シンプラル法律事務所
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論点整理(交通事故 大阪地裁の基準)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

大阪地裁の交通事故損害賠償額算定
(交通事故損害賠償額算定のしおり)
積極損害 治療関係費 治療費及び入院費は、必要かつ相当な実費を認める。
●医療費の内訳:診察料、検査費用、処置料、手術費、投薬料、材料費等
●認められる範囲:
治療又は症状固定までの間の必要かつ相当な範囲内でが原則
過剰、濃厚診療〜相当因果関係の範囲外で不可。
確定診療でなく「疑い」の診療、検査等でも必要・相当の範囲内
審美的治療が常に相当因果関係の範囲外というわけではない(外貌醜状への対応)
症状固定後の治療費:
原則として認めない。
例外的に、症状の内容・程度に照らし、必要かつ相当なものを認める。
●固定後の再手術の場合、一定の時期が来た時の人工関節取り換え、成長過程の子どもで手術を先に延ばす場合等、固定後の治療費も認められ得る。
入院中の個室使用料:
医師の指示があった場合、症状が重篤であった場合、空室がなかった場合等の特別の事情がある場合に限り、相当な期間につき認める。
施術費(整骨院、接骨院、鍼灸院等)、マッサージ費用、温泉治療費等:
医師の指示による場合、症状により有効かつ相当である場合
保険会社が了承した場合も含めてよいことも
●医師・看護師等への謝礼
医師の職業倫理指針との関係で認められない(賄賂のようなもの)
●症状固定、治癒、寛解の意義と時期: 症状固定時期の把握
〜医者の意見に拘束されない。
経過観察の場合、結果的に改善がなくても症状固定魅了とし得る
損害額計算と症状固定等の関係:
症状固定が分水嶺・・慰謝料や休業損害、逸失利益についても同様
●損害額の把握等 治療費等未払の時点でも、債務の発生による損害の認識が可能。
保険会社等が直接支払済みの場合における治療費計上。
過失相殺なし⇒同じ計算。
過失相殺あり⇒本来は一旦プラスした上で過失相殺but既払分が多ければ多いほど損をする。
健康保険を使用する。
過失相殺あり⇒自分の分は自分で負担する必要⇒使わないと被害者が損をする。
自費診療の場合、1点10円の3割負担とかではなく、もっと高いことが(自由診療⇒医者が儲かる⇒使えないという説明)
過失相殺の順序の関係では、はじめから自己負担分だけを損害計上
入院雑費 1日当たり次の額を基準として、入院期間に応じて定める。
平成10年1月1日以降の事故:1300円
平成17年1月1日以降の事故:1500円
●どこまで含むか(日用雑貨、通信費、テレビ視聴代等)
入院中の食事は?事故に合わせて特別な食事が必要な場合?
〜固まっていない。
入院期間中に外泊がある場合等の取扱い?
●自賠責基準(1100円〜実費)と裁判基準(H17以降事故1500円)
交通費 入退院・通院の交通費:
実費相当額を認める。
タクシー利用の場合、傷害の内容・程度、交通の便からみて相当性が認められないときは、電車、バス等の公共交通機関の運賃とする。
自家用車利用による交通費を請求する場合のガソリン代(距離に応じて1km当たり15円程度を認める。)のほか、必要に応じて高速道路料金、駐車場代を認める。
近親者の付添い又は見舞いのための交通費:
原則として認めない。
近親者が遠隔地に居住し、その付添い又は見舞いが必要で社会通念上相当な場合は、別途認める。
●遠隔地居住等の場合・・・帰ってくるのが相当なら、外国からでも認められることも。
●タクシー利用が認められる場合:
傷害の内容・程度、交通の便、診療時間、加害者側了承等
●自家用車の使用:
対キロ15円で計算
高速道路料金、駐車料等は?
近親者や友人・知人による送迎は?
付添看護費 入院または通常の付添看護費:
医師の指示があった場合又は傷害の内容・程度、被害者の年齢等から付添看護の必要性が認められる場合は、被害者本人の損害として認める。
●ただの見舞いと介護は異なる。
職業付添人を付した場合、必要かつ相当な実費を認める。
近親者付添看護の場合は、1日当たりの次の金額を基準とする。
<平成14年1月1日以降の事故>
入院付添:5500円
通院付添:3000円
●近親者へは現実の支出不要
@病院が完全監護の体制を採っている場合でも、症状の内容・程度や被害者の年齢により、近親者の付添看護費を認めることがある。
ex.子供の場合、手が不自由、精神的に付添いの必要等
A近親者の付添看護費は、原則として、付添人に生じた交通費、雑費、その他付添看護に必要な諸経費を含むものとして認め、特別の事情がない限り、基準額に加えて、これらの費用を損害として認めない。
B有識者が休業して付き添った場合、原則として、休業による損害と近親者の付添看護費の高い方を認める。
(ただし、職業付添人で足ればその限度)
C症状により自宅療養期間中の自宅付添費も認めることがあるが、近親者の自宅付添費は、近親者による入院・通院付添費を参考にして定める。
将来の介護費 原則:
平均余命までの間、
職業付添人の場合は必要かつ相当な実費を、
近親者付添の場合は、
@常時介護を要するときは1日につき8000円を、
A随時介護(入浴、食事、更衣、排泄、外出等の一部の行動について介護を要する状態)を要するときは介護の必要性の程度・内容に応じて相当な額を、
被害者本人の損害として認める。
身体的介護を要しない看視的付添を要する場合についても、障害の内容・程度、被害者本人の年齢、必要とされる看視の内容・程度等に応じて、相当な額を定めることがある。
●常時介護と随時介護・・別表第1の1級と2級の違い
●退院できない方がかえって安上がりになる逆転現象が生じうる
but
病院等に居続けらてても、自分の家で生活を送る本人の利益を考えてあげる必要。
●高次脳機能障害等と見守り的付添
〜問題行動を起こさないように看視するのも介護のうち(かえって負担か)。
●植物状態の場合、余命が縮まるか?
