シンプラル法律事務所
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論点整理(国賠請求)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

国家賠償法
法律の構成 1条〜6条まで
公務員の不法行為と賠償責任・求償権(1条) 国又は公共団体の公権力の行
使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
A前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
営造物の設置管理の瑕疵と賠償責任、求償権(2条) 規定 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
A前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
権力的な活動ではない⇒民法が重畳的に適用され得る。
営造物の設置又は管理に瑕疵があったか否かについては、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべき。(最高裁昭和53.7.4)
賠償責任者・求償権(3条) 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
A前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
4条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
民法の特別法⇒民法が補充的に適用。
5条 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。
6条 この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
国家賠償制度 確立 違法な行政活動によって生じた損害を国家が賠償するもの。
確立は、フランで1900年代、kアメリカやイギリスで1940年代、日本では第二次体制後。
憲法 憲法 第17条〔国及び公共団体の賠償責任〕
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
判例:国賠法が成立するまでの空白期間の間、国に対する損害賠償責任はできないという立場。(同条から直接に損害賠償請求権が発生するのではなく、同条は立法の指針(プログラム規定))
最高裁H14.9.11:
郵便事故に関して国の免責を定める郵便法の規定につき、書留郵便については郵便業務従事者に故意又は重過失があった場合、特別送達郵便物についてはさらに軽過失があった場合にまで、それぞれ国の沿ない賠償責任を免除・制限している部分が、憲法17条に違反し無効であるとした。

特別法による国家賠償責任の軽減につき、憲法17条が単なるプログラム規定にとどまらず、立法府の裁量にしばりをかけ、合憲性判断の基準として一定の規範性を有することを示す。
機能 行政事件訴訟法が定めるようなタイトな訴訟類型が問題とならず、損害賠償請求という単純な法律構成で出訴して訴訟追行が可能
⇒法律実務家にとって使い勝手が良い。
行政訴訟が機能不全に陥っていることとあいまって、事実上その代替機能を果たしている。
■国賠法1条 ■国賠法1条
責任の性質 国賠法1条:国または公共団体の公権力の行使に基づく損害賠償責任を規定。
A:代位責任説(通説・判例):
1条の本質について、本来責任を負うべき者が公務員であることを前提に、その責任を国・公共団体が当該公務員に代位して負担することを定めたもの。

@1条1項が公務員個人の主観的要件(故意・過失)を賠償責任成立の要件としている。
A同条2項が公務員に対する求償権を定めている。

B:自己責任説
代位責任説⇒加害公務員・加害行為の特定が必要。l
but
加害公務員・加害行為の特定は原則的に要求されているにとどまり、被害者に角の立証責任を負わせることにならないよう、厳密な特定性は要求されないと解されている。
最高裁昭和57.4.1:
役所内の定期健診における診断ミスが争われた事例において、公務員による一連の職務上の過程において他人に被害を生ぜしめた場合:
@具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、
A一連の行為のいずれかに行為者の故意・過失による違法行為があったのでなければ被害が生ずることはなかったであろうと認められ、
Bどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者に属する国・公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するとき、
国家賠償責任が成立し得ることを認めた。

一連の行為を組成する各行為がすべて同一の行政主体の公務員の職務上の行為である場合に限定され、一部にそうでない行為が含まれる場合には妥当しない。
規定 第1条〔公務員の不法行為と賠償責任、求償権〕
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
A前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
■賠償の要件
■賠償の要件 ●国・公共団体
「国又は公共団体」の範囲は、基本的に「公権力の行使」の解釈に従属し、「公権力の行使」をした者が帰属する団体がこれに該当する。
●公権力の行使
広義説(通説・判例):
国または公共団体の作用のうち、純粋な私経済作用(私人の活動と全く同じ性質の活動)と2条にいう営造物の管理作用を除くすべての作用を、「公権力の行為」に含まる見解。

