論点整理（労働関係）シンプラル法律事務所（大阪）（弁護士川村真文）

シンプラル法律事務所
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論点整理（労働関係）

論点の整理です（随時増やしていく予定です。）

合併・事業譲渡の場合
合併	種類		①Ａ社がＢ社を吸収する吸収合併 ②Ｃ社とＤ社が合併してＥ社を新設する新設合併
			いずれの合併であれ、合併後の会社（Ａ社ないしＥ社）は、合併前の会社（Ｂ社ないしＣ・Ｄ社）の権利義務を包括的に承継する。（会社法750条1項、754条1項） ⇒ 合併前会社の従業員の雇用も権利義務も、合併後の会社に包括的に承継される。
	労働問題		①労働条件の統一～労働協約ないし就業規則による労働条件の変更変更解約告知その効力
			②従業員の再配置のための配転・出向、余剰人員の削減のための退職誘導や整理解雇なども問題
	包括承継	規定	第750条（株式会社が存続する吸収合併の効力の発生等）吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
			第756条（持分会社を設立する新設合併の効力の発生等）新設合併設立持分会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。
			合併の効力発生のときに現に存続する解散会社のすべての権利義務は、存続会社又は新説会社に包括的に承継される。
	労働契約の承継		解散会社の全労働者の労働契約上の地位と内容（労働条件を含む）も存続会社等に包括的に承継される。
			民法625条１項の適用が排除され、承継に際し、労働者の個別の同意は不要。
			旧会社の就業規則に基づく複数の制度が併存する事態を迎え、人事管理上様々な困難をきたすおそれ。 ⇒労働契約内容の変更を図る必要。

労働一般
就業規則の作成・変更	趣旨			①労働者の権利義務を明確化するためにそれを成文化させ、労働者に周知させること、 ②規則の内容につき一定の限界を設定するとともに、その限界が遵守されるように行性的な監督を実施すること、 ③この監督のためにこれを監督官庁に届出させること、 ④その作成過程において労働者の意見を反映させること
	規定			労働契約法第12条（就業規則違反の労働契約）（最低基準効）就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
				労働契約法第７条（労働契約規律効）労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
				労働契約法第10条（合理的変更の労働契約規律効）使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
				労働基準法第106条（法令等の周知義務）使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。 ②使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
	作成・届出義務		規定	労働基準法　第89条（作成及び届出の義務）　常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。一　始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項二　賃金（臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。）の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項三　退職に関する事項（解雇の事由を含む。）三の二　退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項四　臨時の賃金等（退職手当を除く。）及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項五　労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項六　安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項七　職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項八　災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項九　表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項十　前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
			記載事項	必要的記載事項Ａ：絶対的必要的記載事項（１号～３号）Ｂ：相対的必要記載事項（３号の２～１０号）
	労働者の意見聴取義務			就業規則の作成または変更については、使用者は、「当該事業場に、労働者の過半数に組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければならない（労基法９０条１項）。
				就業規則の作成または変更を届け出る際には、上記の労働組合または労働者の代表の意見を記した書面を添付しなければならない（同条２項）。
	周知義務			使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること、書面を交付すること、またコンピュータを使用した方法によって、労働者に周知させなければならない（労基法１０６条１項）。
就業規則の労働契約に対する効力	最低基準効		●	労働契約法　第12条（就業規則違反の労働契約）就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
				労働基準法　第13条（この法律違反の契約）　この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
				⇒ 就業規則が労働基準法よりも労働者に有利な労働条件を規定している場合には、その労働条件が事業場の労働条件の最低基準として労働契約内容を強行的直律的に規律することになる。（就業規則の「最低基準効」）
			判例	労働条件の基準：就業規則中に見習期間の定めがあるが、これは見習期間中であると否とによって賃金、労働時間その他の労働条件に差異を設けていないので、これをもって労働条件に関する基準を定めものということはできない（東京地裁昭和37.3.12）。
				試用期間を２か月と定める就業規則がある場合、右定めは労基違法９３条の労働条件に含まれ、試用期間を１年とする労働契約は、右労働条件より不利なものであるから、２カ月をこえる部分は無効（徳島地裁昭和45.3.3）。
				従業員の労働条件等を規律する目的でなく作成され、従業員に周知されなかった就業規則であっても、所定の手続により労働基準監督署に届け出られているものは、規範的効力を有し、これに達しない労働条件を定める労働契約の部分は無効となり、就業規則の定める基準による（東京地裁昭和61.3.27）。
			●	就業規則の労働契約に対する最低基準効⇒就業規則の基準を引き下げる労働契約は無効となり、就業規則の基準が労働契約内容を規律。
				就業規則に規定された労働条件の基準は、個別的な労働契約によって引き下げることはできず、労働協約の締結か就業規則の改正を必要とする。
			●	最低基準効が生じる就業規則は、当該事業場の労働条件の基準を定めた規則として実質的に周知されているものであり、届出（労基法８９条）や意見聴取（労基９０条）は不要。
	論点			①労働者が就業規則上の労働条件や服務規律の規定に従わなかった場合に、それが労働者を拘束するのか（就業規則はどのような法的根拠で労働者を拘束するのか）
				②使用者が就業規則の規定の新設・変更によって労働者に不利に労働条件を変更した場合に、新設・変更された就業規則の規定は労働者を拘束するのか。
				③就業規則の行政官庁への届出、労働者代表の意見聴取、労働者への周知はそれぞれ就業規則の効力要件か。
	判例法理	論点①について		「［労働条件の統一的・画一的決定の要請に基づき契約内容を］定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めるものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っている（民法92条）ものということができ・・・・、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである」（最高裁昭和43.12.25）
				～合理的な労働条件を定めた就業規則は、経営主体と労働者間の労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習によって法的規範性を有する、との判旨。
		論点②について		「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されない・・・・が、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」（最高裁昭和43.12.25）