●定期金賠償の活用:
損害賠償請求権者が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の申立をしている場合に、定期金による支払を命ずる判決をすることはできないと解するのが相当(最高裁昭和)。
権利者申立ての要否は
定期金賠償の請求に対し一時金賠償を命じるのは処分権主義違反か?
事実に法律を当てはめ⇒訴訟。定期金か一時金かは非訟?
●事故後事故と無関係に死亡した場合
積極損害⇒実際に生じない部分は認められない。
(逸失利益の算定の場合とは異なる)
装具・器具購入費等 車椅子、義足、義眼、コルセット、電動ベッド等の装具・器具の購入費:
症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認める。
一定期間で交換の必要があるものは、装具・器具が必要な期間の範囲内で、将来の費用も認める。
将来の装具・器具購入費は、取得価格相当額を基準に、使用期間開始時及び交換を必要する時期に対応して中間利息を控除する。
●中間利息控除:
取得価額の把握、使用開始時、買替期間と「買替係数」
買替係数は「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」には載っているが、実際に、その係数を使って計算するとは限らない。
○将来の値上がりの可能性⇒中間利息不要も可能
●人損に準ずる物損 身体障害に準じるようなものであれば、物についても人損に含められる。
⇒自賠法3条や自賠責の対象になる。
ex.義眼や人工関節、固定した義足義手や入れ歯等 
眼鏡、コンタクトレンズ、義肢、入歯、補聴器等は?
家屋改造費等 家屋改造費、自動車改造費、調度品購入費、転居費用、家賃差額等については、症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認める。
●家屋改造費(浴室、廊下、階段手摺等や段差解消)、自動車改造費、調度品(機械器具)購入費
転居費用、家賃差額
改造等の必要性・相当性と見積額の相当性の検討
同居者も利益を得ている場合の減額
葬儀関係費 平成14年1月1日以降:150万円
(自賠責基準だと60万〜100万)
@死亡の事実があれば、葬儀の執行とこれに伴う基準額程度の出費は必要なものと認められるので、特段の立証を要しない。
A葬儀関係費は、原則として、墓碑建立費・仏壇費・仏具購入費・遺体処置費等の諸経費を含むものとして考え、特段の事情がない限り、基準額に加えて、これらの費用を損害として認める扱いはしない。
B遺体運送費を要した場合は、相当額を加算する。
C香典については、損害から差し引かず、香典返し、弔問客接待費等は損害と認めない。
●差額説との関係
〜人は遅かれ早かれ死亡するが、加害者にも弔わせる意義。
●葬儀費と実費の関係
実額の立証不要。
それ以上の立証があっても、加害者に負担させるのが相当な範囲という見地(弁護士費用と同様)から原則として150万円に限られる。
逆に、実額がそれ以下しかかかっていなくても、将来の祭祀費等も包括したものととらえれば、150万江二条にはなろうから、あえて減額の必要もない。

入院雑費同様、定額と考えても差し支えない。
通夜費用を含み、会食費(弔問客接待費)、香典返し代は別途計上しない。
●文書料 交通事故証明書、診療書料、意見書作成料、諸資料取寄費用等
文書料と治療費は区別した方が間違い(漏れ)がない。
その他 事故証明書等の文書料、成年後見開始の審判手続費用等は、。必要かつ相当なものについて認める。なお、医師等への謝礼は、損害として認めない。
その他、交通事故と相当因果関係のある損害については認める。
消極損害 休業損害 算定方法 ●裁判基準(休業日数、事故前3カ月分の収入で)と任意保険基準、自賠責基準(1日5700円〜実額)
現実に休業により喪失した額が分かる場合はその額が損害として認められ、
それが判明しない場合は、基礎収入に休業期間を乗じて算定する。
賠償の対象となる休業期間は、原則として現実に休業した期間。
症状の内容・程度、治療経過等からして就労可能であったと認められる場合は、現実に休業していても賠償の対象にならないことや一定割合に制限されることもある。
●休業日数又は休業期間の把握:
基礎収入の把握上、実日数で日額を把握するか、期間で把握するか。
比較対象の統一、家事従事者なら期間の比較となろう。どっちが得か。
有給休暇の使用日数も休業日数に含めて可(無駄に有給をとらされた。)
傷病休暇、夏季休暇等、休日の使用による診療の場合はどうか。
●休業の必要性・相当性:
就労可能性、家事従事可能性。
「休業率」について、
症状固定まで100%休業、固定後は労働能力喪失率(ex.15%等)までと急に変わるのか。
場合によっては逓減的グラフ。
基礎収入の認定 ●基礎収入の把握:
過去3カ月分とは。自賠責では90日で割ることになっているが
所得税や社会保険料等は、天引きされていきたとしても控除不要
(自賠責請求上の書式につられないこと)
通勤手当等の実費補填分は認められない。
住居手当・配偶者手当等、働かなくてももらえる分は?
●実収入の原則と平均賃金(賃金センサス)の利用
月例賃金等の減額分(残業手当等付加給付分含む。)の把握
賞与の減額・不支給分の把握
自賠責算定上の平均給与は?
センサスの平均賃金と閏年の扱い・・・閏年は高めになっている
休業による賞与の減額・不支給が後々までに影響する場合は?
休業中に、昇給・昇格があったり、逆にその遅延があった場合は?