国家賠償法を広く非権力的活動も含めた行政作用に関する被害者救済法として扱う。
ex.
公立学校での教育活動(最高裁昭和62.2.6)、行政指導(最高裁H5.2.18)、公表(東京高裁H15.5.21)。
●公務員
公務員法制(国家公務員法・地方公務員法等)によってその法的身分が定められている身分上の公務員に限定されず、公権力の行使を委ねられている者を広く含む。
解釈のポイントは「公権力の行使」概念。
行政事務の民間委託との関係で国賠法1条1項の適用が争われる事例:
  • 指定確認検査機関(指定法人)が行った建築確認につき、建築主事による確認の事務と同様に地方公共団体の事務⇒その事務が帰属する行政主体は当該建築物につき確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体。(最高裁H17..6.24)
  • 児童福祉法27条1項3号に基づいて県が行った入所措置により、社会福祉法人が設置運営する児童養護施設に入所した児童との関係で、施設の長は本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使⇒施設職員等による養育監護行為は都道府県の公権力の行使にあたる公務員の職務行為であるとして、国賠法1条1項の適用を肯定。(最高裁H19.1.25)
  • 特別区による家庭福祉員によるお幼児虐待の事例において、家庭福祉員は区の公務員・被用者ではないとしつつ、区長・担当職員は家庭福祉員の調査を怠り、虐待が続発するのを放置し、制度運営要綱に所定の権限をを行使しなかった点に過失を認め、その権限不行使が著しく合理性を欠く違法なものであるとして、告場義責任を認めた。(東京地裁H19.11.27)
●職務行為
「職務行為」を厳密に解釈すると、被害者の救済という見地から問題が生じる。

外形標準説(通説・判例):
職務行為を、客観的に見てその外形が職務行為と認められる場合
最高裁昭和31.11.30:
職務質問を装って金を奪うことを企図した警察官が相手を射殺した事案について、1条は、公務員が主観的に権限行為の意図をもつ場合に限らず、事故の利を図る意図でする場合でも、客観的に職務行為の外形をそなえる行為をして、これによって他人に損害を加えた場合には、国・公共団体に損害賠償の責を負わしめ、広く国民の権益を擁護する趣旨。
●故意・過失と違法性
●過失の客観化
過失の認定にあたって、行為者がなすべきことをしなかった行為(予見可能な結果に対する結果回避義務違反)を把握し、これに対応する内心の注意義務違反の存在を想定。
●違法性の意義
A:結果不法説:
行政活動によって生じる被害(結果)に着目し、被侵害法益の側から、法の許されない結果を発生したことにつき違法性を認定する見解。

B:行為不法説(判例)
公務員の違法な行為に着目し、侵害行為の態様の側から、法に違反する行為をしたことにつき違法性を認定
スピード違反でパトカーに追跡された車が逃走し、それが原因となって起きた事故で第三者が負傷した事案について、パトカーの追跡行為が違法であるというためには、追跡が職務目的を遂行する上で不必要であるか、具体的状況において追跡の開始・継続・方法が不相当であることを要する。(最高裁昭和61.2.27)
判例は、行為不法説を前提に、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたか否かによって違法性を判断する考え方(職務行為基準説)

公務員の行為が結果として特定の規範に反することがあったとしても、行為当時の状況を基準として当該公務員がなすべきことをしていたかという観点から違法性が否定される場合があり得る。
所得税の更正処分について、当該処分が所得金額の過大認定を理由に取消訴訟で一部取り消され、処分の違法が判決により確定しているとしても、そのことから直ちに1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り違法となる。(最高裁H5.3.11)
市町村町が住民票に法定の事項を記載する行為は、たとえ記載の内容につき記載に係る住民等の権利・利益を害するとことがあったとしても、そのことから直ちに1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、市町村町が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り違法となる。(最高裁H11.1.21)
違法な通達により在外被爆者の健康管理手当支給が打ち切られた事例において、通達を作成・発出し、これに従った失権取扱いを継続した国の担当者の行為は、公務員の職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものとして1条1項の適用上違法であり、当該担当者に過失があることも明らかである。(最高裁H19.11.1)

通達の発出につき、担当者には「相当程度に慎重な検討を行うべき職務上の注意義務」があったとし、職務行為基準説によりつつ違法性を認め、さらに過失も認定して国家賠償責任を肯定。
●違法性と過失の二元性
違法性について行為不法説に立ち、職務行為基準説を前提⇒違法性は、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたかが検討されることになるが、その判断は、客観化した過失と概ね重なる。