				～労働者に不利益な労働条件を一方的に課する就業規則の作成または変更も、当該規則条項が合理的なものであれば、これに同意しないことを理由としてその適用を拒否することは許されない、との判旨。
				「右にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労働関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、・・・・・具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである」（最高裁H9.2.28判決）
		論点③について		就業規則が「法的規範としての性質を有する・・・・・ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」（最高裁H１５．１０．１０判決）
	(3)就業規則の労働契約規律効	規定		労働契約法　第６条（労働契約の成立）　労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
				労働契約法　第７条労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
				労基法　第106条（法令等の周知義務）使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。 ②使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
		趣旨		「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合」（＝労働者を採用する場合）、当該事業場で労働者集団に周知させていた既存の就業規則が労働契約に対して有する効力を規定。
				労働契約当事者間に就業規則とは別個の、就業規則より有利な、個別的な特約が定められない限り、合理的な条件を定める就業規則が労働契約の内容を規律する（労働契約の内容は就業規則の定めによる）。（「労働契約規律効」）
		要件	●要件①	●①使用者が当該就業規則を「労働者に周知」させていた」こと。
				←就業規則に労働契約内容を規律する効力を与えてる以上、それを法規範として当該事業場において周知させていたことが必要。
				この「周知」は、労基則に列挙された方法に限定された労基法上の「周知」（106条）とは異なり、実質的に見て事業場の労働者集団に対して当該就業規則の内容を知りうる状態に置いたこと。
			●	就業規則の作成について労基法が要求する届出（89条）または意見聴取（90条）の手続の実践は労働契約規律効の取得には必要ない。
				←採用に際しての就業規則の「労働契約規律効」は、就業規則が採用の際に労働者に事実上受容されたという状況のもとでの法的効力に関するもの。
			●要件②	●②合理的な労働条件を定めていること
				～人事管理上の必要性があり、労働者の権利・利益を不相当に制限してなければ肯定されるべきもので、この合理性が否定されたことはほとんどない。（←労働者が就業規則を前提とし、これを受け入れて採用されたとう状況のなかで問題となる合理性）
				ｂｕｔ服務規律・懲戒規定を中心にして、裁判所が、労働者の利益に配慮して、就業規則の規制内容を合理的に限定解釈することは頻繁に行われる。
		個別的特約の例外		就業規則の労働契約規律効は、労働者と使用者間で就業規則と異なる労働条件を合意していた部分については生じない（７条但書）。～特約が優先。
				ｂｕｔ特約で定める労働条件が就業規則の定める労働条件に達しない場合には、就業規則の労働条件が労働契約の内容を規律。 ←就業規則の最低基準効。
	(4)労働契約の変更における就業規則の労働契約規律効	概説		使用者による一方的不利益変更は原則として許されない。変更に合理性が認められれば、反対労働者をも拘束する。（秋北バス大法廷判決　最高裁昭和43.12.25）
		■		■就業規則による労働契約の変更における合意原則
			規定	労働契約法　第８条（労働契約の内容の変更）労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
				労働契約法　第３条（労働契約の原則）労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
				労働契約法第９条（就業規則による労働契約の内容の変更）使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
			●	～労働契約の変更における「合意原則」は、秋北バス大法廷判決における「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪し、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されない」との判旨に従う立場。
				その反対解釈 ⇒就業規則の変更による労働条件の不利益変更も、労働者の合意があれば可能。合意は、書面の合意のみならず、口頭の合意、明示の合意、黙示の合意があり得る。ｅｘ．不利益に変更された就業規則が長年労働者に容認されて通用してきたという場合には、黙示の合意が成立していると解釈される。
				就業規則による労働条件の不利益変更についてのみ合意原則を規定。 ← 就業規則の最低基準効（12条）が働く→当事者の合意の有無にかかわらず、就業規則の新たに定められた有利な労働条件が事業所の最低基準として労働契約の内容を規律。
		■		■合理的変更の場合の労働契約規律効
			規定	労働契約法第10条使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
			●	～秋北バス大法廷判決が「労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を前提とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、それに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」と述べた判旨を立法化したもの。
				就業規則それ自体の新設による労働条件の変更についても、「就業規則の変更による労働条件の変更」に関する本条を類推適用してその労働契約に対する効力を判断するのが妥当。
			●	前条と同じく就業規則の不利益変更の場合にその効力に関する規定と解される。 ←本条は前条の合意原則の但書を受けて規定
			●	賃金原資を減ずることなく年功的賃金制度を成果主義賃金制度に変更する場合のように、不利益か否かが変更時点で一概にいえないような変更の場合： ①合意原則⇒労働者が不利益であるとして反対する労働条件の変更があれば、その労働者への就業規則の労働契約規律効を及ぼすには、本条の合理性の要件を充たすべき。 ②労働者に明確に有利な変更⇒労働者が通常これに明示または黙示の同意を与えるので、「合意に基づく就業規則変更による労働条件変更」（９条）が成立。就業規則の最低基準効⇒変更の合理性いかんにかかわらず、就業規則による変更が成就。
			●	９条と１０条の実質上の関係：就業規則の変更による労働条件の不利益変更が行われた場合、 ①それに同意する従業員⇒９条が適用。 ②反対の従業員⇒１０条が適用。同意した従業員については、変更の合理性の有無にかかわらず（反対従業員との関係で変更の合理性が否定されたとしても）変更就業規則が労働契約内容を規律。、
		■		■合理性の判断要素と手法
			●	１０条の基準は第四銀行判決の判断基準の立法化 ①労働者の受ける不利益の程度 ②労働条件の変更の必要性 ③変更後の就業規則の内容の相当性 ④労働組合等との交渉の状況 ⑤その他の就業規則の変更に係る事情

	(5)就業規則が法令・労働契約に反する場合	規定		労働契約法　第13条（法令及び労働協約と就業規則との関係）就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。
				労基法　第92条（法令及び労働協約との関係）就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
		説明		就業規則が法令違反⇒それに反する就業規則の条項は当該事業場で一般的に効力を認められない。
				労働協約違反⇒それが適用されるのは当該協約を締結した労働組合の組合員のみ（労組17条の一般的拘束力がある場合は同拘束力を及ぼされる労働者も含む）⇒就業規則の一連の法定効が否定されるのも、それらの組合員との関係においてのみ。（労働協約が執行した場合、就業規則の効力復活）
採用内定	性質			企業からの募集（申込の誘引）に致死、労働者が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する企業からの採用内定通知は、その申込みに対する承諾であって、これにより両者間に解約権を留保した労働契約が成立。（最高裁昭和55.5.30）
