シンプラル法律事務所
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論点整理(商標権関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

新・注解 
★1条  
規定  第1条(目的)
この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★25条  
規定 第25条(商標権の効力)
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
◆T 本条の趣旨
商標権の中核をなす「専用権」を規定。
専用権は、商標法37条1項の規定する「禁止権」とともに、商標権の本質的効力を構成。
商標のもつ本質的機能である自他商品(役務)の識別機能を保護し、出所混同を防止するため、商標権の効力として登録商標・指定商品(役務)の同一範囲に専用権を認め、その類似範囲に禁止権を認めることとした。
  ◆U 専用権 
    専用権:
@商標権者が登録商標を指定商品(役務)に独占的に使用する権利(いわゆる「使用権」)と
A第三者が登録商標を指定商品(役務)に使用することを禁止し排除する権利(禁止的効力)
とからなる。
  ◆V 使用権の制限 
   
     
     
  ■(4) 権利濫用にあたる場合 
  ◆W 禁止的効力の制限 
     
  ■(2) 商標の機能を害することなく、実質的違法性を欠く場合 
  □(a) 真正商品の並行輸入と認められるもの 
  ●「GUSS事件」:
被告が原告の製造販売に係る右登録商標を付した商品「ジーンズ」を、訴外の米国A社から輸入販売した事案
右登録商標を付した被告商品は、原告の製造販売した真正な商品
⇒被告による被告商品の輸入販売行為は、商標法1条に同法の目的として規定する、商標を使用する者である原告の業務上の信用の維持を図ることに反することも、需要者である一般消費者の利益を保護することに反することもなく、また、同法がその目的達成のために保護している商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することもない。
⇒被告の右行為は実質的にみて違法性を欠き、商標権侵害を構成しない。
  ●「第2次フレッドペリー事件」(最高裁H15.2.27):
外国における被許諾者が製造地域制限条項に違反した商品を、国内の輸入業者が輸入販売した事案 
商標権者以外の者が、我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき、その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は、許諾を受けない限り、商標権を侵害する(商標法2条3項、25条)。
 しかし、そのような商品の輸入であっても、
(1)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり、
(2)当該外国における商標権者とわが国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、
(3)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には、
いわゆる真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。

商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条)、上記各要件を満たすいわゆる真正商品の並行輸入は、商標の機能である出所表示及び品質保証機能を害することなく、商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわず、実質的に違法性ががないということができる。
本件についてみれば、
@製造地域制限条項に違反して製造され登録商標が付された商品の輸入は、登録商標の出生表示機能を害する
A製造地域制限条項は商標権者が商品に対する品質を管理して品質保証機能を十全ならしめる上で極めて重要であるところ、これに違反して製造され登録商標が付された商品は、商標権者による品質管理が及ばず、商標権者が本件登録商標を付して流通に置いた商品と品質において実質的に差異が生ずる可能性があり、商標の品質保証機能が害されるおそれがある
B需要者はいわゆる並行輸入品に対し、商標権者が登録商標を付して流通に置いた商品と出所及び品質において同一の商品を購入することができる旨信頼しているところ、製造地域制限条項に違反した本件商品の輸入を認めると、需要者の信頼に反する結果となるおそれがある

本件商品の輸入は、いわゆる真正商品の並行輸入と認められず、実質的違法性を欠くということはできない。
     
  ■(3) 商法権の行使が権利濫用にあたる場合 
  ●「下呂事件」 
  ●「STUSSY事件」 
@現時点において、原告が、本件商標権に基づく排他的保護に基づき原告活字体標章を使用することを認めることは、米国で使用されている標章であることを知りながらこれを入手・登録した上、自らのその標章に自己の信用を化体させる営業努力をしなかった原告が、ステューシー社と独占的販売契約を締結し、積極的に営業活動、広告宣伝活動を展開してステューシー標章を周知ならしめた被告の営業努力にフリーライドすることにほかならない。
Aステューシー標章が既に周知性を有している⇒原告が、今後、被告に営業努力による信用を化体させる余地はほとんどない
⇒本件商標権に基づく差止請求権は権利濫用にあたる。
  ●「ウイルスバスター事件」 
  ●「JUVENTUS事件」 
  ●「カンショウ乳酸事件」 
「カンショウ乳酸」という語は、本家商標が出願された当時には、既に商品の普通名称であったというべき⇒本件商標は「カンショウ乳酸」という語を横書きしたにすぎないから、商品の普通名詞を普通に用いられる方法で表示する標章のみかなる商標であるというべきである。

