シンプラル法律事務所
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真の再生のために(個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP−トップ |
論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
借地・借家 | ||||||
■借地関係の終了 | ||||||
■借地関係の終了 | ● | ●借地関係の消滅が認められる場合 | ||||
(1)借地人自身が借地関係の消滅を欲している場合 (2)借地人に不都合な行為がある場合 (3)借地期間が満了した場合 |
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● | ●(1)(借地人が合意)の場合 | |||||
@合意解除 | ||||||
A借地人による借地契約の解消 | ||||||
B借地人による借地契約の解約 | ||||||
● | ●(2)(借地人に不都合な行為)の場合 | |||||
ex.地代不払い、土地の不当な利用、賃借権の無断譲渡ないし転貸、借地人の破産(正当事由必要) | ||||||
● | ●(3)(借地期間満了)の場合 | |||||
@普通借地権・既存借地権⇒地主に「正当の事由」が必要 | ||||||
A定期借地権・事業借地権⇒借地期間の満了により借地は終了。 正当事由の有無は問題とならない。 |
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■借地と相続 | ■借地と相続 | |||||
借地人が死亡⇒借地上の所有権は相続人のものとなり、それに伴って借地権も相続人に移転。 | ||||||
● | ●遺産分割前の借地関係 | |||||
● | 借地上の建物の所有権や借地権を含む被相続人の財産が、全共同相続人に帰属。 | |||||
各相続人の持分は、法定相続分を基本とする。 | ||||||
賃借権としての借地権の場合は、原則として地主の承諾または裁判所の許可がなければ、相続人以外の者に借地権を譲渡できない(民法612条、借地借家法19条)。 | ||||||
規定 | 民法 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 |
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借地借家法 第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可) 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。 |
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● | ●遺産分割協議後の借地関係と地代債務 | |||||
○ | 遺産分割の協議・調停または審判によって、借地上の建物の所有権や借地権が相続人の中の特定の1人または数人の者に最終的に帰属。 ⇒借地関係はこの者とのあいだに継続。 |
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○ | 被相続人の地代が残っている場合、他の相続人に対して少なくともそれぞれの相続分に応じた割合で請求できる。 | |||||
■借地上の建物の処分 | ■借地上の建物の処分 | |||||
● | ●借地権の譲渡・転貸 | |||||
借地上の建物の譲渡⇒建物とともに借地権の譲渡または転貸がなされたものとみなされる。 | ||||||
相続に関連して: 土地の賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有部分を譲り受けても、賃貸人は、民法第612条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である(最高裁昭和29.10.7)。 |
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借地上の建物賃貸と借地の転貸: 宅地の賃借人が借地の上に所有する建物を第三者に賃貸し、その借地をこれに使用させても、借地を転貸したことにはならない(大判昭和8.12.11)。 ← 借地人所有の建物が存在しているかぎり建物賃借人の敷地利用は借地人から独立しておこなわれるものではないとみることが可能。 |
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● | ●地主の承諾の必要 | |||||
賃借人がだれであるかは、賃貸人にとって、重要な利害関係がある。 ⇒賃借権の譲渡(または転貸)の際には賃貸人の承諾が必要(民法612条1項)。 |
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地主は、無断譲渡を理由に、譲渡人と地主との間の土地の賃貸借契約を解除できる(民法612条2項)。 | ||||||
● | ●名義書換料の提供 | |||||
借地権の譲渡または転貸に際して、地主が名義書換料もしくは承諾料の名目で一定の金員を請求する慣行⇒その支払を申出て地主の承諾を得る。 | ||||||
● | ●地主の承諾に変わる許可の裁判(借地法9条の2、借地借家法19条) | |||||
規定 | 借地借家法 第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可) 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。 2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。 3 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。 4 前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。 5 第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。 6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。 7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。 |
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○ | 借地上の建物の譲渡に伴って借地権を譲渡しなければならないときに地主の承諾が得られない場合には、借地権者の申立により、裁判所は地主が承諾を拒否しているのが正当かどうかを審理し、地主の拒否が不当であれば地主の承諾に代わる許可を与えることができる。 | |||||
借地権の残存期間、借地に関する従前の経緯、借地権の譲渡(または転貸)を必要とする事情その他一切の事情を考慮。 | ||||||
当事者間の利益の衡平をはかるために必要であると判断したときんは、借地権の譲渡を認める代わりに地代の値上げその他の借地条条件の変更を命じたり、または借地人から地主に一定の金銭を支払ったときに承諾に代わる許可の効力が生ずるという裁判をすることができる。 | ||||||
○ | 借地人がこの裁判の申立をした場合に、地主は裁判所の定める期間内にみずから借地上の建物および借地権を譲り受けたい旨の申立をすることができ、この申立があったとき、裁判所はその対価等を定めて地主への譲渡を命ずる。 ← 借地人にしてみれば、どうせ第三者に売るわけであり、買手が地主であってもかまわない。 |
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○ | 借地借家法19条の規定は、借地契約の更新を前提とする普通借地権のみならず、借地借家法によって新設された定期借地権(22条)、建物譲渡特約付借地権(23条)、事業用借地権(24条)、一時使用目的の借地権(25条)にも適用される。 | |||||
