シンプラル法律事務所
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論点整理(刑事手続)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

刑訴理論
訴因 意義 審判の対象
構成要件に該当する具体的事実として特定したものでなければならない。
「できる限り」特定すれば足りる。(法256B)

日時・場所・方法などは、あらかじめ厳格に特定することが困難な場合もある。
個別性を明らかにして、被告人の防御に支障のない程度には特定していなければならない。
訴因が1つに特定できないときは、いくつかの訴因として、予備的または択一的に記載してもよい(法256D)。
規定 第256条〔起訴状、訴因、罰条〕
公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
A起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
B公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
単一性 公訴事実の単一性:犯罪が1個である限り、公訴事実は1個である。
収賄罪⇒恐喝罪に変更:
両者は観念的競合⇒同一性の問題ではなく単一性の問題。
殺人予備と殺人:
殺人予備は殺人に吸収されて1罪となる⇒同一性の問題ではなく単一性の問題。
窃盗教唆と贓物収受は併合罪⇒この間に公訴事実の単一               性がなく、したがってその同一性ということもあり得ない。
同一性 訴因は主張⇒公訴事実の同一性とは、主張された事実(訴因)と主張された事実(訴因)との比較の問題。
@ どの程度共通であれば足りるか?
訴訟上の合目的性に従って決定。

事実は無限に多様であり、事実それ自体の中に同一性を決定する絶対的な標準があるわけではない。
検察官の立場:
同一性の範囲が狭い⇒訴因の変更ができず、一度無罪の判決を受けて、再起訴しなければならない。
同一性の範囲が広い⇒訴因変更はできるが、既判力が及ぶため、訴因を変更をせずに無罪判決を受けたときは、再起訴ができなくなる。
訴因変更⇒準備の期間を与えさえすれば、広く解しても被告人の防御の利益を害することはない。
平野 現行法では、基本部分が同一であれば足り、その大部分が同一である必要はない。
犯罪を構成する主要な要素は行為と結果とであるが、両者が同一である必要はなく、行為または結果のいずれかが共通であれば、公訴事実は同一と考えてよい。
○暴行と器物毀損〜行為の点で同一であり得る。
○窃盗と詐欺〜結果の点で同一性。
×窃盗と贓物故買
〜同じ財物に対するものであっても、日時場所が著しく異なれば(日時場所が近ければ結果が同一なり同一性をもつ。)同一性があるとはいえない。、

