シンプラル法律事務所
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多重債務整理・過払金請求の論点整理

多重債務整理・過払請求の論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

 
管轄 土地管轄 @債務者の住居所地の裁判所(持参債務の原則)
A相手方の普通裁判籍
その取引が支店で行われている場合には当該支店の所在地にて管轄が認められる。
(B慰謝料を主張する場合にはその不法行為地)
事物管轄 訴額が140超⇒地裁
簡易裁判所では、貸金業者の従業員が許可代理人として応訴でき、書面による犠制陳述が2回目の期日以降も可能
⇒貸金業者の経済的負担は大きくない。
地方裁判所で貸金業者が応訴する場合、弁護士を代理人として選任する必要があり費用負担が発生する。
⇒第1回前の和解を申し入れてくる可能性がある。
取引履歴の不開示がある場合には慰謝料請求の不加や被告を複数として共同訴訟を提起する方法等により、地裁で提訴するのが望ましい。
みなし弁済の主張 実際上不可 事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には、制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず、みなし弁済の適用要件を欠く。(最高裁H18.1.13、H18.1.19)
期限の利益喪失特約の存在は、通常、債務者に対し、支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、その結果、このような不利益を回避するために、制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになる。このような期限の利益喪失特約の下では、債務者が利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、上記のような誤解が生じなかったといえる特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない。(最高裁H18.1.13、H18.1.19)
貸金業法旧43条 規定 第43条(任意に支払つた場合のみなし弁済)

貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法(昭和二十九年法律第百号)第三条の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が、同法第一条第一項に定める利息の制限額を超える場合において、その支払が次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払は、同項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。

一 第十七条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第一項に規定する書面を交付している場合又は同条第二項から第四項まで(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第二項から第四項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払

二 第十八条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十八条第一項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払

2 前項の規定は、次の各号に掲げる支払に係る同項の超過部分の支払については、適用しない。
一 第三十六条の規定による業務の停止の処分に違反して貸付けの契約が締結された場合又は当該処分に違反して締結された貸付けに係る契約について保証契約が締結された場合における当該貸付けの契約又は当該保証契約に基づく支払
二 物価統制令第十二条の規定に違反して締結された貸付けの契約又は同条の規定に違反して締結された貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
三 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第二項の規定に違反して締結された貸付けに係る契約又は当該貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払

3 前二項の規定は、貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定に基づき、債務者が賠償として任意に支払つた金銭の額が、利息制限法第四条第一項に定める賠償額の予定の制限額を超える場合において、その支払が第一項各号に該当するときに準用する。
趣旨 金銭消費貸借条の利息の契約に基づき、債務者が貸金業者に対し、利息制限法の制限金利を超える利息を任意に支払った場合に、一定の要件のもとでその超過部分の支払は有効な利息の債務の弁済とみなすとする規定。
適用 改正貸金業法により廃止される⇒改正法施行期日(平成19年12月19日から起算して2年6か月を超えない日)以降の貸し付けについては適用なし。
要件 @貸主が、消費貸借契約(利息・損害金契約)締結時において「貸金業者」であること。
A業として行う金銭消費貸借上の「利息」または「損害金」の契約に基づく支払いであること
B利息制限法に定める制限額を超える金銭を
「債務者」が、「利息又は損害金と指定あるいは認識して」「任意に支払った」こと
C貸金業法17条の規定により法定の「契約書面の交付」をしている者に対する支払いであること(主債務者について同法17条1項、同法施行規則13条、保証人については同法17条2項、同法施行規則14条)
D貸金業法18条の規定により法定の「受取証書の交付」を「直ちに」した場合における支払であること(法18@、規則15条)
以上@〜Dの要件すべてを満たしてはじめて有効な債務の弁済とみなされる。
過払金請求の利息  規定 民法第704条(悪意の受益者の返還義務等)
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う
民法第404条(法定利率)
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
悪意について 貸金業者が制限超過部分の利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の悪意の受益者であると推認されるべきものである。(最高裁H19.7.13判決)
少なくと平成11年最高裁判決以降において、貸金業者が、事前に債務者に償還表を交付していれば18条書面を交付しなくても貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったことについて、やむを得ないといえる特段の事情があるといえるためには、平成11年判決以降、上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか、上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的な根拠があって、上記認識を有するに至ったことが必要であり、上記認識に一致する見解があったというだけで上記特段の事情があると解することはできない。(最高裁H19.7.13判決)
(平成11年判決とは、最高裁平成11年1月21日判決のことで、弁済金の受領にあたり、個別具体的な領収証書面の交付ではなく他の方法で元金利息の内訳を債務者に了知させている場合には、貸金業法18条記載の受領書面を交付したとはいえないとの判決。)