				この契約は、始期付きであり、かつ解約権留保付きである。採用内定通知書または誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合は解約できる旨の合意が含まれており、また卒業できなかった場合も当然に解約できる。
	採用内定取消しの適法性	留保解約権の内容		留保解約権の内容（解約事由）は、採用内定（決定）通知書や誓約書に記載された「取消事由」を参考にして定められる。
				「取消事由」の記載は広範囲で漠然とした表現をとることが多いが、これに「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められた社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と限定を付した。
				逆に「取消事由」の記載が部分的で不十分な事案については、そのｙほうな社会通念上相当な事由があれば留保解約権の行使ができるとして、解約自由の補充を行っている。
		具体例		ヘッドハンティングによりマネージャー職にスカウトした労働者に対する同職の廃止を理由とする内定取消に反し正当理由がないとした裁判例。（東京地裁H9.10.31）
				中途採用における内定の取消しにつき、合理的理由なしとした裁判例。（東京地裁H16.6.23）
	その他	入社日の意義		「就労の始期」（大日本印刷事件、最判） ⇒労働契約上の拘束関係はない提示より生じており、内定者には入社日前でも就業規則中の就労を前提としない部分（会社の名誉・信用の保持、企業秘密の保持等）の適用がある。内定期間中の近況報告書の提出や施設見学、実習等を業務命令によって命じることは就労の準備行為の限度で可能。
				「効力発生の始期」（電電公社近畿電通局事件、最判） ⇒入社日までは労働契約の効力が発生していないので、内定者への就業規則の適用がない。内定期間中の近況報告書の提出や施設見学、実習等を業務命令によって命じることは認められないｌことになる。
		労働条件の明示		採用内定で労働契約の成立 ⇒労基法上の労働条件明示義務（15条）は、採用内定段階で履行される必要。
		解雇予告手当		労基法は「試の使用期間中の者」は、引き続き１４日をこえて使用されるに至った場合に、初めて解雇予告の保護を受ける（21条）。 ⇒ 試みの使用期間の開始前については解雇予告の適用はない。
試用	制度			正規従業員の採用については、入社後一定期間を「試用」ないし「見習」期間とし、この間に当該労働者の人物・能力を評価して本採用（正社員）とするか否かを決する制度。
				就業規則上定められるのが常で、期間は３か月が１番多く、それを中心に１カ月から６か月にわたっている。
	試用契約の法的性質			最高裁：「試用契約の法的性質」については、就業規則の規定の文言のみならず、「当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、特に本採用の関係における取扱についての事実上の慣行」をも重視すべき。、就業規則の付属規定たる見習社員取扱規則において、定期採用者の採用直後の３か月以内を見習期間とし、その間に業務を見習わせ、原則として同期間経過後本人の志操・素行・健康・技能・勤怠などを審査のうえ本採用の可否を決定し、本採用者に対しては見習期間終了の翌日付の辞令を交付し、同期間を社員としての勤続年数に通算する、などが規定されており、かつ「大学卒業の新規採用を試用期間終了後に本採用しなかった事例はかつてなく、雇入れについて別段契約書を作成することもなく、ただ、本採用にあたり当人の氏名、職名、配属部署を記載した辞令を交付するにとどめていた等の・・・実態」がある場合には、試用契約を解約権留保付の雇用契約と認めることは適法である、と判示。
賃金制度	年俸制			賃金の全部または相当部分を労働者の業績等に関する目標の達成度を評価して年単位に設定する制度
				労基法の毎月１回以上支払い原則（労基法２４条２項）⇒１２分して毎月支払われるのが常。社会保険料の負担との関係もあり、賞与部分を設ける場合も多い。
				年俸制の導入には就業規則の変更が必要であり、変更の合理性が問題となる。
		割増賃金		年俸制は、１年間にわたる仕事の成果によって翌年度の賃金額を設定しようとする制度 ⇒ 労働時間の量（割増賃金）を問題とする必要のない管理監督者（労基法４１条２号）や裁量労働者（同３８っ条の３・３８条の４）に適した賃金制度。
				年俸制それ自体は時間外労働の割増賃金（労基法３７条）を免れさせる効果はもたず、管理監督者ないし裁量労働制の要件を満たさない限り、割増賃金支払義務を免れない。
				割増賃金が支払われるべき場合、割増賃金算定の基礎をなす「通常の労働時間の賃金」は、賞与部分が設けられていても、年俸額全体を年間の所定労働時間数で除して算定。（中山書店事件　東京地裁H19.3.26）
賃金請求	遅延損害金	規定		会社法　第５条（商行為）会社（外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。）がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。商法　第514条（商事法定利率）商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。
				賃金の支払の確保等に関する法律第６条（退職労働者の賃金に係る遅延利息）事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金（退職手当を除く。以下この条において同じ。）の全部又は一部をその退職の日（退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。）までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。 2 前項の規定は、賃金の支払の遅滞が天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合には、その事由の存する期間について適用しない。
				労基法第23条（金品の返還）使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。 ②前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。
		利率		商人に雇用された従業員の場合、商事法定利率の年６分
				退職労働者の場合、退職日に支払期日が到来している分は退職日の翌日から、到来していない分は支払期日の翌日から、年14.6％の利率で遅延損害金を請求できる。
		起算日		賃金支払日の翌日
				支払日の定めがない場合は、締日の翌日。（民法624条）
				民法　第624条（報酬の支払時期）労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。 2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。
賃金の全額払の原則	条文			第24条（賃金の支払）　賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。 ②賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金（第八十九条において「臨時の賃金等」という。）については、この限りでない。
				「法令に別段の定めがある場合」：給与所得税の源泉徴収（所得183）、社会保険料の控除（厚年保84、健保78、労保徴31等）、財形貯蓄金の控除（財形促6）「控除」：履行期の到来している賃金債権の一部を差し引いて支払わないこと。
	趣旨			履行期の到来している賃金債権の全額を使用者に支払わせることにより、賃金を生活の糧にする労働者の生活の安定を図ろうとする。禁止されるのは「控除」であるが、これには「相殺」も含む。
	相殺	法律		法令及び労使協定に基づき控除が可能（法24条1項但書） ←購買代金や社宅費の控除等賃金債権との相殺が実際に必要になるとか、労働者にとって便利な場合が存在する。
		判例		生活の基盤たる賃金を労働者に確実に受領させることが全額払原則の趣旨であるから、同原則は相殺禁止の趣旨をも包含する。（最高裁H2.11.26）
				使用者が一方的になす相殺と異なり、使用者が労働者の同意を待ってなす相殺は、当該相殺が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するときは、全額払原則に反しない。（最高裁H2.11.26）
	放棄			労働者が賃金債権を放棄した場合には、使用者が放棄された賃金を支払わないことは、全額払原則に反しない。（最高裁）
最低賃金	基本事項			最低賃金額は、時間によって定める（３条）。
				法　第３条（最低賃金額）最低賃金額（最低賃金において定める賃金の額をいう。以下同じ。）は、時間によつて定めるものとする。
	規制の対象			最低賃金額以上であることを要求される賃金は、通常の労働時間に対して支払われる賃金。所定外労働に対する割増賃金、深夜割増賃金、１か月を超える期間ごとの賞与（一時金）、臨時に支払われる手当（ｅｘ．結婚手当）、精皆勤手当、家族手当、通勤手当はその規制の対象とならない（法４条３項）。