平均賃金を使用する場合は、賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計の男女別平均賃金を用いる
@給与所得者
受傷のための休業により現実に喪失した収入額を損害と認める。
その算定のための基礎収入は、少なくとも事故直前3か月の平均収入を用い、不確定要素の強い職種については、より長期間の平均収入を用いることがある。
休業中、昇給・昇格があった後はその額も基礎とする。
休業による賞与の減額・不支給、昇給・昇格遅延による損害も認められる。
なお、有給休暇は、現実の収入減がなくとも、損害として認める。
A事業所得者
受傷のため現実に収入減があった場合に認められ、原則として、事故直前の申告所得額を基礎とし、申告所得額を上回る実収入額の立証があった場合には、実収入額による。
所得中に、実質上、資本の利子や近親者の労働によるものが含まれている場合には、被害者の寄与部分のみを基礎とする。
事業を継続する上で休業中も支出を余儀なくされる家賃、従業員給与等の固定費も損害と認められる。
被害者のかわりに他の者を雇用するなどして収入を維持した場合には、それに要した必要かつ相当な費用が損害となる。
●事業所得者(自営業者)や農林業所得者の場合
仕事の機会を逃したことによる休業損害も(間接損害では難しいが)
資本の利子や近親者の労働等による分の扱いは?
代替要員確保費用の扱い
〜代替要員を確保して売上を維持したのなら、二重取りは不可
過少申告・無申告の場合:
客観的証拠に基づかない収入の立証を厳しく認める問題か
信義則(クリーンハンド・禁反言)による請求制限の問題か
違法収益の問題:
無資格。無許可・無届・無登録。売春等。違法性の程度を勘案して判断。
●固定経費の扱い:
休業しても支出が圧縮できない経費は、差額説のもとでも損害計上できる。
休業の間無駄な支出を強いられることになる⇒売上減少に加算。??
ex.事務所家賃、従業員給料等
B会社役員
会社役員の報酬については、労働提供の対価の部分は認められるが、利益配当部分は認められない。
●会社役員等の場合
使用人兼取締役には限らない
会社に生じた間接損害(企業損害)としての休業損害の扱い:
原則不可だが経済的一体性があれば認められる
⇒法人格否認の法理が適用されそうなときの方が有利。
企業が適切な予防策(保険等)を自らとることが求められていることになる。
法律構成としては、会社が損害を立替払(第三者弁済)したことにすれば可能になるかも
C家事従事者
学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎とする。
年齢、家族構成、身体状況、家事労働の内容等に照らし、上記平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない場合は、学歴計・女性対応年齢の平均賃金を参照するなどして基礎収入を決める。
有識者で家事労働に従事している場合には、実収入額が学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額となるが、下回っているときは上記の家事従事者に準じる。
●家事労働者の場合:
専業主婦⇒女性全年齢平均賃金を用いる原則
兼業主婦の場合(就労部分はただ働きになるのか)・・・事案次第でうまくやる
主夫でも女性平均賃金を用いる
D無職者(Cの場合を除く)
事故前に現に労働の対価である収入を得ていない者に対しては、原則として、休業損害を認めることはできない。
ただし、治療が長期にわたる場合で、治療期間中に就職する蓋然性が認められるときは、休業損害を認めることができる。
●減収がない場合の扱い:
公務員等所得の保障、本人の人対
使用者の温情、周囲の援助等
半分認めるという判断。常に0ではない。
後遺障害による逸失利益   ●フィクション 
●基礎収入算定時における休業損害(=実額)との差異(実収入額か平均賃金等か)
●賃金センサスの利用
症状固定時年度のものを用いる。
実収入額なら事故前の額による必要。
年齢別・全年齢、性別、学歴、具体的な職業等(より詳細なセンサスあり)
算定方法 基礎収入に労働能力の喪失割合を乗じ、これに喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じて算定する。
●将来的な物価水準や賃金水準の変動、ベースアップは考慮しない。
(現在価値を算定するという建前)
基礎収入の算定 @給与所得者・事業所得者及び会社役員:
休業損害の場合に準じる。
若年者(概ね30歳未満の者)については、実収入額が学歴計・前年齢平均賃金を下回る場合であっても、年齢、職歴、実収入額と学歴計・全年齢平均賃金との乖離の程度、その原因等を総合的に考慮し、将来的に生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合は、学歴計・全年齢平均賃金を基礎とする。
その蓋然性が認められない場合であっても、直ちに実収入額を基礎とするのではなく、学歴別・前平均賃金、学歴計・
年齢対応平均賃金等を採用することもある。
なお、だ医卒者については、大学卒・全年齢平均賃金との比較を行う。
A家事従事者:
休業損害の場合に準じる。
B幼児、生徒、学生:
原則として、学歴計・全年齢平均賃金を基礎とするが、大学生又は大学への進学の蓋然性が認められる者については、大学卒・全年齢平均賃金を基礎とする。
年少女子については、原則として、男女を合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を用いることとする。
尚、未就学者の逸失利益の算定方法は
基礎収入×労働能力喪失率×{(67歳ー症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数ー(就労開始の年齢ー症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数}
