シンプラル法律事務所
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真の再生のために(個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP−トップ |
民法改正メモ | ||
項目 | 改正 | コメント |
消滅時効 | 5年に統一 | |
法定利率 | 変動利率(施行時は3%) | 遅延損害金の利率特約は有効 |
履行追完請求等 | 売買や請負の目的に物に瑕疵 ⇒ @履行追完請求(修補・代替物) A代金減額請求 ができる。 |
減額金額の算定方法? |
債務不履行解除 | @売主や請負人に帰責事由がなくても解除可能。 A現行法では解除できない場合(瑕疵担保で目的達成可能といえない場合や土地工作物の場合)でも解除可能。 B損害賠償の範囲が信頼利益から履行利益(逸失利益を含む)へと拡張。 |
Bについて、損害賠償の範囲を限定。 |
連帯債務の相対効 | 連帯債務者に対する履行の請求の効力(時効中断など)は、特約がない限り、他の連帯債務者に及ばない。 | 特約を設ける。 |
債権譲渡 債務者の承諾 |
現行法: 譲渡禁止特約に反する債権譲渡は無効 改正法: 有効 債務者が債権譲渡を異議なく承諾しても、元債権者(譲渡人)に対する抗弁を新債権者(譲受人)に対抗できる。 |
債権譲渡が有効でも、債務者は、譲渡禁止特約の存在を知り得る譲受人に対して履行を拒絶できる⇒譲渡禁止特約の意味はある。 債権の譲受人は、債務者から債権譲渡の承諾を得る際には、積極的に「抗弁権を放棄する」旨の承諾を得る必要。 |
保証 | (1)個人が保証人となる根保証契約は、書面で極度額を定めなければ無効。 (2)事業のための保証を個人に委託する主債務者は保証人に財産状況等の情報を提供しなければならず、これを怠った保証契約は取り消すことができる。 (3)主債務者が期限の利益を喪失⇒債権者は保証人に通知しなければその間に増加した遅延損害金を請求できない。 (4)事業用資金の貸付について個人(主債務者の役員等を除く)が保証人⇒保証契約締結前1か月以内に公正証書により保障意思を表示しなければ、保証契約は無効 |
(1)⇒根保証債務の限度額の明記 (2)⇒ @債務者が連帯保証人に対して自らの財産状況等を提供したこと A連帯保証人がその提供を受けたこと Bその情報が正確であることの表明保証 C債権者が担保を取得している場合はその内容を明記 (3)⇒ @連帯保証人が住所変更時に債権者に届出ること、 A連帯保証人がこれを怠ったため債権者からの通知が到達しなかったとしてもその通知は通常到達すべきときに到達したものとみなす ことを規定。 連帯債務の相対効を排除する特約。 |
施行日:2020年(令和2年)4月1日 | |
★経過措置の簡易一覧表・・・附則に定められた経過規定(p350) | |
項目 | 従前の例による(または改正法が適用されない)場合 |
意思表示(93条、95条、96条2項・3項、98条の2) | 施行日前にされた意思表示 |
債権の消滅時効の期間 | 施行日前に生じた債権 |
法定利率(404条) | 施行日前に利息が生じた場合における、その利息を生ずべき債権 |
不法行為損害賠償請求権の20年の期間(改正前民法724条後段、同934条3項(同936条3項、947条3項、950条2項、957条2項において準用する場合を含む)) | 改正前民法724条後段に規定する期間が この法律の施行の際、既に経過していた場合 |
生命・身体侵害を理由とする損害賠償請求権の消滅時効(724条の2) | 改正前民法724条前段に規定する不法行為による損害賠償請求権の時効が、この法律の施行の際、既に完成していた場合。 |
★★第1章 民法総則 | ||
★第1 意思能力・行為能力 | ||
◆ | ◆1 意思能力 | |
実務への影響:無し | ||
◆ | ◆2 行為能力 | |
実務への影響: 102条を受けて、被ほ参院につき13条1項10号が新たに取消事由に |
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★第2 物(改正前民法第86条第3項・・・削除) | ||
★第3 公序良俗(第90条) | ||
★第4 意思表示 | ||
◆ | ◆1 心裡留保 | |
実務への影響: 1項但書の要件が明確化、2項の新設⇒一定の影響あり |
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◆ | ◆2 錯誤 | |
実務への影響: @ 表示錯誤、要素の錯誤、動機の錯誤の定義・ 要件が明文化 (従前の判例を変更する趣旨ではないものの) → 明文化により、より利用される可能性あり A 重過失ある場合の例外の明文化 第三者保護規定 → 明文化により、より利用される可能性あり B取消構成に変更. − 取消の制約に服するので、注意.を要する。 取消権者の制限 (120 条2 項) 、追認.(122 条以下) 取消権の行使期間(126 条) − 二重効の問題は、緩和される。 C 相手方による惹起型錯誤について 動機の錯誤の適用範囲内 − より活用される可能性あり |
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◆ | ◆3 詐欺 | |
実務への影響: 96条2項は、悪意又は過失となった。 第三者保護規定 善意無過失 → 要件の変更 ー要注意 主張が活発になる可能性有り |
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◆ | ◆4 意思表示の効力発生時期等 | |
実務への影響: 1項 特に影響はない。 2 項 到達擬制されるから、影響がありうる。 3 項 条文上の適用範囲は、やや広がる。 実質的には当然のことを規定したものであり、実務的影響はない。 |
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◆ | ◆5 意思表示の受領能力 | |
実務への影響: 新たに明文化された部分はあり。 実際の影響は少ないであろ う 。 |
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★第5 代理 | ||
◆ | ◆1 代理行為の瑕疵 | |
実務への影響: 現行民法101条についての一般的な理解および判例を明文で規定したものにすぎず、実務への影響はほとんどない。 |
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◆ | ◆2 代理人の行為能力 | |
実務への影響: 代理行為が取り消される場面が広がることから、その分、代理行為の相手方の取引の安全の保護が縮小することになる。 また、 保佐人が民法1 3 条1 項各号に規定する同意をするにあたり、被保佐人が法定代理している本人 ( 「他の制限行為能力者」) の利益も考慮して同意すべき場面も出てくると思われる。 |