	最低賃金の効力と履行確保の仕組み			使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金以上の賃金を支払わなくてはならない（法４条１項）。規定に違反⇒５０万円以下の罰金。
				最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間に労働契約で最低賃金額に達しない賃金額を定めるものは、その部分についてむこう。無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなす（法４条２項）。
労働時間・休日の原則	労働時間	意義		企業の労働時間については、就業規則において、各労働日における所定の労働時間が、始業時刻から終業時刻までの時間と、この間の休憩時間を特定することによって定められる。
				所定労働時間＝①試用時刻から終業時刻までの時間（「拘束時間」）－②休憩時間
		法定労働時間	意義	１週および１日の最長労働時間の設定。それをこれる労働を一定の要件の下に例外的に許容するという意味での原則的上限。
			１週の	週４０時間制：使用者は、労働者に、１週間について４０時間をこえて労働させてはならない。（労基32条1項）
			特例	小規模の商業・サービス行に関する特例：常時１０人未満の労働者を使用する商業（別表１の８号）、映画演劇行（１０号）、保険衛生業（１３号）、接客業（１４号）については、事業の特殊性から、労働時間の特例の規定（労基４０条）に基づき、週の労働時間は特別に44時間とされている。（労基則25条の2）
			１日の	１日８時間制：１週間の各日については、１日について８時間をこえて労働させてはならない（労基32条2項）
		休息時間		労基法は、１日の労働時間が６時間をこえる場合は４５分以上、８時間をこえる場合は１時間以上の休憩時間を労働時間の途中に一斉に与える。（法34条1項2項）
				休憩時間は労働者の自由に利用させるべき（同条3項）。
時間外・休日労働	三六協定	意義		使用者は、事業場の労使協定を締結し、それを行政官庁に届け出た場合は、その協定の定めるところにより労働時間を延長し、それを行政官庁に届け出た場合は、その協定の定めるところにより労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。
		規定事項		①時間外労働・休日労働が必要な具体的な事由 ②業務の種類 ③労働者の数 ④時間外労働によって延長することができる時間または労働させることができる休日 ⑤有効期間（１年）
		特別条項付き協定		時間外労働にも限度時間あり。それをこえて時間外労働をさせる特別の事情がある場合は、特別条項付き協定。
				①原則としての延長時間（限度時間内の時間） ②限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情 ③原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続き ④限度時間を超える一定の時間 ⑤限度時間を超えることのできる回数 ⑥限度時間を超える時間外労働に関する割増賃金率
	時間外・休日・深夜労働の割増賃金	制度		使用者が時間外・休日労働の規定（労基法33条1項2項・36条）によって労働時間を延長し、もしくは休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額に一定の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければならない。（労基法37条）
		割増率		①１カ月の合計が６０時間までの時間外労働および午後１０時～午前５時までの深夜労働⇒２割５分以上の率（法37条1項本文、２項、４項、割増率） ②１カ月の合計が６０時間をこえた時間外労働が行われた場合の６０時間を超える時間外労働⇒５割以上の率（法37条1項但書） ③休日労働⇒３割５分以上の率（法37条1項本文・２項、割増率）
		歩合給と割増賃金		歩合給や出来高給についても、割増賃金規定（37条）の規制は及び、「通常の労働時間の賃金」の計算方法が定められている。（労基則19条1項6号）
				タクシー会社の乗務員に支払われる歩合給に関し、時間外・深夜労働が行われたとき・・・使用者は割増賃金規定に従って計算した割増賃金を別途支払う義務負う。（最高裁H11.12.14）
休業手当	内容			使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の１００分の６０以上の手当を支払わなければならない（労基26条）。
	趣旨			「労働者の責に帰することのできない事由」による休業の場合における労働者の最低生活の保障をはかる。ｂｕｔ不可抗力の場合にまで使用者の義務を拡げるのは適当ではない。 ⇒「使用者の責に帰すべき事由による休業」に限定。
	「休業」			労働契約上労働義務ある時間について労働をしえなくなること。
	帰責事由			休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は反対給付請求権の有無の基準である「責めに帰すべき事由」よりも広く、民法上は使用者の帰責事由とならない経営上の障害も天災事変などの不可抗力に該当しないかぎりはそれに含まれる。
				労働者の最低生活を保障するために、民法により保障された賃金請求権のうち平均賃金の６割に当たる部分の支払を罰則によって確保したにとどまらず、使用者の帰責事由を拡大。
				ｅｘ．機械の検査、原料の不足、流通機構の不円滑による資材入手難、監督官庁の勧告による操業停止、親会社の経営難のための資金・資材の獲得困難等
解雇予告義務	３０日前に予告しなければならない。（法20①）３０日前に予告をしない使用者は３０日分以上の平均賃金を支払わなければならない。（法20②）
	除外事由			①「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または ②「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」は、予告または予告手当の支払を要しない。（法20①但書）
				②は、当該労働者が予告期間を置かずに即時に解雇されてもやむをえないと認められるほどに重大な服務規律違反または背信行為を意味する。懲戒解雇が有効と考えられる場合にも、解雇予告は省略すべきでない場合もあり得る。
				行政官庁の認定を要する
	予告義務違反の解雇			相対的無効説：予告期間も置かず予告手当の支払もしないでした解雇の通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でないかぎり、通知後３０日の期間を経過するか、または通知の後に予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力が生じる。（最高裁昭和35.3.11）
	解雇予告義務の適用の有無			①日日雇い入れられている者 ②２ヵ月以内の期間（季節的業務の場合は４ヶ月以内の期間）を定めて使用される者 ③試用期間中の者については適用がない。（法21条）
				①の者が１ヵ月をこれて引き続き使用されるにいたった場合（休日を含む暦日の１ヵ月） ②の者が「所定の期間」（すなわち②における２カ月または４カ月の期間）をこえて引き続き使用されるにいたった場合、 ③の者が１４日（労働日のみならず休日も含んだ日数である）をこえて引き続き使用されるにいたった場合については、同規定が適用される。（法21条但書）
	労働契約の期間満了と解雇予告			「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」（労基法１４条２項に基づく告示）は、有期労働契約においては、雇入れの日から１年を超えて継続勤務している者に対し更新拒絶をする場合には、３０日前の予告を有する。
整理解雇	規定			労働契約法　第16条（解雇）解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。.
	４要件	①人員削減の必要性		①人員削減の必要性：人員削減措置の実施が不況、斜陽化、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること、ないしはやむをえない措置と認められること。
				×当該人員削減措置を実施しなければ当該企業が「倒産必至」の状況にあること。 ○高度の経営上の困難から当該措置が要請されるという程度で足りる。（大阪地裁Ｈ7.10.20）
				裁判所は、人員削減の必要性に関する経営専門家の判断を実際上は尊重している。
		②整理解雇選択の必要性		②人員削減の手段として整理解雇（指名解雇）を選択することの必要性：使用者は、配転、出向、一時帰休、希望退職の募集などの他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務（解雇回避努力義務）を負う。
				配転や出向・転籍を試みる義務について、一般論としては、職種・勤務地を限定せずに雇用される正規従業員に関しては、これらの回避措置を広く認めるべきであるが、企業規模や労働者の職業能力等から回避措置を企業に期待できないときは、これを画一的に強制すべきではない。