○ | 地主の承諾に代わる許可の裁判は、建物の譲渡前にする必要。 ⇒無断譲渡がなされ建物の引渡も終わってからでは、もはや許可の裁判の申立をすることはできない。 |
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借地借家法19条の規定により、裁判所に地主の承諾に代わる許可の裁判を申し立てる。 この場合、審理期間は平均2か月半。 譲渡許可が認められた事案では4カ月半。 |
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● | ●許可の裁判の制度と解除権の行使 | |||||
昭和41年改正で地主の承諾に代わる許可の裁判の申立という途が開かれた。 その場合、借地権の無断譲渡の場合の地主の解除権の行使にどう影響するか? |
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承諾に代わる許可の申立を怠って無断譲渡したことは A:それだけで背信性が首肯され解除の理由となる(東京高裁昭和55.8.12) B:背信性を認定する際の有力な材料となるが、他の要素も併せて判断される |
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この手続きが利用できる状況にあったのにあえて無断譲渡・転貸がなされたときは、原則的には解除が肯定される。 | ||||||
● | ●抵当権設定の場合 | |||||
抵当権設定については、民法612条により地主の承諾は不要。 | ||||||
● | ●競売の場合の承諾に代わる許可の裁判 | |||||
規定 | 借地借家法 第20条(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可) 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。 2 前条第二項から第六項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。 3 第一項の申立ては、建物の代金を支払った後二月以内に限り、することができる。 4 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十九条の規定は、同条に規定する期間内に第一項の申立てをした場合に準用する。 5 前各項の規定は、転借地権者から競売又は公売により建物を取得した第三者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第二項において準用する前条第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。 |
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○ | 競落人によるこの裁判の申立期間は、競売代価を支払った後2カ月以内。 ←地主との法律関係を長く不安定なものとする弊害を防ぐ趣旨。 |
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● | ●建物買取請求権の行使 | |||||
規定 | 借地借家法 第14条(第三者の建物買取請求権) 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。 |
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○ | but 買取請求に対して支払われるべき建物等の時価の中には、借地権の価格は含まれない。(最高裁所和35.12.20) ⇒買取価格は譲受人が買ったときの価格の数分の1という極めて低い価格になる。 |
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■原状回復義務 | ■原状回復義務 | |||||
規定 | 民法 第616条(使用貸借の規定の準用) 第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。 |
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民法 第598条(借主による収去) 借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。 |
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説明 | 借地・借家契約が終了したときは、賃借人は賃借物を原状に復して賃貸人に返還する義務がある。(民法616,598) | |||||
目的物の返還義務があることは賃貸借契約上の当然の義務であり、原状回復義務は賃借人が返還すべき物は借りた物自体であることが賃貸借の性質から当然のことであるから。 | ||||||
■建物買取請求権 | ■建物買取請求権 | |||||
規定 | 借地借家法 第13条(建物買取請求権) 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。 2 前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。 3 前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。 |
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借地借家法 第14条(第三者の建物買取請求権) 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。 |
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種類・根拠 | @更新がない場合(旧借地法4条2項、借地借家法13条) A土地賃借権の譲渡・転貸について地主の承諾が得られない場合(旧借地法10条、借地借家法14条) について、建物所有者である借地人又は無断譲受(転借)人が土地所有者に対し、建物等の買取請求権を有することを規定。 |
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← @借地人の負担、国家社会的損失 A借地人と賃貸人の利害の衡平を図り、かつ、国家社会の経済的損失を少なくする。 |
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事例 | 借地権設定者の承諾なしに建物が再築された場合もあり。 但し、裁判所は期限を許与することができる。 |
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合意解約 | 判例:否定 | |||||
賃貸借契約については、買取請求権放棄の意思表示があったものと解すべきとして、買取請求権を認めない判例(最高裁昭和39.3.31)。 but 意思解釈として疑問。 |
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債務不履行解除 | 借地人の賃料不払あるいは用法違反等の債務不履行により契約が解除あsれ、借地権が消滅した場合。 | |||||
判例:否定 「借地法4条2項の規定は誠実な借地人保護の規定であるから、借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には借地人は同条項による買取請求権を有しないものと解すべき」(最高裁昭和35.2.9) |
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破産の場合 | 借地人破産⇒地主は民法621条により解約の申入れをすることができる。 but この解約の申入れには正当事由を必要とする(最高裁昭和48.10.30)。 |
