する各取締役の当該体制の構築・運用の状況について監視し検証し、必要があると認めたときは、代表取締役その他の取締役との間で協議の機会をもつ。Lv.3

5.監査役は、取締役又は取締役会が監査役監査の実効性を確保するための体制の適切な構築・運用を怠っていると認められる場合には、取締役又は取締役会に対して、速やかにその改善を助言又は勧告しなければならない。Lv.2

6.監査役は、内部統制システムに関する監査の結果について、監査役会に対し報告をしなければならない。Lv.2

7.監査役は、内部統制システムに係る取締役会決議の内容が相当でないと認めたとき、内部統制システムに関する事業報告の記載内容が著しく不適切と認めたとき、及び内部統制システムの構築・運用の状況において取締役の善管注意義務に違反する重大な事実があると認めたときには、その旨を監査報告に記載しなければならない。Lv.1その他、株主に対する説明責任を果たす観点から適切と考えられる事項があれば監査報告に記載する。Lv.3

8.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき審議を行い、監査役会としての監査意見を形成し監査役会監査報告に記載しなければならない。Lv.1

9.内部統制システムに関する監査については、本基準に定める事項のほか、別に定める内部統制システムに係る監査の実施基準による。Lv.5
【第1項第5号参考】会社法施行規則第100条第1項を踏まえた改定である。
  (企業集団における監査)25

1.子会社を有する会社の監査役は、連結経営の視点を踏まえ、取締役の子会社の管理に関する職務の執行の状況を監視し検証しなければならない。Lv.2

2.監査役は、子会社において生じる不祥事等が会社に与える損害の重大性の程度を考慮して、内部統制システムが会社及び子会社において適切に構築・運用されているかに留意してその職務を執行するよう努めるとともに、企業集団全体における監査の環境の整備にも努める。Lv.4

. 会社に重要な関連会社がある場合には、当該関連会社の重要性に照らして、前2項に準じて監査を行う。Lv.3
  (競業取引及び利益相反取引等の監査)26

1.監査役は、次の取引等について、取締役の義務に違反する事実がないかを監視し検証しなければならない。Lv.2

一 競業取引

二 利益相反取引

三 会社がする無償の財産上の利益供与(反対給付が著しく少ない財産上の利益供与を含む。)

四 親会社等又は子会社若しくは株主等との通例的でない取引

五 自己株式の取得及び処分又は消却の手続

2.前項各号に定める取引等について、社内部門等からの報告又は監査役の監査の結果、取締役の義務に違反し、又はするおそれがある事実を認めたときは、監査役は、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、必要な措置を講じなければならない。Lv.2

3.監査役は、個別注記表に注記を要する親会社等との取引について、事業報告に記載されている当該取引が会社の利益を害さないかどうかに係る取締役会の判断及び理由が適切か否かについての意見を監査役監査報告に記載しなければならない。Lv.1

4.監査役は、第1項各号に掲げる事項以外の重要又は異常な取引等についても、法令又は定款に違反する事実がないかに留意しLv.3、併せて重大な損失の発生を未然に防止するよう取締役に対し助言又は勧告しなければならない。Lv.2
【第3項参考】会社法施行規則第129条第1項第6号を踏まえた改定である。
【第3項補足】GC原則1-7を受けて、関連当事者間取引について、会社及び株主共同の利益を害することがないよう、取締役会が取引の重要性・性質に応じて適切な検討の手続を定め当該手続を踏まえた監視を行う場合、監査役は当該取締役会の職務執行の状況についても同様に監査を行うことになろう。
  (企業不祥事発生時の対応及び第三者委員会)27

1.監査役は、企業不祥事(法令又は定款に違反する行為その他社会的非難を招く不正又は不適切な行為をいう。以下本条において同じ。)が発生した場合、直ちに取締役等から報告を求め、必要に応じて調査委員会の設置を求め調査委員会から説明を受け、当該企業不祥事の事実関係の把握に努めるとともに、Lv.4原因究明、損害の拡大防止、早期収束、再発防止、対外的開示のあり方等に関する取締役及び調査委員会の対応の状況について監視し検証しなければならない。Lv.2

2.前項の取締役の対応が、独立性、中立性又は透明性等の観点から適切でないと認められる場合には、監査役は、監査役会における協議を経て、取締役に対して当該企業不祥事に対する原因究明及び再発防止策等の検討を外部の独立した弁護士等に依頼して行う第三者委員会(本条において「第三者委員会」という。)の設置の勧告を行い、あるいは必要に応じて外部の独立した弁護士等に自ら依頼して第三者委員会を立ち上げるなど、適切な措置を講じる。Lv.3

3.監査役は、当該企業不祥事に対して明白な利害関係があると認められる者を除き、当該第三者委員会の委員に就任することが望ましく、Lv.4第三者委員会の委員に就任しない場合にも、第三者委員会の設置の経緯及び対応の状況等について、早期の原因究明の要請や当局との関係等の観点から適切でないと認められる場合を除き、当該委員会から説明を受け、必要に応じて監査役会への出席を求める。Lv.3監査役は、第三者委員会の委員に就任した場合、会社に対して負っている善管注意義務を前提に、他の弁護士等の委員と協働してその職務を適正に遂行する。Lv.3
  (事業報告等の監査)28

1.監査役は、事業年度を通じて取締役の職務の執行を監視し検証することにより、当該事業年度に係る事業報告及びその附属明細書(本基準において「事業報告等」という。)が適切に記載されているかについて監査意見を形成しなければならない。Lv.1

2.監査役は、特定取締役(会社法施行規則第132条第4項に定める取締役をいう。以下本条において同じ。)から各事業年度における事業報告等を受領し、当該事業報告等が法令又は定款に従い、会社の状況を正しく示しているかどうかを監査しなければならない。Lv.1

3.監査役は、前2項を踏まえ、事業報告等が法令又は定款に従い、会社の状況を正しく示しているかどうかについての意見を監査役監査報告に記載しなければならない。Lv.1

4.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき、事業報告等が法令又は定款に従い、会社の状況を正しく示しているかどうかについての意見を監査役会監査報告に記載しなければならない。Lv.1

5.監査役会は、その決議によって、特定取締役から事業報告等の通知を受ける職務を行う特定監査役(会社法施行規則第132第5項に定める監査役をいう。)を定めることができる。Lv.5

6.事業報告等の監査に当たって、監査役及び監査役会は、必要に応じて、会計監査人との連携を図る。Lv.3
  (事業報告における社外監査役の活動状況等)29

監査役及び監査役会は、事業報告において開示される会社役員に関する事項及び社外役員等に関する事項のうち、社外監査役の活動状況その他監査役に関する事項について、適切に記載されているかにつき検討しなければならない。Lv.2
  第7章 会計監査
  (会計監査)30

1.監査役及び監査役会は、事業年度を通じて取締役の職務の執行を監視し検証することにより、当該事業年度に係る計算関係書類(計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類等の会社計算規則第2条第3項第3号に規定するものをいう。以下本基準において同じ。)が会社の財産及び損益の状況を適正に表示しているかどうかに関する会計監査人の監査の方法及び結果の相当性について監査意見を形成しなければならない。Lv.1

2.監査役は、会計監査の適正性及び信頼性を確保するため、会計監査人が公正不偏の態度及び独立の立場を保持し、職業的専門家として適切な監査を実施しているかを監視し検証しなければならない。Lv.2
  (会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制の確認)31

監査役は、会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するため、次に掲げる事項について会計監査人から通知を受け、会計監査人が会計監査を適正に行うために必要な品質管理の基準を遵守しているかどうか、会計監査人に対して適宜説明を求め確認を行わなければならない。Lv.2

一 独立性に関する事項その他監査に関する法令及び規程の遵守に関する事項

二 監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業務の契約の受任及び継続の方針に関する事項

三 会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項
  (会計方針の監査)32

1.監査役は、会計方針(会計処理の原則及び手続並びに表示方法その他計算関係書類作成のための基本となる事項をいう。以下本条において同じ。)が、会社財産の状況、計算関係書類に及ぼす影響、適用すべき会計基準及び公正な会計慣行等に照らして適正であるかについて、会計監査人の意見を徴して検証しなければならない。Lv.2また、必要があると認めたときは、取締役に対し助言又は勧告する。Lv.3

2.会社が会計方針を変更する場合には、監査役及び監査役会は、あらかじめ変更の理由及びその影響について報告するよう取締役に求め、その変更の当否についての会計監査人の意見を徴し、その相当性について判断しなければならない。Lv.2
  (計算関係書類の監査)33

1.監査役は、各事業年度における計算関係書類を特定取締役(計算関係書類の作成に関する職務を行った取締役等の会社計算規則130条第4項に定める取締役をいう。以下本条において同じ。)から受領する。Lv.1監査役は、取締役及び使用人等に対し重要事項について説明を求め確認を行う。Lv.3

2.監査役は、各事業年度における計算関係書類につき、会計監査人から会計監査報告及び監査に関する資料を受領する。Lv.1監査役は、会計監査人に対し会計監査上の重要事項について説明を求め、会計監査報告の調査を行う。Lv.3当該調査の結果、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、監査役は、自ら監査を行い、相当でないと認めた旨及び理由を監査役監査報告に記載しなければならない。Lv.1

3.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき、会計監査人の監査の方法及び結果の相当性について審議を行い、監査役会としての監査意見を形成しなければならない。Lv.1当該審議の結果、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、監査役会は、相当でないと認めた旨及び理由を監査役会監査報告に記載しなければならない。Lv.1

4.監査役会は、その決議によって、特定取締役から計算関係書類の通知を受け、会計監査人から会計監査報告の通知を受ける職務を行う特定監査役(会社計算規則130条第5項に定める監査役をいう。)を定めることができる。Lv.5
  (会計監査人の選任等の手続)34

1.監査役会は、会計監査人の解任又は不再任の決定の方針を定めなければならない。Lv.2

2.監査役会は、会計監査人の再任の適否について、取締役、社内関係部署及び会計監査人から必要な資料を入手しかつ報告を受け、毎期検討する。Lv.3

3.監査役会は、会計監査人の再任の適否の判断に当たって、前項の検討を踏まえ、会計監査人の職務遂行状況(従前の事業年度における職務遂行状況を含む。)、監査体制、独立性及び専門性などが適切であるかについて、確認する。Lv.3

4.監査役会は、会計監査人の再任が不適当と判断した場合は、速やかに新たな会計監査人候補者を検討しなければならない。Lv.2新たな会計監査人候補者の検討に際しては、取締役及び社内関係部署から必要な資料を入手しかつ報告を受け、31条に定める事項について確認し、独立性や過去の業務実績等について慎重に検討するとともに、監査計画や監査体制、監査報酬水準等について会計監査人候補者と打合せを行う。Lv.3

5.監査役会は、前項までの確認の結果や方針に従い、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに不再任に関する議案の内容を決定する。Lv.1

6.監査役会は、会計監査人の選任議案について、当該候補者を会計監査人の候補者とした理由が株主総会参考書類に適切に記載されているかについて確認しなければならない。Lv.2
【第1項参考】会社法第344条(会計監査人の選解任等の議案内容の決定権が監査役に移行したこと。)を踏まえた改定である。
【第1項補足】「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」は、会社法施行規則第126条第4号にて事業報告へ記載されることとなっているが、事業報告への記載は取締役の責務としても、会計監査人の選解任等の議案内容の決定権を有する以上監査役として「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」を定める必要がある。
  (会計監査人の報酬等の同意手続)35

1.監査役は、会社が会計監査人と監査契約を締結する場合には、取締役、社内関係部署及び会計監査人から必要な資料を入手しかつ報告を受け、また非監査業務の委託状況及びその報酬の妥当性を確認のうえ、会計監査人の報酬等の額、監査担当者その他監査契約の内容が適切であるかについて、契約毎に検証する。Lv.3

2.監査役会は、会計監査人の報酬等の額の同意の判断に当たって、前項の検証を踏まえ、会計監査人の監査計画の内容、会計監査の職務遂行状況(従前の事業年度における職務遂行状況を含む。)及び報酬見積りの算出根拠などが適切であるかについて、確認する。Lv.3

3.監査役会は、会計監査人の報酬等の額に同意した理由が、事業報告に適切に記載されているかについて確認しなければならない。Lv.2
【参考】会社法施行規則第126条第2号を踏まえた改定である。
第8章 監査の方法等
  (監査計画及び業務の分担)36

1.監査役会は、内部統制システムの構築・運用の状況にも留意のうえ、重要性、適時性その他必要な要素を考慮して監査方針をたて、監査対象、監査の方法及び実施時期を適切に選定し、監査計画を作成する。Lv.3監査計画の作成は、監査役会全体の実効性についての分析・評価の結果を踏まえて行い、監査上の重要課題については、重点監査項目として設定する。Lv.3

2.監査役会は、効率的な監査を実施するため、適宜、会計監査人及び内部監査部門等と協議又は意見交換を行い、監査計画を作成する。Lv.3

3.監査役会は、組織的かつ効率的に監査を実施するため、監査業務の分担を定める。Lv.3

4.監査役会は、監査方針及び監査計画を代表取締役及び取締役会に説明するものとする。Lv.4

5.監査方針及び監査計画は、必要に応じ適宜修正する。Lv.3
【第1項補足】実務上、毎年の監査計画策定に当たり、前年度の監査計画及び実績の分析・評価に基づき、反省点の改善、次期の重要課題の設定、往査先の選定等を行い監査計画に反映している例が多い。また、個々の監査役の実績評価についても行うことが望ましいが、そこまで基準に含めることは実務との乖離が大きいので本条では言及していない。なお、評価結果の開示まで行うかどうかは会社の裁量に委ねられることから、本基準では言及していない。
【第1項参考】GC補充原則4-11Bを踏まえた改定である。
  (内部監査部門等との連携による組織的かつ効率的監査)37

1.監査役は、会社の業務及び財産の状況の調査その他の監査職務の執行に当たり、内部監査部門その他内部統制システムにおけるモニタリング機能を所管する部署(本基準において「内部監査部門等」という。)と緊密な連携を保ち、組織的かつ効率的な監査を実施するよう努める。Lv.4

2.監査役は、内部監査部門等からその監査計画と監査結果について定期的に報告を受け、必要に応じて調査を求める。Lv.3監査役は、内部監査部門等の監査結果を内部統制システムに係る監査役監査に実効的に活用する。Lv.3

3.監査役は、取締役のほか、コンプライアンス所管部門、リスク管理所管部門、経理部門、財務部門その他内部統制機能を所管する部署(本条において「内部統制部門」という。)その他の監査役が必要と認める部署から内部統制システムの構築・運用の状況について定期的かつ随時に報告を受け、必要に応じて説明を求める。Lv.3

4.監査役会は、各監査役からの報告を受けて、取締役又は取締役会に対して助言又は勧告すべき事項を検討する。Lv.3ただし、監査役会の決定は各監査役の権限の行使を妨げることはできない。Lv.1
  (企業集団における監査の方法)38

1.監査役は、取締役及び使用人等から、子会社の管理の状況について報告又は説明を受け、関係資料を閲覧する。Lv.3

2.監査役は、その職務の執行に当たり、親会社及び子会社の監査役、内部監査部門等及び会計監査人等と積極的に意思疎通及び情報の交換を図るよう努める。Lv.4

3.監査役は、取締役の職務の執行を監査するため必要があると認めたときは、子会社に対し事業の報告を求め、又はその業務及び財産の状況を調査する。Lv.3

. 会社に重要な関連会社がある場合には、当該関連会社の重要性に照らして、第1項及び第2項に準じて監査を行うものとする。Lv.4
  (取締役会への出席・意見陳述)39

1.監査役は、取締役会に出席し、かつ、必要があると認めたときは、意見を述べなければならない。Lv.1

2.監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めたとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めたときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければならない。Lv.1

3.監査役は、取締役会に前項の報告をするため、必要があると認めたときは、取締役会の招集を請求する。Lv.3また、請求後、一定期間内に招集の通知が発せられない場合は、自らが招集する。Lv.3

4.監査役は、取締役会議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめ、出席した監査役は、署名又は記名押印しなければならない。Lv.1
  (取締役会の書面決議)40

取締役が取締役会の決議の目的である事項について法令の規定に従い当該決議を省略しようとしている場合には、監査役は、その内容(取締役会の決議を省略することを含む。)について検討し、必要があると認めたときは、異議を述べる。Lv.3
  (特別取締役による取締役会への出席・意見陳述)41

1.取締役会が特別取締役による取締役会の決議をすることができる旨を定めている場合には、監査役会は、その決議によって当該取締役会に出席する監査役をあらかじめ定めることができる。Lv.5ただし、その他の監査役の当該取締役会への出席を妨げることはできない。Lv.1

2.特別取締役による取締役会に出席した監査役は、必要があると認めたときは、意見を述べなければならない。Lv.1

3.特別取締役による取締役会に出席した監査役は、特別取締役による取締役会の議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめ、これに署名又は記名押印しなければならない。Lv.1

4.特別取締役による取締役会に出席した監査役は、他の監査役に対して付議事項等について報告を行わなければならない。Lv.2
  (重要な会議等への出席)42

1.監査役は、取締役会のほか、重要な意思決定の過程及び職務の執行状況を把握するため、経営会議、常務会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会その他の重要な会議又は委員会に出席し、Lv.3必要があると認めたときは、意見を述べる。Lv.3

2.前項の監査役が出席する会議に関して、監査役の出席機会が確保されるとともに、出席に際して十分な事前説明が行われるよう、監査役は、取締役等に対して必要な要請を行う。Lv.3

3.第1項の会議又は委員会に出席しない監査役は、当該会議等に出席した監査役又は取締役若しくは使用人から、付議事項についての報告又は説明を受け、関係資料を閲覧する。Lv.3
  (文書・情報管理の監査)43

1.監査役は、主要な稟議書その他業務執行に関する重要な書類を閲覧し、必要があると認めたときは、取締役又は使用人に対しその説明を求め、又は意見を述べる。Lv.3

2.監査役は、所定の文書・規程類、重要な記録その他の重要な情報が適切に整備され、かつ、保存及び管理されているかを調査し、必要があると認めたときは、取締役又は使用人に対し説明を求め、又は意見を述べる。Lv.3
  (法定開示情報等に関する監査)44

1.監査役は、有価証券報告書その他会社が法令の規定に従い開示を求められる情報で会社に重大な影響のあるもの(本条において「法定開示情報等」という。)に重要な誤りがなくかつ内容が重大な誤解を生ぜしめるものでないことを確保するための体制について、第24条に定めるところに従い、法定開示情報等の作成及び開示体制の構築・運用の状況を監視し検証する。Lv.3

2.監査役は、継続企業の前提に係る事象又は状況、重大な事故又は災害、重大な係争事件など、企業の健全性に重大な影響のある事項について、取締役が情報開示を適時適切な方法により、かつ、十分に行っているかを監視し検証する。Lv.3
  (取締役及び使用人に対する調査等)45