		③選定の妥当性		③被解雇者選定の妥当性：使用者は被解雇者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して行うことを要する。
		④手続の妥当性		④手続の妥当性：使用者は労働組合または労働者に対して整理解雇の必要性とその時期･規模・方法につき納得を得るために説明を行い、さらにそれらの者と誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負う。
	裁判例の傾向			日本経済の長期低迷を背景とした企業のリストラクチャリング進展のなかで、整理解雇規制を部分的に緩和する傾向。
				①整理解雇の４「要件」を４「要素」と解し、整理解雇の有効性をこれら４要素の総合判断と解する裁判例が増加。
				②人員削減の必要性に関しては、企業の経営判断を尊重して司法審査を控える裁判例が多く、企業が全体として経営危機に陥っていなくても、経営合理化や競争力強化のために行う人員整理に必要性を認める例が増えている。
				③解雇回避義務についても、各種の回避措置を画一的に要求する判断は後退しており、希望退職者募集につき、同募集によって有能な従業員の退職をもたらしたり、従業員に無用の不安をもたらす場合の募集の必要性を否定する例や、解雇回避措置を基本としつつも、それが困難な場合には経済的補償や再就職支援措置で足りると判断する例がある。
				④しかし、整理解雇法理の全面的な規制緩和をもたらしているわけではない。
				総じて裁判例は、企業間競争の激化や企業再編等の新たな動向をふまえて整理解雇法理を適宜修正しつつ、使用者の恣意的な解雇をチェックする姿勢を堅持している。特に、外資系企業の人員削減策としての解雇を４要件に照らして解雇権濫用とする事例が目立つ。
	期間雇用者			期間３か月のアルバイトを３か月を過ぎて使用し続けた場合に、一挙に解雇が不自由な「期間の定めのない労働契約」に転化してしまうというのは雇用の実態にそぐわない。 ⇒むしろ期間３か月の契約として黙示に更新されると解されるべき。このような更新が反復してなされた場合には、以下のように、解雇権濫用法理の類推適用がなされることになる。
				東芝柳町工場事件（最高裁昭和49.7.22）「２か月の期間が満了しても真面目に働いていれば解雇されることはない。安心して長く働いて欲しい」などと言われた採用された「基幹臨時工」が、簡易な更新手続で５回～２３回にわたって契約の更新をされたのちに雇止めされたケースについて、本件雇止めの意思表示は実質上解雇の意思表示にあたるので解雇に関する法理を類推すべきである、との高裁判断を是認したうえ、余剰人員の発生等従来の取扱い（反復更新）を変更してもやむをえないと認められる特段の事情がなければ雇止めはできない、と判示。
				～臨時従業員の短期労働契約が反復更新されて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、更新拒絶には解雇の場合と同様客観的で合理的な理由が必要とされ、もしそのような理由が認められなければ雇止めできないと判示した。
	パートタイム労働者			当該事業所の通常の労働者に比して ①職務内容が同一で、 ②同じく契約上または実態上期間の定めのない雇用にあり、 ③人材活用の仕組みと運用が長期的に同一である短時間労働者は、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」とされ、賃金、教育訓練、福利厚生その他の待遇について、短時間労働者であることを理由とする差別的取扱いを禁止された。（改正パートタイム労働法）
				上記②の「期間の定めのない雇用」であること、との要件のうち、「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当」な場合かどうかについては、勇気労働者の雇止め（更新拒否）に期間の定めのない労働契約に関する解雇権濫用規制（労働契約16条）を類推適用すべきか否か、に関する裁判例の判断と同様の判断を行うことになる。
懲戒解雇	懲戒権			使用者は企業の存立・運営に不可欠な企業秩序を定立し維持する当然の権限を有し、労働者は労働契約の締結によって当然にこの企業秩序の遵守義務を負う（最高裁）。～企業秩序とその遵守義務とは企業及び労働契約の本質（当然の性質・内容）に根ざす当然の権限および義務とされる。
				懲戒処分は、企業秩序違反者に対し使用者が労働契約上行い得る通常の手段（普通解雇、配転、損害賠償請求、一時金・昇給・昇格の低査定など）とは別個の特別の制裁罰であって、契約関係における特別の根拠を必要とする。 ⇒使用者はこのような特別の制裁罰を実施したければ、その事由と手段とを就業規則において明記し、契約関係の規範として樹立することを要する。
	規定			労働契約法　第15条（懲戒）使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
	説明			「懲戒解雇」は懲戒処分の極刑であって、通常は解雇予告ま予告手当もせずに即時になされ、また退職金の全部または一部が支給されない。
				懲戒解雇と労基法上の即時解雇（法20条1項但書）とが必ずしも一致するものではないし、また退職金が全額支給される懲戒解雇も存在する。
				「懲戒」の名が付されることによって秩序（規律）違反に対する制裁としての解雇たることが明らかにされ、再就職の重大な障害となるという不利益を伴うことになる。
	懲戒処分の有効要件	①根拠規定の存在		使用者に懲戒権が認められなければならない。 ⇒懲戒の理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則上明記されていなければなならない。
				懲戒処分については、それが企業秩序違反行為に対する特別の制裁措置であることから、罪刑法定主義類似の原則（不遡及の原則、一事不再理の原則）が妥当する。
		②懲戒事由への該当性		労働者の問題の行為が就業規則上の懲戒事由に該当し、「客観的に合理的な理由」があると認められなければならない。
				当該懲戒処分に係る具体的な行為が、当該種類の処分の理由として規定された懲戒事由に該当するといえるか否かが、中心的争点となり、当該行為の性質・態様等に照らしての該当性の如何が判定される。 ⇒広範・不明確な懲戒事由の規定についての合理的な限定解釈が行われることが多い。
		③相当性	内容	懲戒は、理由とされた「当該行為の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものと認められない場合」には、無効となる。
				多くの懲戒処分（特に懲戒解雇）が、当該事犯の懲戒事由該当性を肯定されながらも、当該行為の性質・態様や被処分者の職務歴などに照らして重きに失するとして無効とされている。使用者が当該行為を被処分者に関する情状を適切に酌量しないで重すぎる量刑をした場合には、社会通念上相当なものと認められないとして、懲戒権を濫用したものとされる。
				同じ規定に同じ程度に違反した場合には、これに対する懲戒は同じ程度たるべきであるという公平性の要請。 ⇒懲戒処分は、同様の事例についての先例を踏まえてなされるべき。従来黙認してきた種類の行為に対して懲戒を行うには、事前の十分な警告を要する。
			手続	手続的な相当性を欠く場合にも、社会通念上相当なものと認められず、懲戒権の濫用となる。
				就業規則や労働協約上、組合との協議や労使代表から構成される懲戒委員会の討議を経るべきことなどが必要とされる場合には、その手続を遵守。
				そのような規定が何もない場合にも、特段の支障がない限り、本人に弁明の機会を与えることが要請される。これらの手続的正義に反する懲戒処分も、ささいな手続上の瑕疵にすぎない場合でないかぎり、懲戒権の濫用となる。
	個別	⑤職場規律違反		添乗員等に対する観光バス運転手のセクシュアル・ハラスメントについても、社内の男女関係に対して会社が厳しく対応してきた状況下では、懲戒解雇もやむをえない。（大阪地裁H12.4.28）
	懲戒処分と不法行為			懲戒処分は、労働者に経済的不利益を与えたり、その名誉・信用を害して精神的苦痛を与える措置 ⇒ 懲戒権の濫用と評価される場合は、処分の無効に加えて、使用者（および責任者）の不法行為（民法709条）を成立させることがある。
				ただし、使用者の故意・過失や労働者の不利益（違法性）を吟味すべきであり、懲戒権濫用が不法行為に直結するわけではない。
退職	退職勧奨行為			不況時の人員削減策や、定年前高齢者の削減策として、労働者に対して合意解約ないし一方的解約（辞職）としての退職を勧奨する場合には、その任意の意思を尊重する態様で行うことを要する。その場合、退職金の優遇は任意性の１つの有力なメルクマールとなる。解雇ではないから、人員整理目的であっても、整理解雇の４要件ないし要素を満たす必要はない。
	早期退職優遇制度			使用者が早期退職優遇制度の利用を労働者に呼びかける行為を、同制度による合意退職の申込みの誘引であり、申込みそのものではないと解した上、労働者による申込みに対する使用者による承諾を要件と開始、所定の要件を満たさずに退職した者からの割増退職金支払いは否定。