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◆ | ◆3 復代理人を選任した任意代理人の責任 | |
実務への影響: 法定代理人による復代理人の選任の場面では実質的な改正がないため、 実務への 影響はないが、 任意代理人が復代理人を選任した場合の責任を負う場面が広がることになり、実務への影響はあるものと患料される。 |
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◆ | ◆4 法定代理人による復代理人の選任 | |
実務への影響: 法定代理人による復代理人の選任の場面では実質的な改正がないため、 実務への影響はないが、 任意代理人が復代理人を選任した場合の責任を負う場面が広がることになり、実務への影響はあるものと患料される。 |
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◆ | ◆5 復代理人の権限等 | |
実務への影響: いわば当然のことを規定したものであり、実務への影響は無い。 |
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◆ | ◆6 代理権の濫用 | |
実務への影響: 従来の判例では、民法9 3 条但書の類推適用によって無効とされていたものが、 無効ではなく.、本人への効果不帰属と規定されたが、要件は、相手方が代理権の濫用の意図を知りまたは知ることができた場合と同じであるから、代理権濫用の場合の効果が否定される場面は同じである。 これに対し、無権代理の規定の適用があることで、本人に追認権が認められるようになったこと等による効果の点で実務に影響を与えると考えられる。 |
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◆ | ◆7 自己契約・双方代理その他の利益相反行為 | |
実務への影響: 従前の判例の理解を明文化したものであるから、実務への影響は少ないと思われる。 |
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◆ | ◆8 代理権授与の表示による表見代理 | |
◆ | ◆9 権限外の行為の表見代理 | |
実務への影響: 従前の判例の理解を明文化したものであるから、実務への影響は少ないと思われる。 |
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◆ | ◆10 代理権消滅後の表見代理 | |
実務への影響: 判例法理の明文化であるが、 立証責任の所在が明確にされた点で、 実務への影響があり得る。 |
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◆ | ◆11 無権代理人の責任 | |
実務への影響: 改正民法1 1 7 条1 項ならびに同条2 項1 号および3 号については、従前の理解を明文化したものであり、実務への影響はないといえる。 これに対し、 同条2 項2 号については、相手方に過失があっても、無権代理人が代理権の不存在について悪意の場合には無権代理人の貢任の成立を主張でき る ことから、現行民法に比べて、無権代理人の責任を追及できる範囲が広くなっている点で影響がある。 なお、 相手方の過失の評価根拠事実は無権代理人が立証責任を負うが、無権代理人が代理権の不存在について悪意であることは相手方が立証責任を負う。 |
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★第6 無効および取消し | ||
◆ | ◆1 取消権者 | |
実務への影響: 特になし。 |
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◆ | ◆2 取消しの効果 | |
実務への影響: 原状回復義務の範囲が一定の範囲で明文化されたことにより, この条文に基づいた当てはめをしていく必要。 なお, 解釈に委ねられた部分が相当ある 。 解釈に委ねられた部分を理解し, 事案に応じた適切な対応が必要。 |
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◆ | ◆3 原状回復の義務 | |
◆ | ◆4 追認の効果 | |
◆ | ◆5 取り消すことができる行為の追認 | |
◆ | ◆6 法定追認 | |
実務への影響: 法定追認においては取消権の認識不要という判例法理が否定されたわけではなく, その意味では影響はない。 ただし, 認識が必要という方向性での議論が相当なされていることから, 今後の解釈, 裁判例に影響を与える可能性はある 。 |
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★第7 条件および期限・・・条件の成就の妨害等(第130条) | ||
★第8 消滅時効 | ||
◆ | ◆1 時効の援用 | |
◆ | ◆2 時効障害・・・時効の完成猶予および更新 | |
◆ | ◆3 債権の消滅時効 | |
◇ | ◇(1) 原則的な時効期間と起算点 166条 | |
● | 債権の消滅時効について、改正前民法の規律に抜本的変更を加え、 主観的起算点から5年 客観的起算点から10年 という二元的システムを採用。 |
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● | 改正前民法が定めていた職業別の短期消滅時効は廃止。 | |
● | 商法522条の5年の消滅時効(商事消滅時効)も廃止。 | |
特別法での改正。 | ||
★★第2章 債権総則 | ||
★第1 債権の目的 | ||
◆ | ◆1 特定物の引渡しの場合の注意義務 | |
● | 改正前民法400条を基本的に維持した上で、 特定物債権における債務者の保存義務の程度である「善良な管理者の注意」が「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」定まるものであること 〜債権発生原因とは関係ない「過失」を意味するものではないこと を明記 |
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● | 「取引上の社会通念」 〜 特定物債権が契約に基づいて発生した場合を主として想定し、この場合に、 保存のために必要な措置が、契約当事者の主観的意思のみによって定まるのではなく、 当該契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の取引をとりまく客観的事情をも考慮して定まることがあり得ることを示すためのもの。 |
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契約内容(契約規範の内容)を導く際に当事者の主観的事情とともに客観的事情も考慮され得ることを示すために、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という表現が用いられた。 ⇒ 「契約その他の債権の発生原因」から契約内容(契約規範の内容)を導くことができたときに、これを「取引上の社会通念」で上書き・修正することを容認する意図はない。 |