捜査弁護
受任時の留意点 事実関係の把握 @被疑者の住所、氏名、生年月日、職業
A罪名及び被疑事実の内容、共犯者の有無、被害者の住所、氏名
B逮捕されているか否か、逮捕の年月日
C身体が拘束されているか否か、身体の拘束場所
D逮捕中が、勾留中か、起訴後か、逮捕等の年月日
E捜索差押の有無・状況
F家族の状況、身元引受人の有無
G被疑者の受傷の有無
Hその時点までの捜査に違法不当な点はないか
I捜査の進展状況
J証拠の有無、証拠保全の要否
K被疑者の前科、前歴
L被害弁償の要否
家族から受領 身元引受書
弁護人選任届 複数もらう。
起訴前段階で検察官又は司法警察員に差し出せば、第1審においても効力を有する。(法32@規則17)
⇒特に支障がない時には、起訴前段階で弁護人選任届を提出するのが通例。
留置管理係の警察権/接見室受付にいる看守に対し、弁護士人選任届を作成する旨を告げて用紙を差し出す⇒被疑者に署名・指印をさせて直ちに用紙を返還してもらえる。
警察官・看守の指印証明がなされているか確認すべき。
接見に赴く時は名刺を持参する。
←留置管理係の警察官より被疑者用と留置管理用に名刺を2枚要望されることがある。
検察官送致前は、捜査担当警察官に、検察官送致後は、捜査担当検察官に提出。
検察庁の刑事事務課(事件の検事への配点係)に、被疑者の氏名、生年月日、罪名、送致警察署名、送致日を言えば、捜査担当検察官の氏名を教えてもらえる。
接見 規定 第39条〔被拘束者との接見・授受〕
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
A前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
B検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
接見に行く前にすべきこと @家族等関係者からの事情聴取
Aどこの警察署に拘束されているかの確認
B留置施設への連絡と捜査担当官の確認
接見の際に用意する物 @弁護人選任届
A「被疑者ノート」⇒被疑者に差し入れ
B弁護士の名刺(被疑者及び留置管理に渡すため)、弁護人の印鑑(宅下げ・差入れの際に必要)
C被疑者から聴き取るべき事項を整理したメモ
D弁護人ノート
最初に話すこと @誰に頼まれて接見に来たのか
A家族や職場の近況を伝えたり、家族からの伝言を伝える
B誠実義務・守秘義務を負うこと。but罪証隠滅等の手助けはできないこと。
C逮捕後まず10日勾留され、その後更に勾留延長の可能性があること。
起訴後も引き続き勾留されること。
保釈は起訴後にしかできないこと。
D出られる見通しは慎重に説明する。
E起訴・不起訴や量刑の見通し、保釈の可否・時期・保釈保証金額等についても同様。
差入れ等 一般人の差入れ 一般人と接見等禁止決定がなされている場合でも、糧食、衣類、現金、公刊物、日用品及び寝具等接見禁止決定において除外されている物は差入れができる。
弁護人の差入れ・宅下 留置施設(警察署の留置場)では、留置管理の職員に申し出て差し入れる。
保釈 規定 第88条〔保釈の請求〕
勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
第89条〔必要的保釈〕
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
手続 保釈請求書の提出 第1回公判期日前⇒令状部(第10刑事部)宛に、刑事訟廷へ提出する。
(簡裁事件では、簡裁の刑事訴廷に提出)
第1回公判期日後⇒刑事訟廷係(刑事受付)に提出する。
保釈面談 保釈請求書の受理後、当日かその翌日には裁判所(裁判官)の保釈面接が行われる。
保釈保証金 刑訴法93条2項
保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
150万円が最低限。
保釈保証金 第1回公判前は令状部書記官、第1回公判期日後は係属部書記官から「保釈許可決定書」と「保管金納付書」の交付を受ける。
裁判所の「出納課保管金第1係」に上記書類を提出。
納付後、「保管金受領証書」(保証金の還付の際に必要な書類)を受領する。
釈放 保釈金納付後、裁判所から検察庁の「事件令状課令状係」に書類が送付され、そこから釈放指揮書が拘置所等の勾留場所へ交付される。
釈放時間については、「事件令状課令状係」に「釈放指揮書」の交付時刻を問い合わせ、その後拘置所等に釈放予定時刻を問い合わせることになる。
釈放の有無を知るため、釈放されれば弁護人へ電話するよう被告人に伝え、場合によっては拘置所へ連絡してその旨被告人に伝言してもらう。
余罪がある場合 見通し 余罪捜査の終結についての見通しについての感触が得られることもあるので、積極的に警察の捜査主任官や検察官に接触するのが友好。
身柄 起訴後の勾留を利用して余罪についての捜査が続けられる場合が多い。
逮捕・勾留の時間的制約がないため、いたずらに追起訴が遅れることもある。
追起訴が未了という理由で保釈請求ができないことに不満がでる。
but
追起訴予定で保釈請求を強行⇒再逮捕・再勾留を招く結果となり、保釈金が高額になるなどの不利益がある。
接見 身に覚えのない事件まで被疑者に嫌疑がかあkることがないよう注意を払う。
←成績アップのため、近隣の未解決事件を被疑者に押しつけることによる冤罪あり。
保釈 判断 保釈後に余罪で再逮捕、再勾留をしてくることがある。
⇒余罪捜査の終了、公訴提起をまって保釈請求をすべきか、再逮捕を覚悟で保釈請求をすべきかの判断を求められる。
起訴の後勾留を利用した余罪捜査に因って勾留が長期におよび、被告人の人身の自由及び防御権の行使が侵害される場合には、再逮捕を恐れず保釈請求をすることが結果的に早期の保釈につながることがある。