	退職時の証明			労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金または退職の事由（退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む）についての証明書を請求した場合においては、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならない。（労基法22①）この証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。（同条②）使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就労を妨げることを目的として、労働者の国籍、身上、社会的身分もしくは労働組合運動に関する通信をし、または証明書に秘密の記号を記入してはならない。（同条③）
				退職労働者は、自己都合退職、勧奨退職、定年退職、解雇などの退職事由と、解雇の場合の解雇事由の内容（事実関係、就業規則があればその該当条項）を記載した証明書を使用者に対して要求できる。（H11.1.29基発45号）
辞職	辞職			労働者による労働契約の解約。
	期間の定めのない雇用契約			労働者は、２週間の予告期間をおけば「いつでも」契約を解約できる。（民法６２７条１項）
				ただし、毎月１回払いの純然たる月給制（遅刻、欠勤による賃金控除なし）の場合は、解約は翌月以降に対してのみなすことができ、当月の前半においてその予告をなすことを要する。（同条２項）
	期間の定めのある雇用契約			「やむを得ない事由」あるときに「直ちに契約の解除をする」ことができるにとどまり、しかもその事由が当事者の一方の過失によって生じたときは相手方に対して損害賠償の責任を負う。（民法628条）
				拘束関係を生ぜしめる労働契約の期間は、労働者のために「３年間」をこえてはならない。
				期間の定めのある雇用契約が期間満了後も双方の異議なく事実上継続された場合⇒前契約と同一の条件で更新されるが、この黙示の更新期間中は労働者はいつでも解約告知（民法627条）をなしうる。（民法629条）
休職	定義			ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら労務の従事を免除することまたは禁止すること。
	種類	傷病休職（病気休職）		業務外の傷病による長期欠勤が一定期間（３ヵ月～６ヵ月が普通）に及んだときに行われるもので、休職期間の長さは通常勤続年数や傷病の性質に応じ異なって定められる。
				期間中に傷病から回復し就労可能となれば休職は終了し、復職となる。回復せず期間満了となれば、自然（自動）退職または解雇となる。（この制度の目的は解雇猶予）
		事故欠勤休職		傷病以外の自己都合による欠勤（事故欠勤）が一定期間（１か月が多い）に及んだときになされる
	賃金の支払			賃金不払の正当性は履行不能の場合の反対給付請求権に関する民法原則（民法536条2項）によって判断されるべき問題。
				第536条（債務者の危険負担等）前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。 2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
				使用者に帰責事由のない履行不能⇒賃金請求権を有しない。
◆	◆第３款　法定労働時間の弾力化・・・・変形労働時間制（ｐ５０１）
		原則		１週４０時間、１日８時間（これらをこえる労働は三六協定の締結・届出と割増賃金の支払）という法定労働時間の規制（労基３２条、３６条）は、所定労働時間を事業場において統一し、かつ年間を通じて法定労働時間内で定型化できる事業を想定。
		意義		変形労働時間制：単位となる期間内ぬいおいて所定労働時間を平均して週法定労働時間をこえなければ、期間内の一部の日または週において所定労働時間が１日または１週の法定労働時間をこえても、所定労働時間の限度で、法定労働時間をこえたとの取り扱いをしない、という制度。
		種類		１か月、３か月、１週間単位１年単位
	■			■１か月以内の期間の変形労働時間制
		規定		労基法　第32条の２使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。 ②使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
		概説		使用者は、事業場の労使協定または就業規則その他これに準ずるものにより、１か月以内の一定期間を平均し１週間当たりの労働時間が週の法定労働時間（４０時間、労基３２条１項。特例事業では４４時間、労基則２５条の２第２項）をこえない定めをした場合においては、法定労働時間の規定（労基法３２条）にもかかわらず、その定めにより、特定された週において１週の法定労働時間を、または特定された日において１日の法定労働時間（８時間）をこえて、労働させることができる（労基３２条の２第１項）。
		用件
		時間外労働		変形労働時間制は一定期間内での法定労働時間の変形（所定労働時間の平均化）を認める制度 ⇒そこにおいて１週４０時間または１日８時間をこえた労働時間が定められていても、こえた時間の部分は時間外労働となるものではない。
				●１週４０時間または１日８時間をこえた所定労働時間が定められた日⇒その所定時間をこえた労働時間のみが時間外労働の時間 ●１週４０時間または１日８時間以下の所定労働時間が定められた日⇒法定労働時間である１週４０時間（特例事業については４４時間）または１日８時間をこえて労働時間が延長されて初めて時間外労働に ●１週または１日あたり労働時間延長がそれら法定労働時間の枠内であっても、単位期間の総所定労働時間にそれら１日・１週の法定労働時間の枠内の延長時間を加えた合計時間が、単位期間の法定労働時間の総枠をこえる⇒こえた労働時間は単位期間全体の時間外労働に
	(3)１年単位の変形労働時間制			１か月を超え、１年以内の一定の期間について、平均して１週間をあたりの労働時間が法定労働時間（４０時間）を超えなければ、１日８時間を超える日または１週４０時間を超える週があっても違反にならない。
				ｅｘ．年末が決算期に入るため、１２～１月が忙しい場合商品が季節物であるため、１年の特定の時期に受注が集中する場合
	（4)１週間単位の非定型型変形労働時間制			労働者の数が２９人以下の小売業、旅館、料理店および飲食店について、１週間の労働時間が４０時間の枠内におさまっていれば、１日について１０時間まで労働させることができる制度。
◆	◆第４款　主体的で柔軟な労働時間制度
	(2)フレックスタイム制	規定		労基法　第32条の３使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。一　この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲二　清算期間（その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。）三　清算期間における総労働時間四　その他厚生労働省令で定める事項
		趣旨		１か月以内の一定期間（清算期間）の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲で各日の始業・就業時刻を選択して働くことができる制度。
				清算期間について、平均して１週間あたりの労働時間が法定労働時間（４０時間が原則）を超えなければ、法定労働時間を超える日または週があっても時間外労働とはならない。
				清算期間の総労働時間を超えて労働すると、その超えた時間は時間外労働となる。
				通常は、出退勤のなされるべき時間帯（フレキシブルタイム）が定められる。全員が必ず勤務すべき時間帯（コアタイム）を定めるものが多い。
				ｅｘ．子供を保育園に預けてから出勤する労働者自宅に介護を要する人がいる場合
		要件	(1)	(1)一定範囲の労働者につき始業・就業時間を各労働者の決定に委ねることを就業規則（１０人未満の事業所では、これに準ずるもの）で定める。
				使用者は（コアタイムの時間帯を除き）労働者にある時刻までの出勤や居残りを命ずることはできない（それらは労働者の同意を得てはじめて行うことができる）。
			(2)	(2)以下の一定の事項を定めた労使協定を締結すること。
				①フレックスタイム制をとる労働者の範囲
				②１カ月以内の単位時間（32条の3では「清算時間」と呼ばれている。協定又は就業規則において期間の起算日を明らかにしなければならない。（労基則12条の2））
				③この単位時間において働くべき「総労働時間」この「総労働時間」は、いわば当該機関の総所定労働時間であり、単位期間を通じての総実労働時間がそれに不足する場合は、不足分は欠勤時間として取り扱われ、超過する場合は、超過分は所定外労働時間として取り扱われる。「総労働時間」は、平均して週の法定労働時間をこえないものであることが必要。
				④標準となる１日の労働時間の長さ（年休の際基準となる時間数）
				⑤労働者が労働しなければならない時間帯（コアタイム）を定める場合にはその時間帯の開始及び終了の時刻