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● | 特定物の売買契約において引き渡された目的物が契約の内容に適合していなかった場合、 買主が売主に対して契約不適合(不完全履行)を理由に損害賠償請求 ⇒ 売主が保存義務を尽くしたとの抗弁を出したとしても、主張自体が失当。 |
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◆ | ◆2 法定利率(p55) | |
● | 変動制を基礎に据えたルール。 | |
1項: 利息を生ずべき債権について別段の意思表示なし⇒その利率は、「その利息が生じた最初の時点における法定利率」による。 |
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「その利息が生じた最初の時点」: その利息を支払う義務が生じた最初の時点≠利息を支払う義務の履行期 利息を支払う特約があり⇒利息は金銭の交付時より生じる ⇒ 「その利息を支払う義務が生じた最初の時点」とは、金銭交付の時点を指す。 |
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2項:改正法の施行時の法定利率は年3% | ||
3項:法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期として、1期ごとに、4項・5項のルールにより変更される。 | ||
4項: 各期の法定利率は、法定利率に変更があった期のうち直近のもの。 |
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◆ | ◆3 選択債権 | |
改正前民法: 給付不能⇒ @原則として、残った給付に債権の対象が集中 A例外的に選択権を有しない当事者の過失によって給付不能⇒選択対象の集中がない |
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本条: 選択債権の目的とされた給付のうちあるものについて、給付不能(後発的不能のみならず、原始的不能も含む)が「選択権を有する者の過失」により生じた⇒債権は、その残存するものについて存在。 給付不能が「選択権を有するものの過失」によらずに生じた⇒選択の対象は限定されない。 |
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★第2 債務不履行の責任等 | ||
◆ | ◆1 履行期と履行遅滞 | |
◆ | ◆2 履行不能(原始的不能を含む) | |
● | 本条1項: 債権者が債権に基づいて債務者に対する履行請求権を有することを前提としたうえで、 その限界事由として、 「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるとき」を挙げる。 |
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契約上の債権⇒履行不能が「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断される。 | ||
@立法経緯、A改正前民法634条1項ただし書の削除という方針の背景 ⇒ 債権者の受ける利益に比して債務の履行に過大の費用を要する場面も 「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能」 の概念のもとで捉えられるべき。 |
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● | 改正前民法: 追完請求権および追完請求権の限界(追完不能)に関する規定を設けていない。 ← @追完請求権は履行請求権の一態様であり、これが認められる子とは明文の規定を待つまでもない。 A追完請求権の限界(履行不能)については、履行不能に関する本条1項によって処理ができる。 vs. 履行請求権と追完請求権の関係については改正前民法下の学説において議論。 今回の改正で立法による決着をつけなかった。 ⇒議論は改正後もなお続く。 |
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● | 本条2項:原始不能に関するルールを定めたもの。 | |
原始不能について、 かつての伝統的見解と異なり、 「契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったときであっても、契約は、そのためにその効力を妨げられない。」との考え方を基礎に据えたうえで、 その「最も代表的な法的効果」として 債務不履行を理由とする損害賠償、いわゆる履行利益の賠償を条文に標記。 |
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注意を要するのは、 原始的不能の場合に、履行利益の賠償が唯一の効果ではない点。 本条2項は、 @原始的不能を理由とする契約解除を否定するものではない。 A代償請求権その他の履行不能に妥当する規定の適用が否定されているものでもない。 |
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◆ | ◆3 受領遅滞 | |
◆ | ◆4 履行遅滞中または受領遅滞中の履行不能と帰責事由 | |
◆ | ◆5 履行の強制 | |
◆ | ◆6 債務不履行による損害賠償 | |
● | 1項本文: 改正前民法415条のもとでの解釈に変更をもたらすものではない。 |
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● | 1項ただし書: 損害賠償責任の免責事由を、その主張・立証責任が債務者にあることを示すとともに、定めたもの。 |
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改正前民法415条に定められていた「債務者の責めに帰することができない事由」に、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という修飾語を明示的に付加 〜 免責事由が債務発生原因に即して判断されるべきものであること 契約の場合には免責の可否が契約の趣旨に照らして判断されるべきものであって、「帰責事由=過失」を意味するものではないこと を明らかにした。 〜過失責任の否定。 |
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他の箇所での「責めに帰すべき事由」「責めに帰することができない事由」も同様に解釈。 | ||
● | ||
◆ | ◆7 損害賠償の範囲 | |
◆ | ◆8 中間利息の控除 | |
◆ | ◆9 過失相殺 | |