1.監査役は、必要があると認めたときは、取締役及び使用人に対し事業の報告を求め、又は会社の業務及び財産の状況を調査しなければならない。Lv.2

2.監査役は、必要に応じ、ヒアリング、往査その他の方法により調査を実施し、十分に事実を確かめ、監査意見を形成するうえでの合理的根拠を求める。Lv.3
  (会社財産の調査)46

監査役は、重要な会社財産の取得、保有及び処分の状況、会社の資産及び負債の管理状況等を含めた会社財産の現況及び実質価値の把握に努める。Lv.4
  (会計監査人との連携)47

1.監査役及び監査役会は、会計監査人と定期的に会合をもち、必要に応じて監査役会への出席を求めるほか、会計監査人から監査に関する報告を適時かつ随時に受領し、積極的に意見及び情報の交換を行うなど、会計監査人と緊密な連携を保ち実効的かつ効率的な監査を実施することができるよう、そのための体制の整備に努める。Lv.4

2.監査役及び監査役会は、会計監査人から監査計画の概要を受領し、監査重点項目等について説明を受け、意見交換を行う。Lv.3

3.監査役は、業務監査の過程において知り得た情報のうち、会計監査人の監査の参考となる情報又は会計監査人の監査に影響を及ぼすと認められる事項について会計監査人に情報を提供するなど、会計監査人との情報の共有に努める。Lv.4

4.監査役は、必要に応じて会計監査人の往査及び監査講評に立ち会うほか、会計監査人に対し監査の実施経過について、適宜報告を求めることができる。Lv.5

5.監査役は、会計監査人から取締役の職務の執行に関して不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実を含む。)がある旨の報告等を受けた場合には、監査役会において審議のうえ、必要な調査を行い、取締役会に対する報告又は取締役に対する助言若しくは勧告など、必要な措置を適時に講じなければならない。Lv.2
【第1項、第3項補足】「報告を受け意見交換する」ことと会計監査人に対する情報提供を別の条項とし、後者を第3項とした。
  第9章 会社の支配に関する基本方針等及び第三者割当等
  (会社の支配に関する基本方針等)48

1.監査役は、会社がその財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(本条において「基本方針」という。)を定めている場合には、取締役会その他における審議の状況を踏まえ、次に掲げる事項について検討し、監査報告において意見を述べなければならない。Lv.1

一 基本方針の内容の概要

二 次に掲げる取組みの具体的な内容の概要
イ 会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
ロ 基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み(本条において「買収防衛策」という。)

2.監査役は、前項第2号に定める各取組みの次に掲げる要件への該当性に関する取締役会の判断及びその判断に係る理由について、取締役会その他における審議の状況を踏まえて検討し、監査報告において意見を述べなければならない。Lv.1

一 当該取組みが基本方針に沿うものであること

二 当該取組みが会社の株主の共同の利益を損なうものではないこと

三 当該取組みが会社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないこと

3.監査役は、買収防衛策の発動又は不発動に関する一定の判断を行う委員会の委員に就任した場合、会社に対して負っている善管注意義務を前提に、会社利益の最大化に沿って適正に当該判断を行う。Lv.3
  (第三者割当等の監査)49

監査役は、募集株式又は募集新株予約権(以下「募集株式等」という。)の発行等に際し、22条及び第44条第1項に定める監査を行うほか、次に掲げる職務を行う。

一 監査役は、支配株主の異動を伴う募集株式等の引受人(その子会社を含む。)が総株主の議決権の過半数を有することとなる募集株式の発行等を会社が行う場合、当該募集株式等の発行等に関する意見を表明する。Lv.1

二 監査役は、会社が株式又は新株予約権(新株予約権付社債を含む。)の第三者割当を行う場合、有利発行該当性に関する事項を検討し、法令又は金融商品取引所の上場規則等が求めるところに従い意見を述べる。Lv.3

三 監査役は、株主総会決議を経ずに行われる大規模第三者割当(直近6ヶ月間における第三者割当による議決権の希薄化率が25以上となる場合又は第三者割当によって支配株主となる者が生じる場合をいう。以下本条において同じ。)について、会社役員の地位の維持を目的とするものではないか等を検討し、必要に応じて取締役に対して助言又は勧告を行う。Lv.3監査役が当該大規模第三者割当に関し独立した者としての第三者意見を述べる場合には、会社に対する善管注意義務を前提に、その職務を適正に遂行する。Lv.3
【第1号参考】会社法施行規則第42条の2第7号を踏まえた改定である。
   ■第10章 株主代表訴訟等への対応
  (取締役と会社間の訴えの代表)50

監査役は、会社が取締役に対し又は取締役が会社に対し訴えを提起する場合には、会社を代表する。Lv.1
  (取締役等の責任の一部免除に関する同意)51

1.監査役は、次に掲げる同意に際し、監査役会にて協議を行う。Lv.3

一 取締役の責任の一部免除に関する議案を株主総会に提出することに対する同意

二 取締役会決議によって取締役の責任の一部免除をすることができる旨の定款変更に関する議案を株主総会に提出することに対する同意

三 定款の規定に基づき取締役の責任の一部免除に関する議案を取締役会に提出することに対する同意

四 社外取締役その他の非業務執行取締役との間で責任限定契約をすることができる旨の定款変更に関する議案を株主総会に提出することに対する同意

2.前項各号の同意を行うに当たり、監査役は、定款変更に係る議案に対する同意については定款変更の当否や提案理由の適切さ等を、責任の一部免除に係る議案に対する同意については免除の理由、監査役が行った調査結果、当該事案について判決が出されているときにはその内容等を十分に吟味し、かつ、必要に応じて外部専門家の意見も徴して判断を行う。Lv.3

3.第1項各号の同意の当否判断のために行った監査役の調査及び審議の過程と結果については、監査役は、記録を作成し保管する。Lv.3

4.法令の規定に基づいて会計監査人の責任の一部免除に関する議案(責任限定契約に関する議案を含む。)が株主総会又は取締役会に提出される場合についても、監査役及び監査役会は、本条の規定に準じるものとする。Lv.4

5.監査役は、監査役の責任の一部免除等について意見をもつに至ったときは、必要に応じて取締役会等において意見を述べる。Lv.3
【第1項第4号参考】会社法第427条を踏まえた改定である。
  (株主代表訴訟の提訴請求の受領及び不提訴理由の通知)52

1.監査役は、取締役に対しその責任を追及する訴えを提起するよう株主から請求を受けた場合には、速やかに他の監査役に通知するとともに、監査役会を招集してその対応を十分に審議のうえ、提訴の当否について判断しなければならない。Lv.1

2.前項の提訴の当否判断に当たって、監査役は、被提訴取締役のほか関係部署から状況の報告を求め、又は意見を徴するとともに、関係資料を収集し、外部専門家から意見を徴するなど、必要な調査を適時に実施する。Lv.3

3.監査役は、第1項の判断結果について、取締役会及び被提訴取締役に対して通知する。Lv.3

4.第1項の判断の結果、責任追及の訴えを提起しない場合において、提訴請求株主又は責任追及の対象となっている取締役から請求を受けたときは、監査役は、当該請求者に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を提出し、責任追及の訴えを提起しない理由を通知しなければならない。Lv.1この場合、監査役は、外部専門家の意見を徴したうえ、監査役会における審議を経て、当該通知の内容を検討する。Lv.3

一 監査役が行った調査の内容(次号の判断の基礎とした資料を含む。)

二 被提訴取締役の責任又は義務の有無についての判断及びその理由

三 被提訴取締役に責任又は義務があると判断した場合において、責任追及の訴えを提起しないときは、その理由

5.監査役は、提訴の当否判断のために行った調査及び審議の過程と結果について、記録を作成し保管する。Lv.3
  (補助参加の同意)53

1.監査役は、株主代表訴訟における会社の被告取締役側への補助参加の同意に際し、監査役会にて協議を行う。Lv.3

2.前項の補助参加への同意の当否判断に当たって、監査役は、代表取締役及び被告取締役のほか関係部署から状況の報告を求め、又は意見を徴し、必要に応じて外部専門家からも意見を徴する。Lv.3監査役は、補助参加への同意の当否判断の過程と結果について、記録を作成し保管する。Lv.3
  (訴訟上の和解)54

1.監査役は、株主代表訴訟について原告株主と被告取締役との間で訴訟上の和解を行う旨の通知及び催告が裁判所からなされた場合には、速やかに監査役会等においてその対応を十分に審議し、和解に異議を述べるかどうかを判断しなければならない。Lv.2

2.前項の訴訟上の和解の当否判断に当たって、監査役は、代表取締役及び被告取締役のほか関係部署から状況の報告を求め、又は意見を徴し、必要に応じて外部専門家からも意見を徴する。Lv.3監査役は、訴訟上の和解の当否判断の過程と結果について、記録を作成し保管する。Lv.3
  (多重代表訴訟等における取扱い)55

1.最終完全親会社(会社が特定責任追及の訴えの制度(いわゆる多重代表訴訟制度)の対象となる子会社(以下本条において「完全子会社」という。)を有している場合の当該会社をいう。以下本条において同じ。)の監査役は、完全子会社の取締役、清算人(以下本条において「完全子会社取締役等」という。)に対する特定責任追及の訴えについて、以下に留意して、本章の規定に準じた対応を行う。

一 完全子会社が最終完全親会社の株主から完全子会社取締役等に対する特定責任追及の訴えの提起に係る訴訟告知を受けた旨の通知を最終完全親会社が完全子会社から受ける場合、最終完全親会社の監査役が最終完全親会社を代表する。Lv.1

二 最終完全親会社が完全子会社取締役等に対して特定責任追及の訴えを行う場合、最終完全親会社の監査役が最終完全親会社を代表する。Lv.1

三 特定責任追及の訴えにおいて最終完全親会社が被告完全子会社取締役等側へ補助参加を行う場合、最終完全親会社の監査役は当該参加に同意するか否かを判断する。Lv.1

2.完全子会社の監査役は、最終完全親会社の株主から完全子会社取締役等に対する特定責任追及の訴えの提訴請求を完全子会社が受ける場合、完全子会社を代表する。Lv.1
  【第55条補足】会社法において、多重代表訴訟制度等が導入されたことを踏まえた改定である。なお、子会社役員に対して@多重代表訴訟やA株式交換等があった場合の親会社株主からの代表訴訟等が提起された場合、親会社監査役は自らにも一定の責任が生じることに留意して対応すべきである。
  11章 監査の報告
  (監査内容等の報告・説明)56

監査役は、監査活動及び監査結果に対する透明性と信頼性を確保するため、自らの職務遂行の状況や監査の内容を必要に応じて説明することが監査役の重要な責務であることを、自覚しなければならない。Lv.2
  (監査調書の作成)57

監査役は、監査調書を作成し保管しなければならない。Lv.2当該監査調書には、監査役が実施した監査方法及び監査結果、並びにその監査意見の形成に至った過程及び理由等を記録する。Lv.3
  (代表取締役及び取締役会への報告)58

1.監査役及び監査役会は、監査の実施状況とその結果について、定期的に代表取締役及び取締役会に報告する。Lv.3

2.監査役及び監査役会は、その期の重点監査項目に関する監査及び特別に実施した調査等の経過及び結果を代表取締役及び取締役会に報告し、必要があると認めたときは、助言又は勧告を行うほか、状況に応じ適切な措置を講じる。Lv.3
  (監査報告の作成・通知)59

1.監査役は、監査役監査報告を作成し、監査役会に提出しなければならない。Lv.1

2.監査役会は、各監査役が作成した監査役監査報告に基づき、審議のうえ、正確かつ明瞭に監査役会監査報告を作成しなければならない。Lv.1

3.監査役会は、特定取締役(28条第2項及び第33条第1項に規定された特定取締役をいう。以下本条において同じ。)から受領した事業報告、計算関係書類その他の書類について、法定記載事項のほか、開示すべき事項が適切に記載されているかを確かめ、必要に応じ取締役に対し説明を求め、又は意見を述べ、若しくは修正を求める。Lv.3

4.監査役会は、監査役会監査報告を作成するに当たり、取締役の法令又は定款違反行為及び後発事象の有無等を確認するとともに、44条第2項に掲げる事項にも留意のうえ、監査役会監査報告に記載すべき事項があるかを検討する。Lv.3

5.監査役は、監査役会監査報告の内容と自己の監査報告の内容が異なる場合には、自己の監査役監査報告の内容を監査役会監査報告に付記する。Lv.3

6.監査役は、自己の監査役監査報告及び監査役会監査報告に署名又は記名押印する。Lv.3また、常勤の監査役及び社外監査役はその旨を記載するものとする。Lv.4また、監査役会監査報告には、作成年月日を記載しなければならない。Lv.1

7.特定監査役(第28条第5項及び第33第4項の規定により定められた特定監査役をいう。以下本条において同じ。)は、事業報告等に係る監査役会監査報告の内容及び計算関係書類に係る監査役会監査報告の内容を特定取締役に通知し、計算関係書類に係る監査役会監査報告の内容を会計監査人に通知しなければならない。Lv.1ただし、事業報告等に係る監査報告と計算関係書類に係る監査報告を一通にまとめて作成する場合には、当該監査報告の内容を会計監査人に通知しなければならない。Lv.1

8.前項において、特定監査役は、必要に応じて、事業報告等に係る監査役会監査報告の内容を特定取締役に通知すべき日について特定取締役との間で合意し、計算関係書類に係る会計監査報告の内容を特定監査役に通知すべき日並びに計算関係書類に係る監査役会監査報告の内容を特定取締役及び会計監査人に通知すべき日について特定取締役及び会計監査人との間で合意して定めるものとする。Lv.4
  (電磁的方法による開示)60

1.株主総会参考書類、事業報告、計算書類又は連結計算書類(当該連結計算書類に係る会計監査報告及び監査役会監査報告を含む。)に記載又は表示すべき事項の全部又は一部について、インターネットによる開示の措置をとることにより株主に対して提供したものとみなす旨の定款の定めがある会社において、取締役が当該措置をとろうとしている場合には、監査役は、当該措置をとることについて検討し、必要があると認めたときは、異議を述べる。Lv.3

2.取締役が前項の定款の定めに基づく措置をとる場合に、監査役は、現に株主に対して提供される事業報告又は計算書類若しくは連結計算書類が、監査報告を作成するに際して監査をした事業報告又は計算書類若しくは連結計算書類の一部であることを株主に対して通知すべき旨を取締役に請求することができる。Lv.5
  (株主総会への報告・説明等)61

1.監査役は、株主総会に提出される議案及び書類について法令若しくは定款に違反し又は著しく不当な事項の有無を調査し、当該事実があると認めた場合には、株主総会において調査結果を報告しなければならない。Lv.1また、監査役は、監査役の説明責任を果たす観点から、必要に応じて株主総会において自らの意見を述べるものとする。Lv.4

2.監査役は、株主総会において株主が質問した事項については、議長の議事運営に従い説明する。Lv.3

3.監査役は、株主総会議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめる。Lv.3
(附則)

本基準において、「記載」には、その性質に反しない限り、電磁的記録を含むものとする。また、本基準において言及される各種書類には、電磁的記録により作成されたものを含むものとする。Lv.5




監査役監査基準・内部統制監査役監査基準の平成23年度改定
経緯 平成23年3月15日、日本監査役協会から「監査役監査基準」および「内部統制システムに係る監査の実施基準」の改定が公表。
平成22年12月のパブリック・コメントの結果も反映。
改定の背景・概要 監査役監査基準 平成16年の全面改定では、内部統制部門と実効的連携を図った組織的監査の重要性を基礎に据えた監査役基準が制定。
今回は、会社法制定に伴う反映等を行った平成19年改定以来の実質的改定。
(1)平成22年4月に取りまとめられ日本監査役協会から公表された「有識者懇談会の答申に対する最終報告書」において、監査役監査環境の整備、内部統制システムに関する監査、第三者割当に関する監査、会計監査人の監査報酬の同意および選任議案の同意などに関して、監査役監査の実務上のガイドラインとなるモデルが提示された。この提言内容を反映。
(2)企業不祥事を予防するための監査役監査の重要性が高まっている中、企業不祥事が発覚した場合に不祥事の原因究明と再発防止を目的とする第三者委員会が設置されることも増えている。
⇒24条改定。
(3)@独立委員を1名以上指定することが求められること、A第三者割当が行われる場合に監査役に一定の意見表明が求められる。
⇒新たな上場会社特有の規律に対応した改定。
(4)グループ経営が浸透し、企業集団における健全性の維持(例えば子会社等において不祥事等が生じ会社に重大な損害を与えることを防ぐ対応んまど)の重要性
⇒企業集団における監査役監査について改定(22条)
(5)適正開示の重要性
⇒有価証券報告書を含む企業の情報開示の適正性に関する監査役監査について改定(41条)。
(6)監査役がその善管注意義務を果たすため、弁護士に依頼する必要がある局面が増加。
⇒3条5項で弁護士等の起用について言及。
内部統制監査役監査基準 平成19年に制定。
会社法において上場会社など大規模公開会社に内部統制システムの整備義務が明記され、監査役としての内部統制の整備状況に整備状況に対する意見表明、内部監査部門等との連携をとった監査役監査環境の整備が規定。
こうした流れの中で、監査役が果たすべき内部統制システムの実効性確保の役割を明確にしたもの。
(1)有識者懇談会答申最終報告書におけるベストプラクティスの反映の改定。
ex.事後報告の記載内容に関する監査等。
(2)財務報告内部統制制度の施行に対応した改定。
★監査役監査基準の主な改正点
★監査役監査基準の主な改定点 弁護士への相談 規定 3条5項:「監査役は、監査意見を形成するにあたり、よく事実を確かめ、必要があると認めたときは、弁護士等外部専門家の意見を徴し、判断の合理的根拠を求め、その適正化に努めなければならない。
役割 株主代表訴訟における対応、第三者割当における有利発行該当性に関する意見表明、大規模第三者割当や買収防衛策に関連した第三者としての意見表明、企業不祥事があった場合の対応など、企業の健全で持続的な成長を確保する責務を負っている監査役(2条1項)にとって法的判断を伴う事項の重要性が増加
企業不祥事に際し、監査役が外部の弁護士等に依頼して第三者委員会を立ち上げることも、監査役として今後検討すべき選択肢。
(第三者委員会がその公表される報告書において監査役の法的義務違反を断じる例もでてきている。)
責任 企業の健全性に重大な影響を与える事象を知った監査役がしかるべき行動を取らなかった場合に、監査役としての善管注意義務違反が問われる。(厳しく任務懈怠責任を問う傾向)
(ダスキン事件(大阪高裁H18.6.9)や最高裁H21.11.27等)
監査役を含む会社役員が行った判断が弁護士に相談した上での帰結であれば、当該判断時に帰責事由「がない一事情として作用し、任務懈怠責任は問われない傾向。
(アパマンショップ最高裁判決(H22.7.15)においても、法律事項に関して業務施行者だけで判断することなく弁護士に対して相談を行っていたことが、善管注意義務違反を否定する1つの要素として認定されている)。
企業不祥事の兆候を監査により見つけた社内監査役が、知った後の対応を誤ることで、当該不祥事を放置していたとして、当該社内監査役に善管注意義務違反が問われるケースもある。
真摯な監査活動の結果として不祥事の兆候を知った場合には、業務執行者に対して一定の対応を求めるほかに、監査役会における協議等も経て法律専門家にも相談した上で、第三者委員会を立ち上げるなど、監査役としてとるべく対応を注意深く検討する必要。
対応を誤る⇒当該不祥事が粉飾決算など法定不実開示責任に至る場合には、相当な注意を払っていなかったとして、金商法に従った厳しいかつ巨額の損害賠償責任が監査役個人に課される自体にも発展し得る。(金商法21条の2等)
対応 監査役が独自に弁護士に相談するか、あるいは業務執行者に弁護士に相談するように求めるかはケース・バイ―ケース。
費用 第388条(費用等の請求)
監査役がその職務の執行について監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)に対して次に掲げる請求をしたときは、当該監査役設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない
一 費用の前払の請求
二 支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求
三 負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求
監査役がその所お汲むを行うための弁護士相談費用は、監査役が職務に関して依頼した以上、
通常、会社が支払いを拒否できる正当理由はほとんどなく、会社負担。
危機対応時における弁護士費用は、年間の監査予算とはまったく別で考えるべき。
上場企業において危機対応を誤った場合、巨額の損害が会社に生じる危機時であり、平時ベースで算定されている監査予算とはそもそもその射程が異なる。
第三者委員会を立ち上げた場合の弁護士費用も同様。
独立委員 規定 第5条4項:「独立役員に指定された社外監査役は、一般株主の利益ひいては会社の利益(本条において「一般株主の利益」という)を踏まえた公平で公正な経営の意思決定のために行動することが特に期待されていることを認識し、他の監査役と協力して一般株主との意見交換等を所管する部署と情報の交換を図り、必要があると認めたときは、一般株主の利益への配慮の観点から代表取締役及び取締役会に対して意見を述べる。」
背景 平成22年春から全上場会社に最低1名以上の独立役員の指定が求められている。
独立役員には、上場会社の取締役会などにおける業務執行に係る決定の局面等において、一般株主の利益への配慮がなされるよう必要な意見を述べるなど、一般株主の利益を踏まえた行動をとることが期待されている。
独立役員として社外監査役が指定されることも多い状況で、5条4項はこうした独立役員に期待される役割について言及。
説明 独立役員には、平時から、@一般株主の声や期待に関する感度を高く保つこと、A一般株主の利益にg対するリテラシーを高めることが望まれる⇒5条4項は「一般株主との意見交換等を所管する部署と情報の交換を図り」と規定。