本件商標に係る商標登録は、商標法46条1項1号所定の無効事由(同法3条1項1号)を有することが明らか⇒本件商標権に基づく請求は、権利濫用に当たる。
  ●「mosrite事件」 
@原告の本件商標を構成する標章「mosrite」は、出現時に、米国モズライト社が商品「エレキギター」に使用する商標として需要者間に広く認識されており、
A原告が本件商標登録を不正競争の目的で受けたことも明らかであって、
B本件商標登録には、無効理由(商標46条1項1号、4条1項10号)
⇒このような商標権に基づく請求は権利の濫用にあたる。
  ●「ぼくは航空管制官事件」 
原告の被告に対する本件商標権に基づく請求は
@被告ソフトの製造について許諾を与えたテクノブレイン社の標章と同一の標章を自ら商標登録した上、本件商標権に基づいて権利行使されたものであり、
Aその目的も、テクノブレイン社のライセンシーの製造、販売を妨げるためにされたもの

正義公平の理念及び公正な競争秩序に反するものとして、権利の濫用にあたり許されない。
  ●「ADAMS事件」 
コトブキゴルフには、アダムス又はADAMSの名称について商標登録するべき合理的な理由は存せず、むしろタイトライズ製品が米国のゴルフ業界において成功したことに着目し、ADAMSの名称が将来我が国において人気が出ることを期待して商標登録出願を行った

アダムスゴルフが自己の製造販売するゴルフクラブにADAMSの標章を付してこれを輸入、販売等する行為、及び、ワールドブランズが本件標章の付されたアダムズゴルフ製造販売に係るゴルフクラブを輸入、販売等する行為に対して、コトブキゴルフ及び同社から本件商標権を譲り受けた同社の代表者であるAが、本件商標権に基づく差止請求権・損害賠償請求権を行使することは、権利の濫用に当たるというべきである。
  ●「バドワイザー事件」 
  ●「PAPIA事件」 
  ●「IP FIRM事件」 
  ●「GRAVE GARDEN事件」 
  ●「melonkuma 事件」 
被告代表者が「メロン熊」と題するキャラクターを考案し、それが北海道夕張市を代表するキャラクターとして周知性、著名性を獲得していたところ、原告が、そのキャラクターが周知・著名性を獲得する以前に登録していた原告商標「melonkuma」に基づき、損害賠償を請求
(1)@もともと被告各標章には特段の自他識別能力がある一方、
A原告商標は、登録後、少なくとも、流通におかれた商品に使用されておらず、原告商標自体、原告の信用を化体するものではなく、何らの顧客誘引力も有しているともいえない。
B原告商標と被告各標章との間で出所を誤認混同するおそれが極めて低い。
それにもかかわらず、原告は、原告商標権に基づき損害賠償請求をするものではなるが、
このような行為は、本件キャラクターが周知性、著名性を獲得し、強い顧客吸引力を得たことを奇貨として、本件の権利行使をするものというべき。
(2)また・・・原告商標の登録取消審決に至る経過をみると、本件訴訟の提起自体が、上記審判に対する対抗手段として行われた疑いが強い。

以上によると、原告商標と被告各標章が誤認混同のおそれがあるとしても、原告により権利行使は、商標法上の権利を濫用するものとして、許されない。
     
     
     
     
★★第2節 権利侵害  
★36条  
規定  第36条(差止請求権)
商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
  ◆T 本条の趣旨 
  ◆U 専用権と商標権侵害 
  ◆V 商標権侵害阻止の本質(差止請求権の目的) 
  ◆W 直接侵害 
  ◆X 差止請求権の原告適格 
  ◆Y 廃棄等の請求 
  ◆Z 予防請求の要件としての「侵害するおそれ」 
  ◆[ 被告の防御方法・対抗手段 
  ◆\ 被告登録商標の使用 
  ◆] 権利の濫用及び商標権無効の抗弁 
  ◆? 管轄裁判所 
  ■(1) 事物管轄
  ■(2) 土地管轄 
     