◆ | ◆10 金銭債務の損害賠償額の算定に関する督促 | |
◆ | ◆11 賠償額の予定 | |
◆ | ◆12 代償請求権 | |
★第3 債権者代位権 | ||
◆ | ◆1 債権者代位権の要件 | |
◆ | ◆2 代位行使の範囲 | |
◆ | ◆3 債権者への支払または引渡し | |
◆ | ◆4 相手方の抗弁 | |
◆ | ◆5 債務者の取立てその他の処分の権限等 | |
◆ | ◆6 被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知 | |
◆ | ◆7 登記または登録の請求権を保全するための債権者代位権 | |
★第4 詐害行為取消権 | ||
◆ | ◆1 詐害行為取消権の要件 | |
◆ | ◆2 詐害行為取消権の行使の方法等 | |
◆ | ◆3 詐害行為取消権の行使の効果 | |
◆ | ◆4 詐害行為取消権の期間の制限 | |
★第5 多数当事者の債権および債務(保証債務を除く) | ||
◆ | ◆1 不可分債権 | |
◇ | ◇(1) 連帯債権に関する規定の準用 | |
不可分債権が成立する場合を「債権の目的がその性質上不可分である場合」に限定したうえで、不可分債権における対外的効力について、連帯債権の場合と同様の処理をする。 ⇒金銭債権が不可分債権である例は、ほとんどないことになる。 |
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◆ | ◆2 連帯債権 | |
◇ | ◇(1) 連帯債権者による履行の請求等 | |
◇ | ◇(2) 連帯債権者の一人について生じた事由の効力等 | |
◆ | ◆3 不可分債務 | |
◆ | ◆4 連帯債務 | |
◇ | ◇(1) 連帯債務者に対する履行の請求等 | |
● | 連帯債務が@法律の規定またはA当事者の意思表示で成立することを明記し、かつ、このような連帯債務は、債務の目的が「その性質上可分である場合」に限定するもの。 | |
● | 改正後民法: 連帯債務の絶対的効力事由を極限まで限定し、かつ、求償のルールをいわゆる不真正連帯債務にも適用するものとしている。 ⇒ 改正前民法下における真正の連帯債務と不真正連帯債務の区別を無用とする立場を基礎に据えている。 |
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これまで不真正連帯債務とされてきた場合のうち、たとえば、 複数加害者が民法709条によって同一の損害につき損害賠償債務を負う場合や、 債務不履行を理由とする債務者の損害賠償債務と不法行為を理由とする履行補助者の損害賠償債務が競合する場合のように、 法令の規定上で明示的に「連帯」と規定されていない場合も、「法令の規定・・・によって数人が連帯して債務を負担するとき」に含まれる・・・少なくとも、連帯債務の規律が類推適用(または準用)される・・・とみるべき。 |
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◇ | ◇(5) 相対的効力の原則 | |
● | 相対的効力の原則を定める改正前民法440条の規律内容を維持したうえで、これに、ただし書を加え 債権者と他の連帯債務者の1人が別段の意思表示(合意)をしたときは、当該他の連帯債務者に対する効力はその意思に従うとする。 |
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● | 改正前民法では絶対的効力事由とされていたが、改正後の民法では相対的効力事由となるもの。 | |
◎ | @履行の請求 | |
← 履行の請求を受けていない連帯債務者にとっては、 自らの知らない間に履行遅滞に陥っていたり、消滅時効期間の更新がされたりするなど、不利益が大きい。 |
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◎ | A免除 | |
これは、連帯債務者の1人に対する意思表示によって全員の債務を免除することができるとする判例法理に変更を加えるものではない。 | ||
◎ | B連帯債務者の1人についての時効の完成 | |
改正前民法439条が削除⇒連帯債務者の1人についての時効の完成は絶対的効力事由から相対的効力事由への改まった。 〜 連帯債務の担保的機能を強化。 |
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◇ | ◇(7)連帯債務者間の求償関係 | |
■ | ■(オ) 連帯債務者の1人との間の免除等と求償権 | |
連帯債務者の1人対して債務の免除がされ、または連帯債務者の1人のために時効が完成 ⇒他の連帯債務者は、その1人の連帯債務者に対し、求償をすることができることを明記。 |
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★第6 保証債務 | ||
◆ | ◆1 保証人の負担と主たる債務の目的または態様 | |
◆ | ◆2 主たる債務者についての生じた事由の効力 | |
◆ | ◆3 連帯保証について生じた事由の効力 | |
◆ | ◆4 主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務 | |
◆ | ◆5 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務 | |
◆ | ◆6 保証人の求償権 | |
◆ | ◆7 個人根保証契約 | |
◇ | ◇(1) 個人根保証契約の保証人の責任等 | |
個人貸金等根保証に関する包括根保証の禁止及び要式行為性 | ||
◇ | ◇(2) 個人貸金等根保証契約の元本確定期日 | |
◇ | ◇(3) 個人根保証契約の元本の確定事由 | |
◇ | ◇(4) 保証人が法人である根保証契約の求償権 | |
◆ | ◆8 「事業に係る債務」についての保証契約の特則 | |
◇ | ◇(1) 個人補償の制限 | |
■ | ■(ア) 公正証書の作成と保証の効力 | |
■ | ■(イ) 保証に係る公正証書の方式の特則 | |
■ | ■(ウ) 公正証書の作成と求償権についての保証の効力 | |
■ | ■(エ) 公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外・・・経営者保証等 | |
◇ | ◇(2) 契約締結時の情報の提供義務 | |
★第7 債権譲渡 | ||
◆ | ◆1 債権の譲渡性とその制限 | |
◆ | ◆2 債権の譲渡の対抗要件 | |
◆ | ◆3 債権の譲渡における債務者の抗弁 | |
◆ | ◆4 債権の譲渡における相殺権 | |
★第8 債務引受 | ||
◆ | ◆1 併存的債務引受 | |
◆ | ◆2 免責的債務引受 | |
★第9 契約上の地位の移転(第539条の2) | ||
★第10 弁済 | ||
◆ | ◆1 弁済の意義 | |
◆ | ◆2 第三者の弁済 | |
◆ | ◆3 弁済として引き渡した物の取戻し | |