公判手続
公訴事実を争わない場合
J @開廷します。
A被告人前へ
B人定質問
C起訴状送達の確認
DPが起訴状を朗読するから聞いておくように
EP起訴状を朗読してください
P 「公訴事実、Aは・・・ものである。」「罪名及び罰条・・・」以上です。
J @Aに黙秘権の告知
AAに対し「Pが今読んだ事実は間違ないないですか」
 A・・・その通りです。
 B・・・公訴事実は争いません。
B証拠調べに入ります。
CP冒頭陳述をどうぞ。
P @冒陳とカードを廷吏に渡す。
A「検察官が証拠によって証明しようとする事実は、以下のとおりであります。」
 「まずAの身上、経歴等について・・・・・・その他上場など本件に関連する事項」
以上の事実を立証するため、証拠関係カード記載の各取調を請求いたします。
J @弁護人、証拠に対するご意見は
 B・・・すべて同意します。
Aそれでは証拠を採用します。
BP要旨の告知をどうぞ
P 要旨の告知・・・以上であります。
(廷吏に)記録と物を渡す。
J @Bの立証は何か(情状証人など)ありますか。
 B・・・証拠調べ請求書と証拠を廷吏に渡す。
     情状証人としてAの父○○を申請します。
A(Pへ)それに対しての意見は
 P・・・書証については同意します。証人についてはしかるべく。
B採用します。
C「証人は前へ」・・・・宣誓してください。
  偽証罪の告知・・・(証人尋問)
尋問 @証人尋問(B⇒P⇒J)
A被告人質問(B⇒P⇒J)
J (Pへ)「検察官、意見を述べてください。」
P 検察官の意見を述べます。
(論告)
@まず、事実関係についてでありますが、「本件公訴事実は、当公判廷で取調べられた・・証明は十分であると思料します。」
A次に情状関係でありますが。「本件は・・・・」
B以上、諸藩の事情を考慮し(求刑)と思料します。
B 弁論
J @(Aに)「最後に言っておきたいことがありますか」
  A・・・・
A以上をもって弁論を終結します。
B次回、判決期日を指定。
C(A前へ)次回公判期日を言う。
D○月○日、この法廷において判決を言い渡します。
E閉廷

情状事由
犯罪自体の情状 @実害がない
A未遂
B事案軽微
C悪質でない
D犯罪による利得がない・少ない
E余罪
F心神耗弱
G知能低級
H身体障害
I同情しうる動機
J飲酒の上での犯行
K生活苦からの犯行
L環境不良に基づく犯行
M私欲のためでない犯行
N偶発的犯行
O従属的犯行
P被害者にも一端の責任がある
Q被害者と親族または知人の関係にある
犯罪後の情状 @改しゅんの情が明らかである
A被害の全部が弁償済み
B被害の一部が弁償済み
C被害弁償の見通しがある
D示談成立
E示談成立の見通しがある
F慰藉の方法を講じている
G被害品が還付(または回復)されている
H被害者が宥恕している
I自首
共犯者との関係に関するもの @共犯者との刑に権衡
将来の予測に関するもの @再犯のおそれが少ない
A更生の意欲がある
Bまじめに働いている
C勤労意欲がある
D飲酒を慎むことを誓っている
E不良交友を絶つことを誓っている
F技術をもっている
G性格善良
H素行良好
I常習性がない
J確かな身元引受人があり指導監督を誓っている
K近親者が指導監督を誓っている
L定職についている
M就職の予定である
N家庭環境良好
O近く結婚の予定
刑の執行により本人又は家族に過大な苦痛ないし悪影響を与える @病弱
A老齢
B若年
C被告人がいなければ一家が支柱を失う
D家族の養育、看護等に支障をきたす
E妻(または本人)が妊娠中である
前科関係等 @犯罪歴がない
A前科がない
B懲役または禁錮の前科がない
C長期(または相当期間)勾留されている
その他