●通常の場合においても、上記考え方と同様の計算式により、固定日基準ではなく事故日基準によるべき(その方が損害額は小さくなる)という考え方もある(事故日から固定日までの中間利息を控除しないとすれば、遅延損害金と実質的に二重取りになる)。
but
治療費や弁護士費用等、実際に支出したのが事故より後でも、中間利息を控除しない(かえって事故日より遅延損害金が生じる)ことと同様だとして、正当化されることが多い。
C無職者(A及びBを除く):
被害者の年齢や職歴、勤労能力、勤労意欲等にかんがみ、就職の蓋然性がある場合には、認められる。
その場合、基礎収入は、被害者の年齢や失業前の実収入額等を考慮し、蓋然性が認められる収入額による。
●外国人の場合(特に不法就労者)と逸失利益(基礎収入、就労可能期間等)
労働能力喪失割合 労働省労働基準局通牒(昭和32年7月2日基発第551号)を参考にして、障害の部位・程度、被害者の性別・年齢・職業、事故前後の就労状況、減収を総合的に判断して定める。
●減収がない場合
損害についての差額説と労働能力喪失説
就労機会の制限等の扱い(顔面醜状等の場合を含む)
●後遺障害等級と労働能力喪失率
職業の特性、外貌醜状、嗅覚、骨採取等の関係
既存障害と加重障害の関係
(左足14級⇒右足14級、5年経過⇒期間が切れている
多重事故の場合や異時共同不法行為とされる場合の関係
相当等級認定上の併合、準用、総合考慮の差異
●外貌醜状の後遺障害等級見直しと遡及適用(H22.6.10以降事故)
男女統一と中間等級の設定(女7・12、男12・14⇒7・9・12)
女性の顔面部長さ5センチ以上の線状痕の不利益変更(7⇒9)は不遡及
労災事故(H23.2.1以降治癒(症状固定)自基準)との差異
労働能力喪失期間 労働能力喪失期間の始期:
症状固定日
未就労者の就労の始期は原則として18歳とし、大学進学等によりそれ以後の就労を前提とする場合は、就学終了予定時とする。
労働能力喪失期間の終期:
労働能力喪失期間の終期は、67歳までとし、
年長者については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長いほうとすることを原則としつつ、被害者の性別・年齢・職業・健康状態等を総合的に判断して定める。
ただし、いわゆるむち打ち症の場合は、後遺障害等級に応じ、次の期間を一応の目安とする。
第12級程度:5年から10年
第14級程度:2年から5年
●就労可能年数
就労収入については、67歳又は平均余命までの半分の基準
事故後事故と無関係に死亡した場合と逸失利益の算定

近い将来の死亡が予測された場合かどうか。
介護費用(=積極損害)との差異
●労働能力喪失期間の制限
むちうちでは14級2から5年、12級5から10年とされる。
保険会社は、根拠なく、最下限を主張してくることが多い
(むちうちでもないのに、期間制限を主張してくることが多い)
非器質的神経症状・精神障害等の場合は同様に考えられるか
入通院慰謝料の3分の2基準と共通の問題
慣れとか影響の微弱化という問題等もある。
事実に即して考える
期間制限がある場合の年齢別平均賃金の使用
中間利息控除 民事法定利率である年5%の割合で控除し、計算方法はライプニッツ方式による。
中間利息控除の基準時は、原則として、症状固定時とする。
(理屈では事故時説もあり得る)
@賃金センサスを用いる場合は、症状固定時の年度の統計を使用する。
A労働能力喪失期間を短期間に限定する場合、賃金センサスを使用するときは、原則として、学歴計・年齢対応平均賃金を用いる。
(家事従事者については学歴計・女性全年齢平均賃金を用いる。)
B後遺障害逸失利益については、生活費控除をしない。
死亡による逸失利益 算定方法等 基礎収入から被害者本人の生活費として一定割合を控除し、これに就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じて算定
基礎収入、就労可能期間及び中間利息控除は後遺障害逸失利益の場合に準じる。
●相続構成と扶養構成
内縁配偶者、推定相続人以外で扶養を受けていた者は扶養構成によるか。
相続放棄等をした者もそう考えるべきか。 
●就労収入と年金収入
差額説と労働能力喪失説の対立との関係
●賃金センサスの利用(死亡時年度による。)
●年金の逸失利益性
老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職年金、障害年金(加給分を除く。)
遺族年金は否定、恩給の内軍人恩給としての扶助料は否定
社会保障的性質の強さ、損z区の不確実性等に照らして判断
生活費控除率 ●死亡により支出が不要となる生活費分の控除
原則:
一家の支柱及び女子:30〜40%
その他:50%
ただし、年少女子について男女を合わせた全労働者の平均賃金を採用する場合は、生活費控除率を45%とする。
●赤い本では、被扶養者1人の場合4割、2人の場合3割。
@一家の支柱とは、被害者の世帯が主としてその被害者の収入によって生計を維持していた場合をいう。
●通常は最も収入の高い者
A賃金センサスを用いる場合は、死亡時の年度の統計を使用する。
慰謝料  死亡慰謝料 <平成14年1月1日以降の事故>
一家の支柱:2800万円
その他:2000万円〜2500万円
●一家の支柱とは?
高齢者の場合(⇒低い)。乳幼児等について。
タナボタ⇒減額。
@死亡慰謝料の基準額は本人分及び近親者分を含んだもの
A次のような事情がある場合、慰謝料の増減を考慮する。
ア:加害者に飲酒運転、無免許運転、著しい速度違反、殊更な信号無視、ひき逃げ等が認められる場合。
イ:被扶養者が多数の場合。
ウ:損害額の算定が不可能又は困難な損害の発生が認められる場合。
B次のような事情があった場合は、慰謝料の減額を考慮する。
相続人が被害者と疎遠であった場合
●(死亡逸失利益の)扶養構成のように、相続権のない者についてはどう考えるか
●入通院後に死亡した場合の入通院慰謝料との関係
傷害も死亡に包括して考えられることがあるが、両立しうる。
●増減額事由
被扶養者多数の場合⇒増額
相続人が遠縁⇒減額
●近親者固有の慰謝料の算定
同時請求と異時請求
相続人の一部だけがまず提訴して判決をもらい、残りが後に提訴したら?