判例のとる職務行為基準説に立つと、違法性と過失の二元性が失われ、両者の判断内容が実質的に重複する結果、過失があるときには常に違法性があり、過失なないときには違法性もない、ということになる。
国賠法において違法性と過失が一元化すると、国賠法上の違法性取消訴訟上の違法性乖離する。
行政処分以外の行政活動について、たとえば学校被害者の国賠請求事件などでは、教師の行為に注意義務違反があったかという一元的判断により、違法性と過失が認定されている。(最高裁昭和58.2.18)

学校事故のようなケースでは、教師の行為が厳密な行為規範に基づいているかが問題なのではなく、被外の発生について一般的な予見可能性・回避可能性が主要な争点となるため、民法上の不法行為法との違いは小さい。
●取消訴訟と国家賠償の関係
行政処分の取消訴訟における違法性は、その処分に係る特定の条項への違反を想定している。⇒国賠法上の違法性につき職務行為基準説(判例)にたつととすると、同じ「違法性」という言葉が取消訴訟と国家賠償請求訴訟で異なる意味で用いられることになる。(違法性二元論)
法概念の相対性ということからすれば、両制度のもとで違法性の内容が異なっても理論上の問題はない。
違法性一元論⇒国賠法1条の適用場面で、違法性と過失の二元的判断の必要性を強いる。
違法性と過失の二元的判断をする判例:
担当公務員が結果的に誤った解釈により処分をしてしまった場合、国会賠償請求訴訟でも当該処分は違法とされる一方、担当公務員には過失がなかったとしたもの。(最高裁H16.1.15)
在監者の幼年者との接見禁止を定めた旧監獄法施行規則を無効と判断しつつ、接見を許さなかった拘置所長の過失を否定した判例。(最高裁H3.7.9)

行政処分が法定要件を満たす適法なものであれば、国民の権利利益の制約を法律が許容していると解されるため、裁判所は、国家賠償の事案であっても、まず取消訴訟と同一の法制判断を行い、その後あらためて事案に即して過失要件につき判断したもの。
●特殊な公務員の違法
●行政の不作為
●  ●申請に対する不作為
最高裁H3.4.26:
水俣病認定の遅延につき、不作為の違法確認訴訟でこれを違法とする判決が確定した後、さらに不作為状態が継続したため、認定遅延に精神的苦痛に対する慰謝料等が請求された事件について、不作為の違法確認訴訟における違法と、国賠法における違法性を峻別するという判断を示した。

処分遅延という状態での不作為が申請者に対する不法行為として成立するためには処分庁の作為義務言いが必要としつつ、行政手続上の作為義務が直ちにこれに対応するものではないとする。
その上で、「一般に、処分庁が認定申請を相当期間内に処分すべきは当然であり、これにつき不当に長期間にわたって処分がされない場合には、早期の処分を期待していた申請者が不安感、焦燥感を抱かされ内心の静穏な感情を害されるに至るであろうことは容易に予測できることであるから、処分庁には、こうした結果を回避すべき条理上の作為義務がある」とし、この作為義務に違反したといえるには、「客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分できなかったことだけでは足りず、その期間に比して更に長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要」と判示。」

現在では、平成16年の行政事件訴訟法改正によって新設された義務付け訴訟の活用により紛争を処理することが適切。
国賠法1条と民法との差異 民法715条1項但書⇒使用者が免責される条件について規定
国賠法1条1項は免責条項なし。
but
民法715条による使用者の免責はほとんど認められないので、実際上の差異は小さい。
民法715条で国・公共団体の責任を求める場合、709条などを適用して担当公務員個人に対する損害賠償責任を追及することができる。
国賠法1条について、判例は、被害者たる原告の側は公務員個人に対して直接損害賠償を請求できない(最高裁昭和30.4.19)。
国賠法1条1項について「国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責めに任ずることとし、公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたもの」とし、この趣旨からすれば、国・公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、国・公共団体が1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、その使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相当と判示(最高裁H19.1.25)。