公判
第1回公判期日前の準備 規定 刑訴法 第299条〔証人等の氏名等開示と証拠等の閲覧〕
検察官、被告人又は弁護人が証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問を請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名及び住居を知る機会を与えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。
A裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
規則 第178条の2(第一回公判期日前における訴訟関係人の準備)
訴訟関係人は、第一回の公判期日前に、できる限り証拠の収集及び整理をし、審理が迅速に行われるように準備しなければならない。

規則 第178条の5(審理に充てることのできる見込み時間の告知)
裁判所は、公判期日の審理が充実して行なわれるようにするため相当と認めるときは、あらかじめ、検察官又は弁護人に対し、その期日の審理に充てることのできる見込みの時間を知らせなければならない。

規則 第178条の6(第一回公判期日前における検察官、弁護人の準備の内容)

検察官は、第一回の公判期日前に、次のことを行なわなければならない。
一 法第二百九十九条第一項本文の規定により、被告人又は弁護人に対し、閲覧する機会を与えるべき証拠書類又は証拠物があるときは、公訴の提起後なるべくすみやかに、その機会を与えること。
二 第二項第三号の規定により弁護人が閲覧する機会を与えた証拠書類又は証拠物について、なるべくすみやかに、法第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調の請求に関し異議がないかどうかの見込みを弁護人に通知すること。

2 弁護人は、第一回の公判期日前に、次のことを行なわなければならない。
一 被告人その他の関係者に面接する等適当な方法によつて、事実関係を確かめておくこと。
二 前項第一号の規定により検察官が閲覧する機会を与えた証拠書類又は証拠物について、なるべくすみやかに、法第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調の請求に関し異議がないかどうかの見込みを検察官に通知すること。
三 法第二百九十九条第一項本文の規定により、検察官に対し、閲覧する機会を与えるべき証拠書類又は証拠物があるときは、なるべくすみやかに、これを提示してその機会を与えること。

3 検察官及び弁護人は、第一回の公判期日前に、前二項に掲げることを行なうほか、相手方と連絡して、次のことを行なわなければならない。
一 起訴状に記載された訴因若しくは罰条を明確にし、又は事件の争点を明らかにするため、相互の間でできる限り打ち合わせておくこと。
二 証拠調その他の審理に要する見込みの時間等裁判所が開廷回数の見通しをたてるについて必要な事項を裁判所に申し出ること。

第178条の7(証人等の氏名及び住居を知る機会を与える場合)
第一回の公判期日前に、法第二百九十九条第一項本文の規定により、訴訟関係人が、相手方に対し、証人等の氏名及び住居を知る機会を与える場合には、なるべく早い時期に、その機会を与えるようにしなければならない。

第178条の8(第一回公判期日における在廷証人)
検察官及び弁護人は、証人として尋問を請求しようとする者で第一回の公判期日において取り調べられる見込みのあるものについて、これを在廷させるように努めなければならない

第178条の9(検察官、弁護人の準備の進行に関する問合せ等)
裁判所は、裁判所書記官に命じて、検察官又は弁護人に訴訟の準備の進行に関し問い合わせ又はその準備を促す処置をとらせることができる。

第178条の10(検察官、弁護人との事前の打合せ)
裁判所は、適当と認めるときは、第一回の公判期日前に、検察官及び弁護人を出頭させた上、公判期日の指定その他訴訟の進行に関し必要な事項について打合せを行なうことができる。ただし、事件につき予断を生じさせるおそれのある事項にわたることはできない。
2 前項の処置は、合議体の構成員にこれをさせることができる。
証拠調べ請求 規定 規則 第188条の2(証拠調を請求する場合の書面の提出・法第二百九十八条)
証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問を請求するときは、その氏名及び住居を記載した書面を差し出さなければならない。
2 証拠書類その他の書面の取調を請求するときは、その標目を記載した書面を差し出さなければならない。