IR担当部署に限らず、機関投資家の議決権行使判断権者と面談を行っている社内部署所との連携。
「一般株主の利益」=上場会社自体の利益。
他の利害関係者との利害調整を要する局面において、他の利害関係者の利益を考慮することを排除するものではない。
独立役員の職務は、監査役が会社法の規律に従い果たすべき善管注意義務の内容と何ら変わるところはなく、会社法上求められる職責を加重したものではない。
報告体制の強化 規定 第15条1項「監査役は、企業規模、業種、経営上のリスクその他会社固有の事情を考慮し、監査の実効性の確保の観点から、補助使用人の体制の強化に努めるものとする。
第17条1項「監査役は、取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制の強化に努めるものとする。」
説明 従前「補助使用人の体制について検討しなければならない」⇒トーンアップ。
補助使用人としては、専任スタッフのほか、内部統制部門の者の兼任などのケースもある。
企業集団監査 規定 第22条2項「監査役は、子会社等において生じる不祥事等が会社に与える損害の重大性の程度を考慮して、内部統制システムが会社及び子会社等において適切に構築・運用されているかに留意してその職務を執行するとともに、企業集団全体における監査の環境の整備にも努める。
企業集団レベルでの連結経営が進む中、企業集団全体の収益への貢献度からすると重要でない子会社であっても、目が届きにくいためにかえって企業集団全体に多大な悪影響を与える不祥事を発生させることがある。
⇒企業集団経営の観点から監査役として果たすべき職責をより明確にした改定。
監査役は親会社という株主の行為に対して監査を行い差止め等を行う職責までは負っていない。
親会社Pから不当な圧力があった場合には、子会社S社の監査役はS社取締役がS社利益に反するいわゆる非通例取引を行わないかを監査するとともに、P社監査役等と意思疎通・情報交換を行うことで解決を図ることになる。(会社法施行規則105条4項)

会社法施行規則 第105条(監査報告の作成)
4 監査役は、その職務の遂行に当たり、必要に応じ、当該株式会社の他の監査役、当該株式会社の親会社及び子会社の監査役その他これらに相当する者との意思疎通及び情報の交換を図るよう努めなければならない。d.
企業不祥事への
対応
規定 24(企業不祥事発生時の対応及び第三者委員会)

1.監査役は、企業不祥事(法令定款に違反する行為その他社会的非難を招く不正又は不適切な行為をいう。以下本条において同じ)が発生した場合、直ちに取締役等から報告を求め、必要に応じて調査委員会の設置を求め調査委員会から説明を受け、当該企業不祥事の事実関係の把握に努めるとともに、原因究明、損害の拡大防止、早期収束、再発防止、対外的開示のあり方等に関する取締役及び調査委員会の対応の状況について監視し検証しなければならない。

2.前項の取締役の対応が、独立性、中立性又は透明性等の観点から適切でないと認められる場合には、監査役は、監査役会における協議を経て、取締役に対して当該企業不祥事に対する原因究明及び再発防止策等の検討を外部の独立した弁護士等に依頼して行う第三者委員会(本条において「第三者委員会」という)の設置の勧告を行い、あるいは必要に応じて外部の独立した弁護士等に自ら依頼して第三者委員会を立ち上げるなど、適切な措置を講じる。

3.監査役は、当該企業不祥事に対して明白な利害関係があると認められる者を除き、当該第三者委員会の委員に就任することが望ましく、第三者委員会の委員に就任しない場合にも、第三者委員会の設置の経緯及び対応の状況等について、早期の原因究明の要請や当局との関係等の観点から適切でないと認められる場合を除き、当該委員会から説明を受け、必要に応じて監査役会への出席を求める。監査役は、第三者委員会の委員に就任した場合、会社に対して負っている善管注意義務を前提に、他の弁護士等の委員と協働してその職務を適正に遂行するものとする。
(1) 企業不祥事に対する監査役の基本的対応(24条1項)
監査役にとって、企業不祥事発生時の対応者、非業務執行役員としての中心的職務。
企業不祥事が発生した場合、拡大損害の防止や会社信用の維持の観点からまさに膿を一気に出し切る抜本的な対応を求められることが多い。
取締役の善管注意義務の裁量は平時よりも限定される。

1項において、従業員の不祥事等取締役が主導して行うことになる企業不祥事への対応について、取締役(内部監査担当部署を含む)が善管注意義務にのっとって適正に対応しているかを監査する旨の基本規定が置かれている。
(2) 重大な企業不祥事における第三者委員会と監査役の職責(24条2項)
24条1項は、一部従業員の不正など、業務執行側が行う対応策の監視検証で済む場合を想定。
取締役など会社幹部が関与し、その法的責任が問われ得る重大な企業不祥事の場合、業務執行為の一環として社内調査委員会等を立ち上げそのまま企業不祥事に対する原因究明や再発防止策等の諸対応を行ったのでは、利益相反の懸念から、徹底的に膿を出し切ったと対外的に評価してもらえず、企業の早期回復が図れない。

利害関係がなく専門性がある者によって第三者委員会が立ち上げられ、徹底した原因究明と再発防止に取り組む動きが活発化。
「企業不祥事における第三者委員会ガイドライ」(日弁連ガイドライン)が公表。
監査役監査基準では、会社が自らの自浄作用を早期に発揮するために一定の外部者が関与して立ち上げられる委員会を広く「第三者委員会」と言及している。(日弁連ガイドライン型の第三者委員会に限定されない。)
(3) 利害関係のない監査役による第三者委員会立上げ等への関与
真の依頼者はステークホルダー全体であるが、形式的な依頼者は経営陣となる。
⇒対外的な信頼性の問題が指摘⇒非業務執行役員として企業の健全で持続的な成長の確保が職責である監査役に関して、第三者委員会への一定の積極的関与を求める声も強い。
監査役の基本的職責:
企業の健全で持続的な成長を確保し社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立すること(2条1項)。
重大な企業不祥事があった場合に、監査役が、当該企業不祥事に利害関係のない者でかつ会社に対して法的に善管注意義務を負っている者として、会社法上有している業務監査権限等を行使し、対外的信頼の回復に向けた原因究明や再発防止に向けた意見を述べることは、会社法が監査役に求める中心的職責。
逆に、社内の状況をある程度理解している者として非業務執行役員が第三者委員会の立上げに関与することは、不祥事の早期解決という観点から効率性が高く望ましい場合も少なくない。
不祥事が発覚した場合には、企業が早期に自浄作用を発揮し対外的信頼を早期に回復することが、常に喫緊の要請。
×再発防止策への関与は、監査役が行えない業務執行行為。
vs.
監査役の業務執行行為に制約があるのは、監査対象に関与してはいけない(自己監査)という規律からの話であり、監査役の監査の職務には、修正すべき点を発見するだけでなく、それに対して見直しの方向性について意見を述べることまで含まれている。
(第三者委員会の提言等を受諾するかどうかの最終決定はすべて取締役会において行われるのであり、取締役会がその意思決定を行うまでの過程において、意見を述べる会議体(第三者委員会)に監査役が関与してはならないという規律は、会社法上の監査役の職責からは導き出されない。)
業務執行に第三者委員会立上げの動きが特段にない場合等では、社外監査役等が、監査役会に諮った上で、自ら外部の弁護士に依頼して第三者委員会を立ち上げることも、十分検討すべき選択肢。(現にそうした設置事例も著名事例で存在。)
尚、監査役が第三者委員会の立上げ等に関するアクション等を適時に行うには、監査役に重要情報が適切に伝達される体制が敷かれていることが必要。
(4) 利害関係のない監査役の第三者委員会への就任
社外監査役等が第三者委員会の委員に就任する場合、監査役会との密接な連携など、監査役会からの一定の協力が求められる。
(5) 「明白な利害関係のある監査役」による関与の否定
当該監査役の個別の利害関係の有無・強弱次第、さらには当該監査役の会社との間の俗人的状況次第。
日弁連ガイドライ:社外役員について、直ちに利害関係を有する者に該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断。
「明白な利害関係のある監査役」
@当該不祥事に直接加担していた監査役

A当該不祥事に具体的に気づきながらも何らの措置もとっていなかった監査役

何らかの企業不祥事が生じた際に監査役が善管注意義務違反の法的責任を問われるのは、現在までの判例法の趨勢に照らすと、当該企業不祥事について直接間接に知っていたにもかかわらずそれを放置していた場合。
(6) 社外監査役と「明白な利害関係」
当該不祥事を初めて知った社外監査役や独立監査役などは、通常、「明白な利害関係があると認められる監査役」には該当しない。
第三者委員会のあるべき構成は
@完全に外部性・専門性の高い弁護士等と
A会社法上の法的義務を負いかつ社内事情にもある程度精通した非業務執行役員とのバランス論に所在。
(7) すでに監査活動を進めていた社内監査役
ケース・バイ・ケースであるが、その対応において善管注意義務違反に該当する事情がない限り、明白な利害関係があるとは直ちにはいえないであろう。
社内監査役が自ら発見していた不祥事については、重要性が高い事案であるほど、(監査役会における協議を経て)適時に弁護士等に相談し、第三者委員会の立ち上げに関与した方がよい場合も少なくない。
(こうした対応を適時に行っていないと、当該不祥事を放置していたとして、当該社内監査役個人に善管注意義務違反が問われる事態にも発展し得る。)
(8) 弁護士費用の会社負担
会社法388条に従い会社負担となるのが通常。
(9) 第三者委員会の設置の経緯・対応の状況等に関する監査役監査(24条3項)
緊急事態のため、監査役に重大な企業不祥事についてな何ら知らされることなく、代表取締役等によって第三者委員会が先行して立ち上げられることも多い。

監査役としては、関係者から委員会の立上げの経緯、委員選定の理由等の説明を受け、利益相反の懸念を持たれることなく企業の自浄作用を早期に果たすという観点から何か指摘すべき点があれば、意見を述べることになろう。
第三者委員会の調査結果をふまえ、監査役が業務執行者等に対して会社法に従った然るべき措置をとることが求められることもあろう。
「早期の原因究明の要請や当局との関係等の観点から適切でないと認められる場合を除き」との留保。

日弁連ガイドラインの趣旨を踏まえたもの。
第三者委員会が設置される場合に、事態収拾の緊急性の観点からの情報管理の要請や当局対応等の配慮から、第三者委員会への監査役からの情報アクセスが制約されることは十分あり得る。
かかるアクセス制限は、不祥事の早期解決と会社のさらなる拡大損害を防ぐなどの観点から合理的なものである限り、監査役としても一定限度受任せざるを得ない。
★内部統制監査役監査基準の主な改正点
★内部統制監査役監査基準の主な改正点 事業報告関連 規定 第5条
.監査役は、内部統制決議の内容の概要が、事業報告において正確かつ適切に記載されているかを検証する。また、以下のいずれかに該当する場合、監査役は、当該事業年度における内部統制システムの構築・運用状況が事業報告に適切に記載されているかを検証する。
一 重大な企業不祥事等が生じ、再発防止策のあり方を含め内部統制システムについて改善が求められている場合
二 前号の場合の他、事業の経過及び成果、対処すべき課題等の会社の現況に関する重要な事項として記載することが相当であると認められる場合
説明 有識者懇談会答申最終報告書において、内部統制システム構築運用の状況に関する十分な開示についてのベストプラクティスが提言⇒内部統制システムに係る事業報告の記載に関する監査役監査に関する規定がおかれた。
内部統制システムの構築・運用の状況について事業報告に記載すべき場合は、現行の会社法上、@事業の経過および成果、A対処すべき課題またはB会社の現況に関する重要な事項のいずれか。
内部統制システムの構築・運用状況はある意味取締役の業務執行の内容の詳細そのもの⇒業務執行の詳細を何でも事業報告で開示すべきであるという会社になるわけではない。
バランス論も踏まえ、期中や直近の気で「重大な企業不祥事等が商事、再発防止策のあり方を含め内部統制システムについて改善が求められている場合」には事業報告において再発防止策のあり方などを含めた内部統制システムの構築・運用の状況を記載すべき場合が多いとして、1号で例示。
財務報告内部統制関連 規定

13(財務報告内部統制に関する監査)

1.
監査役は、財務報告内部統制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。
一 代表取締役及び財務担当取締役(本条において「財務担当取締役等」という)が主導又は関与して不適正な財務報告が行われるリスク
二 会社の経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす財務情報が財務担当取締役において適時かつ適切に把握されていない結果、不適正な財務報告が組織的に又は反復継続して行われるリスク
三 会計監査人が関与又は看過して不適正な財務報告が行われるリスク

2.監査役は、財務報告内部統制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ、判断する。
一 財務担当取締役が、会社経営において財務報告の信頼性の確保及びそのための実効的体制の構築・運用が必要不可欠であることを認識しているか。また、財務報告における虚偽記載が適時かつ適切に発見・予防されないリスクの重大性を理解したうえで、財務報告内部統制の構築・運用及び評価のための基本計画を定めているか。

二 財務報告を所管する部署に会計・財務に関する十分な専門性を有する者が配置されているか。また、専門性を有する者を育成する中長期的取組みが行われているか。

三 財務担当取締役等が、財務報告の信頼性確保のために、以下の重要な事項について適切に判断・対応できる体制を構築・運用しているか。(ただし、以下は例示であり、会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な点に絞るものとする)
イ 会計処理の適正性と妥当性売上・売掛金の計上時期と実在性、棚卸資産の実在性、各種引当金計上の妥当性、税効果会計の妥当性、減損会計の妥当性、その他重要な会計処理の適正性と妥当性)
ロ 重要な会計方針の変更の妥当性
ハ 会計基準や制度の改正等への対応
 資本取引、損益取引における重要な契約の妥当性
 重要な資産の取得・処分等の妥当性
 資金運用の妥当性(デリバティブ取引等を含む)
 連結の範囲及び持分法適用会社の範囲の妥当性
 連結決算に重要な影響を及ぼす子会社及び関連会社に関する、上記の各事項の適正な会計処理
リ 後発事象の把握と重要性判定の妥当性

四 開示すべき財務情報が迅速かつ網羅的に収集され、法令等に従い適時に正確かつ十分に開示される体制が構築・運用されているか。

五 会計監査人が適正に監査を行う体制が整備されているか。会計監査人の会社からの独立性が疑われる特段の関係が形成されていないか。

 会社の経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性が高いと認められる事項について、財務担当取締役と会計監査人との間で適切に情報が共有されているか。
3.会社の財務報告内部統制が、金融商品取引法第24条の4の4第1項に定める財務報告内部統制の評価報告(本条において「内部統制報告」という)の対象となっている場合、監査役は、以下の方法により前項の判断を行う。

一 財務報告内部統制の評価に関する以下の事項(ただし、以下に掲げる事項はあくまで例示であり、会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な事項に絞るものとする)について、財務担当取締役等及び内部統制部門から報告を受ける。必要があれば証跡の閲覧及び運用テスト等への立会い等を通じて、実際の状況を確認する。

イ 財務報告内部統制の構築・運用及び評価のための基本計画と体制の状況
ロ 財務報告リスク及び情報開示リスクの特定の妥当性(前項第3号に列挙される重要な事項に関するリスクについて適切に判断及び対応できる体制の状況を含む)
ハ 評価範囲の妥当性(重要な事業と拠点の特定を含む)
ニ 重要な業務プロセスの特定と選定の妥当性
ホ チェックリスト等を利用した全社レベルの内部統制の構築・運用の評価状況
へ 重要な業務プロセスの構築・運用の評価状況
ト 連結グループの決算及び財務報告プロセスの構築・運用の評価状況
チ IT全般統制及び業務処理統制の構築・運用の評価状況
リ 不備の検出、改善及び是正のプロセスの妥当性
ヌ 内部統制報告の作成プロセスと内容の妥当性
ル 過剰な文書化及び証跡化の有無、重複したコントロールの有無、その他会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過剰な対応の有無

二 金融商品取引法第193条の2第2項の規定に従い内部統制報告について監査証明を行う者(本条において「財務報告内部統制監査人」という)から、財務報告内部統制における重大なリスクへの対応状況その他財務報告内部統制の実効性に重要な影響を及ぼすおそれがあると認められる事項について、前号の財務報告内部統制の評価に関する主要な点に留意して、適時かつ適切に監査役又は監査役会において報告を受ける。