     
  ●不法行為地の裁判籍(民訴5条9号) 
被告が住所又は本店所在地以外のところにおいて侵害品の製造、販売をしているとき、その製造地又は販売地の裁判所に差止請求訴訟を提起できるか?
(損害賠償請求訴訟では問題なし。)
最高裁H16.4.8は肯定
同号の規定の趣旨等にかんがみると、この「不法行為に関する訴え」の意義については、民法所定の不法行為に基づく訴えに限られるものではなく、違法行為により権利利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者が提起する侵害の停止又は予防を求める差止請求に関する訴えを含むものと解するのが相当。

不正競争防止法3条1項の規定に基づく不正競争による侵害の停止等の差止めを求める訴え及び差止請求権の不存在確認を求める訴えは、いずれも民訴法5条9号所定の訴えに該当。
  ●商標権に関する訴えの裁判管轄(民訴6条の2) 
     
★37条  
規定   第37条(侵害とみなす行為)
次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
     
★38条  
規定  商標法 第38条(損害の額の推定等)
商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、その譲渡した商品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
3 商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
4 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
  ◆T 本条の趣旨 
    民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権が認められる。
but
知財侵害による@損害の発生、A損害の額、B侵害行為と損害の因果関係を厳密に主張・立証することは困難な場合が多い。
侵害行為と相当因果関係がある
@積極的損害(損害排除費用、調査費用、弁護士費用)
A消極的損害(得べかりし利益、いわゆる逸失利益)
B無形損害(名誉・信用等の毀損、精神的損害)
が含まれる。
このうち困難なのは、A消極的損害(逸失利益)
    A:侵害品総価格説:
侵害者が販売した侵害品又は侵害物の総価格をもって権利者の消極的損害とする。
ex.1個1000円の商品1000個を販売した時は、総価格100万円の損害を被った。
vs.
侵害品又は侵害物中には製作についての資本・原料及び労力等、利益以外のものが入っている。
B:侵害品販売による総利益説:
各個の侵害品又は侵害物の販売について侵害者の得た利益に販売総数をかけ、あるいは価格差があるときは各個の利益を総合計した利益総額を被害者の消極的損害とする方法。
1個の利益が300円で1000個販売⇒30万円
vs.
侵害者の得た利益≠権利者の得べかりし利益
侵害者がダンピング⇒侵害者に利益なしbut損害あり。
C:利得比較説:
侵害行為前の権利者の利得と侵害行為後の利得とを比較してその差額による方法。
毎期における利益の増加率が明らかな場合において侵害行為によりこの増加率が減少したときは減少した増加率に該当する金額も加算すべき。
vs.
侵害行為の行われた後の利益の減少又は利益の増加率の減少がすべて侵害行為の結果であるとは認められない。
減少について他に何らかの原因もない場合にはじめて妥当。
D:実施料説:
権利の実施料又は使用料によって決する方法。

その相場を他の類似取引事案から類推しあるいは鑑定せしめることによって損害額を決定することを可能ならしめる。
vs.
権利者が実施料を超える損害を被っている場合にも、そのような損害の賠償を認めないとすると、侵害者は侵害を発覚してもライセンス契約を行った者と同一の実施料を支払うことによって責任を免れるという不正な結果となる。
  ◆U 1項について 
  規定 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、
その譲渡した商品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、
商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、
商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。

ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
  ■(1) 本項の立法理由 
    @2項が侵害者の侵害行為によって得た利益と特許権者等の逸失利益との等価性(代替可能性)という経験則にその推定の合理性を求めるのに対して、本項は、いわば侵害者の侵害製品の譲渡数量と特許権者等の市場における販売機会の喪失との等価性(代替可能性)に損害算定の合理性を求めた。
A2項が、逸失利益の算定に法律上の推定という方法を用いたため、侵害者が推定の前提となる事実(前提事実)の存在や推定の合理性に関してこれを疑わせるに足りる反対事実が主張・立証されると、推定された逸失利益額のすべてが覆滅するのに対して、本項は逸失利益の算定にあたって法律上の推定という方法によらずに、損害の発生という前提事実がある限り、侵害者が「譲渡数量の全部又は一部に相当する数量」を権利者が「販売することができない事情」を立証した場合に、算定された損害の一部を控除(減額)するという新しい損害算定ルールを定めた。
  ■(2) 本項の適用範囲 
2項、3項と同じく、商標権侵害に関して権利者の逸失利益の賠償を請求する際の算定方法に関する準則を定めるもの。
  ■(3) 本項適用のの前提条件 
本項は損害額を推定するものであって、権利者において実際に侵害行為により損害を被ったことまでを推定するものではない。