◆ | ◆4 預金または貯金の口座に対する払込みによる弁済 | |
◆ | ◆5 受領権限として外観を有する者に対しる弁済 | |
◆ | ◆6 代物弁済 | |
◆ | ◆7 弁済の方法 | |
◆ | ◆8 弁済の充当 | |
◆ | ◆9 弁済の提供の効果 | |
◆ | ◆10 弁済の目的物の提供 | |
◆ | ◆11 弁済による代位 | |
★第11 相殺 | ||
◆ | ◆1 相殺の要件等 | |
◆ | ◆2 不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止 | |
◆ | ◆3 差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止 | |
◆ | ◆4 相殺の充当 | |
★第12 更改 | ||
◆ | ◆1 更改の要件および効果 | |
◆ | ◆2 債務者の交替による更改 | |
◆ | ◆3 債権者の交替による更改 | |
◆ | ◆4 更改の効力と旧債務の帰すう | |
◆ | ◆5 更改後の債務への担保の移転 | |
★第13 有価証券 | ||
◆ | ◆1 総論 | |
◆ | ◆2 指図証券 | |
◆ | ◆3 記名式所持人払証券 | |
◆ | ◆4 その他の記名証券 | |
◆ | ◆5 無記名証券 | |
★★第3章 契約総則 | ||
★第1 契約の成立 | ||
◆ | ◆1 契約の締結および内容の自由 | |
◆ | ◆2 契約の成立と方式 | |
◆ | ◆3 承諾の期間の定めのある申込み | |
◆ | ◆4 承諾の期間の定めのない申込み | |
◆ | ◆5 申込者の死亡等 | |
◆ | ◆6 契約の成立時期 | |
◆ | ◆7 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期 | |
◆ | ◆8 懸賞広告 | |
★第2 定型約款 | ||
◆ | ◆1 定型約款の合意 | |
◆ | ◆2 定型約款の内容の表示 | |
◆ | ◆3 定型約款の変更 | |
★第3 同時履行の抗弁(第533条) | ||
★第4 第三者のためにする契約 | ||
◆ | ◆1 第三者のためにする契約の成立 | |
◆ | ◆2 第三者の権利の確定 | |
★第5 契約の解除 | ||
◆ | ◆1 催告による解除 | |
催告後に相当期間が経過しても債務者が対応しない⇒その時点での不履行が軽微でないときに、債権者が契約を解除することができる。 (軽微制の抗弁:不履行が軽微であるときにのみ、催告解除が否定される。) |
||
立案担当: 最高裁判決に依拠し、 売買契約に附随する特別の合意(「附随的約款」)に対するか主の違反を理由とする売主からの解除につき、 この特別の合意は、売買契約締結の目的には必要不可欠なものではないが、売主・・・にとっては代金の完全な支払の確保のために重要な意義をもつものであり、買主・・・もこの趣旨のもとにこの点につき合意したもの⇒右特別の約款の不履行は契約締結の目的の達成に重大な影響を与えるもの⇒このような約款の債務は売買契約の要素たる債務にはいり、これが不履行を理由とする売主は売買契約を解除することができる。 ⇒ 契約をした目的を達することができる場合であっても、一定の場合に催告解除が認められる。 vs. @この判決は、附随的合意の不履行があった場合に「要素たる債務」の不履行を理由として契約の解除をすることができるか否かについて判示したものであって、催告解除の障害事由について判示したものではない、 A解除の認められない場合としての不履行の「軽微」性を述べたものでもない ⇒ 軽微性の抗弁を正当化するものとしてこの判決を引用するのは不適切。 |
||
「軽微」について @不履行の態様の軽微性、および、 A違反された義務の軽微性 が問われる。 |
||
潮見: @Aのいずれも、不履行が「軽微」か否かは、 債務者の追完・追履行に要するコストと、 相当期間経過後の本旨に従った履行を受けられないことによる債権者の不履行を、 比例原則(過剰介入禁止・過少保護禁止)の観点から、 比較衡量したとき、履行の追完・追履行に可分の費用を要するため、契約の拘束から離脱することに向けられた債権者の解除の主張が過大なものと評価されるかどうかという観点から判断。 |
||
解除をするのに債務者の帰責事由は不要という立場に立って立案。 〜 債務者に対する責任追及の手段としての解除制度から、 債務の履行を得られなかった債権者を契約の拘束力から解放するための手段としての解除制度へ |
||
◆ | ◆2 催告によらない解除 | |
◆ | ◆3 債権者の責めに帰すべき事由による不履行と解除 | |
◆ | ◆4 解除の効果 | |
◆ | ◆5 解除権者の故意・過失による目的物の損傷等にる解除権の消滅 | |
★第6 危険負担 | ||
◆ | ◆1 所有者危険負担に依拠した規定の削除 | |
◆ | ◆2 反対給付の履行拒絶 | |
★★第4章 契約各則 | ||
★第1 贈与 | ||
◆ | ◆1 贈与契約の意義 | |
◆ | ◆2 書面によらない贈与の解除 | |
◆ | ◆3 贈与者の引渡義務等 | |
★第2 売買 | ||
◆ | ◆1 手付 | |
◆ | ◆2 権利移転の対抗要件に係る売主の義務 | |
◆ | ◆3 他人の権利の売買における売主の義務 | |
◆ | ◆4 買主の追完請求(562条) | |
● | 特定物ドグマを否定⇒買主に追完請求権があることを定める点に特段の意味があるものではない。 買主の追完請求権を一般的に定めることによって、特定物ドグマを否定するもの。 |
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およそ不完全な履行をされた買主が売主に対して追完請求権を有することは、当然のこととされていた。 ←買主が売主に対して履行請求権を有しているところ、不完全な履行がされた以上、買主は売主に対して不完全さの追完を請求することができるのは、履行請求権の一態様として当然。 but 履行請求権と追完請求権との関係については諸説がある。 |
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本条に意味があるのは、本条が買主の追完請求権に一定の制約を課している点にある。 | ||
● | 本条に意味があるのは、買主の追完請求権に一定の制約を課している点にある。 | |
1項: 契約に適合しない物が引き渡された ⇒ どのような追完方法をとるのか(取替えか修補か等)を買主の選択にゆだねることを前提としたうえで、買主に「不相当な負担」を課すのでなければ、売主は、別の方法での追完をすることができる旨を規定。 |
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2項: 契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由」によるものであるときは、追完請求権が認められない。 〜 代金減額請求権(563条)、解除権(564条の準用する541条、542条)と平仄を合わせたもの。 〜 買主の追完請求権は、債権内容の具体化したものというより、売主の債務不履行(不完全履行)を理由として買主に与えられる救済手段の1つとして捉えられている。 |