「平成18年判決及び平成19年判決の内容は原審の判示するとおりであるが、平成18年判決が言い渡されるまでは、平成18年判決が示した期限の利益喪失特約の下での制限超過部分の支払・・・は原則として貸金業法431項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものということはできないとの見解を採用した最高裁の判例はなく、下級審の裁判例や学説においては、このような見解を採用するものは少数であり、大多数が、期限の利益喪失特約下の支払というだけではその支払の任意性を否定することはできないとの見解に立って同項の規定の適用要件の解釈を行っていたことは公知の事実である」とし、「上記事情の下では、平成18年判決が言い渡されるまでは、貸金業者において、期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり、貸金業者が上記認識を有していたことについては、平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である」から、「平成18年判決の言渡し日以前の期限の利益喪失特約下の支払については、これを受領したことのみを理由として当該貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできない」。
最高裁H21.7.10判決)

 (1)法18条1項が,貸金業者は,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,同項各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない旨を定めているのは,貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図るためであるから,同項の解釈にあたっては,文理を離れて緩やかな解釈をすることは許されないというべきである。
 同項柱書きは,「貸金業者は,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,内閣府令で定めるところにより,次の各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない。」と規定している。そして,同項6号に,「前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項」が掲げられている。
 同項は,その文理に照らすと,同項の規定に基づき貸金業者が貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときに当該弁済をした者に対して交付すべき書面(以下「18条書面」という。)の記載事項は,同項1号から5号までに掲げる事項(以下「法定事項」という。)及び法定事項に追加して内閣府令(法施行当時は大蔵省令。後に,総理府令・大蔵省令,総理府令,内閣府令と順次改められた。)で定める事項であることを規定するとともに,18条書面の交付方法の定めについて内閣府令に委任することを規定したものと解される。したがって,18条書面の記載事項について,内閣府令により他の事項の記載をもって法定事項の記載に代えることは許されないものというべきである。
 (2)上記内閣府令に該当する施行規則15条2項は,「貸金業者は,法第18条第1項の規定により交付すべき書面を作成するときは,当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって,同項第1号から第3号まで並びに前項第2号及び第3号に掲げる事項の記載に代えることができる。」と規定している。この規定のうち,当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって,法18条1項1号から3号までに掲げる事項の記載に代えることができる旨定めた部分は,他の事項の記載をもって法定事項の一部の記載に代えることを定めたものであるから,内閣府令に対する法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。
(平成18年判決:最高裁H18.1.13)
(2)本件期限の利益喪失特約がその文言どおりの効力を有するとすると,上告人Y1は,支払期日に制限超過部分を含む約定利息の支払を怠った場合には,元本についての期限の利益を当然に喪失し,残元本全額及び経過利息を直ちに一括して支払う義務を負うことになる上,残元本全額に対して年29.2%の割合による遅延損害金を支払うべき義務も負うことになる。このような結果は,上告人Y1に対し,期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため,本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから,同項の趣旨に反し容認することができず,本件期限の利益喪失特約のうち,上告人Y1が支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同項の趣旨に反して無効であり,上告人Y1は,支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。
 そして,本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども,この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。
 したがって,本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。
(平成18年判決:最高裁H18.1.13)
みなし弁済が否定される限りにおいては、特段の事情がない限り悪意の受益者と推定される。
特段の事情は
@貸金業者がみなし弁済を主張し
A貸金業者が17条、18条書面の交付を主張立証し、
Bそのような事例においてみなし弁済を認める判例や学説が相当数存在した場合
(08新版 マニュアルp68)