三 監査役がその監査職務の過程で知り得た情報で、財務報告内部統制の実効性に重要な影響を及ぼすと認められる事項について、財務担当取締役等及び財務報告内部統制監査人との情報の共有に努める。

 財務担当取締役財務報告内部統制監査人との間で、財務報告内部統制の評価範囲、評価方法、有効性評価等について意見(会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な事項の範囲についての意見を含む)が異なった場合には、財務担当取締役及び財務報告内部統制監査人に対し、適時に監査役又は監査役会に報告するよう求める。

五 財務担当取締役等に対して、取締役会等に以下の事項について定期的な報告をするよう求める。

イ 財務担当取締役等による財務報告内部統制の評価の状況
ロ 財務報告内部統制監査人の監査の状況

六 内部統制システムについて会社法に定める監査報告を作成する時点において、財務報告内部統制監査人から、財務報告内部統制の監査結果について、書面による報告を受ける。口頭による報告を受ける場合、その内容を監査役会議事録に残すことが望ましい。財務報告内部統制について開示すべき重要な不備(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令第2条第10号に定義される不備をいう。以下本条において同じ)が存在する旨の指摘があった場合には、財務担当取締役等と財務報告内部統制監査人の双方から説明を求め、当該不備の内容とその重大性、既に実施した改善策と今後の改善方針、計算関係書類及びその会計監査結果に及ぼす影響などについて確認のうえ、当該不備に関する事業報告の記載内容について検証するとともに、本条第4項の規定に従い監査報告の内容を検討する。
.監査役は、本条に定める監査の方法その他会社法に定める監査活動を通じて、財務報告内部統制が第1項に定める重大なリスクに対応していないと判断した場合には、必要に応じ監査役会における審議を経て、その旨を財務担当取締役に対して適時かつ適切に指摘し必要な改善を求めるとともに、第7条第4項の規定に従い、内部統制システム監査について監査報告に記載すべき事項(重大な欠陥に該当するか否かを含む)を検討する。また、会計監査人に対して必要な情報を提供し、会計監査上の取扱いにつき意見交換を行う。会計監査人が当該情報の内容を十分考慮せず適正な会計監査を行っていないと認める場合には、監査役は、会計監査人の監査の方法又は結果の相当性について監査報告に記載すべき事項を検討する。
5.監査役監査報告作成後に、当該監査報告に係る事業年度の財務報告内部統制について開示すべき重要な不備の存在が判明した場合、監査役は、財務担当取締役等及び財務報告内部統制監査人の双方から意見を聴取し、その内容や改善策などについて確認するとともに、必要に応じて当該事業年度に係る定時株主総会において監査役監査報告との関係等について説明を行う。
財務報告内部統制制度の施行後数年を経た本改定において、財務報告内部統制の実際の適用実績を踏まえて、監査役として果たす役割が示された。
(1) 金商法上の内部統制報告・内部統制監査と監査役監査との関係
内部統制システムに対する監査役監査は、内部統制システムが会社に著しい損害を及ぼすおそれのあるリスクに対応しているか否かの監査。
⇒本基準では、体制ごとにいかなるリスクが重大なのか(8条〜12条の各1項)及び当該重大リスクに内部統制システムがプロセスとして有効に機能しているか否かを判断するに当たってのチェックポイントの例(8条〜12条の各2項)を規定。
財務報告内部統制についても、13条において、いかなるリスクが重大なのかに関する1項と、当該重大リスクに内部統制システムがプロセスとして有効に機能しているか否かを判断するに当たってのチェックポイントの2項が置かれている。
上場会社の財務報告内部統制については、金商法が規定するところに従い、財務担当取締役等による有効性評価と監査人による監査が行われ開示されるという特殊性。

監査役は、会社法の規定に則って内部統制システムに対する監査を行う者として、こうした評価結果と監査結果が別途存在していることに適正に依拠して、会社法上の監査を行い必要な監査意見を述べることが適切であると考えられる。
その旨の規定が13条3項。
(2) 監査の方法
13条3項では、財務担当取締役等に対して取締役会等に財務報告内部統制の評価の状況や監査の状況の報告を定期的に求める旨など期待。
過剰な文書化・証跡化、重複したコントロールの有無など過剰対応への言及も置かれている。(13条3項1号ル)
13条2項3号イ以下に列挙される項目について、これらの各項目を監査役が自らチェックしないといけないのかと誤解する指摘があった。
⇒これらの各項目について内部統制システムに対する監査役監査の観点から重要なのは、これらの各項目を適切に判断・対応できる体制が構築運用されているか否かである旨が、確認的に明記。
13条3項1号ロにおいて、13条2項3号イ以下に列挙される項目については、財務担当取締役および財務報告内部統制監査人から財務報告内部統制の評価に関する報告を受ける際に確認することが内部統制システムの監査役監査の方法である旨が、改めて明記された。
(3) 財務報告内部統制に関する監査役監査意見
監査役に対外的開示が求められる監査意見はあくまで会社法上の監査意見であり、
@当該内部統制システムの構築運用の状況において取締役の善管注意義務に違反する重大な事実があると認められる不備(すなわち「重大な欠陥」。定義規定として2条1項17号)があるか否か、
A当該不備の状況を踏まえた会計監査人が行う会計監査の方法または結果の相当性について。
財務報告内部統制制度において仮に「開示すべき重要な不備」(従来の金商法規定でいう「重要な欠陥」から改正される新たな用語)の存在が判明したとしても、直ちに監査役の会社法上の監査報告への記載が求められるものではない(13条4項)。
会社法の監査役監査報告と金商法の内部統制報告書および内部統制監査報告書の作成・提出の順序が時期的に前後する「時期ずれ」も、前記の会社法上監査役から求められている職責に則って対処することになる(13条5項)。
監査役監査報告ひな形の主な改正点 「監査の方法及びその内容」の変更:
事業報告に記載されている取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして会社法施行規則第100条第1項及び第3項に定める体制の整備に関する取締役会決議の内容及び当該決議に基づき整備されている体制(内部統制システム)について、取締役及び使用人等からその構築及び運用の状況について定期的に報告を受け、必要に応じて説明を求め、意見を表明いたしました。
「監査の結果」の変更:
当該内部統制システムに関する事業報告の記載内容及び取締役の職務の執行についても、指摘すべき事項は認められません。
期中あるいは直前期において重大な企業不祥事が生じた場合、その原因究明および再発防止策の状況は、多くの場合、事業報告においても記載すべき重要な事項。
監査役としては、
@事業報告における記載内容が適切であるか、
A再発防止に向けた業務執行の状況が取締役の善管注意義務に照らして問題等が認められないかなどについて、意見を述べることになる。

監査役監査基準(社団法人 日本監査役協会
昭和50年3月25日制定
昭和57年7月20日改正
平成 5年9月29日改正
平成 6年10月31日改正
平成12年1月 7日改正
平成14年6月13日改正
平成16年2月12日改正
平成19年1月12日改正
平成21年7月 9日改正
平成23年3月10日最終改正
★監査役監査基準の改定について
★監査役監査基準の改定について 平成23年3月10日
T 経緯 T 経緯
監査役監査基準は、平成16年2月に、内外の環境変化に対応し、監査役が今日的に期待されている役割と責務を明確にすべく、構成も含め全面改定を行った。その後、平成18年5月に施行された会社法及び会社法施行規則等を受け、平成19年1月及び平成21年7月に会社法に対応した改定を行った。当協会は、前回の改定以降の監査役を取り巻く様々な環境変化に対応し、かつ監査実務の進展を踏まえ、監査役監査基準の改定を行うこととした。
U 改定の趣旨 U 改定の趣旨
わが国のコーポレート・ガバナンスをめぐり内外から問題が提起される中、上場制度整備の一環として上場規則が改正され、また平成22年4月に当協会が公表した「有識者懇談会の答申に対する最終報告書」において、監査役監査の実務上のガイドラインとなるモデル的な手続(ベストプラクティス)を提示した。当協会としては、このベストプラクティスを日頃の監査活動で実践することが望ましいと考え、必要な改定を行った。
改定の趣旨及び主な内容は以下のとおりである。
1.東京証券取引所等の金融商品取引所の上場規則の改正により、上場会社について、独立役員を1名以上確保することが求められることとなった。社外監査役が独立役員として指定されることも多いことから、独立役員に関する規定を置いた(第5条第4項)。
2.平成22年4月にとりまとめた「有識者懇談会の答申に対する最終報告書」等において、監査役監査環境の整備、内部統制システムに関する監査、第三者割当に関する監査、会計監査人の監査報酬の同意及び選任議案の同意に関してベストプラクティスが提言され、このベストプラクティスの提言内容を関係する各規定において反映した(監査役監査の実効性確保に関して第5条第1項及び第14条第3項、会計監査人の報酬決定の同意権及び選任議案の同意権行使に関して第29条及び第32条、会計監査人との連係強化に関して第44条第4項など)。
3.グループ経営が浸透し、企業集団における健全性の維持(たとえば子会社等において不祥事等が生じ会社に重大な損害を与えることを防ぐための対応など)の重要性が増している状況に鑑み、企業集団における監査役監査の基本規定を置いた(第22条及び第35条)。
4.企業不祥事を防止するための監査役監査の重要性が高まっている。特に不祥事発生に伴う損害の拡大防止や説明責任等の観点から、透明性の高い抜本的対応を求められ、第三者委員会が設置される例も増えている。こうした状況に対する監査役対応の基本的考え方について規定した(第24条)。
(1) 企業不祥事が発生した場合、損害の拡大防止や会社信用の維持の観点から、取締役が善管注意義務に則って適正かつ抜本的に対応しているのかについて、監査を行う旨を規定した(第1項)。
(2) 取締役が関与するなど重大な企業不祥事の場合、早期の信頼回復と損害の拡大防止のためには、透明性を確保した原因究明や再発防止等を行う会社の自浄作用が、迅速に発揮される必要がある。非業務執行役員である監査役は、会社の自浄作用の観点から、会社法上有している業務監査権限等を行使し、利益相反のない徹底した原因究明と再発防止等を検討する第三者委員会の設置等について主導的役割を果たすことが重要である。また、必要と認めるときは、監査役会において協議の上、社外監査役等が第三者委員会を立ち上げることも検討されるべきである(第2項)。
(3) 非業務執行役員である監査役は、当該企業不祥事と明白な利害関係があると認められる場合を除き、第三者委員会の委員に就任し、会社に対する善管注意義務を前提にその職務を適正に遂行することが望ましい。また、委員への就任の有無にかかわらず、監査役は、早期の原因究明の要請や当局との関係等に抵触しないことに配慮した上で、第三者委員会の設置の経緯及び対応の状況等について説明を受けるなどをする(第3項)。
5.上場会社における適正開示の重要性が高まっている中、有価証券報告書を含む企業の情報開示の適正性に関する監査役監査について規定を置いた(第41条)。
6.第三者割当が行われる場合に監査役に一定の意見表明が求められていること等を踏まえ、第三者割当における監査役監査について規定を置いた(第46条)。
7.内部統制システム関連における「整備」という用語は会社法第362条第4項第6号で用いられており、現行基準では運用も含むと定義していたが、財務報告内部統制については整備・運用と用いられるのが一般的なため、実務界から誤解を招くとの指摘があった。そのため、関係箇所について「構築・運用」という用語に置き換えた。
その他、所要の改定を行った。
V 本基準の位置付けと対象会社について V 本基準の位置付けと対象会社について
本基準は、その制定に際して掲げた「監査役に今日的に期待されている役割と責務を明確にする」との理念のもとに、監査役監査の実効性を高めるため、監査役の実務上のガイドラインとなるモデル的な手続(ベストプラクティス)を含むものである。これらのベストプラクティスは、監査役があまねく遵守すべき規範を定めたものではないので、監査役の監査活動がこのモデル的な手続に準拠していないことにより、直ちに監査役の法的責任が問われるものではないが、一方、本基準を自社の基準としてそのまま採択した場合や本基準を参考にして自社の監査役監査基準として制定した場合は、その監査基準に従って監査を遂行する一定の義務を負うことに留意する必要がある。
なお、本基準の対象会社については、従前の監査役監査基準と同じく会社法上の大会社を対象とし、主として上場会社を念頭において作成されたものであることに変わりはない。大会社でない会社の場合には、それぞれの監査環境等に留意し、本基準を参考にして監査を実施することが望まれる。
★監査役監査基準
★監査役監査基準 第1章 本基準の目的
第1章 本基準の目的 (目的)
第1条
1.本基準は、監査役の職責とそれを果たすうえでの心構えを明らかにし、併せて、その職責を遂行するための監査体制のあり方と、監査にあたっての基準及び行動の指針を定めるものである。
2.監査役は、企業規模、業種、経営上のリスクその他会社固有の監査環境にも配慮して本基準に則して行動するものとし、監査の実効性の確保に努めなければならない。
第2章 監査役の職責と心構え
第2章 監査役の職責と心構え (監査役の職責)
第2条
1.監査役は、株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査することにより、企業の健全で持続的な成長を確保し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する責務を負っている。
2.前項の責務を果たすため、監査役は、取締役会その他重要な会議への出席、取締役、使用人及び会計監査人等から受領した報告内容の検証、会社の業務及び財産の状況に関する調査等を行い、取締役又は使用人に対する助言又は勧告等の意見の表明、取締役の行為の差止めなど、必要な措置を適時に講じなければならない。
(監査役の心構え)
第3条
1.監査役は、独立の立場の保持に努めるとともに、常に公正不偏の態度を保持し、自らの信念に基づき行動しなければならない。
2.監査役は、監査品質の向上のため常に自己研鑽に努めなければならない。
3.監査役は、適正な監査視点の形成のため、経営全般の見地から経営課題についての認識を深め、経営状況の推移と企業をめぐる環境の変化を把握するよう努めなければならない。
4.監査役は、平素より会社及び子会社の取締役及び使用人等との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければならない。
5.監査役は、監査意見を形成するにあたり、よく事実を確かめ、必要があると認めたときは、弁護士等外部専門家の意見を徴し、判断の合理的根拠を求め、その適正化に努めなければならない。
6.監査役は、その職務の遂行上知り得た情報の秘密保持に十分注意しなければならない。
7.監査役は、企業の健全で持続的な成長を確保し社会的信頼に応える良質な企業統治体制の確立と運用のために、監査役監査の環境整備が重要かつ必須であることを、代表取締役を含む取締役に理解し認識させるよう努めなければならない。
第3章 監査役及び監査役会
第3章 監査役及び監査役会 (常勤監査役)
第4条
1.監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない。
2.常勤監査役は、常勤者としての特性を踏まえ、監査の環境の整備及び社内の情報の収集に積極的に努め、かつ、内部統制システムの構築・運用の状況を日常的に監視し検証する。
3.常勤監査役は、その職務の遂行上知り得た情報を、他の監査役と共有するよう努めなければならない。
(社外監査役及び独立役員)
第5条
1.社外監査役は、監査体制の独立性及び中立性を一層高めるために法令上その選任が義務付けられていることを自覚し、積極的に監査に必要な情報の入手に心掛け、得られた情報を他の監査役と共有することに努めるとともに、他の監査役と協力して監査の環境の整備に努めなければならない。また、他の監査役と協力して第34条第1項に定める内部監査部門等及び会計監査人との情報の共有に努めなければならない。
2.社外監査役は、その独立性、選任された理由等を踏まえ、中立の立場から客観的に監査意見を表明することが特に期待されていることを認識し、代表取締役及び取締役会に対して忌憚のない質問をし又は意見を述べなければならない。
3.社外監査役は、法令で定める一定の活動状況が事業報告における開示対象となることにも留意し、その職務を適切に遂行しなければならない。
4.独立役員に指定された社外監査役は、一般株主の利益ひいては会社の利益(本条において「一般株主の利益」という)を踏まえた公平で公正な経営の意思決定のために行動することが特に期待されていることを認識し、他の監査役と協力して一般株主との意見交換等を所管する部署と情報の交換を図り、必要があると認めたときは、一般株主の利益への配慮の観点から代表取締役及び取締役会に対して意見を述べる。
(監査役会の機能)
第6条
1.監査役会は、すべての監査役で組織する。
2.各監査役は、監査役会が監査に関する意見を形成するための唯一の協議機関かつ決議機関であることに鑑み、職務の遂行の状況を監査役会に報告するとともに、監査役会を活用して監査の実効性の確保に努めなければならない。ただし、監査役会の決議が各監査役の権限の行使を妨げるものではない。
3.監査役会は、必要に応じて取締役又は取締役会に対し監査役会の意見を表明する。
4.監査役会は、法令に定める事項のほか、取締役及び使用人が監査役会に報告すべき事項を取締役と協議して定め、その報告を受けるものとする。
(監査役会の職務)
第7条
監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第3号の決定は、各監査役の権限の行使を妨げることはできない。
 一 監査報告の作成
 二 常勤の監査役の選定及び解職
 三 監査の方針、業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
(監査役会の運営)
第8条
1.監査役会は、定期的に開催し、取締役会の開催日時、各監査役の出席可能性等にも配慮し、あらかじめ年間の開催日時を定めておくことが望ましい。ただし、必要があるときは随時開催するものとする。
2.監査役会は、その決議によって監査役の中から議長を定める。監査役会の議長は、監査役会を招集し運営するほか、監査役会の委嘱を受けた職務を遂行する。ただし、各監査役の権限の行使を妨げるものではない。
3.監査役会は、各監査役の報告に基づき審議をし、監査意見を形成する。
4.監査役会の決議を要する事項については、十分な資料に基づき審議しなければならない。
5.監査役は、監査役会議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめ、出席した監査役は、これに署名又は記名押印しなければならない。
(監査役選任手続等への関与及び同意手続)
第9条
1.監査役会は、取締役が株主総会に提出する監査役の選任議案について、同意の当否を審議しなければならない。同意の判断に当たっては、第10条に定める選定基準等を考慮する。
2.監査役会は、監査役の候補者、監査役選任議案を決定する手続、補欠監査役の選任の要否等について、取締役との間であらかじめ協議の機会をもつことが望ましい。
3.監査役会は、必要があると認めたときは、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすることを請求し、又は株主総会に提出する監査役の候補者を提案しなければならない。
4.監査役は、監査役の選任、解任、辞任、又は不再任について意見をもつに至ったときは、株主総会において意見を表明しなければならない。
5.補欠監査役の選任等についても、本条に定める手続に従うものとする。
6.監査役及び監査役会は、社外監査役選任議案において開示される不正な業務執行の発生の予防及び発生後の対応に関する事項について、適切に記載されているかにつき検討する。
(監査役候補者の選定基準等)
第10条
1.監査役会は、監査役の常勤・非常勤又は社内・社外の別及びその員数、現任監査役の任期、専門知識を有する者の有無、欠員が生じた場合の対応等を考慮し、監査役候補者の選定に関して一定の方針を定めるものとする。
2.監査役候補者の選定に際しては、監査役会は、任期を全うすることが可能か、業務執行者からの独立性が確保できるか、公正不偏の態度を保持できるか等を勘案して、監査役としての適格性を慎重に検討しなければならない。なお、監査役のうち最低1名は、財務及び会計に関して相当程度の知見を有する者であることが望ましい
3.社外監査役候補者の選定に際しては、監査役会は、会社との関係、代表取締役その他の取締役及び主要な使用人との関係等を勘案して独立性に問題がないことを確認するとともに、取締役会及び監査役会等への出席可能性等を検討するものとする。
4.監査役会は、独立役員の指定に関する考え方を取締役等から聴取し、必要に応じて協議する。
5.監査役候補者及び社外監査役候補者の選定に際しては、監査役会は、前3項に定める事項のほか、法令の規定により監査役の選任議案に関して株主総会参考書類に記載すべきとされている事項についても、検討するものとする。
(監査役の報酬等)
第11条
1.各監査役が受けるべき報酬等の額について定款の定め又は株主総会の決議がない場合には、監査役は、常勤・非常勤の別、監査業務の分担の状況、取締役の報酬等の内容及び水準等を考慮し、監査役の協議をもって各監査役が受ける報酬等の額を定めなければならない。
2.監査役は、監査役の報酬等について意見をもつに至ったときは、必要に応じて取締役会又は株主総会において意見を述べる。
(監査費用)
第12条
1.監査役会は、職務の執行上必要と認める費用について、あらかじめ予算を計上しておくことが望ましい。ただし、緊急又は臨時に支出した費用については、事後、会社に償還を請求することができる。
2.監査費用の支出にあたっては、監査役は、その効率性及び適正性に留意しなければならない。
第4章 監査役監査の環境整備
第4章 監査役監査の環境整備 (代表取締役との定期的会合)
第13条
監査役は、代表取締役と定期的に会合をもち、代表取締役の経営方針を確かめるとともに、会社が対処すべき課題、会社を取り巻くリスクのほか、補助使用人の確保及び監査役への報告体制その他の監査役監査の環境整備の状況、監査上の重要課題等について意見を交換し、代表取締役との相互認識と信頼関係を深めるよう努めるものとする。
(監査役監査の実効性を確保するための体制)
第14条
1.監査役は、監査の実効性を高め、かつ、監査職務を円滑に執行するための体制の確保に努めなければならない。
2.前項の体制確保のため、監査役は、次に掲げる体制の内容について決定し、当該体制を整備するよう取締役又は取締役会に対して要請するものとする。
一 監査役の職務を補助すべき使用人(本基準において「補助使用人」という)に関する事項
二 補助使用人の取締役からの独立性に関する事項
三 取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制
四 その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
3.監査役会は、社外取締役が選任されている場合、社外取締役との情報交換及び連係に関する事項について検討し、監査の実効性の確保に努めることが望ましい。
(補助使用人)
第15条
1.監査役は、企業規模、業種、経営上のリスクその他会社固有の事情を考慮し、監査の実効性の確保の観点から、補助使用人の体制の強化に努めるものとする。
2.監査役及び監査役会の事務局は、専任の補助使用人があたることが望ましい。
(補助使用人の独立性の確保)
第16条
1.監査役は、補助使用人の業務執行者からの独立性の確保に努めなければならない。
2.監査役は、以下の事項の明確化など、補助使用人の独立性の確保に必要な事項を検討するものとする。
一 補助使用人の権限
二 補助使用人の属する組織
三 監査役の補助使用人に対する指揮命令権
四 補助使用人の人事異動、人事評価、懲戒処分等に対する監査役の同意権
(監査役への報告に関する体制等)
第17条
1.監査役は、取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制の強化に努めるものとする。
2.監査役は、取締役が会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、これを直ちに監査役会に報告することが自らの義務であることを強く認識するよう、取締役に対し求めなければならない。
3.前項に定める事項のほか、監査役は、取締役との間で、監査役又は監査役会に対して定期的に報告を行う事項及び報告を行う者を、協議して決定するものとする。臨時的に報告を行うべき事項についても同様とする。
4.あらかじめ取締役と協議して定めた監査役又は監査役会に対する報告事項について実効的かつ機動的な報告がなされるよう、監査役は、社内規則の制定その他の社内体制の整備を代表取締役に求めなければならない。
5.会社に内部通報システムがおかれているときには、監査役は、その情報の受領先に加わるなど、その内部通報システムが有効に機能しているかを監視し検証するとともに、提供される情報を監査職務に活用するよう努める。
6.監査役は、第34条に定める内部監査部門等との連係体制が実効的に構築・運用されるよう、取締役又は取締役会に対して体制の整備を要請するものとする。
第5章 業務監査
第5章 業務監査 (取締役の職務の執行の監査)
第18条
1.監査役は、取締役の職務の執行を監査する。
2.前項の職責を果たすため、監査役は、次の職務を行う。
一 監査役は、取締役会決議その他における取締役の意思決定の状況及び取締役会の監督義務の履行状況を監視し検証する。
二 監査役は、取締役が、内部統制システムを適切に構築・運用しているかを監視し検証する。
三 監査役は、取締役が会社の目的外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、又はするおそれがあると認めたとき、会社に著しい損害又は重大な事故等を招くおそれがある事実を認めたとき、会社の業務に著しく不当な事実を認めたときは、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、必要な措置を講じる。
四 監査役又は監査役会は、取締役から会社に著しい損害が発生するおそれがある旨の報告を受けた場合には、必要な調査を行い、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、状況に応じ適切な措置を講じる。
3.監査役は、前項に定める事項に関し、必要があると認めたときは、取締役会の招集又は取締役の行為の差止めを求めなければならない。
4.監査役は、取締役の職務の執行に関して不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があると認めたときは、その事実を監査報告に記載する。その他、株主に対する説明責任を果たす観点から適切と考えられる事項があれば監査報告に記載する。
5.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき審議を行い、監査役会としての監査意見を形成し監査役会監査報告に記載する。
(取締役会等の意思決定の監査)
第19条
1.監査役は、取締役会決議その他において行われる取締役の意思決定に関して、善管注意義務、忠実義務等の法的義務の履行状況を、以下の観点から監視し検証しなければならない。
一 事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
二 意思決定過程合理的であること
三 意思決定内容法令又は定款に違反していないこと
四 意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと
五 意思決定が取締役の利益又は第三者の利益でなく会社の利益を第一に考えてなされていること
2.前項に関して必要があると認めたときは、監査役は、取締役に対し助言もしくは勧告をし、又は差止めの請求を行わなければならない。
(取締役会の監督義務の履行状況の監査)
第20条
監査役は、代表取締役及び業務を執行する取締役がその職務の執行状況を適時かつ適切に取締役会に報告しているかを確認するとともに、取締役会が監督義務を適切に履行しているかを監視し検証しなければならない。
(内部統制システムに係る監査)
第21条
1.監査役は、会社の取締役会決議に基づいて整備される次の体制(本基準において「内部統制システム」という)に関して、当該取締役会決議の内容並びに取締役が行う内部統制システムの構築・運用の状況を監視し検証しなければならない。
一 取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
二 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
三 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
四 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
五 会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
六 第14条第2項に定める監査役監査の実効性を確保するための体制