				⑥労働者がその選択により労働することができる時間帯（フレキシブルタイム）に制限を設ける場合には、その時間帯の開始および終了の時刻（労基則12条の3）
				⑤⑥は、始業・就業の時刻に関する事項なので、就業規則にも記載する必要。（労基法89条1号）
		法的効果		使用者は、フレックスタイム制をとる労働者について、「清算期間」を平均して週法定労働時間（40時間。特例事業については特例の時間。労基則25条の2第3項）をこえない範囲において、１週または１日の法定時間をこえて「労働させる」（つまり、本人が自らの選択で労働することを放置する）ことができる。（１週および１日については法定労働時間をこえても時間外労働とならない。）
				時間外労働が成立するのは、労働者が自らの選択で労働時間を按配した結果、当該清算期間における労働時間の合計が清算期間における法定労働時間の枠をこえた場合。この場合、こえた時間については、36協定の締結・届出（労基法36条。協定では清算期間を通じての延長限度時間を定めればよい）と割増賃金（同法37条）の支払いを要する。「総労働時間」をこえる労働時間のうち法定労働時間のわくをこえない部分について、何らかの割増を行うかどうかは、当事者間の契約関係に委ねられる。
		就業規則の規定		労使協定は、フレックスタイム制を労基法上適法とする効果をもつにすぎない。
				フレキシブルタイム、コアタイム、総労働時間、総労働時間をこえる残業の仕方、貸借時間制度の有無、賃金計算の仕方などにつき、就業規則に詳細に規定を設ける必要がある。
労働時間の管理が難しい場合	(1)事業場外のみなし労働時間制		趣旨	具体的な指揮監督の及ばない事業場外で仕事をする場合で、一定の要件を満たすときは、労働時間について、一定の時間（みなし労働時間）働いたものと見なす制度。
			対象	事業場外の仕事で、使用者の指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務
			労働時間	原則：所定労働時間労働したものとみます。
				所定労働時間で終わらない場合 ⇒その業務を行うのに通常必要とされる時間労働したものと見なす。
			手続	所定労働時間を超えた労働が必要となる場合のみ、「その業務を行うのに通常必要とされる時間」を、労使協定で定め、所轄の監督署へ届出。（協定で定めた時間が法定労働時間を超えない場合、届出の必要はない。）
	(2)裁量労働制	趣旨		業務の時間配分や仕事の進めかたについて、使用者が具体的な指示をするのではなく、労働者の裁量に委ねた場合に、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度。
		①専門業務型	対象	研究開発業務や情報処理システムの分析または設計の業務など専門的な１９の業務に就く労働者。
			効果	労使協定で定めた時間働いたものとみなす。
			手続	労使協定で制度の内容を定め、その協定を所轄の監督署へ届け出る。
		②企画業務型	対象	事業運営の企画、立案、調査および分析の業務を行う労働者で、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定する者。
			効果	労使委員会で定めた時間働いたものとみなす。
			手続	労使委員会で制度の内容を定め、その決議を所轄の監督署へ届け出る。

非正規雇用
正規と非正規	正規労働者	属性		①使用者による直接雇用
				②期間の定めのない労働契約による長期継続雇用
				③通常の労働時間（フルタイム）による就労
	非正規労働者	①の欠如		派遣労働者、請負労働者
		②の欠如		有期雇用（嘱託・契約社員等を含む）
		③の欠如		パートタイム労働
		指標④		疑似パート（フルタイム労働で実質は正規労働者と同じ）
		指標⑤		労働義務内容が限定的（補助的または専門的）で広範な人事措置に服さない
派遣労働者⇒労働者派遣法ファイルへ
パート労働	法規定			パート労働法（「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」）
	パートと労働法上の権利	パート		通常の労働者と比べ労働時間数ないし労働日数の短い労働者。
				「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者（当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者）の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。（法2条）
				派遣先においてフルタイムパートとして勤務していた派遣労働者に関する事例で、「派遣元会社とXとの間の雇用契約は、派遣先での就労を前提としていて、半年ごとに契約を更新する登録型の雇用契約であって、常用の雇用契約とはいいがたく、解雇権濫用法理を適用ないし類推適用されることはない」と判断した原審判決を維持して、派遣元会社に対する雇用関係存在確認請求及び賃金請求を棄却。（高松高裁H18.5.18）
		パート労働者の権利		労働者⇒ 労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など労働関係の諸法律が適用。
				改正育児・介護休業法（H17.4.1施行）は、契約j期間がある労働者のうち ①同一の事業主に引き続き雇用された期間が１年以上であること、 ②子が１歳に達する日（誕生日の前日）を超えて引き続き雇用されることが見込まれること（子が１歳に達する日から１年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く）について適用対象。
				健康保険・厚生年金保険については、常用的雇用関係にあるもので１日又は１週の所定労働時間及び１月の所定労働日数が就労者に比して概ね４分の３以上である者は被保険者となる。被保険者となる対象者のうち、扶養認定をされると除外される。
		均等待遇の義務付け	規定	第８条（通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止）事業主は、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度（以下「職務の内容」という。）が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者（以下「職務内容同一短時間労働者」という。）であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの（以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。）については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。 2 前項の期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。
				第９条（賃金）事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者（通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第二項及び第十一条において同じ。）の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金（通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。次項において同じ。）を決定するように努めるものとする。 2 事業主は、前項の規定にかかわらず、職務内容同一短時間労働者（通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第一項において同じ。）であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主に雇用される期間のうちの少なくとも一定の期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、当該変更が行われる期間においては、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるものとする。
				第10条（教育訓練）事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間労働者が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間労働者に対しても、これを実施しなければならない。 2 事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、当該短時間労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする。
				第11条（福利厚生施設）事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。
			内容	別表参照

パート労働者の均等待遇