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⇒ 正当事由に基づく更新拒絶の場合に準じて買取請求権を認めるべき。 (裁判例) |
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■ | ■建物の時価 | |||||
●基準時 | ●基準時 | |||||
買取請求権を行使した時(最高裁昭和11.5.26)。 | ||||||
← 建物買取請求権は、一種の形成権であり、その行使により借地人又は第三者取得者と賃貸人との間に、その土地上の建物を買い取るという売買契約類似の効力が生じる。 |
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● | ●「建物の時価」 | |||||
○ | 裁判所は、買取代金を確定した上で判決をすべきであり、第三者が買取請求を主張し、代金の支払あるまで建物の引渡しを拒む抗弁を提出した事案について、代金額を確定しないで単に相当代金の提供と引換に明渡を命ずる判決は違法(大判昭9.6.15)。 | |||||
○ | ○建物自体の価格: | |||||
建物の新築と同時に買取請求⇒建築費相当額 | ||||||
その後になされた場合⇒買取請求当時にその建物と同様の建物と新築する価格から、その建物が使用に耐えない状態に至る総耐用年数に対し相対的に考えられる実際の経過年数に応じた減損価格を、控除した純建物価格によることが妥当。 | ||||||
○ | ○借地権価格 | |||||
借地権価格そのものは含まれない(判例) ← @借地権が消滅した場合、A建物取得者が借地権を取得できない場合に、買取請求権が発生。 |
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○ | ○場所的利益 | |||||
最高裁昭和35.12.20 「建物の時価とは建物が現存するままの状態における価格であり、それは該建物の敷地の借地権そのものの価格は加算すべきでないが、該建物の存在する場所的環境については参酌すべきである。なぜなら、特定の建物が、特定の場所に存在するということは、建物の存在自体から該建物の所有者が享受する事実上の利益であり、また建物の存在する場所的環境を考慮に入れて該建物の取引を行うことは一般取引における通念である」 ⇒ 建物の場所的利益が含まれる。 |
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■借地人の滞納 | ■借地人の滞納 | |||||
優先権 | ● | ●先取特権 | ||||
規定 | 民法 第313条(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲) 土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。 2 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。 |
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説明 | 土地の賃貸人は、地代債権や賃貸借から生じる損害賠償請求権について、借地または借地上の建物に備え付けた動産(ex.機械・机・タンス・金庫・書架・陳列棚等)から他の一般債権者より先に支払ってもらえる。 | |||||
● | ●借地借家法上の先取特権 | |||||
規定 | 借地借家法 第12条(借地権設定者の先取特権) 借地権設定者は、弁済期の到来した最後の二年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。 2 前項の先取特権は、地上権又は土地の賃貸借の登記をすることによって、その効力を保存する。 3 第一項の先取特権は、他の権利に対して優先する効力を有する。ただし、共益費用、不動産保存及び不動産工事の先取特権並びに地上権又は土地の賃貸借の登記より前に登記された質権及び抵当権には後れる。 4 前三項の規定は、転借地権者がその土地において所有する建物について準用する。 |
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説明 | 借地権または地上権が登記されている場合には、地主は、借地人の所有する借地上の建物について弁済期にある地代債権の最後の2年分のために先取特権を有する。 | |||||
建物の保存や工事の先取特権または賃借権や地上権の登記前に登記した抵当権などには優先することができない。 | ||||||
土地賃借権や地上権の登記がされることは少ない⇒実際には保護を受ける場合は多くない。 | ||||||
● | 以上、地主は、借地人の他の債権者が借地上に備え付けられた借地人所有の動産または建物を差し押さえた場合、地代債権で配当加入を申し込むなる、別の物に競売手続を進めるなどして、競売代金の中から、他の一般債権に優先して地代を払ってもらうことができる。 | |||||
取立 | ● | ●支払督促 | ||||
支払督促⇒借地人に異議(@支払督促についての異議、A仮執行宣言を記載した支払督促への異議)の申立なし⇒確定判決と同一の効力 | ||||||
借地人が異議申立⇒訴訟に移行 | ||||||
● | ●訴訟 | |||||
● | ●裁判上の和解・調停申立⇒和解調書・調停調書 | |||||
規定 | 民訴法 第267条(和解調書等の効力) 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。 |
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第16条(調停の成立・効力) 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。 |
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● | ●公正証書 | |||||
「借地人は、地代を毎月末までに支払うものとする。その期限までに支払わない場合には、借地人は、地主から直ちに強制執行を受けても異議がない旨を受諾した」(執行受諾文言)」 | ||||||
契約解除 | ● | ●地主が借地の明渡を受ける方法 | ||||
@期間満了時に正当事由による借地期間の更新拒絶(借地借家法6条) A契約の合意解除(合意解約) B契約の解除 |
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● | ●契約解除 | |||||
規定 | 民法 第541条(履行遅滞等による解除権) 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。 |
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○ | 相当の猶予期間(普通5日ないし1週間くらい)を与えて催告。 | |||||
○ | ○過大催告: | |||||
@催告が著しく過大⇒特別の事情がない限り、約定賃料額の提供を受けても賃貸人はこれを受領する医師はない⇒催告は無効 ex.約定賃料の5.6倍、延滞賃料3150円に対して1万9770円 |
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A著しく過大かは問題とせず、催告額以下の金額の提供があったとしても絶対に受領しないという態度が極めて明瞭⇒受領の意思がないものとして催告は無効 | ||||||
B多額に失しても、債権者がその全額の提供がなければ、受領を拒絶する意思が明確とは認められない⇒未払賃料額を包含する限度で催告は有効 | ||||||
○ | ○相当の期間 | |||||