2.監査役は、内部統制システムの構築・運用の状況についての報告を取締役に対し定期的に求めるほか、内部監査部門等との連係及び会計監査人からの報告等を通じて、内部統制システムの状況を監視し検証する。

3.監査役は、内部統制システムに関する監査の結果について、取締役又は取締役会に報告し、必要があると認めたときは、取締役又は取締役会に対し内部統制システムの改善を助言又は勧告しなければならない。

4.監査役は、監査役監査の実効性を確保するための体制に係る取締役会決議の状況及び関係する各取締役の当該体制の構築・運用の状況について監視し検証し、必要があると認めたときは、代表取締役その他の取締役との間で協議の機会をもたなければならない。

5.監査役は、取締役又は取締役会が監査役監査の実効性を確保するための体制の適切な構築・運用を怠っていると認められる場合には、取締役又は取締役会に対して、速やかにその改善を助言又は勧告しなければならない。

6.監査役は、内部統制システムに関する監査の結果について、監査役会に対し報告をする。

7.監査役は、内部統制システムに係る取締役会決議の内容が相当でないと認めたとき、内部統制システムに関する事業報告の記載内容が著しく不適切と認めたとき、及び内部統制システムの構築・運用の状況において取締役の善管注意義務に違反する重大な事実があると認めたときには、その旨を監査報告に記載する。その他、株主に対する説明責任を果たす観点から適切と考えられる事項があれば監査報告に記載する。

8.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき審議を行い、監査役会としての監査意見を形成し監査役会監査報告に記載する。

9.内部統制システムに関する監査については、本基準に定める事項のほか、別に定める内部統制システムに係る監査の実施基準による。
(企業集団における監査)
第22条
1.子会社及び重要な関連会社(本基準において「子会社等」という)を有する会社の監査役は、連結経営の視点を踏まえ、取締役の子会社等の管理に関する職務の執行の状況を監視し検証する。
2.監査役は、子会社等において生じる不祥事等が会社に与える損害の重大性の程度を考慮して、内部統制システムが会社及び子会社等において適切に構築・運用されているかに留意してその職務を執行するとともに、企業集団全体における監査の環境の整備にも努める。
(競業取引及び利益相反取引等の監査)
第23条
1.監査役は、次の取引等について、取締役の義務に違反する事実がないかを監視し検証しなければならない。
一 競業取引
二 利益相反取引
三 会社がする無償の財産上の利益供与(反対給付が著しく少ない財産上の利益供与を含む)
四 親会社又は子会社もしくは株主等との通例的でない取引
五 自己株式の取得及び処分又は消却の手続
2.前項各号に定める取引等について、社内部門等からの報告又は監査役の監査の結果、取締役の義務に違反し、又はするおそれがある事実を認めたときは、監査役は、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、必要な措置を講じなければならない。
3.監査役は、第1項各号に掲げる事項以外の重要又は異常な取引等についても、法令又は定款に違反する事実がないかに留意し、併せて重大な損失の発生を未然に防止するよう取締役に対し助言又は勧告しなければならない。
(企業不祥事発生時の対応及び第三者委員会)
第24条
1.監査役は、企業不祥事(法令又は定款に違反する行為その他社会的非難を招く不正又は不適切な行為をいう。以下本条において同じ)が発生した場合、直ちに取締役等から報告を求め、必要に応じて調査委員会の設置を求め調査委員会から説明を受け、当該企業不祥事の事実関係の把握に努めるとともに、原因究明、損害の拡大防止、早期収束、再発防止、対外的開示のあり方等に関する取締役及び調査委員会の対応の状況について監視し検証しなければならない。

2.前項の取締役の対応が、独立性、中立性又は透明性等の観点から適切でないと認められる場合には、監査役は、監査役会における協議を経て、取締役に対して当該企業不祥事に対する原因究明及び再発防止策等の検討を外部の独立した弁護士等に依頼して行う第三者委員会(本条において「第三者委員会」という)の設置の勧告を行い、あるいは必要に応じて外部の独立した弁護士等に自ら依頼して第三者委員会を立ち上げるなど、適切な措置を講じる。

3.監査役は、当該企業不祥事に対して明白な利害関係があると認められる者を除き、当該第三者委員会の委員に就任することが望ましく、第三者委員会の委員に就任しない場合にも、第三者委員会の設置の経緯及び対応の状況等について、早期の原因究明の要請や当局との関係等の観点から適切でないと認められる場合を除き、当該委員会から説明を受け、必要に応じて監査役会への出席を求める。監査役は、第三者委員会の委員に就任した場合、会社に対して負っている善管注意義務を前提に、他の弁護士等の委員と協働してその職務を適正に遂行するものとする。
(事業報告等の監査)
第25条
1.監査役は、事業年度を通じて取締役の職務の執行を監視し検証することにより、当該事業年度に係る事業報告及びその附属明細書(本基準において「事業報告等」という)が適切に記載されているかについて監査意見を形成する。
2.監査役は、特定取締役(会社法施行規則第132条第4項に定める取締役をいう。以下本条において同じ)から各事業年度における事業報告等を受領し、当該事業報告等が法令又は定款に従い、会社の状況を正しく示しているかどうかを監査しなければならない。
3.監査役は、前2項を踏まえ、事業報告等法令又は定款に従い、会社の状況を正しく示しているかどうかについての意見を監査役監査報告に記載する。
4.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき、事業報告等が法令又は定款に従い、会社の状況を正しく示しているかどうかについての意見を監査役会監査報告に記載する。
5.監査役会は、その決議によって、特定取締役から事業報告等の通知を受ける職務を行う特定監査役(会社法施行規則第132条第5項に定める監査役をいう)を定めることができる。
6.事業報告等の監査にあたって、監査役及び監査役会は、必要に応じて、会計監査人との連係を図るものとする。
(事業報告における社外監査役の活動状況等)
第26条
監査役及び監査役会は、事業報告において開示される社外監査役の活動状況その他監査役に関する事項について、適切に記載されているかにつき検討しなければならない。
第6章 会計監査
第6章 会計監査 (会計監査)
第27条
1.監査役及び監査役会は、事業年度を通じて取締役の職務の執行を監視し検証することにより、当該事業年度に係る計算関係書類(計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類等の会社計算規則第2条第3項第3号に規定するものをいう。以下本基準において同じ)が会社の財産及び損益の状況を適正に表示しているかどうかに関する会計監査人の監査の方法及び結果の相当性について監査意見を形成する。
2.監査役は、会計監査の適正性及び信頼性を確保するため、会計監査人が公正不偏の態度及び独立の立場を保持し、職業的専門家として適切な監査を実施しているかを監視し検証する。
(会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制の確認)
第28条
会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するため、監査役は、次に掲げる事項について会計監査人から通知を受け、会計監査人が会計監査を適正に行うために必要な品質管理の基準を遵守しているかどうか、会計監査人に対して適宜説明を求め確認を行う。
一 独立性に関する事項その他監査に関する法令及び規程の遵守に関する事項
二 監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業務の契約の受任及び継続の方針に関する事項
三 会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項
(会計監査人の報酬等の同意手続)
第29条
1.監査役は、会社が会計監査人と監査契約を締結する場合には、取締役、社内関係部署及び会計監査人から必要な資料を入手しかつ報告を受け、また非監査業務の委託状況及びその報酬の妥当性を確認のうえ、会計監査人の報酬等の額、監査担当者その他監査契約の内容が適切であるかについて、契約毎に検証する。
2.監査役会は、会計監査人の報酬等の額の同意の判断にあたって、前項の検証を踏まえ、会計監査人の監査計画の内容会計監査の職務遂行状況(従前の事業年度における職務遂行状況を含む)及び報酬見積りの算出根拠などが適切であるかについて、確認する。
(会計方針等の監査)
第30条
1.監査役は、会計方針(会計処理の原則及び手続並びに表示の方法その他計算関係書類作成のための基本となる事項)等が、会社財産の状況、計算関係書類に及ぼす影響、適用すべき会計基準及び公正な会計慣行等に照らして適正であるかについて、会計監査人の意見を徴して検証しなければならない。また、必要があると認めたときは、取締役に対し助言又は勧告をしなければならない。
2.会社が会計方針等を変更する場合には、監査役及び監査役会は、あらかじめ変更の理由及びその影響について報告するよう取締役に求め、その変更の当否についての会計監査人の意見を徴し、その相当性について判断しなければならない。
(計算関係書類の監査)
第31条

1.監査役は、各事業年度における計算関係書類を特定取締役(計算関係書類の作成に関する職務を行った取締役等の会社計算規則第130条第4項に定める取締役をいう。以下本条において同じ)から受領する。監査役は、取締役及び使用人等に対し重要事項について説明を求め確認を行う

2.監査役は、各事業年度における計算関係書類につき、会計監査人から会計監査報告及び監査に関する資料を受領する。監査役は、会計監査上の重要事項について説明を求め、会計監査報告の調査を行う。当該調査の結果、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、監査役は、自ら監査を行い、相当でないと認めた旨及び理由を監査役監査報告に記載する。

3.監査役会は、各監査役の監査役監査報告に基づき、会計監査人の監査の方法及び結果の相当性について審議を行い、監査役会としての監査意見を形成する。当該審議の結果、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、監査役会は、相当でないと認めた旨及び理由を監査役会監査報告に記載する。

4.監査役会は、その決議によって、特定取締役から計算関係書類の通知を受け、会計監査人から会計監査報告の通知を受ける職務を行う特定監査役(会社計算規則第130条第5項に定める監査役をいう)を定めることができる。
(会計監査人の選任等の同意手続)
第32条
1.監査役は、会計監査人の再任の適否について、取締役、社内関係部署及び会計監査人から必要な資料を入手しかつ報告を受け、毎期検討する。
2.監査役会は、会計監査人の再任の適否の判断(会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること又は会計監査人の解任もしくは不再任を株主総会の目的とすることの同意の判断を含む)にあたって、前項の検討を踏まえ、会計監査人の職務遂行状況(従前の事業年度における職務遂行状況を含む)、監査体制及び独立性などが適切であるかについて、確認する。
3.監査役会は、取締役に対し、会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること又は会計監査人の解任もしくは不再任を株主総会の目的とすることを請求することができる。
第7章 監査の方法等
第7章 監査の方法等 (監査計画及び業務の分担)
第33条
1.監査役会は、内部統制システムの構築・運用の状況にも留意のうえ、重要性、適時性その他必要な要素を考慮して監査方針をたて、監査対象、監査の方法及び実施時期を適切に選定し、監査計画を作成する。この場合、監査上の重要課題については、重点監査項目として設定するものとする。
2.監査役会は、効率的な監査を実施するため、適宜、会計監査人及び内部監査部門等と協議又は意見交換を行い、監査計画を作成する。
3.監査役会は、組織的かつ効率的に監査を実施するため、監査業務の分担を定める。
4.監査役会は、監査方針及び監査計画を代表取締役及び取締役会に説明する。
5.監査方針及び監査計画は、必要に応じ適宜修正する。
(内部監査部門等との連係による組織的かつ効率的監査)
第34条
1.監査役は、会社の業務及び財産の状況の調査その他の監査職務の執行にあたり、内部監査部門その他内部統制システムにおけるモニタリング機能を所管する部署(本基準において「内部監査部門等」という)と緊密な連係を保ち、組織的かつ効率的な監査を実施するよう努めなければならない。

2.監査役は、内部監査部門等からその監査計画と監査結果について定期的に報告を受け、必要に応じて調査を求めるものとする。監査役は、内部監査部門等の監査結果を内部統制システムに係る監査役監査に実効的に活用する。

3.監査役は、取締役のほか、コンプライアンス所管部門、リスク管理所管部門、経理部門、財務部門その他内部統制機能を所管する部署(本条において「内部統制部門」という)から内部統制システムの構築・運用の状況について定期的かつ随時に報告を受け、必要に応じて説明を求めなければならない。