民法709条の
@故意・過失
A侵害行為(違法性)
B責任
C損害の発生
の要件を充足する必要があり、それらの主張立証責任は権利者が負担。
  ■(4) 損害賠償額の算定方法 
  ●(a)そのものがその侵害の行為を組成した商品を譲渡したとき 
  ●(b)譲渡した商品の数量
  ●(c) 商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額
  @商標権侵害があった場合、侵害品と商標権者の商品との間には、必ずしも性能や効用において同一性が存在するとは限らない⇒侵害品と商標権者の商品との間には、市場において、当然には相互補完関係(需要者が侵害品を購入しなかった場合に商標権者の商品を購入するであろうという関係)が存在するということはできない。
A特許権侵害等があった場合、侵害品が売れたことは、当該特許権等を実施した製品についての需要が存在するということを意味するといっても差し支えないが、商標権侵害があった場合、侵害品が売れたからといって、当該商標を付した商品についての需要があったということを当然には意味しない。

商標法38条1項所定の「商標権者がその侵害行為がなければ販売することができた」か否かについては、商標権者が侵害品と同一の商品を販売(第三者に実施させる場合も含む。以下同じ。)しているか否か、販売している場合、その販売の態様はどのようなものであったか、当該商標と商品の出所たる企業の営業上の信用等がどの程度結び付いていたか等を総合的に勘案して判断すべき。(東京地裁H13.10.31)
    「利益」の内容につちえは、限界利益と解するものが多い。
    「侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額」:
権利者の現実の商品の販売価格を基準として利益の額を算定するのではなく、
侵害行為がなかった場合に形成される商品の販売価格を基準として利益の額を算定することを意味する。
    侵害が一定期間継続する場合にはどの時点における「利益の額」をもって「単位数量当たりの利益の額」を算定すべきかという問題。
  ●(d) 商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた額を超えない限度
     
  ■(5) 本項但書の事情について 
    「ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。」
     
  ■(6) 本項の効果 
     
  ◆V 2項について 
  規定 2 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、
その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、
その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
  ■(1) 本項の沿革及び意義
  ■(2) 本項適用の前提条件 
    判例は、本項の推定規定は、損害額を推定するものであり、権利者において実際に侵害行為により損害を被ったことまでを推定するものではないと判示。

本項によって損害賠償を請求する前提として、商標権の侵害行為によって現に損害を被ったことを主張・立証する必要。
    特許法102条2項について、本項を適用する前提として、特許権者が被侵害特許を実施していることが必要であるかについて、知財高裁は、「特許法102条2項の適用に当たり、特許権者において当該特許発明を実施していることを要件とするものではない」との判断。
特許法102条2項は、民法の原則の下では、特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには、特許権者において、損害の発生及び額、これと特許権侵害行為との因果関係を主張、立証しなければならないところ、その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の填補がされないという不都合が生じることに照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益額を特許権者の損害額と推定するとして、立証の困難性の軽減を図った規定。

特許法102条2項は、
@損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定であって、
Aその効果も推定にすぎない
⇒同項を適用するための要件を、殊更厳格なものとする合理的な理由はない。

特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり、
特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在するなどの諸事情は、推定された損害額を覆滅する事情として考慮されるとするのが相当。
    商標法38条2項についての裁判例:
商標権者が現に商標権を使用している事実があっても、商標権者と商品と侵害者の商品とが流通過程において現に誤認混同されるおそれがない⇒商標権者が当該侵害行為によって、現に営業上の損害を被ったことの立証がないとして適用否定(名古屋地裁)。
登録商標に類似する標章を便箋の表紙に付して販売した侵害者に対して同じ指定商品の事務用紙に属する封筒に登録商標を使用しているものの便箋については使用していない商標権者がなした損害賠償請求につき、
自ら登録商標を付した便箋を製造・販売していない商標権者には、商標法38条2項の推定規定の適用はないとして、同条3項に下づ使用料相当の損害を認容(大阪地裁)。
原告が有する輸送機械器具の部品及びその付属品等を指定商品とする「ROBINSON」なる商標に基づき米国のヘリコプターメーカーのロビンソン社からヘリコプターを輸入している被告に対してなされた商標権侵害訴訟において、
原告が登録商標を付したヘリコプターを輸入・製造・販売していない
⇒商標法38条2項の適用を否定し、同条3項による損害を認容(大阪地裁)。