相当の期間とは、債務の履行を準備し、これを履行するために要する期間をいい、相当であるかどうかは履行すべき債務の性質その他客観的事情によって定めるべき。 債務者の病気・旅行などの主観的事情は考慮されない。 |
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短すぎる催告も無効ではなく、催告後相当な期間が経過したら、解除権は発生する。 | ||||||
催告期間が示されていない場合でも、催告の時から相当な期間が経過すれば、解除権が発生する。 | ||||||
○ | ○二重の催告は不要 | |||||
@債務の履行の催告と、A利己がない場合の解除のための再度の催告の二重の催告は不要。 | ||||||
「何日までの間に支払がない場合には、改めて催告することなく賃貸借契約を解除いたします」でOK。 | ||||||
○ | ○無催告でもいい場合 | |||||
厳しく催告されたら払うが、すぐに滞納を繰り返すような悪質な滞納の場合には、信頼関係が破壊されたとみることができる⇒催告なしに即時に解除可能 | ||||||
● | 債務不履行による賃借権の消滅の場合、借地人の建物買取請求権を認めていない。 | |||||
■民法612条と名義書換料 | ■民法612条と名義書換料 | |||||
規定 | 民法 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 |
|||||
借地借家法 第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可) 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。 2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。 3 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。 4 前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。 5 第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。 6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。 7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。 |
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名義書換料の意義 | 借地権のうち賃借権を他人に他人に譲渡・転貸するときは賃貸人(地主)の承諾を受けなくてはならない。(民法612条1項) 地主の承諾を受けずに無断で譲渡・転貸すると、借地契約を解除されることがある(同条2項)。 ⇒ 賃借権を他に譲渡・転貸する場合には、必ず事前に地主の承諾を受けなくてはならない。 |
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以上の承諾の際に借地人側から地主に対して支払われる金銭が「名義書換料」 | ||||||
借地権が地上権である場合は、譲渡・転貸に地主の承諾はいらない⇒名義書換料も必要ない。 | ||||||
金額 | 借地権価格(更地価格に借地権割合を乗じた額(賃借権の譲渡価格にほぼ近い)の10%程度が承諾料割合とされている。) | |||||
譲受人が当該借地上の建物の賃借人である場合、承諾料割合を乗ずる基礎価格は、借地権価格から借家権価格を控除した額。 | ||||||
相続の場合 | 取得時効や相続の場合は、「譲渡」には当たらない。 ←当事者の意思とは無関係。 |
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土地賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借人の共有持分を譲り受けても、賃貸人は、本条(民法612条)により賃貸借契約を解除できない。(最高裁昭和29.10.7) | ||||||
■定期借地権 | ■定期借地権 | |||||
一般定期借地権 | 規定 | 借地借家法 第22条(定期借地権) 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。 |
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期間 | 期間が50年以上と長期にわたる借地権。 | |||||
3つの特約 | @更新がないこと。 | |||||
A建物の築造による期間の延長がないこと。 | ||||||
B13条(借地借家法)の建物の買取請求をしないこと | ||||||
書面 | 以上の特約は公正証書等の書面によってしなければならない。 | |||||
登記 | 地上権であれ借地権であれ、一般定期借地権の設定者(地主)が地上権もしくは賃借権の登記の際に、「借地借家法22条の特約」という形での特約の登記ができる。 | |||||
事業用定期借地権 | 規定 | 借地借家法 第23条(事業用定期借地権等) 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。 2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。 3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。 |
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建物 | 専ら事業の用に供する建物 | |||||
期間 | @30年以上50年未満 A10年以上30年未満 |
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特約 | 一般定期借地権と同じ | |||||
書面 | 必ず公正証書によらなければならない(法23条3項) | |||||
■短期賃貸借制度の廃止 | ■短期賃貸借制度の廃止 | |||||
趣旨 | 抵当権の実行妨害は不良債権処理の足かせ⇒平成15年改正により、短期賃貸借制度の廃止。 | |||||
内容 | 旧395条は削除され、賃貸借は抵当権と順位関係に立つ。 ⇒ 抵当権の設定登記後に設定された賃貸借は、地上権などと同様に原則として抵当権に対抗できない。 |
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2つの類型の建物賃貸借の賃借人に限り、競売による買受の時から6ヵ月の明渡猶予期間が与えられる。(法395@) @競売手続開始前から使用または収益をしていいた賃借人 A強制管理または担保不動産収益執行の管理人が、競売手続開始後になした賃貸借により使用または収益をなすもの。 |
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明渡しの猶予は賃貸借の承継ではない ⇒ 買受人は敷金の返還義務を承継しない。 (明渡しまでの利用に対しては賃料相当額を不当利得して請求できる。) 賃借人が買受人に対して負う賃料相当の支払につき、買受人からの催告に対して相当の期間内に履行しなかったときは、買受人は直ちに明渡しを請求できる。(法395A) |
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■抵当権者の同意制度 | ■抵当権者の同意制度 | |||||
趣旨 | 抵当権に不利益とならない賃貸借について、抵当権実行後の存続を保証するために、新たな制度が導入された。 | |||||
内容 | 登記した賃貸借(建物のほか土地の賃貸借を含む)は、先に登記を経由しているすべての抵当権者他賃貸借の存続に同意し、その同意を登記したときは、同意をした抵当権者に対する対抗力を獲得する。(法387@) 抵当権者が同意をなすには、その抵当権を目的とする権利を有する者(転抵当権者等)その他、抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。(法387A) |
