シンプラル法律事務所
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論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
新版 商法総則・商行為法(有斐閣双書) | ||
★★第1編 序説 | ||
★★第2編 商法総則 | ||
★★第3編 商行為 | ||
★第1章 商行為の意義と種類 | ||
★第2章 商行為の通則 | ||
☆T 商行為一般に関する特則 | ||
◆ | ◆155 商事時効 | |
当事者の少なくとも一方のために商行為たる行為によって生じたことが必要であるが、それで足りる。 | ||
直接商行為によらなくても、それと同一視される商事契約の解除による原状回復請求権、不履行による損害賠償請求権にも適用される。 | ||
判例: 非訟人である保証人の求償権について、保証の委託行為が主債務者にとって商行為であった場合 株式払込金保管照明をした銀行が商法189条2項によって負担する債務 についても、商事時効が適用。 |
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B | ||
法定利率 | 規定 | 第514条(商事法定利率) 商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。 |
要件 | 債権者・債務者の一方のために商行為たる行為によって生ずることは必要であるが、それで足りる。(最高裁昭和30.9.8) | |
「商行為によって生じた債務」とは、 直接商行為にらないでも、それと同一性を有する債務、たとえば債務不履行による損害賠償債務(最高裁昭和47.5.25)や契約の解除による原状回復債務(最高裁昭和30.9.8)等も含まれるが、 自動車損害賠償保障法16条1項による被害者の保険会社に対する直接の損害賠償請求権は、保険金請求権の変形ないしそれに準ずる権利ではないから本条の「商行為による債務」には該当しない。(最高裁昭和57.1.19) |
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商行為 | 絶対的商行為 | 営業として行われると否とにかかわらず、個々の行為そのものの客観的性質によって商行為とされるもの(501条) |
第501条(絶対的商行為) 次に掲げる行為は、商行為とする。 一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 三 取引所においてする取引 四 手形その他の商業証券に関する行為 |
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営業的商行為 | 営業として行われるときにのみ商行為とされるもの(502条) | |
第502条(営業的商行為) 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。 一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為 二 他人のためにする製造又は加工に関する行為 三 電気又はガスの供給に関する行為 四 運送に関する行為 五 作業又は労務の請負 六 出版、印刷又は撮影に関する行為 七 客の来集を目的とする場屋における取引 八 両替その他の銀行取引 九 保険 十 寄託の引受け 十一 仲立ち又は取次ぎに関する行為 十二 商行為の代理の引受け 十三 信託の引受け |
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附随的商行為 | 第503条(附属的商行為) 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。 2 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。 |
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会社の行為 | 会社法 第5条(商行為) 会社(外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。 |
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商人 | 固有の商人 | 商行為を自己の名において業とすることによって商人とされるもの(4条1項) |
第4条(定義) この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。 |
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擬制商人 | 商行為を業としないにかかわらず商人とされるもの(4条2項) | |
第4条(定義) 2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。 |
商業使用人 | |||||
意味 | 商業使用人(商法37条以下):雇用契約によって特定の商人に従属してその企業組織の内部にあってこれを補助する者(非独立的補助人) 代理商(商法46条以下):独立の商人として他の商人の企業組織の外部にあってこれを補助する者(独立的補助人) |
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商業使用人 @支配人(37条以下) A番頭・手代(43条) B物品販売店の使用人(44条) |
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ここで商業使用人として規定されている者は、すべて営業上の代理権を有し、また有するとみなされる者。 〜 雇用関係により特定の商人に従属し、かつその対外的な商業上の業務を補助する者をいう。 |
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支配人 | ★支配人 | ||||
■意義 | 規定 | 商法 第21条(支配人の代理権) 支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。 2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。 3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 |
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神崎 | 支配人は、営業主により本店または支店の営業の主任者として選任された商業使用人。 | ||||
説明 | 営業主に代わってその営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす権限(支配権)を有する商業使用人(法21条1項)。 | ||||
支配人、マネージャー、支店長、店長などどのような名称を与えられるかは問題ではない(通説)。 支店長という名称を有する商業使用人が、営業に関する一切の代理権ではなく、多少範囲が狭い代理権を与えられた場合に、包括的代理権を制限された支配人であるのか、それとも表見支配人(商法24条)であるのか、その判断が必ずしも容易でない場合が生じる。 |