商標権者が現に登録商標を使用しているだけでなく、
@商標権者の登録商標を使用した商品と侵害者の商品との間に競業関係が存することや両者の間に誤認混同のおそれがあること、
A販売している商品の市場における競業関係だけでなくその販売態様や当該商標と商品の出所たる企業の営業上の信用等との結びつき等の事情を考慮して商標権侵害がなければ権利者が自己の商品を販売することができたという関係があることを
商標権38条2項の適用の前提となる「損害の発生」の要件として付加。
  ■(3) 得たる利益の意味 
  ●(a) 利益の内容
    A:粗利益:製品やサービスの売上高から製造原価(仕入原価)を控除した額。
B:純利益:粗利益から当該売上高を得るための営業経費(人件費、地代家賃、広告宣伝費、運送費、保管費等)を控除した利益の額。
裁判例・学説、Bが多い。

@上記推定規定が民法709条の逸失利益に関する推定規定であって、民法上、逸失利益と観念されるものが純利益。
A粗利益節は侵害者に過酷で制裁的であり、我が国の損害賠償制度になじみにくい。
立証責任:
権利者が侵害者の粗利益を立証した場合には、その額を下回る純利益額算出に必要なその他の必要経費については、侵害者の側に主張・立証責任があると主張する説が有力。
侵害者の純利益率の立証が困難⇒権利者の同種製品の販売価格や利益率を斟酌して、侵害者の利益率を推定する判例も散見。
  B:純利益説
vs.
侵害者の売上から、製造原価や、販売費等の侵害行為のみに要した変動費だけでなく、侵害行為と直接関係のない地代や家賃等の経費をも控除の対象としている。
C:限界利益:
本来、侵害者の得たる利益相当の損害推定規定は侵害行為がなかりせば侵害製品のかわりに権利者の製品が製造販売されたであろうことを侵害者の単位あたりの「利益」と権利者の単位当たりの「利益」がほぼ同額になることの2点に合理性を求めている。

この規定によって推定される「利益」は、侵害者の売上から権利者がn個の製品を販売した後に、侵害行為がなければさらにm個の販売が可能であると仮定した場合に、このn個からn+m個までの製品の製造に要する費用(限界費用)のみを控除すべき。
  ●(b) 「利益」への寄与度(寄与率) 
  ◎寄与度(寄与率)の概念(下p1170)
  ○侵害者の製品の一部が侵害品である場合 
    商標権侵害事件では、ある製品中の一部(部品)のみが商標権侵害に該当するということは通常では考えられない⇒
ある商標を付した商品等が他の商品に組み込まれた場合でも、当該商標が出所表示機能を発揮しているのが組み込まれた商品にとどまる場合には組み込まれた部品等が当該商品中に占める割合等に基づき絵たる利益の額を算定すべきであり、
組み込まれた商品に付された商標が組み込んだ商品の出所識別機能を獲得したときは、一応当該商品全体についてその販売により得た利益をもって本項の損害と推定し、その後当該商標が商品の出所識別に果たした役割の程度や商標の当該商品の需要者に対する顧客吸引力の大小等を寄与率として考慮し、推定の一部覆滅事由として、これらの寄与率を参酌すれば足りる。
  ○複数の権利を侵害する場合 
    被告製品に複数の商標が付されているとしても、そのことによって、ただちに各々の商標について本項による推定を限定したり、あるいは推定の一部覆滅事由としての寄与率を参酌すべき必要性はない。
but
当該侵害商品への需要が他の商標によって喚起されたり、あるいは侵害商品の顧客吸引力が他の商標によってもたらされた可能性があるときは、次の「他の寄与要因の存在」として参酌されることがある。
  〇その他の寄与要因の存在 
    A:他の寄与要因の存在を「寄与度」の問題として商標法38条2項の適用を否定しなかった裁判例
B:他の寄与要因の存在を商標法38条2項の推定覆滅理由として、同項の適用を否定した裁判例
  ◎寄与度の主張立証責任(下p1175) 
    寄与率に影響を与える要因の存在を推定の一部覆滅事由と考える
@侵害者が得た利益の全部が「損害」として推定され、
A侵害者が他の寄与要因の存在とこれに基づく寄与率(推定覆滅割合)を主張・立証したときに、推定の一部覆滅が生じる。