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同意の対象となる賃貸借の登記: 存続期間や賃料等が登記される。敷金についても登記できるよう不動産登記法が改正された。(不動産登記法81条) 借地借家法10条31条は「登記」に該当しない。 |
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■敷金 | ■敷金 | |||||
建物譲渡の場合の返還請求の相手方 | 賃貸借終了前 | 賃貸人が交代した場合(競落の場合も任意譲渡の場合も)、敷金は当然新家主Cに引き継がれる。(最高裁昭和44.7.17) その額は、もとの家主Aに対する延滞賃料があればそれを差し引いた額。 |
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賃借人のメリット: @旧家主からいったん敷金を返してもらって新たに新家主に差し入れるという手間が省ける。 A旧家主は家屋を譲渡したあと無視力になってしまう危険もあるが、新家主には少なくとも当該建物があるから、敷金を返してもらうのも新家主からの方が確実。 |
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賃貸借終了後 | 賃貸借契約が終了したのちに家屋が譲渡された場合には、敷金は新所有者に当然には承継されない。(最高裁昭和48.2.2) たとえ建物譲渡の当事者(AC)間で敷金の承継を合意しても、賃借人Bの承諾なしには承継されない。 ← 敷金は「賃貸借契約に付随従属する」ものであるから、「賃貸借契約に関係ない第三者が取得することがあるかもしれない債権まで」担保するものでない。 |
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賃借権の移転の場合 | 「敷金契約」が「賃貸借に従たる契約」ではあるが賃貸借とは「別個の契約」であるとの理解の上で、特段の事情のない限り、敷金に関するAの権利義務関係はBに承継されない。 ← 将来賃借人Bが新たに負担することになる債務についてまでAの交付した敷金が担保するのでは、敷金交付者Aに予期に反する不利益を被らせることになる。 「特段の事情」とは、A(旧賃借人)Y(土地所有者)間で敷金を新地借人の債務不履行の担保とすることを合意した場合や、A(旧賃借人)がB(新賃借人)に敷金返還請求権を譲渡したような場合。 |
★更新拒絶等 | |||
規定 | 借地借家法 第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件) 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。 |
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借地借家法 第26条(建物賃貸借契約の更新等) 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。 3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。 |
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■ | ■1 本条の趣旨(p214) | ||
● | 賃貸借契約の終了事由として正当事由制度を維持するとともに、 正当事由の判断基準として、判断基準を列挙することで、正当事由の有無の判断を容易にしようとしたもの。 |
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● | 正当事由の有無は、 @「当事者双方の私用の必要性」を主たる判断基準としたうえで、 A「賃貸借に関する従前の経過」 B「建物の利用状況」 C「建物の現況」 D「立退料等の提供」 を総合的に考慮して決定される。 |
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● | 「双方の使用の必要性」「のほか」 〜 あくまでも「双方の私用の必要性」が考慮されるべき主たる事情で、その他の基準は従たる要素にとどまることを明確にした。 |
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建物の有効利用を理由とする明渡請求に傾きがちな 「建物の存する地域の状況」 というファクターを削除。 |
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「その他一切の事情」を削除。 〜 立法者は、土地の高度利用を理由とする明け渡しに道を開くとして「地域の状況」を正当事由の判断基準から削除ことと関連して、 「その他の事情」が「地域の状況」を意味するようになっていくことを回避したかった。 「その他の事情」の削除は、平成3年の改正が決して正当事由の緩和につながらないとする立法者の強い意思を示すもの。 |
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● | 事業者間のサブリース契約も、その性質は建物賃貸借⇒本条が適用される。 | ||
■ | ■2 第26条第1項の通知(p215) | ||
「第26条第1項の通知」: 期間の定めのある賃貸借において、当事者が期間満了の1年前から6カ月前までの間に相手方に対して行う、更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知。 |
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この通知をしない⇒以後は期間の定めのない賃貸借として従前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされる(26条1項)。 | |||
■ | ■3 期間の定めのない賃貸借(p216) | ||
期間の定めなのない賃貸借(29条により1年未満の定めのあるものも含む)については、 解約の申入れは27条1項の規定により行われる。 この場合、建物賃貸借は、解約申入れの日から6カ月を経過すると終了する。 賃貸にはこの場合も正当事由を備えていることが必要。 |
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■ | ■4 転借人の事情(p216) | ||
本条は、借家契約終了の際の正当事由の判断に転借人の事情を斟酌すべきことを定める。 | |||
■ | ■5 「建物の使用を必要とする事情」 (p216) | ||
□ | □(1) 居住の必要性 | ||
□ | □(2) 営業の必要性 | ||
家主が当該家屋で営業することの必要性は、正当事由の有無の判断に際して考慮されるべき重要なファクターの1つ。 but 営業の必要性といっても、各種の態様(開業・継続・拡張)、原因(ex.賃貸人が病気等)があり、これを一概に論じることはできないが、 一般論としては、必要性の程度に差異がある場合には、その他の事情を考慮することなく正当事由の有無が判断されるという点で居住の必要性の場合と異ならない。 |
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営業の必要性といっても、最近では当該建物をビルに立て替えて有効利用したいという理由で明け渡しを求める新しいタイプのものが多くなっている。 これについては、それだけの理由で正当事由が肯定されることは少ないが、 仮に正当事由が肯定されるケースであっても、かなり高額の立退料の提供が必要とされている。 |
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居住の必要性>営業の必要性 とされている。 |