		?：通常の労働者（正社員）と同視すべきパートタイム労働者（業務の内容と責任の程度が正社員と同一であり（職務内容同一短時間労働者）、期間の定めのない労働契約（反復更新により期間の定めのない労働契約と同視しうる労働契約を含む）を締結しており、全雇用期間において職務内容と配置の変更の範囲（人材活用の仕組み）が正社員と同一を見込まれる者）	?：?に該当しない「職務内容同一短時間労働者」のうち、少なくとも一定期間の職務内容と配置の変更の範囲が正社員と同一と見込まれる者	?：??に該当しない「職務内容同一短時間労働者」	?：それら以外のパートタイム労働者
均等の義務づけ		正社員との均等を義務づけ（法8条）等の対象は、賃金の決定、教育訓練の実施、、福利厚生施設の利用、休憩、休日、安全衛生、災害補償、解雇等、労働時間以外のすべての待遇にわたる。
努力義務・配慮義務	賃金（通常手当・退職手当等を除く）		期間中正社員と同一の方法により賃金を決定する努力義務（9条2項）	通常の労働者との均衡を考慮しつつ、職務の内容、成果、意欲、能力または経験等を勘案し、その賃金を決定する努力義務（法9条1項）
	教育訓練		通常の労働者と同一内容の教育訓練を実施する努力義務（法10条1項）		通常の労働者との均衡に考慮しつつ、職務の内容、成果、意欲、能力または経験等に応じ、実施する努力義務（法10条2項）
	福利厚生施設（給食施設、休憩室、更衣室）		利用の機会を与える配慮義務（法11条）

企業年金
総論	①退職金と別個の原資を用いて運営されるケースもあるが、 ②退職金の一部または全部を移行させるケースも多い
	①企業自身が独自に管理運営するもの（自社年金）もあるが、多くは税制上の優遇措置のある②適格退職年金制度（法人税法８３条以下）または③厚生年金制度（厚生年金160条以下）を利用してきた。ｂｕｔバブル崩壊後の長期不況の中で財政状況が悪化し、再構成が求められた。雇用の流動化に伴う転職時の年金資産の移換（ポータビリティ）の仕組みを整えることが社会的要請に。 ⇒ 平成１３年に、「確定拠出年金」制度を樹立する確定拠出年金法（「確拠年」）が制定され、あわせて従来の「確定給付企業年金」の制度を整えるための確定給付企業年金法（「確給年」）が制定された。
確定拠出年金	個人または事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の支持を行い、高齢期にそれに基づく給付を受給できる制度。（確拠年１条）
	①企業型年金：厚生年金保険適用事業所の事業主が単独または共同して実施するもの ②個人型年金：個人が拠出し、国民年金基金連合会が実施するもの（法２条１項、２項、３項）
確定給付企業年金	厚生年金適用事業所の事業主が単独または共同で実施するもので（確給年２条）、 ①規約型企業年金（労使が合意した年金規約に基づく、企業の信託会社・生命保険会社等が契約を締結し、母体企業外で年金資産の管理・運用と給付を行うタイプ。４条～５条）と、 ②基金型企業年金（母体企業とは別の法人基金を設立した上、基金において年金資産の管理・運用と給付を行うタイプ。基金の組織のあり方は8条～24条）に分かれる。
	いずれの場合も、企業年金を実施しようとする事業者は、被用者年金保険被保険者等の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は過半数代表者の同意を得て確定給付企業年金の規約を作成し、 ①厚生労働大臣の承認（規約型の場合）または ②企業年金基金の設立に関する認可（基金型の場合）を受けなければならない（３条）。規約においては、受給資格、給付内容・方法、掛け金負担等の事項を定める（４条）。
	加入者	加入者は、実施事業所に使用される被用者年金被保険者等であって、規約に定める資格を有する者（25条）。
	給付内容（29条以下）	①老齢給付金（原則として、60～65歳の範囲で規約に定める年齢を支給開始年齢とし、受給資格期間は20年を超えてはならない） ②脱退一時金（規約所定の老齢給付金の支給要件を満たさない一定の者に支給） ③障害給付金 ④遺族給付金
	掛金拠出者	実施事業者であり、資産管理運用機関等に納付する。（法55条1項、56条）年金規約で定めれば、本人同意を要件に加入者も拠出できる（法55条2項）
	資産運用	信託契約、生命保険契約、または投資顧問業者との投資一任契約によって行うのを原則とする。（法65条）
	受給権保護	事業者に対する年金資産の積立義務（法59条）積立金が責任準備金の額および最低積立基準額を下回ってはならない（法60条）積立不足が生じた場合に、一定期間内に不足が解消されるよう掛金を拠出すべき（法63条）
		事業主の受託者責任を明確化するため、加入者に対する忠実義務、利益相反行為の禁止等の行為準則（法69条）や、加入者に対する情報開示義務（73条）が定められている。
	その他	規約型、基金型相互の移行を認め、年金資産の移換を可能としたほか（法74条以下）、確定拠出年金（企業型）への移換も認められている（法117条以下）。

労働安全
元方	規定	第15条（統括安全衛生責任者）事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの（当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。）のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業（以下「特定事業」という。）を行う者（以下「特定元方事業者」という。）は、その労働者及びその請負人（元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。）の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。
	説明	特定元方事業者は、その労働者及びその請負人の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

労働審判手続（労働審判法）
Ａ	Ｂ
対象事件	個別労働関係民事紛争労働契約の存否その他の労働関係に関する事項についてここの労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争（法１条）ｅｘ．解雇、雇止め、配転、出向、賃金・退職金請求権、懲戒処分、労働条件変更の拘束力などをめぐる、個々の労働者と事業者との間の権利紛争。
管轄裁判所	①相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所 ②個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業者の間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し、もしくは最後に就業した当該事務所を管轄する地方裁判所 ③当事者が合意で定める地方裁判所（法2条）
構成	裁判官１名と労働関係の専門的な知識経験を有する者２名（労使それぞれから１命づつ）によって構成される合議体（労働審判委員会）が紛争処理。
手続きの迅速化	労働者の生活をかけた紛争→原則として３回以内の期日において、審理を終結しなくてはならない（法15②）当事者の迅速進行に努める責務（規則2条）
調停の組込み	当事者の互助による和解が紛争をより迅速に実質的に解決するもの→「調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試みる」（法1条）
調停不可の場合	調停によって紛争を解決できないときに、権利関係を踏まえつつ、事案の実情に即した解決を行うための審判を下す。（法1条）審判で、権利関係を確認したり、金銭の支払い等の財産上の給付を命じたりできうる。審判を当事者が受諾→紛争は解決。（裁判上の和解と同一の効力をもつ（法21④））受諾できない→２週間以内に異議を申し立てる。（法21⑤）
訴訟への移行	異議の申立て→労働審判は失効し（法21③）、労働審判の申立のときに遡って訴えの提起があったものとみなされる。（法22①）
調停に代わる決定（民事調停）との違い	調停に代わる決定（民事調停法17条）	労働審判
	調停委員会を組織する調停委員の意見を聴いた上で、裁判所が行う。	調停を包み込んだ審判手続を追行する機関としての労働審判委員会自身が行う。
	裁判所が必要と認めた場合にのみ行われる。	調停による解決に至らない場合には、原則として常に行われる。
	申立ての趣旨の範囲内で、当事者の互助による合意の案（調停案）を決定としてだす。	審判手続の経過を勘案した解決案を提示。まず、権利関係に関する判断を行い、これに基づきながら、労働審判手続の経過において明らかとなった当事者の意向を勘案した解決案を提示する。
	当事者が異議を申し立てたら失効し、紛争はそのまま放置。	当事者の異議により失効するが、訴訟への自動的な移行がなされ、訴訟による紛争の解決が図られる。

裁判員制度の扱い
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律１００条	労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
労基法７条（公民権行使の保障）	使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。