●妊婦が死産・流産した場合の扱い
胎児には損害賠償請求の権利主体性が認められない⇒母に含めて考えるしかない。
入通院慰謝料 ●入通院慰謝料か傷害慰謝料か
傷害慰謝料といってしまうと、その程度をどうやって把握するかや、逸失利益と同質化してしまう問題
→重傷、通常、軽度神経症状3分の2基準の区分で対応し、増減額で対処。
他覚的所見のないむちうちの他、軽度神経症状でも3分の2基準か
傷害の程度だけの問題でなく、詐病の恐れや割合的事実認定も意識か
●裁判基準(弁護士基準)と任意保険基準、自賠責基準(1日4200円)
緑のしおりと赤い本(東京)、青い本(全国)、黄色い本(名古屋)の基準差
●内分計算(入通院日数の1月未満の端数分、周りの4つの数字をとって入院日数割合をかけたものを合算)が正確。
算定方法 入通院期間を基礎として別表の基準に基づいて定める。
仕事や家庭の都合等で本来より入院期間が短くなった場合には増額が考慮。
入院の必要性がないのに本人の希望によって入院していた場合には減額が考慮。
入院待機中の期間及びギブス固定中等による自宅安静期間は、入院期間とみることがある。
平成14年1月1日以降の事故:平成14年基準
平成17年1月1日以降の事故:平成17年基準
各基準の「重傷」とは、重度の意識障害が相当期間継続した場合、骨折又は臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合等、社会通念上、負傷の程度が著しい場合をいう。
上記の重傷に至らない程度の傷害についても、傷害の部位・程度によっては、通常基準額を増額することがある。
日数計算 通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合は、実際の通院期間(始期と終期の間の日数)と実通院日数を3.5倍した日数を比較して、少ないほうの日数を基礎として通院期間を計算する。
●しおりの3.5倍基準による場合はどういうときか(自賠責では2倍基準)。
●「通院が長期かつ不規則」とはどういう場合か。
通常は週に2回程度は通院するであろうことを標準的な場合としてとらえ、それよりも頻度が少ない場合は、傷害の程度や精神的苦痛の程度が、客観的指標による限り、標準的な場合より少なめであろうということよる。
⇒7日/2回=3.5
⇒自宅で安静療養等が必要であったとか、仕事や家庭の都合で通院頻度が少なかった場合は、この基準によらないことが考えられる。
(保険会社等との交渉のうえで、多めに言うならともかく、相談者(依頼者)に多めに答えてしまい期待を持たせて、後でトラブルになるので要注意。)
●入院待ち期間中や自宅療養期間中(用安政)の場合
〜その間の症状(ギプス固定とか)や事情により、入院期間及び日数に算入(みなし入院)、逆に通院期間からは控除したうえで、入通院慰謝料を算定。
●本人や周囲の希望で入院期間が延びた場合(不必要な入院のみなし通院等)
●増減額事由:
増額事由として、故意・重過失による事故、ひき逃げ・飲酒・無免許等の悪質性、事故後の対応の悪さ、仕事や家庭の事情で早期に退院等をした場合、強度の痛み、手術繰り返し等

入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の双方で問題となりえる。
被害者自身の問題行動等により、減額事由もありえる。
●介護者(近親者)の慰謝料〜入通院慰謝料では考えない。
●外国人の場合の為替相場等
〜我が国に在留を続ける蓋然性等を考慮し、不相当な利得にならないよう。
軽度の神経症状 軽度の神経症状(むち打ち症で他覚所見のない場合等)の入通院慰謝料は、通常の慰謝料の3分の2程度。
入通院慰謝料の増額を考慮しうる事情は、死亡慰謝料の場合に準じる。
後遺障害慰謝料  平成14年1月1日以降の事故:
1級より14級に応じて、基準あり。
14級に至らない後遺障害がある場合は、それに応じた後遺障害慰謝料を認めることがある。
@後遺障害慰謝料の増額を考慮しうる事情は、死亡慰謝料の場合に準じる。
A原則として、後遺障害慰謝料には介護に当たる近親者の慰謝料を含むものとして扱うが、重度の後遺障害については、近親者に別途慰謝料を認めることがある。その額は、近親者と被害者の関係、今後の介護状況、被害者本人に認められた慰謝料額等を考慮して定める。
●裁判基準(弁護士基準)と任意保険基準、自賠責基準
緑のしおりと赤い本、青い本、黄色い本での差異
●後遺障害等級が14級に達しない場合でも後遺症がないわけではない
⇒ある程度請求でもOK
●増減額事由
入通院慰謝料の増減額との関係
●近親者固有の慰謝料
死亡に比肩する場合(目前で目撃したら)、近親者との関係、要介護の程度
特殊な事情⇒固有の慰謝料
その他  ●成年後見関係費用 
後見開始等の申立費用、鑑定費用、登記費用等の手続費用
申立準備費用、同弁護士費用×(←弁護士強制ではない)
後見人等報酬と後見等費用
後見監督人の選任費用は報酬等(必須でない⇒難しい)
●その他 ●非定型的な損害が存在しないか考えてみる
仕事や旅行、発表会、受験のキャンセル等
留年による授業料
入通院期間中の子の保育料、家庭教師代等、家事手伝人雇入れ費用等
●特別事情として予見可能性の必要
物的損害  ●人損と物損の差異  自賠法3条の対象となるか(訴訟物の違い)
そもそも訴訟物はどのようなものがあるか(自賠3と民709だけか)
無過失責任か(ノン・リケットの場合の扱い)
保険(共済)での支払項目の属するか 
●車両等買替費用 全損と物損(経済的概念、修理費と時価の比較)
時価の把握(レッドブック、インターネット、減価償却と再調達原価)
事故車でも処分価格が付く場合
耐用年数経過後の場合
自動二輪車、原付や自転車の場合
分離可能な付属品(カーナビ等)
再調達困難なホイール等(4つのうち1つの損傷等)
ヘルメット等
車両保険における新価保険、価格協定との関係
車両買替のための諸手続費用(登録費用、車庫証明費用、代行依頼費用等) 
修理費
〜修理相当費用の把握 
評価損(格落ち損)
発生する場合(車台損傷等損傷の内容・程度、外国車・高級車、新車等初年度登録後年数や走行距離との関係)
損害額算定の方法(修理費の一定割合)
代車料

過失割合との関係
代車車両の不存在
相当な修理期間又は買替期間の把握
相当費用額の把握(長期貸出で安くなる?)