4.監査役会は、各監査役からの報告を受けて、取締役又は取締役会に対して助言又は勧告すべき事項を検討する。ただし、監査役会の決定は各監査役の権限の行使を妨げるものではない。
(企業集団における監査の方法)
第35条
1.監査役は、取締役及び使用人等から、子会社等の管理の状況について報告又は説明を受け、関係資料を閲覧する。
2.監査役は、その職務の執行にあたり、親会社及び子会社等の監査役、内部監査部門等及び会計監査人等と積極的に意思疎通及び情報の交換を図るよう努めなければならない。
3.監査役は、取締役の職務の執行を監査するため必要があるときは、子会社等に対し事業の報告を求め、又はその業務及び財産の状況を調査しなければならない。
(取締役会への出席・意見陳述)
第36条
1.監査役は、取締役会に出席し、かつ、必要があると認めたときは、意見を述べなければならない

2.監査役は、取締役が不正の行為をし、もしくは当該行為をするおそれがあると認めたとき、又は法令もしくは定款に違反する事実もしくは著しく不当な事実があると認めたときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければならない。

3.監査役は、取締役会に前項の報告をするため、必要があると認めたときは、取締役会の招集を請求しなければならない。また、請求後、一定期間内に招集の通知が発せられない場合は、自らが招集することができる。

4.監査役は、取締役会議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめ、出席した監査役は、署名又は記名押印しなければならない。
(取締役会の書面決議)
第37条
取締役が取締役会の決議の目的である事項について法令の規定に従い当該決議を省略しようとしている場合には、監査役は、その内容(取締役会の決議を省略することを含む)について検討し、必要があると認めたときは、異議を述べなければならない。
(特別取締役による取締役会への出席・意見陳述)
第38条
1.取締役会が特別取締役による取締役会の決議をすることができる旨を定めている場合には、監査役会は、その決議によって当該取締役会に出席する監査役をあらかじめ定めることができる。ただし、その他の監査役の当該取締役会への出席を妨げるものではない。

2.特別取締役による取締役会に出席した監査役は、必要があると認めたときは、意見を述べなければならない。

3.特別取締役による取締役会に出席した監査役は、特別取締役による取締役会の議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめ、これに署名又は記名押印しなければならない。

4.特別取締役による取締役会に出席した監査役は、他の監査役に対して付議事項等について報告を行う。
(重要な会議等への出席)
第39条
1.監査役は、取締役会のほか、重要な意思決定の過程及び職務の執行状況を把握するため、経営会議、常務会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会その他の重要な会議又は委員会に出席し、必要があると認めたときは、意見を述べなければならない。

2.前項の監査役が出席する会議に関して、監査役の出席機会が確保されるよう、監査役は、取締役等に対して必要な要請を行うものとする。

3.第1項の会議又は委員会に出席しない監査役は、当該会議等に出席した監査役又は取締役もしくは使用人から、付議事項についての報告又は説明を受け、関係資料を閲覧する。
(文書・情報管理の監査)
第40条
1.監査役は、主要な稟議書その他業務執行に関する重要な書類を閲覧し、必要があると認めたときは、取締役又は使用人に対しその説明を求め、又は意見を述べなければならない。
2.監査役は、所定の文書・規程類、重要な記録その他の重要な情報が適切に整備され、かつ、保存及び管理されているかを調査し、必要があると認めたときは、取締役又は使用人に対し説明を求め、又は意見を述べなければならない。
(法定開示情報等に関する監査)
第41条
1.監査役は、有価証券報告書その他会社が法令の規定に従い開示を求められる情報で会社に重大な影響のあるもの(本条において「法定開示情報等」という)に重要な誤りがなくかつ内容が重大な誤解を生ぜしめるものでないことを確保するための体制について、第21条に定めるところに従い、法定開示情報等の作成及び開示体制の構築・運用の状況を監視し検証する。
2. 監査役は、継続企業の前提に係る事象又は状況、重大な事故又は災害、重大な係争事件など、企業の健全性に重大な影響のある事項について、取締役が情報開示を適時適切な方法により、かつ、十分に行っているかを監視し検証する。
(取締役及び使用人に対する調査等)
第42条
1.監査役は、取締役及び使用人に対し事業の報告を求め、又は会社の業務及び財産の状況を調査する。
2.監査役は、必要に応じ、ヒアリング、往査その他の方法により調査を実施し、十分に事実を確かめ、監査意見を形成するうえでの合理的根拠を求めなければならない。
(会社財産の調査)
第43条
1.監査役は、重要な会社財産の取得、保有及び処分の状況について調査しなければならない。
2.監査役は、取締役が会社の資産及び負債を適切に管理しているかを調査しなければならない。
3.監査役は、会社財産の実質価値の把握に努めるよう心掛ける。
(会計監査人との連係)
第44条
1.監査役及び監査役会は、会計監査人と定期的に会合をもつなど、緊密な連係を保ち、積極的に意見及び情報の交換を行い、効率的な監査を実施するよう努めなければならない。

2.監査役及び監査役会は、会計監査人から監査計画の概要を受領し、監査重点項目等について説明を受け、意見交換を行わなければならない。

3.監査役は、必要に応じて会計監査人の往査及び監査講評に立ち会うほか、会計監査人に対し監査の実施経過について、適宜報告を求めることができる。

4.監査役は、会計監査人から取締役の職務の執行に関して不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実(財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実を含む)がある旨の報告等を受けた場合には、監査役会において審議のうえ、必要な調査を行い、取締役に対して助言又は勧告を行うなど、必要な措置を講じなければならない。

5.監査役は、業務監査の過程において知り得た情報のうち、会計監査人の監査の参考となる情報又は会計監査人の監査に影響を及ぼすと認められる事項について会計監査人に情報を提供するなど、会計監査人との情報の共有に努める。
第8章 会社の支配に関する基本方針等及び第三者割当
(会社の支配に関する基本方針等)
第45条
1.監査役は、会社がその財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(本条において「基本方針」という)を定めている場合には、取締役会その他における審議の状況を踏まえ、次に掲げる事項について検討し、監査報告において意見を述べなければならない。
 一 基本方針の内容の概要
 二 次に掲げる取組みの具体的な内容の概要
  イ 会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
  ロ 基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み(本条において「買収防衛策」という)
2.監査役は、前項第2号に定める各取組みの次に掲げる要件への該当性に関する取締役会の判断及びその判断に係る理由について、取締役会その他における審議の状況を踏まえて検討し、監査報告において意見を述べなければならない。
 一 当該取組みが基本方針に沿うものであること。
 二 当該取組みが会社の株主の共同の利益を損なうものではないこと。
 三 当該取組みが会社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないこと。
3.監査役は、買収防衛策の発動又は不発動に関する一定の判断を行う委員会の委員に就任した場合、会社に対して負っている善管注意義務を前提に、会社利益の最大化に沿って適正に当該判断を行うものとする。
(第三者割当の監査)
第46条
1.監査役は、会社が株式又は新株予約権(新株予約権付社債を含む)の第三者割当を行う場合、第19条及び第41条第1項に定める監査を行うほか、有利発行該当性に関する事項を検討し、法令又は金融商品取引所の上場規則等が求めるところに従い意見を述べる。
2.監査役は、株主総会決議を経ずに行われる大規模第三者割当(直近6ヶ月間における第三者割当による議決権の希薄化率が25%以上となる場合又は第三者割当によって支配株主となる者が生じる場合をいう。以下本条において同じ)について、会社役員の地位の維持を目的とするものではないか等を検討し、必要に応じて取締役に対して助言又は勧告を行う。監査役が当該大規模第三者割当に関し独立した者としての第三者意見を述べる場合には、会社に対する善管注意義務を前提に、その職務を適正に遂行するものとする。
第9章 株主代表訴訟等への対応
第9章 株主代表訴訟等への対応 (取締役と会社間の訴えの代表)
第47条
監査役は、会社が取締役に対し又は取締役が会社に対し訴えを提起する場合には、会社を代表する。
(取締役等の責任の一部免除に関する同意)
第48条
1.次に掲げる監査役の全員の同意は、監査役会における協議を経て行うことができる。
一 取締役の責任の一部免除に関する議案を株主総会に提出することに対する同意
二 取締役会決議によって取締役の責任の一部免除をすることができる旨の定款変更に関する議案を株主総会に提出することに対する同意
三 定款の規定に基づき取締役の責任の一部免除に関する議案を取締役会に提出することに対する同意
四 社外取締役との間で責任限定契約をすることができる旨の定款変更に関する議案を株主総会に提出することに対する同意

2.前項各号の同意を行うにあたり、監査役は、定款変更にかかる議案に対する同意については定款変更の当否や提案理由の適切さ等を、責任の一部免除にかかる議案に対する同意については免除の理由、監査役が行った調査結果、当該事案について判決が出されているときにはその内容等を十分に吟味し、かつ、必要に応じて外部専門家の意見も徴して判断を行うものとする。

3.第1項各号の同意の当否判断のために行った監査役の調査及び審議の過程と結果については、監査役は、記録を作成し保管するものとする。

4.法令の規定に基づいて会計監査人の責任の一部免除に関する議案(責任限定契約に関する議案を含む)が株主総会又は取締役会に提出される場合についても、監査役及び監査役会は、本条の規定に準じるものとする。
(株主代表訴訟の提訴請求の受領及び不提訴理由の通知)
第49条
1.監査役は、取締役に対しその責任を追及する訴えを提起するよう株主から請求を受けた場合には、速やかに他の監査役に通知するとともに、監査役会を招集してその対応を十分に審議のうえ、提訴の当否について判断しなければならない。

2.前項の提訴の当否判断にあたって、監査役は、被提訴取締役のほか関係部署から状況の報告を求め、又は意見を徴するとともに、関係資料を収集し、外部専門家から意見を徴するなど、必要な調査を適時に実施しなければならない。

3.監査役は、第1項の判断結果について、取締役会及び被提訴取締役に対して通知する。

4.第1項の判断の結果、責任追及の訴えを提起しない場合において、提訴請求株主又は責任追及の対象となっている取締役から請求を受けたときは、監査役は、当該請求者に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を提出し、責任追及の訴えを提起しない理由を通知しなければならない。この場合、監査役は、外部専門家の意見を徴したうえ、監査役会における審議を経て、当該通知の内容を検討する。
一 監査役が行った調査の内容(次号の判断の基礎とした資料を含む)
二 被提訴取締役の責任又は義務の有無についての判断及びその理由
三 被提訴取締役に責任又は義務があると判断した場合において、責任追及の訴えを提起しないときは、その理由

5.監査役は、提訴の当否判断のために行った調査及び審議の過程と結果について、記録を作成し保管するものとする。
(補助参加の同意)
第50条
1.株主代表訴訟における会社の被告取締役側への補助参加について、監査役全員の同意は監査役会における協議を経て行うことができる。
2.前項の補助参加への同意の当否判断にあたって、監査役は、代表取締役及び被告取締役のほか関係部署から状況の報告を求め、又は意見を徴し、必要に応じて外部専門家からも意見を徴するものとする。監査役は、補助参加への同意の当否判断の過程と結果について、記録を作成し保管する。
(訴訟上の和解)
第51条
1.監査役は、株主代表訴訟について原告株主と被告取締役との間で訴訟上の和解を行う旨の通知及び催告が裁判所からなされた場合には、速やかに監査役会等においてその対応を十分に審議し、和解に異議を述べるかどうかを判断しなければならない。
2.前項の訴訟上の和解の当否判断にあたって、監査役は、代表取締役及び被告取締役のほか関係部署から状況の報告を求め、又は意見を徴し、必要に応じて外部専門家からも意見を徴するものとする。監査役は、訴訟上の和解の当否判断の過程と結果について、記録を作成し保管する。
第10章 監査の報告
第10章 監査の報告 (監査内容等の報告・説明)
第52条
監査役は、監査活動及び監査結果に対する透明性と信頼性を確保するため、自らの職務遂行の状況や監査の内容を必要に応じて説明することが監査役の重要な責務であることを、自覚しなければならない。
(監査調書の作成)
第53条
監査役は、監査調書を作成し保管しなければならない。当該監査調書には、監査役が実施した監査方法及び監査結果、並びにその監査意見の形成に至った過程及び理由等を記録する。
(代表取締役及び取締役会への報告)
第54条
1.監査役及び監査役会は、監査の実施状況とその結果について、定期的に代表取締役及び取締役会に報告する。
2.監査役及び監査役会は、その期の重点監査項目に関する監査及び特別に実施した調査等の経過及び結果を代表取締役及び取締役会に報告し、必要があると認めたときは、助言又は勧告を行うほか、状況に応じ適切な措置を講じなければならない。
(監査報告の作成・通知)
第55条
1.監査役は、監査役監査報告を作成し、監査役会に提出する。

2.監査役会は、各監査役が作成した監査役監査報告に基づき、審議のうえ、正確かつ明瞭に監査役会監査報告を作成する。

3.監査役会は、特定取締役(第25条第2項及び第31条第1項に規定された特定取締役をいう。以下本条において同じ)から受領した事業報告、計算関係書類その他の書類について、法定記載事項のほか、開示すべき事項が適切に記載されているかを確かめ、必要に応じ取締役に対し説明を求め、又は意見を述べ、もしくは修正を求めなければならない。

4.監査役会は、監査役会監査報告を作成するにあたり、取締役の法令又は定款違反行為及び後発事象の有無等を確認するとともに、第41条第2項に掲げる事項にも留意のうえ、監査役会監査報告に記載すべき事項があるかを検討する。

5.監査役は、監査役会監査報告の内容と自己の監査報告の内容が異なる場合には、自己の監査役監査報告の内容を監査役会監査報告に付記することができる。

6.監査役は、自己の監査役監査報告及び監査役会監査報告に署名又は記名押印し、常勤の監査役及び社外監査役はその旨を記載する。また、監査役会監査報告には、作成年月日を記載しなければならない。

7.特定監査役(第25条第5項及び第31条第4項の規定により定められた特定監査役をいう。以下本条において同じ)は、事業報告等に係る監査役会監査報告の内容及び計算関係書類に係る監査役会監査報告の内容を特定取締役に通知し、計算関係書類に係る監査役会監査報告の内容を会計監査人に通知する。ただし、事業報告等に係る監査報告と計算関係書類に係る監査報告を一通にまとめて作成する場合には、当該監査報告の内容を会計監査人に通知する。

8.前項において、特定監査役は、必要に応じて、事業報告等に係る監査役会監査報告の内容を特定取締役に通知すべき日について特定取締役との間で合意し、計算関係書類に係る会計監査報告の内容を特定監査役に通知すべき日並びに計算関係書類に係る監査役会監査報告の内容を特定取締役及び会計監査人に通知すべき日について特定取締役及び会計監査人との間で合意して定めるものとする。
(電磁的方法による開示)
第56条
1.株主総会参考書類、事業報告、個別注記表又は連結計算書類(当該連結計算書類に係る会計監査報告及び監査役会監査報告を含む)に記載又は表示すべき事項の全部又は一部について、インターネットによる開示の措置をとることにより株主に対して提供したものとみなす旨の定款の定めがある会社において、取締役が当該措置をとろうとしている場合には、監査役は、当該措置をとることについて検討し、必要があると認めたときは、異議を述べなければならない。

2.取締役が前項の定款の定めに基づく措置をとる場合に、監査役は、現に株主に対して提供される事業報告又は計算書類もしくは連結計算書類が、監査報告を作成するに際して監査をした事業報告又は計算書類もしくは連結計算書類の一部であることを株主に対して通知すべき旨を取締役に請求することができる。
(株主総会への報告・説明等)
第57条
1.監査役は、株主総会に提出される議案及び書類について法令もしくは定款に違反し又は著しく不当な事項の有無を調査し、当該事実があると認めた場合には、株主総会において意見を報告しなければならない。また、監査役は、監査役の説明責任を果たす観点から、必要に応じて株主総会において自らの意見を述べるものとする。

2.監査役は、株主総会において株主が質問した事項については、議長の議事運営に従い説明する。

3.監査役は、株主総会議事録に議事の経過の要領及びその結果、その他法令で定める事項が適切に記載されているかを確かめる。
(附則)
本基準において、「記載」には、その性質に反しない限り、電磁的記録を含むものとする。また、本基準において言及される各種書類には、電磁的記録により作成されたものを含むものとする。

以 上

内部統制システムに係る監査の実施基準
社団法人 日本監査役協会
平成19年4月5日制定
平成21年7月9日改正
平成23年3月10日最終改正
★内部統制システムに係る監査の実施基準の改定について
★内部統制システムに係る監査の実施基準の改定について ■平成23年3月10日
 ■平成23年3月10日 T 経緯 監査役を取り巻く様々な環境変化に対応し、かつ監査実務の進展を踏まえ、平成23年3月10日に「監査役監査基準」が改定された。本実施基準についても見直しを行い、所要の改定を行うこととした。
U 改定の趣旨 改定の趣旨及び主な内容は以下のとおりである。

1.平成22年4月に当協会が公表した「有識者懇談会の答申に対する最終報告書」において、内部統制システムの構築・運用の状況に関する十分な開示についてのベストプラクティスが提言された。そこで、内部統制システムに係る事業報告の記載に関する監査役監査に関する規定を置いた(第5条第3項)。

2.内部統制システムの監査役監査において、監査役が監査役監査報告において指摘すべきほどの重大な不備、すなわち内部統制システムの構築・運用の状況において取締役の善管注意義務に違反する重大な事実があると認められる不備を、本実施基準では従前から「重大な欠陥」と定義している。明確化のため、第2条において定義規定を置いた(第2条第1項第17号)。

3.財務報告内部統制に関する監査役監査について規定を見直した(第13条)。
本実施基準制定時は、金融商品取引法における「財務報告に係る内部統制の評価及び監査」の制度の導入時であり、制度自体は施行されていなかったことから、以後必要に応じてさらに検討を進めることが要請されていた。そこで、財務報告内部統制制度の施行後数年を経た本改定において、財務報告内部統制体制の実際の適用実績を踏まえて、監査役として果たすことが望ましいと考えられる役割を示した。

(1) 内部統制システムに対する監査役監査は、内部統制システムが会社に著しい損害を及ぼすおそれのあるリスクに対応しているのか否かの監査である。
そこで本実施基準では、体制ごとに、いかなるリスクが重大なのか(第8条乃至第12条の各第1項)及び当該重大リスクに内部統制システムがプロセスとして有効に機能しているか否かを判断するに当たってのチェックポイントの例(第8条乃至第12条の各第2項)を規定している。財務報告内部統制についても、第13条において同様に、従前から、いかなるリスクが重大なのかに関する第1項と当該重大リスクに内部統制システムがプロセスとして有効に機能しているか否かを判断するに当たってのチェックポイントの第2項とを置いている。

ただし、上場会社の財務報告内部統制については、他の内部統制システムとは異なり、金融商品取引法が規定するところに従い、財務担当取締役等による有効性評価外部監査人による監査が行われ開示されることとなっている。

そこで監査役は、会社法の規定に則って内部統制システムに対する監査を行う者として、こうした評価結果と監査結果が存在していることに適正に依拠して、会社法上の監査を行い必要な監査意見を述べることが適切であると考えられる。その旨を、財務報告内部統制に係る監査役監査の方法として、規定を置くこととした(第13条第3項)。