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● | 本条及び民法565条は、売買契約における次の2つの売主の義務を当然の前提とする。 | |
@物の種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した物を引き渡すべき義務(本条及び民法564条が前提とする)。 ⇒ 物が契約の内容に適合していなかった場合の売主の責任が債務不履行責任であることが明らかになった(=契約責任説の採用、法的責任説の否定)。 「特定物の売買において、性質は契約の内容にならない」との特定物のドグマを否定したことが重要。 |
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A契約の内容に適合した権利を供与すべき義務(民法565条が前提とする) ⇒ 権利が契約の内容に適合していなかった場合の売主の責任が債務不履行責任であることが明らかになった(=契約責任説の採用、法的責任説の否定)。 |
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● | @本条を含む売買の規定は、権利や物の「瑕疵」という表現を意図的に避けている。 これに代わるものとして、契約の内容に適合した権利や物を供給する義務という枠組み、すなわち、契約適合性という観点から規律を設ける。 A契約責任説を採用 ⇒ 「担保責任」というカテゴリーは、もはや特別の意味を持たないこととなった。 〜 債務不履行への一元化と「担保責任」の解体。 |
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but 民法典は、個々の規定において、契約不適合を理由とする売主の「責任」の視点から規律を立てているときに、「不適合責任」といわずに、「担保責任」という語を用いているように見受けられる。 |
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● | 種類・品質面での契約適合性と数量面での契約適合性を同列に位置付けている。 | |
改正前民法: 数量の瑕疵と品質の瑕疵は、異質のものとして捉えられ、別々の規律に服していた。 but 本条では、物の契約適合性という観点から共通のルールのもとに位置付け。 |
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but 買主の権利の期間制限については、種類・品質面での契約適合性と数量面での契約適合性を区別(566条)。 |
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数量指示売買の意味に関する改正前民法565条のもとでの判例法理: 当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買 〜 改正後の民法のもとでも数量に関する契約不適合性を判断する際の基準として維持される。 |
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● | 改正前570条:「隠れた瑕疵」 but 本条は「隠れた」という要件を外している。 ← 理論面での整合性を確保した結果としての変更。 「隠れた瑕疵」とは、契約をするにあたっての買主側の善意無過失(=瑕疵の認識可能性)を指している。 but 買主側の認識可能性は「その売買契約において、当事者が売買の客体に与えた意味は何か」という点(=契約内容の確定)に関する判断・・・契約の解釈・・・に取り込まれている ⇒「契約適合性」と分けて判断することは理論的に説明がつかない。 |
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● | 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法): 「瑕疵」とは、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいう とした上で、「瑕疵」「瑕疵担保責任」という用語を維持。 〜 強いていえば、品確法で扱う契約不適合が専ら住宅の基本構造部分に関するもの ⇒物質面での欠点に重きを置いた「瑕疵」とうい表現を維持することに問題はないと考えられたのではないかと思われる。 |
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商法526条(買主による目的物の検査及び通知) 宅地建物取引業法35条、37条、40条 では、民法改正によって採用される表現に沿う形で改正。 |
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◆ | ◆5 買主の代金減額請求権 | |
● | 改正前民法: 売買目的物が契約の内容に適合しない場合、数量不足の場合(改正前民法565条)を除いて代金減額請求権は認められていなかった。 (性質に不適合があった場合は、損害賠償の方法で実質的に代金を減額してもらうことは、改正前民法下でも行われていた) but 契約不適合があった場合に、代金と売買目的物の等価交換の関係を維持するという観点⇒不適合の割合に応じて対価である売買代金を減額するということは、契約不適合の場合一般の買主の救済手段として認められてよい。 ⇒ 本条は、売買目的物が種類・品質・数量面で契約に適合しない場合に、買主の代金減額請求権を認めている。 (民法559条を介して有償契約に一般に準用される。なお、形成権であることは改正前民法と同じ。) |
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● | 代金減額請求は、売買契約の一部解除と同じ機能を営む(契約不適合に相当する部分の解除) ⇒その要件を解除の場合とパラレルに構成。 |
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1項:前提として、追完の催告をし、相当期間の経過を待って減額請求 〜催告解除の原則(541条)と同様の枠組み(追完請求権の優位性) |
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2項:催告なしに代金減額請求をすることができる場合を示す。 要件は、無催告解除の場合(542条)と同じ。 |
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3項:契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由」によるもの ⇒代金減額請求をすることができない。 〜解除と同様の枠組み(543条) |