利率:5% 一審原告と一審被告との間で生じる不当利得返還請求権は、高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって、営利性を考慮すべき債権ではないので、商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないから、利息の利率については、民法所定の年五分の割合によるべきである。(最高裁H19.12.13)
過払金請求と弁護士費用の請求 できる  民法704条
一審被告が、一審原告が利息制限法所定の制限を超える利率で一審被告に支払った利息について、その元本充当、元本債務消滅後の支払分の返還に容易に応じないことは、本訴における一審被告の訴訟追行の態度から明らかであり、そのために、一審原告は弁護士に委任して本訴を提起せざるを得なかったというべきであるから、一審原告の弁護士費用は民法七〇四条後段所定の損害に当たると解するのが相当である。(札幌高裁H19.4.26)
充当計算をしない架空請求 架空請求として不法行為に該当⇒慰謝料請求可能 民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
一審被告は、一審原告から受領する利息制限法所定の制限を超える利率による利息は不当利得を構成するものであることを知っていたというべきであるところ、弁論の全趣旨によれば、一審被告は、充当計算をせずに一審原告に対して利息及び元本の支払請求をし、一審原告はその請求が正しいものとして、これに応じて一審被告に返済を続けてきたことが認められる。一審被告の上記のような請求は、充当計算の結果元本がなくなるまでは、その一部は存在しない債務に係るものであり、元本がなくなった後は、その全部が存在しない債務に係るものであるから、架空請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。(札幌高裁H19.4.26)
過払金のその発生後に生じた借入債務への充当 判例 合意が存在するなどの特段の事情がない限り充当不可 第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である。(最高裁判決 平成19年2月13日)
合意が存在すると解する場合 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間第1の基本契約についての契約書の返還の有無借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況第2の基本契約が締結されるに至る経緯第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。(最高裁判決 平成20年1月18日)
特段の事情が存在すると解されない場合 基本契約1に基づく最終の弁済から約3年間が経過した後に改めて基本契約2が締結されたこと,基本契約1と基本契約2は利息, 遅延損害金の利率を異にすることなど前記の事実関係を前提とすれば,原審の認定した事情のみからは,上記特段の事情が存在すると解することはできない。(最高裁判決 平成20年1月18日)
取引継続中に過払金発生 基本契約がある場合、金銭消費貸借取引に関して、複数の権利関係を発生させることを予定していないといえるから、引き直し計算をした結果、過払金が生じた場合、その時点で存在する他の借入金債務に充当することはもとより、その後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいると解される。(最高裁H19.6.7判決)
約定に基づく完済後の貸付 同一基本契約内での再貸付 形式的には、一旦、約定に基づく完済があっても、基本契約が終了していない場合が多い。
多くの基本契約には「期間」に関する条項があり、その当初期間内に取引が再開された場合は、再度の借入は当初の基本契約に基づく以上、完済により生じた過払金は再度の借入に充当され、一連一体計算を主張することができる。
多くの基本契約の「期間」に関する条項には、自動更新される旨が定められており、この場合には、取引再開の時点でも当初の基本契約が終了していないことがある。
貸金業者の多くは、自動更新条項があるにもかかわらず、取引再開時に改めて基本契約を締結するが、新規契約の形をとっていても、多くの場合、契約番号や借入に利用するカードが同一であること、従前の取引を前提として貸金業者から勧誘があることなどから、単なる更新の合意に過ぎないといえる。
形式的には基本契約が終了とされている場合 上記の最高裁判例より、
@第1取引の期間の長さ
A第1取引の終了から第2取引の最初の借入までの期間
B第1取引の契約書の返還の有無
C第1取引のカードの失効手続の有無
D第1取引の最終の弁済から第2取引開始までの債務者と貸金業者の接触の状況(貸金業者から積極的に融資を受けるよう勧誘する場合が多い。)
E第2取引の基本契約が締結されるに至る経緯
F第1取引と第2取引の利率等の契約条件の異同
などについて確認し、一連一体計算の主張を検討する。
基本契約がない場合 基本契約がない場合であっても、基本契約が締結されているのと同様の貸付が繰り返されており、当初の貸付の際に、さらなる貸付が想定されている(通常、高利の貸金業者との取引においては、貸付・返済が繰り返されることが想定されているといえる。)などの場合は、過払金が生じた後の貸付金に充当されると解される。(最高裁H19.2.3判決)
借換 貸付額をや極度額を増額する場合に、新たに金銭消費貸借契約を締結し、同契約に基づく貸付額から従来の契約に基づく約定残債務を控除した金額を交付する場合。
従来の契約に基づく過払金が新契約の貸付金に充当される。(最高裁H19.7.19判決)
過払金返還請求権の消滅時効 規定 民法166@
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
民法167A
債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
時効期間 10年(最高裁昭和55.1.24)
消滅時効の起算点(一般)  「権利を行使することができる時」との解釈について「単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく、さらに権利の性質上、その権利行使が現実に期待のできるものであることも必要と解するのが相当である」(最高裁昭和45.7.15、H8.3.5)