(2) 第13条第3項の監査の方法では、上場会社の財務報告内部統制の現在までの実際の状況等を踏まえ、財務担当取締役等に対して取締役会等に内部統制の評価の状況や監査の状況について定期的な報告を求める旨などを規定した。また、過剰な文書化・証跡化、重複したコントロールの有無など過剰対応への言及も置いた。

(3) 第13条第2項第3号イ以下に列挙される項目について、これらの各項目を監査役が自らチェックしないといけないのかという誤解を指摘する声があった。本実施基準はあくまで内部統制システムの実効性に関する監査役監査の実施基準であるところ、各項目が会計監査上の重要項目の例示であることから生じた誤解であると考えられる。そこで趣旨を明確にするため、これらの項目について内部統制システムの監査役監査の観点から重要なのは、これらの事項を適切に判断・対応できる体制が構築・運用されているか否かである旨を明記した。そのうえで第13条第3項第1号において、第13条第2項第3号イ以下に列挙される項目については、財務担当取締役等及び財務報告内部統制監査人から財務報告内部統制の評価に関する報告を受ける際に確認することを、内部統制システムの監査役監査の方法として明記した。

(4) 財務報告内部統制に関する監査役監査意見について規定した(第13条第4項・第5項)。
監査役に対外的開示が求められる監査意見はあくまで会社法上の監査意見であり、
@当該内部統制システムの構築・運用の状況において取締役の善管注意義務に違反する重大な事実があると認められる不備(すなわち「重大な欠陥」)があるか否か
A当該不備の状況を踏まえた会計監査人が行う会計監査の方法又は結果の相当性についてである。

財務報告内部統制制度において仮に「開示すべき重要な不備」(現行の金融商品取引法の財務報告内部統制報告制度の用語での「重要な欠陥」を意味する。現在、企業会計審議会内部統制部会において「開示すべき重要な不備」への用語の変更が検討されている)の存在が判明したとしても、直ちに監査役の会社法上の監査報告への記載が求められるものではない(第13条第4項)。

また、会社法の監査役監査報告と金融商品取引法の内部統制報告書及び内部統制監査報告書の作成・提出の順序が時期的に前後するいわゆる「時期ずれ」も、上記の会社法上監査役が求められている職責に則って(かつ会社法上求められている職責の範囲内で)対処することになる(第13条第5項)。

4.法令等遵守体制に関連して、社内倫理規定への言及を置くとともに、反社会的勢力への対応方針の有無をチェックポイントの例として追加した(第8条第2項第3号)。

5.企業集団内部統制に関連して、グループ内部通報システムなど子会社に関する状況が会社において把握されるシステムの構築・運用を、チェックポイントの例として加えた(第12条第2項第4号)。
■平成21年7月9日
平成21年4月1日、「会社法施行規則、会社計算規則等の一部を改正する省令」(平成21年法務省令第7号)が施行されたことに対応するため、平成21年7月9日に「監査役監査基準」が改定された。これに伴い、本実施基準について見直しを行い、所要の改定を行うこととした。
■平成19年4月5日
■平成19年4月5日 T 経緯 平成18年5月に施行された会社法及びその法務省令に対応し平成19年1月12日に監査役監査基準の改定を行ったが、同基準では、第21条(内部統制システムに係る監査)第7項において「内部統制システムに関する監査については、本基準に定める事項のほか、別に定める内部統制システムに係る監査の実施基準による」と規定し、内部統制システムに係るより具体的な監査の実施基準を別に整備することとされた。
当該規定に対応して、「内部統制システムに係る監査の実施基準」を制定することとした。
U 制定の趣旨と主要な事項  本実施基準は、監査役監査基準第21条第7項に対応したものであり、監査役監査基準と共通の基本的認識と考え方に立脚したものであって、監査役監査基準と一体として理解し活用されるものとして位置付けられている。
 本実施基準の主要な事項は、以下のとおりである。
1.本実施基準は、監査役監査基準に基づき、監査役が会社の内部統制システムに関して  行う監査にあたっての基準と行動の指針を定めるものである(第1条)。
2.本実施基準における「内部統制システム」は、監査役監査基準第21条第1項各号に定める体制をいう(第2条第1項第1号)。
3.本実施基準における監査対象は、「内部統制システムに係る取締役会決議の内容が相当でないと認める事由の有無」及び「取締役が行う内部統制システムの整備の状況における不備の有無」である(第3条)。
4.内部統制システム監査にあたっては、「会社の統制環境」が監査役として特に重要な監査対象であることを明記するとともに、「会社に想定されるリスクのうち、会社に著しい損害を及ぼすおそれのあるリスクに対応しているか否か」に重点をおき(リスク・アプローチ)、「内部統制システムの構成要素が、重大なリスクに対応するプロセスとして有効に機能しているか否か」(プロセス・チェック)について監視し検証することを、監査の基本的姿勢としている(第4条)。
5.上記のほか本実施基準第2章において、取締役会決議に関する監査(第5条)、内部監査部門等との連係とそれを通じたモニタリング機能の実効性の監査(第6条)、内部統制システムの不備又は重大な欠陥への対応、監査役会における審議(第7条)など、監査の方法に関する規定を置いている。
6.第3章では、会社法が規定する法令等遵守体制、損失危険管理体制、情報保存管理体制、効率性確保体制、企業集団内部統制のそれぞれについて、監査にあたって重要な着眼点とすべき重大なリスクを列挙した。また、監査の実務に資する具体的な指針を求める声が強かったこと等から、各体制の監査にあたって留意すべきチェック・ポイント(重要な統制上の要点)についても列挙している(ただし、これはあくまで例示であり、会社の特性等に照らして過不足なく選定すべきことはいうまでもない)。
7.財務報告内部統制については、その法的性格をめぐる議論の状況や会計監査人との関係などを考慮し、第4章として別章立てとした。財務報告内部統制については、金融商品取引法における「財務報告に係る内部統制の評価及び監査」の制度がまだ導入されたばかりで制度自体が施行されていないことなどもあり、詳細な規定を置くことは難しい面があるが、監査役監査実務からの関心が大変高いことから、規定することとした。内容としては、会社法において会計監査人が行う会計監査と金融商品取引法において監査人が行ういわゆる財務諸表監査とは異なる制度ではありつつも一定の共通性と一体性も有していることから、会社法及び金融商品取引法においてそれぞれ規定されている監査役の役割と責務を踏まえ、代表取締役等が責任をもって行うべき財務報告内部統制の整備に対して監査役として果たす役割について一つの考え方を示している。今後、財務報告内部統制制度が施行された時点で必要に応じてさらに検討を進めることとなる。
8.監査役監査の環境整備については、他の内部統制システムの構成要素とは異なる性格を有していること等からこれも第5章として別章立てとし、補助使用人に関する事項、監査役報告体制、内部監査部門等との連係体制等について、代表取締役等又は取締役会に対し必要な要請を行うべき旨を規定している。
V 留意事項 本実施基準は会社法上の大会社を対象とし、主として上場会社を念頭において、策定されたものである。
本実施基準に定める規定は、監査役に会社法上課せられている職責を遂行するにあたっての行動指針を示すものであり、監査役は、企業規模、業種、業態、経営上のリスクその他会社固有の監査環境に配慮して行動することが求められる。
★内部統制システムに係る監査の実施基準
★内部統制システムに係る監査の実施基準 第1章 本実施基準の目的等
第1章 本実施基準の目的等 (目的)
第1条
本実施基準は、監査役監査基準(昭和50年3月25日制定。平成23年3月10日最終改正)第21条第9項に基づき、監査役が会社の内部統制システムに関して行う監査(本実施基準において「内部統制システム監査」という)にあたっての基準及び行動の指針を定めるものである。
(内部統制システムの定義等)
第2条
1.本実施基準において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。なお、本実施基準における「章」、「条」の記載は、特段の言及がない限り、本実施基準における章及び条を意味する。

一 内部統制システム 監査役監査基準第21条第1項各号に定める体制をいう。

二 法令等遵守体制 取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制をいう。

三 損失危険管理体制 損失の危険の管理に関する規程その他の体制をいう。

四 情報保存管理体制 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制をいう。

五 効率性確保体制 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制をいう。

六 企業集団内部統制 会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制をいう。

七 財務報告内部統制 会社及びその属する企業集団に係る財務報告の適正性を確保するための体制をいう。

八 財務担当取締役 財務報告を所管する取締役をいう。

九 監査役監査の実効性確保体制 監査役監査基準第14条に定める体制をいう。

十 監査役報告体制 取締役及び使用人が監査役に報告するための体制その他の監査役への報告に関する体制をいう。

十一 内部監査部門等 監査役監査基準第34条第1項に定める内部監査部門等をいう。

十二 補助使用人 監査役監査基準第14条第2項第1号に定める補助使用人をいう。

十三 内部統制部門 監査役監査基準第34条第3項に定める内部統制部門をいう。

十四 内部統制決議 会社法第362条第4項第6号並びに会社法施行規則第100条第1項及び第3項に基づき行われる内部統制システムに係る取締役会決議をいう。

十五 会議等 第6条第3項に定める会議等をいう。

十六 代表取締役等 第6条第3項に定める代表取締役等をいう。

十七 重大な欠陥 内部統制システムの構築・運用の状況において取締役の善管注意義務に違反する重大な事実があると認められる内部統制の不備をいう。
第2章 内部統制システム監査の基本方針及び方法等
第2章 内部統制システム監査の基本方針及び方法等 (内部統制システム監査の対象)
第3条
監査役は、取締役の職務の執行に関する監査の一環として、内部統制システムに係る以下の事項について監査を行う。
一 内部統制決議の内容が相当でないと認める事由の有無
二 事業報告に記載された内部統制決議の概要等の記載が適切でないと認める事由の有無
三 取締役が行う内部統制システムの構築・運用の状況における不備の有無
(内部統制システム監査の基本方針)
第4条
1.監査役は、内部統制システムが適正に構築・運用されていることが良質な企業統治体制の確立のために必要不可欠であることを認識し、自らの責務として内部統制決議の内容及び内部統制システムの構築・運用の状況を監視し検証する。

2.監査役は、内部統制システムの重要性に対する代表取締役その他の取締役の認識及び構築・運用に向けた取組みの状況並びに取締役会の監督の状況(必要な事項の取締役会への報告状況を含む)など、会社の統制環境を監査上の重要な着眼点として内部統制システム監査を行う。

3.監査役は、内部統制システムが、会社及びその属する企業集団に想定されるリスクのうち、会社に著しい損害を及ぼすおそれのあるリスクに対応しているか否かに重点を置いて、内部統制システム監査を行う。内部統制システムがかかるリスクに対応していないと認めた場合には、監査役は、内部統制システムの不備として、代表取締役等、内部監査部門等又は内部統制部門に対して適時に指摘を行い、必要に応じ代表取締役等又は取締役会に対して助言、勧告その他の適切な措置を講じる。

4.監査役は、内部統制の実践に向けた規程類及び組織体制、情報の把握及び伝達の体制モニタリング体制など内部統制システムの構成要素が、前項のリスクに対応するプロセスとして有効に機能しているか否かについて、監視し検証する。

5.監査役は、取締役会及び代表取締役等が適正な意思決定過程その他の適切な手続を経て内部統制システムの構築・運用を行っているか否かについて、監視し検証する。
(内部統制決議及び事業報告に関する監査)
第5条
1.監査役は、内部統制決議について、以下の観点から監視し検証する。

一 内部統制決議の内容が、会社法第362条第4項第6号並びに会社法施行規則第100条第1項及び第3項に定める事項を網羅しているか。

二 会社に著しい損害を及ぼすおそれのあるリスクに対応した内部統制システムのあり方について、決議がなされているか。 

三 内部統制決議の内容について、必要な見直しが適時かつ適切に行われているか。

四 監査役が内部統制決議に関して助言又は勧告した指摘(第5章に定める監査役監査の実効性確保体制に関する指摘を含む)の内容が、取締役会決議において適切に反映されているか。反映されていない場合には正当な理由があるか。

2.監査役は、各事業年度における内部統制システムの構築・運用の状況について、内部統制決議に定められた基本方針に適って構築・運用されているか、当該基本方針に見直すべき点がないかなどについて代表取締役等に対して評価を求め、説明を受ける。また、内部統制決議の内容の見直し等の要否を検討するため必要がある場合、監査役は、代表取締役等に対して、当該評価内容を取締役会において報告するよう求める。

3.監査役は、内部統制決議の内容の概要が、事業報告において正確かつ適切に記載されているかを検証する。また、以下のいずれかに該当する場合、監査役は、当該事業年度における内部統制システムの構築・運用状況が事業報告に適切に記載されているかを検証する。

一 重大な企業不祥事等が生じ、再発防止策のあり方を含め内部統制システムについて改善が求められている場合

二 前号の場合の他、事業の経過及び成果、対処すべき課題等の会社の現況に関する重要な事項として記載することが相当であると認められる場合

4.監査役は、内部統制決議の内容に不備があると認める場合には、必要に応じ監査役会における審議を経て、第7条第3項に従い、取締役会に対して助言、勧告を行う。助言又は勧告等にもかかわらず、取締役会が正当な理由なく適切に対応せず、かつその結果、内部統制決議の内容が相当でないと認める場合には、監査役は、必要に応じ監査役会における審議を経て、監査報告においてその旨を指摘するものとする。内部統制システムに関する事業報告の記載内容が著しく不適切と認める場合も同様に対応するものとする。
(内部統制システムの構築・運用の状況に関する監査)
第6条

1.監査役は、第3章各条に定める内部統制システムの各体制(本条及び次条において「各体制」という)について、本条に定める監査活動その他日常的な監査活動を通じて、第3章各条第1項に掲げる重大なリスクに対応しているか否かを監視し検証する。なお、財務報告内部統制については第4章に定めるところに従い、監査役監査の実効性確保体制については第5章に定めるところに従い、監査役は監査を行い適切な措置を講じる。

2.監査役は、各事業年度の内部統制システム監査の開始にあたり、当該時点における内部統制決議の内容及び内部統制システムの構築・運用の状況を把握し、内部統制システム監査の計画を策定する。事業年度中に内部統制決議の内容に修正があった場合には、それに応じて監査計画等の必要な見直しを行う。

3.監査役は、取締役会、コンプライアンス委員会、リスク管理委員会その他関連する会議又は委員会等(本実施基準において「会議等」という)への出席及び代表取締役を含む業務執行取締役(本実施基準において「代表取締役等」という)との定期的会合等を通じて、各体制の構築・運用の状況とそれに対する取締役(社外取締役を含む)の認識について把握し、必要に応じ各体制の構築・運用の状況等について代表取締役等に対して報告を求める。

4.監査役は、内部監査部門等に対して、内部監査計画その他モニタリングの実践計画及びその実施状況について適時かつ適切な報告を求める。監査役は、内部監査部門等から各体制における重大なリスクへの対応状況その他各体制の構築・運用の状況に関する事項について定期的に報告を受け、必要に応じ内部監査部門等が行う調査等への監査役もしくは補助使用人の立会い・同席を求め、又は内部監査部門等に対して追加調査等とその結果の監査役への報告を求める。

5.監査役は、前項に定める内部監査部門等との連係を通じて、内部監査部門等が各体制の構築・運用の状況を継続的に検討・評価し、それを踏まえて代表取締役等が必要な改善を施しているか否かなど、内部統制システムのモニタリング機能の実効性について、監視し検証する。

6.監査役は、第4項に定める内部監査部門等との連係のほか、内部統制部門に対して、各体制の構築・運用の状況及び各体制の実効性に影響を及ぼす重要な事象について、それに対する対応状況を含め定期的かつ随時に報告を受け、必要に応じて説明を求める。

7.監査役は、会計監査人との定期的会合等を通じて、内部統制システムの構築・運用の状況に関する会計監査人の意見等について把握し、必要に応じて報告を求める。
(内部統制システムの不備への対応等)
第7条

1.監査役は、内部統制システムの監査において実施した監査の方法の内容、構築・運用の状況に関する監査結果、発見した不備、助言又は勧告を要すると判断した論拠及び結果等について、監査役会に報告するものとする。

2.監査役会は、前項の各監査役からの報告を受けてその内容を検討し、代表取締役等又は取締役会に対して助言又は勧告すべき事項の有無及びその内容を審議する。

3.前項の審議を踏まえ助言又は勧告すべき事項を監査役会で決定した場合、監査役は、代表取締役等又は取締役会に対して、内部統制システムの構築・運用の状況や不備に関する監査役の所見、判断の根拠、改善対応などについて説明のうえ、助言又は勧告を行う。

4.前項の監査役会の助言又は勧告にもかかわらず、代表取締役等又は取締役会が正当な理由なく適切に対応せず、かつその結果、各体制の構築・運用の状況に重大な欠陥があると認められる場合には、監査役は、必要に応じ監査役会における審議を経て、監査報告においてその旨を指摘するものとする。

5.本条に定める監査役会における審議及び決定は、各監査役の権限の行使を妨げるものではない。
第3章 法令等遵守体制・損失危険管理体制等の監査
第3章 法令等遵守体制・損失危険管理体制等の監査 (法令等遵守体制に関する監査)
第8条
1.監査役は、法令等遵守体制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。

一 代表取締役等が主導又は関与して法令等違反行為が行われるリスク

二 法令等遵守の状況が代表取締役等において適時かつ適切に把握されていない結果、法令等違反行為が組織的に又は反復継続して行われるリスク

三 代表取締役等において把握された会社に著しい損害を及ぼすおそれのある法令等違反行為が、対外的に報告又は公表すべきにもかかわらず隠蔽されるリスク

2.監査役は、法令等遵守体制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ(ただし、以下に掲げる事項はあくまで例示であり、会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な要点に絞るものとする。以下第13条までの各条第2項について同じ)、判断する。

一 代表取締役等が、会社経営において法令等遵守及びその実効的体制の構築・運用が必要不可欠であることを認識しているか。

二 取締役会その他重要な会議等における意思決定及び個別の業務執行において、法務部及び外部専門家に対して法令等遵守に関する事項を適時かつ適切に相談する体制など、法令等を遵守した意思決定及び業務執行がなされることを確保する体制が構築・運用されているか。取締役会その他重要な会議等において、収益確保等を法令等遵守に優先させる意思決定が現に行われていないか。

三 法令等遵守に係る基本方針及び行動基準等が定められ、事業活動等に関連した重要法令の内容が社内に周知徹底されているか。反社会的勢力への適正な対応方針が社内に周知徹底されているか。また、倫理基準、品質基準、安全基準等が社内に周知徹底されているか。

四 法令等遵守の状況を監視するモニタリング部門が存在し、会社の法令等遵守に係る問題点が発見され、改善措置がとられているか。法令等違反に関する処分規程が整備され、それに従った適切な措置がとられているか。