規則 第188条の3(証人尋問の時間の申出・法第二百九十八条)
証人の尋問を請求するときは、証人の尋問に要する見込みの時間を申し出なければならない。
2 証人の尋問を請求した者の相手方は、証人を尋問する旨の決定があつたときは、その尋問に要する見込みの時間を申し出なければならない。
3 職権により証人を尋問する旨の決定があつたときは、検察官及び被告人又は弁護人は、その尋問に要する見込みの時間を申し出なければならない。

規則 第189条(証拠調の請求の方式・法第二百九十八条)
証拠調の請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して、これをしなければならない。
2 証拠書類その他の書面の一部の取調を請求するには、特にその部分を明確にしなければならない。
3 裁判所は、必要と認めるときは、証拠調の請求をする者に対し、前二項に定める事項を明らかにする書面の提出を命ずることができる。
4 前各項の規定に違反してされた証拠調の請求は、これを却下することができる。

第189条の2(証拠の厳選・法第二百九十八条)
証拠調べの請求は、証明すべき事実の立証に必要な証拠を厳選して、これをしなければならない。
証拠法 規定 第317条〔証拠裁判主義〕 
事実の認定は、証拠による。
規定 第318条〔自由心証主義〕
証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。
規定 第319条〔自白の証拠能力・証明力〕
強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
A被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
B前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。
規定 第320条〔伝聞証拠排斥の原則〕
第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
A第二百九十一条の二〔簡易公判手続によって審判する旨〕の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。
供述証拠と非供述証拠 供述証拠:言語又はこれに代わる動作によって表現された供述(認識・判断の叙述)が証拠となるもの。
非供述証拠:物の存在、状態などを証明するためのそれ以外の証拠
供述証拠は、人の記憶に残っている犯罪の現象を再現する証拠であるから、それが法廷に達するまでに、知覚して記憶し、その後表現し叙述するちおう各段階において誤りが入りこむ危険がある。

相手方の反対尋問にさらすなどして誤りの有無と程度を確かめた上でなければ証拠にできない。
伝聞証拠:反対尋問の経ない供述証拠
伝聞法則:「伝聞証拠は反対尋問によるチェックを経ておらず、誤りが含まれている危険があるので、証拠になし得ない」という原則。
各書面 診断書 鑑定人の作成した書面に関する法321条4号が準用