代車を使わず公共交通機関やタクシーを利用した場合
牽引料、保管料(駐車料)
休車損

発生する場合(遊休者なし、働く人や仕事はある。)
代車料との関係
売上額・・・変動費用(燃料費等)として算定
積荷損害等

事故による損傷()商品1つずつの物理的破損が必要か
建物や道路施設等の損壊と修理費用、営業損害、汚染除去費用等
事故による自動車保険料増加額は

等級プロテクト特約や、弁護士費用補償特約の利用では増加しない定め等
廃車費用等
廃車となった場合の未経過自賠責保険料や自動車税等
物損による慰謝料
原則不可・・・経済的価値の回復による精神的苦痛の慰謝の原則
主観的価値(愛着)等(ペット、墓石等)
生活、社会的信用の人格的利益等の無形の損害(建物、車両等)
(ex.生活めちゃくちゃ)
自動車や装身具等が高級品の場合は
人損なら増額事由が認められそうな悪質な事情がある場合(ex..当て逃げ)
経済的損害額の算定が困難な場合(慰謝料の補完的機能)
車両修理費等 全損の場合 車両が修理不能(修理が著しく困難で買替えを相当とする場合も含む)又は修理費が事故時の時価額を上回る場合は、原則として全損と評価し、事故時の時価額を損害とする。
時価は、原則として、同一車種、年式、型、使用状態、走行距離等の自動車を中古車市場で取得しうる価格であるが、その認定に当たってはオートガイド自動車価格月報(いわゆるレッドブック)等を参考資料とする。
事故車両が一定の経済的価値を有する場合は、時価相当額と事故車両の売却代金の差額が損害として認められる。
買替えのために必要となる諸手続費用は、必要かつ相当な範囲で認められる。
一部損傷 車両が修理可能であって、修理費が事故前の時価相当額を下回る場合は、必要かつ相当な範囲の修理費を損害とする。
評価損(格落ち) 修理してもなお機能に欠陥を生じ、あるいは事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合、その減少分を損害と認める。
評価損の有無及びその額については、損傷の内容・程度、修理の内容、修理費の額、初年度登録からの経過期間、走行距離、車種(いわゆる高級乗用車であるか)等を考慮して判断。
代車使用料 事故により車両の修理又は買替えのために代車を使用する必要性があり、レンタカー使用等により実際に代車を利用した場合、相当な修理期間又は買替期間につき、相当額の単価を基準として代車使用料を損害と認める。
休車損害 営業用車両については、車両の修理、買替え等のためこれを使用できなかった場合、修理相当期間又は買替相当期間につき、営業を継続していれば得られたであろう利益を損害として認める。
代車使用料が認められる場合は、休車視y損害は認められない。
雑費等 保管料、レッカー代、廃車料等について、相当の範囲で損害と認める。
慰謝料 物的損害に関する慰謝料は、原則として認められない。
その他  弁護士費用 許容額の10%を基本としつつ、事案の難易、認容額その他諸般の事情を考慮して定める。
自賠責保険金の支払を受けることができるのに、それを受けないで訴訟を提起した場合、自賠責保険金の支払を受けた後に訴訟を提起した場合と比べ、認容額は高くなるが、弁護士費用の算定につき、この点を考慮する裁判例は多い。、
弁護士費用も、事故時から遅滞に陥る。
●契約による実際の費用ではなく、うち加害者に負担させることが相当な額
●和解の場合の取扱い
当然に全く上乗せしないという理由なし(上乗せなしなら判決)
保険会社が入れば支払の確保や手間・時間に問題もない
●弁護士費用特約との関係
特約がある場合でも請求してかまわない。
←被害者の保険料の負担のもとに、加害者の賠償義務が減る理由はない。
保険会社が先に支払済みなら保険代位による求償の対象となるべきものか
●簡易な自賠責請求の先行可能性と相当因果関係の範囲
より低廉に賠償金が入手できていたなら、相当因果関係の範囲に制約
遅延損害金 事故時から起算する。
自賠法16条1項に基づく被害者の自賠責保険会社に対する直接請求権は、期限の定めのない債務であるから、被害者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥る。
遅延損害金の利率は年5%。
自賠法72条1項(政府の自動車損害賠償保障事業)による損害の填補額の支払義務については、政府は被害者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥る。
●元金だけの保険金支払なら、遅延損害金部分は被害者に留保されている
●固有の過失相殺
請求が遅滞した場合等、遅延損害金の増大に被害者側も寄与していれば、遅延損害金に限った過失相殺が認められる。
ex.ン無理な主張の固執、必要資料等の提出遅れ、時効期間満了間際の請求
●その他 ●訴訟費用
訴状では損害に計上しない
←別途、訴訟費用負担の裁判及び訴訟費用確定処分によるべき
和解の場合は考慮が必要 
●調査費用、通信費、交通費等
●懲罰的損害賠償
我が国はで認められないが、慰謝料増額事由として考慮されうる
●請求が制限される場合  ●消滅時効による制限 時効期間 
時効の起算点
●因果関係による制限 事実上の因果関係による制限 
相当因果関係による制限
割合的因果関係による制限?