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● | 代金減額請求権は、損害賠償請求権ではない ⇒代金減額の主張に対して、売主は「契約不適合が売主の責めに帰することができない事由によるものである。」との抗弁を出すことができない。 |
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● | ||
◆ | ◆6 買主の損害賠償請求および解除権の行使 | |
◆ | ◆7 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の責任(565条) | |
◆ | ◆8 買主の権利の期間制限 | |
◆ | ◆9 目的物の滅失等についての危険の移転 | |
◆ | ◆10 競売における買受人の権利の特則 | |
◆ | ◆11 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求 | |
◆ | ◆12 売主の担保責任と同時履行 | |
◆ | ◆13 担保責任を負わない旨の特約 | |
◆ | ◆14 権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶 | |
◆ | ◆15 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶 | |
◆ | ◆16 買戻しの特約 | |
◆ | ◆17 買戻しの特約の対抗力 | |
★第3 消費貸借 | ||
◆ | ◆1 要物契約としての消費貸借と要式契約である諾成的消費貸借 | |
◆ | ◆2 準消費貸借 | |
◆ | ◆3 消費貸借の予約 | |
◆ | ◆4 利息 | |
◆ | ◆5 貸主の引渡義務等 | |
◆ | ◆6 返還の時期 | |
★第4 使用貸借 | ||
◆ | ◆1 使用貸借の成立 | |
要物契約⇒諾成契約へ | ||
◆ | ◆2 借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除 | |
◆ | ◆3 貸主の引渡義務等 | |
◆ | ◆4 期間満了等による使用貸借の終了 | |
改正後民法: 使用貸借の終了事由の観点から再構成し、 @一定の事実の発生による終了(597条) A解除による終了(598条) に分けて規律。 |
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本条1項:期間を佐田ネタ使用貸借が期間の満了によって終了。 | ||
本条2項:期間を定めない使用貸借において、 使用収益の目的を定めていた⇒借主がその目的に従い使用収益を終えることによって終了。 |
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本条3項:改正前民法599条を引き継ぐもの | ||
◆ | ◆5 使用貸借の解除 | |
◆ | ◆6 使用貸借終了後の収去義務および原状回復義務 | |
● | 第1項・第2項: 使用貸借終了後の収去義務・収去権を定める。 |
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(1) 借主は、 借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、 使用貸借が終了したときは、 その附属させた物を収去する義務を負う。 (貸主は、収去請求権を有する。) but 借用物から分離することができない物または分離するのに過分の費用を要する物 (履行不能に想到するもの) ⇒この限りではない。 |
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(2) 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。 (賃借人の収去権) 〜 収去可能であることが前提であり、収去不能の場合は、費用償還請求権の問題となる。 |
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● | 本条3項:借用物の損傷に関する原状回復義務。 | |
賃貸借の場合(民法621条参照)と異なり、 「通常の使用及び収益によって生じた使用物の損傷」と 「借用物の経年変化」 が原状回復の対象外であるとの規律に対応するものは設けられていない。 ← @通常損耗等の回復が原状回復の内容に含まれるかどうか(無償で貸借することのリスクをどちらの当事者が負担するか)は使用貸借契約の趣旨によって様々。 A賃貸借の場合には、通常損耗等のリスクを織り込んで対価(賃料)を決定することができるのが定型的 ⇒使用貸借では、この点に関する任意法規として何らかの規律を明文で定めるのは適切ではない。 |
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本条3項ただし書: その損傷が「借主の責めに帰することができない事由」によるものであるとき⇒当該損傷についての原状回復義務が生じない。 |
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◆ | ◆7 損害賠償および費用の償還の請求権についての期間の制限 | |
● | 本条1項: 契約の本旨に反する使用収益によって生じた貸主の損害賠償請求権および借主の費用償還請求権の権利行使期間: 貸主が返還を受けた時から1年。 |
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● | 本条2項: 契約の本旨に反する使用収益によって生じた損害賠償請求権は、 貸主が目的物の返還を受けた時から1年を経過するまでは 時効が完成しない。(時効の完成猶予) ← 借主が用法違反をした時から10年を経過してもなお、使用貸借が存続している中で消滅時効が完成してしまうことがあるところ、貸主は目的物の状況を把握することが困難なため、貸主が借主が目的物の返還を受けた時には既に消滅時効が完成しているといった不都合な事態が生じ得るので、これに対処する必要がある。 |
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本条は、622条で、賃貸借の場合に準用される。 | ||
★第5 賃貸借 | ||
◆ | ◆1 賃貸借の成立 | |
◆ | ◆2 短期賃貸借 | |
◆ | ◆3 賃貸借の存続期間 | |
◆ | ◆4 不動産賃貸借の対抗力 | |
◆ | ◆5 不動産の賃貸人たる地位の移転 | |
◆ | ◆6 合意による不動産の賃貸人たる地位の移転 | |
◆ | ◆7 不動産の賃借人による妨害の停止の請求等 | |
◆ | ◆8 賃貸人による修繕等 | |
◆ | ◆9 賃借人による修繕 | |
◆ | ◆10 減収による賃料の減額請求・解除 | |