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□ | □(3) 第三者の使用の必要性 | ||
□ | □(4) 建物売却の必要性 | ||
□ | □(5) 借地明渡しの必要性 | ||
□ | □(6) その他建物使用の必要性に関連する附随的要素 | ||
■ | ■6 「建物使用の必要性」(p219) | ||
「建物使用の必要性」が正当事由の主たる判断要素であり、それ以外の事由は、正当事由の補完事由にすぎない。 ⇒「建物の現況」(建物の老朽化)や立退料の提供のみで正当事由を具備できるという可能性を否定。 |
|||
■ | ■7 「賃貸借に関する従前の経過」 (p219) | ||
□ | □(1) | ||
契約期間中に賃貸人・賃借人が信頼関係に違背する行為を行った⇒それぞれ不利なファクターとして考慮される。 | |||
賃貸人の不信行為が悪質⇒正当事由否定の強いファクターになる(誠実な賃借人を事実上の営業廃止に追い込む悪質な妨害行為があった事例(東京地裁昭和52.9.27))。 | |||
□ | □(2) | ||
設定以来の期間の長さ⇒借家人に有利な事情の1つになる。 | |||
■ | ■8 「建物の利用状況」 (p221) | ||
厳密な意味では、 賃借人が契約目的に従って建物を適法かつ有効に使用収益しているかどうか、 借家人が他に建物を所有ないし賃借していて当該建物をあまり利用していないかどうか。 〜 双方当事者の使用の必要性に含まれるもので、これだけでは、正当事由の独立の判断基準として規定した意味がない。 |
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■ | ■9 「建物の現況」 (p222) | ||
建物自体の物理的状況、すなわち、建替えの必要性が生ずるに至っていること。 具体的には、 @建物が老朽化しているという状況(建物を近い将来取り壊さないと危険であるかどうか、あるいは大修繕をするためにどの程度の費用を要するか等)はもとより、 A社会的・経済的効用を失っている場合 B建物が土地の利用関係から存立を続けられなくなるという事情 もこれに含まれる。 |
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● | ●裁判規範 | ||
建物が朽廃に迫っている⇒倒壊の危険、衛生の悪さ等の事情があれば、賃貸人に自己使用の必要性がなくても直ちに正当事由が認められる。 but 老朽化に至った原因が、賃貸人の管理運営の不十分さにある⇒正当事由は否定。 |
|||
単に老朽に近いという場合⇒借家人側の使用の必要性やその他の事情(家屋の耐用年数がきていること等)が斟酌。 遅くとも数年後には老朽に至り、取壊しを免れない状況に達することが予想⇒賃貸人が本件建物を取り壊したうえ、新建物を有効利用する意思を有するときには立退料の補完によって正当事由が具備。 老朽化している建物の状況に照らし、改装のために本件賃貸借契約を解除することが合理性ないし社会的相当性を欠くということまではできないが、賃借人の本件建物使用の必要性は賃貸人のそれより大きいとして、解約申入れの正当事由は認められない。 |
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朽廃にやや遠いという場合のうち、当事者間に再利用契約がある場合⇒正当事由が認められている。 ここでは、賃借人が営業をしていた場合などに、その間の営業利益の喪失を立退料で補完できるかということが問題。 |
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再利用契約なし⇒賃貸人は、賃貸人は、取壊し・新築の必要性のほかに自己使用の必要性を主張・立証しなければならない。 賃貸人の正当事由が認められるのは、 @賃貸人の使用の必要性が優越する場合、 A賃貸人の使用の必要性がそれ自体では賃借人の私用の必要性に劣る場合であっても、その他の事情(立退料の提供がある場合が典型であるが、新築についての具体的計画や資金の見通しなども考慮される)の存在する場合。 ex.朽廃の程度が著しくない建物の賃貸借について、金1700万円の移転料の支払を明渡条件として正当事由を肯定した事例 |
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建物の高度再利用を目的とするもの(たとえば、賃貸人が事業の拡張のためにビル建築を理由にさほど朽廃していない建物の明渡しを求めてきた場合)については、高額の立退料提供を補強条件として正当事由を広く認容する方向。 but 建替え計画があっても、これを実現する能力が賃貸人になし⇒正当事由は認められない。 |
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「建物の現況」のなかに、近隣と比較して土地が有効に利用されていないため、収益が極めて低い場合(近隣はビルが立ち並んでいるのに、当該建物は木造二階建てで賃料も相当に低い)を含める見解 vs. 「地域の状況」を判断基準から削除した趣旨からして疑問。 |
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■ | ■10(p224) | ||
■ | ■11 「建物の明渡しの条件」 「建物の明渡しと引換えに」 | ||
「建物の明渡しの条件」とは、 立退料が明渡しに優先して提供されなくてはならないということであり、 執行法上は立退料の提供が執行文付与の要件となる。 |
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「建物の明渡しと引換えに」とは、 立退料を受け取ることと家屋明渡しが同時履行の関係にあるということであり、 執行法上は財産上の給付の提供(立退料の提供)が執行開始の要件になるということ(民執法31条)。 |
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■ | ■12 「財産上の給付」 | ||
代替家屋の提供も含まれるが、 通常は金銭(立退料)。 |
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立退料の内容:移転経費、借家権価格、営業補償など | |||
移転経費:引越しに要する費用および移転通知費用などの実費 借家権価格:地価の高騰等に伴う建物の資産価値の増加分について、借家人に配分されるべきもの 〜資産価値の増加が賃貸人側の努力のみによるものではなく、借家人の貢献によることも少なくないとして両者で適正に配分するのが合理的であるという考え方。 営業補償:借家からの移転により営業を廃止あるいは一時的に停止せざるえなくなることにより営業利益の損失を補償 その他:借家人が移転によって長年培ってきた地縁的なつながりを失うことによる精神的な苦痛も損失として考慮されうる。 |
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立退料の額: 当事者間の合意あり⇒それによる。 合意なし⇒双方の必要性の程度等を斟酌しながらケース・バイ・ケースで決めていく。 賃貸人への明渡しの必要性が高い⇒立退料も額は低くなる。 借家人が当該建物を営業用として利用⇒営業利益の損失分が含まれる⇒提供される立退料の額も高くなる。 |
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■ | ■13 申出の時期および方法(p225) | ||
■ | ■14(p225) | ||
★解約による建物賃貸借の終了 | |||
規定 | 借地借家法 第27条(解約による建物賃貸借の終了) 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。 2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。 |
||