自賠責保険における因果関係の有無の判断が困難な場合の5割減額
●信義則等による制限 使用者から被用者への請求等 
●保険金の支払免責事由 故意招致
無過失の場合(無責事案。人損と物損での立証責任の違い)
被害者の他人性の判断
運行供用者性の否定
車両の運行によらない場合
飲酒事故等の場合(被害者の賠償金請求と加害者の保険金請求の違い)
●保険金の支払基準による制限の有無  
損害額の減額事由  過失相殺   被害者に過失があるときは、損害額から被害者の過失割合に相当する額が控除される。
過失相殺の基準について(「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判タ16号))
自賠責保険については、被害者に重大な過失がある場合に限り、2割から5割の過失相殺⇒裁判より被害者に有利な取扱い。
過失相殺は、加害者の主張がなくても裁判所が職権ですることができるが、被害者に過失があった事実は加害者において立証責任を負う。
被害者の過失 民法722条2項により被害者の過失を斟酌するには、被害者たる未成年者が、事理を弁識するに足る知能を備えていれば足り、行為の責任を弁識するに足る知能を備えていることを要しない。
民法722条2項に定める被害者の過失とは、単に被害者本人の過失のみではなく、被害者側の過失も包含する。
被害者側の過失とは、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいう。
Aが運転しBが同乗する自動二輪車とパトカーとが衝突しBが死亡した交通事故につき、Bの相続人がパトカーの運行供用者に対して損害賠償を請求する場合において、過失相殺をするに当たり、Aの過失をBの過失として考慮することができるとされた判例あり。
一部請求と過失相殺 一部請求の場合、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することになる。
●自賠責保険による重過失減額 後遺障害・死亡では
過失7割以上⇒2割
8割以上⇒3割
9割以上⇒5割 
傷害では
7割以上⇒2割
ただし損害額20万円の基準
自賠責保険における過失割合の修正要素(速度超過、無免許、飲酒等)
●被害者側の過失
身分上、生活関係上の一体性等が必要・・・内縁、家事使用人
被害者側の判断能力(事理弁識能力)も問題
好意同乗と共同運行供用者性(危険運転の容認・助長・誘発等)
同乗の反倫理性?(不貞行為中等) 
●過失相殺の種類
事故態様に関する過失相殺(別冊判タ16号、赤い本、青い本)
事故態様自体ではないが結果の発生に関する過失相殺
(シートベルト、ヘルメット不着用等)
損害の発生拡大に関する過失相殺(受診の遅れや不適切等)
弁護士費用に関する過失相殺
遅延損害金に関する過失相殺(手続の遅延、消滅時効との関係)
●慰謝料算定と過失相殺の関係(過失事由考慮のうえ算定されるべきか)
弁論主義と過失相殺(法的援用の要否、証拠だけに現れている場合は)
●故意招致と過失相殺(損害の拡大発生については考えられる)
●共同不法行為による絶対的過失割合(被害者側過失以外の不真正連帯)
●双方過失事案の和解における交互払(クロス払い)と差額払
不法行為再建相殺禁止は、単独行為による意思表示がだめなだけ
素因減額  身体的要因による減額 被害者に対する加害行為と被害者の疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解されているが、被害者が平均的ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を斟酌することはできない。

素因減額がされるべき場合
治療期間の長期化、あるがまま判決
平均的体格や通常の体質と異なる身体的特徴と疾患の程度・・首長事件
素因減額の割合
心因的要因にjよる減額 身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の事情を斟酌することができる。

素因減額がされるべき場合
治療の遷延化、非器質性神経・精神障害、賠償神経症等
鬱病自殺 
●因果関係の存在が前提(詐病とも区別) 
●根拠(損害の公平分担)
●過失相殺との差異(帰責事由の不要)
●過失相殺との算定上の関係(足すか掛けるか)
損失の填補 被害者あるいはその相続人が損害を被っても、他方において何らかの給付を受けた場合には、賠償額からその給付額を控除する必要が生じる。
●対象となる利益 政府保障事業填補金
任意保険金(合意充当の関係)
搭乗者傷害保険金は(加害者が保険料支出の場合と慰謝料での斟酌)
所得補償保険金、その他の損害保険金(損害填補の性格を有するもの)
失業保険
生命保険金(損害填補性と定額制、代位・調整規定等の存在との関係)
健康保険等との関係(過失相殺との順序の問題・・葬祭費の支給について、障害年金の場合、老人保健法41条による市町村庁の求償との関係)
労災保険と費目拘束
・遅延損害金への充当の要否
・自賠責では損害金充当、労災では元金充当
・ただし、自賠責でも、元金充当の黙示の合意はありうるし、黙っていたら裁判所は元金に充当する。
労災保険における特別支給金等の扱い(給付調査委、代位の規定なし)
介護保険給付との関係(将来分について)
生活保護給付との関係(利用しうる資産としての63条返還について)
死亡損害と遺族年金との関係
・逸失利益(年金収入に限らない。)の範囲での費目高速
・未受領年金と控除の範囲(支給を受けることの確定)
控除すべき主観的範囲(受給権者だけ)
見舞金との関係
香典の扱い(香典返しとの関係)
所得税等
年少者死亡と養育費
仮払仮処分と損益相殺 
共同不法行為者間で賠償すべき額が異なる場合における
ある賠償義務者の一部支払と他の共同不法行為者に対する影響
過失相殺と損益相殺の順序
●人身傷害補償保険・共済(又は特約)の取扱い 人身傷害補償保険・・・被害者の過失部分をカバー
搭乗者傷害保険(特約)との関係(保険事故の範囲、定額制等)
請求者側に過失があるときの算定方法:
差額説・・・まず請求者の過失割合に応じた部分に充当し、残部だけを控除。上記充当部分の算定上、裁判基準によるか人傷保険基準によるか、どちらを先に行使するかで差が出るかどうかの問題。
赤い本2007(H19)下巻131頁の桃崎裁判官の講演録
人身傷害補償保険での受領額をそのまま損益相殺として控除しては不可
控除の対象となる給付といえるか 給付により損害の填補がされたとして損害額から給付額が控除されるのは、当該給付が損害の填補を目的としているものであるかによって決められる。
ア自賠責保険金 自賠責保険金は、損害の填補を目的としたものであり、控除の対象となるが、人身損害部分に限られ、物的損害は填補しない。
労災保険とは異なり、損害費目による拘束はなく、人身損害額全体から自賠責保険金を控除する。
充当方法については、特段の主張がないときは、元本に充当する裁判例が多い。