五 法令等遵守体制の実効性に重要な影響を及ぼしうる事項について、取締役会及び監査役に対して定期的に報告が行われる体制が構築・運用されているか。内部統制部門が疑念をもった取引・活動について内部監査部門等又は監査役に対して適時かつ適切に伝達される体制が構築・運用されているか。内部通報システムなど法令等遵守に関する状況が業務執行ラインから独立して把握されるシステムが構築・運用されているか。
(損失危険管理体制に関する監査)
第9条
1.監査役は、損失危険管理体制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。

一 損失の危険の適正な管理に必要な諸要因の事前の識別・分析・評価・対応に重大な漏れ・誤りがあった結果、会社に著しい損害が生じるリスク
二 会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事業活動が正当な理由なく継続されるリスク
三 会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事故その他の事象が現に発生した場合に、適切な対応体制が構築・運用されていない結果、損害が拡大しあるいは事業が継続できなくなるリスク

2.監査役は、損失危険管理体制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ、判断する。

一 代表取締役等が、会社経営において損失危険管理及びその実効的体制の構築・運用が必要不可欠であることを認識しているか。

二 会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事象への対応について、取締役会その他重要な会議等において、十分な情報を踏まえたリスク分析を経た議論がなされているか。

三 代表取締役等が、会社の事業内容ごとに、信用・ブランドの毀損その他会社存続にかかわるリスクを認識しているか。当該リスクの発生可能性及びリスク発生時の損害の大きさに関する適正な評価が行われているか。他社における事故事例の把握、安全・環境に対する社会的価値観の変化、法的規制その他経営環境及びリスク要因の変化が認識され、それに対して適時かつ適切に対応する体制が構築・運用されているか。

四 当該事業年度において重点的に取り組むべきリスク対応計画を策定しているか。当該計画の実行状況が定期的にレビューされる仕組みが構築・運用されているか。

五 各種リスクに関する識別・分析・評価・対応のあり方を規定した管理規程が整備されているか。定められた規程及び職務分掌に従った業務が実施されているか。損失危険管理の状況を監視するモニタリング部門が存在し、会社の損失危険管理に係る問題点が発見され、改善措置が講じられているか。

六 会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事業活動の継続に関し、適時かつ適切な検討が行われているか。正当な理由なく放置されていないか。

七 損失危険管理体制の実効性に重要な影響を及ぼしうる事項について、取締役会及び監査役に対して定期的に報告が行われる体制が構築・運用されているか。内部通報システムなど損失危険管理に関する状況が業務執行ラインから独立して把握されるシステムが構築・運用されているか。

八 会社に著しい損害を及ぼす事態が現に生じた場合を想定し、損害を最小限にとどめるために、代表取締役等を構成員とする対策本部の設置、緊急時の連絡網その他の情報伝達体制、顧客・マスコミ・監督当局等への対応、業務の継続に関する方針等が予め定められているか。
(情報保存管理体制に関する監査)
第10条

1.監査役は、情報保存管理体制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。

一 重要な契約書、議事録、法定帳票等、適正な業務執行を確保するために必要な文書その他の情報が適切に作成、保存又は管理されていない結果、会社に著しい損害が生じるリスク
二 重要な営業秘密、ノウハウ、機密情報や、個人情報ほか法令上保存・管理が要請される情報などが漏洩する結果、会社に著しい損害が生じるリスク
三 開示される重要な企業情報について、虚偽又は重大な欠落があるリスク

2.監査役は、情報保存管理体制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ、判断する。

一 代表取締役等が、会社経営において情報保存管理及びその実効的体制の構築・運用が必要不可欠であることを認識しているか。

二 情報の作成・保存・管理のあり方に関する規程等が制定され、かつ、当該規程を有効
に実施するための社内体制が構築・運用されているか。

三 取締役会議事録その他法定の作成資料について、適正に内容が記録され保存される社内体制が構築・運用されているか

四 保存・管理すべき文書及び情報の重要性の区分に応じて、適切なアクセス権限・保存期間の設定、セキュリティー・ポリシー、バック・アップなどの管理体制が構築・運用されているか。

五 個人情報ほか法令上一定の管理が求められる情報について、社内に対して、当該法令で要求される管理方法の周知徹底が図られているか。

六 会社の重要な情報の適時開示、IRその他の開示を所管する部署が設置されているか。開示すべき情報が迅速かつ網羅的に収集され、法令等に従い適時に正確かつ十分に開示される体制が構築・運用されているか。

七 情報保存管理に関して定められた規程及び職務分掌に従った管理がなされているか。情報保存管理の状況を監視するモニタリング部門が存在し、会社の情報保存管理に係る問題点が発見され、改善措置が講じられているか。

八 情報保存管理の実効性に重要な影響を及ぼしうる事項について、取締役会及び監査役に対して定期的に報告が行われる体制が構築・運用されているか。内部通報システムなど情報保存管理に関する状況が業務執行ラインから独立して把握されるシステムが構築・運用されているか。
(効率性確保体制に関する監査)
第11条
1.監査役は、効率性確保体制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。

一 経営戦略の策定、経営資源の配分、組織の構築、業績管理体制の構築・運用等が適正に行われない結果、過度の非効率性が生じ、その結果、会社に著しい損害が生じるリスク

二 過度の効率性追求により会社の健全性が損なわれ、その結果、会社に著しい損害が生じるリスク

三 代表取締役等が行う重要な業務の決定において、決定の前提となる事実認識に重要かつ不注意な誤りが生じ、その結果、会社に著しい損害が生じる決定が行われるリスク


2.監査役は、効率性確保体制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ、判断する。

一 代表取締役等が、会社の持続的な成長を確保する経営計画・事業目標の策定、効率性確保と健全性確保との適正なバランス等が、会社経営において重要であることを認識しているか。

二 経営計画の策定、経営資源の配分、組織の構築、管理体制のあり方、ITへの対応等が、適正に決定・実行・是正される仕組みが構築・運用されているか。

三 会社の経営資源及び経営環境等に照らして達成困難な経営計画・事業目標等が設定され、その達成のため会社の健全性を損なう過度の効率性が追求されていないか。

四 代表取締役等が行う重要な意思決定及び個別の業務の決定において、経営判断原則に適合した決定がなされることを確保する体制が構築・運用されているか。
(企業集団内部統制に関する監査)
第12条 

1.監査役は、企業集団内部統制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。

一 重要な子会社において法令等遵守体制、損失危険管理体制、情報保存管理体制、効率性確保体制に不備がある結果、会社に著しい損害が生じるリスク

二 重要な子会社における内部統制システムの構築・運用の状況が会社において適時かつ適切に把握されていない結果、会社に著しい損害が生じるリスク

三 子会社を利用して又は親会社から不当な圧力を受けて不適正な行為が行われ、その結果、会社に著しい損害が生じるリスク

2.監査役は、企業集団内部統制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ、判断する。

一 代表取締役等が、会社経営において企業集団内部統制及びその実効的体制の構築・運用が必要不可欠であることを認識しているか。

二 企業集団全体で共有すべき経営理念、行動基準、対処すべき課題が周知徹底され、それに沿った法令等遵守、損失危険管理及び情報保存管理等に関する基準が定められ、その遵守に向けた適切な啓蒙活動とモニタリングが実施されているか。

三 企業集団において重要な位置を占める子会社、内部統制リスクが大きい子会社、重要な海外子会社などが、企業集団内部統制の管理・モニタリングの対象から除外されていないか。

四 子会社の内部統制システムの構築・運用の状況を定期的に把握しモニタリングする統括本部等が会社に設置され、子会社の内部統制システムに係る重要な課題につき問題点が発見され、適切な改善措置が講じられているか。子会社において法令等違反行為その他著しい損害が生じる事態が発生した場合に、会社が適時かつ適切にその状況を把握できる情報伝達体制が構築・運用されているか。グループ内部通報システムなど子会社に関する状況が会社において把握されるシステムが構築・運用されているか。

五 子会社に監査役が置かれている場合、当該監査役が、第8条から本条に定めるところに従い、当該子会社の内部統制システムについて適正に監査を行い、会社の統括本部等及び会社の監査役との間で意思疎通及び情報の交換を適時かつ適切に行っているか。子会社に監査役が置かれていない場合、監査機能を補完する適正な体制が子会社又は企業集団全体で別途構築・運用されているか。

六 企業集団内で共通化すべき情報処理等が適正にシステム化されているか。

七 子会社に対して達成困難な事業目標や経営計画を設定し、その達成のため当該子会社又は企業集団全体の健全性を損なう過度の効率性が追求されていないか。

八 子会社を利用した不適正な行為に関して、会社がその状況を適時に把握し、適切な改善措置を講じる体制が構築・運用されているか。

九 会社に親会社がある場合、少数株主の利益を犠牲にして親会社の利益を不当に図る行為を防止する体制が構築・運用されているか。
第4章 財務報告内部統制の監査
第4章 財務報告内部統制の監査 (財務報告内部統制に関する監査)
第13条
1.監査役は、財務報告内部統制について、以下に列挙する重大なリスクに対応しているか否かを監査上の重要な着眼点として、監視し検証する。

一 代表取締役及び財務担当取締役(本条において「財務担当取締役等」という)が主導又は関与して不適正な財務報告が行われるリスク

二 会社の経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす財務情報が財務担当取締役等において適時かつ適切に把握されていない結果不適正な財務報告が組織的に又は反復継続して行われるリスク

三 会計監査人が関与又は看過して不適正な財務報告が行われるリスク

2.監査役は、財務報告内部統制が前項に定めるリスクに対応しているか否かについて、以下の事項を含む重要な統制上の要点を特定のうえ、判断する。

一 財務担当取締役等が、会社経営において財務報告の信頼性の確保及びそのための実効的体制の構築・運用が必要不可欠であることを認識しているか。また、財務報告における虚偽記載が適時かつ適切に発見・予防されないリスクの重大性を理解したうえで、財務報告内部統制の構築・運用及び評価のための基本計画を定めているか。

二 財務報告を所管する部署に会計・財務に関する十分な専門性を有する者が配置されているか。また、専門性を有する者を育成する中長期的取組みが行われているか。

三 財務担当取締役等が、財務報告の信頼性確保のために、以下の重要な事項について適切に判断・対応できる体制を構築・運用しているか(ただし、以下は例示であり、会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な点に絞るものとする)。

イ 会計処理の適正性と妥当性(売上・売掛金の計上時期と実在性、棚卸資産の実在性、各種引当金計上の妥当性、税効果会計の妥当性、減損会計の妥当性、その他重要な会計処理の適正性と妥当性)

ロ 重要な会計方針の変更の妥当性

ハ 会計基準や制度の改正等への対応

ニ 資本取引、損益取引における重要な契約の妥当性

ホ 重要な資産の取得・処分等の妥当性

ヘ 資金運用の妥当性(デリバティブ取引等を含む)

ト 連結の範囲及び持分法適用会社の範囲の妥当性

チ 連結決算に重要な影響を及ぼす子会社及び関連会社に関する、上記の各事項の適正な会計処理

リ 後発事象の把握と重要性判定の妥当性

四 開示すべき財務情報が迅速かつ網羅的に収集され、法令等に従い適時に正確かつ十分に開示される体制が構築・運用されているか。

五 会計監査人が適正に監査を行う体制が整備されているか。会計監査人の会社からの独立性が疑われる特段の関係が形成されていないか。

六 会社の経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性が高いと認められる事項について、財務担当取締役等と会計監査人との間で適切に情報が共有されているか。

3.会社の財務報告内部統制が、金融商品取引法第24条の4の4第1項に定める財務報告内部統制の評価報告(本条において「内部統制報告」という)の対象となっている場合、監査役は、以下の方法により前項の判断を行う。

一 財務報告内部統制の評価に関する以下の事項(ただし、以下に掲げる事項はあくまで例示であり、会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な事項に絞るものとする)について、財務担当取締役等及び内部統制部門から報告を受ける。必要があれば証跡の閲覧及び運用テスト等への立会い等を通じて、実際の状況を確認する。

イ 財務報告内部統制の構築・運用及び評価のための基本計画と体制の状況

ロ 財務報告リスク及び情報開示リスクの特定の妥当性(前項第3号に列挙される重要な事項に関するリスクについて適切に判断及び対応できる体制の状況を含む)

ハ 評価範囲の妥当性(重要な事業と拠点の特定を含む)

ニ 重要な業務プロセスの特定と選定の妥当性

ホ チェックリスト等を利用した全社レベルの内部統制の構築・運用の評価状況

へ 重要な業務プロセスの構築・運用の評価状況

ト 連結グループの決算及び財務報告プロセスの構築・運用の評価状況

チ IT全般統制及び業務処理統制の構築・運用の評価状況

リ 不備の検出、改善及び是正のプロセスの妥当性

ヌ 内部統制報告の作成プロセスと内容の妥当性

ル 過剰な文書化及び証跡化の有無、重複したコントロールの有無、その他会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過剰な対応の有無

二 金融商品取引法第193条の2第2項の規定に従い内部統制報告について監査証明を行う者(本条において「財務報告内部統制監査人」という)から、財務報告内部統制における重大なリスクへの対応状況その他財務報告内部統制の実効性に重要な影響を及ぼすおそれがあると認められる事項について、前号の財務報告内部統制の評価に関する主要な点に留意して、適時かつ適切に監査役又は監査役会において報告を受ける
 
三 監査役がその監査職務の過程で知り得た情報で、財務報告内部統制の実効性に重要な影響を及ぼすと認められる事項について、財務担当取締役等及び財務報告内部統制監査人との情報の共有に努める。

四 財務担当取締役等と財務報告内部統制監査人との間で、財務報告内部統制の評価範囲、評価方法、有効性評価等についての意見(会社の事業内容、規模その他会社の特性に照らして過不足のない重要な事項の範囲についての意見を含む)が異なった場合には、財務担当取締役等及び財務報告内部統制監査人に対し、適時に監査役又は監査役会に報告するよう求める。

五 財務担当取締役等に対して、取締役会等に以下の事項について定期的な報告をするよう求める。
イ 財務担当取締役等による財務報告内部統制の評価の状況
ロ 財務報告内部統制監査人の監査の状況

六 内部統制システムについて会社法に定める監査報告を作成する時点において、財務報告内部統制監査人から、財務報告内部統制の監査結果について、書面による報告を受ける。口頭による報告を受ける場合、その内容を監査役会議事録に残すことが望ましい。財務報告内部統制について開示すべき重要な不備(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令第2条第10号に定義される不備をいう。以下本条において同じ)が存在する旨の指摘があった場合には、財務担当取締役等と財務報告内部統制監査人の双方から説明を求め、当該不備の内容とその重大性、既に実施した改善策と今後の改善方針、計算関係書類及びその会計監査結果に及ぼす影響などについて確認のうえ、当該不備に関する事業報告の記載内容について検証するとともに、本条第4項の規定に従い監査報告の内容を検討する。

4.監査役は、本条に定める監査の方法その他会社法に定める監査活動を通じて、財務報告内部統制が第1項に定める重大なリスクに対応していないと判断した場合には、必要に応じ監査役会における審議を経て、その旨を財務担当取締役等に対して適時かつ適切に指摘し必要な改善を求めるとともに、第7条第4項の規定に従い、内部統制システム監査について監査報告に記載すべき事項(重大な欠陥に該当するか否かを含む)を検討する。また、会計監査人に対して必要な情報を提供し、会計監査上の取扱いにつき意見交換を行う。会計監査人が当該情報の内容を十分考慮せず適正な会計監査を行っていないと認める場合には、監査役は、会計監査人の監査の方法又は結果の相当性について監査報告に記載すべき事項を検討する。

5.監査役監査報告作成後に、当該監査報告に係る事業年度の財務報告内部統制について開示すべき重要な不備の存在が判明した場合、監査役は、財務担当取締役等及び財務報告内部統制監査人の双方から意見を聴取し、その内容や改善策などについて確認するとともに、必要に応じて当該事業年度に係る定時株主総会において監査役監査報告との関係等について説明を行う。
第5章 監査役監査の実効性確保体制の監査
第5章 監査役監査の実効性確保体制の監査 (補助使用人に関する事項)
第14条
1.補助使用人に関して以下の事情のいずれかが認められる場合には、監査役は、代表取締役等又は取締役会に対して必要な要請を行う。

一 監査役の監査体制に照らし、その職務を執行するために必要と認められる補助使用人の員数又は専門性が欠けている場合 

二 監査役の指示により補助使用人が行う会議等への出席、情報収集その他必要な行為が、不当に制限されていると認められる場合

三 補助使用人に対する監査役の必要な指揮命令権が不当に制限されていると認められる場合

四 補助使用人に関する人事異動(異動先を含む)・人事評価・懲戒処分等に対して監査役に同意権が付与されていない場合

五 その他、監査役監査の実効性を妨げる特段の事情が認められる場合

2.前項に定める監査役の要請は、必要に応じ監査役会における審議を経て行う。前項の要請に対して、代表取締役等又は取締役会が正当な理由なく適切な措置を講じない場合には、監査役は、監査役会における審議を経て、監査報告等においてその旨を指摘する。
(監査役報告体制)
第15条
1.監査役報告体制について、以下の事情のいずれかが認められる場合には、監査役は、代表取締役等又は取締役会に対して必要な要請を行う。
一 取締役会以外で監査役が出席する必要のある重要な会議等について、監査役の出席機会を確保する措置が講じられていない場合
二 監査役が出席しない会議等について、その付議資料、議事録等の資料が監査役の求めに応じて適時に閲覧できる措置が講じられていない場合
三 業務執行の意思決定に関する稟議資料その他重要な書類が、監査役の求めに応じて適時に閲覧できる措置が講じられていない場合
四 代表取締役等、内部監査部門等又は内部統制部門が監査役に対して定期的に報告すべき事項が報告されていない場合
五 前号の報告事項以外で、代表取締役等、内部監査部門等又は内部統制部門が監査役に対して適時に報告すべき事項が報告されていない場合
六 会社に置かれている内部通報システムについて、監査役に当該システムから提供されるべき情報が適時に報告されていない場合

2.前項に定める監査役の要請は、必要に応じ監査役会における審議を経て行う。前項の要請に対して、代表取締役等又は取締役会が正当な理由なく適切な措置を講じない場合には、監査役は、監査役会における審議を経て、監査報告等においてその旨を指摘する。
(内部監査部門等との連係体制等)
第16条
1.監査役は、以下の事情のいずれかが認められる場合には、代表取締役等又は取締役会に対して必要な要請を行う。
一 第6条第4項に定める監査役と内部監査部門等との連係が実効的に行われていないと認められる場合
二 前号に定めるほか、監査役と内部監査部門等との実効的な連係に支障が生じていると認められる場合
三 第6条第6項に定める内部統制部門からの報告に関して監査役が要請した事項が遵守されていない場合
2.前項に定める監査役の要請は、必要に応じ監査役会における審議を経て行う。前項の要請に対して、代表取締役等又は取締役会が正当な理由なく適切な措置を講じない場合には、監査役は、監査役会における審議を経て、監査報告等においてその旨を指摘する。

以 上