権利の客観的な性質からして、その権利行使が現実に期待できない場合である必要。
最高裁の事例は、@受領拒絶を原因とする弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効が問題となった事例(昭和45年判決)とA債権者不確知を原因とする弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効が問題となった事例(平成13年判決)で、いずれも、供託における免責の効果を受ける必要がある間は、その供託者が供託金取戻請求権を行使することが、供託という行為の性質上およそ期待できないと解される事例。
過払金返還請求権の消滅時効の起算点 A:各過払金の発生時
過払いが発生した時点で、その後の各弁済日時が消滅時効の起算点。
「過払金返還請求訴訟における不当利得返還請求権は、借主である消費者の返済ごとにその金額が確定していくものであり、法律上その権利行使は過払金発生時から可能である。だからこそ、過払金について発生時から利息の発生が認められるのであって、取引終了日を消滅時効の起算点とすることは理論的に難しい。」(判例タイムズNo.1250p20)
B:最終貸付日
A説を前提に、過払金発生後の貸付けが過払金返還債務の「承認」であるから、その時点で消滅時効が中断して最終貸付日を消滅時効の起算点とする。(名古屋地裁一宮支部H16.10.7)
C:取引終了日
貸金業者から借主への貸付が一体であることを前提に、一旦発生した過払金は、その後の新たな貸付に充当されていったん消滅し、その後の弁済により再度新たな過払金が発生するということを繰り返すから、不当利得返還請求権は、借主間の取引終了時に確定的に発生し、その時点から時効の進行を開始する。(京都地裁H16.10.5)

@「1個の連続した貸付取引においては、各貸付けに係る金銭消費貸借契約は発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいる」と解しており、過払金は新たな借入金に合意に基づき充当される結果、取引終了時点で初めて確定する。
A権利の性質上、取引終了時まではその権利を現実に行使することを期待できない。
B借主の利益をできるだけ保護する必要がある。
C:取引終了日
最高裁H21.1.22判決
借り入れや返済を繰り返す貸借契約を結ぶケースでは、過払い金が発生してもその都度借り主が返還請求することは想定されない指摘。
一般的には貸借取引終了時に過払い金があれば借り主は請求権を行使するため、取引終了時が時効の起算点になる。