遅延損害金から充当すべきである旨の主張がされた場合は、遅延損害金から充当し、その残額を元本に充当することになる。
●項目次第で元金充当の目示の合意がありうる。特に治療費。
イ政府の自動車損害賠償保障事業は、アの自賠責保険金を填補するものであり、自賠責保険金と同様の性質を有する。
期限の定めのない債務として発生し、民法412条3項の規定により政府が被害者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥る点で、自賠責保険金と異なる。
ウ任意保険金 任意保険金の支払は加害者の支払と同視でき、控除の対象となる。
自賠責保険金と同様、費目による拘束はないが、任意に支払われるものであるため、元本充当の合意が認められることが少なくない

各種社会保険給付
各種社会保険給付が控除の対象になるかは、当該給付制度の趣旨・目的、代位規定の有無、社会保険の費用の負担者、被害者の二重取りの有無等の観点から決める。
労災保険給付 控除の対象となる労災保険給付には、
@療養補償給付(療養給付)、
A休業補償給付(休業給付)、
B障害補償給付(障害給付)、
C遺族補償給付(遺族給付)、
D葬祭料(葬祭給付)、
E傷病補償年金(傷病年金)、
F介護補償給付(介護給付)
の7種類(かっこ内は通勤災害)がある。
損害費目による拘束があり、補償給付の趣旨目的と民事上の損害賠償のそれとが一致する関係にあるものに限り、損害から控除される。

@療養補償給付(療養給付)⇒治療費を填補。(入院雑費、通院交通費、付添介護費等の積極損害を填補するかは争いがある。)
A休業補償給付(休業給付)、B障害補償給付(障害給付)、C遺族補償給付(遺族給付)、E傷病補償年金(傷病年金)⇒休業損害及び逸失利益を填補。
D葬祭料(葬祭給付)⇒葬祭関係費用を填補。
F介護補償給付(介護給付)⇒介護費用を填補。
(休業給付と逸失利益は、症状固定前後で区別しているもので、同質性を有する。)
労災保険給付を損害賠償債務の遅延損害金に充当することの可否:
最高裁H16.12.20:
自賠責保険金のみならず、労災保険法に基づく遺族厚生年金及び厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金についても、これらの金員が損害賠償債務の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは、自己の日から上記各保険金の各支払日までの間に発生した遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであることは明らかである。(民法491条1項参照)
特別支給金は、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、控除の対象とならない。(特別支給金は会計名目において福祉施設給付金に該当する。)
遺族年金の給付 被害者の遺族が被害者の死亡を原因として遺族年金を受給することになった場合、遺族年金は控除の対象となるが、逸失利益からのみ控除され、他の財産的損害や精神的損害との間で控除することはできない。
遺族年金については、被害者が支給を受けるべき障害年金等の逸失利益だけでなく、給与収入等を含めた逸失利益全般との関係で控除すべき。
健康保険法等 健康保険法、国民健康保険法における療養の給付(健康保険法63条、国民健康保険法36条)は、労災保険の療養補償給付と同様、控除の対象となる。
被害者の行使する自賠法16条1項に基づく請求権の額と市町村長が老人保健法(平成17年法律第77号による改正前のもの)41条1項により取得し行使する上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超える場合には、被害者は市町村長に優先して損害賠償額の支払を受けられるとされている。
介護保険法 介護保険法による給付:
既に給付された介護保険給付は控除の対象となるが、将来受給できる介護保険給付は控除を否定する裁判例が多い。
生活保護法 生活保護法による扶助費:
控除の対象にならないと解されている。
損害賠償金の支払を受けた被害者が、生活保護法63条に基づく費用返還義務を負うことになる。

各種保険金
損害保険については、保険料を支払った保険者は、保険法25条(旧商法662条)や約款の規定により、支払った保険金の限度で第三者に対する損害賠償請求権を取得する結果、支払われた保険金の額につき被害者の損害額から控除される。
生命保険については控除の対象にならない。
生命保険金 生命保険金は、既に払い込んだ保険料の対価たる性質を有し、不法行為の原因と関係なく支払われるものであり、代位制度もないので、控除の対象とはならない
搭乗者傷害保険金 搭乗者傷害保険(被保険自動車に搭乗中の者を被保険者として、被保険者が事故により死亡又は障害を被った場合に支払われるもの)は、控除の対象とならない
ただし、加害者側から保険料を支出している当事者傷害保険金が支払われた場合には、それを慰謝料で斟酌する裁判例も多い。
所得補償保険金 所得補償保険(被保険者が傷害又は疾病のために就業不能となった場合に、被保険者が喪失した所得を補てんすることを目的としたもの)は、保険事故により被った実際の損害を保険証券記載の金額を限度として填補することを目的とした損害保険の一種というべきであるから、控除の対象となる
カ 香典・見舞金 香典 被害者の遺族が受領した香典は、損害を填補する性質を有しないから控除の対象とならない。
見舞金 加害者が被害者に交付した見舞金は、損害の填補とならないのが原則であるが、多額のものは損害の填補と解されるので、控除の対象となる。
キ 租税 租税は控除しない。
ク 養育費  年少者が死亡した場合において、就労可能年齢に達するまで要したであろう養育費は控除しない。
控除すべき時的範囲 給付金を損害額から控除する場合において、現実に履行された場合又はこれと同視しうる程度にその存続及び履行が確実であるということがでっきる場合に限って控除の対象となる。
具体的には、年金については、口頭弁論終結時において支給額が確定している分までということになる。
控除すべき主観的範囲 損害額から給付金を控除する場合、各種給付の受給権者についてのみ、その者の損害額から控除する。
過失相殺との先後関係 ア 自賠責保険金等 自賠責保険金・政府の自動車損害賠償保険事業による填補金・任意保険金:
過失相殺をした後に控除する。
イ 労災保険金 過失相殺をした後に残額から控除する。
ウ 健康保険等による給付 健康保険法、国民健康保険法による給付については、過失相殺前に被害者の損害額から控除するのが実務の大勢であったが、最高裁H17.6.2が出された後において、見解が分かれている。
●共同不法行為     多重衝突事故の場合、近接複数事故・異時複数事故の場合
医療過誤競合の場合
工作物・営造物責任、製造物責任等競合の場合
加害者特定不能の場合
寄与度減額の逃避
共同不法行為中一部の者との和解契約と他の行為者への黙示の債務位免除効