寄与要因と寄与率の主張・立証責任は原則として侵害者側に存在。
but
このような場合でも、権利者の側で侵害者の主張する寄与要因の存在を否認しあるいは寄与率(推定覆滅割合)の数字の根拠を争うだけでなく、これとは異なる観点から、商標の存在が逆に侵害者利益の増加に寄与した事実と寄与率(推定効果増大率)を主張・立証することもできると解される。
主張・立証責任の分配の問題を離れて、当事者の主張及び証拠の提出責任の分配の問題として考えれば、
@寄与率を減少させる要因とこれに基づく寄与率算定の根拠についての提出:侵害者
A寄与率を増加させる要因とこれに基づく寄与率算定の根拠についての提出:権利者
がそれぞれ第一義的な義務を負う。
     
  ■(4) 推定を覆す事由 
    本条2項は、権利者の逸失利益に関する法律上の事実推定規定
⇒侵害者は、本項の推定を阻害する事由を主張・立証して、本項の推定を覆すことができる。
@本条の前提事実たる「侵害の行為により得たる利益」自体を、真偽不明の状態に追い込む⇒本項の推定の効果を免れる(推定適用の排除)。
A推定の対象となる「侵害行為と因果関係のある損害の額」についても、これが存在しないこと、あるいはこれと反する事実が存在することを証明⇒推定を覆滅できる。
権利者の現実の損害が、侵害者の得たる利益よりも少ないことは、推定の覆滅理由となる。
    ●損害推定の根拠となる侵害者の得たる利益中に、他に寄与する要因による利益が存在することは、覆滅事由となるか?
特許法102条2項、商標法38条2項等の推定は、侵害者が他に寄与する要因の存在を主張しないかぎり侵害者が得た利益のすべてに及び、侵害者の利益中に侵害行為と因果関係のない利益(すなわち他の寄与要因による利益)が存在することを侵害者において主張した場合に、この推定が覆される。
侵害者の側が実際にどの程度の主張・立証を行えば、推定を覆滅させることができるか?

A:侵害者独自のキャラクターや営業努力等、他の寄与要因によって生じたものが存在することを立証⇒推定が覆される
vs.
このような寄与要因の存在は甲事実(侵害と因果関係のある損害)不存在の証明にはならず、「利益額」(乙事実)如何によって考慮されるべき要因

B:かかる寄与事由については、それがあるため推定額より少なくなった「権利者の現実の損害額」が立証されてはじめて推定が覆される。
  ◎競争品の存在や、権利者の供給能力の欠如

A:これを推定覆滅事由と解する説
B:このような事由により、権利者の現実の損害額が侵害者の得たる利益よりも少ないことを立証してはじめて推定が覆される
    侵害者の得た利益に侵害商標が付されていること以外の他の寄与要因が存在するような事案等について、そのような他の寄与要因が存在することが侵害者によって主張・立証されたからといって、本項の推定が全面的に覆滅するわけではない。
本条1項:このようなオール・オア・ナッシング的な解釈・運用を防止すrうため、あえて推定規定の形式をとらなかった。
but
本項は、条文の形式から法律上の推定規定
⇒前提事実の存在の不存在や法律上の推定に反する事実が諸運命されると推定という効果自体が覆滅するとの解釈。
     
  ◆W 3項について 
  規定 3 商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、
その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭
を、
自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
  ■(1) 本項の意義 
    特許法102条3項等と同じく、権利者が侵害行為によって被った自己の損害を立証することの困難を救済するため、当該被侵害権利の使用により、権利者が通常受けるべき金銭(使用料相当額)を損害として定めた規定。
    最高裁H9.3.11:
「・・・・商標権者は、損害の発生について主張立証する必要はなく、権利侵害の事実と通常受けるべき金銭の額を主張立証すれば足りるものであるが、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して、損害賠償の責めを免れることができるものと解するのが相当