改正前:収益を目的とする賃貸借において減収を理由とする賃料減額・解除を認めた規定。 vs. 当該賃貸借のもとで収益を得ることができるかどうかは、賃借物から収益活動を行う者が自らの行動に伴うリスクとして負担することが基本。 ⇒収益を目的とする賃貸借一般について改正前民法609条、610条のような規律を採用することには問題。 ⇒ 改正後の民法は、農地法の規律を合わせた考えたときに同法2条1項に規定する農地および採草放牧地の賃借人を保護する観点から、上記リスクを賃貸人ぬの側に負担させるのが相当である「耕作又は牧畜を目的とする土地」の賃貸借に限定して維持。 |
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◆ | ◆11 賃借物の一部滅失等による賃料の減額・解除 | |
◆ | ◆12 転貸の効果 | |
◆ | ◆13 賃借物の全部滅失等による賃貸人の終了 | |
◆ | ◆14 賃貸借の解除の効力 | |
◆ | ◆15 賃借人の原状回復義務 | |
● | 本条本文: 賃借物受取り後に生じた損傷についての賃借人の原状回復義務(賃貸人の原状回復請求権。価額償還によるものを含む)を定めるもの。 |
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「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損傷」と 「賃借物の経年変化」 は、原状回復の対象とされていない。 |
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● | 本条ただし書: その損傷が「賃借人の責めに帰することができない事由」によるものであるときは、当該損傷についての原状回復義務が生じない。 |
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◆ | ◆16 使用貸借の規定の準用・・・賃貸借終了後の収去義務・収去権・損害賠償および費用の償還についての期間の制限等 | |
◆ | ◆17 敷金 | |
★第6 雇用 | ||
◆ | ◆1 履行の割合に応じた報酬 | |
◆ | ◆2 期間の定めのある雇用の解除 | |
◆ | ◆3 期間の定めのない雇用の解約の申入れ | |
★第7 請負 | ||
◆ | ◆1 注文者が受ける利益の割合に応じた報酬 | |
請負人が仕事を完成することができなくなったことを理由に請負契約が解除された場合 判例: @仕事の内容が可分であり、 Aその仕事の一部が完成していて、かつ B注文者が既に完成した部分に関して利恵j機を有する ⇒ 既に完成した部分については解除できない ⇒ 請負人は、既に完成した部分に対応する報酬を注文者に請求できる。 |
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本条:この判例法理の守備範囲を仕事完成前の解除の場面にも広げる。 @仕事の完成が不能となった場合または請負が仕事完成前に解除された場合において、 A既にされた仕事の結果が「可分」であり、かつ、その給付によって注文者が利益を受ける ⇒既にされた部分について仕事の完成があったものとみなされる。 ⇒ 請負人は「注文者が受ける利益の割合に応じて」注文者に対して報酬を請求することができる (=既にした仕事のうち、可分かつ注文者が利益を受ける部分に対応する報酬に限って、その支払を注文者に請求できる)。 |
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「報酬」には、既にされた仕事のうち、可分の給付によって注文者が利益を受ける部分に対応する費用であって、請負人が既に支出したものも含まれ得る。 | ||
「注文者の責めに帰することができない事由によって」 ← 「注文者の責めに帰すべき事由」による仕事完成不能の場合には、民法536条2項前段の法意に従い、請負人は報酬全額を請求することができることを意識。 |
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◆ | ◆2 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任 | |
◆ | ◆3 請負人の契約不適合責任の制限 | |
◆ | ◆4 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の注文者の権利の期間制限 | |
◆ | ◆5 仕事の目的物である土地工作物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任の存続期間 | |
◆ | ◆6 担保責任を負わない旨の特約 | |
◆ | ◆7 注文者についての破産手続の開始による解除 | |
★第8 委任 | ||
◆ | ◆1 復受任者の選任等・・・受任者の自己執行義務 | |
◆ | ◆2 受任者の報酬 | |
◆ | ◆3 成果等に対する報酬 | |
◆ | ◆4 委任契約の任意解除権 | |
★第9 寄託 | ||
◆ | ◆1 寄託契約の成立・・・要物性の見直し | |
◆ | ◆2 寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等 | |
◆ | ◆3 寄託物の使用および第三者によるh間・・・受寄者の自己執行義務等 | |
◆ | ◆4 無報酬の通知義務、寄託物についての第三者による権利主張 | |
◆ | ◆5 受寄者の通知義務、寄託物についての第三者による権利主張 | |
◆ | ◆6 寄託者による返還請求等 | |
◆ | ◆7 損害賠償および費用の償還の請求権についての期間の制限 | |
◆ | ◆8 混合寄託 | |
◆ | ◆9 消費寄託 | |
★第10 組合 | ||
◆ | ◆1 他の組合員の債務不履行 | |
◆ | ◆2 組合員の一人についての意思表示の無効等 | |
◆ | ◆3 業務の決定および執行の方法 | |
◆ | ◆4 組合の代理 | |
◆ | ◆5 組合の債権者の権利の行使 | |
◆ | ◆6 組合員の持分の処分および組合財産の分離 | |
◆ | ◆7 組合財産に対する組合員の債権者の権利の行使の禁止 | |
◆ | ◆8 組合員の加入 | |
◆ | ◆9 組合員の脱退・・・脱退した組合員の責任等 | |
◆ | ◆10 組合の解散事由 | |
★★第5章 物権に関する関連規定の改正 | ||
◆ | ◆1 地役権の時効取得 | |
◆ | ◆2 地役権の消滅時効@ | |
◆ | ◆3 地役権の消滅時効A | |
◆ | ◆4 不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲 | |
◆ | ◆5 債権質の設定 | |
◆ | ◆6 債権を目的とする質権の対抗要件 | |
◆ | ◆7 指図債権を目的とする質権の対抗要件 | |
◆ | ◆8 抵当権の効力の及ぶ範囲 | |
◆ | ◆9 根抵当権 | |
◆ | ◆10 根抵当権の被担保債権の範囲 | |
◆ | ◆11 根抵当権の被担保債権の譲渡等 | |