民法 第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ) 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。 一 土地の賃貸借 一年 二 建物の賃貸借 三箇月 三 動産及び貸席の賃貸借 一日 2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。 |
|||
■ | ■1 本条の趣旨 | ||
契約で存続期間を定めなかった場合の建物賃貸借について、賃貸人からの解約申入れによって建物賃貸借を終了させる場合の「解約申入期間」を伸長する旨の規定。 | |||
■ | ■2 | ||
建物賃貸人からの解約申入れの場合に適用される。 | |||
■ | ■3 「期間の定めがない」普通の建物賃貸借に適用 | ||
□ | □(1) 期間の定めがない賃貸借 | ||
@当事者の合意による場合 A法定更新後の賃貸借の場合(26条1項但書) B1年未満の期間を定めた普通の建物賃貸借の場合(29条) に生じる。 |
|||
■ | ■4 解約の申入れ:将来に向かって賃貸借を終了させる意思表示 | ||
□ | □(1) | ||
□ | □(2) 正当事由が備わらなければ効力を生じない | ||
● | ●判例 | ||
正当事由の存在は解約申入れの要件 ⇒解約申入れ時に正当事由が存在していれば足り、解約申し入れ後の事情の変動によって、正当事由が存在しなくなったとしても、いったん有効になされた解約申入れの正当性は失われない。 |
|||
解約申入れ時には | |||
★地代・借賃増減額請求権) | |||
権利 | 地代・借賃増減額請求権(借地借家法11条、32条) | ||
規定 | 借地借家法 第11条(地代等増減請求権) 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。 2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。 |
||
借地借家法 第32条(借賃増減請求権) 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。 2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。 |
|||
訴訟物 | 賃量増額請求権(借地借家11@、32@)は形成権であって、訴訟形態としては、形成権j行使によって増減額された賃料の確認を求めるものとなる(最高裁昭和33.9.;18)。 | ||
訴訟物については、 A:増減額の効果が発生した時点の賃料相当額とする見解 B:賃料が増減額された日から口頭弁論終結時までの間の賃料額 |
|||
請求の趣旨 | 原告と被告との間の別紙物件目録記載の土地についての賃貸借契約の賃料は平成○年○月○日以降1か月○円であることを確認する。 | ||
よって書き | よって、原告は、被告に対し、本件土地の賃料が平成○年○月○日以降1か月○万円であることの確認を求める。 | ||
請求原因 | @土地又は建物を目的とする賃貸借契約の成立 A@において建物所有を目的とするとの合意(目的物が土地の場合) B@に基づく引渡 CEの賃料額が相当になったこと D賃料増減額の意思表示(及びその到達日) E増減額後の賃料の額 F賃料額に争いがあること |
||
要件 | 地主が地代の増額(または借地人が減額)請求をすることが出来るための要件 @その地代が諸事情の変化による不相当となったことと A当事者間に増額しない旨の特約がないこと |
||
● | 地代が「不相当」になった: 増額請求の場合 @土地に対する税金が高くなったことにより、 A土地の価格が上がる等経済事情の変動があったことにより B付近の類似の土地の地代に比べて、低額に過ぎ、公平の観念からみて相当でなくなったこと C既存地代で当事者を拘束することが衡平に反すること |
||
相当期間の経過は、地代増・減額請求権が発生するための独立の要件ではなく、不相当であるといえるかの判断に際して考慮される1つの要素にすぎない。 | |||
「不相当」の諸判断要素: 「不相当」となったといえるためには、従来の地代額が、客観的に低すぎる事だけでなく当該具体的事情に照らして地代をそのままにしておくことが衡平に適しないという状況が必要。 @公租公課の増大 A土地の価格が上がったこと B物価指数、国民所得、通貨供給量、賃金指数などの変動 C近傍の類似の土地の地代と比べて安すぎること 〜 ただ名目的に地代額を比べるのでは足りず、これを、契約の期間及び内容、土地の位置及び地形、道路との関係、権利金などの有無と多寡などから計量的に補正し比準地代を求めこれと比べなければならない。 裁判所は、当該借地関係に固有な主観的事情をも含めた特殊的事情の有無、その変化をも考慮に入れて、当該地代が本当に不相当であるか、いくらをもって相当地代額とするかの判断をする。 |
|||
● | ●増額しない旨の特約があるとき | ||
とくに不増額の期間がかなり長期とされているような場合において、その間に特約当時の当事者の予測を大きくこえる急激かつ甚大な事情の変化があって、特約の拘束力をそのまま認め従前の地代を維持するのが著しく公平に反するとみられるときには、「事情変更の原則」により不増額特約自体が効力を失ったとして、増額請求が認められてよい。 | |||
● | ●減額請求の場合 | ||
減額請求の場合: @公租公課の減少 A地価の低下 B当該地代が近隣地代に比べ著しく高いこと C地主が、土地の維持・改良を怠ったこと、地域の経済的環境の変化などによって、土地の利便性や収益性が下がるなどした場合にも減額が認められる。 一定期間減額請求しない旨の特約がなされていても、借地人は、減額事由が存在すれば、地代減額請求をすることができる。 |
|||
地代の減額請求をしたが、適正地代額について地主との間に話合いがまとまらない場合には、裁判などによって相当地代が確定するまでは、地主は、自分が相当であると信ずる額の支払を借地人に求めることができる。⇒借地人としては、求められた額を支払っておく必要がある。 裁判などによって相当地代額(適正地代額)が確定するまでの間において、借地人が地主の主張する相当額の弁済をしないときには、履行遅滞となり、債務不履行責任を追及できうる。場合によっては、契約を解除し、土地の明渡を求めることができることにもなり得る。 支払を受けた額が(客観的に)相当地代額(適正地代額)を超えていた場合には、その超過額に受領の時から年1割の利息を付して返還してもらうことができる。 |
|||
裁判による算定法 | ● | ●スライド方式 | |
基本的には従前の賃料にその後の賃料変動率を乗じて改定試算賃料を求めるもの。 | |||
鑑定資料: (1)従前の賃料額と(2)変動指数 |
|||
(1)従前の賃料: 通常最終的に合意に達した賃料をいい、実際の算定においては、 @この支払賃料をそのまま採用する場合と、 A支払賃料から必要諸経費等を控除した純賃料部分にスライド指数を乗じて求めた額に改定時の必要諸経費等を加算する場合 |
|||
(2)変動指数: @消費者物価指数などを採用する例も少なくないが、 A消費者物価指数(全国・総合)に0.8、卸売物価指数(投資財)に0.2の各ウェイトを乗じて加重平均した数値と、当該地域における地価変動率とを比較考量した指数を採用するのも1つの方法 |
|||
算定方式の採用にあたりいかなる資料を採用するかは、最終的には裁判所の職責。 数次の改定がなされている場合、どの時点の賃料を従前賃料として採用するか、権利金や敷金等の額およびその性質、あるいは必要諸経費等の種類及び額等の判断、また、賃料変動指数としていかなる指数(消費者物価指数、卸売物価指数、両者の複合指数、地価又は建築費指数等)を採用するかは、一時的に鑑定人が決定するが、最終的には裁判所が決定する。 |
|||
● | ●利回り法(積算賃料) | ||