・・・不法行為に基づく損害賠償請求において損害に関する被害者の主張立証責任を軽減する趣旨の規定であって損害の発生していないことが明らかな場合にまで侵害者に損害賠償義務があるとすることは、不法行為法の基本的枠組みを超えるものというほかなく、・・解釈として採り得ない。

商標権は、商標の出所識別機能を通じて商標権者の業務上の信用を保護するとともに、商品の流通秩序を維持することにより一般需要者の保護を図ることにその本質があり、特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではない。したがって、登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品緒売上に全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益として実施料相当額の損害も生じていないというべきである」


本項は損害の発生と損害額の双方を犠牲するのではなく、
少なくとも、損害の発生については一応の推定を受けるため、権利者においてその発生を立証する必要はないが、侵害者の側で損害が発生していないことの反論及び反証が許される。
  ■(2) 「受けるべき金銭の額」の意味をめぐる平成10年改正の背景 
    「通常」を削除⇒
保護対象となった発明や登録商標について現実に徴収されている実施料・使用料ではなく、客観的に相当な実施料あるいは使用料。
  ■(3) 通常使用料に関する従前の算定基準(p1183)
    実施例・使用例なし⇒侵害の対象となった特許発明、登録商標、登録意匠等について、当該業界において一般的な平均的実施料・使用料を参照して「通常実施料・通常使用料」を決定。
  ●「通常浮くべき金銭」(実施料相当額・使用料相当額)を算定するにあたって、権利者はどの程度の主張・立証責任を負うか?
  ●寄与率及び寄与要因の問題 
   
  ■(4) 具体的事情を考慮した使用料相当損害の算定 
    平成10年の商標法改正で「通常」の文言が削除
⇒本項の使用料相当損害につき、具体的な事情を考慮した使用料相当損害の算定ができることが明らかに。
     
  ◆X 損害賠償の算定・推定規定の相互の関係 
  ■(1) はじめに
  ■(2) 1項損害と2項損害との関係 
  ■(3) 1項・2項損害と3項損害の関係 
     
     
     
  ◆Y 4項について 
  規定 4 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。
この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
  ■(1) 3項による損害と実損害の関係 
  ■(2) 軽過失の参酌 
  ■(3) 本項の効果 
     
  ◆Z 準事務管理・不当利得による利得返還請求権 
  ■(1) 事務管理適用の可否 
  ■(2) 不当利得返還請求権 
     






商標法 
商標権 規定 第25条(商標権の効力)
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
意義 指定商品(指定役務を含む)につき登録商標を独占的に使用し得る排他的権利。(法25条)
商標登録後は、指定商品について登録商標の専用権(設定登録の日より10年)と、これと類似する商品の範囲にわたって登録商標の禁止権(法37条)が発生する。
専用権と禁止権の効力が及ばない非類似の商品に著名商標が使用されることによって、その信用に寄生されるという問題(フリーライド)が生じる。

不正競争防止法2条1項2号によりカバー。
but同法による著名商標への保護は商品等表示としての標章の使用行為についてのものであり、著名商標への一般的接近行為のすべてが規制されるものではない。
先使用 規定 商標法 第32条(先使用による商標の使用をする権利)
他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
立体商標 規定

第2条(定義等)
この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

第3条(商標登録の要件)

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

第5条(商標登録出願)
2 商標登録を受けようとする商標が立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる商標(以下「立体商標」という。)について商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。

第4条(商標登録を受けることができない商標)
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十八 商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標

知財高裁H20.5.29判決 

法4条18号の規定→

「商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない形状については、商品等の機能を効率的に発揮させ、商品等の美観を追求する目的により選択される形状であっても、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものであれば、立体商標として登録される可能性が一律的に否定されると解すべきではなく(もっとも、・・・・識別機能が肯定されるために厳格な基準を充たす必要があることはいうまでもない。)、また、出願に係る立体商標を使用した結果、その形状が自他商品識別力を獲得することになれば、商標登録の対象とされ得ることに格別の支障はないというべきである。」

法3条13号の適用について

「商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。」

法3条2項について

「立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品等の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品等の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である。」

「そして、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要する。」

「・・・使用に係る商標ないし商品等に当該名称・標章が付されていることやごく僅かな形状の相違が存在しても尚、立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。」

差止請求 条文(36条) 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。