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(内部的な)制限に違反した支配人に対しては、営業主は対内関係の問題として、損害賠償を請求することができる。 | |||||
■権限濫用 | ● | ●行為の外形からみて営業に関する行為であっても、その内実においては支配人が個人的利益をはかる目的をもってした場合(コンメ(旧)p392〜): | |||
営業主は相手方の悪意を立証することによって責任を免れ、支配人個人が相手方に対して責任を負う(民法117条1項)。 | |||||
民法 第117条(無権代理人の責任) 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。 2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。 |
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会社の代表取締役や代理人が自己または第三者の利益をはかるためにその権限を濫用して行為したときは、相手方が右行為者の背任的意図を知り、また知りうべきものであった場合にかぎり、民法93条但書の規定を類推適用して、会社または本人はこの事実を主張・立証することにより責任を免れ得うる(判例)。 | |||||
民法 第93条(心裡留保) 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。 |
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商法21条3項の悪意は、支配権の内部的制限に関するものであるが、この制限を超える支配権行使も一種の背任行為といえる⇒その悪意は支配人の不誠実を知ることになる点で、上記と同断。 「過失ある善意」を含めないのは、第三者に調査義務を負わせることが、支配権の画一性・不可制限性と調和しないから。 (第三者は支配人の広範無制限な代理権の存在を当然の前提として取引している⇒単に善意であれば保護されるのであり、過失の有無を問わない。) |
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■選任・解任 | |||||
● | 支配人の選任行為は、支配権の授与を伴う雇用契約。 | ||||
支配人選任契約は、代理権の授与を伴う雇用契約 ⇒代理権の消滅または雇用契約の終了によって終任となる。 |
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■ | ■雇用契約および委任契約に基づく義務 | ||||
規定 | 民法 第623条(雇用) 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。 |
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規定 | 民法 第644条(受任者の注意義務) 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。 |
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民法 第645条(受任者による報告) 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。 |
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民法 第623条(雇用) 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。 |
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営業主である商人に対し、雇用および委任の規定に基づき、 @善管注意義務(民法644条)、 A事務処理の状況等を報告する義務(民法645条)、 B労務に従事する義務(民法623条) という一般的義務を負う。 |
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● | ●労務者の義務 (注釈民法16p46〜) | ||||
労務者は誠実に労務に服すべき義務を負う。 およそ労務を利用することによる使用者の正当な利益を労務者は不当に侵害してはなんらないと解され、これも、労働者の付随義務としての誠実義務と呼んでいる。 |
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×使用者の家庭生活上または営業上の秘密や秘事を不当に他人に洩らすこと ×使用者の利益を害するように同僚労務者を扇動したり援助したりすること ×職務上の地位を利用して賄賂を受けとること〜使用者の利益を第一に擁護することなく自己もしくは第三者の利益を図るという点で、誠実義務に違反 |
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同僚の窃盗や横領を知ったような場合の積極的な通知義務 競業避止義務(雇用契約の存続中に労働者が競業避止義務を負うことは論をまたない) |
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勤務時間中に所定の労務給付を怠って自己や第三者のために営業活動⇒競業になると否とを問わず、それじたい労務給付義務の不履行。 but 労務者の自由な時間を利用してのものであっても、例えば、病院、診療所等に雇われる医師が患者を奪って自己の計算で診療したり、法律事務所に勤務する弁護士が依頼者を自分の客にして、使用者に不利益をもたらすような行為は、雇用契約の趣旨または慣行上認められる範囲を逸脱すれば、誠実義務違反。 |
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労務者が労務給付義務をはじめ各種の付随義務に違反⇒解雇原因になったり、報酬請求権喪失の原因になったりすることのほか、使用者は損害賠償請求権を取得(ここでの損害は、狭義の債務不履行によるものもあろうし、いわゆる積極的債権侵害と呼ばれるべきものもあろう。)。 | |||||
■ | ■営業禁止および競業避止義務 | ||||
会社事業に関する一切を会社に代わって行いうるという強大な代理権で、支配人が会社事業に関与するためには、一方では、支配人が会社事業の機密に通じていなければその職務を全うできないことであり、他方では、強度の個人的信頼関係がなければ人を支配人の地位に就かせることができない。 ⇒会社法は、この強度の信頼関係を考慮して、支配人に、不作為義務として、競業避止義務と、通常の雇用関係よりも強度の営業避止義務を含む他業避止義務を課している(逐条解説会社法1p161)。 |
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支配人が広範な代理権をもって商人の営業に関与する者で、営業の機密にも通じ、その地位は営業主との間の高度の信頼関係に基礎をおいている。 ⇒特殊の不作為義務を課している。 |