底地価格(土地の更地価格から借地権価格相当額を控除したもの)に期待利回りを乗じて求めた純賃料に、必要経費等として公租公課および場合によっては管理費を加算した額を持って、当該試算賃料とするもの。 | |||
一種の積算法であり、これによって求められた賃料を「積算賃料」ということができる。 | |||
この場合の期待利回りは、一般の市場金利、当該地域における継続(純)賃料利回り(継続地代の底地価格に対する割合をいう。都市部における住宅地の場合0.2〜1.5%程度が一般)、ならびに当該借地契約における従前の賃料利回り等を比較考量して定める。 | |||
● | ●差額配分法(差額配分賃料) | ||
当該宅地の経済価値に即応した適正な賃料と実際支払賃料との差額を適正に配分した額を従前の支払賃料に加減した額をもって、当該試算賃料(「差額配分賃料」という)とするもの。 | |||
当該宅地の経済価値に即応した適正な賃料は、基礎価格に新規賃料利回りを乗じた額に必要諸経費等を加算した積算賃料および批準賃料等により求めた正常賃料。 | |||
最も難しい点は、経済価値に即応した適正賃料と実際支払賃料との差額を地主と借地人にどのように配分するか。 従前の賃料決定後改定時までの経過期間、差額発生の原因、差額の程度、比隣賃料との均衡、更新料等の一時金の授受の有無などを総合的に比較考量して、それぞれの負担割合を決める。 地主または借地人のいずれか一方により多く負担させるべき特別の理由なし→便宜上その差額を折半。 |
|||
● | ●賃貸事例比較法(比準賃料) | ||
近隣における借地の支払地代を調べて、これと比較する方法。 | |||
なるべく数多くの賃貸事例を収集し、その中から標準的を思われる数例について、地代決定について特殊事情の有無による補正、地代決定時による時点修正、地域要因および個別的要因の比較を行い、さらに当該賃貸借契約の内容等による補正を行って、当対試算賃料を求めるもの。 | |||
結果の妥当性の担保がない⇒比準賃料は一応の目安になるが、裁判実務ではあまり採用されていない。 | |||
● | ●適正な地代と相当な地代 | ||
各手法はいずれも長短あり。 ⇒実際の鑑定評価においては、これらのうち複数の方式を採用し、それによって求められた各試算賃料を比較検討して最終的な評価額を決定。 but これによって求められた継続地代は、経済的な側面からは適正な地代であるが、直ちにそれが借地借家法11条にいう相当な地代になるわけではない。 「相当な地代」というためには、い所受の経済的に適正な地代を基礎にして、当該賃貸借の経緯、事情、契約の内容、その他契約当事者の主観的事情等が考慮される必要があり、最終的には裁判所の判断を待つことになる。 |
|||
● | ●事例 | ||
借地:100平方メートル 土地価格:3000万円 借地権割合60% 従前の土地:月額2万10000円 公租公課:従前地代決定時6万円 改定時12万円 |
|||
○利回り法: 更地価格×(1−借地権割合)×継続地代利回り+必要諸経費=積算賃料 3000万円×(1−0.6)×0.02+12万円=36万円(月額3万円) |
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○スライド法: (従前の支払賃料ー従前賃料決定時の必要経費等)×スライド指数+改定時の必要諸経費等=スライド賃料 (2万1000円×12か月ー6万円)×102/100+12万円=31万5800円(月額2万6300円) スライド指数: 従前賃料決定時 改定時 消費者物価指数 102.6 103.1 卸売物価(投資財)指数 101.0 101.5 地価変動率 112.0 115.3 とした場合のスライド指数は {(103×0.8+101.5×0.2)/(102.6×0.8+101.0×0.2)+115.3/112.0}×1/2=1.02(相加平均の場合) 地価変動率としては、当該地域における公示価格等の変動率を採用すると良い |
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○差額配分法 実際支払い賃料+(経済価値に即応した適正な賃料ー実際支払賃料)×配分率=差額配分賃料=差額配分賃料 @経済価値に即応した適正な賃料: 3000万円×(1−0.6)×0.04+12万円=60万円 A実際支払賃料: 2万1000円×12か月=25万2000円 B差額: @-A=60万円ー25万2000円=34万8000円 C差額配分の賃料の改定(差額折半の場合) 25万2000円+34万8000円×1/2=42万6000円 |
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○賃貸事例比較法 比隣地代×事情補正×時点修正×地域要因比較×個別要因比較×契約条件等補正=比準賃料 例えば、特別な事情なく、3年前に改定された近隣地域内の宅地の地代(1u当たり月額300円)で、当該土地は形状等においてやや劣り、かつ、当該契約は増改築禁止の特約がある場合 300円/月×100/100×105/100×100/100×92/100×95/100=275万円 比準賃料=275円×100u=2万7500円 |
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継続地代の決定: 積算賃料:3万円、スライド賃料2万6300円、差額配分賃料3万5500円、比準賃料2万7500円 いずれもやや開差があるが比較衡量した結果、各資産試算賃料の中庸かつ適正と思料される積算賃料およびスライド賃料のほぼ相加平均額2万8000円をもって、適正な継続地代と決定。 |
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手続 | ●地代・借賃増減請求事件の調停の前置(民事調停法24条の2) | ||
規定 | 民事調停法 第24条の2(地代借賃増減請求事件の調停の前置) 借地借家法(平成三年法律第九十号)第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。 2 前項の事件について調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。 |
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民事調停法 第24条の3(地代借賃増減調停事件について調停委員会が定める調停条項) 前条第一項の請求に係る調停事件については、調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意(当該調停事件に係る調停の申立ての後にされたものに限る。)があるときは、申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。 2 前項の調停条項を調書に記載したときは、調停が成立したものとみなし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。 |
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@交渉 A民事調停 B裁判 |
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受領拒絶の場合 | 供託(民法494条、495条) | ||
規定 | 民法 第494条(供託) 債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。 |
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民法 第495条(供託の方法) 前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。 2 供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。 3 前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。 |