作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは証拠能力を有する。(最高裁昭和32.7.25)
手紙 被告人以外の者が作成した手紙⇒法321条3号書面として証拠能力を考えるべき。
but
服役中の共犯者がその妻に出した手紙を法323条3号書面に当たるとした判例(最高裁昭和29.12.2)
vs.
法323条3号は、同条1,2号と同程度の高度の信用性を具備することが書面自体から明かであるとともに、一般的に信用性の高いものとしてある程度類型化されたものであることを要すると解されていることから、疑問。
被告人が単独犯という従前の全面自白を翻し、共同正犯として加功したことを自認する旨の弁護人あての手紙が法322条1項前段に該当するとして認められた裁判例。(浦和地裁昭和58.5.25)
メモ、日記、手帳 法321条1項3号(被告人以外の者が作成したもの)あるいは法322条1項(被告人が作成したもの)によって証拠能力を判断。
表題は日記、手帳などとなっていても、商業帳簿の実質を備えているものは、法323条2号書面として証拠能力が認められる。(米穀小売販売業者が備忘のため記入した未収金控帳を同号書面としたもの(最高裁昭和32.11.2)、漁船団の取決めに基づき各漁船から定時に発せられる操業位置等についての無線通信を他船の通信業務担当者がその都度機械的に記録した書面(最高裁昭和61.3.3))
証人尋問等によってメモ等の作成時期、作成者、作成の事情等により法323条1号、2号に準ずる高度の信用性の情況が立証された場合に、同条3号書面として証拠能力を認めた裁判例がある。(犯罪の嫌疑を受ける前にこれと関係なく貸金関係を備忘のためその都度記載した手帳について(仙台高裁昭和27.4.5)、銀行支店次長が業務のため個人的に記載していた日誌について(東京地裁昭和53.6.29)、犯罪の嫌疑を受ける前にこれと関係なく備忘のためカレンダーの裏面に記載した馬券申込みのメモについ(東京高裁昭和54.8.23))
上申書・嘆願書・示談書 情状証拠として、被告人の身分、経歴、性格、素行、生活環境、犯行後の事情等につき、量刑上有利な事情を述べて寛大な処分を求める旨の上申書、嘆願書又は被害者との示談書等の取調べを請求することが多い。
量刑の資料としての上場の立証は、自由な証明で足りるとするのが多数説であるが、実務上は、厳格な証明ないし公判廷における適正な証拠調べの手続によるのが普通。
証拠物たる書面 その内容のみが証拠となる書面が証拠書類であり、内容に加えて書面の存在及び形状も証拠となるものが証拠物たる書面(法307条)であるとし(最高裁昭和27.5.6)、証拠物たる書面については証拠書類に準じて証拠能力を判断すべきである。(最高裁昭和31.3.27)
供述録取書の証拠能力 説明 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面
(ア)裁判官面前調書(1号)
ex.証人尋問調書、他事件の公判準備調書、公判調書、民事事件の証人尋問調書、少年保護事件の審判調書
@供述不能のとき(前段)、又は
A供述者が公判準備若しくは公判期日における前の供述と異なった供述(相反供述)をしたとき(後段)
のいずれかに該当すれば証拠とできる。
(イ)検察官面前調書(2号) @供述不能の時(前段)、又は
A公判準備若しくは公判期日における前の供述と異なった供述(相反供述)をした場合で公判期日等における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況(相対的特信性)の存するとき(後段)
のいずれかに該当すれば証拠とすることができる。
(ウ)その他の書面(3号) 伝聞法則例外の原則型
ex.員面調書や警察官作成の捜査報告書など
@供述不能、A不可欠性、B特信性(2号後段の相対的特信性ではなく絶対的特信性が必要)の3要件が全て充足されることにより証拠とすることができる。
弁護人が不同意とすれば、もはや3号書面自体は、内容の真実性を立証する目的の証拠として採用されない。
法328条の弾劾証拠としてしか活用の道は残されていない
検察官が当該書面の内容を立証したいと望めば、供述者又は作成者を証人請求して証言させるしかない。
規定 第321条〔被告人以外の者の供述書面の証拠能力〕
被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異つた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
A被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
B検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
C鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。
規定 第321条の2〔前条に対する特則〕
被告事件の公判準備若しくは公判期日における手続以外の刑事手続又は他の事件の刑事手続において第百五十七条の四第一項に規定する方法によりされた証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体がその一部とされた調書は、前条第一項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。この場合において、裁判所は、その調書を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。
A前項の規定により調書を取り調べる場合においては、第三百五条第四項ただし書の規定は、適用しない。
B第一項の規定により取り調べられた調書に記録された証人の供述は、第二百九十五条第一項前段並びに前条第一項第一号及び第二号の適用については、被告事件の公判期日においてされたものとみなす。
規定 第322条〔被告人の供述書面の証拠能力〕
被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。
但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
A被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。
規定 第323条〔その他の書面の証拠能力〕
前三条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。
一 戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面
二 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面
三 前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面
規定 第324条〔伝聞供述の証拠能力〕
被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条〔被告人の供述書面の証拠能力〕の規定を準用する。
A被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号〔被告人以外の者の供述書面の証拠能力〕の規定を準用する。
規定 第325条〔供述の任意性の調査〕
裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載された供述又は公判準備若しくは公判期日における供述の内容となつた他の者の供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければ、これを証拠とすることができない。
同意の意義 趣旨 伝聞証拠に対して証拠能力を付与することを承認する当事者の行為

