シンプラル法律事務所
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生活保護関係

生活保護の論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

生活保護関係 
生活保護でもらえる費用 生活費、住宅費、敷金、家具什器代、布団代、転居費用、医療費等
申請場所 (法19条) @居住地、ない場合はA現在地を所管する市町村。 
■手続 規定 生活保護法 第24条
保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。

3 第一項の通知は、申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。但し、扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、これを三十日まで延ばすことができる。この場合には、同項の書面にその理由を明示しなければならない。
4 保護の申請をしてから三十日以内に第一項の通知がないときは、申請者は、保護の実施機関が申請を却下したものとみなすことができる。
手続 @保護開始の申請 
A保護の実施機関は、申請のあった日から14日以内に、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもって通知しなければならない。(法24条@B)
B扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、これを30日まで延ばすことができる。
保護の開始時期は、原則として申請日。(厚生労働省社会援護局長通知第8)
注意 明確に「申請」する必要がある。
●口頭申請の裁判例:
生活保護申請権訴訟(大阪高裁H13.10.19)
口頭による保護開始申請については、特にこれを口頭で行う旨を明示して申請するなど、申請意思が客観的に明確でなければ、これを申請と認めることができない。
小倉北自殺事件(福岡地裁小倉支部H23.3.29)
申請行為があるというには、申請意思を内心にとどめず、これを実施機関に表示することが必要。しかし、生活保護申請をする者は、申請する意思を「明確に」示すことすらままできないことがあるということも十分考えられるところ。⇒場合によっては、「申請する」という直接的な表現によらなくとも申請意思が表示され、申請行為があったと認められる場合があると考えられる。
■補足性の要件 規定 生活保護法 第4条(保護の補足性)
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
扶養義務 <小山進次郎「解釈と運用」120頁>
「第2の型は、私法的扶養によって扶養を受け得る筈の条件のある者に公的扶助を受ける資格を与えないものである。第3の型は、公的扶助に優先して私的扶養が事実上行われることを期待しつつも、これを成法上の問題とすることなく、単に事実上扶養が行われたときにこれを被扶養者の収入として取り扱うものである。しかして、先進国の制度は、概ねこの配列の順序で段階的に発展してきているが、旧法は第2の類型に、新法は第3の類型に属するものと見ることができる。」
稼働能力 申請者がその稼働能力を活用する意思を有しており、かつ、活用しようとしても、実際に活用できる場がなければ、「利用し得る能力を活用していない」とは言えない。(名古屋高裁H9.8.8判決) 
不動産  厚生労働事務次官通知第3-3にいうところの「処分することができないか、又は著しく困難なもの」であって、処分等生活保護受給の要件として、活用を要する(法4条)資産には当たらない。 
■行政の広報義務・教示義務 ■行政の広報義務・教示義務
小倉北自殺事件(福岡地裁小倉支部H23.3.29)
生活保護は、憲法25条に定められた国民の基本的人権である生存権を保障し、要保護者の生命を守る制度であって、要保護状態にあるのに保護を受けられないと、その生命が危険にさらされることにもなるのであるから、他の行政手続にもまして、利用できる制度を利用できないことにならないように対処する義務がある。

生活保護制度を利用できるかについて相談する者に対し、その状況を把握した上で、利用できる制度の仕組みについて十分な説明をし、適切な助言を行う助言・教示義務、必要に応じて保護申請の意思の確認の措置を取る申請意思確認義務、申請を援助指導する申請援助義務(助言・確認・原助義務)が存する。
■返還 規定  生活保護法 第63条(費用返還義務)
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
生活保護法 第78条
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
説明 63条と収入認定:
不確実⇒収入認定
確実⇒63条
年金⇒63条
●63条と78条
63条〜不当利得的。
返還免除あり得る。
78条〜全額返還の取扱い
法第63条は、受給者の作為又は不作為により実施機関が錯誤に陥ったため扶助費の不当な支給行われた場合にて今日される条項ではなく、実施機関が、受給者に資力があることを認識しながら扶助費を支給した場合の事後調整についての規定。
受給者に不正受給の意図があったことの立証が困難な場合等については、返還額についての裁量が可能であることもあって、法第63条が適用されている。
法63条による場合:
@受給者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で届出又は申告をすみやかに行わなかったことについてやむを得ない理由が認められるとき。
A実施機関及び受給者が予想しなかったような収入があったことが事後になって判明したとき(判明したときに申告していればこれは、むしろ不当受給を解すべきではない)。
法78条による場合:
@届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらずそれに応じなかったとき
A届出又は申告に当たり明らかに作為を加えたとき
B届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき。
■世帯
「世帯員のうちに、稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をしない等保護の要件を欠く者がある」場合は、原則としてその世帯の全体が保護の要件を欠くものとして却下すべき。
例外的に「他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を要する状態にある場合」にはじめて世帯分離の措置を適用する余地が生じる。
■収入の認定