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規定 | 商法 第23条(支配人の競業の禁止) 支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。 一 自ら営業を行うこと。 二 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。 三 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。 四 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。 2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。 |
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● | ◎ | ●営業禁止義務 | |||
支配人は | |||||
支配人は一定の営業所の営業に関して全権を授与されており、その範囲で営業主の営業上の秘密を熟知し、得意先その他の取引機会に精通している立場にある⇒それを濫用するときは、単に営業主との間に利害衝突を生ずるだけでなく、営業主が支配人に与えた信任に違背することになる。 営業主の信任にこたえて全力を挙げ営業主の営業に奉仕すべき忠実義務に反して、精力を濫費し、営業主の営業上の利益を侵害する結果となる。 ⇒この結果を防止するのが営業禁止義務。(コンメ(旧)p400) |
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取締役の競業禁止義務:単に本人または会社との利害衝突を避けるために規定されたもの ⇒一般的な営業の禁止にまで及ばず、単に本人もしくは会社の営業の部類に属する取引をし、または同種の営業を目的とする会社の無限責任社員もしくは取締役となることを禁止しているにすぎない。 支配人については、上記利害衝突防止の必要性とともに、特別な忠実義務にもとづく精力濫費防止の必要がある⇒本条第1項は自分が営業をすることを一切禁止するとともに、一般的に他の会社の責任者(無限責任社員・取締役)または他の商人緒使用人となることを禁止し、ただ個別的な取引についてのみ、営業主の営業の部類に属するものを自己または第三者のためにすることを禁止。(コンメ(旧)p400) 以上の禁止は営業主の許諾があれば解除されるのであり、その許諾は口頭・文書・明示・黙示のいずれにもよることができる。(コンメ(旧)p400) |
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◎ | @自ら営業を行うこと(商法23条1項1号) 〜 支配人は、会社に対しその全力を傾注すべき義務を負っている(精力分散回避義務)⇒勤務時間外であっても営業を行うことはできない。 (取締役等には競業となる場合以外、このような義務はなく、善管注意義務、忠実義務として問題となりうるだけ。) |
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A他の商人または会社・外国会社の使用人となること(同3号)、または取締役、執行役もしくは業務執行社員となること(同4号) 〜 取締役等は使用人となること自体は禁止されない。なお、競業となる場合は別。 取締役・執行役はこのような兼業は禁止されないが、競業となる場合は別。 |
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● | ●競業禁止義務 | ||||
◎ | 営業主である商人の許可がなければ、支配人が自己または第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をなすことを禁止(商法23条1項2号) 〜 包括的な代理権により広範に活動し、営業の機密に通じる支配人が、その地位を利用して会社の得意先を奪うなどの弊害を防止する趣旨。 |
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取引の安全⇒なされた行為は有効 but 営業主である商人は支配人に対して損害賠償を請求し、支配人を解任することができる。 |
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積極的に損害を受けるよりも消極的に利益を失う場合が多く、損害の立証は極めて困難 ⇒損害賠償請求権だけで営業主の保護が必ずしも十分ではない ⇒支配人が競業避止義務に違反した場合には、この行為によって支配人または第三者が得た利益の額が商人に生じた損害額と推定(商法23A) |
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◎ | ◎「会社の事業の部類に属する取引」 : 会社の事業の目的である取引。 会社が現実に営んでいる事業に限らず、すでに開業の準備に着手している事業および過去に営んでいたが現在一時的に停止している事業のほか、新規進出が相当に確実な場合も含む。 |
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会社の事業の目的に関連してなされる補助的行為、たとえば手形・小切手の振出などは含まれない。 | |||||
◎ | ◎「自己または第三者ののため」: 自己または第三者の名義でなすことか、自己または第三者の計算でなすこと。 |
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支配人が間接代理(取次)の方式で競業するとき、会社は競業による経済的利益を奪われているからその回復を図らねばならない。 ⇒「自己または第三者の計算において」と解すべき。 |
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● | ●支配人の義務違反と取りうる手段等 | ||||
他業避止義務・営業避止義務違反および競業避止義務違反 ⇒会社は@損害賠償を求めることができ、A支配人解任の正当理由、やむを得ない事由(民法651条2項ただし書。民法628条(雇用)) |
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● | ●他の使用人への類推適用 | ||||
◎ | 本条の支配人の不作為義務は、かつての番頭、手代、現代的には部長、課長、係長などにもある程度類推適用すべきというのが多数説。 | ||||
特約、就業規則に定めがない以上、競業とならない単純な営業の禁止は問題であるが、@上級使用人に対する信頼関係は保護すべきこと、A従来の奪取権(介入権)は廃止されたこと、B営業主の損害の立証は困難なこと、Cあえて民訴法248条によるまでもないこと⇒支配人の不作為義務、損害額の推定の類推を認めてよい。 | |||||
● | ●許諾 | ||||
会社の許諾は、黙示の許諾でよく、たとえば他社の取締役であることを知りながら、これを禁止しないで支配人に選任したような場合は、通常黙示の許諾を認めてよい。 | |||||