証拠能力と証明力は別問題であるから、供述証拠等に同意したうえで当該供述者を尋問し、調書の証明力を争うこともできる。
but
当該供述者の尋問を請求が必ずしも認められる保障はない⇒当該書証の信用性を争う場合には、原則としてこれを不同意とし、当該供述者の尋問を請求すべき。
「相当性」について、当事者の同意があれば相当性が推認され、相当性の不存在を疑うべき特別の事情があるときに調査の必要を生じる。
規定 第326条〔当事者の同意と書面・供述の証拠能力〕
検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
A被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。但し、代理人又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。
規定 第327条〔合意書面の証拠能力〕
裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人が合意の上、文書の内容又は公判期日に出頭すれば供述することが予想されるその供述の内容を書面に記載して提出したときは、その文書又は供述すべき者を取り調べないでも、その書面を証拠とすることができる。この場合においても、その書面の証明力を争うことを妨げない。
規定 第328条〔証明力を争うための証拠〕
第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。

簡易な手続
簡易公判手続 意義 比較的軽微な事件(法定刑が短期1年未満の懲役又は禁固にあたる罪)について、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述をしたときには、裁判所の決定により、簡略化された証拠調手続により審理を行う手続き。
刑訴法 第291条の2〔簡易公判手続の決定〕
被告人が、前条第三項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人及び弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、簡易公判手続によつて審判をする旨の決定をすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。
手続 検察官の冒頭手続が省略され、証拠調べの方法も適当と認める方法で行うことができ(法307条の2)、証拠とすることに異議を述べない限り伝聞法則も適用されない(刑訴法320条2項)。
弁護活動 供述調書の内容に問題がある場合には、簡易公判手続に付すべきではなく、付されたとしても簡易公判手続によることが相当でないとして決定の取消しを求める。(刑訴法291条の3)
問題のある証拠調べに異議を述べる(異議を述べると伝聞法則が復活する)。
即決裁判手続 規定 第350条の2〔即決裁判の申立手続〕
検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。
ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。
A前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
B検察官は、被疑者に対し、前項の同意をするかどうかの確認を求めるときは、これを書面でしなければならない。この場合において、検察官は、被疑者に対し、即決裁判手続を理解させるために必要な事項(被疑者に弁護人がないときは、次条の規定により弁護人を選任することができる旨を含む。)を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない。
C被疑者に弁護人がある場合には、第一項の申立ては、被疑者が第二項の同意をするほか、弁護人が即決裁判手続によることについて同意をし又はその意見を留保しているときに限り、これをすることができる。
D被疑者が第二項の同意をし、及び弁護人が前項の同意をし又はその意見を留保するときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
E第一項の書面には、前項の書面を添付しなければならない。
意義 事案が明白であり、軽微で争いがなく、執行猶予が見込まれる事件について、速やかに公判期日を指定して相当な方法により審理を行い、原則として即日に執行猶予判決を言い渡す手続。
2004年の刑訴法改正により新設。
要件 @事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれるなど、即決裁判手続で審理するのが相当と認められる事件であること(刑訴法350条の2第1項)
A死刑、無期、短期1年以上の懲役または禁錮にあたる罪でないこと(刑訴法350条の2第1項但書)
B被疑者の書面による同意があること(刑訴法350条の2第3項)
C被疑者に弁護士人があるときは、弁護人の書面による同意があるか、少なくとも意見を留保していること(刑訴法350条の2第4項5項)
以上@〜Cの要件を満たす場合に、検察官による即決裁判手続の申立てが行われる。(刑訴法350条の2第1項本文)
略式手続 意義 被告人の書面での同意を条件として、検察官による簡易裁判所への略式請求の申立てにより、公判手続を経ることなく検察官が提出した証拠のみにより100万円以下の罰金又は科料を課す裁判(略式命令)を言い渡す手続き。(刑訴法461条)

判決
準備 執行猶予 判決後すぐには釈放されず、いったん拘置所等の勾留場所に連れ戻される。
被告人が釈放後居住場所を確保できない場合には、あらかじめ生活保護申請をしておく。
保護カードに因る更生緊急保護の制度もあるが、十分な保護が受けられないこともある。
実刑判決 保釈中に実刑判決⇒保釈が効力を失い(刑訴法343条)、収容される。
刑訴法 第343条〔禁錮以上の刑の宣告と保釈等の失効〕
禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつたときは、保釈又は勾留の執行停止は、その効力を失う。この場合には、あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八条〔収容〕の規定を準用する。
上訴の準備のため、弁護人選任届、控訴申立書を準備しておく。
判決後の保釈 控訴提起前及び控訴提起後訴訟記録が控訴裁判所に到達する前は、原裁判所。(刑訴規則92条2項)
第92条(上訴中の事件等の勾留に関する処分・法第九十七条)
上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないものについて勾留の期間を更新すべき場合には、原裁判所が、その決定をしなければならない。
2 上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて、勾留の期間を更新し、勾留を取り消し、又は保釈若しくは勾留の執行停止をし、若しくはこれを取り消すべき場合にも、前項と同様である。
3 勾留の理由の開示をすべき場合には、前項の規定を準用する。
4 上訴裁判所は、被告人が勾留されている事件について訴訟記録を受け取つたときは、直ちにその旨を原裁判所に通知しなければならない。
判決 保釈保証金の還付 無罪、執行猶予等の裁判の告知⇒勾留状はその効力を失い、保釈保証金の取戻しができる。(刑訴法345条、規則91条1項1号)
禁固以上の刑に処する判決の宣告⇒保釈はその効力を失い、被告人が収容されれば保釈保証金の取戻しができる。

刑罰
刑の執行猶予 規定 刑法 第25条(執行猶予) 
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
意義 刑の言渡に際して、犯情が軽く、現実に刑を執行する必要が認められない場合に、犯人に対して一定の期間その刑の執行を猶予し、その期間を無事経過すれば刑の言渡がなかったものとみなす制度。
有罪判決そのものの効力が失われるという点で、「条件付有罪判決」
要件 初度の執行猶予:
前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者、あるいは禁錮以上の刑に処せられたことがあってもの、その執行を終りまたは執行の免除のあった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことのない者が、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言渡を受けたとき、情状によって、裁判確定の日から1年以上5年以下の期間刑の執行が猶予され得る場合。(刑法25条1項)
再度の執行猶予:
前に禁錮以上の刑につき執行を猶予された者が、1年以下の懲役または禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがある場合について、同じく1年以上5年以下の期間その執行を猶予され得る場合。
ただし、保護観察付執行猶予の言渡を受けた者が猶予期間内にさらに罪を犯した場合は除かれる。(刑法25条2項)
効果 言渡された猶予判決が取り消されることなく猶予期間を経過すれば、刑の言渡はその効力を失う。(刑法27条)
刑の言渡に基づく法的効果が将来に向かって消滅するという趣旨であり、受刑の事実は次の猶予判決の欠格事由ではなくなり、また猶予期間中うけていた職業資格等の制限もなくなる。
執行猶予の取消 必要的取消(刑法26条):
@猶予の期間内にさらに罪を犯し禁錮以上の実刑に処せられたとき、
A猶予の言渡前に犯した他の罪について禁錮以上の実刑に処せられたとき
B猶予の言渡前に他の罪ついて禁錮以上の実刑に処せられたことが発覚したとき
裁量的取消(刑法26条の2):
@猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
A第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
B猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。